特許第6256076号(P6256076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

特許6256076円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法
<>
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000002
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000003
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000004
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000005
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000006
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000007
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000008
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000009
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000010
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000011
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000012
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000013
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000014
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000015
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000016
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000017
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000018
  • 特許6256076-円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6256076
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/00 20060101AFI20171227BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20171227BHJP
   B24B 47/16 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   B24B9/00 601F
   B24B41/06 Z
   B24B47/16
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-25650(P2014-25650)
(22)【出願日】2014年2月13日
(65)【公開番号】特開2015-150637(P2015-150637A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平川 文一
(72)【発明者】
【氏名】大久保 直哉
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 和彦
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−006335(JP,A)
【文献】 特開2007−038354(JP,A)
【文献】 米国特許第02482485(US,A)
【文献】 特開平07−299717(JP,A)
【文献】 特開2005−297181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B1/00−1/04
B24B5/00−19/28
B24B41/00−51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円すいころの大端面側を径方向外側へ突出させた状態として当該円すいころを収容するポケットが周方向に複数設けられ、軸線の方向を上下方向とする円盤状のキャリアと、
前記キャリアと同心状に設けられ前記円すいころを上下から挟む上盤及び下盤と、
前記上盤と前記下盤とを前記軸線回りに相互に反対方向に回転駆動して前記円すいころを自転させながら前記軸線を中心として前記キャリアと共に公転させる回転駆動装置と、
平面視において円の一部が取り除かれた形状であり前記キャリアの径方向外側に当該キャリアと同心状に設けられ前記大端面に接触して当該大端面を研磨するための砥石と、
前記大端面に接触する前記砥石を上下方向に揺動させる揺動手段と、
を備えていることを特徴とする円すいころの研磨装置。
【請求項2】
前記揺動手段は、
前記軸線を中心として180°離間した支持箇所で前記砥石を揺動自在に支持する一対の支持装置と、
前記砥石の周方向に関して両支持箇所間の中央に位置する駆動箇所を上下方向に移動させる駆動装置と、
を備えている請求項1に記載の円すいころの研磨装置。
【請求項3】
前記揺動用駆動装置は、
揺動用モータと、
前記砥石の前記駆動箇所を保持するホルダーと、
前記軸線に直交する回転中心線を有し前記揺動用モータにより回転する駆動軸と、
前記回転中心線に対して平行でかつ偏心する偏心中心線を有し当該回転中心線回りに前記駆動軸と一体回転する偏心軸と、
前記偏心軸に外嵌すると共に当該偏心軸を前記ホルダーに回転自在に支持させるための軸受と、
を有し、
前記ホルダーには、前記偏心中心線と直交する水平方向に前記軸受を移動自在としかつ前記軸受に対して当該ホルダーが上下首振り動作可能となるようにして当該軸受を収容する溝部が形成されている請求項2に記載の円すいころの研磨装置。
【請求項4】
上下方向の軸線を中心として円すいころの大端面を径方向外側に向け当該円すいころを自転させながら公転させ、平面視において円の一部が取り除かれた形状である砥石の内周面に当該大端面を摺接させて研磨する円すいころの研磨方法であって、
前記大端面の研磨時に前記砥石を上下方向に揺動させることを特徴とする円すいころの研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円すいころの研磨装置、及び円すいころの研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円すいころ軸受では、円すいころの大端面が内輪の軸方向端部に設けられている鍔部に摺接することから、円すいころの大端面には、摩擦抵抗を低減するために研磨による仕上げ加工が施されている。このように大端面を研磨するための装置として、例えば、特許文献1に開示されている研磨装置がある。
【0003】
従来の研磨装置として、図17に示す装置がある。この研磨装置101は、軸線102aを上下方向とする支軸102を中心として回転自在に設けられた円盤状のキャリア103と、キャリア103の上下に配置された円盤状の上盤104及び下盤105と、上盤104用の回転駆動装置106及び下盤105用の回転駆動装置107と、キャリア103の径方向外側に設けられた砥石108とを有している。上盤104、下盤105及び砥石108は、キャリア103と同心状に配置されている。
【0004】
砥石108は、平面視において円の一部が取り除かれた形状(C形状)であり、この取り除かれている間欠領域において、研磨対象となる円すいころ110が上盤104と下盤105との間に投入され、また、研磨を終えた円すいころ110が上盤104と下盤105との間から取り出される。
キャリア103の外周縁部には、上下及び径方向外側に開口するポケット103aが周方向に複数形成されている。このポケット103aには、投入された円すいころ110が大端面110aを径方向外側として収容され、また、大端面110a側がポケット103aから径方向外側に突出した状態となる。
ポケット103aに収容された円すいころ110は、上盤104と下盤105との間に上下挟まれた状態にあり、回転駆動装置106、107により上盤104と下盤105とが周方向に関して相互に反対方向に回転する。これにより、円すいころ110には径方向外側へ向かう推力が生じて大端面110aが砥石108の内周面108aに押し付けられた状態となり、そして、この円すいころ110を自転させながら軸線102aを中心としてキャリア103と共に公転させることができる。
以上より、円すいころ110は前記間欠領域から研磨装置101に投入されると、支軸102を中心としてほぼ1周公転する間に大端面110aが砥石108に摺接して研磨され、そして、前記間欠領域において、大端面110aが研磨された円すいころ110が取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−297181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図17に示す研磨装置101により研磨作業を継続していると、砥石108に目詰まり等が生じて、研磨効率が徐々に低下してくる。このため、従来では、円すいころ110の研磨作業を休止して、砥石108の内周面108aの目立て作業を別途行う必要があり、作業効率が悪い。
【0007】
また、従来においては、次のような問題点もある。
まず、円すいころの形状に関して説明する。図18(a)は、テーパー角(率)T1が大きな円すいころ115(以下、大円すいころという)の説明図である。図18(b)は、テーパー角T2(T2<T1)が小さな円すいころ116(以下、小円すいころという)の説明図である。大(小)円すいころ115(116)の外周面115b(116b)を、小端面115c(116c)から延長すると、1点P2(P3)で収束する。以下、この収束する点をコーンセンタという。大小円すいころ115,116の大端面115a,116aは凸曲面であり、これら大端面115a,116aにおける、コーンセンタP2,P3を中心とする半径(以下、曲率半径という)をR4,R5とすると、R4<R5となる。つまり、円すいころ115,116では、テーパー角が大きくなるほど、曲率半径が小さくなる。
【0008】
そして、図17に示す研磨装置101では、砥石108の内周面108aは、支軸102の軸線102aを中心とする環状面となり、この内周面108aの内径をR6とすると、内径R6は、研磨対象となる円すいころ110の大端面110aにおけるコーンセンタP4を中心とする曲率半径R7と(ほぼ)同一となるように設定されている。
【0009】
そこで、前記のとおり(図18(a)(b)参照)、円すいころ110のテーパー角が大きくなるほどその曲率半径が小さくなるが、図17に示すように、研磨対象となる円すいころ110のテーパー角が大きくて曲率半径R7が小さくなると、砥石108の前記内径R6も小さくなり、これにより、砥石108の内周面108aの周方向長さが短くなる。
すなわち、これは、研磨装置101による研磨作業において、円すいころ110が投入されてから砥石108により研磨され、取り出されるまでの公転移動距離が短くなることを意味しており、また、円すいころ110の自転回数も少なくなる。このため、円すいころ110の曲率半径R7が小さい場合には、砥石108に対する円すいころ110の大端面110aの摺接(研磨)距離が短くなり、この結果、大端面110aを十分に研磨できず、大端面110aの取代不足が発生するおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、砥石の目詰まりを抑制可能であり、研磨作業の効率を改善できる円すいころの研磨装置及び円すいころの研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の円すいころの研磨装置は、円すいころの大端面側を径方向外側へ突出させた状態として当該円すいころを収容するポケットが周方向に複数設けられ、軸線の方向を上下方向とする円盤状のキャリアと、前記キャリアと同心状に設けられ前記円すいころを上下から挟む上盤及び下盤と、前記上盤と前記下盤とを前記軸線回りに相互に反対方向に回転駆動して前記円すいころを自転させながら前記軸線を中心として前記キャリアと共に公転させる回転駆動装置と、平面視において円の一部が取り除かれた形状であり前記キャリアの径方向外側に当該キャリアと同心状に設けられ前記大端面に接触して当該大端面を研磨するための砥石と、前記大端面に接触する前記砥石を上下方向に揺動させる揺動手段とを備えていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、砥石を上下方向に揺動させることで、自転しながら公転する円すいころの大端面の各部の、砥石に対する摺接方向が種々な方向に変動する。この摺接方向の変動により、研磨作業をしながら砥石に対して目立てを行うことが可能となり、研磨作業の効率を改善できる。
ところで、前記のとおり、円すいころの大端面の曲率半径が小さくなるほど、砥石の内径が小さくなり、砥石の内周面の周方向長さ(加工距離)が短くなり、これにより、研磨作業において、円すいころが研磨装置に投入されてから排出されるまでの円すいころの公転移動距離が短くなって、円すいころの自転回数も少なくなる。
しかし、砥石を上下方向に揺動させることにより、円すいころの大端面と砥石との相対的な摺接運動には、円すいころの自転及び公転による運動以外に、砥石の上下揺動による運動も付加される。これにより、円すいころの大端面の各部に対する研磨を効率良く行うことができて、大端面に対して所望の取代を得ることができる。
【0013】
(2)なお、前記揺動手段は、前記軸線を中心として180°離間した支持箇所で前記砥石を揺動自在に支持する一対の支持装置と、前記砥石の周方向に関して両支持箇所間の中央に位置する駆動箇所を上下方向に移動させる駆動装置とを備えているのが好ましい。この構成によれば、揺動手段を簡易に構成できる。
【0014】
(3)また、前記揺動用駆動装置は、揺動用モータと、前記砥石の前記駆動箇所を保持するホルダーと、前記軸線に直交する回転中心線を有し前記揺動用モータにより回転する駆動軸と、前記回転中心線に対して平行でかつ偏心する偏心中心線を有し当該回転中心線回りに前記駆動軸と一体回転する偏心軸と、前記偏心軸に外嵌すると共に当該偏心軸を前記ホルダーに回転自在に支持させるための軸受とを有し、前記ホルダーには、前記偏心中心線と直交する水平方向に前記軸受を移動自在としかつ前記軸受に対して当該ホルダーが上下首振り動作可能となるようにして当該軸受を収容する溝部が形成されているのが好ましい。
この構成によれば、駆動軸により偏心軸を回転運動させるという簡易な機構で、砥石を上下方向に揺動させることができる。
【0015】
(4)また、本発明の円すいころの研磨方法は、上下方向の軸線を中心として円すいころの大端面を径方向外側に向け当該円すいころを自転させながら公転させ、平面視において円の一部が取り除かれた形状である砥石の内周面に当該大端面を摺接させて研磨する方法であって、前記大端面の研磨時に前記砥石を上下方向に揺動させることを特徴とする。
この構成によれば、上記(1)の研磨装置と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、研磨作業をしながら砥石の目立てを行うことが可能となり、研磨作業の効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る円すいころの研磨装置の平面図である。
図2図1のC−C線矢視簡略断面図である。
図3】円すいころの大端面の研磨作業を示す簡略斜視図である。
図4】砥石セットの平面図である。
図5図4のD−D線矢視断面図である。
図6図1のE−E線矢視断面図である。
図7図1のF−F線矢視断面図である。
図8】偏心調整装置及びその周囲を示す平面図である。
図9図8のG−G線矢視断面図である。
図10図9のH矢視図である。
図11図9のI−I線矢視断面図である。
図12】軸受及びその周囲の一部を示す拡大図である。
図13】砥石セットの上下揺動の説明図であり、(a)は説明図、(b)は(a)のJ−J線矢視簡略断面図である。
図14】砥石セットの上下揺動の説明図であり、(a)は図13(a)とは異なる状態を示す説明図、(b)は(a)のL−L線矢視簡略断面図である。
図15】砥石セットの上下揺動の説明図であり、(a)は図14(a)とは異なる状態を示す説明図、(b)は(a)のK−K線矢視簡略断面図である。
図16】砥石セットの揺動動作の説明図であり、(a)は図1のA矢視図であり、(b)は図1のB矢視図である。
図17】従来の円すいころの研磨装置を示す簡略断面図である。
図18】円すいころを示し、(a)はテーパー角が大きな円すいころの説明図、(b)はテーパー角が小さな円すいころの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る円すいころの研磨装置1の平面図である。図2は、図1のC−C線矢視簡略断面図である。図3は、この研磨装置1による円すいころ2の大端面2bの研磨作業を示す簡略斜視図である。
図1図2に示すように、研磨装置1は、軸線14aを上下方向とする支軸14を中心として回転自在に設けられた円盤状のキャリア3と、このキャリア3の上下に配置された円盤状の上盤4及び下盤5と、上盤4用の回転駆動装置6及び下盤5用の回転駆動装置7と、キャリア3の径方向外側に設けられ円すいころ2の大端面2bを研磨する砥石18を含む砥石セット8(図3参照)と、砥石セット8を上下方向に揺動させる揺動手段として機能する揺動ユニット9と、研磨対象となる円すいころ2の投入装置10と、研磨を終えた円すいころ2の排出シュート11とを有している。上盤4、下盤5及び砥石セット8は、キャリア3と同心状に配置されている。
研磨対象となる円すいころ2はテーパー状であり(図2参照)、円すいころ2は、軸方向一端に位置する小端面2aと、軸方向他端に位置する大端面2bと、テーパー状の外周面2cとを有する。なお、大端面2bにおけるコーンセンタPを中心とした曲率半径はR1である。曲率半径についての定義は、図18により説明したとおりである。
【0019】
研磨装置1の概略構成について説明する。
図1に示すように、砥石セット8(砥石18)は、平面視において円の一部が取り除かれた形状(C形状)であり、この取り除かれている間欠領域に、投入装置10と排出シュート11とが設けられている。投入装置10により、研磨対象となる円すいころ2が上盤4と下盤5との間に投入され、また、排出シュート11により、研磨を終えた円すいころ2が上盤4と下盤5との間から取り出される。
キャリア3の外周縁部には、上下及び径方向外側に開口するポケット3aが周方向に複数形成されている。このポケット3aには、図2に示すように、投入された円すいころ2が大端面2bを径方向外側として収容され、また、大端面2b側がポケット3aから径方向外側に突出した状態となる。
ポケット3aに収容された円すいころ2は、上盤4と下盤5との間に上下挟まれた状態にあり、回転駆動装置6、7により上盤4と下盤5とが周方向に関して相互に反対方向に回転する。これにより、円すいころ2には径方向外側へ向かう推力が生じて大端面2bが砥石18の内周面18aに押し付けられた状態となり、そして、この円すいころ2を自転させながら軸線14aを中心としてキャリア3と共に公転させることができる。
以上より、円すいころ2は前記間欠領域から研磨装置1に投入されると、軸線14aを中心としてほぼ1周公転する間に大端面2bが砥石18により研磨され、そして、前記間欠領域において、大端面2bが研磨された円すいころ2は取り出される。更に、本実施形態では、後にも説明するが、円すいころ2の大端面2bを砥石18により研磨している間、図16に示すように、この砥石セット8を、図1に示す揺動ユニット9により揺動させることができる。なお、図16は、後述する砥石セット8の揺動動作の説明図であり、図16(a)は図1のA矢視図であり、図16(b)は図1のB矢視図である。
【0020】
研磨装置1が備えている各部について更に説明する。
図1において、キャリア3は円盤状であり、その中心部に、軸線14aを上下方向とする支軸14が設けられている。この軸線14aを中心としてキャリア3は回転自在となる。キャリア3の外周縁部には、上下及び径方向外側に開口するポケット3aが周方向等間隔に複数配設されている。図2に示すように、ポケット3aには、円すいころ2が大端面2bを径方向外側として収容され、また、円すいころ2はポケット3aから上下及び径方向外側に突出する。
【0021】
上盤4は、キャリア3の上側にキャリア3と同心状に設けられている。上盤4の下面外周縁は、円すいころ2の外周面2cと当接する水平な当接面4aとなる。上盤4の外周面4bは、軸線14aを中心とする円筒面からなる。
下盤5は、キャリア3の下側にキャリア3と同心状に配設されている。下盤5の上面には、円すいころ2のテーパー形状と一致するように、支軸14に向かうに従って高くなるテーパー面5aが形成されている。テーパー面5aは円すいころ2の外周面2cに下から当接する。
上盤4と下盤5間に挟まれた状態にある円すいころ2のコーンセンタPは、軸線14a上に位置している。また、下盤5のテーパー面5aを上側に延長すると、このコーンセンタPに収束する。下盤5の外周面5bは、支軸14の軸線14aを中心とする円筒面からなる。
上盤4及び下盤5の外径R2は大端面2bの曲率半径R1よりも小さく、円すいころ2は上盤4の当接面4a及び下盤5のテーパー面5aよりも径方向外側に突出する。
【0022】
上盤4用の回転駆動装置6及び下盤5用の回転駆動装置7は、上盤4と下盤5とを周方向に関して相互に反対方向に回転駆動する。これにより、ポケット3a内の円すいころ2は、支軸14の軸線14aを公転軸として自転しながらキャリア3と共に公転する。回転駆動装置6,7には、電動モータ等が含まれる。
【0023】
砥石セット8は、キャリア3の径方向外側に設けられキャリア3と同心状に配置されている。図4は、砥石セット8の平面図である。図5は、図4のD−D線矢視断面図である。図4及び図5に示すように、砥石セット8は、平面視において、円の一部を取り除いた(切り取った)C形状であり、上下方向厚さが小さい。砥石セット8は、砥石セット8の大部分を構成する外周のセット本体17と、セット本体17の内周面17aに固着された砥石18とを有する。図5の符号18bは、砥石18の全周にわたる部分の上下方向中央位置を通過する中央位置表示面を示している。
砥石18は、円すいころ2の大端面2bに摺接して研磨する(図3参照)。図2に示すように、砥石18の内周面18aは、コーンセンタPを中心とする球面の一部となる。内周面18aの半径(以下、内径という)をR3とすると、内径R3は、円すいころ2の大端面2bの曲率半径R1と同一の大きさとされる。
【0024】
図1において、揺動ユニット9は、砥石セット8を上下方向に揺動させるためのものであり、砥石セット8を支持する一対の支持装置22と、砥石セット8を揺動させる揺動用駆動装置23とを有する。支持装置22は、セット本体17の支持箇所17bの径方向外側に設けられており、一方の支持装置22と、他方の支持装置22とは同じ構成である。
各支持装置22は、砥石セット8のセット本体17のうち、軸線14aを中心として周方向に180°離間した一対の支持箇所17bを、回転自在に支持する。これら支持装置22によれば、軸線14aと交差する水平線回りに砥石セット8を上下揺動させることができる。
【0025】
図6は、図1のE−E線矢視断面図である。図6に示すように、支持装置22は、台座(図示省略)に固定されたフレーム26と、フレーム26に固定された軸受装置27と、軸受装置27が有する一対の軸受28,29を介して回転自在に支持された支持軸30と、支持軸30の先端部に取り付けられたホルダー31とを有する。なお、台座に対するフレーム26の位置調整により、種々な外径を有する砥石セット8に対応可能となる。
支持軸30は、セット本体17の支持箇所17bを通過する径方向に沿って設けられている。ホルダー31は、支持箇所17bを一対のスペーサ34,35を介して上下から挟持する上顎体36及び下顎体37と、上顎体36と下顎体37とを締結するボルト38と、上顎体36と下顎体37との間に介装されるスペーサ39と、スペーサ39を固定するためのボルト40とを有する。
支持軸30の先端部は下顎体37に固定されている。また、支持軸30の軸線30aと、前記中央位置表示面18bとを上下方向に関して一致させるために、スペーサ34,35が適宜交換される。また、支持箇所17bの上下方向の厚さ等に応じて、スペーサ34,35,39が適宜交換される。
【0026】
図1において、揺動用駆動装置23は、セット本体17の周方向に関して両支持箇所17b間の中央に位置する駆動箇所17eを上下方向に揺動させる機能を有している。揺動用駆動装置23は、駆動箇所17eの径方向外側に設けられている。
図7は、図1のF−F線矢視断面図である。図7に示すように、揺動用駆動装置23は、台座(図示省略)に固定されたフレーム43と、揺動用モータ44と、駆動軸45と、偏心量調整装置46と、偏心軸47と、軸受48と、ホルダー49等を有する。なお、台座に対するフレーム43の位置調整により、種々な外径を有する砥石セット8に対応可能となる。
【0027】
揺動用モータ44はインバータ制御され、揺動用モータ44の回転数は調整可能である。これにより、砥石セット8の揺動速度が調整可能となる。
駆動軸45は揺動用モータ44の出力軸52と同心状であり、駆動軸45の基部がカップリング50を介して出力軸52の先端部と連結されている。駆動軸45は一対の軸受53,54を介してハウジング55に回転自在に支持されている。駆動軸45の先端部には偏心量調整装置46を介して偏心軸47が設けられている。揺動用モータ44の回転駆動により、駆動軸45と偏心軸47とは、軸線45a回りに一体回転する。
偏心量調整装置46は、駆動軸45の軸線45aの延長線45bを基準として、偏心軸47の偏心中心線となる軸線47c(図8参照)の偏心量eを調整する機能を有している。なお、図8は、図7の偏心量調整装置46及びその周囲の平面図である。図9は、図8の偏心量調整装置46におけるG−G線矢視断面図である。図10は、図9のH線矢視図である。図11は、図9のI−I線矢視断面図である。図8に示すように、偏心量調整装置46は、駆動軸45の先端部に固定された取付台58と、偏心量調整用スペーサ59と、装着板60とを有する。
【0028】
取付台58には、ホルダー49側に開口する蟻溝63(図9参照)が、軸線45aの延長線45bと直交する水平方向に沿って形成されている。図9において、蟻溝63は、広幅部63aと、広幅部63aよりも上下方向の幅が小さい狭幅部63bとを備えている。
この蟻溝63には、偏心軸47の基部(47a,47b)が、蟻溝63の形成方向(水平方向)に沿って摺動自在に設けられている。偏心軸47の基部は、蟻溝63の広幅部63aに挿入される大径部47aと、狭幅部63bに挿入される扁平部47bとからなる。
【0029】
図10図11に示すように、取付台58の水平方向両側面には、蟻溝63を一方側から施蓋する偏心量調整用スペーサ59と、蟻溝63の他方側の開口を施蓋する装着板60が、ボルト66,67により固定されている。偏心量調整用スペーサ59には、調整軸部59aが設けられており、この調整軸部59aは、蟻溝63内に挿入されてその先端部が偏心軸47の大径部47aに当接する。装着板60には(図11参照)、偏心軸47の大径部47aに螺合可能な調整ボルト68が設けられている。この調整ボルト68により、大径部47aを偏心量調整用スペーサ59の調整軸部59aに押し付け可能である。偏心量調整用スペーサ59の調整軸部59aの軸方向長さにより、駆動軸45に対する偏心軸47の偏心量eが設定される。
また、調整ボルト68にはロックナット69が螺結され、調整ボルト68の頭部68aとロックナット69とが装着板60に対し締結されている。また、取付台58には、偏心軸47を取付台58に固定するためのボルト71が設けられている。
以上のようにして、偏心量調整装置46は構成されている。
【0030】
図7に示すように、偏心軸47の先端部には、偏心軸47をホルダー49に回転自在に支持させるための軸受48が外嵌、固定されている。軸受48(図9参照)は、同心状とされた内輪72及び外輪73と、これらの間に配設された転動体とされる玉74とを有する。
また、図7において、ホルダー49は、砥石セット8のセット本体17の駆動箇所17eを保持する。ホルダー49は、駆動箇所17eを一対のスペーサ76,77を介して上下から挟持する上顎体78及び下顎体79と、上顎体78と下顎体79とを締結するボルト80と、上顎体78と下顎体79との間に介装されるスペーサ81と、このスペーサ81を固定するためのボルト82とを有する。
駆動軸45の軸線45aの延長線45bと前記中央位置表示面18bとを上下方向に関して一致させるために、スペーサ76,77が適宜交換される。また、駆動箇所17eの上下方向の厚さ等に応じて、スペーサ76,77,81が適宜交換される。
【0031】
図12は、図7の軸受48及びその周囲を示す拡大図である。図12に示すように、下顎体79の偏心量調整装置46側の端部は、軸受48を支持する支持部79aとなる。支持部79aは、偏心量調整装置46側に開口する軸受用溝部79bが、蟻溝63の形成方向と平行(水平方向)に形成されている。
溝部79bの水平方向両端部は開口しており、溝部79bに軸受48が収容されている。溝部79bの上下内面それぞれには、突出する湾曲状の突条79c,79dが溝部79bの形成方向に沿って形成されている。両突条79c,79dの間に軸受48が介装されており、軸受48は、両突条79c,79dに沿って、偏心軸47の軸線47c(軸受48の軸線)と直交する水平方向に摺動自在となる。
【0032】
各突条79c,79dと軸受48の外輪73とは、それぞれ、点接触する。また、両突条79c,79dの一方と外輪73との間に極めて小さな隙間を介在させる場合もある。
溝部79bの上下内面における各突条79c,79dの両側部と、軸受48の外輪73との間には隙間S1,S2が形成されている。これら隙間S1,S2により、軸受48に対してホルダー49は、セット本体17の駆動箇所17e(図7参照)と共に上下首振り動作(揺動)することが可能となる。この構成により、偏心軸47と共に軸受48が軸線45a(45b)回りに偏心回転すると、軸受48は溝部79bに沿って移動しながら、ホルダー49が上下首振り動作するとともに全体として上下動し、この上下動により支持箇所17eが上下動して砥石セット8が揺動する。
【0033】
図1に戻って、投入装置10及び排出シュート11は、キャリア3の径方向外側に配設されて、砥石セット8のセット本体17の周方向両端部17c,17d間に配設されている。投入装置10は、円すいころ2をキャリア3のポケット3aに投入する。排出シュート11は、大端面2bの研磨が終了した円すいころ2を外部に排出する。
【0034】
上記構成を備えた研磨装置1による研磨方法について説明する。
回転駆動装置6,7(図2参照)により、上盤4と下盤5とを周方向に関して相互に反対方向に回転駆動する。図1に示す投入装置10から、円すいころ2がキャリア3のポケット3aに次々と投入される。
投入された円すいころ2は上盤4と下盤5とにより挟まれると共に、支軸14を中心として自転しながらキャリア3と共に公転する。この自転と公転とにより、円すいころ2の大端面2bが砥石18の内周面18aに摺接し、大端面2bがこの内周面18aに対応した形状に研磨される。
【0035】
ところで、研磨装置1によりこのような研磨を継続していると、砥石8に目詰まり等が生じて砥石18の切れ味が低下し、研磨効率が徐々に低下してくる。
そこで、本実施形態では、砥石セット8を上下方向に揺動させるようにしている。これにより、自転しながら公転する円すいころ2の大端面2bの、砥石18に対する摺接方向が種々な方向に変動する。この変動により、円すいころ2の大端面2bの研磨作業を行いながら、砥石18の目立て作業が可能となる。この結果、従来のように目立て作業のために円すいころ2の研磨を休止する必要がなくなり、作業効率を改善できる。
なお、円すいころ2の大端面2bの研磨作業時に、砥石セット8を常時揺動させるのではなく、砥石18の切れ味(研磨効率)の低下に応じて間欠的に揺動させてもよい。
また、この研磨装置1を砥石18の目立て装置として使用することも可能である。この場合には、キャリア3のポケット3aに、円すいころ2ではなく、砥石18の目立てに適した部材を収容すればよい。
【0036】
砥石セット8の上下方向の揺動に関して説明する。図13(a)はその説明図、図13(b)は図13(a)のJ−J線矢視簡略断面図である。図14(a)は図13(a)とは異なる状態を示す説明図、図14(b)は図14(a)のL−L線矢視簡略断面図である。図15(a)は図14(a)とは更に異なる状態を示す説明図、図15(b)は図15(a)のK−K線矢視簡略断面図である。なお、図13(a)等において、支持装置22を簡略化して示している。
砥石セット8を揺動させるためには、揺動用モータ44の出力軸52を回転駆動する。この駆動により、出力軸52と連結された駆動軸45が軸線45a回りに回転する。この回転により、図13(b)、図14(b)及び図15(b)に示すように、偏心軸47が軸線45aを中心として円運動を行う。この円運動により、偏心軸47の先端部に設けられた軸受48が、ホルダー49の軸受用溝部79b内を水平方向に摺動すると共に、軸受48に対してホルダー49が砥石セット8の駆動箇所17eと共に上下首振り動作を行う(揺動する)。これにより、砥石セット8が下記のように揺動する。
【0037】
すなわち、図13(a)(b)に示すように、偏心軸47が円運動の最上位(上死点)に到達した際には、ホルダー49及び砥石セット8が最も大きく上側に変位する。この上側への変位時には、図13(a)に示すように、ホルダー49が下に向くようにして首をふる(揺動する)。
図14(a)(b)に示すように、偏心軸47が円運動の最下位(下死点)に到達した際には、ホルダー49及び砥石セット8が最も大きく下側に変位する。この下側への変位時には、図14(a)に示すように、ホルダー49が上に向くようにして首をふる(揺動する)。
そして、図15(a)(b)に示すように、偏心軸47が円運動の最上位と最下位との間の中間点に位置した際には、軸受48は軸受用溝部79b内で最も水平方向に変位した状態となる。この際には、砥石セット8も揺動域の中間位置となる。砥石セット8の中間位置では、砥石セット8は、通常、水平姿勢とされるが、傾斜姿勢とされる場合もある。なお、図13図15の各図において、eは、駆動軸45の軸線45aの延長線45bと偏心軸47の軸線47cとの距離、すなわち、偏心量を示している。
【0038】
ところで、砥石18の内径R3(図2参照)は円すいころ2の大端面2bの曲率半径R1とほぼ同一である。そのため、円すいころ2の曲率半径R1が小さくなるほど、砥石18の内径R3が小さくなり、砥石18の内周面18aの周方向長さ(加工距離)が小さくなる。このため、この砥石18による研磨において、円すいころ2が研磨装置1に投入されてから排出されるまでの円すいころ2の公転移動距離が小さくなり、円すいころ2の自転回数も少なくなる。
そこで、従来のように砥石セット8を固定していると、円すいころ2の大端面2bの各部に対する砥石18の研磨(摺接)距離が短くなって、大端面2bの各部を十分に研磨できず、大端面2bの取代不足が発生する問題がある。
【0039】
しかし、本実施形態では、円すいころ2の曲率半径R1が小さくなる場合であっても、砥石セット8を適宜上下方向に揺動させる。この揺動により、円すいころ2の大端面2bと砥石18との相対的な摺接運動には、円すいころ2の自転及び公転による運動以外に、砥石18の上下揺動による運動も付加される。
これにより、研磨作業時において、円すいころ2の大端面2bの各部に対する砥石18の研磨を効率良く行うことができ、大端面2bの取代不足の発生を抑制できる。これにより、取代不足による円すいころ2の廃棄を少なくしたり、大端面2bの再研磨作業を少なくできる。なお、円すいころ2の曲率半径R1が小さい場合でも、大端面2bの研磨作業時に、砥石セット8を常時揺動させるのではなく、大端面2bの取代不足に応じて間欠的に揺動させることも行われる。
なお、砥石セット8を適宜上下方向に揺動させて、砥石18により円すいころ2の大端面2bを研磨することで、理論上、大端面2bの曲率半径R1は砥石18の内径R3と同一の大きさとなる。
【0040】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく適宜変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、砥石セット8のセット本体17に支持装置22のための支持箇所17bや揺動用駆動装置23のための駆動箇所17eを設けて、支持装置22により砥石18を間接的に支持すると共に、揺動用駆動装置23により砥石18を間接的に揺動させるようにした。しかし、砥石18自体に支持装置22のための支持箇所や揺動用駆動装置23のための駆動箇所を設けて、支持装置22により砥石18を直接支持すると共に、揺動用駆動装置23により砥石18を直接揺動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1:研磨装置、 2:円すいころ、 2b:大端面、 3:キャリア、 3a:ポケット、 4:上盤、 5:下盤、 6:上盤用の回転駆動装置、 7:下盤用の回転駆動装置、 8:砥石セット、 9:揺動ユニット、 14:支軸、 17:セット本体、 17b:支持箇所、 17e:駆動箇所、 18:砥石、 22:支持装置、 23:揺動用駆動装置、 30:支持軸、 44:揺動用モータ、 45:駆動軸、 46:偏心量調整装置、 47:偏心軸、 48:軸受、 49:ホルダー、 79b:軸受用溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18