【実施例】
【0079】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例で測定された特性値の測定は、以下の方法に従った。
【0080】
<SPAEポリマーの評価>
SPAEポリマーのスルホン化度、イオン交換容量(IEC)およびガラス転移温度は以下のように評価した。
【0081】
(スルホン化度)
窒素雰囲気下で一晩乾燥したSPAEポリマーの重量を測定し、水酸化ナトリウム水溶液と攪拌処理した後、塩酸水溶液による逆滴定を行うことでイオン交換容量(IEC)を評価した。
【0082】
(IEC)
真空乾燥器で120℃、1晩乾燥させたポリマー10mgを、重水素化DMSO(DMSO−d6)1mLに溶解させ、これをBRUKER AVANCE500(周波数500.13MHz、測定温度30℃、FT積算32回)にてプロトンNMR測定した。得られたスペクトルチャートにおいて、疎水性セグメントおよび親水性セグメントに含まれる各プロトンとピーク位置の関係を同定し、疎水性セグメントにおけるプロトンのうち独立したピークと、親水性セグメントにおけるプロトンのうち独立したピークの1個のプロトンあたりの積分強度の比から求めた。
【0083】
(ガラス転移温度)
乾燥状態のSPAEポリマー粉末のガラス転移温度を、示差走査熱量分析法(Differential Scanning Calorimetry,DSC)によって評価した。ポリマーサンプルをアルミニウム製の試料パンに充填し、TA instrument社製Q100を用いて測定した。第1スキャンとして、SPAEが熱分解しない温度まで昇温させた後、冷却し、再度昇温させた第2スキャンで、ガラス転移温度を評価した。第1スキャンにはポリマーに含まれる水分のデータが混入するので、データへの水の影響を除外するため、第2スキャンを採用する。具体的には、20℃から320℃まで、20℃/minで昇温し、20℃まで20℃/minで降温させた。その後、第2スキャンとして、再度20℃から450℃まで、20℃/minで昇温させた。ガラス転移温度は、TA instruments社製のUniversal Analysis 2000を用いて、熱容量変化ステップの中心点を評価した。ただし、SPAEの化学構造によって、ポリマーの熱安定性が変りうるため、必要に応じて、第1スキャンの到達温度はポリマーを著しく劣化させない程度に留めるべきであり、事前に熱重量分析法(Thermogravimetric Analysis,TGA)により、ポリマーの分解温度を調査して、前記の第1スキャンの到達温度を調整する。目安として不活性ガス雰囲気下にて、ポリマーの5%重量減少が起こる温度未満にする。
【0084】
<複合分離膜の膜性能評価方法>
複合分離膜について以下の方法で、膜形状の評価、分離層の厚み評価、分離性能および透過性能の評価を行なった。
【0085】
(多孔性支持膜の形状)
実施例1〜9の多孔性支持膜サンプル(中空糸)の形状評価は以下の方法で行った。3mmφの孔を空けた2mm厚のSUS板の孔に、適量の中空糸束を詰め、カミソリ刃でカットして断面を露出させた後、Nikon製の顕微鏡(ECLIPSE LV100)およびNikon製の画像処理装置(DIGITAL SIGHT DS−U2)およびCCDカメラ(DS−Ri1)を用いて、断面の形状を撮影し、画像解析ソフト(NIS Element D3.00 SP6)により、中空糸膜断面の外径および内径を、該解析ソフトの計測機能を用いて測定することで中空糸膜の外径および内径および厚みを算出した。実施例10の多孔性支持膜サンプル(平膜)の形状評価は、含水状態のサンプルを液体窒素で凍結させ、割断し、風乾させて、その割断面にPtをスパッタリングさせて、(株)日立製作所製の走査型電子顕微鏡S−4800を用いて、加速電圧5kVで観察し、ポリエステル不織布部分を除く、多孔性支持膜の厚みを計測した。
【0086】
(複合分離膜サンプルの分離層の厚み)
実施例1〜10の複合分離膜を50%エタノール水溶液で親水化処理した後、水に浸漬したものを液体窒素で凍結させ、割断し、風乾させて、その割断面にPtをスパッタリングさせて、(株)日立製作所製の走査型電子顕微鏡S−4800を用いて、加速電圧5kVで観察した。
図1に、SEM像の一例として、実施例1の複合分離膜のSEM像を示す。分離層の厚みは膜の外層部を撮影して測定した。
【0087】
(複合分離膜のNaCl分離性能および透過性能)
実施例1〜9の中空糸膜を束ねて、プラスチック製スリーブに挿入した後、熱硬化性樹脂をスリーブに注入し、硬化させ封止した。熱硬化性樹脂で硬化させた中空糸膜の端部を切断することで中空糸膜の開口面を得て、評価用モジュールを作製した。この評価用モジュールを供給水タンク、ポンプからなる中空糸膜性能試験装置に接続し、性能評価した。実施例10の平膜は、上記と同様、供給水タンク、ポンプの構成からなる平膜性能評価装置に設置し、性能評価した。評価条件は、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの供給水溶液を、25℃、圧力0.5MPaで約30〜1時間運転させ、その後、膜からの透過水を採取して、電子天秤(島津製作所 LIBROR EB−3200D)で透過水重量を測定した。透過水重量は、下記式にて25℃の透過水量に換算した。
透過水量(L)=透過水重量(kg)/0.99704(kg/L)
透水量(FR)は下記式より算出した。
FR[L/m
2/日]=透過水量[L]/膜面積[m
2]/採取時間[分]×(60[分]×24[時間])
【0088】
前記透水量測定で採取した膜透過水と、同じく透水量の測定で使用した塩化ナトリウム濃度1500mg/L供給水溶液を電気伝導率計(東亜ディーケーケー社CM−25R)を用いて塩化ナトリウム濃度を測定した。
塩除去率は下記式より算出した。
塩除去率[%]=(1−膜透過水塩濃度[mg/L]/供給水溶液塩濃度[mg/L])×100
【0089】
(複合分離膜のMgSO
4分離性能および透過性能)
実施例1〜9の中空糸膜を束ねて、プラスチック製スリーブに挿入した後、熱硬化性樹脂をスリーブに注入し、硬化させ封止した。熱硬化性樹脂で硬化させた中空糸膜の端部を切断することで中空糸膜の開口面を得て、評価用モジュールを作製した。この評価用モジュールを供給水タンク、ポンプからなる中空糸膜性能試験装置に接続し、性能評価した。実施例10の平膜は、上記と同様、供給水タンク、ポンプの構成からなる平膜性能評価装置に設置し、性能評価した。除去率の評価条件は、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの供給水溶液を、25℃、圧力0.5MPaで約30〜1時間運転させ、その後、膜からの透過水を採取して、電子天秤(島津製作所 LIBROR EB−3200D)で透過水重量を測定した。透過水重量は、下記式にて25℃の透過水量に換算した。
透過水量(L)=透過水重量(kg)/0.99704(kg/L)
透水量(FR)は下記式より算出した。
FR[L/m
2/日]=透過水量[L]/膜面積[m
2]/採取時間[分]×(60[分]×24[時間])
【0090】
前記透水量測定で採取した膜透過水と、同じく透水量の測定で使用した硫酸ナトリウム濃度500mg/L供給水溶液を電気伝導率計(東亜ディーケーケー社CM−25R)を用いて塩化ナトリウム濃度を測定した。
塩除去率は下記式より算出した。
塩除去率[%]=(1−膜透過水塩濃度[mg/L]/供給水溶液塩濃度[mg/L])×100
【0091】
<プロトンNMR測定方法>
複合分離膜について以下の方法で、プロトンNMRによる測定を実施し、aの値を算出した。
【0092】
あらかじめ、水洗し、60℃で4時間乾燥させた複合分離膜を準備する。前記複合分離膜を長さ7cmに切り取った複合分離膜試料を20本準備する。NMR測定の際の内部基準物質として2質量%テトラメチルシランを含む重水素化クロロホルム溶液をキャピラリー中に封入したものと前記複合分離膜試料20本を直径5mmのNMRチューブに挿入し、含水状態とするために40℃、相対湿度80%に保った恒温恒湿槽に120時間静置する。前記含水状態複合分離膜試料をBRUKER社製AVANCE500(共鳴周波数500.13MHz、測定温度−10℃、FT積算64回、待ち時間5秒)でプロトンNMR測定を行う。その際、−10℃に達した後に温度安定化のために、60分の待機時間を設ける。
図1は、プロトンNMRスペクトルチャートの一例を示す。観察されるスペクトルのうち、最も高磁場側に出現するピークがテトラメチルシラン由来のピークであり、このピークを0ppmとして基準とする。より低磁場側に大きく出現するピークが膜中の水由来のピークである。−10℃で測定を実施した際の膜中の水由来のピークのピークトップのケミカルシフトの値をa(ppm)とした。
【0093】
<実施例1>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製のポリフェニレンエーテルPX100L(以下、PPEと略す。)を準備した。PPEが30質量パーセントとなるように、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す。)を加えて混練しながら、140℃で溶解させて、均一な製膜原液を得た。
【0094】
続いて、製膜原液を75℃の温度に保ちながら、二重円筒管ノズルより、中空状に押出しながら、内液として70質量%NMP水溶液を同時に押出して成形させ、常温の空気中を空走させて、乾燥処理を行ったあと、35質量%NMP水溶液を満たした40℃の凝固浴に浸漬させ、PPE多孔性支持膜を作製した後、水洗処理を行った。
【0095】
前記水洗処理を終えた多孔性支持膜を50質量%のグリセリン水溶液に浸漬した後、40℃で乾燥してワインダーに巻き取った。
【0096】
得られたPPE多孔性支持膜の外径は260μm、膜厚は45μmであった。純水透過試験を行ったところ、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、5200L/m
2/日であった。
【0097】
(複合分離膜の作製)
上記の式(I)で表される疎水性セグメントと式(II)で表される親水性セグメントの繰り返し構造を有するSPAEを以下のようにして準備した。
【0098】
3,3′−ジスルホ−4,4′−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(以下、S−DCDPSと略す)15.00g、2,6−ジクロロベンゾニトリル(以下、DCBNと略す)、29.76g、4,4′−ビフェノール(以下、BPと略す)37.91g、炭酸カリウム30.95gを冷却還流管を取り付けた1000mL四つ口フラスコに計量し、0.5L/minで窒素を流した。N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す)263mLを入れて、オイルバスに入れ、150℃にして30分攪拌した後、210℃に昇温して12時間反応させた。放冷の後、重合反応溶液を水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、常温の水で6回洗浄し、110℃真空乾燥した。スルホン化度(以下、DSと略す)測定の結果、DS=15.0%のSPAEを得た。
【0099】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=244℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、十分な溶解性が得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0100】
得られたSPAEにDMSO溶媒を加えて、常温で撹拌させながら溶解させ、3質量%濃度のコーティング溶液を得た。
【0101】
前記コーティング溶液にPPE多孔性支持膜を通糸させた後、115℃で乾燥し、1.5m/minの速度でワインダーに巻き取った。
【0102】
得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=4.19ppmであった。
【0103】
得られた複合分離膜をエタノールに30分浸漬することで、親水化処理を行った後、性能評価試験を行った。試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件において、透水量は42L/m
2/日、塩除去率は84.0%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は45L/m
2/日、塩除去率は99.6%であった。
【0104】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは160nmであった。得られた複合分離膜の膜断面のSEM像、膜断面外層部の拡大SEM像、膜表面の拡大SEM像をそれぞれ
図3〜5に示す。
【0105】
<実施例2>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製し、目詰め処理を施した。中空糸膜の外径は260μm、膜厚は45μmであり、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、5200L/m
2/日であった。
【0106】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同様の方法でDS=15.0%のSPAEを得た。
【0107】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=244℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、溶解性が得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0108】
乾燥温度を80℃に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、複合分離膜を得た。得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=4.72ppmであった。
【0109】
得られた複合分離膜の性能評価試験を行ったところ、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件において、透水量は750L/m
2/日、塩除去率は35.0%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は155L/m
2/日、塩除去率は78.2%であった。
【0110】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは140nmであった。
【0111】
<実施例3>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製し、目詰め処理を施した。中空糸膜の外径は260μm、膜厚は45μmであり、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、5300L/m
2/日であった。
【0112】
(複合分離膜の作製)
S−DCDPS35.00g、DCBN15.60g、BP30.15g、炭酸カリウム24.26gを冷却還流管を取り付けた1000mL四つ口フラスコに計量し、0.5L/minで窒素を流した。NMP268mLを入れて、オイルバスに入れ、150℃にして30分攪拌した後、210℃に昇温して12時間反応させた。放冷の後、重合反応溶液を水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、常温の水で6回洗浄し、110℃真空乾燥した。DS測定の結果、DS=44.0%のSPAEを得た。
【0113】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=322℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、溶解性が得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0114】
乾燥温度を110℃に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、複合分離膜を得た。得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=4.92ppmであった。
【0115】
得られた複合分離膜の性能評価試験を行ったところ、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件において、透水量は1200L/m
2/日、塩除去率は25.0%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は240L/m
2/日、塩除去率は71.8%であった。
【0116】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは150nmであった。
【0117】
<実施例4>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製し、目詰め処理を施した。中空糸膜の外径は260μm、膜厚は45μmであり、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、5250L/m
2/日であった。
【0118】
(複合分離膜の作製)
実施例3と同様の方法でDS=44%のSPAEを得た。
【0119】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=322℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、溶解性が十分得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0120】
乾燥温度を175℃に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、複合分離膜を得た。得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=4.55ppmであった。
【0121】
得られた複合分離膜の性能評価試験を行ったところ、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件において、透水量は400L/m
2/日、塩除去率は60.2%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は120L/m
2/日、塩除去率は91.2%であった。
【0122】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは140nmであった。
【0123】
<実施例5>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製し、目詰め処理を施した。中空糸膜の外径は260μm、膜厚は45μmであり、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、5000L/m
2/日であった。
【0124】
(複合分離膜の作製)
S−DCDPS45.00g、DCBN8.48g、BP26.24g、炭酸カリウム21.43gを冷却還流管を取り付けた1000mL四つ口フラスコに計量し、0.5L/minで窒素を流した。NMP270mLを入れて、オイルバスに入れ、150℃にして30分攪拌した後、210℃に昇温して12時間反応させた。放冷の後、重合反応溶液を水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、常温の水で6回洗浄し、110℃真空乾燥した。DS測定の結果、DS=65.0%のSPAEを得た。
【0125】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=399℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、溶解性が十分得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0126】
実施例4と同じ方法で、複合分離膜を得た。得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=4.68ppmであった。
【0127】
得られた複合分離膜の性能評価試験を行ったところ、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件において、透水量は700L/m
2/日、塩除去率は38.4%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は105L/m
2/日、塩除去率は78.8%であった。
【0128】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは160nmであった。
【0129】
<実施例6>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製し、目詰め処理を施した。中空糸膜の外径は260μm、膜厚は45μmであり、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、5100L/m
2/日であった。
【0130】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同様の方法でDS=15.0%のSPAEを得た。
【0131】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=244℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、溶解性が十分得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0132】
得られたSPAEにGBL溶媒を加えて、常温で攪拌させながら溶解させ、3質量%濃度のコーティング溶液を得た。
【0133】
実施例1と同じ方法で、複合分離膜を得た。得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=4.18ppmであった。
【0134】
得られた複合分離膜の性能評価試験を行ったところ、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件において、透水量は58L/m
2/日、塩除去率は82.5%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は55L/m
2/日、塩除去率は99.5%であった。
【0135】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは160nmであった。
【0136】
<実施例7>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製し、目詰め処理を施した。中空糸膜の外径は260μm、膜厚は45μmであり、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、4990L/m
2/日であった。
【0137】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同様の方法でDS=15.0%のSPAEを得た。
【0138】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=244℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、溶解性が十分得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0139】
得られたSPAEにNMPとDMSOの重量比50対50の混合溶媒を加えて、常温で攪拌させながら溶解させ、3質量%濃度のコーティング溶液を得た。
【0140】
実施例1と同じ方法で、複合分離膜を得た。得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=4.20ppmであった。
【0141】
得られた複合分離膜の性能評価試験を行ったところ、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件において、透水量は46L/m
2/日、塩除去率は84.0%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は43L/m
2/日、塩除去率は99.6%であった。
【0142】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは150nmであった。
【0143】
<実施例8>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製し、目詰め処理を施した。中空糸膜の外径は260μm、膜厚は45μmであり、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、4990L/m
2/日であった。
【0144】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同様の方法でDS=15.0%のSPAEを得た。
【0145】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=244℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、溶解性が十分得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0146】
得られたSPAEにジエチレングリコールとDMSOの重量比50対50の混合溶媒を加えて、常温で攪拌させながら溶解させ、3質量%濃度のコーティング溶液を得た。
【0147】
実施例1と同じ方法で、複合分離膜を得た。得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=4.18ppmであった。
【0148】
得られた複合分離膜の性能評価試験を行ったところ、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件において、透水量は59L/m
2/日、塩除去率は81.5%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は57L/m
2/日、塩除去率は99.5%であった。
【0149】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは180nmであった。
【0150】
<実施例9>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製し、目詰め処理を施した。中空糸膜の外径は260μm、膜厚は45μmであり、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、5230L/m
2/日であった。
【0151】
(複合分離膜の作製)
前記式(IV)、(V)の組合せのなかから選択し、下記の式(VI)で表される疎水性セグメントと式(VII)で表される親水性セグメントの繰り返し構造を有するSPAEを以下のようにして準備した。
【0152】
S−DCDPS15.00g、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン35.47g、BP28.19g、炭酸カリウム23.00gを冷却還流管を取り付けた1000mL四つ口フラスコに計量し、0.5L/minで窒素を流した。NMP259mLを入れて、オイルバスに入れ、150℃にして30分攪拌した後、210℃に昇温して12時間反応させた。放冷の後、重合反応溶液を水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、常温の水で6回洗浄し、110℃真空乾燥した。DS測定の結果、DS=20.0%のSPAEを得た。
【0153】
【化36】
【化37】
上記式中、aおよびb、R
1およびR
2については上記の式(IV)(V)で規定されているのと同じ意味を表す。
【0154】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=265℃であった。SPAEポリマーに対する溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸へ十分な溶解性を示さなかった。ジエチレングリコールには130℃程度で一晩撹拌することで、若干の溶解性を示したが、溶液は常温でゲル状であったため、良好な塗布が行えなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには良好な溶解性を示した。
【0155】
コーティング溶液の作製とコーティング方法は、実施例1と同じ方法をとり、複合分離膜を得た。得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=4.20ppmであった。
【0156】
得られた複合分離膜の性能評価試験を行ったところ、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件において、透水量は80L/m
2/日、塩除去率は78.0%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は63L/m
2/日、塩除去率は98.7%であった。
【0157】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは140nmであった。
【0158】
<実施例10>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同様に、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製のポリフェニレンエーテルPX100L(以下、PPEと略す。)を準備した。PPEが20質量パーセントとなるように、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す。)を加えて混練しながら、80℃で溶解させて、均一な製膜原液を得た。
【0159】
続いて、60℃に保温したガラス基板上に、50質量%のグリセリン水溶液を適度に含浸させたポリエステル抄紙(廣瀬製紙製05TH−60)を置き、その上から、60℃の製膜原液を均一にハンドコーターで塗布した。20秒程度の乾燥処理の後に、30℃の35質量%NMP水溶液の凝固浴中に浸漬して、平膜状の多孔性支持膜を得た。その後、水洗処理を行った。得られた膜のポリエステル抄紙部分を除くPPE多孔性支持膜の厚みは40μmであった。
【0160】
水洗されたPPE多孔性支持膜を50質量%のグリセリン水溶液に含浸させた後、40℃で一晩乾燥させて、目詰め処理された膜を得た。
【0161】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同様な方法でDS=15.0%のSPAEを得た。
【0162】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=244℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、溶解性が得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0163】
得られたSPAEにDMSO溶媒を加えて、常温で撹拌させながら溶解させ、0.8質量%濃度のコーティング溶液および0.1質量%のコーティング溶液を得た。
【0164】
複合膜化は、前記の0.7質量%のコーティング溶液を塗布し、80℃で30分間、穏やかな熱風で乾燥を行った。その後、その上から再度0.1質量%のコーティング溶液をはけ塗りして80℃で30分間再乾燥することで、複合分離膜とした。
【0165】
得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=4.20ppmであった。
【0166】
得られた複合分離膜をエタノールに30分浸漬することで、親水化処理を行った後、性能評価試験を行った。平膜の評価装置を用いたこと以外は、他の実施例と同様に、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの評価条件を用いたところ、透水量は41L/m
2/日、塩除去率は86.4%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は42L/m
2/日、塩除去率は99.6%であった。
【0167】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは320nmであった。
【0168】
<比較例1>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製し、目詰め処理を施した。中空糸膜の外径は260μm、膜厚は45μmであり、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、5210L/m
2/日であった。
【0169】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同様の方法でDS=15.0%のSPAEを得た。
【0170】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=244℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、溶解性が十分得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0171】
乾燥温度を170℃に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で、複合分離膜を得た。得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=4.13ppmであった。
【0172】
得られた複合分離膜の性能評価試験を行ったところ、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件において、透水量は12L/m
2/日、塩除去率は95.0%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は11L/m
2/日、塩除去率は99.8%であった。
【0173】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは150nmであった。
【0174】
<比較例2>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製し、目詰め処理を施した。中空糸膜の外径は260μm、膜厚は45μmであり、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、4990L/m
2/日であった。
【0175】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同様の方法でDS=15.0%のSPAEを得た。
【0176】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=244℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、溶解性が十分得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0177】
乾燥温度を70℃に変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で、複合分離膜を得た。得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=5.52ppmであった。
【0178】
得られた複合分離膜の性能評価試験を行ったところ、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件において、透水量は3120L/m
2/日、塩除去率は4.2%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は1710L/m
2/日、塩除去率は15.0%であった。
【0179】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは170nmであった。
【0180】
<比較例3>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製し、目詰め処理を施した。中空糸膜の外径は260μm、膜厚は45μmであり、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、5000L/m
2/日であった。
【0181】
(複合分離膜の作製)
実施例5と同様の方法でDS=65.0%のSPAEを得た。
【0182】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=399℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、溶解性が十分得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0183】
実施例3と同じ方法で、複合分離膜を得た。得られた複合分離膜をNMR測定に供した結果、a=5.53ppmであった。
【0184】
得られた複合分離膜の性能評価試験を行ったところ、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件において、透水量は3420L/m
2/日、塩除去率は2.8%であり、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水量は1920L/m
2/日、塩除去率は10.0%であった。
【0185】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは140nmであった。
【0186】
<比較例4>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、実施例1と同じ方法でPPE多孔性支持膜を作製し、目詰め処理を施した。中空糸膜の外径は260μm、膜厚は45μmであり、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、8020L/m
2/日であった。
【0187】
(複合分離膜の作製)
S−DCDPS6.50g、DCBN35.66g、BP41.06g、炭酸カリウム33.53gを冷却還流管を取り付けた1000mL四つ口フラスコに計量し、0.5L/minで窒素を流した。NMP261mLを入れて、オイルバスに入れ、150℃にして30分攪拌した後、210℃に昇温して12時間反応させた。放冷の後、重合反応溶液を水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、常温の水で6回洗浄し、110℃真空乾燥した。DS測定の結果、DS=6.0%のSPAEを得た。
【0188】
SPAEポリマーのガラス転移温度T
gを評価したところ、T
g=232℃であった。得られたSPAEポリマーに対して、溶媒群2の溶媒として、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールへの溶解性を検討したが、溶解性が十分得られなかった。溶媒群1のNMP、DMAc、GBL、DMF、DMSOには、いずれにも溶解した。
【0189】
実施例1と同じ方法で、複合分離膜を得た。得られた複合分離膜をNMR測定に供したが、膜中の水由来のピークが著しく小さかったため、解析が困難であった。
【0190】
得られた複合分離膜の性能評価試験を行ったところ、試験圧力0.5MPa、塩化ナトリウム濃度1500mg/Lの条件、試験圧力0.5MPa、硫酸マグネシウム濃度500mg/Lの条件において、透水が確認できなかった。
【0191】
SEM観察の結果、得られた複合分離膜におけるSPAE分離層の厚さは150nmであった。
【0192】
<比較例5>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、住友化学株式会社製のポリエーテルスルホン5200P(以下、PESと略す。)を、また親水性ポリマーとしてBASF社製ポリビニルピロリドンK85(以下PVPと略す)を準備した。PESが25質量%、PVPが2質量%となるように、NMPを加えて混練しながら、80℃で溶解させて、均一な製膜原液を得た。
【0193】
続いて、製膜原液を60℃の温度に保ちながら、二重円筒管ノズルより、中空糸膜形状に押出しながら、内液として70質量%NMP水溶液を同時に押出して成形させ、常温の空気中を空走させて、乾燥処理を行ったあと、35質量%NMP水溶液を満たした40℃の凝固浴に浸漬させ、PES多孔性支持膜を作製した後、水洗処理を行った。
【0194】
得られたPES多孔性支持膜の外径は255μm、膜厚は40μmであった。純水透過試験を行ったところ、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、5020L/m
2/日であった。
【0195】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同一の方法で得られたDMSO溶媒のSPAEコーティング液で満たした浴槽にPES多孔性支持膜を通糸したところ、著しく膜が膨潤した後、溶解して糸切れを起こしたため、複合分離膜を得ることができなかった。
【0196】
<比較例6>
(多孔性支持膜の作製)
多孔性支持膜のポリマーとして、アルケマ株式会社製のポリフッ化ビニリデンkynar301F(以下、PVDFと略す。)を、また親水性ポリマーとしてBASF社製ポリビニルピロリドンK85(以下PVPと略す)を準備した。PVDFが25質量%、PVPが2質量%となるように、NMPを加えて混練しながら、150℃で溶解させて、均一な製膜原液を得た。
【0197】
続いて、製膜原液を60℃の温度に保ちながら、二重円筒管ノズルより、中空糸膜形状に押出しながら、内液として70質量%NMP水溶液を同時に押出して成形させ、常温の空気中を空走させて、乾燥処理を行ったあと、35質量%NMP水溶液を満たした40℃の凝固浴に浸漬させ、PVDF多孔性支持膜を作製した後、水洗処理を行った。
【0198】
得られたPVDF多孔性支持膜の外径は260μm、膜厚は50μmであった。純水透過試験を行ったところ、純水透過量FRは0.5MPaの試験圧力において、4280L/m
2/日であった。
【0199】
(複合分離膜の作製)
実施例1と同一の方法で得られたDMSO溶媒のSPAEコーティング液で満たした浴槽にPVDF多孔性支持膜を通糸したところ、比較例1のPES膜の場合と同様、膜の膨潤がみられ、80℃の乾燥炉の中で糸が溶解して糸切れを起こしたため、複合分離膜を得ることができなかった。
【0200】
<比較例7>
(コーティング溶液の作製)
実施例1と同じ方法で得られたスルホン化度DS=15.0%のSPAEを3質量%となるように、溶媒群2のうち、2−メトキシエタノール、ギ酸、ジエチレングリコールをそれぞれ添加し、100℃で撹拌したが、溶解状態が得られず、複合分離膜を得ることはできなかった。
【0201】
【表2】