【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
なお、物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
【0044】
(1)ポリエステルの熱特性(ガラス転移点)
測定するサンプルを約10mg秤量し、アルミニウム製パン、パンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC7型)によって測定した。測定においては窒素雰囲気中で20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温した後液体窒素を用いて急冷し、再び窒素雰囲気中で20℃から285℃まで16℃/分の速度で昇温する。この2度目の昇温過程でガラス転移点を測定した。
【0045】
(2)ポリエステルの屈折率
ポリエステル樹脂組成物を溶融押し出しすることで厚さ100μmの未延伸シートを得る。ついで光源としてナトリウムD線を用い23℃の温度条件にて株式会社アタゴ製 「アッベ式屈折率計 NAR−4T」で屈折率を測定した。
【0046】
(3)固有粘度
固有粘度はオルトクロロフェノールを溶媒とし、25℃で測定した。
【0047】
(4)ポリエステルの色調
ポリエステルチップを色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM−T45)を用いて、ハンター値(L,b値)として測定し、以下の表に記す基準にて、L値b値ともに○、◎を合格と判定した。
【0048】
L 値 b 値 判定
60未満 15を超える ×
60以上 15以下 ○
62以上 12以下 ◎
。
【0049】
(5)ポリマーのヘイズ値
ポリエステルチップ2gをo−クロロフェノール20mlに溶解し、光路長20mmの石英セルおよびヘイズメーター(スガ試験機社製 HGM−2DP型)を用い、積分球式光電光度法によって溶液のヘイズ値を測定した。
【0050】
(6)ポリエステル組成物中のリン元素、および金属元素の定量
堀場製作所製蛍光X線装置(型番MESA−500W)を用い、ポリマーの蛍光X線の強度を測定した。この値を含有量既知のサンプルで予め作成した検量線を用い、金属含有量に換算した。
【0051】
(7)内部粒子に含まれる金属元素およびリン元素の分析
日立製電界放射型走査電子顕微鏡(型番S−4000)を用い、チップ中の内部粒子を露出させ、堀場製作所製EDX(型番SuperXerophyS−779XI)に移し、エネルギー分散型X線分光法にて測定し、検出の有無を判定した。
【0052】
(8)内部粒子の体積平均粒子径、最大粒子径の測定
日立製電界放射型操作電子顕微鏡(型番S−4000)を用い、チップ中の内部粒子を露出させ、ニデコ製SEM−IMAGE ANALYZER(型番ルーデックスAP)に移し、粒度分布測定をおこなった。また、粒子径を解析する際は倍率5000倍で20視野以上の測定を行い、最低200個以上の粒子から円相当径を算出した。
【0053】
(9)生産安定性の評価
同じ装置を用い、同じ処方で連続3バッチのエステル交換反応、重合反応を実施し、1バッチ目と3バッチ目の溶液ヘイズの差(Δヘイズ)を絶対値で算出し、以下の基準で生産安定性を判定した。
0.1%未満 ・・・ ◎
0.1%以上0.3%未満 ・・・○
0.3%以上 ・・・ ×
※○以上を合格とした。
【0054】
実施例で使用している化合物の略称(一覧)
DMT:テレフタル酸ジメチル
CHDC:シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル
AA:アジピン酸ジメチル
EG:エチレングリコール
SPG:スピログリコール
酢酸Mn:酢酸マンガン4水和物
酢酸Mg:酢酸マグネシウム4水和物
酢酸Ca:酢酸カルシウム1水和物
TEPA:エチルジエチルホスホノアセテート
PI:亜リン酸
AO:酸酸化アンチモン
TBT:テトラブトキシチタネート
。
【0055】
実施例1
(ポリエステルの合成)
テレフタル酸ジメチルを67.6重量部、トランス体含有比率が25%のシクロヘキサンジカルボン酸(以下、CHDC)を28.5重量部、エチレングリコールを60.5重量部、スピログリコール(以下、SPG)31.3重量部をそれぞれ計量し、エステル交換反応槽に仕込んだ。内容物を150℃で溶解させて撹拌した。酢酸マンガン0.06重量部を添加し、エステル交換反応をスタートした。
【0056】
撹拌しながら反応内容物の温度を220℃まで規定の昇温プログラムにて昇温しながらメタノールを留出させた。所定量のメタノールが留出したのち、余剰のエチレングリコールを留出させながら30分間で230℃まで昇温を行った。その後、210Torrで20分間初期重合を行い、エチレングリコールを留出させ、低重合体を得た。
【0057】
得られた低重合体を重合反応槽へ移行した後、攪拌しながらリン化合物であるトリエチルホスホノアセテート(以下、TEPA)0.085重量部を添加し、15分後にテトラブトキシチタン(以下、TBT)を添加、その5分後から285℃まで徐々に昇温、および減圧を行い、エチレングリコールを留出させながら重合をおこなった。最終圧力は0.1Torrであった。
【0058】
重合装置の撹拌トルクが所定の値に達したら重合反応槽内を窒素ガスにて常圧へ戻し、ガット状のポリマーを水槽へ吐出した。水槽で冷却されたポリエステルガットはカッターにてカッティングし、ポリエステル組成物のチップを得た。
同様にして連続で3バッチのエステル交換反応、重合反応を行い3バッチ目の 得られたポリエステル組成物は、屈折率1.545、ガラス転移点78℃、溶液ヘイズ0.7%、固有粘度0.70であり、内部粒子の体積平均粒子径が0.42μm、最大粒子径が0.85μmであり、内部粒子からは金属元素、およびリン元素の検出はなかった。
【0059】
(積層ポリエステルフィルムの製膜)
前記ポリエステルAおよびPET樹脂をそれぞれ真空乾燥した後、2台の押出機にそれぞれ供給した。
【0060】
ポリエステルAおよびPET樹脂は、それぞれ、押出機にて280℃の溶融状態とし、ギヤポンプおよびフィルタを介した後、101層のフィードブロックにて合流させた。このとき、積層フィルムの両表層がPET樹脂層となるようにし、積層厚みはポリエステルA層/PET樹脂層が1/2となるように交互に積層した。すなわちポリエステルA層は50層、PET層は51層となるように交互に積層した。
【0061】
このようにして得られた101層からなる積層体を、ダイに供給し、シート状に押し出し、静電印加(直流電圧8kV)にて表面温度25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化した。
【0062】
得られたキャストフィルムは、ロール式縦延伸機に導き、90℃に加熱されたロール群によって加熱し、周速の異なるロール間で長手方向に3倍に延伸した。縦方向に延伸が終了したフィルムは、次いでテンター式横延伸機に導いた。フィルムはテンター内で100℃の熱風で予熱し、横方向に3.3倍に延伸した。延伸されたフィルムはそのままテンター内で200℃の熱風にて熱処理した。このようにして厚さ50μmのフィルムを得ることができた。得られたフィルムの特性を表1〜3に示す。本発明のポリエステル組成物は光弾性係数が100未満であり、屈折率も低いために積層フィルムとした際には優れた光反射性を有していた。
【0063】
比較例1
リン化合物をエステル交換反応槽で添加する以外は実施例1と同様にしてポリエステル組成物を得た。その結果、Δヘイズが非常に大きくなり、体積平均粒径、最大粒径も大きくなることが確認された。
【0064】
実施例2〜4、比較例2、3
リン化合物とチタン触媒の添加間隔を変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステル組成物を得た。
実施例2においては、添加間隔が短かなため、重合反応はやや長めで、b値も高くなる傾向にあったが、光学用途として問題ないレベルであった。
実施例3においては、添加間隔が長めであり、内部粒子の体積平均粒径が大きくなる傾向があったが、光学用途として問題ないレベルであった。
実施例4もヘイズは高めで、連続バッチでのΔヘイズも大きくなる傾向にあったが、光学用途として問題ないレベルであった。
比較例2は添加間隔が短かく、EDXにおいてリン元素が検出され、連続バッチでのΔヘイズが0.3%以上と非常に大きかった。
比較例3は添加間隔が長かったため、内部粒子が成長・凝集し、体積平均粒子径、最大粒径ともに大きく、ヘイズも高く、EDXによりリン元素およびマンガン元素が検出された。
【0065】
実施例5〜19
エステル交換反応触媒、重合触媒、リン化合物の種類と添加量を変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステル組成物を得た。
【0066】
実施例5においては、酢酸マンガン4水和物の添加量をMn元素として90ppmに減らしたところ、Mn/Pが0.56となり、重合反応が長くなるとともに、ヘイズが低下し、b値が高くなる傾向にあったが、光学用途として問題ないレベルであった。
【0067】
実施例6においては、酢酸マンガン4水和物の添加量をMn元素として110ppmとしたところ、Mn/Pは0.69となり、b値が高くなる傾向にあったが、光学用途として問題ないレベルであった。
【0068】
実施例7においては、酢酸マンガン4水和物の添加量をMn元素として180ppmとしたところ、Mn/Pが1.13となり、b値が高くなる傾向にあったが、光学用途として問題ないレベルであった。
【0069】
実施例8においては、酢酸マンガン4水和物の添加量をMn元素として200ppmとしたところ、Mn/Pは1.25となり、ヘイズ、b値が高くなるとともに、Δヘイズが大きくなる傾向にあったが、光学用途として問題ないレベルであった。
【0070】
実施例9、10においては、テトラブトキシチタネートの添加量を実施例1に対して減量したところ、重合反応が長くなり、b値が高くなる傾向にあったが、光学用途として問題ないレベルであった。
【0071】
実施例11、12においては、テトラブトキシチタネートの添加量を実施例1に対して増量したところ、重合反応時間が短くなり、b値が高くなる傾向にあったが、光学用途として問題ないレベルであった。
【0072】
実施例13、14においては、リン化合物の添加量を実施例1に対して減量したところ、耐熱性が低下し、b値が高くなる傾向にあったが、光学用途として問題ないレベルであった。
【0073】
実施例15,16においては、リン化合物の添加量を実施例1に対して増量したところ、重合時間が長くなり、b値が高くなる傾向にあったが、光学用途として問題ないレベルであった。
【0074】
実施例17においては、重合反応触媒をAOに変更したところ、ヘイズが高くなり、Δヘイズも大きくなる傾向にあったが、光学用途としては問題ないレベルであった。
【0075】
実施例18においては、エステル交換反応触媒を酢酸Caに変更したところ、体積平均粒径が大きくなり、ヘイズが高くなる傾向にあったが、光学用途としては問題ないレベルであった。
【0076】
実施例19においては、エステル交換反応触媒を酢酸Mgに変更したところ、b値が高くなる傾向にあったが、光学用途としては問題ないレベルであった。
【0077】
実施例20〜26
共重合成分を変更する以外は実施例1と同様にしてポリエステル組成物を得た。
【0078】
実施例20においては、ジカルボン酸成分をCHDCからAAに変更した場合、Tgが低くなる傾向にあったが、光学用途としては問題ないレベルであった。
【0079】
実施例21においては、ジカルボン酸成分としてDMTのみを用いた場合、Tgが高くなる傾向にあったが、光学用途としては問題ないレベルであった。
【0080】
実施例22においては、ジカルボン酸成分としてDMTを90mol%、CHDCを10mol%とした場合、Tgが高くなる傾向にあったが、光学用途としては問題ないレベルであった。
【0081】
実施例23においては、ジカルボン酸成分としてDMTを50mol%、CHDCを50mol%とした場合、Tgが低くなる傾向にあったが、光学用途としては問題ないレベルであった。
【0082】
実施例24においては、ジオール成分としてEGを90mol%、SPGを10mol%とした場合、Tgが低くなる傾向にあったが、光学用途としては問題ないレベルであった。
【0083】
実施例25においては、ジオール成分としてEGを60mol%、SPGを40mol%とした場合、Tgが高くなる傾向にあったが、光学用途としては問題ないレベルであった。
【0084】
実施例26においては、リン化合物をPIに変更したところ、体積平均粒径が大きくなり、ヘイズが高くなる傾向にあったが、光学用途としては問題ないレベルである。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】