(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定対象物の接合部の面積の大小で、温度上昇特性のカーブ形状が異なるので、このカーブ形状に基づいて接合部の面積が許容範囲内であるか否かを判定すればよい。
特許文献1に記載された従来技術では、温度上昇特性のカーブ形状で判定する代わりに、必要最小限の接合面積を有している実際のサンプルの温度変移量の所定時間の積(すなわち、温度上昇特性から求められる面積)と、必要最大限の接合面積を有している実際のサンプルの温度変移量の所定時間の積(面積)と、の間に、検査対象の温度変移量の所定時間の積(面積)が存在する場合に、良品と判定している。
なお、特許文献1では、最小限の接合面積を有する測定対象物の飽和温度と、最大限の接合面積を有する測定対象物の飽和温度等が、同一の飽和温度に収束している図が示されているが、接合面積が大きい場合は熱伝導量が多いので飽和温度が低くなる傾向にあり、接合面積が小さい場合は熱伝導量が少ないので飽和温度が高くなる傾向にある。また、同一の物質、同一の接合面積であっても、加熱用レーザを照射する表面状態で異なる飽和温度となる可能性がある。従って、測定対象物のそれぞれで飽和温度が異なることになるので、温度上昇特性のカーブ形状だけでなく、飽和温度の値でも上記の面積が変化する。これでは、カーブ形状からの正確な判定を行うことができない可能性がある。
また特許文献2に記載された従来技術では、温度下降時間を測定しているが、加熱時に飽和温度に達するまでの時間は一般的に数10ms程度であるのに対して、加熱後の温度下降時間は数10秒〜数分程度かかるのが一般的であり、検査時間が非常に長くなるので好ましくない。
また特許文献3に記載された従来技術では、非常に大掛かりな装置で、試料を溶融・浮遊させるものであり、ワイヤボンディングの接合状態の検査には適用できない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、レーザ光にて測定対象物を破壊することなく加熱して測定対象物の温度上昇特性に基づいて測定対象物の状態を判定する方法において、より短時間に判定が可能であり、測定した温度上昇特性のカーブ形状に基づいて、より正確な判定を行うことができる、光学非破壊検査方法及び光学非破壊検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、
本実施の形態に記載の光学非破壊検査方法は、測定対象物を破壊することなく加熱する出力に設定された加熱レーザ波長の加熱用レーザを出射する加熱用レーザ光源と、赤外線を検出可能な少なくとも1つの赤外線検出手段と、前記加熱用レーザ光源を制御するとともに前記赤外線検出手段からの検出信号を取り込む制御手段と、判定するべき測定対象物の状態に対応するパラメータの状態に応じて異なる温度上昇特性のカーブ形状を表す時定数が、前記パラメータの状態に関連付けられた、パラメータ状態−時定数特性が記憶された記憶手段と、を用いた光学非破壊検査方法である。
そして、前記制御手段から前記加熱用レーザ光源を制御して、測定対象物上に設定した測定スポットに向けて加熱用レーザを照射する、加熱用レーザ照射ステップと、前記制御手段にて前記測定スポットから放射される光の中から取り出した所定赤外線波長の赤外線を前記赤外線検出手段を用いて検出する、放射赤外線検出ステップと、前記制御手段にて、前記放射赤外線検出ステップにて検出した検出値と、前記加熱用レーザ照射ステップによる加熱用レーザの照射時間である加熱時間と、に基づいて、加熱時間に応じた前記測定スポットの温度上昇状態である前記温度上昇特性を測定する、温度上昇特性測定ステップと、前記制御手段にて、測定した前記温度上昇特性における加熱開始時点から時間変化に対する温度変化である傾きが所定傾き以下となる飽和温度へと至るまでの前記カーブ形状に基づいた時定数を求め、求めた時定数と、前記記憶手段に記憶されている前記パラメータ状態−時定数特性と、に基づいて、測定対象物の前記パラメータの状態を判定する、判定ステップと、を有する、光学非破壊検査方法である。
【0007】
本実施の形態に記載の光学非破壊検査方法では、測定した温度上昇特性における加熱開始時点から飽和温度へと至るまでのカーブ形状に基づいた時定数と、パラメータ状態−時定数特性と、に基づいて、測定対象物のパラメータの状態を判定する。
例えば測定対象物のそれぞれで温度上昇特性の飽和温度が異なる場合であっても、カーブ形状の時定数と、パラメータ状態−時定数特性と、を用いて判定すれば、飽和温度の違いに影響されることなく、純粋にカーブ形状の違いで測定対象物のパラメータ状態を判定することができるので、より正確な判定を行うことができる。
【0008】
次に、本発明の
第1の発明は、測定対象物を破壊することなく加熱する出力に設定された加熱レーザ波長の加熱用レーザを出射する加熱用レーザ光源と、赤外線を検出可能な少なくとも1つの赤外線検出手段と、前記加熱用レーザ光源を制御するとともに前記赤外線検出手段からの検出信号を取り込む制御手段と、判定するべき測定対象物の状態に対応するパラメータの状態に応じて異なる温度上昇特性のカーブ形状を表す時定数あるいは時定数に関する情報が、前記パラメータの状態に関連付けられた、パラメータ状態−時定数特性が記憶された記憶手段と、を用いた光学非破壊検査方法である。
そして、前記制御手段から前記加熱用レーザ光源を制御して、測定対象物上に設定した測定スポットに向けて加熱用レーザを照射する、加熱用レーザ照射ステップと、前記制御手段にて前記測定スポットから放射される光の中から取り出した所定赤外線波長の赤外線を前記赤外線検出手段を用いて検出する、放射赤外線検出ステップと、前記制御手段にて、前記放射赤外線検出ステップにて検出した検出値と、前記加熱用レーザ照射ステップによる加熱用レーザの照射時間である加熱時間と、に基づいて、加熱時間に応じた前記測定スポットの温度上昇状態である前記温度上昇特性を測定する、温度上昇特性測定ステップと、前記制御手段にて、測定した前記温度上昇特性における加熱開始時点から時間変化に対する温度変化である傾きが所定傾き以下となる飽和温度が、予め設定した正規化飽和温度となるように、前記温度上昇特性を温度方向に圧縮あるいは伸張した正規化温度上昇特性を求め、求めた前記正規化温度上昇特性における加熱開始時点から前記正規化飽和温度に達した所定時間までのカーブ形状に基づいた時定数あるいは時定数に関する情報を求め、求めた時定数あるいは時定数に関する情報と、前記記憶手段に記憶されている前記パラメータ状態−時定数特性と、に基づいて、測定対象物の前記パラメータの状態を判定する、判定ステップと、を有する、光学非破壊検査方法である。
【0009】
この
第1の発明では、測定した温度上昇特性の飽和温度が正規化飽和温度となるように温度上昇特性を加工して正規化温度上昇特性を得る。そして、正規化温度上昇特性における加熱開始時点から正規化飽和温度へと至るまでのカーブ形状に基づいた時定数あるいは時定数に関する情報と、パラメータ状態−時定数特性と、に基づいて、測定対象物のパラメータの状態を判定する。
例えば測定対象物のそれぞれで温度上昇特性の飽和温度が異なる場合であっても、飽和温度を正規化飽和温度に統一し、正規化温度上昇特性のカーブ形状の時定数あるいは時定数に関する情報と、パラメータ状態−時定数特性と、を用いて判定すれば、飽和温度の違いに影響されることなく、純粋にカーブ形状の違いで測定対象物のパラメータ状態を判定することができるので、より正確な判定を行うことができる。
【0010】
次に、本発明の
第2の発明は、上記第1の発明に係る光学非破壊検査方法であって、時定数に関する情報は、前記正規化温度上昇特性における加熱開始時点から前記正規化飽和温度に達した所定時間までのカーブ形状部分の面積である。
【0011】
この
第2の発明では、時定数に関する情報として、正規化温度上昇特性の加熱開始時点から正規化飽和温度に達した所定時間までのカーブ形状部分の面積を用いる。
制御手段を用いて時定数を求めるよりもカーブ形状部分の面積を求めるほうが容易であるので、より容易に測定対象物の前記パラメータの状態を判定することができる。
【0012】
次に、本発明の
第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る光学非破壊検査方法であって、測定対象物は、2つの部材を接合した接合部を含む接合構造部位であり、前記測定スポットは、前記2つの部材における一方の部材の表面に設定されており、前記パラメータの状態は、前記2つの部材の接合部の面積の大きさであり、前記制御手段にて、前記判定ステップを実行することで、前記2つの部材の接合部の面積が許容範囲内であるか否かを判定する。
【0013】
この
第3の発明では、測定対象物のパラメータの状態は、2つの部材の接合部の面積の大きさであり、例えば2つの部材が電極とワイヤである場合、電極とワイヤの接合部の面積が許容範囲内であるか否かを判定するので、電極とワイヤの接合状態の良否の判定を、より適切に行うことができる。
【0014】
次に、本発明の
第4の発明は、上記第1の発明〜第3の発明のいずれか1つに係る光学非破壊検査方法であって、前記制御手段からの出力信号に基づいた画像を表示可能な表示手段を用い、前記制御手段から、前記判定ステップの結果に関する情報を前記表示手段に表示させる。
【0015】
この
第4の発明では、判定ステップの結果に関する情報を表示手段に表示する。
判定結果の良否の表示だけでなく、例えば測定した正規化温度上昇特性と、理想的な面積に相当する正規化温度上昇特性と、許容下限の面積に相当する正規化温度上昇特性と、許容上限の面積に相当する正規化温度上昇特性と、を重ねて表示することで、作業者は、良否の状態だけでなく、理想状態からどれくらい下限側あるいは上限側にずれているか、を容易に認識することができるので、測定対象物の品質のばらつきの管理に役立てることができる。
【0016】
次に、本発明の
第5の発明は、光軸に沿って一方の側から入射された平行光を、焦点位置として測定対象物上に設定した測定スポットに向けて集光して他方の側から出射するとともに、前記測定スポットから放射及び反射されて他方の側から入射された光を、光軸に沿った平行光に変換して一方の側から出射する集光コリメート手段と、測定対象物を破壊することなく加熱する出力に設定された加熱レーザ波長の加熱用レーザを出射する加熱用レーザ光源と、前記加熱用レーザを前記集光コリメート手段の一方の側へと導く加熱用レーザ導光手段と、前記測定スポットから放射された赤外線を検出可能な少なくとも1つの赤外線検出手段と、前記測定スポットから放射されて前記集光コリメート手段の一方の側から出射された平行光の中から所定赤外線波長の赤外線を前記赤外線検出手段へと導く放射赤外線導光手段と、前記加熱用レーザ光源を制御するとともに前記赤外線検出手段からの検出信号を取り込む制御手段と、判定するべき測定対象物の状態に対応するパラメータの状態に応じて異なる温度上昇特性のカーブ形状を表す時定数あるいは時定数に関する情報が、前記パラメータの状態に関連付けられた、パラメータ状態−時定数特性が記憶された記憶手段と、を備える。
そして、前記制御手段が、前記加熱用レーザ光源を制御して、測定対象物上に設定した測定スポットに向けて加熱用レーザを照射する、加熱用レーザ照射ステップと、前記測定スポットから放射される光の中から取り出した所定赤外線波長の赤外線を前記赤外線検出手段を用いて検出する、放射赤外線検出ステップと、前記放射赤外線検出ステップにて検出した検出値と、前記加熱用レーザ照射ステップによる加熱用レーザの照射時間である加熱時間と、に基づいて、加熱時間に応じた前記測定スポットの温度上昇状態である前記温度上昇特性を測定する、温度上昇特性測定ステップと、測定した前記温度上昇特性における加熱開始時点から時間変化に対する温度変化である傾きが所定傾き以下となる飽和温度が、予め設定した正規化飽和温度となるように、前記温度上昇特性を温度方向に圧縮あるいは伸張した正規化温度上昇特性を求め、求めた前記正規化温度上昇特性における加熱開始時点から前記正規化飽和温度に達した所定時間までのカーブ形状に基づいた時定数あるいは時定数に関する情報を求め、求めた時定数あるいは時定数に関する情報と、前記記憶手段に記憶されている前記パラメータ状態−時定数特性と、に基づいて、測定対象物の前記パラメータの状態を判定する、判定ステップと、を実行するように構成された、光学非破壊検査装置である。
【0017】
この
第5の発明では、測定対象物のそれぞれで飽和温度が異なる場合であっても、飽和温度の違いに影響されることなく、純粋にカーブ形状に相当する時定数あるいは時定数に関する情報の違いで測定対象物のパラメータ状態を判定することができるので、より正確な判定を行うことができる光学非破壊検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。
●[測定対象物の例(
図1)]
図1を用いて測定対象物の例について説明する。
図1(A)は、基板90上に設けた各電極92に、径が数10[μm]〜数100[μm]程度のアルミ等のワイヤ93の一方端をワイヤボンディングにて接合し、基板90上のベース91上に接着剤95等にて固定した半導体チップ94の各端子に、ワイヤ93の他方端をワイヤボンディングにて接合した状態の斜視図を示している。
また
図1(B)は、
図1(A)をB方向から見た図である。
本実施の形態の説明では、ワイヤ93と電極92を接合した接合部96を含む接合構造部位97を測定対象物として説明する。
【0020】
電極92にワイヤ93が適切に接合されているか否かを判定するには、接合部96の面積(ワイヤ93と対向している電極92の面と平行な方向の面積)が許容範囲内であるか否かで接合状態の良否を判定すればよい。
そこで、
図1(B)の接合構造部位97の拡大図に示すように、接合構造部位97のワイヤ93の表面に測定スポットSPを設定し、測定スポットSPに加熱用レーザを照射して加熱する。すると、測定スポットSPの温度は徐々に上昇し、測定スポットSPからワイヤ93内及び接合部96を経由して電極92へと熱が伝播される。また測定スポットSPを含む接合構造部位97からは、上昇した温度に応じた赤外線が放射される。
また測定スポットSPの温度は徐々に上昇するが、加熱量と放熱量が一致する飽和温度に達すると、温度の上昇が止まり、加熱を継続してもほぼ一定の温度となる。ここで、接合部96の面積が比較的大きい場合は熱伝導量が多いので、加熱時間に応じた温度の上昇が比較的緩やかで飽和温度は比較的低くなり、接合部96の面積が比較的小さい場合は熱伝導量が少ないので(電極92に伝播される熱が少ない)、加熱時間に応じた温度の上昇が比較的急峻で飽和温度は比較的高くなる。
従って、測定スポットSPに加熱レーザを照射して
図6に示すような温度上昇特性を測定し、温度上昇特性に基づいて、接合部96の面積の大きさを求め、求めた接合部96の面積が許容範囲内であるか否かを判定して接合状態の良否を判定することが可能である。
以降の説明にて、上述した接合状態の良否を判定することが可能な光学非破壊検査装置の構成の例、及び光学非破壊検査方法の詳細について説明する。
【0021】
●[光学非破壊検査装置1の構成の例(
図2)]
図2は光学非破壊検査装置1の構成の例を示している。
図2に示す光学非破壊検査装置1は、集光コリメート手段10、加熱用レーザ光源21、加熱用レーザコリメート手段41、加熱レーザ用選択反射手段11A、第1赤外線検出手段31、第1赤外線用選択反射手段12A、第1赤外線集光手段51、第2赤外線検出手段32、第2赤外線用選択反射手段13A、第2赤外線集光手段52、制御手段50、記憶手段60等にて構成されている。
なお、光学非破壊検査装置の構成は、
図2に示す構成に限定されるものではない。例えば赤外線検出手段を1個にして、反射率測定用のレーザ光源と光センサ等を追加し、反射率に基づいて赤外線検出手段にて検出した検出値を補正する光学非破壊検査装置等を用いることもできる。
【0022】
集光コリメート手段10は、自身の光軸に沿って一方の側から(
図2の例では上方から)入射された平行光を、焦点位置として測定対象物上に設定した測定スポットSPに向けて集光して他方の側から(
図2の例では下方から)出射する。
また集光コリメート手段10は、(焦点位置である)測定スポットSPから放射及び反射されて他方の側から入射された光を、自身の光軸に沿った平行光に変換して一方の側から出射する。
なお集光コリメート手段10は、光を透過させて屈折する集光レンズで構成することも可能であるが、異なる複数の波長の光を扱うので、色収差が発生する集光レンズではあまり好ましくない。そこで、(非球面)反射ミラー10A、10Bにて集光コリメート手段を構成することで、色収差の発生を排除し、広い波長帯に対応させている。
【0023】
加熱用レーザ光源21は、測定対象物を破壊することなく加熱することが可能な出力に調整された、加熱レーザ波長(λa)の加熱用レーザを、制御手段50からの制御信号に基づいて出射する。例えば加熱用レーザ光源21は、半導体レーザである。
加熱用レーザコリメート手段41は、加熱用レーザ光源21の近傍(レーザ出射位置の近傍であって加熱用レーザの光軸上)に配置されて、加熱用レーザ光源21から出射された加熱用レーザを平行光の加熱用レーザLaに変換する。例えば加熱用レーザコリメート手段41は、加熱レーザ波長(λa)の光のみを平行光に変換すればよいので、コリメートレンズでよい。なお加熱用レーザ光源21が平行光の加熱用レーザを出射できるのであれば加熱用レーザコリメート手段41を省略することができる。
加熱レーザ用選択反射手段11Aは、集光コリメート手段10の光軸上に配置されて、加熱用レーザ光源21から出射されて平行光に変換された加熱レーザ波長(λa)の加熱用レーザLaを集光コリメート手段10の一方の側に向けて反射するとともに、測定スポットSPから放射及び反射されて集光コリメート手段10の一方の側から出射された加熱レーザ波長(λa)とは異なる波長の平行光L12を透過する。例えば加熱レーザ用選択反射手段11Aは、加熱レーザ波長(λa)の光を反射し、加熱レーザ波長(λa)以外の波長の光を透過するダイクロイックミラーである。
そして、加熱用レーザコリメート手段41と加熱レーザ用選択反射手段11Aにて加熱用レーザ導光手段が構成されており、加熱用レーザ導光手段は、加熱用レーザ光源21から出射された加熱用レーザを、平行光に変換して集光コリメート手段10の一方の側へと導く。
【0024】
第1赤外線検出手段31は、測定スポットSPから放射された赤外線のエネルギーを検出可能であり、例えば第1赤外線検出手段31は、赤外線センサである。なお第1赤外線検出手段31からの検出信号は制御手段50に取り込まれる。
第1赤外線用選択反射手段12Aは、集光コリメート手段10の一方の側から出射されて加熱レーザ用選択反射手段11Aを透過してきた平行光L12(加熱レーザ波長とは異なる波長の平行光)の経路上に配置されている(この場合、集光コリメート手段10の光軸上に配置されている)。そして第1赤外線用選択反射手段12Aは、集光コリメート手段10の一方の側から出射されて加熱レーザ用選択反射手段11Aを透過してきた平行光L12の中から第1赤外線波長(λ1)の赤外線の平行光L1を第1赤外線検出手段31に向けて反射し、第1赤外線波長(λ1)とは異なる波長の平行光L13を透過する。
従って、第1赤外線検出手段31は、第1赤外線波長(λ1)の赤外線のエネルギーのみを検出する。例えば第1赤外線用選択反射手段12Aは、第1赤外線波長(λ1)の光を反射し、第1赤外線波長(λ1)以外の波長の光を透過するダイクロイックミラーである。
また第1赤外線集光手段51は、第1赤外線検出手段31の近傍(検出位置の近傍)に配置されて、第1赤外線用選択反射手段12Aにて反射された第1赤外線波長(λ1)の平行光L1の赤外線を、第1赤外線検出手段31に向けて集光する。例えば第1赤外線集光手段51は、第1赤外線波長(λ1)の光のみを集光すればよいので、集光レンズでよい。
そして、加熱レーザ用選択反射手段11Aと第1赤外線用選択反射手段12Aと第1赤外線集光手段51にて第1放射赤外線導光手段が構成されており、第1放射赤外線導光手段は、測定スポットSPから放射されて集光コリメート手段10の一方の側から出射された平行光L12の中から第1赤外線波長(λ1)の赤外線を、第1赤外線検出手段31へと導く。
【0025】
第2赤外線検出手段32は、測定スポットSPから放射された赤外線のエネルギーを検出可能であり、例えば第2赤外線検出手段32は、赤外線センサである。なお第2赤外線検出手段32からの検出信号は制御手段50に取り込まれる。
第2赤外線用選択反射手段13Aは、集光コリメート手段10の一方の側から出射されて加熱レーザ用選択反射手段11A及び第1赤外線用選択反射手段12Aを透過してきた平行光L13(加熱レーザ波長及び第1赤外線波長とは異なる波長の平行光)の経路上に配置されている(この場合、集光コリメート手段10の光軸上に配置されている)。そして第2赤外線用選択反射手段13Aは、集光コリメート手段10の一方の側から出射されて加熱レーザ用選択反射手段11A及び第1赤外線用選択反射手段12Aを透過してきた平行光L13の中から第2赤外線波長(λ2)の赤外線の平行光L2を第2赤外線検出手段32に向けて反射し、第2赤外線波長(λ2)とは異なる波長の平行光L14を透過する。なお、透過した平行光L14は不要であるので、例えば光吸収体等に吸収させる。
従って、第2赤外線検出手段32は、第2赤外線波長(λ2)の赤外線のエネルギーのみを検出する。例えば第2赤外線用選択反射手段13Aは、第2赤外線波長(λ2)の光を反射し、第2赤外線波長(λ2)以外の波長の光を透過するダイクロイックミラーである。
また第2赤外線集光手段52は、第2赤外線検出手段32の近傍(検出位置の近傍)に配置されて、第2赤外線用選択反射手段13Aにて反射された第2赤外線波長(λ2)の平行光L2の赤外線を、第2赤外線検出手段32に向けて集光する。例えば第2赤外線集光手段52は、第2赤外線波長(λ2)の光のみを集光すればよいので、集光レンズでよい。
そして、加熱レーザ用選択反射手段11Aと第1赤外線用選択反射手段12Aと第2赤外線用選択反射手段13Aと第2赤外線集光手段52にて第2放射赤外線導光手段が構成されており、第2放射赤外線導光手段は、測定スポットSPから放射されて集光コリメート手段10の一方の側から出射された平行光L12の中から第2赤外線波長(λ2)の赤外線を、第2赤外線検出手段32へと導く。
【0026】
制御手段50はパーソナルコンピュータ等であり、加熱用レーザ光源21を制御して加熱用レーザにて測定スポットSPを加熱しながら第1赤外線検出手段31からの検出信号と第2赤外線検出手段32からの検出信号を取り込み、第1赤外線検出手段31からの検出値と第2赤外線検出手段32からの検出値との比に基づいて測定スポットSPの温度を測定する。なお、温度の測定方法については後述する。
そして制御手段50は、加熱時間に応じた測定スポットの温度上昇状態である温度上昇特性を測定し、測定した温度上昇特性に基づいて測定対象物の状態を判定する。
なお、制御手段50の動作の詳細については後述する。
【0027】
記憶手段60は例えばハードディスク等の記憶装置であり、記憶手段60には、判定するべき測定対象物の状態に対応するパラメータの状態に応じて異なる温度上昇特性のカーブ形状を表す時定数あるいは時定数に関する情報が、パラメータの状態に関連付けられたパラメータ状態−時定数特性(
図7、
図12参照)が記憶されている。
例えば
図7の例に示すパラメータ状態−時定数特性では、パラメータの状態は、接合部の面積の大きさであり、この接合部の面積の大きさに応じて、温度上昇特性のカーブ形状に基づいた時定数が関連付けられている。
【0028】
そして制御手段50にて、光学非破壊検査装置1を用いて温度上昇特性を測定し、測定した温度上昇特性における加熱開始時点から時間変化に対する温度変化である傾きが所定傾き以下となる飽和温度へと至るまでのカーブ形状に基づいた時定数あるいは時定数に関する情報を求める。そして制御手段50にて、求めた時定数あるいは時定数に関する情報と、記憶手段に記憶されているパラメータ状態−時定数特性と、に基づいて、測定対象物のパラメータの状態(この場合、接合部の面積)を求め、求めた面積が許容範囲内であるか否かを判定する。
以下、制御手段50による測定対象物の状態の判定方法の手順を説明する。
【0029】
●[光学非破壊検査装置の処理手順の第1の実施の形態(
図3〜
図7)]
次に
図3に示すフローチャートを用いて、
図2に示す光学非破壊検査装置1の制御手段50の処理手順の第1の実施の形態について説明する。
図3に示す処理は、実際の接合構造部位97の測定スポットの検査を行う際、制御手段50にて実行される。
ステップS10では、制御手段50は、加熱用レーザ光源を制御して、加熱用レーザ光源から加熱用レーザを出射し、ステップS15に進む。加熱用レーザは測定スポットへと導光され、測定スポットから放射された赤外線は第1赤外線検出手段及び第2赤外線検出手段へと導光される。
なお、ステップS10は、制御手段から加熱用レーザ光源を制御して、測定対象物上に設定した測定スポットに向けて加熱用レーザを照射する、加熱用レーザ照射ステップに相当する。
【0030】
ステップS15にて、制御手段50は、第1赤外線検出手段からの検出信号に基づいた第1赤外線波長(λ1)の赤外線のエネルギーの検出値と、第2赤外線検出手段からの検出信号に基づいた第2赤外線波長(λ2)の赤外線のエネルギーの検出値と、ステップS10にて加熱用レーザの照射を開始してからの時間(加熱時間)と、を取り込んで、ステップS20に進む。
なお、ステップS15は、制御手段にて、測定スポットから放射される光の中から取り出した所定赤外線波長(この場合、第1赤外線波長(λ1)と第2赤外線波長(λ2))の赤外線を、赤外線検出手段(この場合、第1赤外線検出手段と第2赤外線検出手段)を用いて検出する、放射赤外線検出ステップに相当する。
【0031】
ステップS20にて、制御手段50は、第1赤外線検出手段からの検出値と、第2赤外線検出手段からの検出値と、の比に基づいて、加熱時間に対応する測定スポットの温度を求め、ステップS25に進む。
なお、ステップS20は、制御手段にて、放射赤外線検出ステップにて検出した検出値と、加熱用レーザ照射ステップによる加熱用レーザの照射時間である加熱時間と、に基づいて、加熱時間に応じた測定スポットの温度上昇状態である温度上昇特性を測定する、温度上昇特性測定ステップに相当する。
【0032】
例えば
図4は、照射された光を完全に吸収及び放射する黒体の温度が各温度(M1、M2・・M6)の場合において、黒体から放射される赤外線の波長(横軸)と、各波長の赤外線のエネルギー(縦軸)の関係を示す赤外線放射特性の例を示している。
例えば測定スポットが黒体である場合であって、第1赤外線波長(λ1)の位置が
図4中に示す(λ1)の位置であり、第2赤外線波長(λ2)の位置が
図4中に示す(λ2)の位置であるとする。
そして制御手段50は、加熱時間T1のタイミングで取り込んだ第1赤外線検出手段にて検出した第1赤外線波長(λ1)の赤外線エネルギーの検出値がE1Aであり、第2赤外線検出手段にて検出した第2赤外線波長(λ2)の赤外線エネルギーの検出値がE2Aであった場合、検出値の比であるE1A/E2Aと、温度・2波長比特性(
図5)の「E(λ1)/E(λ2)」特性より、測定スポットの温度を求め、この場合はM5[℃]であると求める。なお2波長比は、異なる2波長の赤外線のエネルギーの比である。
なお
図5の例に示す温度・2波長比特性は、予め記憶手段60に記憶されている。
検出値の比を用いることで、制御手段は、測定スポットの反射率(放射率)の影響を受けることなく、正しい測定スポットの温度を求めることができる。
なお、加熱時間T2、T3、T4のタイミングで取り込んだ(第1赤外線波長の赤外線エネルギー、第2赤外線波長の赤外線エネルギー)が、それぞれ(E1B、E2B)、(E1C、E2C)、(E1D、E2D)であった場合、温度・2波長比特性より、加熱時間T2、T3、T4のタイミングのそれぞれの温度は、M4、M3、M2であることがわかる。
そして制御手段は、照射開始後の時間(加熱時間に相当)と、当該時間に対応する温度から、
図6の例に示す温度上昇特性を求める。
【0033】
ステップS25に進んだ場合、制御手段50は、測定終了タイミングであるか否かを判定する。制御手段50は、求めた温度が飽和温度に達していると判定した場合、測定終了タイミングであると判定する。例えば制御手段50は、今回のステップS20にて求めた温度が、前回のステップS20にて求めた温度に対して、所定値以下の温度上昇状態であった場合、飽和温度に達したと判定する。なお飽和温度は、
図6に示す実温度上昇特性の傾きが所定値以下となった場合であって、温度がほぼ一定となった状態の温度である。
制御手段50は、飽和温度に達して測定終了タイミングであると判定した場合(Yes)はステップS30に進み、測定終了タイミングでないと判定した場合(No)はステップS15に戻る。なお、ステップS15に戻る際、所定時間(例えば1ms程度)待ってから戻ると、所定時間間隔で温度を求めることができるので、より好ましい。
【0034】
ステップS30に進んだ場合、制御手段50は、加熱用レーザ光源を制御して、加熱用レーザの照射を停止し、ステップS35に進む。
ステップS35にて制御手段50は、ステップS20にて求めた温度と加熱時間による温度上昇特性(
図6)における加熱開始時点から飽和温度(時間変化に対する温度変化である傾きが所定傾き以下となる温度)へと至るまでのカーブ形状に基づいた時定数を求める。なお、時定数の求め方は特に限定しないが、例えば各時定数のカーブ形状を記憶手段60に記憶しておき、一致あるいは最も近似する時定数のカーブ形状を抽出して時定数を求める(もちろん、他の方法で時定数を求めてもよい)。そして制御手段50は、求めた時定数と、記憶手段60に予め記憶されているパラメータ状態−時定数特性(
図7参照)と、に基づいて、パラメータの状態(接合部の面積の大きさ)を求める。
ここで、パラメータ状態−時定数特性(
図7)には、接合部の面積の大きさ(パラメータの状態)に、時定数が関連付けられている。
図7に示す例は、温度上昇特性のカーブ形状の時定数がA1であった場合、制御手段50は、接合部の面積の大きさ=S1であると求めることを示している。
そして制御手段50は、求めた接合部の面積(パラメータの状態)が許容範囲内であれば接合状態が良好であると判定し、求めた接合部の面積(パラメータの状態)が許容範囲から外れている場合は接合状態が不良であると判定する。また、許容範囲内であるか否かを判定するための閾値は、予め記憶手段60に記憶されている。
なお、ステップS35は、判定ステップに相当する。
【0035】
ステップS40にて制御手段50は、判定ステップ(ステップS35)の結果に関する情報を、表示手段に表示して処理を終了する。なお、表示手段は、制御手段からの出力信号に基づいた画面を表示するものであり、例えばモニタである。
また、画面の表示の例については後述する。
【0036】
以上に説明した処理手順では、温度上昇特性のカーブ形状の時定数に基づいてパラメータの状態(接合部の面積)を判定しており、飽和温度の違いにかかわらずカーブ形状の違いで判定しているので、より正確な判定を行うことができる。
なお、以上に説明した処理手順を実施することで、測定対象物(接合構造部位97)のパラメータの状態(接合部の面積の大きさ)、または2つの部材(ワイヤ93と電極92)の接合部の面積が許容範囲内であるか否か、を制御手段にて判定する光学非破壊検査装置を構成することも、もちろん可能である。
【0037】
●[光学非破壊検査装置の処理手順の第2の実施の形態(
図8〜
図12)]
以上に説明した第1の実施の形態の処理手順では、
図3におけるステップS35(判定ステップ)において、測定した温度上昇特性のカーブ形状から時定数を求めたが、時定数を求める処理にやや手間がかかる。
以下に説明する第2の実施の形態の処理手順では、時定数の代わりに、測定した温度上昇特性を正規化して時定数に関する情報を求めることで、接合部の面積を求める。
接合部の面積の大きさに応じて、温度上昇特性のカーブ形状及び飽和温度が異なることを既に説明したが、それぞれの測定対象物で温度上昇特性の飽和温度が異なっている状態では、カーブ形状の違いがわかりにくい。なお、接合部の面積の大きさの違いで、カーブ形状は変化するが、飽和温度は、接合部の面積の大きさだけでなく、測定スポットの表面状態(凹凸状態等)等でも変化するので、飽和温度の違いで良否判定するのは好ましくなく、カーブ形状の違いのみで良否判定することが好ましい。
そこで、以下に説明する処理手順にて、飽和温度の違いを排除し、カーブ形状の違いのみにて良否判定を行う。
【0038】
第2の実施の形態の処理手順では、第1の実施の形態のステップS35(判定ステップ)の処理を、以下のように変更する。
ステップS35にて制御手段50は、ステップS20にて求めた温度と加熱時間による温度上昇特性(
図6)における飽和温度が、予め設定した正規化飽和温度となるように、温度方向において圧縮あるいは伸張するように加工して正規化温度上昇特性を求める(なお、時間軸方向については特に加工しない)。
例えば、正規化飽和温度を、接合部の面積が理想サイズである測定対象物の温度上昇特性における飽和温度に設定し、正規化飽和温度を記憶手段60に記憶しておく。
そして制御手段50は、測定した温度上昇特性の飽和温度が、正規化飽和温度よりも高い場合は、
図8に示すように、測定した温度上昇特性の飽和温度が正規化飽和温度と一致するように、温度上昇特性を温度方向に圧縮して正規化温度上昇特性を得ることができる。
また制御手段50は、測定した温度上昇特性の飽和温度が、正規化飽和温度よりも低い場合は、
図9に示すように、測定した温度上昇特性の飽和温度が正規化飽和温度と一致するように、温度上昇特性を温度方向に伸張して正規化温度上昇特性を得ることができる。
【0039】
図10は、接合部の面積が理想サイズの測定対象物の温度上昇特性を正規化した正規化理想温度上昇特性と、接合部の面積が許容下限の測定対象物の温度上昇特性を正規化した正規化下限温度上昇特性と、接合部の面積が許容上限の測定対象物の温度上昇特性を正規化した正規化上限温度上昇特性と、を重ねて表示した例を示している。
このように、飽和温度を正規化飽和温度に一致させる正規化を行うことで、接合部の面積の大きさの違いを、加熱開始(時点)から正規化飽和温度に達するまでのカーブ形状の違いのみで表すことができる。
この正規化温度上昇特性のカーブ形状から時定数を求めてもよいが、面積を求めるほうが、より容易である。面積の違いはカーブ形状の違いとして表れている。
そこで、制御手段50にて、
図11に示すように、加熱開始時点から正規化飽和温度に達した所定時間TSまでの面積SS1を求める。
【0040】
記憶手段60には、接合部の面積の大きさ(パラメータの状態)に、正規化温度上昇特性のカーブ形状部分の面積SS1(時定数に関する情報)が関連付けられたパラメータ状態−時定数特性(
図12参照)が、予め記憶されている。
そして制御手段50は、求めたカーブ形状の面積SS1(時定数に関する情報)と、記憶手段60に予め記憶されているパラメータ状態−時定数特性(
図12参照)と、に基づいて、パラメータの状態(接合部の面積の大きさ)を求める。
図12に示す例は、正規化温度上昇特性の加熱開始時点から所定時間TSまでの面積がSS1であった場合、制御手段50は、接合部の面積の大きさ=S1であると求めることを示している。
そして制御手段50は、求めた接合部の面積(パラメータの状態)が許容範囲内であれば接合状態が良好であると判定し、求めた接合部の面積(パラメータの状態)が許容範囲から外れている場合は接合状態が不良であると判定する。また、許容範囲内であるか否かを判定するための閾値は、予め記憶手段60に記憶されている。
【0041】
以上に説明した第2の実施の形態の処理手順では、正規化温度上昇特性のカーブ形状の時定数に関する情報(この場合、カーブ形状部分の面積)に基づいてパラメータの状態(接合部の面積)を判定しており、飽和温度の違いにかかわらずカーブ形状の違いで判定しているので、より正確な判定を行うことができる。なお、時定数に関する情報は、カーブ形状部分の面積に限定されず、時定数から特定されるものであればよい。例えば
図11に示すように、カーブ形状部分内の所定時間(TA)における温度の値(MA)等であってもよい。
このように、時定数に関する情報は、正規化温度上昇特性における加熱開始時点から正規化飽和温度に達した所定時間TSまでのカーブ形状部分に基づいている。
【0042】
また、第2の実施の形態では、時定数の代わりに時定数に関する情報を用いて測定対象物のパラメータの状態を判定させたが、第1の実施の形態と同様に時定数を求めて測定対象物のパラメータの状態を判定させるようにしてもよい。この場合、パラメータ状態−時定数特性は、第1の実施の形態と同様である。
なお、以上に説明した処理手順を実施することで、測定対象物(接合構造部位97)のパラメータの状態(接合部の面積の大きさ)、または2つの部材(ワイヤ93と電極92)の接合部の面積が許容範囲内であるか否か、を制御手段にて判定する光学非破壊検査装置を構成することも、もちろん可能である。
【0043】
●[判定結果に関する情報の表示(
図13)]
なお、
図3のフローチャートにおけるステップS40の表示の例を
図13に示す。
図13に示す例は、制御手段50の表示手段50Gの画面50Mに、制御手段の判定結果に関する情報を表示した例を示している。
この例では、判定結果は「良好」であり、接合部の面積が、上限面積120、理想面積100、下限面積80である場合において、温度上昇特性の時定数とパラメータ状態−時定数特性、あるいは正規化温度上昇特性の時定数に関する情報とパラメータ状態−時定数特性、から求めた測定対象物の接合部の面積が、110であった場合を示している。
作業者は、この数字(この場合、110)を見ることで、測定対象物の状態は許容範囲に収まってはいるが、上限側に少しずれていると容易に判断することができるので、接合面積がやや小さくなるように接合用の装置を調整して理想面積に近づけるようにすることが容易であり、品質管理を行う際に非常に便利である。
また
図13の例では、画面50Mの一部に、測定対象物の正規化温度上昇特性(画面50M中の実線)と、正規化下限温度上昇特性(この場合、面積80の特性であり、画面50M中の一点鎖線)と、正規化上限温度上昇特性(この場合、面積120の特性であり、画面50M中の二点鎖線)と、正規化理想温度上昇特性(この場合、面積100の特性であり、画面50M中の点線)と、を重ねた温度上昇特性グラフも表示した例を示している。この温度上昇特性グラフを見るだけでも、作業者は、測定対象物の状態は許容範囲に収まってはいるが、上限側に少しずれていると容易に判断することができるので、接合面積がやや小さくなるように接合用の装置を調整して理想面積に近づけるようにすることが容易であり、品質管理を行う際に非常に便利である。
【0044】
以上、本実施の形態にて説明した光学非破壊検査装置は、加熱用レーザにて加熱を開始してから飽和温度に達するまでの数10ms程度の期間の温度上昇特性を用いて測定対象物の状態を判定するので、加熱後の放熱状態で判定する場合(数10秒〜数分程度)と比較して、非常に検査時間が短い。
また、ワイヤボンディング個所の接合の良否判定に利用することが可能であり、作業者による目視の検査や、抜き取りサンプルの破壊検査等と比較して、より高い信頼性で検査することができる。
また、各温度上昇特性の飽和温度がばらばらであっても、温度上昇特性のカーブ形状の時定数あるいは正規化温度上昇特性のカーブ形状の時定数に関する情報と、パラメータ状態−時定数特性と、に基づいて、飽和温度の違いに影響されずにカーブ形状の違いから、より正確にパラメータの状態(接合部の面積)を求めることができる。
また、温度上昇特性を温度方向に圧縮または伸張して正規化温度上昇特性を得ることで、時定数よりも比較的容易に求めることができる「時定数に関する情報」を用いて、より容易にパラメータの状態(接合部の面積)を求めることができる。
【0045】
本発明の光学非破壊検査方法及び光学非破壊検査装置、の処理手順、構成、構造、外観、形状等は、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
なお、本実施の形態にて説明した赤外線放射特性(
図4)の例と、この赤外線放射特性中に示した第1赤外線波長(λ1)、第2赤外線波長(λ2)の位置は、ひとつの例であり、これに限定されるものではない。
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)、AとCの間にBがあるという表現(A<B<C)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。