【実施例】
【0038】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
実施例における物性の測定方法は次の方法に従って行った。
【0039】
(1)対数粘度(η
inh)
臭化リチウムを2.5質量%含有したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、ポリマーを0.5g/dlの濃度で溶解させ、ウベローデ粘度計を使用して、30℃にて流下時間を測定した。ポリマーを溶解させないブランク溶液の流下時間も同様に測定し、下式を用いて対数粘度(η
inh)を算出した。
【0040】
η
inh(dl/g)=〔ln(t/t
0)〕/0.5
t:ポリマー溶液の流下時間(sec)
t
0:ブランク溶液の流下時間(sec)
(2)厚み
定圧厚み測定器FFA−1(尾崎製作所製)を用いて多孔質膜の厚みを測定した。測定子径は5mm、測定荷重は1.25Nである。多孔質膜の幅方向に、20mm間隔で10箇所測定し、平均値を求めた。
【0041】
(3)ガーレ透気度
測定はJIS−P8117(1998年)に規定された方法に則り、B型ガーレデンソメーター(安田精機製作所製)を使用して行った。試料の多孔質膜を直径28.6cm、面積645mm
2の円孔に締め付け、内筒により(内筒質量567g)、筒内の空気を試験円孔部から筒外へ通過させ、空気100mlが通過する時間を測定することで、ガーレ透気度とした。なお、通過時間が1,000secを超過した場合、透気なしとして、測定を中断した。
【0042】
(4)光線透過率
分光光度計U−4100(日立製作所製)と角度可変透過測定付属装置を用い、入射角度0°での光線透過率を測定した。スリット幅は2nm、ゲインは2と設定し、走査速度600nm/分にて波長400〜800nmの範囲において測定し、750nmおよび550nmにおける光線透過率を得た。試料の裏面側(基材側)がガラス側となるようにクリアガラスに貼り付けて、ガラス面側から光を入射させて測定した。
【0043】
(実施例1)
窒素気流下で脱水したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−DPE)を原料モノマーの合計モル数に対して35モル%溶解させた。その溶液に原料モノマーの合計モル数に対して35モル%の2−クロロ−テレフタル酸クロライド(CTPC)を添加して1時間撹拌し、柔軟芳香族ポリアミド部分を重合した。次に、原料モノマーの合計モル数に対して15モル%の2−クロロ−パラフェニレンジアミン(CPA)を上記の重合溶液に添加し、溶解させた。その後、原料モノマーの合計モル数に対して15モル%の2−クロロ−テレフタル酸クロライドを添加し、1時間撹拌することで、剛直芳香族ポリアミド部分を合成し、柔軟芳香族ポリアミド部分とブロック共重合化した。この溶液を炭酸リチウム、ジエタノールアミンで中和することで、ポリマー濃度12質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.3dl/gであった。
【0044】
次に、得られた芳香族ポリアミド溶液中に、ポリビニルピロリドン(PVP、粘性特性値K90)、水、希釈用のNMPを以下の組成となるように添加し、60℃で2時間撹拌することで製膜原液を得た。製膜原液中のそれぞれの成分の含有量は製膜原液100質量%に対して、芳香族ポリアミド9質量%、PVP5質量%、水6質量%であり、残りの80質量%はNMPおよび重合原液に含まれる中和塩(塩化リチウム、ジエタノールアミン塩酸塩)である。
【0045】
この製膜原液を、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に口金から膜状に塗布した。この膜状物を温度40℃、相対湿度85%RHで調湿された調湿空気槽に2分間導入し、膜状物全体を失透させた。失透した膜状物をPETフィルムから剥離し、水浴に10分間導入し溶媒の抽出を行った。溶媒抽出後、230℃のオーブン中で1分間熱処理を行い、芳香族ポリアミド多孔質膜を得た。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0046】
(実施例2)
口金からの塗布厚みを変更すること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミド多孔質膜を得た。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0047】
(実施例3)
NMPに4,4’−DPEを原料モノマーの合計モル数に対して40モル%溶解させた。その溶液に原料モノマーの合計モル数に対して40モル%のCTPCを添加して1時間撹拌し、柔軟芳香族ポリアミド部分を重合した。次に、原料モノマーの合計モル数に対して10モル%のCPAを重合溶液に添加し、溶解させた。その後、原料モノマーの合計モル数に対して10モル%のCTPCを添加し、1時間撹拌して剛直芳香族ポリアミド部分を合成し、ブロック共重合化した。以降、実施例1と同様に中和を行い、ポリマー濃度12質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.2dl/gであった。
【0048】
この重合溶液を用いて実施例1と同様に製膜原液の調製、多孔質膜の製造を行った。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0049】
(実施例4)
NMPに4,4’−DPEを原料モノマーの合計モル数に対して30モル%溶解させた。その溶液に原料モノマーの合計モル数に対して30モル%のCTPCを添加して1時間撹拌し、柔軟芳香族ポリアミド部分を重合した。次に、原料モノマーの合計モル数に対して20モル%のCPAを重合溶液に添加し、溶解させた。その後、原料モノマーの合計モル数に対して20モル%のCTPCを添加し、1時間撹拌して剛直芳香族ポリアミド部分を合成し、ブロック共重合化した。以降、実施例1と同様に中和を行い、ポリマー濃度12質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.3dl/gであった。
【0050】
この重合溶液を用いて実施例1と同様に製膜原液の調製、多孔質膜の製造を行った。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0051】
(実施例5)
実施例1と同様にして得られた芳香族ポリアミド溶液を用い、製膜原液中のそれぞれの成分の含有量を、製膜原液100質量%に対して、芳香族ポリアミド11質量%、PVP2質量%、水6質量%、NMPおよび中和塩81質量%とすること、および口金からの塗布厚みを変更すること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミド多孔質膜を得た。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0052】
(実施例6)
NMPに4,4’−DPEを原料モノマーの合計モル数に対して25モル%溶解させた。その溶液に原料モノマーの合計モル数に対して25モル%のCTPCを添加して1時間撹拌し、柔軟芳香族ポリアミド部分を重合した。次に、原料モノマーの合計モル数に対して25モル%のCPAを重合溶液に添加し、溶解させた。その後、原料モノマーの合計モル数に対して25モル%のCTPCを添加し、1時間撹拌して剛直芳香族ポリアミド部分を合成し、ブロック共重合化した。以降、実施例1と同様に中和を行い、ポリマー濃度12質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.3dl/gであった。
【0053】
この重合溶液を用いて実施例1と同様に製膜原液の調製、多孔質膜の製造を行った。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0054】
(実施例7)
NMPに4,4’−DPEを原料モノマーの合計モル数に対して45モル%溶解させた。その溶液に原料モノマーの合計モル数に対して45モル%のCTPCを添加して1時間撹拌し、柔軟芳香族ポリアミド部分を重合した。次に、原料モノマーの合計モル数に対して5モル%のCPAを重合溶液に添加し、溶解させた。その後、原料モノマーの合計モル数に対して5モル%のCTPCを添加し、1時間撹拌して剛直芳香族ポリアミド部分を合成し、ブロック共重合化した。以降、実施例1と同様に中和を行い、ポリマー濃度12質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.3dl/gであった。
【0055】
この重合溶液を用いて実施例1と同様に製膜原液の調製、多孔質膜の製造を行った。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0056】
(実施例8)
NMPに4,4’−DPEを原料モノマーの合計モル数に対して35モル%溶解させた。その溶液に原料モノマーの合計モル数に対して34モル%のCTPCを添加して1時間撹拌し、柔軟芳香族ポリアミドを重合した。次に、上記の柔軟芳香族ポリアミドとは別の反応容器中において、NMPに原料モノマーの合計モル数に対して15モル%のCPAを添加し、溶解させた。その後、原料モノマーの合計モル数に対して14モル%のCTPCを添加して1時間撹拌し、剛直芳香族ポリアミドを重合した。以上により得られた柔軟芳香族ポリアミドと剛直芳香族ポリアミドを同一容器内で混合した後、原料モノマーの合計モル数に対して2モル%のCTPCを添加して1時間撹拌し、ブロック共重合化した。この溶液を炭酸リチウム、ジエタノールアミンで中和することで、ポリマー濃度12質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.4dl/gであった。
【0057】
この重合溶液を用いて実施例1と同様に製膜原液の調製、多孔質膜の製造を行った。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例9)
NMPに4,4’−DPEを原料モノマーの合計モル数に対して30モル%溶解させた。その溶液に原料モノマーの合計モル数に対して30モル%のイソフタル酸クロライド(IPC)を添加して1時間撹拌し、柔軟芳香族ポリアミド部分を重合した。次に、原料モノマーの合計モル数に対して20モル%のCPAを上記の重合溶液に添加し、溶解させた。その後、原料モノマーの合計モル数に対して20モル%のテレフタル酸クロライド(TPC)を添加し、1時間撹拌することで、剛直芳香族ポリアミド部分を合成し、柔軟芳香族ポリアミド部分とブロック共重合化した。この溶液を炭酸リチウム、ジエタノールアミンで中和することで、ポリマー濃度12質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.3dl/gであった。
【0059】
この重合溶液を用いて実施例1と同様に製膜原液の調製、多孔質膜の製造を行った。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例10)
口金からの塗布厚みを変更すること以外は実施例9と同様にして、芳香族ポリアミド多孔質膜を得た。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例11)
NMPにCPAを原料モノマーの合計モル数に対して40モル%溶解させた。その溶液に原料モノマーの合計モル数に対して40モル%のIPCを添加して1時間撹拌し、柔軟芳香族ポリアミド部分を重合した。次に、原料モノマーの合計モル数に対して10モル%のCPAを上記の重合溶液に添加し、溶解させた。その後、原料モノマーの合計モル数に対して10モル%のCTPCを添加し、1時間撹拌することで、剛直芳香族ポリアミド部分を合成し、柔軟芳香族ポリアミド部分とブロック共重合化した。この溶液を炭酸リチウム、ジエタノールアミンで中和することで、ポリマー濃度12質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.3dl/gであった。
【0062】
この重合溶液を用いて実施例1と同様に製膜原液の調製、多孔質膜の製造を行った。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
NMPに4,4’‐DPEを原料モノマーの合計モル数に対して20モル%溶解させた。その溶液に原料モノマーの合計モル数に対して20モル%のCTPCを添加して1時間撹拌し、柔軟芳香族ポリアミド部分を重合した。次に、原料モノマーの合計モル数に対して30モル%のCPAを重合溶液に添加し、溶解させた。その後、原料モノマーの合計モル数に対して30モル%のCTPCを添加し、1時間撹拌して剛直芳香族ポリアミド部分を合成し、ブロック共重合化した。以降、実施例1と同様に中和を行い、ポリマー濃度12質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.1dl/gであった。
【0064】
この重合溶液を用いて実施例1と同様に製膜原液の調製、膜の製造を行ったが、得られた膜は透気がなく、多孔質膜とならなかった。
【0065】
(比較例2)
NMPに4,4’‐DPEを原料モノマーの合計モル数に対して47.5モル%溶解させた。その溶液に原料モノマーの合計モル数に対して47.5モル%のCTPCを添加して1時間撹拌し、柔軟芳香族ポリアミド部分を重合した。次に、原料モノマーの合計モル数に対して2.5モル%のCPAを重合溶液に添加し、溶解させた。その後、原料モノマーの合計モル数に対して2.5モル%のCTPCを添加し、1時間撹拌して剛直芳香族ポリアミド部分を合成し、ブロック共重合化した。以降、実施例1と同様に中和を行い、ポリマー濃度12質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.1dl/gであった。
【0066】
この重合溶液を用いて、製膜原液中のそれぞれの成分の含有量を、製膜原液100質量%に対して、芳香族ポリアミド9質量%、PVP5質量%、水8質量%、NMPおよび中和塩78質量%とした。以降、実施例1と同様に多孔質膜の製造を行った。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0067】
(比較例3)
NMPにCPAと4,4’−DPEを原料モノマーの合計モル数に対してそれぞれ15モル%と35モル%溶解させた。この溶液に原料モノマーの合計モル数に対して50モル%のCTPCを添加し2時間重合を行った。以降、実施例1と同様に中和を行い、濃度12質量%の芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.1dl/gであった。
【0068】
この重合溶液を用いて、製膜原液中のそれぞれの成分の含有量を、製膜原液100質量%に対して、芳香族ポリアミド9質量%、PVP5質量%、水12質量%、NMPおよび中和塩74質量%とした。以降、実施例1と同様に多孔質膜の製造を行った。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0069】
(比較例4)
CPAおよび4,4’−DPEを原料モノマーの合計モル数に対していずれも25モル%とすること以外は比較例3と同様にして芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.4dl/gであった。
【0070】
この重合溶液を用いて比較例3と同様に製膜原液の調製、多孔質膜の製造を行った。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0071】
(比較例5)
CPAと4,4’−DPEを原料モノマーの合計モル数に対してそれぞれ35モル%と15モル%とすること以外は比較例3と同様にして芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.1dl/gであった。
【0072】
この重合溶液を用いて、口金からの塗布厚みを変更すること以外は比較例3と同様に製膜原液の調製、多孔質膜の製造を行った。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0073】
(比較例6)
CPAと4,4’−DPEを原料モノマーの合計モル数に対してそれぞれ42.5モル%と7.5モル%とすること以外は比較例3と同様にして芳香族ポリアミド溶液を得た。得られた芳香族ポリアミドの対数粘度は2.5dl/gであった。
【0074】
この重合溶液を用いて、製膜原液中のそれぞれの成分の含有量を、製膜原液100質量%に対して、芳香族ポリアミド10質量%、PVP4質量%、水4質量%、NMPおよび中和塩82質量%とした。以降、実施例1と同様に膜の製造を行ったが、得られた膜は透気がなく、多孔質膜とならなかった。
【0075】
(比較例7)
比較例2と同様にして得られた芳香族ポリアミド溶液を用い、製膜原液中のそれぞれの成分の含有量を、製膜原液100質量%に対して、芳香族ポリアミド10質量%、PVP2質量%、水8質量%、NMPおよび中和塩80質量%とすること、および口金からの塗布厚みを変更すること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミド多孔質膜を得た。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0076】
(比較例8)
比較例3と同様にして得られた芳香族ポリアミド溶液を用い、製膜原液中のそれぞれの成分の含有量を、製膜原液100質量%に対して、芳香族ポリアミド11質量%、PVP2質量%、水8質量%、NMPおよび中和塩79質量%とすること、および口金からの塗布厚みを変更すること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミド多孔質膜を得た。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0077】
(比較例9)
比較例5と同様にして得られた芳香族ポリアミド溶液を用い、製膜原液中のそれぞれの成分の含有量を、製膜原液100質量%に対して、芳香族ポリアミド11質量%、PVP4質量%、水8質量%、NMPおよび中和塩77質量%とすること、および口金からの塗布厚みを変更すること以外は実施例1と同様にして、芳香族ポリアミド多孔質膜を得た。得られた多孔質膜の評価結果を表1に示す。
【0078】
【表1】