特許第6255786号(P6255786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255786
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】可変容量型過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20171227BHJP
   F02B 37/24 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   F02B39/00 E
   F02B37/24
   F02B39/00 T
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-164237(P2013-164237)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-34470(P2015-34470A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】植田 隆文
(72)【発明者】
【氏名】岩上 玲
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−132386(JP,A)
【文献】 特開昭63−143326(JP,A)
【文献】 特開2010−209708(JP,A)
【文献】 特開2012−122346(JP,A)
【文献】 実開昭62−138834(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F02B 37/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンハウジング内に配設されかつタービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積を可変とする可変ノズルユニットを装備した可変容量型過給機において、
前記可変ノズルユニットは、
前記タービンハウジング内におけるタービンスクロール流路と前記タービンインペラとの間に配設されたノズルリングと、
前記ノズルリングに前記タービンインペラを囲むように円周方向に間隔を置いて設けられ正逆方向へ回動可能な複数の可変ノズルと、
前記ノズルリングにおける前記タービンインペラの軸方向の一方側に形成したリンク室内に配設され、複数の前記可変ノズルを同期して開閉方向へ回動させリンク機構と、を具備し、
前記タービンハウジング内に前記タービンスクロール流路と前記リンク室を仕切る環状の仕切り壁部材が前記ノズルリングを囲むように配設され、前記仕切り壁部材が前記タービンハウジングと別部材により構成され、前記仕切り壁部材の外周縁部が前記ベアリングハウジングの前記軸方向の他方側の側部に取付けられ、前記リンク機構が前記仕切り壁部材の外周縁部に対して前記軸方向の一方側へ突出し、前記仕切り壁部材の前記軸方向の一方側の側部に、前記リンク機構の一部を収容する環状の収容段部が前記軸方向の他方側へ窪んで形成され、前記タービンハウジングに隣接したベアリングハウジングの前記軸方向の他方側の側部に、前記リンク機構の一部を収容する環状の収容凹部が前記軸方向の一方側へ窪んで形成されている可変容量型過給機。
【請求項2】
前記タービンハウジングの前記軸方向の一方側の側部に前記ベアリングハウジングの前記軸方向の他方側の側部を嵌合させ環状の嵌合凹部が前記軸方向の他方側へ窪んで形成され、前記仕切り壁部材の外周縁部が前記ベアリングハウジングの前記軸方向の他方側の側部に前記タービンハウジングの前記嵌合凹部の底面との協働により挟持された状態で取付けられている請求項に記載の可変容量型過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変とする可変ノズルユニットを装備し、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジン側に供給される空気を過給する可変容量型過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、可変容量型過給機に装備する可変ノズルユニットについて種々の開発がなされており、この可変ノズルユニットの一般的な構成等は、次のようになる(特許文献1及び特許文献2等参照)。
【0003】
タービンハウジング内におけるタービンスクロール流路とタービンインペラとの間には、ノズルリングが配設されている。また、ノズルリングには、複数の可変ノズルがタービンインペラを囲むように円周方向に間隔を置いて設けられており、各可変ノズルは、正逆方向(開閉方向)へ回動可能である。そして、ノズルリングにおけるタービンインペラの軸方向の一方側に形成したリンク室内には、複数の可変ノズルを同期して開閉方向へ回動させるためのリンク機構が配設されている。
【0004】
ここで、複数の可変ノズルを正方向(開方向)へ同期して回動させると、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)が大きくなると共に、複数の可変ノズルを逆方向(閉方向)へ同期して回動させると、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積が小さくなるようになっている。また、タービンスクロール流路内の排気ガスの熱からリンク機構を保護するため、タービンハウジング内には、タービンスクロール流路とリンク室を仕切る環状の仕切り壁がノズルリングを囲むように一体形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−156279号公報
【特許文献2】特開2008−190494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、可変容量型過給機の運転中、タービンスクロール流路内の温度は排気ガスの流通によって比較的高く、リンク室内の温度はベアリングハウジングから吸熱によって比較的低くなっており、その温度差によって仕切り壁に局所的に大きな熱応力が生じる。そのため、可変容量型過給機の運転状況によっては仕切り壁にクラックが発生する可能性がある。仮に、そのクラックが径方向外側へ進展してタービンハウジングの表面(外表面)付近に達すると、タービンハウジングの耐久性、換言すれば、可変容量型過給機の耐久性の低下を招くことになる。
【0007】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の可変容量型過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、タービンハウジング内に配設されかつタービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変とする可変ノズルユニットを装備した可変容量型過給機において、前記可変ノズルユニットは、前記タービンハウジング内におけるタービンスクロール流路と前記タービンインペラとの間に配設されたノズルリングと、前記ノズルリングに前記タービンインペラを囲むように円周方向に間隔を置いて設けられ正逆方向(開閉方向)へ回動可能な複数の可変ノズルと、前記ノズルリングにおける前記タービンインペラの軸方向の一方側に形成したリンク室内に配設され、複数の前記可変ノズルを同期して開閉方向へ回動させリンク機構と、を具備し、前記タービンハウジング内に前記タービンスクロール流路と前記リンク室を仕切る環状の仕切り壁部材が前記ノズルリングを囲むように配設され、前記仕切り壁部材が前記タービンハウジングと別部材により構成され、前記仕切り壁部材の外周縁部が前記ベアリングハウジングの前記軸方向の他方側の側部に取付けられ、前記リンク機構が前記仕切り壁部材の外周縁部に対して前記軸方向の一方側へ突出し、前記仕切り壁部材の前記軸方向の一方側の側部に、前記リンク機構の一部を収容する環状の収容段部が前記軸方向の他方側へ窪んで形成され、前記タービンハウジングに隣接したベアリングハウジングの前記軸方向の他方側の側部に、前記リンク機構の一部を収容する環状の収容凹部が前記軸方向の一方側へ窪んで形成されていることである。
【0009】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「配設され」とは、直接的に配設されたことの他に、別部材を介して間接的に配設されたことを含む意であって、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。また、「前記ベースリングに前記タービンインペラを囲むように円周方向に間隔を置いて設けられ」とは、前記軸方向に離隔対向した一対のベースリングの間に前記タービンインペラを囲むように円周方向に間隔を置いて設けられたことを含む意である。
【0010】
本発明の態様によると、前記可変容量型過給機の運転中、エンジン回転数が高回転域にあって、排気ガスの流量が多い場合には、前記リンク機構を作動させつつ、複数の前記可変ノズルを正方向(開方向)へ同期して回動させる。これにより、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスのガス流路面積(スロート面積)を大きくして、前記タービンインペラ側に多くの排気ガスを供給する。
【0011】
一方、エンジン回転数が低回転域にあって、排気ガスの流量が少ない場合には、前記リンク機構を作動させつつ、複数の前記可変ノズルを逆方向(閉方向)へ同期して回動させる。これにより、これにより、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスのガス流路面積を小さくして、排気ガスの流速を高めて、前記タービンインペラの仕事量を十分に確保する(前記可変容量型過給機の通常の作用)。
【0012】
前記タービンハウジング内に前記タービンスクロール流路と前記リンク室を仕切る環状の前記仕切り壁部材が前記ノズルリングを囲むように配設されているため、前記タービンスクロール流路内の排気ガスの熱から前記リンク機構を保護することができる。また、前記仕切り壁部材が前記タービンハウジングの一部でなく前記タービンハウジングと別部材により構成されているため、前記可変容量型過給機の運転中に、前記仕切り壁部材に熱応力によるクラックが発生しても、そのクラックが前記仕切り壁部材を越えて径方向外側へ進展することがない。換言すれば、前記仕切り壁部材に発生したクラックが前記タービンハウジングの表面(外表面)付近に達することを十分に防止することができる。
【0013】
前記仕切り壁部材の前記軸方向の一方側の側部に前記リンク機構の一部を収容する環状の前記収容段部が前記軸方向の他方側へ窪んで形成されているため、前記仕切り壁部材の前記収容段部内の空間を前記リンク室の一部として用いることになり、少なくとも前記仕切り壁部材の前記収容段部の前記軸方向の長さ分だけ、前記可変容量型過給機の軸長を短くすることができる(前記可変容量型過給機の特有の作用)。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前記タービンスクロール流路内の排気ガスの熱から前記リンク機構を保護した上で、前記仕切り壁部材に発生したクラックがタービンハウジングの表面付近に達することを十分に防止できるため、前記タービンハウジングの耐久性、換言すれば、前記可変容量型過給機の耐久性を向上させることができる。
【0015】
また、少なくとも前記仕切り壁部材の前記収容段部の前記軸方向の長さ分だけ、前記可変容量型過給機の軸長を短くできるため、前記可変容量型過給機の小型化及び軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、図6における矢視部Iの拡大図である。
図2図2は、図1における矢視部IIの拡大図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る可変ノズルユニットにおける複数の取付ピンとガイドリングと第1サイドガイド部材と第2サイドガイド部材との関係を示す斜視図である。
図4図4は、図1におけるIV-IV線に沿った図である。
図5図5は、図1におけるV-V線に沿った図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る可変容量型過給機の正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図1から図6を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「R」は、右方向、「L」は、左方向である。
【0018】
図6に示すように、本発明の実施形態に係る可変容量型過給機1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、可変容量型過給機1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0019】
可変容量型過給機1は、ベアリングハウジング3を具備しており、ベアリングハウジング3内には、ラジアルベアリング5及び一対のスラストベアリング7が設けられている。また、複数のベアリング5,7には、左右方向へ延びたロータ軸(タービン軸)9が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、ロータ軸9が複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0020】
ベアリングハウジング3の右側には、コンプレッサハウジング11が設けられており、このコンプレッサハウジング11内には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサインペラ13がその軸心(換言すれば、ロータ軸9の軸心)C周りに回転可能に設けられている。また、コンプレッサインペラ13は、ロータ軸9の右端部に一体的に連結されたコンプレッサホイール(コンプレッサディスク)15と、このコンプレッサホイール15の外周面に周方向に等間隔に設けられた複数のコンプレッサブレード17とを備えている。
【0021】
コンプレッサハウジング11におけるコンプレッサインペラ13の入口側(コンプレッサハウジング11の右側部)には、空気を導入するための空気導入口19が形成されており、この空気導入口19は、空気を浄化するエアクリーナ(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング11との間におけるコンプレッサインペラ13の出口側には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路21が形成されている。更に、コンプレッサハウジング11の内部には、渦巻き状のコンプレッサスクロール流路23が形成されており、このコンプレッサスクロール流路23は、ディフューザ流路21に連通してある。そして、コンプレッサハウジング11の適宜位置には、圧縮された空気を排出するための空気排出口25が形成されており、この空気排出口25は、コンプレッサスクロール流路23に連通してあって、エンジンの吸気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0022】
図1及び図6に示すように、ベアリングハウジング3の左側には、タービンハウジング27が複数(1つのみ図示)の取付ボルト29及び複数(1つのみ図示)の座金31を介して設けられている。また、タービンハウジング27の右側部には、ベアリングハウジング3の左側部を嵌合させるための環状の嵌合凹部33が左方向へ窪んで形成されている。
【0023】
タービンハウジング27内には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるタービンインペラ35が軸心(タービンインペラ35の軸心、換言すれば、ロータ軸9の軸心)C周りに回転可能に設けられている。また、このタービンインペラ35は、ロータ軸9の左端部に一体的に連結されたタービンホイール(タービンディスク)37と、このタービンディスク37の外周面に周方向に等間隔に設けられた複数のタービンブレード39とを備えている。
【0024】
タービンハウジング27の適宜位置には、排気ガスを導入するためのガス導入口41が形成されており、このガス導入口41は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング27の内部には、渦巻き状のタービンスクロール流路43が形成されており、このタービンスクロール流路43は、ガス導入口41に連通してある。更に、タービンハウジング27におけるタービンインペラ35の出口側(タービンハウジング27の左側部)には、排気ガスを排出するためのガス排出口45が形成されており、このガス排出口45は、排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置(図示省略)に接続可能である。
【0025】
可変容量型過給機1は、タービンインペラ35側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変する可変ノズルユニット47が装備されており、この可変ノズルユニット47の構成の詳細は、次のようになる。
【0026】
図1及び図2に示すように、タービンハウジング27内には、シュラウドリング49が複数(1つのみ図示)の取付ボルト51を介してタービンインペラ35と同心状に配設されており、このシュラウドリング49は、複数のタービンブレード39の外縁(先端縁)を覆うようになっている。また、シュラウドリング49には、複数(1つのみ図示)の支持穴53が円周方向に等間隔に貫通形成(形成)されている。
【0027】
シュラウドリング49に対して左右方向(ロータ軸9の軸方向、換言すれば、タービンインペラ35の軸方向)に離隔対向した位置には、ノズルリング55が複数(1つのみ図示)の連結ピン57を介してシュラウドリング49と一体的かつ同心状に設けられている。換言すれば、タービンハウジング27内におけるタービンスクロール流路43とタービンインペラ35との間には、ノズルリング55がシュラウドリング49及び複数の連結ピン57を介してタービンインペラと同心状に配設されている。また、ノズルリング55には、複数の支持穴59がシュラウドリング49の複数の支持穴53に整合するように円周方向に等間隔に貫通形成(形成)されている。ここで、複数の連結ピン57は、シュラウドリング49とノズルリング55との間隔を設定する機能を有している。
【0028】
シュラウドリング49とノズルリング55との間には、複数の可変ノズル61がタービンインペラ35を囲むように円周方向に等間隔に設けられており、各可変ノズル61は、タービンインペラ35の軸心Cに平行な軸心周りに正逆方向(開閉方向)へ回動可能である。また、各可変ノズル61の右側面(前記軸方向の一方側の側面)には、ノズル軸63が一体形成されており、各ノズル軸63は、ノズルリング55の対応する支持穴59に回動可能に支持されている。更に、各可変ノズル61の左側面(前記軸方向の他方側の側面)には、別のノズル軸65が一体形成されており、各別のノズル軸65は、シュラウドリング49の対応する支持穴53に回動可能に支持されている。
【0029】
なお、各可変ノズル61は、ノズル軸63と別のノズル軸65を備えた両持ちタイプであるが、別のノズル軸65を省略して片持ちタイプにしても構わない。
【0030】
ノズルリング55の右側面(前記軸方向の一方側の側面)側に形成した環状のリンク室67内には、複数の可変ノズル61を同期して正逆方向(開閉方向)へ回動させるためのリンク機構69が配設されている。そして、可変ノズルユニット47におけるリンク機構69の具体的な構成は、次のようになる。
【0031】
図1から図3に示すように、ノズルリング55の右側面には、3つ以上(本発明の実施形態にあっては3つ)の取付ピン71が円周方向に間隔を置いて配設されている。また、各取付ピン71は、軸対称構造に構成されてあって、ノズルリング55の支持穴53よりも径方向外側に位置している。更に、各取付ピン71の先端面(前記軸方向の一方側の端面)には、取付軸73が一体形成されている。
【0032】
複数の取付ピン71の先端面に亘って、ガイドリング75が設けられており、このガイドリング75は、ノズルリング55と同心状に位置してある。また、ガイドリング75には、取付ピン71の取付軸73を挿通させるための3つ以上(本発明の実施形態にあっては3つ)の挿通穴(ガイドリング用挿通穴)77が円周方向に間隔を置いて貫通形成(形成)されている。
【0033】
なお、ガイドリング75に複数の挿通穴77が貫通形成される代わりに、ガイドリング75の外周面に取付ピン71の取付軸73を係合させるための3つ以上の係合凹部(図示省略)が円周方向に間隔を置いてかつ径方向内側へ窪んで形成されても構わない。
【0034】
図1図2図4、及び図5に示すように、ガイドリング75の外周面には、駆動リング79が回動可能に設けられており、この駆動リング79は、電動モータ又は負圧シリンダ等の回動アクチュエータ81の駆動によって正逆方向へ回動するものであって、駆動リング79の外周部は、ギア状に形成(成形)されている。また、駆動リング79の左側面には、可変ノズル61と同数の矩形の係合ジョイント(係合部)83が連結ピン85及び座金87を介して円周方向に沿って等間隔に設けられている。また、駆動リング79の右側面には、矩形の別の係合ジョイント(別の係合部)89が連結ピン91及び座金93を介して設けられている。
【0035】
図2及び図3に示すように、ガイドリング75の右側(右側面)には、駆動リング79の右側面(右壁面)を摺接可能に支持するC字状の第1サイドガイド部材(第1壁面ガイド部材)95が複数の取付ピン71の取付軸73を介して設けられている。また、第1サイドガイド部材95には、取付ピン71の取付軸73を挿通させるための3つ以上(本発明の実施形態にあっては3つ)の挿通穴(第1サイドガイド部材用挿通穴)97が円周方向に間隔を置いて貫通形成(形成)されている。
【0036】
ガイドリング75の左側(左側面)には、駆動リング79の左側面(左壁面)を摺接可能に支持するC字状の第2サイドガイド部材(第2壁面ガイド部材)99が複数の取付ピン71の取付軸73を介して設けられている。また、第2サイドガイド部材99には、取付ピン71の取付軸73を挿通させるための3つ以上(本発明の実施形態にあっては3つ)の挿通穴(第2サイドガイド部材用挿通穴)101が円周方向に間隔を置いて貫通形成(形成)されている。
【0037】
なお、第1サイドガイド部材95及び第2サイドガイド部材99がC字状を呈する代わりに、環状を呈するようにしても構わない。
【0038】
図1図2図4、及び図5に示すように、各可変ノズル61のノズル軸63の先端部(右端部)には、同期リンク部材(ノズルリンク部材)103の基端部が一体的に連結されている。また、各同期リンク部材103の先端側は、二股に分岐してあって、各同期リンク部材103の先端部(先端側部分)は、駆動リング79の対応する係合ジョイント83に挟むように係合してある。
【0039】
可変容量型過給機1の固定部としてのベアリングハウジング3の左側部には、駆動軸105がタービンインペラ35の軸心Cに平行な軸心周りに回動可能にブッシュ107を介して設けられており、この駆動軸105の右端部(一端部)は、動力伝達機構109を介して回動アクチュエータ81に接続されている。そして、駆動軸105の左端部(他端部)には、駆動リンク部材111の基端部が一体的に連結されている。また、駆動リンク部材111の先端側は、二股に分岐してあって、駆動リンク部材111の先端部(先端側部分)は、駆動リング79の別の係合ジョイント89に挟むように係合してある。
【0040】
続いて、本発明の実施形態に係る可変容量型過給機1の要部について説明する。
【0041】
タービンハウジング27内には、タービンスクロール流路43とリンク室67を仕切る環状の仕切り壁部材113がノズルリング55を囲むように設けられており、この仕切り壁部材113は、タービンハウジング27と別部材により構成されている。また、仕切り壁部材113の外周縁部は、ベアリングハウジング3の左側部(前記軸方向の他方側の側部)にタービンハウジング27の嵌合凹部33の底面33bとの協働により挟持された状態で取付けられている。更に、仕切り壁部材113の右側部(前記軸方向の一方側の側部)には、リンク機構69の一部を収容する環状の収容段部115が左方向(前記軸方向の他方側)へ窪んで形成されている。また、仕切り壁部材113の円周方向の適宜位置には、タービンスクロール流路43とリンク室67を連通させるための連通穴(図示省略)が貫通形成されている。ここで、仕切り壁部材113の内周縁部は、ノズルリング55の外周縁部に非接触であって、仕切り壁部材113の内周縁部とノズルリング55の外周縁部との間には、環状の隙間117が区画形成されている。
【0042】
なお、仕切り壁部材113の外周縁部がベアリングハウジング3の左側部にタービンハウジング27の嵌合凹部33の底面33bとの協働により挟持された状態で取付けられる代わりに、ベアリングハウジング3の左側部に取付ボルト(図示省略)によって取付けられても構わない。また、仕切り壁部材113は、円周方向に沿って分割された円弧状の複数のセグメント(図示省略)により構成されても構わない。
【0043】
タービンハウジング27に隣接したベアリングハウジング3の左側部には、リンク機構69の一部を収容する環状の収容凹部119が右方向(前記軸方向の一方側)へ窪んで形成されており、ベアリングハウジング3の収容凹部119は、仕切り壁部材113の外周縁部よりも径方向内側に位置している。また、ベアリングハウジング3の収容凹部119の内面と仕切り壁部材113の収容段部115の内面は、滑らかに繋がっているが、ベアリングハウジング3の収容凹部119の内面と仕切り壁部材113の収容段部115の内面に段差(図示省略)があっても構わない。
【0044】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
ガス導入口41から導入した排気ガスがタービンスクロール流路43を経由してタービンインペラ35の入口側から出口側へ流通することにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ13をタービンインペラ35と一体的に回転させることができる。これにより、空気導入口19から導入した空気を圧縮して、ディフューザ流路21及びコンプレッサスクロール流路23を経由して空気排出口25から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)することができる。
【0046】
可変容量型過給機1の運転中、エンジン回転数が高回転域にあって、排気ガスの流量が多い場合には、回動アクチュエータ81の駆動によって駆動軸105を一方向(図5において時計回り方向)へ回動させて、駆動リンク部材111を一方向へ揺動させつつ、駆動リング79を正方向(図4において反時計回り方向、図5において時計回り方向)へ回動させる。これにより、複数の同期リンク部材103を正方向へ揺動させながら、複数の可変ノズル61を同期して正方向(開方向)へ回動させて、複数の可変ノズル61の開度を大きくすることができる。よって、タービンインペラ35側に供給される排気ガスの流路面積(流量)を大きくして、タービンインペラ35側に多くの排気ガスを供給することができる。
【0047】
エンジン回転数が低回転域にあって、排気ガスの流量が少ない場合には、回動アクチュエータ81の駆動によって駆動軸105を他方向(図5において反時計回り方向)へ回動させて、駆動リンク部材111を他方向へ揺動させつつ、駆動リング79を逆方向(図4において時計回り方向、図5において反時計回り方向)へ回動させる。これにより、複数の同期リンク部材103を逆方向へ揺動させながら、複数の可変ノズル61を同期して逆方向(閉方向)へ回動させて、複数の可変ノズル61の開度を小さくすることができる。よって、タービンインペラ35側に供給される排気ガスの流路面積を小さくして、排気ガスの流速を高くして、タービンインペラ35の仕事量を十分に確保することができる(可変容量型過給機1の通常の作用)。
【0048】
タービンハウジング27内にタービンスクロール流路43とリンク室67を仕切る環状の仕切り壁部材113がノズルリング55を囲むように配設されているため、タービンスクロール流路43内の排気ガスの熱からリンク機構69を保護することができる。また、仕切り壁部材113がタービンハウジング27の一部でなくタービンハウジング27と別部材により構成されているため、可変容量型過給機1の運転中に、仕切り壁部材113に熱応力によるクラックが発生しても、そのクラックが仕切り壁部材113を越えて径方向外側へ進展することがない。換言すれば、仕切り壁部材113に発生したクラックがタービンハウジング27の表面(外表面)付近に達することを十分に防止することができる。
【0049】
仕切り壁部材113の右側部にリンク機構69の一部を収容する環状の収容段部115が左方向へ窪んで形成されているため、仕切り壁部材113の収容段部115内の空間をリンク室67の一部として用いることになり、仕切り壁部材113の収容段部115の前記軸方向(左右方向)の長さ分だけ、可変容量型過給機の軸長(左右方向の長さ)を短くすることができる。同様に、ベアリングハウジング3の左側部にリンク機構69の一部を収容する環状の収容凹部119が左方向へ窪んで形成されているため、ベアリングハウジング3の収容凹部119内の空間をリンク室67の一部として用いることになり、ベアリングハウジング3の収容凹部119の前記軸方向の長さ分だけ、可変容量型過給機の軸長を短くすることができる(前記可変容量型過給機の特有の作用)。
【0050】
従って、本発明の実施形態によれば、タービンスクロール流路43内の排気ガスの熱からリンク機構69を保護した上で、仕切り壁部材113に発生したクラックがタービンハウジング27の表面付近に達することを十分に防止できるため、タービンハウジング27の耐久性、換言すれば、可変容量型過給機1の耐久性を向上させることができる。
【0051】
また、仕切り壁部材113の収容段部115の前記軸方向(左右方向)の長さとベアリングハウジング3の収容凹部119の前記軸方向の長さの和の分だけ、可変容量型過給機1の軸長を短くすることができるため、可変容量型過給機1の小型化及び軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1:可変容量型過給機、3:ベアリングハウジング、9:ロータ軸、11:コンプレッサハウジング、13:コンプレッサインペラ、27:タービンハウジング、33:嵌合凹部、33b:嵌合凹部の底面、35:タービンインペラ、41:ガス導入口、43:タービンスクロール流路、45:ガス排出口、47:可変ノズルユニット、49:シュラウドリング、55:ノズルリング、61:可変ノズル、67:リンク室、69:リンク機構、113:仕切り壁部材、115:収容段部、119:収容凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6