特許第6256095号(P6256095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6256095-スケール付着判定装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6256095
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】スケール付着判定装置
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/38 20060101AFI20171227BHJP
【FI】
   F22B37/38 E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-34318(P2014-34318)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-158341(P2015-158341A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】伊東 航
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−036688(JP,A)
【文献】 特開平06−003300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B37/00−37/78
G01N25/00−25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に缶水が供給される複数の水管を有し、該複数の水管を加熱して前記缶水から蒸気を生成するボイラにおける前記複数の水管へのスケールの付着を判定するスケール付着判定装置であって、
前記水管の表面温度を測定する温度センサと、
前記水管の表面の熱流束を測定する熱流センサと、
前記温度センサにより測定される水管の表面温度が基準温度を超えた場合にスケールが付着したと判定するスケール付着判定部と、
前記熱流センサにより測定される熱流束に応じて、前記基準温度を補正する基準温度補正部と、を備えるスケール付着判定装置。
【請求項2】
前記温度センサ及び前記熱流センサは、同一の前記水管に取り付けられる請求項1に記載のスケール付着判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラのスケール付着判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の水管を有し、これら複数の水管を加熱して、水管の内部に供給された水(缶水)から蒸気を生成する蒸気ボイラが広く用いられている。このような蒸気ボイラでは、缶水の蒸発に伴い、缶水に含まれる硬度成分が析出して水管の内面にスケールとして付着する。水管に付着したスケールの厚みが増すと、水管に加えられた熱が缶水に伝わりにくくなり、水管の温度が過剰に上昇し、ボイラの故障につながる。そのため、水管の所定箇所に温度センサを配置し、この温度センサにより測定された水管の温度により水管へのスケールの付着を判定することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−200605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水管の温度は、スケールの付着以外にも、例えば、ボイラの燃焼状態によっても変化する。即ち、水管の外部を通過する燃焼ガスの流速が大きい場合(例えば、燃焼率が高い場合)は、水管の外部を通過する燃焼ガスの流速が小さい場合(例えば、燃焼率が低い場合)よりも水管の温度は高くなる。そのため、スケールの付着をより精度よく判定できる手法が求められている。
【0005】
従って、本発明は、水管の温度に基いてスケールの付着をより精度よく検出できるスケール付着判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部に缶水が供給される複数の水管を有し、該複数の水管を加熱して前記缶水から蒸気を生成するボイラにおける前記複数の水管へのスケールの付着を判定するスケール付着判定装置であって、前記水管の表面温度を測定する温度センサと、前記水管の表面の熱流束を測定する熱流センサと、前記温度センサにより測定される水管の表面温度が基準温度を超えた場合にスケールが付着したと判定するスケール付着判定部と、前記熱流センサにより測定される熱流束に応じて、前記基準温度を補正する基準温度補正部と、を備えるスケール付着判定装置に関する。
【0007】
また、前記温度センサ及び前記熱流センサは、同一の前記水管に取り付けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスケール付着判定装置によれば、水管の温度に基いてスケールの付着をより精度よく検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のスケール付着判定装置を備えるボイラの一実施形態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のスケール付着判定装置の好ましい一実施形態について図面を参照しながら説明する。
本実施形態のスケール付着判定装置は、水を加熱して蒸気を生成する蒸気ボイラ(以下、ボイラという)に組み込まれる。
まず、ボイラ1の全体構成について、図1を参照しながら説明する。
ボイラ1は、缶体10と、缶体10に燃焼用空気を送り込む送風機20と、缶体10と送風機20とを接続し燃焼用空気が流通する給気ダクト30と、給気ダクト30に燃料ガスを供給する燃料供給装置40と、缶体10から排出される燃焼ガスが流通する排気筒50と、缶体10に水を供給する給水路(図示せず)と、ボイラ1の燃焼状態を制御する制御装置60と、ボイラ1へのスケールの付着を判定するスケール付着判定装置と、を備える。
【0011】
缶体10は、図1に示すように、ボイラ筐体11と、複数の水管12と、下部ヘッダ13と、上部ヘッダ14と、バーナ15と、を備える。
ボイラ筐体11は、缶体10の外形を構成し、平面視矩形形状の直方体状に形成される。このボイラ筐体11の長手方向の一端側に位置する第1側面11aには、給気口16が形成され、ボイラ筐体11の長手方向の他端側に位置する第2側面11bには、排気口17が形成される。
【0012】
複数の水管12は、ボイラ筐体11の内部に上下方向に延びて配置されると共に、ボイラ筐体11の長手方向及び幅方向に所定の間隔をあけて配置される。
下部ヘッダ13は、ボイラ筐体11の下部に配置される。下部ヘッダ13には、複数の水管12の下端部が接続される。
【0013】
上部ヘッダ14は、ボイラ筐体11の上部に配置される。上部ヘッダ14には、複数の水管12の上端部が接続される。
バーナ15は、給気口16に配置される。
【0014】
送風機20は、ファン及びこのファンを回転させるモータを有する。この送風機20は、ファンが所定の回転数で回転することで、缶体10に燃焼用空気を送り込む。
【0015】
給気ダクト30は、上流側の端部が送風機20に接続され、下流側の端部が給気口16に接続される。給気ダクト30は、送風機20から送り込まれた燃焼用空気を缶体10に供給する。
【0016】
燃料供給装置40は、ガス供給ライン41と、このガス供給ラインに設けられる調整弁42及びノズル43と、を備える。
ガス供給ライン41は、給気ダクト30に接続され、給気ダクト30に燃料ガスを供給する。
調整弁42は、給気ダクト30に供給される燃料ガスの流通量を調整する。
ノズル43は、ガス供給ライン41の先端部に配置され、給気ダクト30に燃料ガスを噴出する。
【0017】
排気筒50は、排気口17に接続される。排気筒50は、缶体10の内部で燃料ガスが燃焼して生じた燃焼ガスを排出する。
制御装置60は、ボイラ1が蒸気を供給する負荷機器による蒸気の消費量に応じて、ボイラ1の燃焼状態(燃焼率)を変更し、蒸気の生成量を調整する。より具体的には、制御装置60は、送風機20による缶体10への燃焼用空気の供給量及び燃料ガスの供給量を制御することで、ボイラ1の燃焼率を制御する。また、制御装置60は、後述するスケール付着判定部130及び基準温度補正部140を備えており、スケールの付着判定を行う。
【0018】
以上のボイラ1によれば、送風機20により給気ダクト30に送り込まれた燃焼用空気は、ガス供給ライン41から供給された燃料ガスと混合され、燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスがバーナ15から缶体10の内部に噴出され、燃焼される。そして、バーナ15による混合ガスの燃焼に伴って発生する熱により、下部ヘッダ13から複数の水管12の内部に供給された水(缶水)が加熱され、蒸気が生成される。複数の水管12の内部において生成された蒸気は、上部ヘッダ14に集合された後、蒸気導出管(図示せず)を介して外部に導出される。また、混合ガスの燃焼により生じた燃焼ガスは、排気筒50から外部に排出される。
【0019】
ところで、水管12の内部では、缶水の蒸発に伴い、缶水に含まれる硬度成分が析出して水管12の内面にスケールとして付着する。水管12に付着したスケールの厚みが増すと、水管12に加えられた熱が缶水に伝わりにくくなり、水管12の温度が過剰に上昇し、ボイラ1の故障につながる。
【0020】
そこで、本実施形態のボイラ1では、スケール付着判定装置によって、水管12にスケールが付着したかどうかを判定している。
スケール付着判定装置は、水管12の表面温度に基づいて、水管12にスケールが付着したかを判定する。
本実施形態では、スケール付着判定装置は、水管12の表面温度を測定する温度センサ110と、水管12の表面の熱流束を測定する熱流センサ120と、スケール付着判定部130と、基準温度補正部140と、を備える。
【0021】
温度センサ110は、複数の水管12のうちのいずれかの水管12に配置され、水管12の表面温度を測定する。温度センサ110は、複数の水管12のうち、所定の水管12における所定の高さに配置される。温度センサ110が取り付けられる水管12は、スケールの付着量や熱負荷等に応じて決定される。温度センサ110で測定された水管12の表面の温度は、制御装置60に測定信号として送信される。
熱流センサ120は、温度センサ110と同じく、複数の水管12のうちのいずれかの水管12に配置され、水管12の表面の熱流束を測定する。熱流センサ120で測定された水管12の表面の熱流束は、制御装置60に測定信号として送信される。
本実施形態では、温度センサ110及び熱流センサ120は、同じ水管12に配置される。
【0022】
スケール付着判定部130は、温度センサ110により測定される水管12の表面温度が基準温度を超えた場合に、水管12にスケールが付着したと判定する。即ち、水管12にスケールが付着していくと、水管12に加えられた熱が缶水に伝わりにくくなることにより、水管12の温度は上昇する。そこで、スケール付着判定部130は、温度センサ110により測定される水管12の表面温度が、スケールが付着していない状態では到達しない所定の基準温度を超えた場合に、水管12にスケールが付着したと判定する。また、この場合、スケール付着判定部130は、スケールが付着したことを所定の態様(例えば、アラーム)で報知させる。
【0023】
基準温度は、スケール付着判定部130によりスケールの付着が判定された後、所定期間(例えば、1週間)ボイラ1の運転を継続しても、水管12の過熱によりボイラ1が破損しないように、水管12の過熱限界温度に対して一定の裕度をもって設定される。
【0024】
ところで、水管12の表面の温度は、スケールの付着以外にも、水管12に伝えられる熱量によっても変化する。即ち、水管12の表面を通過する燃焼ガスの流量(流速)が大きいほど(例えば、燃焼率が高い場合)、また、燃焼ガスの燃焼温度が高いほど(例えば、燃料ガスの空気比が小さい場合)、水管12への単位面積当たりの伝熱量(熱流束)は、大きくなる。そして、この熱流束に比例して水管12の表面の温度は上昇する。そのため、基準温度を固定値とした場合には、水管12に伝えられる熱量の変化によって引き起こされる水管12の表面の温度変化の影響により、スケールの付着を正確に判定できない場合がある。
【0025】
そこで、本実施形態のスケール付着判定装置では、基準温度補正部140により基準温度を補正する。
基準温度補正部140は、熱流センサ120により測定される熱流束に応じて、スケール付着判定部130による判定対象となる基準温度を補正する。
基準温度の補正は、例えば、代表的な複数の熱流束値とこれら複数の熱流束値に対応する複数の基準温度とを関連付けて制御装置60に記憶させておき、この制御装置60に記憶された熱流束値及び基準温度から、線形補間を用いて熱流センサ120により測定された熱流束に対応する補正後の基準温度を算出することにより行える。
【0026】
このように、水管12の表面の熱流束に基いて基準温度を補正することで、より正確なスケールの付着判定を行える。即ち、例えば、ボイラ1の燃焼率に応じて基準温度を補正した場合には、燃焼ガスの燃焼温度の変化に起因する伝熱量の変化を捉えられず、スケール付着の誤判定をまねくおそれがある。一方、本実施形態のスケール付着判定装置によれば、実際に測定される熱流束に基づいて基準温度を補正できるので、燃焼率を用いて間接的に基準温度の補正を行う場合に比して、スケール付着判定の精度をより向上させられる。
【0027】
また、温度センサ110及び熱流センサ120を同じ水管12に配置することで、基準温度の補正の精度を更に向上させられる。
【0028】
以上、本発明のスケール付着判定装置の好ましい一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では、補正後の基準温度を線形補間により求めたが、これに限らない。即ち、熱流束値と基準温度との連続的な関数を制御装置に記憶させ、この関数を参照して測定された熱流束に対応する補正後の基準温度を求めてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 ボイラ
12 水管
110 温度センサ
120 熱流センサ
130 スケール付着判定部
140 基準温度補正部
図1