特許第6256807号(P6256807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6256807
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】熱交換器およびこれを備えた温水装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20060101AFI20171227BHJP
   F24H 1/14 20060101ALI20171227BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   F24H9/00 A
   F24H1/14 B
   F28F1/32 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-3782(P2014-3782)
(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公開番号】特開2015-132416(P2015-132416A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】大東 健
(72)【発明者】
【氏名】廣津 誠
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−200828(JP,A)
【文献】 特開2001−336831(JP,A)
【文献】 特開2001−208424(JP,A)
【文献】 実開昭58−076040(JP,U)
【文献】 特許第3040198(JP,B2)
【文献】 特開平11−141995(JP,A)
【文献】 特開平05−118665(JP,A)
【文献】 特開平10−096504(JP,A)
【文献】 特開2003−329308(JP,A)
【文献】 実開平02−024244(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F24H 1/14
F28F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用気体が内部に流入する1つの缶体と、
前記加熱用気体の流れ方向とは交差する方向に並ぶようにして前記缶体内に設けられ、かつそれぞれがプレート状の複数のフィンおよびこれら複数のフィンに貫通する伝熱管を有している第1および第2の熱交換部と、
を備えており、
前記第1の熱交換部は、前記第2の熱交換部よりも加熱用気体流れ方向の伝熱管配列数が少なくされている、熱交換器であって、
前記第1の熱交換部の複数のフィンの全部または一部は、前記第2の熱交換部の複数のフィンよりも加熱用気体流れ方向の幅が狭くされており、
前記第1の熱交換部の複数のフィンのうち、前記缶体の側壁部に第1の隙間を介して対面するフィンは、前記第1の隙間を閉塞して前記加熱用気体が前記第1の隙間を通過することを防止する缶体加熱抑制用のフィンとして構成されていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記缶体の開口周縁に形成されたフランジ部とこのフランジ部の接続対象部材との間に介装されるシール部材を、さらに備えており、
このシール部材の一部は、前記フランジ部よりも前記缶体の内側に向けて突出した突出部とされており、
この突出部は、前記第2の熱交換部の複数のフィンのうち、前記缶体の側壁部に最接近しているフィンと前記側壁部との間に形成されている第2の隙間を閉塞している、熱交換器。
【請求項3】
請求項2に記載の熱交換器であって、
前記シール部材の前記突出部は、前記第1の熱交換部に対応する箇所にも設けられており、
前記缶体加熱抑制用のフィンは、前記第1の熱交換部の他の複数のフィンよりも加熱用気体流れ方向の幅が大きくされて前記シール部材の突出部に当接していることにより、前記第1の隙間は閉塞されている、熱交換器。
【請求項4】
請求項1または2に記載の熱交換器であって、
前記缶体加熱抑制用のフィンは、前記缶体の側壁部に向けて屈曲した屈曲部を有し、かつこの屈曲部が前記側壁部に当接していることにより、前記第1の隙間は閉塞されている、熱交換器。
【請求項5】
請求項1または2に記載の熱交換器であって、
前記缶体の側壁部には、前記缶体の内側に向けて突出した突出段部が設けられ、かつこの突出段部と前記缶体加熱抑制用のフィンとが当接していることにより、前記第1の隙間は閉塞されている、熱交換器。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の熱交換器を備えていることを特徴とする、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスなどの加熱用気体からフィンチューブタイプの伝熱管を用いて熱回収を行なうように構成された熱交換器、およびこの熱交換器を備えた給湯装置などの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス給湯装置などの温水装置としては、フィン付きチューブタイプの伝熱管を用いた第1および第2の熱交換部を、1つの缶体内に横並び状に設けたいわゆる1缶2回路方式の熱交換器を備えたものがある(たとえば、特許文献1,2)。第1の熱交換部は、たとえば一般給湯用の湯水加熱に用いられ、第2の熱交換部は、たとえば暖房用や風呂給湯用の湯水加熱に用いられる。
特許文献1,2に記載された熱交換器においては、第1および第2の熱交換部のそれぞれのフィンの上下幅が略同一に揃えられている。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、熱交換器の第1および第2の熱交換部は、基本的には、それぞれに要求される湯水加熱能力をもつように設計・製作されればよく、第1および第2の熱交換部のそれぞれの伝熱管の段数(上下方向の配列数)を必ずしも同一に揃える必要はない。また、フィンの上下幅も、必ずしも同一に揃えられる必要はない。そこで、熱交換器の設計・製作に際しては、第1および第2の熱交換部のそれぞれの伝熱管配列数を相違させるとともに、フィンの上下幅を相違させることによって、第1および第2の熱交換部に要求される湯水加熱能力を担保しつつ、全体の小型化や製造コストの低減などを図ることが考えられる。
【0005】
ただし、たとえば第1の熱交換部のフィンの上下幅を、第2の熱交換部のフィンの上下幅よりも小さくすると、熱交換器の缶体のうち、第1の熱交換部を囲む側壁部には、フィンに対向接近しない領域が大きな面積で発生することとなる。このような領域の近辺においては、フィンによる熱回収効果が期待できないために、前記領域は高温の燃焼ガスによって異常な高温に加熱され、過熱状態となる虞がある。缶体の熱損傷などを好適に防止する観点からすると、そのような虞を適切に防止するように留意することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−33208号公報
【特許文献2】特開2013−11409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、製造コストの低減化などを好適に図りつつ、燃焼ガスなどの加熱用気体の作用によって缶体の側壁部が過熱状態になるといった虞を適切に防止することが可能な熱交換器、およびこの熱交換器を備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される熱交換器は、加熱用気体が内部に流入する1つの缶体と、前記加熱用気体の流れ方向とは交差する方向に並ぶようにして前記缶体内に設けられ、かつそれぞれがプレート状の複数のフィンおよびこれら複数のフィンに貫通する伝熱管を有している第1および第2の熱交換部と、を備えており、前記第1の熱交換部は、前記第2の熱交換部よりも加熱用気体流れ方向の伝熱管配列数が少なくされている、熱交換器であって、前記第1の熱交換部の複数のフィンの全部または一部は、前記第2の熱交換部の複数のフィンよりも加熱用気体流れ方向の幅が狭くされており、前記第1の熱交換部の複数のフィンのうち、前記缶体の側壁部に第1の隙間を介して対面するフィンは、前記第1の隙間を閉塞して前記加熱用気体が前記第1の隙間を通過することを防止する缶体加熱抑制用のフィンとして構成されていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
まず、第1の熱交換部は、第2の熱交換部と比較して、伝熱管配列数が少なくされているが、これに対応して第1の熱交換部の複数のフィンの全部または一部は、第2の熱交換部の複数のフィンよりも加熱用気体流れ方向の幅が狭くされているために、フィンの伝熱面積に不足を生じないようにしつつ、フィンの合理的な小サイズ化が図られる。フィンは、熱回収量を多くする観点からその枚数が多く設けられるものであるため、第1の熱交換部の複数のフィンの小サイズ化を図れば、熱交換器全体の製造コストの大幅な低減、ならびに全体の軽量化を好適に図ることができる。
一方、第1の熱交換部のフィンの加熱用気体流れ方向の幅が狭くされることに伴い、缶体の側壁部のうち、第1の熱交換部に対応する部分には、フィンに対面しない領域が広く形成される虞がある。これに対し、第1の熱交換部には、缶体加熱抑制用のフィンが設けられて、このフィンと缶体の側壁部との間に形成されている第1の隙間が閉塞されているために、加熱用気体はこの第1の隙間を通過しないこととなって、高温の加熱用気体が缶体の側壁部に直接作用し難くすることが可能となる。したがって、フィンの幅を狭くしたことに起因して、缶体の側壁部が異常な高温に加熱されて熱損傷するといった不具合を生じないようにすることができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記缶体の開口周縁に形成されたフランジ部とこのフランジ部の接続対象部材との間に介装されるシール部材を、さらに備えており、このシール部材の一部は、前記フランジ部よりも前記缶体の内側に向けて突出した突出部とされており、この突出部は、前記第2の熱交換部の複数のフィンのうち、前記缶体の側壁部に最接近しているフィンと前記側壁部との間に形成されている第2の隙間を閉塞している。
【0012】
このような構成によれば、第2の熱交換部のフィンと缶体の側壁部との間に形成されている第2の隙間を加熱用気体が通過することが防止されるために、缶体の側壁部のうち、第2の熱交換部に対応する部分が異常な高温に加熱されることも好適に防止される。缶体の側壁部のうち、第2の熱交換部に対応する部分は、幅広のフィンと対面しているために、第1の熱交換部に対応する部分との相対比較では、高温に加熱され難いものの、前記したように第2の熱交換部に対応する部分が過熱状態となることを積極的に防止すれば、缶体の熱損傷などを防止する上での信頼性をより高めることができる。
また、前記した構成においては、第2の隙間を閉塞するための手段として、フィンと、缶体のフランジ接続に用いられるシール部材とを利用しているために、特殊な専用部材を別途用いる必要はなく、製造コストの上昇を回避することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記シール部材の前記突出部は、前記第1の熱交換部に対応する箇所にも設けられており、前記缶体加熱抑制用のフィンは、前記第1の熱交換部の他の複数のフィンよりも加熱用気体流れ方向の幅が大きくされて前記シール部材の突出部に当接していることにより、前記第1の隙間は閉塞されている。
【0014】
このような構成によれば、第1の隙間を閉塞するための手段として、缶体のフランジ接続に用いられるシール部材が有効に利用されている。また、缶体加熱抑制用のフィンは、その幅を大きくして前記シール部材に当接させればよいため、その製造も容易である。したがって、製造コストを低減する上で、より好ましい。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記缶体加熱抑制用のフィンは、前記缶体の側壁部に向けて屈曲した屈曲部を有し、かつこの屈曲部が前記側壁部に当接していることにより、前記第1の隙間は閉塞されている。
【0016】
このような構成によれば、缶体加熱抑制用のフィンの幅を大きくすることなく、また缶体以外の他の部材を用いるようなことなく、第1の隙間を閉塞することができる。したがって、製造コストを低減する上で、やはり好ましいものとなる。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記缶体の側壁部には、前記缶体の内側に向けて突出した突出段部が設けられ、かつこの突出段部と前記缶体加熱抑制用のフィンとが当接していることにより、前記第1の隙間は閉塞されている。
【0018】
このような構成においても、特殊な専用部材などを用いることなく、製造コストを廉価にしながらも第1の隙間を適切に閉塞することができる。
【0019】
本発明の第2の側面により提供される温水装置は、本発明の第1の側面により提供される熱交換器を備えていることを特徴としている。
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される熱交換器について述べたのと同様な効果が得られる。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明が適用された熱交換器(1次熱交換器)を備えた温水装置の一例を示す概略正面断面図である。
図2図1のII−II断面図である。
図3図1のIII−III断面図である。
図4図1に示す1次熱交換器の平面断面図である。
図5】(a)は、図1に示す1次熱交換器の一部拡大断面図であり、(b)は、(a)のVb−Vb断面図であり、(c)は、(a)のVc−Vc断面図である。に仕切部材を装着する状態を示す要部分解断面図であり、(b)は、要部断面図である。
図6】本発明の他の例を示す要部正面断面図である。
図7】本発明の他の例を示す要部正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1図5は、本発明が適用された温水装置、およびこれに関連する構成の一例を示している。
図1によく表われているように、本実施形態の温水装置WHは、バーナ5、1次熱交換器HE1、2次熱交換器HE2、およびこれら全体を囲む外装ケース90を備えている。この温水装置WHは、一般給湯と、暖房用給湯または風呂給湯との2系統の給湯動作を独立して行なうことが可能であり、1次熱交換器HE1および2次熱交換器HE2は、とも
に1缶2回路方式である。
1次熱交換器HE1は、本発明に係る熱交換器の一例に相当する。2次熱交換器HE2は、本発明に係る熱交換器には相当しない。
【0024】
バーナ5は、たとえばガスバーナであり、ファン51からバーナケース50内に上向きに送られてくる燃焼用空気を利用して燃料ガスを燃焼させる。ただし、このバーナ5の燃焼領域は、燃料の燃焼動作を個別に制御可能な第1および第2の燃焼領域a1,a2に区分されており、その上方領域は、仕切部材52によって仕切られている。このことにより、第1および第2の燃焼領域a1,a2のそれぞれにおいて発生された燃焼ガスは、1次熱交換器HE1の第1および第2の熱交換部A1,A2に向けて個別に進行するようになっている。
【0025】
1次熱交換器HE1は、バーナ5から上向きに進行してくる燃焼ガスから顕熱を回収するためのものであり、バーナケース50上に載設された缶体6内に、第1および第2の熱交換部A1,A2を構成するプレート状の複数のフィン2A,2B、およびこれらを貫通した複数の伝熱管11a,11bが収容された構成である。ただし、第1の熱交換部A1のフィンとしては、後述する缶体加熱抑制用のフィン2A’も設けられている。
【0026】
缶体6は、上面部および下面部が開口した平面視略矩形の枠状または筒状であり、たとえば銅製である。伝熱管11a,11bやフィン2A,2Bも、缶体6と同様に、たとえば銅製である。第1の熱交換部A1は、第2の熱交換部A2よりも占有面積が大きくされている。これは、第1の熱交換部A1は、一般給湯用の湯水加熱に利用されるために、高い湯水加熱能力が要求されるからである。
【0027】
図4に示すように、第1の熱交換部A1の伝熱管11aは、フィン2Aに貫通する直状管であり、各伝熱管11aの両端は缶体6の側壁部60a,60bを貫通し、かつ略U字状の連結用管体12aを介して一連に繋がっている。複数の伝熱管11aは、水平な姿勢とされ、かつ略平行に並んで缶体6の幅方向(同図の左右方向)に列をなしている。複数の伝熱管11aは、図1などに示されているように、上下単段(1段)の配列である。缶体6の側壁部60c寄りの伝熱管11aに接続された連結用管体12a'の一端は、入水口15aとされており、この入水口15aに供給された湯水は、複数の伝熱管11aおよび連結用管体12aを順次通過し、缶体6の中央寄りに位置する伝熱管11aを通過した後に、出湯口16aから流出する。このような流通過程において、前記湯水は加熱される。
【0028】
第2の熱交換部A2の複数の伝熱管11bは、フィン2Bに貫通する直状管であり、やはり缶体6の側壁部60a,60bを貫通し、略U字状の連結用管体12bを介して一連に繋がっている。複数の伝熱管11bは、第1の熱交換部A1とは異なり、上下2段の配列である(図面では、伝熱管11bが上段2本、下段3本)。好ましくは、下段の伝熱管11bは、第1の熱交換部A1の伝熱管11aと略同一高さである。缶体6の側壁部60d寄りに位置する下段の伝熱管11bに接続された連結用管体12b'の一端は、入水口15bとされており、この入水口15bに供給された湯水は、下段の複数の伝熱管11bを流れた後に上段の複数の伝熱管11bに流れて出湯口16bから流出する。このような過程において、前記湯水は加熱される。
【0029】
第1の熱交換部A1のフィン2Aは、第2の熱交換部A2のフィン2Bよりも上下高さ方向の幅、つまり加熱用気体の流れ方向の幅が小さくされている(缶体加熱抑制用のフィン2A’を除く)。より具体的には、図1に示すように、フィン2A,2Bの下縁部22a,22bについては、ともに缶体6の下縁部の高さに近い高さであって、互いに略同一の高さに揃えられている。これに対し、フィン2A,2Bの上縁部21a,21bについては、上縁部21aが上縁部21bよりも低い高さとなっている。上縁部21bは、缶体
6の上縁部と略同一高さである。フィン2A,2Bの相互間に形成された隙間68には、第1および第2の熱交換部A1,A2を仕切る仕切部材53が介装されている。図面では省略しているが、フィン2A,2Bには、これらのフィン2A,2Bの適当な箇所を部分的に突出させた複数の凸状部(切り起こしによる凸状部や、バーリング加工部分など)が設けられている。これら凸状部は、フィン2A,2Bと燃焼ガスとの接触度合いを高めて熱回収量を多くするのに役立つ。
【0030】
図2および図4に示すように、缶体加熱抑制用のフィン2A’は、複数のフィン2Aの配列の端部に位置するフィンであり、缶体6の側壁部60a,60bに対して第1の隙間c1を介して対面するように一対で設けられている。この缶体加熱抑制用のフィン2A’は、他のフィン2Aよりも上下幅、つまり加熱用気体の流れ方向の幅が大きくされており、その上部は、缶体6の上部に設けられたシール部材30に当接している。このことにより、第1の隙間c1の上部は閉塞されている。
より詳しくは、缶体6の上部の開口周縁部には、補助缶体3(集合筒)との接続を図るためのフランジ部62が設けられており、このフランジ部62と補助缶体3の下部との間には、シール部材30(パッキン)が介装されている。このシール部材30は、耐熱性に優れる材質からなり、かつフランジ部62と同様な平面視形状とされた矩形枠状であるが、その内周縁寄り部分は、フランジ部62よりも缶体6の内側に突出した突出部30aとされている。この突出部30aに対し、缶体加熱抑制用のフィン2A’の上部が当接している結果、第1の隙間c1の上部が閉塞されている。補助缶体3は、第1の熱交換器HE1を通過した燃焼ガスを、第2の熱交換器HE2の給気口71a,71bに導くためのものである。
【0031】
図3に示すように、第2の熱交換部A2においては、複数のフィン2Bの配列の両端に位置する一対のフィン2B’の上部が、シール部材30の突出部30aに当接している。このことにより、一対のフィン2B’のそれぞれと缶体6の側壁部60a,60bとの間に形成されている第2の隙間c2の上部が閉塞されている。図1に示すように、各フィン2Bのうち、缶体6の側壁部60d寄りの長手方向一端部の上部も、シール部材30に当接している。
【0032】
図5は、複数のフィン2Aのうち、缶体6の側壁部60c寄りの長手方向一端部付近の構造を示している。同図(a),(c)に示すように、各フィン2Aの長手方向一端部には、平面視略L字状の曲げ部26が設けられ、かつこの曲げ部26は、缶体6の側壁部60cにロウ付けされている。曲げ部26は、各フィン2Aの上下方向に延びる端面に設けられているだけではなく、同図(a)に示す各フィン2Aの傾斜部27や、上縁部の一部分28まで連続して形成されている。このことにより、同図(b)に示すように、互いに隣接するフィン2Aの相互間に形成されている隙間c3(フィン2Aの長手方向一端寄り部分に形成されている隙間)の上部は、曲げ部26によって閉塞されている。このような構造によれば、同図(a)の矢印で示すように、隙間c3に進入した燃焼ガスは、曲げ部26の存在によって、側壁部60cから離間する方向にガイドされ、側壁部60cのうち、フィン2Aとの接合部分よりも上側の領域には、燃焼ガスが作用し難くなる。このため、側壁部60cが高温に加熱されることが抑制される。熱回収機能をもつフィン2Aが側壁部60cに直接接触していることも、側壁部60cが高温に加熱されることを防止するのに役立つ。図1において、フィン2Bのうち、缶体6の側壁部60d寄りの長手方向一端部も、前記したのと同様な構造である。
【0033】
フィン2A,2Bのうち、仕切部材53寄りの長手方向他端部は、その図示説明を省略するが、仕切部材53へのロウ付けなどの接合が図られていない点を除き、それ以外は図5を参照して説明したのと同様な構成とされている。すなわち、フィン2A,2Bの長手方向他端部には、図5に示した曲げ部26と同様な曲げ部が設けられており、このことに
よって仕切部材53の上部に燃焼ガスが直接進行することは抑制されている。また、フィン2A,2Bが仕切部材53に直接接触していることにより、仕切部材53の温度上昇が抑制される。このようなことから、仕切部材53が過熱状態になることの抑制が図られている。
【0034】
図1において、2次熱交換器HE2は、1次熱交換器HE1を通過した燃焼ガスから潜熱を回収するためのものであり、1次熱交換器HE1に補助缶体3を介して接続されたケース7内に、複数の伝熱管80,81が収容され、かつそれらの間が仕切板74を介して仕切られた構成である。伝熱管80,81、ならびにケース7は、潜熱回収に伴って発生する強酸性のドレインに対する耐食性を有すべくその材質はたとえばステンレスである。複数の伝熱管80は、サイズが相違する螺旋状管体として形成されて、重ね巻き状に配列されており、それらの上下両端部は、ケース7の外部に引き出されて通水用のヘッダ75a,75bと連結されている。複数の伝熱管81も、その基本的な形態は伝熱管80と同様であり、重ね巻き状に配列された螺旋状管体として形成され、かつその上下両端部には、通水用のヘッダ75c,75dが連結されている。
【0035】
図2に示すように、1次熱交換器HE1の第1の熱交換部A1を通過した燃焼ガスは、給気口71aからケース7内に進行し、伝熱管80どうしの隙間を通過した後に、前壁部70bの排気口72から外部に排出される。また、図3に示すように、1次熱交換器HE1の第2の熱交換部A2を通過した燃焼ガスは、給気口71bからケース7内に進行し、伝熱管81どうしの隙間を通過した後に排気口72から外部に排出される。このような過程において、燃焼ガスから伝熱管80,81により潜熱回収がなされる。
【0036】
図1に示すように、給水管95aから外部入水口90aに供給された湯水は、配管部92a、およびヘッダ75bを経由した後に2次熱交換器HE2の伝熱管80内を流れる。その後、この湯水は、ヘッダ75aおよび配管部93aを介して1次熱交換器HE1の入水口15aに送られ、第1の熱交換部A1の複数の伝熱管11aを通過する。これら複数の伝熱管11aを通過した湯水は、その後配管部94aを介して外部出湯口91aに到達した後に、たとえば台所や洗面所などに供給される。
【0037】
一方、給水管95bから外部入水口90bに供給された湯水は、配管部92bを介してヘッダ75dに供給され、2次熱交換器HE2の伝熱管81内を流通する。その後、この湯水は、ヘッダ75cおよび配管部93bを介して1次熱交換器HE1の入水口15bに送られ、第2の熱交換部A2の複数の伝熱管11bを通過する。これら複数の伝熱管11bを通過した湯水は、その後配管部94bを介して外部出湯口91bに到達した後に、温水暖房器具に供給され、あるいは風呂給湯に用いられる。
【0038】
次に、前記した温水装置WHの作用について説明する。
【0039】
まず、フィン2Aは、上下幅が小さくされているために、フィン2Aの材料コストを低減し、1次熱交換器HE1の全体の製造コストを低減することが可能である。軽量化も好適に図ることが可能である。
【0040】
フィン2Aの上下幅を小さくした場合には、本来ならば、缶体6の側壁部60a,60bのうち、フィン2Aに対面しない領域の面積が大きくなるために、第1の隙間c1を通過する燃焼ガスによって前記領域がかなりの高温に加熱される虞がある。ところが、本実施形態によれば、図2を参照して説明したように、第1の隙間c1は閉塞されているために、第1の隙間c1を高温の燃焼ガスが通過することは阻止され、側壁部60a,60bが異常な高温に加熱されることは適切に回避される。したがって、側壁部60a,60bが熱損傷しないようにすることが可能である。
【0041】
第1の隙間c1を閉塞する手段としては、シール部材30に缶体加熱抑制用のフィン2A’の上部を当接させただけの簡素な構造が採用されており、しかもシール部材30は、缶体6と補助缶体3との接続に用いられるものである。また、缶体加熱抑制用のフィン2A’は、その上下幅を大きくしたものに過ぎない。したがって、前記構造の製作も容易であり、1次熱交換器HE1の製造コストを低減する上で、より好ましいものとなる。
【0042】
一方、第2の熱交換部A2のフィン2Bと缶体6の側壁部60a,60bとの間に形成されている第2の隙間c2も、シール部材30を利用して閉塞されているために、第2の隙間c2を高温の燃焼ガスが通過することも阻止される。側壁部60a,60bのうち、第2の熱交換部A2に対応する箇所が過熱状態になることも積極的に防止されれば、側壁部60a,60bの全体の過熱防止を図る上での信頼性を高めることができる。なお、缶体6の他の側壁部60c,60dや仕切部材53が過熱状態となることの抑制が図られている点は、図5などを参照して既述したとおりである。
【0043】
その他、本実施形態によれば、次のような作用も得られる。
まず、第2の熱交換部A2については、伝熱管11bが上下2段に設けられているために、第2の熱交換部A2の占有面積を第1の熱交換部A1の占有面積よりも小さくしたままで湯水加熱能力を高めることが可能である。したがって、大型の温水暖房装置を用いる場合であっても、1次熱交換器HE1の全体のサイズの拡大を生じさせることなく、好適に対処することが可能となる。一方、第1の熱交換部A1については、伝熱管11aが単段に設けられているために、その構造を簡素にすることができる。第1の熱交換部A1は、その占有面積が大きいために、伝熱管11aが単段であっても一般給湯に必要な湯水加熱能力を適切に具備させることが可能である。第1の熱交換部A1の各伝熱管11aと、第2の熱交換部A2の下段の伝熱管11bとは、略同一高さである。したがって、バーナ5からそれら伝熱管11a,11b迄の距離も略同一となり、伝熱管11a,11bの双方を熱回収に最適な配置とすることが可能である。フィン2A,2Bの下縁部22a,22bの高さも略同一高さであるために、フィン2A,2Bを利用した熱回収効率も高めることができる。
【0044】
図6および図7は、本発明の他の実施形態を示している。同図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0045】
図6に示す実施形態においては、一対の缶体加熱抑制用のフィン2A’が、缶体6の側壁部60a,60bに向けて屈曲した屈曲部25を有している。この屈曲部25の先端部は、側壁部60a,60bに当接しており、このことにより第1の隙間c1は閉塞されている。
本実施形態においては、実質的には、缶体加熱抑制用のフィン2A’に屈曲部25を設けただけの構成によって第1の隙間c1を閉塞している。前記実施形態とは異なり、隙間c1の閉塞にシール部材30を利用しておらず、たとえば第1の熱交換部A1に対応する箇所においては、シール部材30に突出部30aを設ける必要をなくすことが可能である。このように、本実施形態によれば、全体の構成を簡素とし、製造コストを廉価にする上で、やはり好ましい。また、缶体加熱抑制用のフィン2A’を大きなサイズに形成する必要がない利点も得られる。
【0046】
図7に示す実施形態においては、缶体6の側壁部60a,60bに、缶体6の内側に向けて突出した突出段部65a,65bがプレス加工により設けられている。この突出段部65a,65bと缶体加熱抑制用のフィン2A’とは互いに当接しており、このことによって第1の隙間c1は閉塞されている。
本実施形態においては、やはり隙間c1の閉塞にシール部材30を利用しておらず、ま
た缶体加熱抑制用のフィン2A’を大きなサイズに形成する必要もない。実質的には、缶体6の側壁部60a,60bにプレス加工を施すだけの構成によって第1の隙間c1を閉塞している。したがって、やはり全体の構成を簡素として製造コストを廉価にする上で好ましい。
【0047】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器、および温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0048】
本発明でいう缶体加熱抑制用のフィンは、第1の隙間を閉塞して燃焼ガスなどの加熱用気体が第1の隙間を通過することを防止するように設けられていればよく、その具体的な構成は、上述した実施形態以外の構造とすることが可能である。
【0049】
上述の実施形態では、バーナの上方に1次熱交換器が設けられて、燃焼ガスが1次熱交換器の下方から上方に向けて進行するいわゆる正燃方式とされているが、これとは反対に、バーナの下方に1次熱交換器が設けられて、燃焼ガスが上方から下方に向けて進行する逆燃方式とすることも可能である。本発明でいう加熱用気体は、燃焼ガスに限らず、たとえばコージェネレーションシステムの燃料電池やガスエンジンなどの発電部から排出される高温の排ガスなどを用いることもできる。
【0050】
上述の実施形態では、第1の熱交換部においては伝熱管が単段に設けられ、かつ第2の熱交換部においては伝熱管が2段に設けられているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、第1の熱交換部を伝熱管の2段配列とし、第2の熱交換部を伝熱管の3段配列あるいはそれ以上の段数に配列させるといった場合にも本発明を適用することができる。本発明に係る熱交換器は、顕熱回収用に好適であるものの、顕熱回収用であるか潜熱回収用であるかといった区別も問わない。本発明でいう温水装置とは、湯を生成する機能を備えた装置の意であり、一般給湯用、風呂給湯用、暖房用、あるいは融雪用などの各種の給湯装置、および給湯以外に用いられる湯を生成する装置を広く含む。
【符号の説明】
【0051】
WH 温水装置
HE1 1次熱交換器(本発明に係る熱交換器)
HE2 2次熱交換器
A1,A2 第1および第2の熱交換部
c1 第1の隙間
c2 第2の隙間
2A,2B フィン
2A’缶体加熱抑制用のフィン
3 仕切部材
6 缶体
11a,11b 伝熱管
25 屈曲部
60a〜60d 側壁部(缶体の)
65a,65b 突出段部(缶体の側壁部の)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7