(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ばねよりなり、前記第一の係合部材と前記第二の係合部材を相互に係合させる方向に前記第一の係合部材または第二の係合部材を付勢する係合付勢部材をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の開閉装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、モータやギアを用いて自動開閉装置を構成する場合、部品点数が多くなり、開閉装置の構築に要するコストが高くなってしまう。また、複雑な機構を有することにより、故障が生じる可能性が高くなる。例えば、モータで開閉運動が駆動されている最中に、逆方向への手動操作が行われると、ギアが破損する可能性がある。特許文献2のような保護装置を用いれば、手動操作による故障を低減することはできるが、ますます自動開閉装置の構造が複雑になり、製造コストも上昇する。
【0005】
例えばトーションばねを使用することで、モータやギアを用いずに、便座や便蓋に直接手を触れずにそれらを開閉する便蓋・便座開閉装置を構築することが考えられる。しかし、トーションばねの回転力が開方向に常に印加されるため、単純にトーションばねを設けるだけでは、負荷が加えられない状態では、便座や便蓋が開いた状態に保たれることになる。これは、便座や便蓋を閉状態に維持する用途に対しては、適していない。例えば、便座の支持部にトーションばねを設けておけば、便蓋を閉めた状態においては、便蓋に働く重力によって便座を閉状態に保ち、便蓋を開けると便座も自動的に跳ねあげられるようにすることが可能である。しかし、便座を便蓋と独立に開閉させたい場合や、便蓋の支持部にこの構成を適用することは、困難である。
【0006】
本発明の課題は、便座や便蓋のような被開閉部材の開閉運動を駆動する開閉装置において、モータおよびギアによらない簡素な構成によって、使用者が被開閉部材に直接接触せずに被開閉部材の開動作を駆動可能であり、かつ負荷を加えなくても被開閉部材を閉じた状態に維持できる開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる開閉装置は、内部に空間を有する収容部材と、被開閉部材が固定され、少なくとも一部が前記収容部材内に収容され、前記収容部材に対して回転することで前記被開閉部材を開閉させる開閉軸部材と、ばねよりなり、前記収容部材に収容され、前記開閉軸部材を前記被開閉部材の開方向に付勢する回転付勢部材と、前記開閉軸部材に形成された第一の係合部材と、前記被開閉部材が閉じられた状態において前記第一の係合部材と係合し、前記収容部材に対する前記開閉軸部材の回転を規制する第二の係合部材と、を有することを要旨とする。
【0008】
ここで、前記第一の係合部材は、前記開閉軸部材の前記収容部材に収容された部位の壁面に形成され、前記第二の係合部材は、前記収容部材の内壁面に形成されているとよい。
【0009】
そして、前記回転付勢部材は、トーションばねであることが好ましい。
【0010】
また、前記開閉装置は、ばねよりなり、前記第一の係合部材と前記第二の係合部材を相互に係合させる方向に前記第一の係合部材または第二の係合部材を付勢する係合付勢部材をさらに有するとよい。
【0011】
さらに、前記第一の係合部材および第二の係合部材の一方は部分球状の突起であり、他方は部分球状の凹部であり、前記係合付勢部材は、前記第一の係合部材と第二の係合部材を結ぶ方向と平行に軸を配置されたコイルばねであることが好適である。
【0012】
そして、前記開閉装置は、前記被開閉部材の外側から操作することで、前記係合付勢部材を付勢方向と逆に変形させ、前記第一の係合部材と前記第二の係合部材との間の係合を解除することができる操作部材をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記発明にかかる開閉装置によると、回転付勢部材によって被開閉部材が開方向に付勢されているので、第一の係合部材と第二の係合部材の間の係合を解除することで、使用者が被開閉部材を手で直接操作しなくても、被開閉部材の開運動が自動的に駆動される。一方、第一の係合部材と第二の係合部材を係合させておけば、これらの係合が収容部材に対する開閉軸部材の回転運動を阻止するので、外力による負荷を印加しておくことなく、被開閉部材を閉状態に維持することができる。被開閉部材の開運動は、ばねよりなる回転付勢部材のみによって駆動されるので、開運動の駆動を目的として、モータおよびギアを開閉装置に備える必要がない。一般に、モータやギアと比較して、ばねには故障が生じにくく、特に、被開閉部材に手動操作が加えられた場合にも、不可逆的な損傷は発生しない。
【0014】
ここで、第一の係合部材が、開閉軸部材の収容部材に収容された部位の壁面に形成され、第二の係合部材が、収容部材の内壁面に形成されている場合には、開閉装置全体をコンパクトに形成することができる。
【0015】
そして、回転付勢部材が、トーションばねである場合には、簡素で低コストの構成で、被開閉部材の開方向に開閉軸部材を付勢することができる。
【0016】
また、開閉装置が、ばねよりなり、第一の係合部材と第二の係合部材を相互に係合させる方向に第一の係合部材または第二の係合部材を付勢する係合付勢部材をさらに有する場合には、被開閉部材の閉状態での保持が一層強固に行われるようになる。
【0017】
さらに、第一の係合部材および第二の係合部材の一方が部分球状の突起であり、他方が部分球状の凹部であり、係合付勢部材が、第一の係合部材と第二の係合部材を結ぶ方向と平行に軸を配置されたコイルばねである場合には、コイルばねが第一の係合部材を第二の係合部材に対して押し付けるので、両者が係合して被開閉部材が閉じられた状態が、強固に維持される。また、コイルばねを圧縮することで、容易に第一の係合部材と第二の係合部材の間の係合が解除され、被開閉部材の開動作が駆動される。
【0018】
そして、開閉装置が、被開閉部材の外側から操作することで、係合付勢部材を付勢方向と逆に変形させ、第一の係合部材と第二の係合部材との間の係合を解除することができる操作部材をさらに有する場合には、使用者が操作部材を操作することで、容易に第一の係合部材と第二の係合部材との間の係合を解除し、被開閉部材を開状態とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態にかかる開閉装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
本発明の一実施形態にかかる開閉装置は、便器に固定される便座装置において、便座および便蓋を開閉可能に取り付けるのに好適に使用される。
図1に示すように、便座装置90においては、温水洗浄装置等、構成機器を収容する本体部93の前方に、便蓋91と便座92が取り付けられている。便蓋91は、本発明の一実施形態にかかる便蓋開閉装置1を介して、本体部93に対して回動により開閉可能に取り付けられている。便座92も同様に、本発明の一実施形態にかかる便座開閉装置1’を介して、本体部93に対して回動により開閉可能に取り付けられている。本体部93が、便器(不図示)の上面に固定されることにより、便蓋91および便座92が便器に対して回動可能に取り付けられた状態となる。なお、便蓋91を例とすると、開閉可能な範囲の中で、
図1のように完全に閉方向に回動した状態を(全)閉状態とし、
図2のように完全に開方向に回動した状態を(全)開状態とする。
【0022】
以下、便蓋開閉装置1について、
図1、
図2のA−A断面を示した
図3および
図4に基づき、その構成を説明する。説明は省略するが、便座開閉装置1’も同様の構成を有する。
図3は、便蓋91を
図1のように全閉状態とした際の便蓋開閉装置1の状態を示し、
図4は、便蓋91を
図2のように全開状態とした際の便蓋開閉装置1の状態を示している。
【0023】
便蓋開閉装置1は、収容部材2と、開閉軸部材3と、トーションばね(回転付勢部材)4と、コイルばね(係合付勢部材)5と、操作部材6とを有してなる。
【0024】
収容部材2は、第一の収容部材2aと第二の収容部材2bが接合されてなる。収容部材2の内部には、開口を有する収容空間2dが形成され、収容空間2dには、トーションばね4と、コイルばね5、そして開閉軸部材3の一部が収容されている。収容部材2の内壁面(収容空間2dの壁面)には、係合凹部(第二の係合部材)8,8が略半球状の凹部として形成されている。本実施形態においては、係合凹部8,8は、開閉軸部材3の中心軸Cを挟んで対向する位置に2つ形成されている。収容部材2は、便座装置90の本体部93に固定される。
【0025】
開閉軸部材3には、便蓋91(
図3,4では不図示)が固定されている。開閉軸部材3の一部は、収容部材2の収容空間2dの開口を通って、収容空間2dに収容されている。そして、開閉軸部材3は、収容部材2の収容空間2dに一部を収容された状態のまま、収容部材2に対して、中心軸Cのまわりに、回転可能となっている。これによって、便蓋91は、開閉軸部材3の中心軸Cを回動軸として、便座装置90の本体部93に対して回動可能となっている。さらに、開閉軸部材3は、収容部材2に対して、中心軸Cに沿う方向に進退運動可能となっている。
【0026】
開閉軸部材3の収容空間2dに収容された部位には、トーションばね保持部3aと、コイルばね収容部3bと、係合突起(第一の係合部材)7,7が形成されている。トーションばね保持部3aは、トーションばね4を構成する線材の外径と略等しい内径を有する円筒状の中空部を有し、トーションばね4の一端である変位端4aをその中空部に収容している。トーションばね保持部3aの中空部の壁面とトーションばね4の変位端4aとの間の摩擦により、変位端4aの回転方向の変位と、開閉軸部材3の収容部材2に対する回転が相互に連動しており、一方の運動が起こると、それによって他方の運動が駆動される。
【0027】
コイルばね収容部3bは、中空状に形成されて中心軸C上に配置され、中空部にコイルばね5全体を収容している。コイルばね収容部3bには、押圧面3cが形成されており、押圧面3cによってコイルばね5を中心軸Cに沿って押圧し、圧縮することができる。
【0028】
係合突起7,7は、収容部材2に形成された係合凹部8,8と相補的な略半球状の突出形状に形成され、便蓋91を
図1のように閉状態とした際の収容部材2と開閉軸部材3の相対配置において、係合凹部8,8と対向する位置に配置されている。これにより、便蓋91を閉状態とした時に、係合突起7,7と係合凹部8,8が相互に係合することができる。
【0029】
さらに、開閉軸部材3は、押圧面3cを介してコイルばね収容部3bの反対側に、中空の操作部材収容部3dを有している。操作部材収容部3dの中空部には、操作部材6が挿入されている。
【0030】
トーションばね4は、その中心軸を開閉軸部材3の中心軸C上に配置されて、収容部材2の内部に収容されている。トーションばね4の変位端4aとは反対側の端部(不図示)は、収容部材2に固定されている。変位端4aは、前述のように、開閉軸部材3のトーションばね保持部3aに保持され、変位端4aの変位と収容部材2に対する開閉軸部材3の回転が、相互に連動されている。つまり、トーションばね4の復元力によって変位端4aが中心軸Cのまわりに回転すると、開閉軸部材3(および便蓋91)の中心軸Cまわりの回転が駆動され、一方、開閉軸部材3(および便蓋91)が外力によって中心軸Cのまわりに回転されると、変位端4aが中心軸Cのまわりに回転して変位される。トーションばね4は、開閉軸部材3を介して、便蓋91を開方向に付勢している。トーションばね4の中心には、開閉軸部材3のコイルばね収容部3bが挿通されている。
【0031】
コイルばね5は、その中心軸を開閉軸部材3の中心軸C上に配置されて、開閉軸部材3のコイルばね収容部3bに収容されている。コイルばね5は、コイルばね収容部3bに加え、収容部材2の底面2cに突出形成された位置決め部2eによって位置決めされている。開閉軸部材3を、収容部材2内部に深く挿入する方向(方向D1)に並進運動させると、開閉軸部材3の押圧面3cによって、コイルばね5が押圧され、押圧面3cと収容部材2の底面2cとの間でコイルばね5が圧縮される。便蓋91が全閉状態にあるとき、コイルばね5は、自然長よりも圧縮された状態にあり、押圧面3cを介して、開閉軸部材3を収容部材2から脱出させる方向(方向D2)に付勢している。これにより、開閉軸部材3に設けられた係合突起7,7が、収容部材2に設けられた係合凹部8,8に向かって押し付けられている。
【0032】
操作部材6は、柱状の軸部6aと、軸部6aの端部に結合された略円盤状のボタン部6bを有する。軸部6aは、ボタン部6bと反対側から開閉軸部材3の操作部材収容部3dに挿入されている。ボタン部6bを方向D1に押しこむことで、ボタン部6bと反対側の軸部6aの端面が開閉軸部材3の押圧面3cを押し、これによってコイルばね5を圧縮することができる。操作部材6の少なくともボタン部6b(および開閉軸部材3の操作部材収容部3dの一部)は、便蓋91の外側に突出して設けられており、使用者が便蓋91の外側からボタン部6bを押すことができる。
【0033】
図1および
図3のように、便蓋91が全閉状態にあるとき、収容部材2に対する開閉軸部材3の回転位置は、係合突起7,7と係合凹部8,8の位置が揃うものとなっている。そして、コイルばね5が自然長よりも圧縮され、開閉軸部材3が方向D2に付勢されていることにより、係合突起7,7が係合凹部8,8に押し付けられた状態で、係合突起7,7と係合凹部8,が係合している。トーションばね4は、巻き込み方向に変形されている。この変形されたトーションばね4の復元力により、開閉軸部材3およびそれに結合された便蓋91が開方向に付勢されている。しかし、係合突起7,7が係合凹部8,8に係合され、かつコイルばね5によってその係合が強固に保持されているので、開閉軸部材3と収容部材2の間の相対回転が規制されており、実際に便蓋91が開けられることはなく、閉状態が保持される。
【0034】
この状態から、操作部材6のボタン部6bを方向D1に押し込むと、軸部6aが開閉軸部材3の押圧面3cを押し、コイルばね5を一層圧縮するとともに、開閉軸部材3全体を収容部材2に対して方向D1に並進運動させる。この開閉軸部材3の並進運動に伴い、係合突起7,7が係合凹部8,8から脱出され、両者の間の係合が解除される。これにより、開閉軸部材3の収容部材2に対する回転の規制が解除され、トーションばね4の変位端4aが、復元力によって、巻き込み方向と反対側、つまり便蓋91の開方向に変位する。このトーションばね4の変位端4aの変位によって、開閉軸部材3が収容部材2に対して回転され、開閉軸部材3に結合された便蓋91が開方向に回動される。
【0035】
トーションばね4の変形が解消される状態にまで変位端4aが回転されると、便蓋91の開方向への運動が止まり、
図2および
図4に示した全開状態となる。ボタン部6bを押していた手等を離すと、コイルばね5の復元力により、開閉軸部材3が方向D2に押し戻されるが、収容部材2に対する開閉軸部材3の回転によって、便蓋91が閉状態にあったときから係合突起7,7と係合凹部8,8の位置関係が変化しており、それらはもはや係合可能な回転位置にない。よって、便蓋91は全開状態に維持される。この状態では、収容部材2と開閉軸部材3の間には、係合突起7,7の突出高さに等しい間隙Gが形成されており、コイルばね5は間隙Gの分だけ
図3の全閉状態よりも圧縮されている。
【0036】
なお、ボタン部6bの操作によらなくても、直接便蓋91を手でつかむ等して、便蓋91に外力を及ぼすことでも、その外力がトーションばね4の変位端4aを変位させるのに十分大きければ、全閉状態にある便蓋91を開けることができる。この場合も、トーションばね4の変形が解消される状態まで便蓋91を回動させると、便蓋開閉装置1は
図4に示した状態となる。
【0037】
図2,4の全開状態から便蓋91を閉めるには、使用者の手等によって便蓋91に前方に回動させる方向の力を加えればよい。すると、便蓋91に結合されている開閉軸部材3が回転し、それに連動して、トーションばね4の変位端4aが巻き込み方向に変位される。開閉軸部材3は、コイルばね5の復元力によって方向D2に付勢されているので、開閉軸部材3の回転によって係合突起7,7と係合凹部8,8の回転位置が合うと、係合突起7,7が係合凹部8,8に嵌まり込み、両者の間に係合状態が形成され、便蓋91が全閉状態においてロックされる。
【0038】
以上のように、本便蓋開閉装置1においては、トーションばね4の復元力により、開閉軸部材3およびそれに結合された便蓋91が開方向に付勢されている。そして、係合突起7,7と係合凹部8,8の間の係合によって、収容部材2に対する開閉軸部材3の回転が規制されている。これらの機構を備えることにより、便蓋91を押さえておく等、外力による負荷を便蓋91に与えなくても、便蓋91を全閉状態に維持することができる。また、便蓋91に直接手を触れなくても、ボタン部6bを押すワンタッチ操作のみによって、係合凹部8,8と係合突起7,7の間の係合を解除し、便蓋91を開けることができる。便蓋91に手を触れずに便蓋91を開けられることは、便蓋91の操作において、衛生性を高める。なお、閉操作は手動にて行うことになるが、開操作に比べ、手動操作時の便蓋91との接触の程度は小さい。
【0039】
さらに、便蓋開閉装置1においては、コイルばね5の働きにより、係合突起7,7と係合凹部8,8の間の係合状態が強固に保持され、便蓋91を全閉状態においてロックすることができる。便蓋91を全閉状態に維持することは、清潔感の向上、暖房式便座の保温、乳幼児の転落防止等の観点から重要である。
【0040】
以上のようなワンタッチ操作による開運動駆動機構と、全閉状態でのロック機構は、係合突起7,7と係合凹部8,8による係合構造を備えた収容部材2と開閉軸部材3の構成と、トーションばね4およびコイルばね5の2種のばねの働きとによって実現されている。これらは、いずれも単純な形状と動作原理を有する部材であり、モータやギア等を使用した複雑な開閉装置に比べ、安価に製造することができるうえ、故障が生じる可能性も低い。例えば、モータやギアを使用する場合には、自動開閉動作中に逆向きの操作が外力によって行われると、ギアの破損等の故障が生じる可能性があるが、本便蓋開閉装置1においては、上記のように、トーションばね4の変位端4aを変化させられるだけの外力さえ与えれば、構成部材に無理な負荷を与えることなく、手動操作によっても便蓋91を開けることができる。よって、自動操作と手動操作が併用されても、部材の損傷等が起こる可能性は低い。
【0041】
本便座装置90においては、開閉軸部材3と収容部材2の間の回転を規制する係合部材が、単純な略半球形状(部分球形状)よりなる係合突起7,7と係合凹部8,8よりなり、それらが中心軸Cに平行な方向に相互に押しつけられることで係合される簡素な係合構造を有する。開閉軸部材3と収容部材2の間の回転を規制する係合部材の構成は、必ずしもこのようなものに限られないが、このような、一方向への押しつけのみによる係合構造を採用することで、操作部材6を介して開閉軸部材3を方向D1に押すだけで、係合を解除し、開閉軸部材3を回転可能な状態とすることができる。また、このような単純な係合部材と、その係合方向に平行な方向に開閉軸部材3を付勢する係合付勢部材としてのコイルばね5が協働することで、簡素な構成と機構により、係合部材の間の係合を深め、便蓋91を全閉状態に強固にロックする機能が実現されている。開閉軸部材3と収容部材2の間の係合構造およびその係合を深める係合付勢部材がこのように簡素な構成を有することは、便蓋開閉装置1の故障の確率を一層低減することにも寄与する。これらが複雑な構成を有するほど、手動開操作が行われた際の係合解除によって、係合部等に故障が発生する可能性が高まってしまう。
【0042】
また、本便蓋開閉装置1においては、収容部材2と開閉軸部材3が入れ子状の構造をとり、それらの中心軸C上に、トーションばね4、コイルばね5、および操作部材6が配置されており、しかもコイルばね5はトーションばね4の中に侵入して配置されている。これらの構成により、便蓋開閉装置1をコンパクトに形成し、便蓋91の回動軸上に配置することが可能となっている。このような便蓋開閉装置1を組み立てるには、例えば、第二の収容部材2b上にトーションばね4、コイルばね5、開閉軸部材3をこの順に配置し、さらに第一の収容部材2aをかぶせてから、トーションばね4とコイルばね5を適宜変形させたうえで、第二の収容部材2bを第一の接合部材2aと接合すればよい。第一の収容部材2aと第二の収容部材2bの間の接合は、ねじ留め、溶着等によって行うことができる。収容部材2は、必ずしも第一の収容部材2aと第二の収容部材2bから構成されなくてもよいが、分割された複数の部材から構成することで、このように、コンパクトに便蓋開閉装置1を形成することが可能となっている。
【0043】
上記実施形態にかかる便蓋開閉装置1には、種々の変形形態が考えられる。まず、上記便蓋開閉装置1において、コイルばね5は必ずしも設けられなくてもよい。コイルばね5が存在していなくても、
図3の全閉状態において、操作部材6によって押圧面3cを押せば、係合突起7,7と係合凹部8,8の間の係合を解除することができ、自動開操作という点においては、コイルばね5が存在する時と同様の機能を得ることができる。一方、全閉状態において、開閉軸部材3の操作部材収容部3dを方向D2に引く等すれば係合突起7,7を係合凹部8,8に嵌め込むことができ、全閉状態を維持できる。ただし、コイルばね5が存在しないことで、係合突起7,7を係合部材に常時押しつける力が得られなくなり、便蓋91を全閉状態に維持する力は弱くなってしまう。
【0044】
また、上記の実施形態にかかる便蓋開閉装置1においては、開閉軸部材3と収容部材2の間の回転規制が、開閉軸部材3に形成された略半球状の係合突起7,7と収容部材2に形成された略半球状の係合凹部8,8によって実現され、その係合状態の維持がコイルばね5によって補助されたが、係合部材の構成は、開閉軸部材3と収容部材2の間の回転を十分に規制できるものであれば、このようなものに限られない。最も単純な変形例としては、開閉軸部材3の方に係合凹部を設け、収容部材2の方に係合突起を設けることが考えられる。さらに、上記実施形態にかかる便蓋開閉装置1の場合のように、プッシュ式ボタンを押すだけで係合を解除できるようにすることは困難になるが、フック状の係合構造や、ラチェット機構、磁石等を利用することが考えられる。
【0045】
さらに、上記実施形態にかかる便蓋開閉装置1においては、開閉軸部材3を便蓋91の開方向に付勢する回転付勢部材としてトーションばね4が用いられ、係合突起7,7と係合凹部8,8との間の係合を深めるための係合付勢部材としてコイルばね5が用いられた。しかし、同様の方向に開閉軸部材3を付勢できるようなばねであれば、どのような付勢部材がそれぞれ使用されてもよい。
【0046】
最後に、上記実施形態にかかる便蓋開閉装置1においては、便蓋91の回動軸(中心軸C)上に突出したボタン部6bを押すことで、便蓋91の開動作が駆動されたが、便蓋91の外から操作することで開閉軸部材3と収容部材2の係合構造を解除することができる、どのような操作部材を設けてもよい。最も単純な変形例としては、上記の便蓋開閉装置1と同様の略半球状の係合突起7,7および係合凹部8,8とコイルばね5を使用する形式において、適当なリンクを用いることで、プッシュ式のボタン部を、便蓋91の回動軸上ではなく、回動軸と交差する方向等、他の部位に設けることも可能である。また、上記のように、フック状の係合構造やラチェット機構、磁石等を用いる場合には、回転操作式のレバー等、それぞれの係合構造に応じた操作部材を用いればよい。さらに、一部にモータを使用する必要が生じる可能性はあるが、係合の解除を電気的に行えるようにすれば、リモコン信号やフットスイッチからの信号を利用し、係合を解除し、便蓋91近傍に設けられたボタン部にさえ接触することなく、便蓋91の開動作を自動的に駆動できるようになる。
【0047】
図5および
図6に、リモコン信号またはフットスイッチを使用して便蓋91の開操作を行う形式の便蓋開閉装置の構成を示す。
図5に示した便蓋開閉装置10は、アーム部材11を有し、収容部材12に対する開閉軸部材13の回転を規制する係合部が、収容部材12と開閉軸部材13の間ではなく、アーム部材11と開閉軸部材13の間に設けられている。アーム部材11は、中央付近に設けられた支点11aで本体部93に固定されている。そして、アーム部材11には、係合突起17が設けられ、開閉軸部材13には、便蓋91を閉状態とした際に係合突起17と係合する部位に、係合凹部18が設けられている。アーム部材11には、支点11aを挟んで係合突起17と反対側に、電磁弁またはモータ21で押すことが可能な押圧部11bが設けられている。さらに、アーム部材11には、係合凹部18と係合突起17を結ぶ軸の延長上の係合突起17と反対側の部位に、突起状のコイルばね保持部11cが形成されている。そして、コイルばね15が、係合凹部18と係合突起17を結ぶ軸の延長上にその軸を配置され、一端にコイルばね保持部11cが挿入されている。コイルばね15の他端は、本体部93に固定されている。
【0048】
電磁弁またはモータ21は、制御部(マイコン)22に接続され、マイコン22からの信号入力を受けて押圧部11bを押すことができる。マイコン22は、本体部93に収容され、温水洗浄装置等を制御するマイコンと共通のものとすることができる。マイコン22には、リモコン23からのリモコン信号を受信する受信部またはフットスイッチ24からの信号を入力される入力部を有する。そして、マイコン22は、リモコン23またはフットスイッチ24からの信号入力を受けると、電磁弁またはモータ21に信号を出力し、電磁弁またはモータ21にアーム部材11の押圧部11bを操作させる。
【0049】
便蓋91が閉状態にあるとき、アーム部材11の係合突起17と開閉軸部材13の係合凹部18が係合し、コイルばね15が係合突起17を係合凹部18に押し付ける方向に付勢することにより、この係合状態が維持されている。これによって、開閉軸部材13が収容部材12内で回転して便蓋91が開運動するのが規制されている。リモコン23またはフットスイッチ24から信号が発せられると、電磁弁またはモータ21がアーム部材11の押圧部11bを押し、これにより、係合突起17が係合凹部18から脱出する方向に持ち上げられる。すると、係合突起17と係合凹部18の間の係合が解除され、開閉軸部材13が回転し、便蓋91が開状態となる。
【0050】
このようなリモコン信号またはフットスイッチを使用する便蓋開閉装置の別の例を、
図6に示す。便蓋開閉装置10’は、係合付勢部材として、コイルばね15のかわりに、係合付勢用トーションばね15’を有する。係合付勢用トーションばね15’は、アーム部材11の支点11aと同軸上に固定され、アーム部材11の押圧部11bを電磁弁またはモータ21による押圧方向と逆の方向(
図6の反時計回り方向)に付勢している。これにより、係合突起17が、係合凹部18の内部に押し付けられる方向に付勢され、係合突起17と係合凹部18の間の係合状態が維持されている。つまり、開閉軸部材13が回転して便蓋91が開運動するのが規制されている。
図5の便蓋開閉装置10の場合と同様に、リモコン23またはフットスイッチ24から信号が発せられると、電磁弁またはモータ21がアーム部材11の押圧部11bを押し、係合突起17が係合凹部18から脱出する方向に持ち上げられることにより、便蓋91が開状態となる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。同様の開閉装置は、便座や便蓋以外にも、容器や機器の蓋等、回動可能に他の物品に取り付けられる種々の部材に適用することができる。