(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機化合物粒子が、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、金、白金、銀、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、コバルト、パラジウム、ゼオライトから選択される少なくとも1種以上の粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の壁紙用原紙。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
(壁紙の支持体(壁紙用原紙)の物性)
[線熱膨張係数]
本発明の壁紙の支持体(壁紙用原紙)の50〜150℃での測定範囲における線熱膨張係数は、1〜15ppm/Kであり、1〜10ppm/Kであることがより好ましく、1〜8ppm/Kであることがさらに好ましい。線熱膨張係数はASTM D696に準じて測定した値である。線熱膨張係数が前記範囲の壁紙用原紙は、温度変化に対して充分に変形しにくいものである。
【0009】
[比表面積]
壁紙用原紙の比表面積は、10m
2/g以上であることが好ましく、30〜200m
2/gであることがより好ましく、50〜200m
2/gであることがさらに好ましい。比表面積は、窒素ガス吸着法で測定したBET比表面積である。
壁紙用原紙の比表面積が前記範囲であることにより、壁紙用原紙に添加した無機化合物粒子がセルロース繊維に吸着する面積が大きくなるため、少量の無機化合物粒子の添加でも無機化合物粒子が有する機能性を充分に発揮させることができる。
【0010】
[坪量]
本発明の壁紙用原紙の坪量は、5〜100g/m
2であることが好ましく、10〜80g/m
2であることがより好ましい。ここで、坪量はJIS P8124:1998に準じて測定した値である。
壁紙用原紙の坪量が前記下限値未満では、シート剛度が小さいためハンドリング性が悪く、また厚さが薄いためシートとしての引張破断強度が小さく、加工の際に紙切れを起こしやすくなる傾向にある。一方、壁紙用原紙の坪量が前記上限値を超えると抄紙の際の脱水性が低いため、生産性が不充分になる傾向にある。
【0011】
[密度]
壁紙用原紙の密度は、0.3〜1.0g/cm
3が好ましく、0.3〜0.9g/cm
3がさらに好ましい。密度はJIS P8118:1998に準じて測定した値である。本発明の壁紙用原紙は密度が高いほど強度が高くなる。
壁紙用原紙の密度は、抄紙の際に、有機溶剤を添加し、その添加量を調節することにより調整できる。
抄紙の際に添加する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール系化合物、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテルなどのグライム類;1,2−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
これらの中でも、水への溶解性に優れ、沸点と表面張力と分子量のバランスが良く、また、多孔性のシートが得られやすいことから、エチレングリコール系化合物、ジエチレングリコールジメチルエーテルやジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテルが好ましい。
上記の有機溶媒は2種以上併用してもよい。
【0012】
[空孔率]
壁紙用原紙の空孔率は、30〜70%が好ましく、30〜60%がさらに好ましい。ここで、空孔率は、JIS P8118に準じて壁紙用原紙シートの密度を測定し、その値から計算によって求めた値である。
壁紙用原紙の空孔率が前記下限値未満であると、悪臭物質及び環境汚染物質の吸着性がより低くなり、前記上限値を超えると、強度が低下する。
【0013】
本発明の壁紙用原紙には、セルロース繊維を含有しても良く、微細セルロース繊維を用いることもできる。
【0014】
(微細セルロース繊維)
本発明の壁紙用原紙に微細セルロース繊維を含有させる場合の微細セルロース繊維の平均繊維幅は、1000nm以下のセルロース繊維である。微細セルロース繊維の平均繊維幅は、1nm〜1000nmが好ましく、20nm〜500nmがさらに好ましい。
平均繊維幅が前記上限値を超えると、壁紙用原紙の比表面積が小さくなって、悪臭物質及び環境汚染物質の吸着性能が低くなる。
【0015】
セルロース繊維の平均繊維幅の測定は以下のようにして行う。セルロース繊維含有スラリーを調製し、該スラリーを親水化処理したカーボン膜被覆グリッド上にキャストして透過型電子顕微鏡(TEM)観察用試料とする。幅広の繊維を含む場合には、ガラス上にキャストした表面の操作型電子顕微鏡(SEM)像を観察してもよい。構成する繊維の幅に応じて1000倍、5000倍、10000倍、20000倍、50000倍あるいは100000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡画像による観察を行う。但し、試料、観察条件や倍率は下記の条件を満たすように調整する。
(1)観察画像内の任意箇所に一本の直線Xを引き、該直線Xに対し、20本以上の単繊維が交差する。
(2)同じ画像内で該直線Xと垂直に交差する直線Yを引き、該直線Yに対し、20本以上の単繊維が交差する。
上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する単繊維、直線Yに交錯する単繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の幅(繊維の短径)を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維幅を読み取る。このように読み取った繊維幅を平均して平均繊維幅を求める。
【0016】
微細セルロース繊維の繊維長は特に限定されないが、短繊維化すると、紙力強度の低下を引き起こすことが考えられるため、平均繊維長は平均繊維幅の10倍以上が好ましく、50倍以上がさらに好ましく、100倍以上が最も好ましい。平均繊維長を前記範囲にするためには、例えば、繊維長の長い針葉樹パルプを選ぶことが有効である。
【0017】
繊維長は、前記平均繊維幅を測定する際に使用した電子顕微鏡観察画像を解析することにより求めることができる。すなわち、上記のような電子顕微鏡観察画像に対して、直線Xに交錯する単繊維、直線Yに交錯する単繊維の各々について少なくとも20本(すなわち、合計が少なくとも40本)の繊維長を読み取る。こうして上記のような電子顕微鏡画像を少なくとも3組以上観察し、少なくとも40本×3組(すなわち、少なくとも120本)の繊維長を読み取る。このように読み取った繊維長を平均して平均繊維長を求める。
【0018】
[セルロース繊維の製造方法]
セルロース繊維は、リグノセルロースを含有する原料(以下、「リグノセルロース原料」という。)を微細化して得ることが可能である。例えば、セルロース繊維の製造方法としては、リグノセルロース原料を、機械的作用を利用する湿式粉砕で微細化する方法が挙げられる。機械的作用を利用して湿式粉砕する方法としては、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー等を用いる方法が挙げられる。
また、前記微細化の前に、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシラジカル)酸化、オゾン処理、酵素処理などの化学処理を施してもよい。
木材を微粉砕後、脱リグニンなどの処理を行ってリグノセルロース原料を得ることも可能である。
上記のいずれの方法によっても、固形分濃度0.01〜20質量%程度のセルロース繊維懸濁液が得られる。
【0019】
リグノセルロース原料としては、特に限定するものではないが、例えば、木本性植物(針葉樹、広葉樹)、草本性植物を用いることが好ましい。より具体的には、木本性植物をクラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法などで蒸解した化学パルプ、レファイナー、グラインダーなどの機械処理によってパルプ化した機械パルプ、薬品による前処理の後、機械処理でパルプ化したセミケミカルパルプ、或いは古紙パルプなどを例示できる。これらは、それぞれ未晒(漂白前)もしくは晒(漂白後)の状態で使用することができる。また、非木材パルプとしては、例えば、綿、マニラ麻、亜麻、藁、竹、バガス、ケナフなどを木材パルプと同様の方法でパルプ化した繊維が挙げられる。
【0020】
(一般紙用パルプ)
セルロース繊維含有シートは、平均繊維幅1000nmを超える一般紙用パルプを含有してもよい。
一般紙用パルプは、一般の紙に用いられるパルプであり、上記リグノセルロース原料と同様のものである。
【0021】
本発明の壁紙用原紙が一般紙用パルプを含む場合、セルロース繊維は、一般抄紙用パルプの繊維間結合を強固にする役割も果たす。一般紙用パルプを含む場合、壁紙用原紙におけるセルロース繊維の含有量は壁紙用原紙の全質量の1〜50質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。
セルロース繊維の含有量が前記下限値以上であれば、一般紙用パルプ間の水素結合を充分に補強できる。しかし、セルロース繊維の含有量が多くなると、セルロース繊維を含有するパルプスラリーの粘度が上昇し、抄紙可能にするためにはセルロース繊維を含有するパルプスラリーの濃度を下げる必要が生じる。セルロース繊維の含有量が50質量%を超えると、セルロース繊維を含有するパルプスラリーの濃度を大きく下げる必要があり、また抄紙時の濾水性が著しく低下し、工業生産が困難になる。
【0022】
(無機化合物粒子)
本発明において、壁紙の支持体(壁紙用原紙)に無機化合物粒子を含有させることができる。用いられる無機化合物粒子としては、抗菌、消臭等の機能性を有する無機化合物粒子が挙げられる。
無機化合物粒子は、平均粒子径が1〜2000nmのナノ粒子であることが、無機化合物粒子が有する効果が高まるため、好ましい。無機化合物のナノ粒子の平均粒子径は2〜300nmであることが好ましく、4〜200nmであることがさらに好ましく、6〜100nmであることが特に好ましい。ここで、上記平均粒子径は、動的光散乱法による一次粒子の平均粒子径、あるいは、透過型電子顕微鏡観察による一次粒子の平均粒子径である。ここでの平均粒子径は、質量平均である。
無機化合物粒子の平均粒子径が前記下限値以上であれば、入手容易であり、前記上限値以下であれば、抗菌性又は消臭性を充分に発揮できる。
【0023】
無機化合物微粒子の具体例としては、二酸化珪素(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化鉄(Fe
2O
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化インジウム(InO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、二酸化チタン(TiO
2)、二酸化セリウム(CeO
2)、四酸化三マンガン(Mn
3O
4)、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)、炭化珪素(SiC)、炭化ホウ素(B
4C)、窒化アルミニウム(AlN)、ホウ化チタン(TiB
2)等が挙げられる。
また、金属のナノ粒子も無機化合物のナノ粒子として使用できる。金属ナノ粒子を構成する金属としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄、白金(プラチナ)、ルテニウム、亜鉛、バナジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムなどが挙げられる。
また、ゼオライト、ハイドロキシアパタイト、シリカに前記無機化合物粒子が結合した粒子、例えば、ナノプラチナ−シリカ粒子を用いることができる。
また、前記無機化合物粒子を含有する市販の抗菌剤や消臭剤等も特に制限なく用いることができる。
【0024】
無機化合物粒子は、悪臭物質及び環境汚染物質の吸着性がより高くなることから、シリカに金属粒子が結合した粒子、又は、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、金、白金、銀、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、コバルト、パラジウム、ゼオライトから選択される少なくとも1種以上の粒子が好ましい。
【0025】
(セルロース繊維と無機化合物粒子の質量比率)
セルロース繊維と無機化合物粒子の質量比率(セルロース繊維:無機化合物粒子)は、10000:1〜1:1が好ましく、10000:1〜5:1がさらに好ましく、10000:1〜10:1が特に好ましい。
【0026】
(他の成分)
また、本発明の壁紙用原紙は、上記微細セルロース繊維及び無機化合物粒子以外に、填料、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤などの化学添加剤、糊が含まれてもよい。さらに、本発明の壁紙用原紙には、抗菌剤、難燃材等の他の機能性物質が含まれてもよい。
【0027】
(壁紙用原紙の製造方法)
壁紙用原紙は、セルロース繊維と無機化合物粒子を配合したパルプスラリーを抄紙することにより得られる。
抄紙の際には、通常の抄紙で用いられる長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機のほか、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機を用いてもよいし、手抄きでもよい。
また、抄紙の際には、有機溶媒を添加してもよい。有機溶媒の添加方法は特に制限がないが、有機溶媒を、未乾燥のシート(含水ウェブ)の走行方向に対して上から滴下させる方法が好ましい。滴下の角度は有機溶媒が含水ウェブに均一に添加できる角度であれば特に制限されないが、含水ウェブに対して垂直に滴下させることが好ましい。
【0028】
(作用効果)
比表面積が前記範囲にある本発明の壁紙用原紙は、機能性付与剤の含有量が少なくても、悪臭物質及び環境汚染物質、特に空気中に含まれる環境汚染物質に対して優れた吸着効果を有する。
悪臭物質としては、アンモニア、トリメチルアミン、メチルメルカプタン、硫化水素、ノネナール、たばこの臭い成分等が挙げられ、環境汚染物質としては、ホルムアルデヒド、セシウム、ダイオキシン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0029】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、例中の部、及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
なお、以下の例では、壁紙用原紙の比表面積を、下記の方法により測定した。
【0030】
[比表面積の測定方法]
壁紙用原紙を105℃で乾燥して測定用試料を得た。この試料を、105℃の温度で2時間の真空脱気を行って前処理した後、窒素ガス吸着法比表面積・細孔分布測定装置(Coulter社製SA3100plus型)を用いて、BET多点法(5点法)により比表面積を測定した。
【0031】
<実施例1>
針葉樹晒クラフトパルプ(王子ホールディングス株式会社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準ろ水度(CSF)は550ml)を濃度5.0%になるように水を加え、ディスインテグレーターで離解して、パルプ分散液を得た。このパルプ分散液を長径250mmのグラインダー部を有する増幸産業社製のマスコロイダーを用いて、処理回数3回で解繊処理を行って微細化した。
得られた解繊液の上澄み濃度は3.25%であった。また、上澄み中の微細セルロース繊維の幅は60〜700nmの範囲にあり、平均繊維幅は140nmであった。
上記解繊液の上澄みの濃度が約3%になるように水を加えて希釈し、ホモミキサーで攪拌して微細セルロース繊維分散液Aを得た。この微細セルロース繊維分散液Aの固形分濃度を測定したところ、3.0%であった。
次いで、微細セルロース繊維分散液Aに、ナノプラチナ−シリカ粒子((株)エブリウェアー製、PN−100SP、平均粒子径1000nm)を、微細セルロース繊維分散液Aの固形分100部に対し1部となるように添加した。また、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー系サイズ剤(荒川化学(株)製)を0.2部、アニオン性歩留まり助剤としてパーコール173(アライドコロイド社製)を0.01部添加した。
以上の操作で調製した、微細セルロース繊維とナノプラチナ−シリカ粒子を含有する分散液を、508ナイロンメッシュシート上で厚さが均一になるようにアプリケータ(クリアランス1mm)で表面を均一にした。次いで、メッシュシートの下側から吸引して脱水した。その後、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DEGDME、東邦化学社製、商品名:「ハイソルブMDM」、分子量134、沸点162℃、表面張力28N/m)を、メッシュシート上の湿紙状態のシートに対し、セルロース繊維固形分100部に対して1200部を添加した。次いで、メッシュシートの下側から吸引し、得られた湿紙を、105℃に加熱したシリンダドライヤを用いて、0.2MPaに加圧しながら乾燥させて、壁紙用原紙を得た。
【0032】
<実施例2>
実施例1において、ジエチレングリコールジメチルエーテルを湿紙状態のシートの固形分100部に対して600部を添加した以外は全て実施例1と同様にして、壁紙用原紙を得た。
【0033】
<実施例3>
実施例1において、ジエチレングリコールジメチルエーテルを湿紙状態のシートの固形分100部に対して300部を添加した以外は全て実施例1と同様の方法にして、壁紙用原紙を得た。
【0034】
<実施例4>
実施例1において、マスコロイダーの処理回数を1回にし、平均繊維幅を400nmにした以外は全て実施例1と同様にして、壁紙用原紙を得た。
【0035】
<比較例1>
針葉樹晒クラフトパルプ(王子ホールディングス社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)は550ml)を濃度4.0%になるように水を加え、ディスインテグレーターで離解して、パルプ分散液を得た。この分散液の濃度が約0.2%になるように水を加えて希釈し、ホモミキサーで攪拌してセルロース繊維分散液Bを得た。このセルロース繊維分散液Bの固形分濃度を測定したところ、0.2%であった。
微細セルロース繊維分散液Aの代わりにセルロース繊維分散液Bを用いた以外は実施例1と同様にして、壁紙用原紙を得た。
【0036】
[線熱膨張係数の測定]
各壁紙用原紙を、ASTM D696に準じて測定した。測定結果を表1に示す。
【0037】
[アンモニア吸着試験]
各壁紙用原紙について、アンモニア吸着試験を下記の方法で行った。
得られた壁紙用原紙より、縦横が各々5cmの試験片を作成した。その試験片を、3Lのポリフッ化ビニル製バッグに入れ、ポリフッ化ビニル製バッグを密閉した後、その内部に、アンモニア濃度が100ppmになるようにアンモニアガスを注入した。30分間放置後、バッグ内の空気中のアンモニア濃度を測定した。アンモニア濃度の測定には検知管を用いた。測定結果を表1に示す。
【0038】
[硫化水素吸着試験]
各壁紙用原紙について、硫化水素吸着試験を下記の方法で行った。
得られた壁紙用原紙より、縦横が各々5cmの試験片を作成した。その試験片を、3Lのポリフッ化ビニル製バッグに入れ、ポリフッ化ビニル製バッグを密閉した後、その内部に、硫化水素濃度が100ppmになるように硫化水素ガスを注入した。30分間放置後、バッグ内の空気中の硫化水素濃度を測定した。硫化水素濃度の測定には検知管を用いた。測定結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示すように、壁紙用原紙の比表面積が大きい程、アンモニア吸着効果及び硫化水素吸着効果が高かった。
また、実施例1〜4の壁紙用原紙は、線熱膨張係数が6.3〜6.5ppm/Kの範囲内にあり、温度変化に対して変形しにくいことがわかった。
【0041】
<実施例5>
実施例1において、ナノプラチナ−シリカ粒子の代わりに銀粒子を用いた以外は全て実施例1と同様にして、壁紙用原紙を得た。また、実施例1〜4及び比較例1と同様にして、線熱膨張係数、吸着試験後のアンモニア濃度、吸着試験後の硫化水素濃度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0042】
<実施例6>
実施例2において、ナノプラチナ−シリカ粒子の代わりに銀粒子を用いた以外は全て実施例2と同様にして、壁紙用原紙を得た。また、実施例1〜4及び比較例1と同様にして、線熱膨張係数、吸着試験後のアンモニア濃度、吸着試験後の硫化水素濃度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0043】
<実施例7>
実施例3において、ナノプラチナ−シリカ粒子の代わりに銀粒子を用いた以外は全て実施例3と同様にして、壁紙用原紙を得た。また、実施例1〜4及び比較例1と同様にして、線熱膨張係数、吸着試験後のアンモニア濃度、吸着試験後の硫化水素濃度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0044】
<実施例8>
実施例4において、ナノプラチナ−シリカ粒子の代わりに銀粒子を用いた以外は全て実施例4と同様にして、壁紙用原紙を得た。また、実施例1〜4及び比較例1と同様にして、線熱膨張係数、吸着試験後のアンモニア濃度、吸着試験後の硫化水素濃度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0045】
<比較例2>
比較例1において、ナノプラチナ−シリカ粒子の代わりに銀粒子を用いた以外は全て比較例1と同様にして、壁紙用原紙を得た。また、実施例1〜4及び比較例1と同様にして、線熱膨張係数、吸着試験後のアンモニア濃度、吸着試験後の硫化水素濃度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示すように、壁紙用原紙の比表面積が大きい程、アンモニア吸着効果及び硫化水素吸着効果が高かった。
また、実施例5〜8の壁紙用原紙は、線熱膨張係数が6.4〜6.6ppm/Kの範囲内にあり、温度変化に対して変形しにくいことがわかった。