特許第6256469号(P6256469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6256469スピロ[2.5]オクタン−5,7−ジオンの調製プロセス
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6256469
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】スピロ[2.5]オクタン−5,7−ジオンの調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/45 20060101AFI20171227BHJP
   C07C 49/443 20060101ALI20171227BHJP
   C07C 69/716 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   C07C45/45CSP
   C07C49/443
   C07C69/716 Z
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-524767(P2015-524767)
(86)(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公表番号】特表2015-529653(P2015-529653A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】EP2013066031
(87)【国際公開番号】WO2014020038
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年7月29日
(31)【優先権主張番号】12005681.7
(32)【優先日】2012年8月3日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12186998.6
(32)【優先日】2012年10月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】ボシュ トルステン
(72)【発明者】
【氏名】アンクラム スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ユング イェルク
(72)【発明者】
【氏名】オスターマイヤー マルクス
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−155858(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/127452(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/026989(WO,A1)
【文献】 国際公開第2000/039094(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/085166(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式
【化1】
を有するスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンの調製方法であって、
記式
【化2】
(式中、RはC1-C6アルキル、好ましくはC1-C4アルキル、さらに好ましくはC1-C3アルキル、なおさらに好ましくはC1-C2アルキル、特にメチルである)を有する[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸エステル、特に[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステルを環化してスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを形成する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
下記式
【化3】
を有するスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンの製造プロセスであって、
下記反応工程(式中、RはC1-C6アルキル、好ましくはC1-C4アルキル、さらに好ましくはC1-C3アルキル、なおさらに好ましくはC1-C2アルキル、特にメチルである):
【化4】
を含んでなるプロセス。
【請求項3】
下記式
【化5】
を有するスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンの製造プロセスであって、
変形I又は変形II経由の下記反応工程(式中、RはC1-C6アルキル、好ましくはC1-C4アルキル、さらに好ましくはC1-C3アルキル、なおさらに好ましくはC1-C2アルキル、特にメチルである):
【化6】
を含んでなるプロセス。
【請求項4】
下記化合物
[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステル
又はその互変異性体若しくは塩
から選択される、中間体として有用な化合物。
【請求項5】
下記式:
【化10】
を有する[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステル。
【請求項6】
下記一般式
【化13】
(式中、RはC1-C6アルキル、好ましくはC1-C4アルキルである)の化合物。
【請求項7】
塩形の、請求項4〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
環化に適した塩基(例えばそれぞれのナトリウムアルコラート、特にナトリウムメタノラート等)を適切な溶媒(例えばテトラヒドロフランを含む等)中、適切な反応温度で用いる縮合条件に前記[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸エステル、特に[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステルをさらしてスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを調製するための下記式
【化2】
(式中、RはC1-C6アルキル、好ましくはC1-C4アルキル、さらに好ましくはC1-C3アルキル、なおさらに好ましくはC1-C2アルキル、特にメチルである)を有する[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸エステルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、医薬的に活性な成分の製造において中間体として有用なスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンの新規合成プロセス又は方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンは医薬的に活性な成分の製造に重要な中間体である。この中間体の合成はWO 2006/72362に記載されており、極めて複雑で、費用がかかり、大量生産には魅力的でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、効率的に、かつ医薬中間体に必要とされる高品質な状態でスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを製造するための新規合成経路が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の説明
本発明は、後述する工程において、下記式
【化1】
を有するスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを製造するための効率的プロセスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
スキーム1にスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを調製するための一般的プロセスの概略を示す。一実施形態では、本発明は、下記スキーム1に示すように、スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを調製するための一般的多工程合成方法に関する。他の実施形態では、本発明は、スキーム1の個々の各工程及びスキーム1の2以上の連続工程のいずれかの組み合わせに関する。本発明は、例えばスキーム1に示すように、中間化合物にも関し得る。
スキーム1. 本発明のスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンの製造プロセス(本発明の態様1):
【化2】
【0006】
スキーム2にスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを調製するための代替一般的プロセスの概略を示す。一実施形態では、本発明は、下記スキーム2に示すように、スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを調製するための一般的多工程合成方法に関する。他の実施形態では、本発明は、スキーム2の個々の各工程及びスキーム2の2以上の連続工程のいずれかの組み合わせに関する。本発明は、例えばスキーム2に示すように、中間化合物にも関し得る。
スキーム2. 本発明のスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンの代替製造プロセス(本発明の態様2):
【化3】
【0007】
このように、一態様では、本発明は、下記式
【化4】
を有するスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンの製造プロセスであって、下記工程(スキーム1)を含んでなるプロセスに関する。
【化5】
【0008】
従って、本発明はさらに上記スキーム1の1以上の工程に関する。
本発明のスキーム1に示す工程に関して、本発明のプロセス又は方法は下記工程の1以上を含む:
−(1-シアノメチル-シクロプロピル)-アセトニトリルを加水分解して(1-カルボキシメチル-シクロプロピル)-酢酸を形成する工程(例えば水酸化カリウム水溶液等の適切な塩基の存在下で)、
−(1-カルボキシメチル-シクロプロピル)-酢酸を環化して6-オキサ-スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを形成する工程(例えば無水酢酸(acetanhydride)等の適切なカルボン酸無水物形成剤の存在下、好ましくは反応溶媒としてのメシチレン中、高温で)、
−6-オキサ-スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンをアルコール(例えばC1-C6アルカノール、好ましくはC1-C4アルカノール、さらに好ましくはC1-C3アルカノール、なおさらに好ましくはC1-C2アルカノール、特にメタノール)と反応させて(1-アルコキシカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸を形成する工程(例えばプロモーターとして4-ジメチルアミノピリジンの存在下、好ましくは過剰のアルコール及び/又はトルエンを含む反応溶媒中、高温で)、
−(1-アルコキシカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸を対応する(1-アルコキシカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸クロリドに変換する工程(例えば塩化チオニル等の適切なカルボン酸クロリド形成剤の存在下、好ましくはプロモーターとしてN,N-ジメチルホルムアミドの存在下、好ましくは反応溶媒としてのトルエン中で)、
−(1-アルコキシカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸クロリドをメチル化して[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸アルキルエステルを形成する工程(例えば適切な求核メチル化剤、例えば鉄含有触媒存在下のメチルマグネシウム(グリニャール試薬)、又はメチル銅試薬の存在下、好ましくはトルエン及び/又はテトラヒドロフランを含む反応溶媒中で)、
−[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸アルキルエステルを環化してスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを形成する工程(例えばそれぞれの金属アルコラート(例えばナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート等)のような適切な塩基の存在下、好ましくはテトラヒドロフラン及び/又はそれぞれのアルコールを含む反応溶媒中で)。
このようにさらに、別の態様では、本発明は下記式
【0009】
【化6】
を有するスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンの製造プロセスであって、変形I又は変形II経由の下記工程(スキーム2)を含んでなるプロセスに関する。
【化7】
【0010】
従って、本発明はさらに上記スキーム2の1以上の工程に関する。
本発明のスキーム2の変形Iに示す工程に関して、本発明のプロセス又は方法は下記工程の1以上を含む:
−6-オキサ-スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを開環メチル化して[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸を形成する工程(例えば適切な求核メチル化剤、例えばメチル銅試薬、又は金属(例えばFe又はCu)含有触媒存在下のメチルマグネシウム(グリニャール)試薬の存在下、好ましくはテトラヒドロフランを含む反応溶媒中で)、
−[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸をアルコール(例えばC1-C6アルカノール、好ましくはC1-C4アルカノール、さらに好ましくはC1-C3アルカノール、なおさらに好ましくはC1-C2アルカノール、特にメタノール)でエステル化して[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸アルキルエステルを形成する工程(例えば適切な酸(例えば塩酸)の存在下、好ましくは過剰のアルコール及び/又はメシチレンを含む適切な反応溶媒中、高温で)、
−[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸アルキルエステルを環化してスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを形成する工程(例えば適切な塩基、例えばそれぞれのアルコラート(例えばナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート等)の存在下、好ましくはテトラヒドロフラン及び/又はそれぞれのアルコールを含む反応溶媒中で)。
本発明のスキーム2の変形IIに示す工程に関して、本発明のプロセス又は方法は下記工程の1以上を含む:
−6-オキサ-スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンをN,O-ジメチルヒドロキシルアミンと反応させて{1-[(メトキシ-メチル-カルバモイル)-メチル]-シクロプロピル}-酢酸を形成する工程(例えば適切な塩基(例えばピリジン)の存在下で)、
−{1-[(メトキシ-メチル-カルバモイル)-メチル]-シクロプロピル}-酢酸をメチル化して[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸を形成する工程(例えばメチルリチウム、メチル銅又はメチルマグネシウム(グリニャール)試薬等の適切な求核メチル化剤の存在下、必要に応じて金属(例えばFe又はCu)含有触媒の存在下、好ましくはテトラヒドロフランを含む反応溶媒中で)、
−[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸をアルコール(例えばC1-C6アルカノール、好ましくはC1-C4アルカノール、さらに好ましくはC1-C3アルカノール、なおさらに好ましくはC1-C2アルカノール、特にメタノール)でエステル化して[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸アルキルエステルを形成する工程(例えば上記条件に従って)、
−[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸アルキルエステルを環化してスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを形成する工程(例えば上記条件に従って)。
【0011】
本発明の特定のさらに詳細な実施形態では、本発明は、実質的に下記実施例で例として記載するプロセス及び/又は個々のプロセス工程に関する。
さらに、本発明は、下記化合物:
(1-カルボキシメチル-シクロプロピル)-酢酸、
6-オキサ-スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオン、
(1-メトキシカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸、
(1-クロロカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸メチルエステル、
[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステル、
[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸、及び
{1-[(メトキシ-メチル-カルバモイル)-メチル]-シクロプロピル}-酢酸、
又はその互変異性体若しくは塩
から選択される、中間体として有用な化合物に関する。
【0012】
さらなる実施形態では、本発明は、下記式
【化8】
のメチルエステルの使用に限定されず、本発明のプロセス又は方法の範囲内で、それぞれのメチルエステルに加えて、下記式
【化9】
(各式中、RはC1-C6アルキル、好ましくはC1-C4アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル等)、さらに好ましくはC1-C3アルキル、なおさらに好ましくはC1-C2アルキル、特にメチルであり得る)のより広い種類のエステルを考慮し得る。
従って、代替実施形態では、本発明は、上記又は下記(例えばスキーム1又はスキーム2)で開示するプロセス又は方法であって、下記式
【化10】
(各式中、RはC1-C6アルキル、好ましくはC1-C4アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル等)、さらに好ましくはC1-C3アルキル、なおさらに好ましくはC1-C2アルキル、特にメチルである)の化合物を、それぞれ下記式
【化11】
の化合物に代えて使用するか又は含めるプロセス又は方法に関する。
【0013】
特定の実施形態では、本発明は、下記化合物又はその塩、並びにその製法を提供し、またそれらに関する。
下記式:
【化12】
を有する6-オキサ-スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオン。
【0014】
特定の実施形態では、本発明は、下記化合物又はその塩、並びにその製法を提供し、またそれらに関する。
下記式:
【化13】
を有する(1-メトキシカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸。
【0015】
特定の実施形態では、本発明は、下記化合物又はその塩、並びにその製法を提供し、またそれらに関する。
下記式:
【化14】
を有する(1-クロロカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸メチルエステル。
【0016】
特定の実施形態では、本発明は、下記化合物又はその塩、並びにその製法を提供し、またそれらに関する。
下記式:
【化15】
を有する[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステル。
【0017】
別の実施形態では、本発明は、下記化合物又はその塩、並びにその製法を提供し、またそれらに関する。
下記式:
【化16】
を有する[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、下記化合物又はその塩、並びにその製法を提供し、またそれらに関する。
下記式:
【化17】
を有する{1-[(メトキシ-メチル-カルバモイル)-メチル]-シクロプロピル}-酢酸。
【0019】
さらなる実施形態では、本発明は、下記化合物:
【化18】
(式中、RはC1-C6アルキル、好ましくはC1-C4アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル等)である)又はその塩(本明細書に記載のメチルエステルに類似して調製可能であり、本発明の範囲内の中間体としても有用であり得る)、並びにその製法を提供し、またそれらに関する。
【0020】
さらなる実施形態では、本発明は、下記化合物:
【化19】
(式中、RはC1-C6アルキル、好ましくはC1-C4アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル等)である)又はその塩(本明細書に記載のメチルエステルに類似して調製可能であり、本発明の範囲の中間体としても有用であり得る)、並びにその製法を提供し、またそれらに関する。
【0021】
さらなる実施形態では、本発明は、下記化合物:
【化20】
(式中、RはC1-C6アルキル、好ましくはC1-C4アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル等)である)又はその塩(本明細書に記載のメチルエステルに類似して調製可能であり、本発明の範囲の中間体としても有用であり得る)、並びにその製法を提供し、またそれらに関する。
【0022】
特定の実施形態では、本発明は、単離形、例えば固形又は結晶形等の指示中間体に関する。
特定実施形態では、本発明は、溶液状態の指示中間体に関する。
さらに、本発明は、本発明のプロセス又は方法によって得られるか又は得られたスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンに関する。
【0023】
さらに本発明は特に、下記式
【化21】
を有するスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンであって、例えば実質的に本明細書に記載のように、下記式
【化22】
を有する[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステルの環化によって得られるか又は得られたスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンに関する。
【0024】
さらに、本発明は特に、下記式
【化23】
を有するスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンの調製方法であって、
下記式
【化24】
を有する[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステルを、例えば実質的に下記実施例で例として本明細書に記載の条件下、例えばエノール化に適した塩基(例えばナトリウムメタノラート等)の存在下、適切な溶媒(テトラヒドロフラン等)中、適切な反応温度でのクライゼン縮合条件下で環化してスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを形成する工程を含む方法に関する。
【0025】
これより先、本発明は、下記式
【化25】
を有するスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンであって、例えば下記式
【化26】
(式中、Rは、C1-C6アルキル、好ましくはC1-C4アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル等)、さらに好ましくはC1-C3アルキル、なおさらに好ましくはC1-C2アルキル、特にメチルである)を有する[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸エステルの、例えば実質的に本明細書に記載どおり又はそれに類似の環化によって得られるか又は得られたスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンに関する。
【0026】
これより先、本発明は、下記式
【化27】
を有するスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンの調製方法であって、下記式
【化28】
(式中、RはC1-C6アルキル、好ましくはC1-C4アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル等)、さらに好ましくはC1-C3アルキル、なおさらに好ましくはC1-C2アルキル、特にメチルである)を有する[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸エステルを、例えば実質的に下記実施例で例として本明細書に記載どおり或いはそれに類似又はそれと同様の条件下、例えばエノール化に適した塩基(例えばそれぞれの金属アルコラート、特にナトリウムメタノラート等)の存在下、適切な溶媒(例えばテトラヒドロフラン等)中、適切な反応温度のクライゼン縮合条件下で環化してスピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオンを形成する工程を含む方法に関する。
【0027】
本発明の中間体及び最終化合物は、原則として既知の合成方法を用いて得ることができる。好ましくは、関与する中間体及び最終化合物は、さらに詳細な実施例で後述する本発明の下記方法によって得ることができる。
プロセス工程は実質的に、例として本明細書に記載するように遂行し得る。本発明のプロセス又は方法は、適宜本明細書で開示する条件下で(例えば指示試薬及び/又は溶媒及び/又は温度等を用いることによって)、言及した中間体を適切な反応相手で変換させ、及び/又は適切な反応相手と反応させる1以上の工程を含み得る。
最適反応条件及び反応温度は、使用する個々の反応物質によって変動し得る。特に指定のない限り、当業者は、溶媒、温度、圧力その他の反応条件を容易に選択し得る。合成例セクションで具体的手順を提供する。典型的に、所望によりガスクロマトグラフィー(GC)、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)又は薄層クロマトグラフィーで反応進行をモニターすることができる。
【実施例】
【0028】
実施例
本発明がさらに完全に理解されるように、下記実施例を示す。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を説明する目的のためのものであり、決して本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0029】
(1-カルボキシメチル-シクロプロピル)-酢酸
【化29】
300gの(1-シアノメチル-シクロプロピル)-アセトニトリル(2.5モル)を3495gの20%水酸化カリウム水溶液(12.5モル,5当量)と混ぜ合わせ、混合物を緩徐に加熱して還流させる。還流下で7.5時間後に混合物を室温に冷まして600mlのメチルtert-ブチルエーテルで洗浄する。水相を酸性にしてpHを2.5にし、総量1500mlの2-メチルテトラヒドロフランで2回抽出する。混ぜ合わせた有機相をブライン(110ml)で洗浄し、ろ過し、蒸発乾固させて無色固体を得る。
収量:354.4g(理論の90%;アッセイ補正して83%)
純度(HPLC a/a):92%
1H NMR (400 MHz, D2O): δ H = 2.29 (s, 4 H), 0.43 (s, 4 H) ppm。
【0030】
6-オキサ-スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオン
【化30】
350gの粗製(1-カルボキシメチル-シクロプロピル)-酢酸(2.2モル,92%純度,工程1から)を350mlのメシチレンと678gの無水酢酸(6.6モル,3当量)の混合物に懸濁させて100℃に加熱する。当該温度に達したら、圧力を約200mbarに下げ、蒸留して溶媒混合物の45%を除去する(蒸留に約1時間かかる)。次に混合物を緩徐に0〜5℃に冷却し、沈殿物をろ過で収集する。フィルターケークを87mlの冷メシチレンで洗浄してから真空中40℃で乾燥させる。
収量:252.1g(理論の81%)
純度(GC a/a):99%
質量分析(EI+):m/z=140 [M]+
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ H = 2.61 (s, 4 H), 0.63 (s, 4 H) ppm。
母液を濃縮乾固させ、残渣を3.5ボリューム(vol)のメシチレンから再結晶させることによって追加物質を得ることができる(収率を87%に高める)。
【0031】
(1-メトキシカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸
【化31】
150mlのトルエン中150gの6-オキサ-スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオン(1.07モル)の懸濁液に69gのメタノール(2.1モル,2当量)と75mgの4-ジメチルアミノピリジン(0.06モル-%)を加える。混合物を還流下で加熱する(約85℃)。1時間後に混合物を40〜50℃に冷まして150mlのトルエンを加える。次に真空にして180gの留出物を反応混合物から除去する。残存溶液を直接次工程で使用する。
純度(GC a/a,N-メチル-N-(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドで誘導体化):98%
1H NMR(400MHz, CDCl3):δ H = 11.44 (br s, 1 H), 3.63 (s, 3 H), 2.41 (s, 2 H), 2.38 (s, 2 H), 0.52 (s, 4 H) ppm。
メタノール以外の適切なアルコール(例えばエタノール等)を用いて、メチルエステルについて述べた手順に類似してか又はそれと同様に、対応する非メチルエステル(例えばエチルエステル)を得ることができる。
【0032】
(1-クロロカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸メチルエステル
【化32】
前工程からの粗製(1-メトキシカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸溶液(180mlのトルエン中約184g(1.07モル)の(1-メトキシカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸を含有)を120mlのトルエンで希釈する。10滴のジメチルホルムアミドを加え、混合物を40℃に加熱し、75mlのトルエン中159gの塩化チオニル(1.34モル,1.25当量)の溶液を滴加する。次に混合物をゆっくり70℃に加熱して一晩撹拌する。次に真空蒸留で溶媒を除去し、残渣をそれぞれ185mlのトルエンで3回共蒸発させ、ダーク油を得る。
収量:207.2g(粗生成物,理論の102%(2工程にわたって))
純度(GC a/a,イソプロパノールで誘導体化):97%
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ H = 3.64 (s, 3 H), 3.01 (s, 2 H), 2.34 (s, 2 H), 0.56 (s, 4 H) ppm。
【0033】
[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステル
【化33】
207.2gの粗製(1-クロロカルボニルメチル-シクロプロピル)-酢酸メチルエステル(約1.07モル,97%純度,工程4から)をテトラヒドロフランとトルエンの3:1混合物1428mlに溶かす。混合物を-50℃に冷却して6.3gの臭化鉄(III)(0.02モル,0.02当量)を加える。次に357mlのテトラヒドロフラン中メチルマグネシウムクロリド(テトラヒドロフラン中3M溶液,1.07モル,1.0当量)を2時間かけて滴加する。プロセス内制御後、55mlのテトラヒドロフラン中メチルマグネシウムクロリド(テトラヒドロフラン中3M溶液,0.17モル,0.15当量)を滴加する。40分間撹拌を続けてから混合物を約0℃に温め、750mlのメチルtert-ブチルエーテルで希釈する。次に混合物を27mlの37%塩酸と480mlの水の混合物上に移す。相を分けて水相を480mlのメチルtert-ブチルエーテルで抽出する。混ぜ合わせた有機相を480mlの水(それぞれ)で2回洗浄してから210mlのブラインで洗浄し、次に硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発乾固させて暗赤色/褐色油を得る。
収量:167.7g(88%アッセイ,理論の81%(3工程にわたって))
純度(GC):92%
質量分析(EI+):m/z=170 [M]+, 155 [M-CH3]+
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ H = 3.66 (s, 3 H), 2.53 (s, 2 H), 2.36 (s, 2 H), 2.13 (s, 3 H), 0.57 - 0.54 (m, 2 H), 0.48 - 0.45 (m, 2 H) ppm。
【0034】
スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオン
【化34】
23.3gの粗製[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステル(60%純度,工程5から)を135mlのテトラヒドロフランに溶かし、17.1gのメタノール中ナトリウムメタノラート溶液(メタノール中30%)を室温で加えて混合物を6時間撹拌する。この溶液を次に135mlのメチルtert-ブチルエーテルで希釈し、135mlの水でクエンチする。5分間撹拌を続けてから相を分ける。水相を67.5mlのメチルtert-ブチルエーテルで抽出してから37%HClで酸性にしてpHを2〜3にし、それぞれ67.5mlのメチルtert-ブチルエーテルで2回洗浄する。混ぜ合わせた有機相を18mlの水で洗浄し、濃縮乾固させる。粗生成物を18mlの冷メチルtert-ブチルエーテルと撹拌してから沈殿物をろ過で単離する。フィルターケークを18mlの冷メチルtert-ブチルエーテルで洗浄して生成物をオフホワイト固体として得る。
収量:6.6g(理論の60%)
純度(HPLC a/a):99.8%
質量分析(EI+):m/z=138 [M]+
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ H = 3.45 (s, 2 H), 2.43 (s, 4 H), 0.54 (s, 4 H) (ケト形);10.14 (br s, 1 H), 5.54 (s, 1 H), 2.25 (s, 4 H), 0.47 (s, 4 H) (エノール形))ppm。
【0035】
代替手段:
【化35】
【0036】
代替経路I:
[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸
【化36】
66mlのテトラヒドロフラン中4.4gの6-オキサ-スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオン(31ミリモル)の溶液に600mgの塩化銅(I)(6ミリモル,0.2当量)を加える。混合物を-20℃に冷却し、9.8mlの2-メチルテトラヒドロフラン中メチルマグネシウムブロミド(2-メチルテトラヒドロフラン中3.2M,31ミリモル,1.0当量)を0.5時間かけて滴加する。混合物を室温に戻して2時間撹拌する。66mlの水を加え、20.4gの2M塩酸を添加して混合物を酸性にしてpH3.0とする。50mlのメチルtert-ブチルエーテルを加えて相を分ける。水相を再び50mlのメチルtert-ブチルエーテルで抽出し、混ぜ合わせた有機相を20mlのブラインで洗浄し、濃縮乾固させる。結果として生じる粗生成物を直接次工程([1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステルへのエステル化)で使用する。
収量:4.9g(粗製)
【0037】
[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステル
【化37】
4.9gの粗製[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸(31ミリモル)の73.5mlのメタノール中の溶液に1mlのメシチレン(GC規格)と2.5mlの濃塩酸を加える。混合物を加熱して1時間還流させてから濃縮乾固させる。残渣に40mlの水を加え、結果として生じる混合物を100mlのメチルtert-ブチルエーテルで2回に分けて抽出する。混ぜ合わせた有機相を濃縮乾固させる。結果として生じる粗生成物を直接次工程で使用する(スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオン)。
収量:5.3g(粗製)
純度(GC a/a):20.0%
メタノール以外のアルコール(例えばエタノール等)を用いて、メチルエステルについて述べた手順に類似してか又はそれと同様に、対応する非メチルエステル(例えばエチルエステル)を得ることができる。
【0038】
スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオン
【化38】
実験の詳細:上記参照
収量:0.33g(3工程にわたって8%)
純度(GC a/a):99.7%
【0039】
代替経路II:
{1-[(メトキシ-メチル-カルバモイル)-メチル]-シクロプロピル}-酢酸
【化39】
5gの6-オキサ-スピロ[2.5]オクタン-5,7-ジオン(36ミリモル)、3.8gのN,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(39ミリモル,1.1当量)及び75mlのジクロロメタンの混合物に7mlのピリジン(78ミリモル,2.2当量)を0〜5℃で加える。この溶液を室温に温め、一晩撹拌し、50mlのブラインで洗浄する。水相を3×30mlのジクロロメタンで抽出し、混ぜ合わせた有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、蒸発乾固させる。結果として生じる粗生成物を直接次工程で使用する([1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸)。
収量:7.9g(粗製,理論の110%)
純度(HPLC a/a):>99.9%
【0040】
[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸
【化40】
54mlのTHF中3.6gの粗製{1-[(メトキシ-メチル-カルバモイル)-メチル]-シクロプロピル}-酢酸(18ミリモル)の溶液に24.5mlのメチルリチウム(ジエチルエーテル中1.6M溶液,39.2ミリモル,2.2当量)を<-75℃で加える。2時間撹拌を続けてから2mlのメタノールを添加して混合物をクエンチし、室温に戻す。54mlの水を加えて相を分ける。水性生成物相を27mlのメチルtert-ブチルエーテルで洗浄し、濃HClを添加して酸性にしてpH2.5とし、それぞれ27mlの酢酸エチルで3回抽出する。混ぜ合わせた有機相を濃縮乾固させ、残渣を直接次工程([1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステルへのエステル化)で使用する。
【0041】
[1-(2-オキソ-プロピル)-シクロプロピル]-酢酸メチルエステル
【化41】
実験の詳細:上記参照
収量:2.4g(84%アッセイ,3工程にわたって66%(アッセイ補正して))
純度(GC a/a):86.3%