特許第6256151号(P6256151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6256151
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/16 20060101AFI20171227BHJP
【FI】
   B43K21/16 A
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-67915(P2014-67915)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-189081(P2015-189081A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横山 昭人
(72)【発明者】
【氏名】安孫子 大慶
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−21966(JP,A)
【文献】 米国特許第6254296(US,B1)
【文献】 米国特許第4538934(US,A)
【文献】 米国特許第3947133(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体を使用したシャープペンシルにおいて、円筒であり、端部が拡開可能となるように円筒の端部から中央部に向かってスリットが少なくとも2個所設けられ、このスリットによって拡開可能な弾性片部が形成され、弾性片部の先端側にはチャック体を押圧する部材の係合溝部と係合及びチャック体を押圧する部材の側面を係止する係合突起が形成された係止具を内蔵すると共に、前記スリットの幅をスリット底部より端部の方を広くした及び/または、前記弾性片部の肉厚をスリット底部側より端部の方を薄くしたことを特徴とするシャープペンシル。
【請求項2】
前記スリットの幅及び/または、前記弾性片の肉厚を少なくとも2段階で変化させて弾性片部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のシャープペンシル。
【請求項3】
前記スリットの幅及び/または、前記弾性片部の肉厚を連続的に変化させて弾性片部を形成したことを特徴とする請求項1或いは、請求項2に記載のシャープペンシル。
【請求項4】
前記弾性片部の先端側に形成される係合突起は、頂点に平面部を有する略台形形状となるように形成し、台形形状の傾斜面の角度を弾性片部前端側に比べ後端側を小さくしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のシャープペンシル。
【請求項5】
前記弾性片部の先端側に形成される係合突起は、頂点に平面部を有する略台形形状となるように形成し、平面部の弾性片部後端側に、弾性片部拡開後の傾斜角度と同等の角度の係止面を形成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体を使用したシャープペンシルにおいて、円筒であり、端部が拡開可能となるように円筒の端部から中央部に向かってスリットが少なくとも2個所設けられ、このスリットによって拡開可能な弾性片部が形成され、弾性片部にはチャック体を押圧する部材の溝部と係合及びチャック体を押圧する部材の側面を係止する係合突起が形成された係止具を内蔵するシャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体を使用したシャープペンシルにおいて、後端ノックで芯繰り出しを行う為には、ノックした時に前後動する内部部品間で、前進時と後退時で相対的な位置関係を変化させる必要があり、その為の部品として円筒の一部が拡開するようにスリットや切り欠き部を形成する構造の部品が知られている。その一例として、後端が拡開可能となるように円筒の後端側から前端側に向かってスリットが、円周の対面位置に2個所、一定の幅で設けられ、このスリットによって拡開可能な弾性片部が一定の肉厚で形成され、前記弾性片部内面には円筒内に挿入する別部材の溝部との係合連結用の係合突起が配された構造の部品がある(特開2007−21966号公報(特許文献1))
このように弾性片部を形成することで、係合突起により内包する別部材の溝部とが係合している状態と、弾性片部が拡開し係合が外れ内包する別部材を係止している状態ができ、前進時と後退時で両部品の相対的な位置関係を変化させることができる。
【0003】
前記特許文献1では、ボールチャック機構を使用して芯が自動的に繰り出される様にした自動式シャープペンであり、ユニット体を順次組み立てることで、組み立て作業を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−21966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1に記載の従来技術にあっては、ノックした際、弾性片部を拡開し係合突起が係合溝の段差を乗り越え係合を解除する為の荷重が一度にかかり、ノックが重たく、違和感となっていた。また、係合突起が係合溝の段差を乗り越える荷重を下げようとスリット幅を全体に渡り拡張したり、弾性片部全体の肉厚を薄くすると拡開後の係止荷重も低下してしまい、内包する別部材を確実に係止することができず、前進時と後退時で両部品の相対的な位置関係を変化させることができないことから、芯の繰り出しができなくなる恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体を使用したシャープペンシルにおいて、円筒であり、端部が拡開可能となるように円筒の端部から中央部に向かってスリットが少なくとも2個所設けられ、このスリットによって拡開可能な弾性片部が形成され、弾性片部にはチャック体を押圧する部材の係合溝と係合及びチャック体を押圧する部材の側面を係止する係合突起が形成された係止具を内蔵すると共に、前記スリットの幅をスリット底部より端部の方を広くした及び/または、前記弾性片部の肉厚をスリット底部側より端部の方を薄くしたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体を使用したシャープペンシルにおいて、円筒であり、端部が拡開可能となるように円筒の端部から中央部に向かってスリットが少なくとも2個所設けられ、このスリットによって拡開可能な弾性片部が形成され、弾性片部にはチャック体を押圧する部材の係合溝と係合及びチャック体を押圧する部材の側面を係止する係合突起が形成された係止具を内蔵すると共に、前記スリットの幅をスリット底部より端部の方を広くした及び/または、前記弾性片部の肉厚をスリット底部側より端部の方を薄くしたので、チャック体を押圧して芯繰り出しを行うノック操作を行った際、弾性片部の係合突起を有する部分が先に撓むので拡開しやすく、チャック体を押圧する部材の係合溝との係合を軽い力で解除できることからノック感が向上すると共に、更に拡開した時には弾性片部における拡開支持部が撓むので強い反力が発生し、チャック体を押圧する部材との係止を実現できることから、確実な筆記芯の繰り出しが行うことができる。更に、拡開した係止時に弾性片部に発生する応力を分散することができることから、ノック操作の繰り返しによる疲労に強く、経時安定性のよい、筆記芯の繰り出しが良好なシャープペンシルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施例の製品全体の外観図である。
図2図1の状態から周方向に90度回転させた際の外観図である。
図3図1の状態から周方向に180度回転させた際の外観図である。
図4図1の製品全体の縦断面図である。
図5図4における先端部拡大図である。
図6図4における係止具が係合状態の先端部拡大図である。
図7図4における係止具が係止状態の先端部拡大図である。
図8】第1実施例の係止具の外観斜視図である。
図9】第1実施例の係止具の半断面図である。
図10】第1実施例の中継部材の外観斜視図である。
図11】第1実施例における変形例1の係止具の半断面図である。
図12】第1実施例における変形例2の係止具の半断面図である。
図13】第2実施例の製品全体の縦断面図である。
図14図13における先端部拡大図である。
図15図13における係止具が係止状態の先端部拡大図である。
図16】第2実施例の係止具の外観斜視図である。
図17】第2実施例の係止具の半断面図である。
図18図15における係止具が係止状態の係合突起近傍の拡大図である。
図19】第2実施例における変形例1の係止具の半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、芯の前進は許容するが芯の後退を阻止するチャック体を使用したシャープペンシルにおいて、円筒であり、端部が拡開可能となるように円筒の端部から中央部に向かってスリットが少なくとも2個所設けられ、このスリットによって拡開可能な弾性片部が形成され、弾性片部にはチャック体を押圧する部材の溝部と係合及びチャック体を押圧する部材の側面を係止する係合突起が形成された係止具を内蔵すると共に、前記スリットの幅をスリット底部より端部の方を広くした及び/または、前記弾性片部の肉厚をスリット底部側より端部の方を薄くしたので、チャック体を押圧して芯繰り出しを行うノック操作を行った際、弾性片部の係合突起を有する部分が先に撓むので拡開しやすく、チャック体を押圧する部材の溝との係合を軽い力で解除できることからノック感が向上すると共に、更に拡開した時には弾性片部における拡開支持部が撓むので強い反力が発生し、チャック体を押圧する部材との係止を実現できることから、確実な筆記芯の繰り出しが行うことができる。更に、拡開した係止時に弾性片部に発生する応力を分散することができることから、ノック操作の繰り返しによる疲労に強く、経時安定性のよい、筆記芯の繰り出しが良好なシャープペンシルを提供することができる。
【0010】
係止具は円筒であり、端部が拡開可能となるように円筒の端部から中央部に向かってスリットが少なくとも2個所設けられ、このスリットによって拡開可能な弾性片部が形成され、弾性片部にはチャック体を押圧する部材の係合溝と係合及び弾性片部拡開時にはチャック体を押圧する部材の側面を係止する係合突起が形成されている。
【0011】
弾性片部の係合突起を形成する部分が拡開しやすく、拡開時には弾性片部における拡開支持部で強い反力が発生し、拡開時の弾性片部に発生する応力を分散する為の手段として、スリットの幅をスリット底部より端部を広くしたり、弾性片部の肉厚をスリット底部側である弾性片部における拡開支持部より弾性片部端部を薄くする方法が挙げられる。その幅及び/または肉厚の変化は2段以上の段部で構成しても、連続的に変化していく構成にしてもよい。また、段部を形成する際には、スリット底部及び段部に形成される角部は面取りまたは、R形状にすることで、拡開時の応力集中を緩和し、係止具の破損を防ぐことができる。
【0012】
弾性片部に形成される係合突起は頂点に平面部を有する略台形形状とし、あわせてチャック体を押圧する中継部材の外周面に設けられた係合溝は、係合突起に形成された平面部の部品軸線方向の長さよりも、開口部が長い略三角形状としている。この様に係合突起と係合溝を形成することで、係合突起が係合溝に入り込みやすくなり、更に、係合突起外面と係合溝内面を密接させることができ、係合時のガタを低減することができる。これに限らず、係合突起の頂点をR状にしたり、係合溝の頂点に平面部を形成する、または、頂点をR状にするなどし、金型や切削工具への成形時の負荷を無くし生産性を上げることができる。つまり、係合突起と係合溝により、係止具と中継部材を係合することができれば適宜それぞれの形状は選択することができる。
【0013】
弾性片部に形成される係合突起は頂点に平面部を有する略台形形状となるように形成している。この様に係合突起を形成することで、係合突起における成形時の材料の流れを円滑にでき、成形後に係合突起に残る残留応力を軽減できる為、繰り返しの係合解除による疲労に強く、経時安定性のよい製品を提供することができる。また、ノックにより、弾性片部を拡開させ係止具と中継部材の係合を解除する為に係合突起が中継部材係合溝の段差を乗り越える際には、係合突起を略台形形状とし、中継部材係合溝の段差と接する個所を傾斜面とすることで弾性片部に徐々に拡開する力が加わり、円滑に弾性片部を拡開することができる。これに限らず、段差と接する台形形状の傾斜面の傾斜角度を小さくし、特に弾性片部前端側に比べ後端側を小さくすることで、更に円滑に弾性片部を拡開することができる。また、係合突起略台形形状の弾性片部後端側の傾斜面の角度を、弾性片部拡開後の傾斜角度と同等に形成することで、弾性片部拡開時に中継部材外周側面と接して係止する係合突起にかかる応力が傾斜面全体に分散され、繰り返しの使用による負荷を軽減でき、経時安定性のよい製品を提供することができる。
【0014】
係止具の材質は、拡開可能な弾性片部を形成することができればよく、特に限定されない。望ましくはヤング率が1.0GPa以上〜10.0GPa未満の材質を使用するのがよく、1.0GPa未満の場合は弾性片部の弾性が弱く内包する中継部材を確実に係止することができず、芯の繰り出しができなくなる恐れがある。また、10.0GPa以上の場合は弾性片部の弾性が強く、係合突起が中継部材係合溝の段差を乗り越える荷重が増加してしまい、ノック感が悪くなる恐れがある。前記ヤング率を有する材質の具体的な例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルスチレンブタジエン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレンテレフタレート樹脂(PET)などの樹脂材料が挙げられるが、この例に限らず、前述したヤング率を有する材質であれば適宜使用することができる。
【0015】
係止具の材質にポリアセタール樹脂(POM)を使用した際には、係止具に内包される中継部材の材質にはポリプロピレン樹脂(PP)を使用する等、係止具と中継部材は互いに異なる材質を使用することで、係合突起や係合溝、それらの周辺など摺動部の摩耗を低減することができる為、繰り返しの使用による負荷を軽減でき、経時安定性のよい製品を提供することができる。また、上記に加え、摺動部の外面をシボ加工にしたり、潤滑材を塗布するなどして摩耗を軽減させてもよい。
【0016】
本発明の第1実施例を図1図10に示し、説明する。尚、以下では、後述の先部材側を前方と言い、押圧部材側を後方という。
【0017】
軸筒1の前方には、内部に圧入固定された先端リング2と先端スプリング3により前方に付勢され、前後に摺動可能なスライダー4を有する先部材5が、前軸6と後軸7から構成された軸筒本体8にネジ螺合により連結されている。前記軸筒本体8内部には芯繰り出しユニット9がクッションスプリング10により前方に付勢するように配され、使用時に高い筆圧がかかった際に前記クッションスプリング10が伸縮し、筆記芯Lに対する衝撃を緩和している。また、後軸7後方に形成された縮径部11にはクリップ12が嵌め込まれている。
【0018】
前記スライダー4は、前方にステンレス製のパイプ13と内部に芯保持部材14を圧入固定し、外部にOリング15が装着されている。筆記の際は、筆記芯Lの摩耗によってパイプ13が紙面に触れた場合でも、筆記による筆記芯の摩耗と共に筆圧によってパイプ13が紙面に押されて後方へと後退する為、筆記を継続でき、パイプ13を紙面から離すと前記先端スプリング3によりスライダー4が前進する。後述する芯の前進は許容するが後退は阻止するように芯を把持できるチャック体19と併用することで、先端スプリング3によりスライダー4が前進する際、芯保持部材14に保持された筆記芯Lを常にパイプ13の先端まで引き抜くことができる為、持ち替えて後端押圧部材40をノックせずとも筆記芯Lが筆記状態を維持できることから連続した筆記が可能となる。また、携帯時には、Oリング15によりスライダー4を先端リング2内部に、嵌合させ前後の移動を停止することで不意の芯出を防止することができる。再度使用する際は、芯繰り出しユニット9によりスライダー4後端を押し、Oリング15の嵌合を解除することで、スライダー4が前進し、筆記可能となる。
【0019】
前述した通り、筆記芯の前端面がパイプの前端面と略同位置となった状態や、当初パイプの前端面よりも突出していた筆記芯が摩耗により、筆記芯の前端面がパイプの前端面と略同位置となった状態でも筆記による芯の摩耗と共に筆圧によってパイプが紙面に押されて後方へと後退する為、筆記を継続することができる。この構成は筆記芯の芯径が細い場合、具体的には、呼び直径が0.3mm、0.2mmやそれ以下の直径の芯に対して特に有効である。筆記芯をパイプから突出させず、筆記芯がパイプでガイドされた状態での筆記が可能となり、筆記時の筆圧変化や、筆記芯が紙面へひっかかった際にも筆記芯の折損を防止することができる。
【0020】
芯繰り出しユニット9は、前方にチャックセット16を有し、該チャックセット16には前方に向けて拡径するテーパ部18を形成するリング17を設け、リング17内部には前方内面に芯噛み部41を有するチャック体19が配され、前記テーパ部18とチャック体19に形成されたボール受け座20の間にボール22を挿入している。また、前記チャック体19の後端に形成した鍔部21とリング内段の間に配設したチャックスプリング23により、チャック体19を後方に付勢することで、リング17とチャック体19の間にボール22を介してくさび効果が発生し、芯の前進は許容するが後退は阻止することができる。リング17の前方には、チャックストッパー24がカシメにより固定され、チャック体19及びボール22が脱落しないようにしてある。
【0021】
前記チャックセット16後方には、頂点に平面部28を有する略台形形状とした係止突起27が形成された弾性片部26を有し、後端が拡開可能な係止具25が圧入されている。係止具25内部には、前端に大径部30を形成し、大径部30後端面と係止具前端面を当接させると共に、後方外周面には前記係合突起27と係合し、係合突起27に形成された平面部28の部品軸線方向の長さよりも、開口部32が長い略三角形状の係合溝31を設けた中継部材29を内包している。中継部材29内部には内径を挿通させる筆記芯1本以上で2本未満とした芯ガイドパイプ34を配設することで、中継部材29後方に圧入され筆記芯Lを収納する芯タンク35から、チャック体19まで確実に筆記芯Lを挿通させることができる。また、中継部材29後方であり芯ガイドパイプ34と、芯タンク35の間に筆記芯が1本しか通らず、かつ芯ガイドパイプ34内径よりも小となるように芯挿通孔33を設けることで、芯タンク35から芯ガイドパイプ34まで確実に筆記芯を1本だけ挿通することができる。チャックセット16及び係止具25、中継部材29は、中子36を介し芯タンク35と中子36の間に配設されたノックスプリング37により後方に付勢されている。また、芯タンク35後端には消しゴム受け部材38が圧挿され、前記消しゴム受け部材38には消しゴム39、そして、押圧部材40が着脱自在に取り付けられている。
【0022】
次に、後端押圧部材40のノックによる芯繰り出し操作について説明する。
1本目の筆記芯Lを繰り出す際は、まず軸筒前方を重力方向に向けることで、芯タンク35に収納された筆記芯Lが、チャック体19の芯噛み部41まで自重で落下する。前述した、芯ガイドパイプ34及び中継部材29に形成した芯挿通孔33を配設したことで1本の筆記芯Lを確実にチャック体19の芯噛み部41まで挿通することができる。
【0023】
次に押圧部材40を軸筒1前方方向にノックし始めると芯タンク35と共に、芯タンク前方に圧入された中継部材29も前進する。この時、中継部材29に形成された係合溝31と係止具25における弾性片部26内面に形成された係合突起27は係合状態となっており、係止具25及び係止具25前端に圧入固定されているチャックセット16は、先端リング2後端にチャックセット16前端が当接するまで中継部材と同体となって前進する。この時スライダー4が収納された状態であれば、スライダー4後端にチャックセット16前端が当接しスライダー4を前方に押し出すことで、先端リング2内部に嵌合されていたOリング15の嵌合から解放され、先端スプリング3の弾発力によりスライダー4が前方に付勢される。
【0024】
チャックセット16前端が先端リング2後端に当接して、係止具25及びチャックセット16の移動が停止しても、係止具25の後端は拡開可能な為、ノックを続けることで、係止具25における弾性片部26は押圧部材40を軸筒1前方方向にノックする荷重(以後、ノック荷重とする)により外側に撓み中継部材29との係合が解除され、芯タンク35と中継部材29のみ前進が可能となり、係止具25及びチャックセット16は停止しているが、芯タンク35と中継部材29は前進するという相対的な動きの差を付けることができる。
【0025】
更にノックを続けると、中継部材29の前端でチャック体19の後端を押圧し、チャック体19を前進させることでチャック体19の芯噛み部41が拡開し、筆記芯Lはスライダー4内の芯保持部材14における芯保持部42後端まで自重落下する。ノックによる中継部材29と芯タンク35の前進は、芯タンク35前端と係止具25後端が当接した時点で終了となる。
【0026】
押圧部材40への押圧を解除すると、中継部材29と芯タンク35はノックスプリング37により後退する。この時、係止具25の弾性片部26により中継部材29を挟持している為、中継部材29と係止具25は係止状態となっており、係止具25が中子36内段に当接し、移動が停止するまで中継部材29と係止具25及びチャックセット16は同体となって後退する。係止具25が中子36内段に当接するまでの間、チャック体19は中継部材29に押圧され拡開した状態となっている。
【0027】
係止具25が中子36内段に当接後、中継部材29と芯タンク35が後退することでチャック体19への押圧も解除され、チャックスプリング23によりチャック体19が閉じ、くさび効果が発生するので芯噛み状態となる。その後、中継部材29と芯タンク35は更に後退し、中継部材29に形成された係合溝31と係止具25における弾性片部26内面に形成された係合突起27が再度係合状態となったと同時に中継部材29の大径部30後端が、係止具25前端に当接して、全ての後退が終了する。
【0028】
ここで、中継部材29と係止具25の係止状態における係止力が、軸筒1前方を重力方向に向けた際のチャックセット16の自重及び係止具25の自重により発生する荷重よりも弱く、十分でない場合、係止具25とチャックセット16が後退する前に中継部材29と芯タンク35のみが後退してしまい、同時にチャック体19も後退してしまう為、この時点で芯噛み状態となる。その後、中継部材29の大径部30後端が、係止具25前端に当接し係止具25とチャックセット16の後退が始まるが、筆記芯Lはチャック体19により把持されている為、一体となって後退してしまう。つまり、係止具25が中子36内段に当接し、係止具25とチャックセット16の後退が終了するまでの距離分、筆記芯L先端と芯保持部材14との間に隙間が発生してしまい、筆記芯Lの繰り出しに時間を要してしまう。更に、部品寸法や組立時のばらつき等により芯繰り出し量が前記隙間よりも短くなってしまった場合、芯保持部材14内に筆記芯Lを挿通させることができず、芯の繰り出しができなくなってしまう。
【0029】
この後、再度ノックによる芯繰り出し操作を行い、係止具25と中継部材29が係合した状態で、芯噛み状態のチャック体19をチャックセット16ごと前進させることで芯保持部材14に筆記芯Lを挿入し、係止具25と中継部材29の係合解除による係止具25と中継部材29及び芯タンク35の相対的な動きの差を利用して、更にチャック体19を前進させてチャック体19を拡開した後、中継部材29と係止具25が係止状態のまま後退することで、チャック体19の拡開状態を保ちながらチャックセット16を後退させる。係止具25が中子36内段に当接後、中継部材29と芯タンク35のみが後退することでチャック体19への押圧も解除され、チャックスプリング23によりチャック体19が閉じ、再度芯噛み状態となり筆記芯L先端は芯保持部材14内の前進位置にとどまるので筆記可能状態に近づく。
【0030】
ここで、中継部材29と係止具25の係合状態における係合力が、ノックスプリング37の荷重より弱く十分でない場合、ノックを始めた段階で中継部材29と係止具25の係合が外れてしまいチャックセット16を前進させることができず、筆記芯Lの位置が変わらないままチャック体19の開閉を行うことになり、芯の繰り出しができなくなってしまう。
【0031】
更に、中継部材29と係止具25の係止状態における係止力が、軸筒1前方を重力方向に向けた際のチャックセット16の自重及び係止具25の自重により発生する荷重よりも弱く、十分でない場合、係止具25とチャックセット16が後退する前に中継部材29と芯タンク35のみが後退してしまい、同時にチャック体19も後退してしまう為、この時点で芯噛み状態となる。その後、中継部材29の大径部30後端が、係止具25前端に当接し係止具25とチャックセット16の後退が始まるが、筆記芯Lは芯保持部材14により保持されている為、前進位置にとどまり、チャック体19のみ係止具25及びチャックセット16と一体となって後退してしまう。つまり、係止具25が中子36内段に当接し、係止具25とチャックセット16の後退が終了するまでの距離分、筆記芯Lはチャック体19から引き抜かれることになり、筆記芯Lの摩耗により摩耗粉が発生する。発生した摩耗粉はチャック体19芯噛み部41に付着してしまい、繰り返しのノックにより、多量に発生、付着した場合には筆記芯Lが滑りやすくなり、チャックセット16前進時にチャック体19が筆記芯Lを把持できず、芯の繰り出しができなくなる恐れがある。また、筆記中の筆圧に耐えられず筆記芯が引っ込んでしまう恐れもある。
【0032】
前述した後端押圧部材40のノックによる芯繰り出し操作において、係止具25は芯繰り出しユニット9の前進及び後退でチャックセット16と中継部材29に相対的な動きの差をつける役目を担っており、更に、繰り出し操作中におけるノック感に与える影響も大きい。
【0033】
詳述すると、押圧部材40を軸筒1前方方向にノックし始めると芯タンク35と共に、芯タンク35前方に圧入された中継部材29も前進する。この時、中継部材29に形成された係合溝31と係止具25における弾性片部26内面に形成された係合突起27は係合状態となっており、係止具25及び係止具25前端に圧入固定されているチャックセット16は、先端リング2後端にチャックセット16前端が当接するまで中継部材29と同様に前進する。ここで、係止具25に求められる係合力は、ノックスプリング27の荷重より強い必要がある。前述した通り、係合力がノックスプリング27の荷重より弱いと、ノックをした段階で係合が外れてしまい、チャックセット16が中継部材29と一体となって前進することができず筆記芯Lも繰り出すことができなくなってしまう。この段階では、係止具25における弾性片部26は閉じた状態となっており、中継部材29とは同体であり係合状態となっている。また、ノック荷重はノックスプリング37の荷重のみとなっている。
【0034】
次にチャックセット16前端が先端リング2後端に当接し、係止具25及びチャックセット16の移動が停止する。更にノックを続け、ノック荷重が係止具25の係合力を上回った段階で、係止具25に形成された弾性片部26には外側に向け撓む力が発生することで、係止具25後端が拡開し、弾性片部26内面に形成された係合突起27が、中継部材29に形成された係合溝31を乗り越え係合が解除され、芯タンク35と中継部材29のみ前進が可能となる。この段階では、係止具25における弾性片部26は閉じた状態から拡開した状態に移っている。また、ノック荷重にはノックスプリング37の荷重に加え、弾性片部26を拡開する為の荷重が付加される。つまり、弾性片部26を拡開する為の荷重を最小限にすることでノック荷重の急な上昇を避けることができ、ノック感の向上に繋がる。
【0035】
更にノックを続けると、係止具25による係合が解除された状態で、芯タンク35と中継部材29のみ前進が可能となり中継部材29の前端でチャック体19の後端を押圧し、チャック体19を前進させることでチャック体19の芯噛み部41を拡開することができる。ノックによる中継部材29と芯タンク35の前進は、芯タンク35前端と係止具25後端が当接した時点で終了となる。この段階では、係止具25における弾性片部26は完全に拡開した状態となっており、ノック動作が終了するまでの間、中継部材29とは相対的位置が変化する。また、中継部材29の前進は許容するが、弾性片部26により中継部材29を挟持した状態となっている。ノック荷重にはノックスプリング37の荷重に加え、弾性片部26が中継部材29を挟持していることによる摩擦抵抗が付加される。弾性片部26により中継部材29を挟持し摩擦抵抗を発生させることで、弾性片部26を拡開する為に発生した荷重からノック荷重の急な減少を軽減することができ、荷重変化の少ない滑らかなノック感にすることができる。
【0036】
次に、押圧部材40への押圧を解除すると、中継部材29と芯タンク35はノックスプリング37により後退する。この時、係止具25における弾性片部26は完全に拡開し、中継部材29を挟持した状態は継続しており、中継部材29と係止具25は係止状態となっている。よって、係止具25が中子36内段に当接し移動が停止するまで、中継部材29と係止具25及びチャックセット16はノック前とは相対的位置が変化した状態のまま同体となって後退する。ここで、係止具25に求められる係止力は、軸筒1前方を重力方向に向けた際のチャックセット16の自重及び係止具25の自重により発生する荷重より強い必要がある。前述した通り、係止力がチャックセット16の自重及び係止具25の自重により発生する荷重より弱いと、係止具25とチャックセット16が後退する前に中継部材29と芯タンク35のみが後退してしまい、同時にチャック体19も後退してしまう為、係止具25の後退が終了する前に芯噛み状態となってしまい、筆記芯Lの繰り出しにノック回数の増加や、芯の繰り出し不能、また筆記中の筆圧に耐えられず芯が引っ込んでしまうなどの問題が発生してしまう恐れがある。
【0037】
後退した係止具25が中子36内段に当接後、中継部材29と芯タンク35のみが後退することでチャック体19への押圧も解除され、チャックスプリング23によりチャック体19が閉じ、くさび効果が発生するので芯噛み状態となる。この段階では、係止具25における弾性片部26は完全に拡開した状態となっており、中継部材29と芯タンク35の後退が完全に終了するまでの間、中継部材29とは相対的位置が変化する。また、中継部材29の後退は許容するが、弾性片部26により中継部材29を挟持した状態となっている。つまり、弾性片部26が中継部材29を挟持していることによる摩擦抵抗はノックスプリング37による中継部材29と芯タンク35を後退させる荷重よりも弱い必要がある。
【0038】
最後に、中継部材29と芯タンク35が更に後退し、中継部材29に形成された係合溝31と係止具25における弾性片部26内面に形成された係合突起27が再度係合状態となったと同時に中継部材29の大径部30後端が、係止具25前端に当接しすべての後退が終了となる。この段階では、係止具25における弾性片部26は閉じた状態となり、中継部材29とは初期と同様に同体となっている。
【0039】
上記ノック動作を繰り返すことで、筆記芯Lが芯保持部材14を挿通し、パイプ13先端及びそれ以上に繰り出すことができ、筆記可能状態となる。筆記の際は、前述したスライダー4の前後動により、後端押圧部材40をノックせずとも筆記状態を維持できることから連続した筆記が可能となる。また、残芯状態となった場合は再度、後端押圧部材40ノック動作を繰り返すことで残芯を排出し、筆記可能状態へ戻ることができる。
【0040】
第1実施例の係止具25は、後端が拡開可能となるように円筒の後端側から前端側に向かってスリット43が円周の対面位置に2個所設けられ、このスリット43によって拡開可能な弾性片部26が形成されている。前記弾性片部26はスリット43底部である拡開支持部44から始まる第1スリット部45により形成される第1弾性片部46と、第1スリット部45より幅を拡張した第2スリット部47により形成される第2弾性片部48から構成され、第2弾性片部48の内面には円筒内に挿入する中継部材29との係合連結用の係合突起27が配されている。本実施例ではスリットを係止具後端側から形成しているが、他の部品の構成によっては係止具前端側からや、中間部に形成することも可能である。また、スリットは2個所としているが、弾性片部が前進時と後退時で係止具と中継部材の相対的な位置関係を変化させる荷重を発揮できればよく、その数は適宜設定すればよい。
【0041】
このようにスリット43を形成することで、第1弾性片部46に比べ、第2弾性片部48が撓みやすくなる為、拡開初期は第2弾性片部48が先に撓むことで、係合突起27が中継部材29に設けられた係合溝31の段差を乗り越える荷重を下げることができるので、ノックした際の抵抗が減少し、ノック感が向上する。拡開が進むと第1弾性片部46が撓むことで弾性片部26全体の反力が向上し中継部材29を係止することができるので、確実な芯の繰り出しが行える。また、拡開係止時に発生する応力を第1弾性片部46と第2弾性片部48に分散することができ繰り返しの係合解除による疲労に強く、経時安定性のよい製品を提供することができる。
【0042】
本実施例において、第2弾性片部48に形成される係合突起27は頂点に平面部28を有する略台形形状とし、あわせて、チャック体19を押圧する中継部材29の係合溝31は、係合突起27に形成された平面部28の部品軸線方向の長さよりも、開口部32が長い略三角形状としている。この様に係合突起27と係合溝31を形成することで、係合突起27が係合溝31に入り込みやすくなり、更に、係合突起27外面と係合溝31内面を密接させることができ、係合時のガタを低減することができる。これに限らず、係合突起27の頂点をR状にしたり、係合溝31の頂点に平面部を形成する、または、頂点をR状にするなどし、金型や切削工具への成形時の負荷を無くし生産性を上げることができる。つまり、係合突起27と係合溝31により、係止具25と中継部材29を係合することができればよく、それぞれの形状は適宜選択することができる。
【0043】
また、第2弾性片部48に形成される係合突起27は頂点に平面部28を有する略台形形状となるように形成している。この様に係合突起27を形成することで、係合突起27部における成形時の材料の流れを円滑にでき、成形後に係合突起27部に残る残留応力を軽減でき繰り返しの係合解除による疲労に強く、経時安定性のよい製品を提供することができる。また、ノックをし、弾性片部27を拡開させ係止具25と中継部材29の係合を解除する為に係合突起27が中継部材29における係合溝31の段差を乗り越える際、係合突起27を略台形形状とし、中継部材29における係合溝31の段差と接する個所を傾斜面とすることで弾性片部26に徐々に拡開する力が加わり、円滑に弾性片部26を拡開することができる。
【0044】
第1実施例の変形例1として、図11に示すように係止具25における第2弾性片部48に形成される係合突起27が配された個所の円筒外周面に係合突起の形状と相似となる溝部49を形成し、第2弾性片部48内での肉厚がほぼ均一になるように形成してもよい。第1弾性片部46に比べ、第2弾性片部48が撓みやすくなる為、拡開初期は第2弾性片部48が先に撓むことで、係合突起27が中継部材29に設けられた係合溝31の段差を乗り越える荷重を下げることができるので、ノックした際の抵抗が減少し、ノック感が向上する。拡開が進むと第1弾性片部46が撓むことで弾性片部26全体の反力が向上し中継部材29を係止することができるので、確実な芯の繰り出しが行える。また、拡開係止時に発生する応力を第1弾性片部46と第2弾性片部48に分散することができ繰り返しの係合解除による疲労に強く、経時安定性のよい製品を提供することができると共に、第2弾性片部48内での肉厚を均一にしたことで、成形時に突起が配された個所の円筒外周面に発生するヒケを防止することができ、係合突起27の形状のばらつきを抑制することができる。
【0045】
更に、第1実施例の変形例2として、図12に示すように係止具25の後端が拡開可能となるように円筒の後端側から前端側に向かって設けたスリット43を、スリット43の拡開支持部44から円筒後端に向かって徐々に拡張する一連の曲線により形成した例をあげる。これに限らず、スリット43の拡開支持部44から円筒後端に向かって徐々に拡張する一連の直線により形成してもよく、スリット43の拡開支持部44から円筒後端に向かい拡張する一連のスリット43を形成することで同様の効果を得ることができる。
【0046】
第1実施例における変形例2の係止具25は、後端が拡開可能となるように円筒の後端側から前端側に向かってスリット43が円周の対面位置に2個所設けられ、このスリット43によって拡開可能な弾性片部26が形成されている。前記弾性片部26はスリット43の拡開支持部44から円筒後端側に向けて徐々に拡張する一連の曲線により形成され、弾性片部26後端近傍の内面には円筒内に挿入する中継部材29との係合連結用の係合突起27が配されている。
【0047】
このようにスリット43を形成することで、拡開支持部44近傍に比べ、係合突起27形成部近傍が撓みやすくなる為、弾性片部26の拡開初期は係合突起27形成部近傍が先に撓むことで、係合突起27が中継部材29における係合溝31の段差を乗り越える荷重を下げることができ、ノックした際の抵抗が減少する為、ノック感が向上する。また、拡開が進むと拡開支持部44近傍が撓むことで弾性片部26全体の反力が向上し、係合突起27によって中継部材29を係止することができ、確実な芯の繰り出しが行える。また、係止時に弾性片部26やその周辺に発生する応力を拡開支持部44近傍から係合突起27形成部近傍にかけて分散することができる。更に、一連の曲線により形成することで、成形時の材料の流れがよくなり残留応力を軽減でき、繰り返しの係止解除による疲労にも強く、経時安定性のよい製品を提供することができる。
【0048】
本発明の第2実施例を図13図18に示し、説明する。第2実施例の係止具25は、弾性片部26が形成される部分の外径は同一であり、弾性片部26先端側の内径を弾性片部26拡開支持部44側の内径より若干大きくすることで、弾性片部26の円筒軸線方向の断面肉厚が変化した係止具25であり、係止具25後端が拡開可能となるように円筒の後端側から前端側に向かって肉厚変化部を越える長さで一定幅のスリット43が円周の対面位置に2個所設けられ、このスリット43によって拡開可能な弾性片部26が形成されている。前記弾性片部26はスリット43の拡開支持部44から始まる厚肉部50と後端側の肉厚が減少した薄肉部51から構成され、薄肉部51の内面には円筒内に挿入する中継部材29との係合連結用の係合突起27が配されている。
【0049】
このように弾性片部26を形成することで、厚肉部50に比べ、薄肉部51が撓みやすくなり、更に、変形方向の肉厚を減少させたことで弾性片部26の拡開初期は薄肉部51が先に撓み、係合突起27が中継部材29に設けられた係合溝31の段差を乗り越える荷重を下げることができるので、ノックした際の抵抗が減少し、ノック感が向上する。また、拡開が進むと厚肉部50が撓むことで弾性片部26全体の反力が向上し中継部材29を係止することができるので、確実な芯の繰り出しが行える。また、拡開係止時に発生する応力を厚肉部50と薄肉部51に分散することができ、繰り返しの係合解除による疲労に強く、経時安定性のよい製品を提供することができる。
【0050】
本実施例において、弾性片部26に形成される係合突起27は頂点に平面部28を有する略台形形状となるように形成している。この様に係合突起27を形成することで、係合突起27部における成形時の材料の流れを円滑にでき、成形後に係合突起27部に残る残留応力を軽減でき繰り返しの係合解除による疲労に強く、経時安定性のよい製品を提供することができる。更に、平面部28の弾性片部26後端側に、弾性片部26拡開後の傾斜角度と同等の角度の係止面52を形成することで、弾性片部26拡開時に中継部材29外周側面と係止面52が面で接する為、接して係止する係合突起27後端にかかる応力が係止面52全体に分散され、繰り返しの使用による負荷を軽減でき、経時安定性のよい製品を提供することができる。
【0051】
第2実施例の変形例1として、図19に示すように弾性片部26が形成される部分の外径は同一であり、後端側の内径を後端側に向けて拡張する一連の曲面により前端側の内径より若干大きくすることで、円筒軸線方向の断面肉厚が後端側と前端側で変化した円筒の例をあげる。これに限らず、後端側に向けて拡張する一連の平面により前端側の内径より若干大きくしてもよく、更に、内径を同一とし、 後端側の外径を後端側に向けて縮小する一連の曲面により前端側の外径より若干小さくしてもよい。いずれも、円筒軸線方向の断面肉厚が後端側と前端側で変化した円筒を形成することで同様の効果を得ることができる。
【0052】
第2実施例における変形例1の係止具25は、弾性片部26が形成される部分の外径は同一であり、後端側の内径を後端側に向けて徐々に拡張する一連の曲面により前端側の内径より若干大きくすることで、円筒軸線方向の断面肉厚が後端側と前端側で変化した円筒であり、後端が拡開可能となるように円筒の後端側から前端側に向かって肉厚変化部を越える長さで一定幅のスリット43が円周の対面位置に2個所設けられ、このスリット43によって拡開可能な弾性片部26が形成されており、弾性片部26後端近傍の内面には円筒内に挿入する中継部材29との係合連結用の係合突起27が配されている。
【0053】
このように弾性片部26を形成することで、拡開支持部44近傍に比べ、係合突起27形成部近傍が撓みやすくなり、弾性片部26の拡開初期は係合突起27形成部近傍が先に撓み、係合突起27が中継部材29における係合溝31の段差を乗り越える荷重をより確実に下げることができ、ノックした際の抵抗が減少する為、ノック感が向上する。また、拡開が進むと拡開支持部44近傍が撓むことで弾性片部26全体の反力が向上し、係合突起27によって中継部材29を係止することができ、確実な芯の繰り出しが行える。また、係止時に弾性片部26やその周辺に発生する応力を拡開支持部44近傍から係合突起27形成部近傍にかけて分散することができる。更に、一連の曲面により形成することで、成形時の材料の流れがよくなり残留応力を軽減でき、繰り返しの係合解除による疲労に強く、経時安定性のよい製品を提供することができる。平面部28の弾性片部26後端側に、弾性片部26拡開後の傾斜角度と同等の角度の係止面52を形成することで、弾性片部26拡開時に中継部材29外周側面と接して係止する係合突起27後端にかかる応力が係止面52全体に分散され、繰り返しの使用による負荷を軽減でき、経時安定性のよい製品を提供することができる。
【0054】
比較例として係止具25は、後端が拡開可能となるように円筒の後端側から前端側に向かってスリット43が、円周の対面位置に2個所、一定の幅で設けられ、このスリット43によって拡開可能な弾性片部26が一定の肉厚で形成されている。前記弾性片部26内面には円筒内に挿入する中継部材29との係合連結用の係合突起27が配されている。
【0055】
このように形成された弾性片部26では撓みやすい個所がなく、ノックした際に弾性片部26を拡開し係合を解除する為に、係合突起27が中継部材29における係合溝31の段差を乗り越える荷重が一度にかかってしまうことから、ノックが重たく、違和感となっている。
【符号の説明】
【0056】
1 軸筒
2 先端リング
3 先端スプリング
4 スライダー
5 先部材
6 前軸
7 後軸
8 軸筒本体
9 芯繰り出しユニット
10 クッションスプリング
11 縮径部
12 クリップ
13 パイプ
14 芯保持部材
15 Oリング
16 チャックセット
17 リング
18 テーパ部
19 チャック体
20 ボール受け座
21 鍔部
22 ボール
23 チャックスプリング
24 チャックストッパー
25 係止具
26 弾性片部
27 係合突起
28 平面部
29 中継部材
30 大径部
31 係合溝
32 開口部
33 芯挿通孔
34 芯ガイドパイプ
35 芯タンク
36 中子
37 ノックスプリング
38 消しゴム受け部材
39 消しゴム
40 押圧部材
41 芯噛み部
42 芯保持部
43 スリット
44 拡開支持部
45 第1スリット部
46 第1弾性片部
47 第2スリット部
48 第2弾性片部
49 溝部
50 肉厚部
51 薄肉部
52 係止面
L 筆記芯
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図19