【0017】
本発明で使用されるスルフィド化合物は、スルフィド部の両末端に、芳香族縮合複素環がアルキレン基を介して結合した左右対称の構造(ビス体構造)を有している。
当該化合物としては、例えば、
ビス(ベンズイミダゾリル−2)メチルスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブチルジスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブチルトリスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブチルテトラスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンチルジスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンチルトリスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンチルテトラスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキシルジスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキシルトリスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキシルテトラスルフィド、
2,2’−ビス(1−メチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(4−メチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(5−メチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−メチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−メチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−メチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
2,2’−ビス(1−エチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(4−エチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(5−エチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−エチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−エチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−エチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−n−プロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−n−プロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−n−プロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(1−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)プロピルジスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ブチルジスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ペンチルジスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ヘキシルジスルフィド、
2,2’−ビス(4-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(4-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(4-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
2,2’−ビス(5-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(5-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(5-メチルベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(6-メチルベンズオキサゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(6-メチルベンズオキサゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(6-メチルベンズオキサゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルジスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルトリスルフィド、
2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(ベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
4,4’−ビス(ベンズチアゾリル−2)ブチルジスルフィド、
5,5’−ビス(ベンズチアゾリル−2)ペンチルジスルフィド、
6,6’−ビス(ベンズチアゾリル−2)ヘキシルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−メチルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(4−メチルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(4−メチルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(5−エチルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(5−エチルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(5−エチルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(6−n−プロピルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(6−n−プロピルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(6−n−プロピルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、
3,3’−ビス(7−イソプロピルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、
3,3’−ビス(7−イソプロピルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、
3,3’−ビス(7−イソプロピルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド
等が挙げられる。なお、これらのスルフィド化合物は、1種または2種以上を組み合わせてもよい。
前記スルフィド化合物は、1,2−ジアミノベンゼン系化合物、2−アミノチオフェノール系化合物または2−アミノフェノール系化合物のいずれかと、チオジカルボン酸系化合物を、4N希塩酸中で反応させることによって、容易に合成することができ、特許文献1にその製造方法が詳細に開示されている。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0025】
比較例1
表1に示す配合(質量部)において、加硫系配合物を除く配合物を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーに入れ、混合時の最高温度が160℃となるように5分間混練した(初期混合工程)。続いて、加硫系配合物を加え、オープンロールで混合時の最高温度が110℃となるように、2分混合した(最終混合工程)。得られたタイヤ用ゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法でタイヤ用ゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。なお、本例ではスルフィド化合物は配合していない。
【0026】
スコーチ:タイヤ用ゴム組成物に対し、JIS K6300に準拠して、温度125℃にて粘度が5ムーニー単位上昇する時間を測定した。比較例1の値を100として指数表示した。値が大きいほうがスコーチに優れることを意味する。
tanδ(60℃):加硫ゴム試験片に対し、(株)東洋精機製作所製、粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hzで測定した。比較例1の値を100として指数表示した。値が小さいほうが発熱が低く転がり抵抗に優れることを意味する。
スコーチCV値:サンプル数を20とし、前記スコーチを測定し、標準偏差/平均値を算出した。CV値が大きい場合、スコーチのばらつきも大きいことを意味する。
結果を表1に併せて示す。
【0027】
比較例2
比較例1において、スルフィド化合物として2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド(2EBZ)を用い、初期混合工程で表1に示す配合量でもって配合し混合したこと以外は、比較例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0028】
比較例3
比較例1において、スルフィド化合物として2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルテトラスルフィド(4EBZ)を用い、初期混合工程で表1に示す配合量でもって配合し混合したこと以外は、比較例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0029】
比較例4
比較例1において、加硫促進剤を増量したこと以外は、比較例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0030】
実施例1
比較例1において、スルフィド化合物として2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド(2EBZ)を用い、最終混合工程で表1に示す配合量でもって配合し混合したこと以外は、比較例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0031】
実施例2
比較例1において、スルフィド化合物として2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルテトラスルフィド(4EBZ)を用い、最終混合工程で表1に示す配合量でもって配合し混合したこと以外は、比較例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0032】
実施例3〜6
下記表2に示す配合(質量部)において、各種配合物を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーに入れ、混合時の最高温度が110℃となるように5分間混練し、マスターバッチを調製し、このマスターバッチを最終混合工程で表1に示す配合量でもって配合し混合したこと以外は、比較例1を繰り返した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
*1:NR(SIR20)
*2:カーボンブラック(新日化カーボン(株)製ニテロン♯200、BET比表面積78m
2/g、DBP給油量88ml/100g)
*3:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸YR)
*4:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*5:2EBZ(四国化成工業(株)製2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド)
*6:4EBZ(四国化成工業(株)製2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルテトラスルフィド)
*7:硫黄(細井化学工業(株)製油処理イオウ)
*8:加硫促進剤(三新化学工業(株)製ノクセラー NS-P、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0036】
上記の表から明らかなように、実施例1〜6で調製されたタイヤ用ゴム組成物は、スルフィド化合物を添加し混合する際の混合温度を特定温度以下に設定したので、該スルフィド化合物を使用していない比較例1と比較しても、同等のスコーチを示し加工性の悪化が防止され、かつ良好な転がり抵抗性を有することが分かる。
ここで実施例1と実施例3、実施例2と実施例4、を比較すると、それぞれの実施例のペアは同じ配合処方であるにもかかわらず、スルフィド化合物をマスターバッチ化した実施例3および4のほうが、良好な転がり抵抗性を示している。またスコーチのばらつき(スコーチCV値)も、実施例3および4のほうが良好である。とくに実施例5および6は、マスターバッチに加硫系配合物を添加しているので、転がり抵抗性がさらに良化している。
これに対し、比較例2および3は、スルフィド化合物を、混合時の最高温度が160℃である初期混合工程で混合しているので、スコーチが悪化している。
比較例4は、スルフィド化合物を配合せず、単に加硫促進剤を増量した例であるので、スコーチが悪化した。