特許第6255952号(P6255952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6255952交差穴加工装置および交差穴の稜線加工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6255952
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】交差穴加工装置および交差穴の稜線加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 31/00 20060101AFI20171227BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   B24B31/00 C
   B24C1/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-249121(P2013-249121)
(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公開番号】特開2015-104791(P2015-104791A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】三辻 寛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 毅
【審査官】 稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−237197(JP,A)
【文献】 特開2006−015467(JP,A)
【文献】 特開2008−005895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 3/00− 3/60
21/00−39/06
B24C 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の穴と、前記第1の穴に交差する第2の穴を有する工作物の、前記第1の穴の開口と前記第2の穴の開口の少なくも1つの前記開口へ、液体と硬質粒子を混合した加工液を注入する加工液注入装置を備え、前記第1の穴と前記第2の穴の交差部の稜線に発生したバリのバリ取りと、前記稜線を面取りする、交差穴加工装置において、
前記交差部に配置される流路調整具と、
前記稜線と前記流路調整具の隙間を調整する隙間調整手段を備え
前記流路調整具は、内部に空孔を備えた弾性体で構成され、
前記隙間調整手段は、前記空孔に流体を充填して前記流路調整具を膨張させる流体供給手段を備える交差穴加工装置。
【請求項2】
バリ取りの経過時間に対応して前記稜線と前記流路調整具の隙間を調整するように、前記隙間調整手段を制御する制御手段を備える請求項1に記載の交差穴加工装置。
【請求項3】
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の交差穴加工装置を用いて、第1の穴と前記第1の穴に交差する第2の穴を有する工作物の交差部の稜線のバリ取り、または前記稜線の面取りを行う交差穴の稜線加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作物に2つの穴が交差して形成される交差穴の、交差部の稜線に発生したバリの除去や、稜線部の面取り加工などを行う、交差穴加工装置および交差穴の稜線加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内部に複数の管路を連通して流体を所望に作用を行わせる部材において、管路を交差する穴で形成する場合に、穴の交差部の稜線にバリが発生する。バリが発生すると流体の流れが乱されたり、剥離したバリ片が管路内部で詰まったりするため、バリを除去することが重要である。交差部のバリ取りの方法として、穴の開口部から液体と硬質粒子の混合した加工液を穴に注入して、交差部のバリの有る稜線側の流路に流路調整具を固定し、稜線と流路調整具の隙間を狭くしてバリ近傍の流路を狭くすることで、バリ近傍における加工液の流速を速くして、交差部のバリを除去する技術がある。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−237197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術で、交差部のバリを効率よく除去するためには、バリ近傍における加工液の流速を所定の速度に設定することが重要である。このため、加工液の流量とバリ近傍の流路の広さが適切である必要がある。しかし、バリの背丈の高さより小さな隙間に設定するとバリが流路調整具により押し付けられて除去できなくなるため、最大のバリの高さより隙間を小さくすることができない。このため、流路調整具と稜線の隙間は、バリの最大高さより大きな隙間となる。一般に、バリの背丈が高いほど除去が容易で、低いものは除去が困難である。このため、背丈の低いバリの除去に時間を要し、全体としてのバリ除去時間が長くなる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、バリの背丈の高低に関係なくバリの除去効率を高くして、交差穴の交差部のバリ取りと面取り加工を効率よくできる、交差穴加工装置および交差穴の稜線加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための請求項1に係る発明の特徴は、第1の穴と、前記第1の穴に交差する第2の穴を有する工作物の、前記第1の穴の開口と前記第2の穴の開口の少なくも1つの前記開口へ、液体と硬質粒子を混合した加工液を注入する加工液注入装置を備え、前記第1の穴と前記第2の穴の交差部の稜線に発生したバリのバリ取りと、前記稜線を面取りする、交差穴加工装置において、前記交差部に配置される流路調整具と、前記稜線と前記流路調整具の隙間を調整する隙間調整手段を備えることである。
【0006】
さらに、前記流路調整具は、内部に空孔を備えた弾性体で構成され、前記隙間調整手段は、前記空孔に流体を充填して前記流路調整具を膨張させる流体供給手段を備えることである。
【0007】
請求項に係る発明の特徴は、請求項1に係る発明において、バリ取りの経過時間に対応して前記稜線と前記流路調整具の隙間を調整するように、前記隙間調整手段を制御する制御手段を備えることである。
【0008】
請求項に係る発明の特徴は、請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の交差穴加工装置を用いて、第1の穴と前記第1の穴に交差する第2の穴を有する工作物の交差部の稜線のバリ取り、または前記稜線の面取りを行うことである。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、流路調整具と稜線の隙間を調整することで、この隙間を通過する加工液の流速を調整することができる。バリ除去の効率は流速により変化し、高速であるほど効率が高くなる。隙間調整手段により所望の隙間を設定することで、所望の効率でバリを除去することができる交差穴加工装置を実現できる。
【0010】
さらに、内部に空孔を備えた弾性体で構成された流路調整具に流体供給手段により流体を充填することで流路調整具を膨張させることができる。流路調整具の膨張度合いにより、流路調整具と稜線の隙間を所望の隙間に容易に調整することができる交差穴加工装置を実現できる。
【0011】
請求項に係る発明によれば、バリ除去の進行状況に応じて流路調整具と稜線の隙間を最適の隙間に調整することができ、バリの除去や、稜線の面取りを効率よく行う交差穴加工装置を実現できる。
【0012】
請求項に係る発明によれば、請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の交差穴加工装置を用いることで、交差穴の稜線部の加工液の流速を速くすることが可能で、稜線に発生するバリの除去や、稜線の面取りを効率よく行える交差穴の稜線加工方法を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バリの背丈の高低に関係なくバリの除去効率を高くして、交差穴の交差部のバリ取りと面取り加工を効率よくできる、交差穴加工装置および交差穴の稜線加工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態における交差穴加工装置の全体概念図である。
図2】交差穴の交差部を示す断面図である。
図3】本発明の実施形態における流路調整具と交差部における配置状態を示す断面図である。
図4】本発明のバリ取り時の流路調整具と交差部の状況を示す図である。
図5】本発明のバリ取りの工程を示す工程図である。
図6】本発明の変形態様における流路調整具と交差部における配置状態を示す断面図である。
図7図6のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を説明する。
図1に示す交差穴加工装置1は、加工液注入装置を構成するタンク2、ポンプ3、管路4、注入口5を備え、工作物Wを保持する保持台6を備えている。タンク2内の加工液は、ポンプ3により管路4を経由して、工作物Wに装着された注入口5に供給され、工作部Wの内部を加工する。加工終了後の加工液は、保持台6からタンク2に連通する回収管路7によりタンク2に回収される。加工液は、水や油の液体と、アルミナや炭化ケイ素粉末等の硬質粒子の混合物であり、分離するのを防止するため、タンク2内の加工液を撹拌する撹拌装置8をタンク2の上部に備えている。保持台6上には、流路調整具9を移動する流路調整具駆動装置10が固定されている。流路調整具駆動装置10は、流路調整具9を、図示しないモータにより前後進運動させて、所望の位置に位置決めできる。また、流路調整具9には、流体供給手段を構成する切換弁12とエア源11が管路13を介して連結されている。
【0016】
交差穴加工装置1は、所定の操作を実行することで工作物Wの交差穴の稜線を加工する制御装置30を備えている。制御装置30の機能的構成として、加工液の供給を制御する加工液制御部31、流路調整具駆動装置10と切換弁12を制御する流路調整具制御部32などを具備している。
【0017】
ここで、工作部Wの交差穴の種類について説明する。
図2の(a)図に示すように、貫通穴W2a(第1の穴)を形成後に上部側からドリルで貫通穴W1a(第2の穴)を形成して交差穴を構成した場合、バリWbは、上側の貫通穴W1aの周囲の稜線に発生する。図2の(b)図に示す、貫通穴W2aを形成後に上部側からドリルで止まり穴W1bを形成した場合にも、バリWbは、上側の止まり穴W1bの周囲の稜線に発生する。
【0018】
図3は、工作物Wと流路調整具9を示す断面模式図であり、貫通穴W2aから交差部に流路調整具9を挿入した様子を示す。隙間調整手段を構成するため、流路調整具9は先端部91がゴムで成形されており内部に空孔92を備え、先端部91は軸93に連結し、軸93は内部にエア管路94を備えている。空孔92とエア管路94は連通しており、エア管路94に管路13を経由してエアを供給することで、先端部91を膨張させて稜線との隙間を調整することができる。
ここで、先端部91はゴムで成形された事例で説明したが、樹脂やダイヤフラム状の金属など、弾性変形可能な弾性体で成形されていればよい。
【0019】
以下に、交差穴加工装置1の作動を図4図5に基づき説明する。
工作物Wを保持台6に取り付ける(S1)。注入口5を貫通穴W1aのバリの発生している側の開口部に装着する。ここでは、磁力により工作部Wに吸着する(S2)。図4の(a)図に示すように、流路調整具9を流路調整具駆動装置10により貫通穴W2aの開口から、貫通穴W2aと貫通穴W1aの交差部まで挿入する。このとき、流路調整具9の先端部91は収縮した状態であり、先端部91と稜線の隙間はtである。tの大きさはバリWbの背丈の最大値より大きな値に設定されている(S3)。ポンプ3を起動して加工液を、注入口5を経由して貫通穴W1a内部に注入する。加工液は先端部91と稜線の隙間から貫通穴W2aに向かって流出し、加工液から受ける力が大きいため除去されやすい背丈の大なバリから除去が始まる(S4)。
【0020】
切換弁12を切換えて、エア源11からエアを流路調整具9に給気して空孔92にエアを充填する。給気にともない先端部91は膨張し、先端部91と稜線の隙間は狭くなり、所定の時間経過後に、図4の(b)図に示すように隙間tとなる。隙間が狭いほど、加工液の流速度は速くなり、背丈の低いバリも効率よく除去できる。給気の速度は、バリの除去能率にあわせて稜線のバリ取りと面取りに必要な時間が確保できる速度にあらかじめ設定されている(S5)。切換弁12を切換えて、流路調整具9からエアを排気する。排気につれ先端部91は収縮し、先端部91と稜線の隙間は広くなり、図4の(c)図に示すように隙間tとなる(S6)。ポンプ3を停止して加工液の注入を停止する(S7)。流路調整具9を後退させ、貫通穴W2aから抜く(S8)。注入口5を貫通穴W1aの開口部から取り外す(S9)。工作物Wを保持台6から取り外す(S10)。
【0021】
以上のように、本実施形態によれば、流路調整具9の先端部91を膨張・収縮させることで流路調整具9の先端部91と稜線の隙間の大きさを調整できる。バリの背丈に合わせて除去開始時の隙間の大きさを調整することや、バリ除去の進行に併せて隙間を狭くすることで背丈の低いバリの除去能率を大きくすることができ、稜線のバリ除去や稜線先端の面取り加工の効率を向上することができる。
【0022】
上記の実施形態では、隙間調整手段として、流路調整具9の先端部91の空孔92にエアを充填して隙間の大きさを調整する事例を示したが、図6に示すように、流路調整具90を貫通穴W1aのバリの発生している稜線と反対の稜線側の開口から挿入し、流路調整具90を移動して隙間の大きさを調整してもよい。流路調整具90は、貫通穴W1aの内径よりわずかに小さな外径Dを備えた先端部901と軸部902より成る。また、図7に示すように、先端部901の端面は、交差する穴W2aの半径に近い半径Rを備えている。流路調整具90を図示しない移動装置によりX方向に前後進することで稜線と先端部901の間の隙間tの大きさを調整する。
【符号の説明】
【0023】
W:工作物 W1a:貫通穴 W2a:貫通穴 W1b:止まり穴 Wb:バリ 1:交差穴加工装置 2:タンク 3:ポンプ 4:管路 5:注入口 6:保持台 7:回収管路 8:撹拌装置 9:流路調整具 91:先端部 92:空孔 93:軸 94:エア管路 10:流路調整具駆動装置 11:エア源 12:切換え弁 13:管路 30:制御装置 31:加工液制御部 32:流路調整具制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7