(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255931
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】照明装置、撮像装置、照明方法および反射領域判定装置
(51)【国際特許分類】
G03B 15/05 20060101AFI20171227BHJP
G03B 7/091 20060101ALI20171227BHJP
H04N 5/238 20060101ALI20171227BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
G03B15/05
G03B7/091
H04N5/238
H04N5/232
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-238956(P2013-238956)
(22)【出願日】2013年11月19日
(65)【公開番号】特開2015-99257(P2015-99257A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】311015207
【氏名又は名称】リコーイメージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】古川 智彦
【審査官】
渡邉 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−065186(JP,A)
【文献】
特開2005−134468(JP,A)
【文献】
特開2005−037790(JP,A)
【文献】
特開平10−301173(JP,A)
【文献】
特開2013−021658(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0016249(US,A1)
【文献】
特開2000−155358(JP,A)
【文献】
特開2002−207159(JP,A)
【文献】
特開2013−044938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 7/091
G03B 15/04 − 15/05
H04N 5/222− 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影する前に前記被写体に向けて発光を行うプリ発光手段と、
前記被写体を複数の領域毎に分割した状態で、測光情報を取得する測光手段と、
撮影時に前記被写体に照明光を照射する照明手段と、
前記測光手段が取得した前記測光情報に基づいて前記照明手段の照明光の照射光量を演算する光量演算手段とを備え、
前記光量演算手段は、前記プリ発光手段が発光を行わないときに前記測光手段により取得される第1の測光情報と、前記プリ発光手段が発光中に前記測光手段により取得される第2の測光情報とにそれぞれ含まれる前記領域毎の各色成分の輝度情報に基づいて、
前記領域毎の各色成分の輝度情報の変化量を算出して、前記各色成分の輝度情報の変化量の比率が所定の範囲である領域を反射領域として特定し、
前記反射領域が適正露光となるように前記照明手段の照射光量を演算することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記所定の範囲は、前記プリ発光手段が行う発光における光の発色に応じて、色成分毎に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記所定の範囲は、色成分毎に設定されるとともに、上限値および下限値が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光量演算手段は、前記反射領域が複数あるときは、前記反射領域における前記変化量の大きさ、および/または前記反射領域が有する面積の大きさに基づいて適正露光とする反射領域を決定して前記照射手段の照射光量を演算することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の照明装置。
【請求項5】
前記光量演算手段は、前記変化量の大きい反射領域が適正露光となるように前記照射手段の照射光量を演算することを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記光量演算手段は、最大の面積を有する反射領域が適正露光となるように前記照射手段の照射光量を演算することを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項7】
前記被写体における複数の領域の中から、前記測光手段が前記測光情報を取得する領域を測光領域として設定する測光領域設定手段をさらに備え、
前記光量演算手段は前記測光領域において前記反射領域を特定することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の照明装置。
【請求項8】
前記光量演算手段は、前記反射領域を特定できないときは、最大光量での撮影となるように前記照射手段の照射光量を演算することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の照明装置。
【請求項9】
前記輝度情報の色成分は、R/G/BまたはY/M/Cの組み合わせのいずれかを含むことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の照明装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の照明装置を内蔵可能であるか、または外付け可能であることを特徴とする撮像装置。
【請求項11】
可動ミラーが撮影光学系から撮像素子までの光路に配置され、前記可動ミラーが前記光路に配置された状態では、被写体像がファインダスクリーンに結像し、前記可動ミラーが前記光路から退避する状態では、被写体像が前記撮像素子に結像し、撮影データが取得され得る一眼レフの構成をさらに備え、 前記測光手段は、前記ファインダスクリーンに結像した被写体像から前記測光情報を取得することを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
撮影光学系を介した被写体像が撮像素子に結像して撮影データの取得が可能であり、
前記測光手段は、前記撮影光学系とは異なる測光光学系を介した被写体像により前記測光情報を取得する位置に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
【請求項13】
被写体を撮影する前に前記被写体に向けて発光を行うプリ発光方法と、
前記被写体を複数の領域毎に分割した状態で、測光情報を取得する測光方法と、
撮影時に前記被写体に照明光を照射する照明方法と、
前記取得した測光情報に基づいて前記照明光の照射光量を演算する光量演算方法とを含み、
発光を行わないときに取得される第1の測光情報と、発光中に取得される第2の測光情報とにそれぞれ含まれる前記領域毎の各色成分の輝度情報に基づいて、前記領域毎の各色成分の輝度情報の変化量を算出して、前記各色成分の輝度情報の変化量の比率が所定の範囲である領域を反射領域として特定し、前記反射領域が適正露光となるように前記照射光量を演算することを特徴とする照明方法。
【請求項14】
被写体を撮影する前に前記被写体に向けて発光を行う発光手段と、
前記被写体を複数の領域毎に分割した状態で、測光情報を取得する測光手段とを備え、
前記発光手段が発光を行わないときに前記測光手段により取得される第1の測光情報と、前記発光手段が発光中に前記測光手段により取得される第2の測光情報とにそれぞれ含まれる前記領域毎の各色成分の輝度情報に基づいて、前記領域毎の各色成分の輝度情報の変化量を算出して、前記各色成分の輝度情報の変化量の比率が所定の範囲である領域を反射領域として特定することを特徴とする反射領域判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラッシュの光量を決定するために被写体に発光する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリ発光がフラッシュの本発光の光量を決定するために行われる。光量の決定の際、まず測光センサが、プリ発光前とプリ発光中とにおいて、被写体における各領域の測光情報を取得する。プリ発光前とプリ発光中とにおける測光情報を比較することにより、プリ発光による反射光の光量が多い領域が特定される。特定された領域は、本発光による反射光の光量が多い領域であると推定される。
【0003】
しかし、上記のような技術では、例えば点滅するイルミネーションが被写体に含まれている場合に、適切な推定ができない問題が生じる。例えば、イルミネーションがプリ発光前に点灯しておらず、プリ発光中に点灯した場合に、イルミネーションの領域がプリ発光による反射光の光量が多い領域であると誤って判定される。このため本発光の光量が適切に決定されない。
【0004】
一方、プリ発光による反射光の色とプリ発光の色とを比較して、プリ発光を正反射する領域を検出するカメラとして特許文献1に開示されたものが知られている。このカメラでは、プリ発光による反射光の色とプリ発光の色とが同等である領域は、プリ発光が正反射する異常な領域であると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−134468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたカメラを用いても、プリ発光による反射光の色は被写体毎に異なるため、正反射する領域以外の領域を検出できず、上記の問題を解決できない。
【0007】
本発明は、プリ発光前とプリ発光中との間に、被写体の明るさがプリ発光以外の要因により変化した場合であっても、その要因に影響を受けることなく、プリ発光による反射光の光量が多い領域を判定する照明装置、撮像装置、照明方法および反射領域判定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る照明装置は、被写体を撮影する前に被写体に向けて発光を行うプリ発光手段と、被写体を複数の領域毎に分割した状態で、測光情報を取得する測光手段と、撮影時に被写体に照明光を照射する照明手段と、測光手段が取得した測光情報に基づいて照明手段の照明光の照射光量を演算する光量演算手段とを備え、光量演算手段は、プリ発光手段が発光を行わないときに測光手段により取得される第1の測光情報と、プリ発光手段が発光中に測光手段により取得される第2の測光情報とにそれぞれ含まれる領域毎の各色成分の輝度情報に基づいて、領域毎の各色成分の輝度情報の変化量を算出して、各色成分の輝度情報の変化量が所定の範囲である領域を反射領域として特定し、反射領域が適正露光となるように照明手段の照射光量を演算することを特徴としている。
【0009】
好ましくは、所定の範囲は、前記プリ発光手段が行う発光における光の発色に応じて、色成分毎に設定されている。また、好ましくは、所定の範囲は、色成分毎に設定されるとともに、上限値および下限値が設けられている。また、好ましくは、光量演算手段は、反射領域が複数あるときは、反射領域における変化量の大きさ、および/または反射領域が有する面積の大きさに基づいて適正露光とする反射領域を決定して照射手段の照射光量を演算する。
【0010】
また、好ましくは、光量演算手段は、変化量の大きい反射領域が適正露光となるように照射手段の照射光量を演算する。また、好ましくは、光量演算手段は、最大の面積を有する反射領域が適正露光となるように照射手段の照射光量を演算する。また、好ましくは、被写体における複数の領域の中から、測光手段が測光情報を取得する領域を測光領域として設定する測光領域設定手段をさらに備え、光量演算手段は測光領域において反射領域を特定する。また、好ましくは、光量演算手段は、反射領域を特定できないときは、最大光量での撮影となるように照射手段の照射光量を演算する。
【0011】
また、好ましくは、輝度情報の色は、R/G/BまたはY/M/Cの組み合わせのいずれかを含む。
【0012】
また本発明に係る撮像装置は、上述したいずれかの照明装置を内蔵可能であるか、または外付け可能であることを特徴としている。好ましくは、可動ミラーが撮影光学系から撮像素子までの光路に配置され、可動ミラーが光路に配置された状態では、被写体像がファインダスクリーンに結像し、可動ミラーが光路から退避する状態では、被写体像が撮像素子に結像し、撮影データが取得され得る一眼レフの構成をさらに備え、測光手段は、ファインダスクリーンに結像した被写体像から測光情報を取得する。
【0013】
また、好ましくは、撮影光学系を介した被写体像が撮像素子に結像して撮影データの取得が可能であり、測光手段は、撮影光学系とは異なる測光光学系を介した被写体像により測光情報を取得する位置に配置されている。
【0014】
また本発明に係る照明方法は、被写体を撮影する前に被写体に向けて発光を行うプリ発光方法と、被写体を複数の領域毎に分割した状態で、測光情報を取得する測光方法と、撮影時に被写体に照明光を照射する照明方法と、取得した測光情報に基づいて照明光の照射光量を演算する光量演算方法とを含み、発光を行わないときに取得される第1の測光情報と、発光中に取得される第2の測光情報とにそれぞれ含まれる領域毎の各色成分の輝度情報に基づいて、領域毎の各色成分の輝度情報の変化量を算出して、各色成分の輝度情報の変化量が所定の範囲である領域を反射領域として特定し、反射領域が適正露光となるように照射光量を演算することを特徴としている。
【0015】
また本発明に係る反射領域判定装置は、被写体を撮影する前に被写体に向けて発光を行う発光手段と、被写体を複数の領域毎に分割した状態で、測光情報を取得する測光手段とを備え、発光手段が発光を行わないときに測光手段により取得される第1の測光情報と、発光手段が発光中に測光手段により取得される第2の測光情報とにそれぞれ含まれる領域毎の各色成分の輝度情報に基づいて、領域毎の各色成分の輝度情報の変化量を算出して、各色成分の輝度情報の変化量が所定の範囲である領域を反射領域として特定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、プリ発光前とプリ発光中との間に、被写体の明るさがプリ発光以外の要因により変化した場合であっても、その要因に影響を受けることなく、プリ発光による反射光の光量が多い領域を判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るデジタルカメラの構成を示す側面図である。
【
図3】
図2のCPUにおける光量調節処理を示す概念図である。
【
図4】反射領域特定処理を説明するための一例を示す図である。
【
図5】光量調節制御の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図4の例で本実施形態の反射領域特定処理を行わない場合のフラッシュ撮影画像を示す図である。
【
図7】反射領域特定処理を説明するための別の例を示す図である。
【
図8】
図7における反射領域特定処理の続きを説明するための図である。
【
図9】
図7、8における反射領域特定処理の詳細を説明するための図である。
【
図10】
図7の例で本実施形態の反射領域特定処理を行わない場合の反射領域の判定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は撮影レンズを外した状態のカメラ10の側面図である。カメラ10は一眼レフカメラである。すなわちカメラ10において、可動ミラーが撮影光学系から撮像素子までの光路に配置される。また可動ミラーが光路に配置された状態では、被写体像がファインダスクリーンに結像し、可動ミラーが前記光路から退避する状態では、被写体像が撮像素子に結像し、撮影データが取得され得る。また測光手段が、ファインダスクリーンに結像した被写体像から測光情報を取得する。また
図1に示されるように、カメラボディの上面にはフラッシュ11が設けられ、フラッシュ11の下側にはフラッシュ11をポップアップさせるためのフラッシュポップアップボタン13が設けられる。
【0019】
図2はデジタルカメラのシステム構成図を示す。測光センサ(測光手段)21と撮像素子23とAFセンサ25は信号処理部30に接続される。測光センサ21は被写体の測光情報を取得し、AFセンサ25は被写体に合焦状態を示す情報を取得する。撮像素子23は被写体の画像データを取得する。信号処理部30はカメラ10の各部位の機能を制御する。信号処理部30にはCPU(光量演算手段)31が設けられる。CPU31は、フラッシュ(プリ発光手段、照明手段)11のプリ発光と本発光の制御情報を生成し、制御情報はフラッシュ11に送られる。信号処理部30には、LCDディスプレイ51と操作部52とモータドライバ53とSDRAM54が接続され、また、メモリカード55が着脱可能に取り付けられる。
【0020】
被写体を撮影する前に、CPU31からの制御信号によりフラッシュ11は所定の光量によるプリ発光を被写体に向けて行う。測光センサ21は、被写体の測光情報を取得する。取得された測光情報はCPU31に送られ、CPU31において、フラッシュ撮影時に入力された測光情報に基づきフラッシュ11の本発光の光量が決定される。決定された光量の制御情報がフラッシュ11に送られ、この制御情報に基づいてフラッシュ11は撮影時に本発光の光量調節を行いながら被写体に照明光を照射する。またAFセンサ25により取得される合焦制御信号が信号処理部30に入力される。撮影時には信号処理部30はモータドライバ53に駆動信号を入力し、この駆動信号に基づきモータドライバ53は撮影光学系(図示せず)、メカシャッタ(図示せず)等を駆動する。これにより撮像素子23は被写体の画像データを取得する。
【0021】
撮像素子23により取得された画像データは信号処理部30に送られるとともに、SDRAM54にRAW形式で一時的に保存される。信号処理部30はこのRAW形式の画像データをJPEG形式等の画像データに圧縮することができる。LCDディスプレイ51は信号処理部30から出力される画像データに基づいて撮像画像を表示する。メモリカード55は信号処理部30から出力される画像データを保存する。操作部52は、カメラボディに設けられるフラッシュポップアップボタン13、レリーズボタン、撮影モード切替ダイアル等である。操作部52を操作することにより発生する動作指示信号がCPU31に入力される。
【0022】
図3はCPU31における本発光の光量を決定するための光量演算処理を示す概念図である。本実施形態において撮影はフラッシュ11(
図2参照)を発光させて行われる。輝度値変化量算出部101には撮影時にプリ発光する前の外光のみの状態で得られた第1の測光情報が入力される。測光センサ21(
図2参照)の受光面が7行11列の77個の領域に分割されており、測光情報は77個の領域について得られる。測光センサ21の各領域には、光電変換素子が設けられ、R(赤)成分、G(緑)成分、B(青)成分の各色成分の輝度値R1(x,y)、G1(x,y)、B1(x,y)(x=1,2,・・・11,y=1,2,・・・7)が領域毎に取得される。すなわち測光情報は分割された領域毎の各色成分の輝度情報を含む。
【0023】
また輝度値変化量算出部101には撮影時にプリ発光中に得られた第2の測光情報が入力される。第2の測光情報も第1の測光情報と同様に複数の領域に分割されており、各色成分の輝度値R2(x,y)、G2(x,y)、B2(x,y)が領域毎に取得される。輝度値変化量算出部101は、第1および第2の測光情報に基づき、領域毎の各色成分の輝度値の差dR(x,y)、dG(x,y)、dB(x,y)を算出する。dR(x,y)、dG(x,y)、dB(x,y)は以下の式(1)〜(3)により求められる。
dR(x,y) =R2(x,y)−R1(x,y) (1)
dG(x,y) =G2(x,y)−G1(x,y) (2)
dB(x,y) =B2(x,y)−B1(x,y) (3)
【0024】
領域毎の各色成分の輝度値の差dR(x,y)、dG(x,y)、dB(x,y)は反射領域判定部103に入力され、反射領域判定部103は領域毎の第1の比dR/dGと第2の比dB/dGを算出する。これは輝度値の変化量における各色成分の比がプリ発光の色成分の比と同等であるかを判断するためである。反射領域判定部103は領域毎に第1の比dR/dG、第2の比dB/dGがプリ発光の色成分の比に近いかどうかを判定する。すなわち、プリ発光の色成分の比から求められるそれぞれの上限値と下限値の範囲にあるかどうかが判定される。また上限値と下限値は、フラッシュ11が行う発光における光の発色に応じて、輝度値の変化量におけるいずれか一つの色成分といずれか他の色成分との比に対して設定されている。具体的には、m1≦dR/dG≦M1、かつ、m2≦dB/dG≦M2であるかどうかを判定する。
【0025】
第1の比dR/dG、第2の比dB/dGがそれぞれの上限値と下限値の範囲内である場合、反射領域判定部103は、その領域をプリ発光による反射光の光量が多い領域である反射領域であると判定する。すべての領域について反射領域かどうかの判定が完了すると、判定の結果が光量演算部105に入力される。反射領域が検出される場合、光量演算部105は反射領域が適正露光となる光量を演算する。すなわち光量演算部105は測光センサ21(
図2参照)が取得した測光情報に基づいてフラッシュ11(
図2参照)の照明光の照射光量を演算する。
【0026】
反射領域を特定する処理を
図4の例を用いて説明する。この例では、被写体には点滅するイルミネーションと人物とが含まれる。測光センサ21(
図2参照)によりプリ発光前に取得される第1の測光情報の概念
図P1には、イルミネーション領域A11と人物領域A12が示される。イルミネーション領域A11の輝度値は(R1,G1,B1)=(0,0,50)である。また人物領域A12の輝度値は(R1,G1,B1)=(100,50,0)である。これに対し、測光センサ21によりプリ発光中に取得される第2の測光情報の概念
図P2では、イルミネーション領域A21の輝度値も人物領域A22の輝度値もともに(R2,G2,B2)=(200,150,100)である。なお本明細書において輝度値は256諧調であり、0〜255の数値で表される。
【0027】
イルミネーション領域A11、A21の輝度値の差は(dR,dG,dB)=(200,150,50)と算出される。これに対し人物領域A12、A22の輝度値の差は(dR,dG,dB)=(100,100,100)と算出される。プリ発光の色成分の比から求められる第1の比dR/dGの下限値、上限値がそれぞれ、m1=0.8、M1=1.2であり、第2の比dB/dGの下限値、上限値がそれぞれ、m2=0.8、M2=1.2とする。
図4の例では、イルミネーション領域において、dR/dG=200/150>1.2(=上限値M1)、かつ、dB/dG=50/150(<下限値m2)であるため、イルミネーション領域は反射領域ではないと判定される。これに対し人物領域において(下限値m1≦)dR/dG=1(≦上限値M1)、かつ、(下限値m2≦)dB/dG=1(≦上限値M2)であるため、人物領域は反射領域であると判定される。
【0028】
図5を参照して反射領域の判定処理を用いて本発光の光量を調節する光量調節制御について説明する。ステップS1において測光センサ21(
図2参照)はプリ発光前に第1の測光情報を取得する。また測光センサ21はステップS2においてプリ発光中に第2の測光情報を取得する。ステップS3において輝度値変化量算出部101(
図3参照)は第1および第2の測光情報に基づいて領域毎の各色成分の輝度値の変化量dR、dG、dBを算出する。各色成分の輝度値の変化量に基づき、ステップS4において、反射領域判定部103(
図3参照)は領域毎の第1の比dR/dGと第2の比dB/dGを算出する。次にステップS5において、第1の比dR/dGが下限値m1と上限値M1の範囲内にあり、かつ、第2の比dB/dGが下限値m2と上限値M2の範囲内にあるかどうかを反射領域判定部103は領域毎に判定する。ステップS6において、ステップS5の条件を満たす領域は反射領域であると反射領域判定部103により判定される。一方ステップS7において、ステップS5の条件を満たさない領域は反射領域ではないと判定される。
【0029】
すべての領域についてステップS5の判定が完了すると、ステップS8において、光量演算部105(
図3参照)は、反射領域判定部103から入力された情報に基づき反射領域が存在するかどうかを判定する。反射領域が存在すると判定された場合、すなわち反射領域が1つでも存在する場合、ステップS9において、光量演算部105は反射領域が適正露光になるように、周知の手法によりフラッシュ11(
図2参照)の本発光の光量を演算する。一方、反射領域が存在しないと判定された場合、ステップS10において光量演算部105は周知の手法によりフラッシュ11の本発光の光量をフル発光、すなわち最大光量に決定する。
【0030】
このように本実施形態では、プリ発光前に取得された領域毎の各色成分の輝度値とプリ発光中に取得された領域毎の各色成分の輝度値との差を算出し、算出された差についての各色成分における輝度値の比である第1の比dR/dGと第2の比dB/dGを算出する。第1の比dR/dGと第2の比dB/dGが、それぞれプリ発光の色により求められる下限値と上限値の範囲内にある場合、プリ発光による反射光の光量が多い反射領域であると判定される。すなわち各色成分の輝度情報の変化量が所定の範囲である領域が反射領域として特定される。反射領域が存在する場合、反射領域に基づいて光量が演算され、反射領域が存在しない場合、フル発光が設定される。よって、プリ発光前とプリ発光中との間に、被写体の明るさがプリ発光以外の明るさの要因により変化した場合であっても、その明るさの要因の色がプリ発光の色に近似しない限り、その明るさの要因は反射領域の特定処理に影響を与えない。したがってプリ発光前とプリ発光中との間に、被写体の明るさがプリ発光以外の明るさの要因により変化した場合でも、本発光による反射光の光量が多い領域を推定することが可能となる。
【0031】
これに対して、本実施形態の反射領域特定処理を行わない場合について
図6を用いて説明する。この場合、
図4の例におけるフラッシュ撮影時に撮像素子により取得される画像P3では、イルミネーション領域A31より人物領域A32の方が暗くなる。これはイルミネーション領域A31と人物領域A32が反射領域であると判定されたためである。このような判定が生じるのは、従来の反射領域特定処理では、プリ発光前とプリ発光中とにおける領域毎の各色成分の輝度値の差を算出しないためである。これに対し本実施形態では領域毎の各色成分の輝度値の差を算出するため、人物領域A32のみが反射領域であると判定され、人物領域A32が適切な明るさである画像が得られる。
【0032】
反射領域を特定する処理を、さらに
図7の例を用いて説明する。この例では、被写体には人物とライトアップされた物体とが含まれるが、第1の測光情報の取得と第2の測光情報の取得の間に手振れが生じたものと仮定する。測光センサ21(
図2参照)によりプリ発光前に取得される第1の測光情報の概念
図P4には、ライトアップ物体領域A41と人物領域A42の他、空領域A43と地面領域A44が示される。ライトアップ物体領域A41、人物領域A42、空領域A43、地面領域A44の輝度値はそれぞれ、(R1,G1,B1)=(200,150,100)、(100,50,0)、(0,0,0)、(100,50,25)である。これに対し、
図8に示されるように、測光センサ21によりプリ発光中に取得される第2の測光情報の概念
図P5では、ライトアップ物体領域A51、人物領域A52、空領域A53、地面領域54の輝度値はそれぞれ、(R2,G2,B2)=(200,150,100)、(200,150,100)、(0,0,0)、(100,50,25)である。一方、概念
図P4と概念
図P5との間で、ライトアップ物体領域と人物領域が手振れにより右向きに変位している。
【0033】
図7の例において、概念
図P4と概念
図P5との間の輝度値の差の算出について
図9を用いて詳細に説明する。概念
図P6は概念
図P4(
図7参照)と概念
図P5(
図8参照)を重ね合せたものである。ライトアップ物体領域と人物領域において、実線Lcはプリ発光中の位置(概念
図P5)を示し、破線Ldはプリ発光前の位置(概念
図P4)を示す。ライトアップ物体領域の輝度値の差は、図に示される5つの領域A60、A61、A62、A63、A64毎に算出される。5つの領域それぞれについて、(dR,dG,dB)=(0,0,0)、(200,150,100)、(100,100,75)、(−200,−150,−100)、(−100,−100,−75)と算出される。これに対し、人物領域の輝度値の差も同様に、図に示される5つの領域A65、A66、A67、A68、A69毎に算出される。5つの領域それぞれについて、(dR,dG,dB)=(100,100,100)、(200,150,100)、(100,100,75)、(−100,−50,0)、(0,0,25)と算出される。
【0034】
このため第1の比dR/dGと第2の比dB/dGのそれぞれの下限値、上限値が
図4の例と同じ場合、5つの領域A60、A61、A62、A63、A64の第1の比dR/dGと第2の比dB/dGは、下限値から上限値の範囲に含まれない。これに対し、領域A65の第1の比dR/dGと第2の比dB/dGは、下限値と上限値の範囲に含まれる。このため人物領域のうち領域A65のみが反射領域であると判定される。
【0035】
このように本実施形態によれば、第1の測光情報の取得と第2の測光情報の取得の間に手振れが生じた場合でも、人物領域のうち主要な領域A65を反射領域として特定できる。このためプリ発光による反射光の光量が多い領域を適切に特定することが可能となる。
【0036】
これに対して、
図7の例で本実施形態の反射領域特定処理を行わない場合について
図10を用いて説明する。この場合、プリ発光前とプリ発光時に取得される輝度値の差を示す概念
図P7において、ライトアップ物体の一部の領域A71と人物領域A72の両方が反射領域として特定される。
【0037】
なお、
図1において照明手段が内蔵フラッシュであるとして説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち照明手段にはカメラに外付けされるフラッシュや、LED照明などの連続照明手段も含まれる。また本発光を行う照明手段とプリ発光を行うプリ発光手段とが別部材でもよい。また測光手段は撮像素子23(
図2参照)でもよい。また測光手段が測光センサの場合、撮影光学系とファインダスクリーンを通った光を測光してもよいし、測光用の光学系を通った光を測光してもよい。また測光センサは数万(数百×数百)画素のCCDでもよい。
【0038】
また、本実施形態では通常カメラのフラッシュに使用されるキセノン管は白色光であるため、第1の比dR/dGの下限値m1と上限値M1、第2の比dB/dGの下限値m2と上限値M2はすべて約1に設定されるが、本発明はこれに限定されない。すなわちプリ発光の光源の色が少し赤い場合や少し青い場合でも、その光源の色に基づいて上限値と下限値が設定される。
【0039】
また、本実施形態では第1の比dR/dGと第2の比dB/dGが所定の範囲にあるかどうかにより反射領域が特定されたが、各色成分の変化量dR、dG、dBが所定の範囲にあるかどうかにより反射領域が特定されてもよい。例えば赤い光を発光するAF補助光によりプリ発光が行われる場合に、R成分の変化量dRが所定の範囲にあるか判定されてもよい。
【0040】
また、本実施形態では1つの反射領域が特定される場合について説明したが、複数の反射領域が特定される場合もある。この場合、反射領域における各色成分の変化量dR、dG、dBの大きさ、および/または反射領域が有する面積の大きさに基づいて適正露光とする反射領域が決定され、フラッシュの照射光量が演算される。この場合、各色成分の変化量dR、dG、dBが大きい反射領域が適正露光となるようにフラッシュの照射光量が演算されてもよい。また最大の面積を有する反射領域が適正露光となるようにフラッシュの照射光量が演算されてもよい。
【0041】
また、本実施形態では被写体における全体の領域を測光する全面測光の場合について説明したが、被写体における一部の領域を測光する部分測光の場合もある。一部の領域は、例えば全体の10%の面積を有する中央部分である。全面測光と部分測光との選択は、撮影者による操作部52(
図2参照)からの入力に基づいてもよいし、撮影レンズの焦点距離に応じて自動的に行われてもよい。部分測光の場合、焦点距離の短い広角レンズの場合には測光する領域が狭くされ、焦点距離の長い望遠レンズの場合には測光する領域が広くされてもよい。これは広角レンズの場合、空、地面、身の回りの物等、様々な対象が撮影の画角に入りやすいからである。部分測光の場合、CPU(測光領域設定手段)31(
図2参照)は被写体における複数の領域の中から、測光センサ21(
図2参照)が測光情報を取得する領域を測光領域として設定する。設定された測光領域において光量演算部105(
図3参照)は反射領域を特定する。
【0042】
また、本実施形態では輝度情報の色成分がR/G/Bの組み合わせである場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、R/G/BまたはY/M/Cの組み合わせのいずれかを含めばよい。
【0043】
また、本発明が適用されるカメラは専用の測光光学系を有するとともにレンズ交換が行われないコンパクトカメラやミラーレス一眼レフカメラでもよい。すなわち本発明が適用されるカメラにおいて、撮影光学系を介した被写体像が撮像素子に結像して撮影データの取得が可能である。また測光手段が、撮影光学系とは異なる測光光学系を介した被写体像により測光情報を取得する位置に配置されている。
【符号の説明】
【0044】
10 カメラ
11 フラッシュ
21 測光センサ
23 撮像素子
30 信号処理部
31 CPU
101 輝度値変化量算出部
103 反射領域判定部
105 光量演算部
P1、P2、P4〜P7 概念図
P3 画像
A11、A21、A31 イルミネーション領域
A41、A51 ライトアップ物体領域
A12、A22、A32、A42、A52、A72 人物領域
A60〜A69、A71 領域