特許第6256989号(P6256989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6256989
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】既設洞道の更新方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20171227BHJP
   E21F 15/00 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   E21D9/06 301Z
   E21F15/00
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-99715(P2014-99715)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-4265(P2015-4265A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年12月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-106862(P2013-106862)
(32)【優先日】2013年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】庄村 典生
(72)【発明者】
【氏名】矢野 安則
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英史
(72)【発明者】
【氏名】戸崎 雅之
【審査官】 岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−235293(JP,A)
【文献】 特開2001−323792(JP,A)
【文献】 特開2001−020698(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/077700(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00−9/14
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のセグメントリングが複数連結された状態で地中に埋設されてなる既設洞道であって、複数本の電力ケーブルが前記複数連結されたセグメントリングに挿通された状態で洞道軸方向に敷設されると共に前記セグメントリングに取り付けられたラックにより前記電力ケーブルが支持されてなる既設洞道を更新する、既設洞道の更新方法において、
前記既設洞道を構成する前記セグメントリングを“既設セグメントリング”とし、前記既設洞道の更新により新設されるセグメントリングを“新設セグメントリング”とし、前記既設セグメントリングに取り付けられたラックを“既設ラック”とした場合に、
前記電力ケーブルが挿通された状態の前記既設セグメントリングの少なくとも1つを該電力ケーブルが挿通されたままの状態で解体する既設セグメントリング解体工程と、
該電力ケーブルを挿通するように新設セグメントリングを構築する新設セグメントリング構築工程と、
を備え、
前記既設セグメントリング解体工程は、
前記既設セグメントリングの周囲の地山を発進立坑側から掘削することにより該既設セグメントリングと地山との縁切りを行う縁切り工程と、
該縁切り工程によって縁切りされた既設セグメントリングであって発進立坑側の少なくとも1つのセグメントリング(以下、“可動リング”とする)を他の既設セグメントリング(以下、“非可動リング”とする)から切り離すセグメントリング切り離し工程と、
該セグメントリング切り離し工程により前記非可動リングから切り離した前記可動リングの少なくとも1箇所を洞道軸方向に切断する第1切断工程と、
少なくとも1本の電力ケーブルにおける前記可動リングの内周面に対向する部分を該内周面から離間する方向に移動させることによって該内周面の近傍に空きスペース(以下、“内周面近傍スペース”とする)を生じさせるケーブル移動工程と、
発進立坑側から到達立坑側に延設された部材(以下、“第1支持部材”とする)を前記内周面近傍スペースを通るように設置する第1支持部材設置工程と、
駆動源によって駆動される駆動部材を前記第1支持部材に支持させた状態で前記内周面近傍スペースに配置して前記可動リングに係合させる駆動部材設置工程と、
該可動リングに係合された駆動部材を前記駆動源により駆動することにより前記可動リングを所定角度だけ少なくとも一の周方向に回転させるセグメントリング回転工程と、
該セグメントリング回転工程にて所定角度だけ回転させた前記可動リングを洞道軸方向に切断する第2切断工程と、
を備え、かつ、前記セグメントリング回転工程及び前記第2切断工程を繰り返して実施することにより前記可動リングを解体する、
ことを特徴とする既設洞道の更新方法。
【請求項2】
前記既設ラックと前記可動リングとの係合を解除する既設ラック係合解除工程を前記セグメントリング回転工程の前に実施する、
ことを特徴とする請求項1に記載の既設洞道の更新方法。
【請求項3】
前記可動リングとの係合が解除された前記既設ラック、又は該既設ラック以外の新設のラック(以下、“新設ラック”とする)を前記第1支持部材に支持させ、該第1支持部材に支持された前記既設ラック又は前記新設ラックにより前記電力ケーブルを支持させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の既設洞道の更新方法。
【請求項4】
前記内周面近傍スペースを通るように発進立坑側から到達立坑側に延設された部材であ
って前記第1支持部材ではない部材を“第2支持部材”とした場合に、
前記可動リングとの係合が解除された前記既設ラック、又は該既設ラック以外の新設のラック(以下、“新設ラック”とする)を前記第2支持部材に支持させ、該第2支持部材に支持された前記既設ラック又は前記新設ラックにより前記電力ケーブルを支持させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の既設洞道の更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルが挿通されてなる既設洞道を更新する、既設洞道の更新方法に係り、詳しくは、該電力ケーブルが挿通された状態で既設洞道を更新する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、老朽化した既設トンネル(具体的には、円弧状のセグメントピースが円環状に連結されてセグメントリングが構成されると共に該セグメントリングがトンネル軸方向に接続されて構成されたトンネル)を埋め戻したり更新したりする際にシールド掘進機が使用されており、様々な構造のものが提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0003】
図13は、シールド掘進機の従来構造及び使用状態の一例を示す縦断面図であり、図14はその横断面図である。図13中の符号Tは、解体される既設トンネルを示し、符号100はシールド掘進機を示している。このシールド掘進機100は、既設トンネルTの解体時にセグメントAの破片を掴み取るセグメント掴取装置101を備えており、該セグメント掴取装置101は、掴取装置支持部101aに支持された旋回部材(アーム部)101bと、該旋回部材101bを旋回させるための旋回用モータ101cと、セグメントAの破片を掴み取るように該旋回部材101bの先端に取り付けられてなるキャッチホーク(ハンド部)101dと、により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−88496号公報
【特許文献2】特開平5−163897号公報
【特許文献3】特開平6−221099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電力ケーブルが敷設されている洞道の場合、前記セグメント掴取装置101が既設トンネルTの中心部分(トンネル軸を含む部分)に配置されているために電力ケーブルと干渉してしまうこととなる。そのような洞道を更新するには電力ケーブルをトンネル外に移設して前記シールド掘進機100を設置するためのスペースを確保する必要があり、その更新工事に莫大な日数やコストが掛かってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできる既設洞道の更新方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、図1及び図2等に例示するものであって、円環状のセグメントリング(A,…)が複数連結された状態で地中に埋設されてなる既設洞道(T)であって、複数本の電力ケーブル(B,…)が前記複数連結されたセグメントリング(A,…)に挿通された状態で洞道軸方向(C)に敷設されると共に前記セグメントリング(A,…)に取り付けられたラック(図3(a) の符号D参照)により前記電力ケーブル(B,…)が支持されてなる既設洞道(T)を更新する、既設洞道の更新方法において、
前記既設洞道(T)を構成する前記セグメントリング(A,…)を“既設セグメントリング”とし、前記既設洞道(T)の更新により新設されるセグメントリング(E,…)を“新設セグメントリング”とし、前記既設セグメントリング(A,…)に取り付けられたラック(D)を“既設ラック”とした場合に、
前記電力ケーブル(B,…)が挿通された状態の前記既設セグメントリング(A,…)の少なくとも1つを該電力ケーブル(B,…)が挿通されたままの状態で解体する既設セグメントリング解体工程(S2)と、
該電力ケーブル(B,…)を挿通するように新設セグメントリング(E,…)を構築する新設セグメントリング構築工程(S4)と、
を備え、
前記既設セグメントリング解体工程(S2)は、
前記既設セグメントリング(A,…)の周囲の地山(J)を発進立坑側から掘削することにより該既設セグメントリング(A,…)と地山(J)との縁切りを行う縁切り工程(S21)と、
該縁切り工程(S21)によって縁切りされた既設セグメントリング(A,…)であって発進立坑側の少なくとも1つのセグメントリング(A)(以下、“可動リング”とする)を他の既設セグメントリング(A,…)(以下、“非可動リング”とする)から切り離すセグメントリング切り離し工程(S22)と、
該セグメントリング切り離し工程(S22)により前記非可動リング(A,…)から切り離した前記可動リング(A)の少なくとも1箇所を洞道軸方向(C)に切断する第1切断工程(S25)と、
少なくとも1本の電力ケーブル(B,…)における前記可動リング(A)の内周面(A1a)に対向する部分を該内周面(A1a)から離間する方向に移動させることによって該内周面(A1a)の近傍に空きスペース(図3(b) の符号M参照。以下、“内周面近傍スペース”とする)を生じさせるケーブル移動工程(S26)と、
発進立坑側から到達立坑側に延設された部材(図5及び図11の符号11,21参照。以下、“第1支持部材”とする)を前記内周面近傍スペース(M)を通るように設置する第1支持部材設置工程(S27)と、
駆動源(13,23)によって駆動される駆動部材(10,20)を前記第1支持部材(11,21)に支持させた状態で前記内周面近傍スペース(M)に配置して前記可動リング(A,)に係合させる駆動部材設置工程(S28)と、
該可動リング(A)に係合された駆動部材(10,20)を前記駆動源(13,23)により駆動することにより前記可動リング(A)を所定角度だけ少なくとも一の周方向(R)に回転させるセグメントリング回転工程(S29)と、
該セグメントリング回転工程(S29)にて所定角度だけ回転させた前記可動リング(A)を洞道軸方向(C)に切断する第2切断工程(S30)と、
を備え、かつ、前記セグメントリング回転工程(S29)及び前記第2切断工程(S30)を繰り返して実施することにより前記可動リング(A)を解体することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記既設ラック(D)と前記可動リング(A)との係合を解除する既設ラック係合解除工程を前記セグメントリング回転工程(S29)の前に実施することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記可動リング(A)との係合が解除された前記既設ラック(D)、又は該既設ラック(D)以外の新設のラック(D’)(以下、“新設ラック”とする)を前記第1支持部材(11,21)に支持させ、該第1支持部材(11,21)に支持された前記既設ラック(D)又は前記新設ラック(D’)により前記電力ケーブル(B,…)を支持させることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記内周面近傍スペース(M)
を通るように発進立坑側から到達立坑側に延設された部材であって前記第1支持部材(1
1,21)ではない部材(W)を“第2支持部材”とした場合に、
前記可動リング(A)との係合が解除された前記既設ラック(D)、又は該既設ラック(D)以外の新設のラック(D’) (以下、“新設ラック”とする)を前記第2支持部材(W)に支持させ、該第2支持部材(W)に支持された前記既設ラック(D)又は前記新設ラック(D’)により前記電力ケーブル(B,…)を支持させることを特徴とする。

【0011】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1乃至4に係る発明によれば、中心部分(つまり、洞道軸に沿った部分)に電力ケーブルが敷設されている洞道であっても該ケーブルとの干渉を避けるようにして前記第1支持部材や前記駆動部材を配置することができ、洞道内のケーブルは洞道外に移設することなくセグメントリングだけを解体することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係る既設洞道の更新方法を説明するためのフローチャート図である。
図2図2は、本発明によって更新される既設洞道の様子の一例を示す縦断面図である。
図3図3(a) (b) は、ケーブル移動工程を説明するための横断面図である。
図4図4(a) (b) は、電力ケーブルの支持状態の一例を示す横断面図である。
図5図5は、既設セグメントリング解体工程の一例を示す縦断面図である。
図6図6は、既設セグメントリング解体工程の一例を示す横断面図である。
図7図7は、索条部材及び各動滑車等の配置位置の一例を示す模式図である。
図8図8(a) 〜(c) は、セグメントリングの解体の手順を示す模式図である。
図9図9(a) 〜(c) は、セグメントリングの解体の手順を示す模式図である。
図10図10(a) 〜(c) は、セグメントリングの解体の手順を示す模式図である。
図11図11は、既設セグメントリング解体工程の他の例を示す縦断面図である。
図12図12は、既設セグメントリング解体工程の他の例を示す横断面図である。
図13図13は、シールド掘進機の従来構造及び使用状態の一例を示す縦断面図である。
図14図14は、シールド掘進機の従来構造の一例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図12に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明に係る更新方法により更新される既設洞道は、図2及び図5に符号Tで例示するものであって、図3(a) 等に例示するような円環状のセグメントリング(つまり、複数の円弧状のセグメントピースA11,A12,…が円環状に連結されて構成されたセグメントリング)A,A,…が複数連結された状態で地中に埋設されてなるものであって、複数本の電力ケーブルB,B,…が前記複数連結されたセグメントリングA,A,…に挿通された状態で洞道軸方向Cに敷設されているものである。そして、図3(a) に示すように、該セグメントリングA,A,…にはラックDが取り付けられていて、該ラックDが前記電力ケーブルB,B,…を支持するように構成されている。
【0016】
なお、説明の便宜のため、本明細書においては、前記既設洞道Tを構成する前記セグメントリングA,A,…を“既設セグメントリング”と称することとし、前記既設洞道Tの更新により新設されるセグメントリング(図2の符号E,E,…参照)を“新設セグメントリング”と称することとし、前記既設セグメントリングA,A,…に取り付けられたラックDを“既設ラック”とする。
【0017】
本発明に係る既設洞道の更新方法は、図1に例示するものであって、少なくとも以下の工程を備えている。すなわち、
・ 既設洞道Tの更新区間を挟むように発進立坑(不図示)及び到達立坑(不図示)を構築する立坑構築工程S1
・ 該立坑構築工程S1を実施した後において、前記電力ケーブルB,B,…が挿通された状態の前記既設セグメントリングA,A,…の少なくとも1つを該電力ケーブルB,B,…が挿通されたままの状態で解体する既設セグメントリング解体工程S2
・ 該既設セグメントリング解体工程S2を実施した後において、前記電力ケーブルB,B,…を挿通するように新設セグメントリングE,E,…を構築する新設セグメントリング構築工程S4
【0018】
そして、前記既設セグメントリング解体工程S2は、前記既設セグメントリングA,A,…の周囲の地山(図2及び図5の符号J参照)を発進立坑側から掘削することにより該既設セグメントリングA,A,…と地山Jとの縁切りを行う縁切り工程S21を備えている。この縁切り工程S21は、公知のカッターヘッド(符号2参照)などを使って行うようにすると良い。
【0019】
また、前記既設セグメントリング解体工程S2は、前記縁切り工程S21によって縁切りされた既設セグメントリングA,A,…であって発進立坑側の少なくとも1つの既設セグメントリング(以下、“可動リング”とする)Aを他の既設セグメントリング(以下、“非可動リング”とする)A,…から切り離すセグメントリング切り離し工程S22を備えている。該セグメントリング切り離し工程S22における可動リングAの切り離しは、
・ 可動リングAと非可動リングAとを接続しているボルトを回して抜き取ることにより行っても、或いは、
・ 何らかの工具で該ボルトを切断することに行っても、
どちらでも良い。
【0020】
さらに、前記既設セグメントリング解体工程S2は、前記セグメントリング切り離し工程S22により前記非可動リングAから切り離した前記可動リングAの少なくとも1箇所を洞道軸方向Cに切断する第1切断工程S25を備えている。なお、可動リング(既設セグメントリング)Aは、上述したように複数の円弧状のセグメントピースA11,A12,…が円環状に連結されて構成されているが、前記第1切断工程S25における切断とは、
・ 電動カッター(いわゆる電気丸のこと呼ばれるカッターや、チェーンソーなど)で切断すること
・ セグメントピースどうしを接続しているボルトを外すこと(回して抜き取ること、及び切断することのいずれか)によって前記洞道軸方向Cに切り込み面(分離面)を形成すること
・ 円環である可動リングAの一部を公知の破砕装置等で分断すること
を含む概念である。
【0021】
ここで、前記第1切断工程S25は前記セグメントリング切り離し工程S22の後に実施すると良いが、以下の工程、すなわち、
・ 前記切り離した可動リングAを移動装置(図5及び図11の符号4参照。例えば、油圧ジャッキ)により発進立坑側に所定距離(例えば、400mm程度)だけ移動させて非可動リングAとの間にスペース(図5及び図11の符号K参照)を設けるセグメントリング移動工程S23と、
・ 該移動が終了した可動リングAの位置を仮固定装置(図5及び図11の符号3参照)によって仮固定(装置移動工程中は、発進立坑側に移動しないように該可動リングAを固定するという意味)した後に、前記移動装置4を発進立坑側に所定距離だけ移動させて該可動リングAと該移動装置4との間にスペース(図5及び図11の符号K参照)を設ける装置移動工程S24
とを、前記セグメントリング切り離し工程S22と前記第1切断工程S25との間において順次実施するようにしても良い。そのようにした場合には、前記第1切断工程S25においてはそれらのスペースK,Kを利用して前記可動リングAの切断をすることができる。なお、図5及び図11示す仮固定装置3は、シールド掘進機本体12の側から到達立坑側に突設された棒状の部材であって、該棒状の部材を前記可動リングAの側面A1cに押し当てることにより該可動リングAの発進立坑側への移動を規制するようになっているが、もちろんこれに限られるものではない。例えば、前記非可動リングA,…と前記可動リングAとを何らかの部材(例えば、棒状の部材)で接続することで、前記可動リングAの発進立坑側への移動を規制するようにしても良い。また、該装置移動工程S24における前記移動装置4の移動は油圧ジャッキ等により行うようにすると良い。
【0022】
またさらに、前記既設セグメントリング解体工程S2は、少なくとも1本の電力ケーブル(例えば、低圧の電力ケーブル)B,B,…における前記可動リングAの内周面A1aに対向する部分を(給電可能な状態を保ったままで)該内周面A1a(例えば、該内周面A1aの上面)から離間する方向(例えば、図3(b) に矢印F1,…で示すように、内周面A1aの上面から離間する方向)に移動させるケーブル移動工程S26を備えており、該電力ケーブルB,B,…の移動によって前記内周面A1aの近傍に空きスペース(図3(b) 及び図4(a) に符号Mで例示するように、電力ケーブルが配置されていないスペースの意味であり、以下、“内周面近傍スペース”とする)を生じさせるようになっている。なお、図3(b) に示す例では、内周面近傍スペースMは洞道内上部に形成しているが、もちろんこれに限られるものではなく、洞道内下部やその他の箇所に形成するようにしても良い。また、該ケーブル移動工程S26においては、前記内周面近傍スペースMに配置されている棚板(図3(a) (b) の符号D,D,D,D参照)を取り外すと良く、該内周面近傍スペースM以外の部分においては必要に応じて棚板を新設すると良い(不図示)。さらに、ラックDの側面には板状部材(例えば、エキスパンドメタル)を取り付けて、前記電力ケーブルB,B,…や作業者の保護を図るようにすると良い。
【0023】
また、前記既設セグメントリング解体工程S2は、
・ 発進立坑側から到達立坑側に延設された部材(以下、“第1支持部材”とする)11,21を前記内周面近傍スペースMを通るように設置する第1支持部材設置工程S27と、
・ 駆動源(例えば、牽引手段13やモータ23)によって駆動される駆動部材10,20の少なくとも一部を前記第1支持部材11,21に支持させた状態で前記内周面近傍スペースMに配置して前記可動リングAに係合(該駆動部材10,20の駆動力が前記可動リングAに伝わるように係止又は当接させることを意味する)させる駆動部材設置工程S28と、
・ 該可動リングAに係合された駆動部材10,20を駆動源13,23により駆動することにより前記可動リングAを所定角度だけ少なくとも一の周方向Rに回転させるセグメントリング回転工程S29(図8(a) (b) 参照)と、
を備えている。ここで、前記駆動部材としては、
図5乃至図7に符号10で示すような、可撓性に富む索条部材(例えば、チェーンやワイヤーなど)や、
図11及び図12に符号20で示すような、前記可動リングAの内周面A1aに当接されるローラーや、
・ 不図示のキャタピラー
などを挙げることができる。駆動部材として索条部材10を用いる場合は、ボルト等の何らかの部材(力伝達部材)を介して該索条部材10を可動リングAに係合させれば良く、駆動部材としてローラー20やキャタピラーを用いる場合には、該ローラー20や該キャタピラーを前記可動リングAの内周面A1aに押圧すると良い。
【0024】
なお、前記既設ラックDと前記可動リングAとの係合を解除する既設ラック係合解除工程を前記セグメントリング回転工程S29の前に実施すると良い。そして、前記既設ラックD(つまり、前記可動リングAとの係合が解除された既設ラックD)又は該既設ラック以外の新設のラック(図4(a) (b) の符号D’参照。以下、“新設ラック”とする)を前記第1支持部材11,21に支持させ、該第1支持部材11,21に支持された前記既設ラックD又は前記新設ラックD’により前記電力ケーブルB,…を支持させるようにすると良い。或いは、前記内周面近傍スペースMを通るように発進立坑側から到達立坑側に部材(前記第1支持部材11,21以外の部材であって、以下、“第2支持部材”とする)Wを延設し、前記既設ラックD(つまり、前記可動リングAとの係合が解除された既設ラックD)又は前記新設ラックD’を前記第2支持部材Wに支持させ、該第2支持部材Wに支持された前記既設ラックD又は前記新設ラックD’により前記電力ケーブルB,…を支持させるようにしても良い。ここで、図4(b) に示す第2支持部材Wは洞道内上部に配置されたレールであって、ラックD’(又は既設ラックD)を吊り下げるように構成されているが、もちろんこれに限られるものではなく、洞道内下部に配置されてラックD’(又は既設ラックD)を載置するようにした部材であっても良い。さらに、洞道内上部及び下部の両方に支持部材を設けておいて、ラックD’(又は既設ラックD)の上部及び下部の両方を支持するようにしても良い。
【0025】
さらに、前記既設セグメントリング解体工程S2は、
・ 前記セグメントリング回転工程S29にて所定角度だけ回転させた前記可動リングAを洞道軸方向Cに切断する第2切断工程S30と、
・ 該第2切断工程S30により切断されたセグメント片(つまり、ボルトによる接合が解除されたセグメントピースや、カッターや破砕装置で切断等されたセグメントの欠片)を他の場所までウインチ等によって搬出する工程(セグメント片搬出工程)S31と、
を備えている。なお、この第2切断工程S30における切断の概念は前記第1切断工程S25における切断の概念(つまり、電動カッターによる切断だけでなく、セグメントピースどうしを接続しているボルトを外すことや、破砕装置等による分断を含む概念)と同様である。
【0026】
そして、前記セグメントリング回転工程S29及び前記第2切断工程S30を繰り返して実施し、前記セグメント片搬出工程S31を適宜実施することにより、図8乃至図10に例示するように、前記可動リングAを解体するようになっている。なお、図8乃至10に示す例では、前記第1切断工程S25及び前記第2切断工程S30における前記可動リングAの切断は一番下方の部分で行っているが、もちろんこれに限られるものではなく、他の箇所で行うようにしても良い。
【0027】
以下、駆動部材として索条部材10を用いる場合について説明する。
【0028】
図6及び図7に示す前記力伝達手段14は前記可動リングAの側面に取り付けられているが、該可動リングAの側面ではなく内周面A1aに1つ以上取り付けるようにしても良い。また、前記力伝達手段14を前記可動リングAの側面に取り付ける場合には、前記可動リングAを挟んで略対向するように該可動リングAの両方の側面A1b,A1c又は該側面A1b,A1cの近傍に前記力伝達手段14をそれぞれ取り付けると良い。つまり、前記可動リングAの2つの側面A1b,A1cの内の一方の側面A1bを“第1側面”とし、他方の側面A1cを“第2側面”とした場合に、前記力伝達手段14を、
・ 前記可動リングAの前記第1側面A1b又はその近傍と、
・ 前記可動リングAの前記第2側面A1c又はその近傍と、
にそれぞれ取り付けておくと良い。そのようにした場合には、前記牽引手段13が発生させた力(牽引力)は前記索条部材10及び前記力伝達部材14を介して可動リングAの両側面A1b,A1c(該可動リングAを挟んで略対向する部分)に作用することとなり、該可動リングAの洞道軸方向C(或いはその逆方向)への傾動が防止される。
【0029】
また、前記セグメントリング回転工程S29における前記可動リングAの前記一の周方向Rへの回転は、牽引手段13により前記索条部材10を介して前記力伝達手段14を牽引することにより行うようにすると良い。さらに、セグメントリング回転工程S29が終了した時点で、前記力伝達手段14を前記可動リングA(正確には、ほとんどの部分が除去され搬出された後のセグメント片)から取り外す工程(解除工程)を実施すると良い。そして、次のセグメントリングAについては、上記セグメントリング切り離し工程S22〜前記セグメント片搬出工程S31を同様に実施すると良い。
【0030】
さらに、前記第1支持部材11が、掘進機本体12から洞道軸方向Cに突設された突設部材110と、該突設部材110に回転自在に支持された滑車(以下、“固定滑車”とする)112,113と、を有するようにし(図7参照)、
・ 前記可動リングAの前記第1側面A1b又はその近傍にて前記力伝達手段としての滑車(以下、“第1動滑車”とする)141を回転自在に支持させ、
・ 前記可動リングAの前記第2側面A1c又はその近傍にて前記力伝達手段としての滑車(以下、“第2動滑車”とする)142を回転自在に支持させ、
・ 前記第1動滑車141及び前記第2動滑車142には前記一の周方向Rに力を作用させると共に前記固定滑車112,113は前記他の周方向Rの反力を受けるように、前記索条部材10を前記第1動滑車141、前記固定滑車112,113及び前記第2動滑車142に巻き掛ける、
ようにすると良い。そのようにした場合には、動滑車141,142の使用により牽引力をアップさせることができると共に、前記牽引手段10に小出力で小型のものを使用することができて占有スペースを小さくすることができる。
【0031】
さらに、前記第1支持部材111が、前記固定滑車112,113と離間する位置にて前記突設部材110に回転自在に支持された滑車(以下、“対向固定滑車”とする)114,115、を有するようにし、
・ 前記第1動滑車141に略対向するように前記可動リングAの前記第1側面A1b又はその近傍にて前記力伝達手段としての滑車(以下、“第1対向動滑車”とする)143を回転自在に支持させ、
・ 前記第2動滑車142に略対向するように前記可動リングAの前記第2側面A1c又はその近傍にて滑車(以下、“第2対向動滑車”とする)144を回転自在に支持させ、
・ 前記第1対向動滑車143及び前記第2対向動滑車144には前記他の周方向Rに力を作用させると共に前記対向固定滑車114,115は前記一の周方向Rの反力を受けるように前記索条部材10を前記第1対向動滑車143、前記第2対向動滑車144及び前記対向固定滑車114,115に巻き掛ける、
ようにし、前記セグメントリング回転工程S29では、前記牽引手段13により前記索条部材10を介して前記力伝達手段14を前記一の周方向R又は前記他の周方向Rに牽引することにより前記可動リングAを所定角度だけ前記一の周方向R又は前記他の周方向Rに回転させるようにすると良い。その場合、前記索条部材10の両端(図7の符号10a,10b参照)を前記第1支持部材111の側に固定しておくと良い。また、一の可動リングAについては前記セグメントリング回転工程S29にて前記一の周方向Rに回転させながら前記第2切断工程S30による切断を行い、該一の可動リングAに隣接する他の可動リングAについては前記セグメントリング回転工程S29にて前記他の周方向Rに回転させながら前記第2切断工程S30による切断を行うようにすると良い。前記セグメントリングA,A,…を一の周方向Rにしか回転させられない場合には、図8(a) →(b) →(c) →図9(a) →(b) →(c) →図10(a) →(b) に示すように前記可動リングAを回転させながら解体すると、前記力伝達手段14は、図10(c) に示す位置(つまり、前記一の周方向Rの回転終点端)に到達することとなる。そして、次のセグメントリングAを回転させるためには、該力伝達手段14を元の位置(つまり、図8(a) に示す位置であって、前記一の周方向Rの回転始点端)にまで作業者が手動で戻さなければならないが、その際に前記索条部材10が前記ガイド部111や滑車141,…等から外れてしまうおそれがある。しかし、セグメントリングを上述のように前記一の周方向Rだけでなく前記他の周方向Rにも回転させることができるようにしておくと、次のセグメントリングAは逆方向(前記他の周方向R)に回転させれば良いので、前記力伝達手段14を元の位置にまで戻す必要はなく、効率的に解体作業を進めることができる。
【0032】
次に、上述した既設洞道の更新方法に用いて好適なシールド掘進機について説明する。
【0033】
本発明にて使用するシールド掘進機は、図3(a) 等に例示するような円環状のセグメントリング(つまり、複数の円弧状のセグメントピースA11,A12,…が円環状に連結されて構成されたセグメントリング)A,A,…が洞道軸方向Cに複数連結されて構成された既設洞道Tを更新する際に使用される装置であって、該既設洞道Tを解体する機能を有する装置である。
【0034】
該シールド掘進機は、図2,5〜7,11及び12に符号1,50で例示するように、
・ 駆動部材(例えば、チェーンやワイヤーなどの可撓性に富む索条部材やローラーやキャタピラー)10,20と、
・ 該駆動部材10,20を移動自在に支持する第1支持部材11,21と、
からなる駆動ユニットU1,U2を備えている。該駆動部材10,20及び該第1支持部材11,21は前記可動リングAの内周面A1aに近接した位置に配置されており、該駆動部材10,20は、少なくとも該駆動部材10,20における前記可動リングAの内周面A1aに対向する部分が前記一の周方向Rに移動自在となるように支持されている。また、前記シールド掘進機1,50は、
・ 該第1支持部材11,21を支持する掘進機本体12と、
・ 前記駆動部材10,20を駆動する駆動手段13,23
とを備えていて、前記駆動部材10,20を前記駆動手段13,23により駆動することに基づき、前記可動リングAを少なくとも前記一の周方向Rに回転せしめるように構成されている。この場合、前記シールド掘進機1,50はセグメントリングA,A,…を1つずつ回転させるように構成されていることが好ましいが、複数のセグメントリングを同時に回転させる構成のものを除外するものでは無い。また、前記シールド掘進機1,50により回転させる可動リングAの下面にはローラーコンベヤP,…等の公知の転動部材を設けておいて、該可動リングAが円滑に周方向R,Rに回転されるようにしておくと良い。そして、そのローラーコンベヤPの発進立坑側(図5及び図11の右側)及び到達立坑側(図5及び図11の左側)には、前記可動リングAの両方又は一方の側面(洞道軸方向Cに直交する面の意である)A1b,A1cに接触し得る部材(ガイド部材)Q,Qを配置しておいて、該可動リングAが回転中に洞道軸方向C(又はその逆方向)に移動してしまわないようにしておくと良い。これらのガイド部材Q,Qは可動リングAの下側に配置されていて、該可動リングAがローラーコンベヤP上に載置された状態でのみ該可動リングAの位置規制を行うようになっているので、該可動リングAを既設洞道Tから切り離してローラーコンベヤPに載置するまでの移動を阻害することはない。
【0035】
上述の構成のシールド掘進機1,50を使用すれば、前記可動リングAを少なくとも前記一の周方向Rに回転させることができる。したがって、該可動リングAを順次回転させながら不図示の電動カッター(いわゆる電気丸のこと呼ばれるカッターや、チェーンソーなど)や他の破砕装置で可動リングAを順次切断したり、セグメントピースを接合しているボルト(不図示)を外したりすることで、図8(a) →(b) →(c) →図9(a) →(b) →(c) →図10(a) →(b) →(c) に示すように、該可動リングAの解体を行うことができる。また、前記駆動ユニットU1,U2は前記内周面A1aに近接した位置に配置されているため、前記既設洞道Tの中心部分(つまり、洞道軸Hに沿った部分)に電力ケーブルが敷設されている洞道であっても該ケーブルとの干渉を避けるようにして前記駆動ユニットU1,U2を配置することができ、洞道内のケーブルは洞道外に移設することなくセグメントリングだけを解体することができる。また、前記可動リングAの内周面A1aに沿う位置には前記第1支持部材11,21が配置されているので、解体中の可動リングAが前記既設洞道Tの中心部分(つまり、洞道軸Hに沿った部分)の側へ傾動するのを防止することが可能となる。
【0036】
なお、前記駆動部材として索条部材を用いる場合には、前記第1支持部材11は、前記可動リングAの内周面A1a沿って前記一の周方向Rに移動自在となるように前記索条部材10をガイドするようにすると良い。また、前記駆動手段13には、前記索条部材10を少なくとも前記一の周方向Rに牽引する牽引手段(ウインチ)を用いると良い。さらに、前記索条部材10と前記可動リングAとの間に介装されることにより前記牽引手段13の牽引力を該可動リングAに伝達する力伝達手段14を用いると良い。この場合、C形鋼のような適当な剛性カバー(不図示)で前記索条部材10を覆うようにしておいて、作業者が該索条部材10に触れにくいようにしておくと良い。
【0037】
なお、図6及び図7に示す力伝達手段14は、前記可動リングAに回転自在に支持されてなる滑車であるが、前記牽引手段13の牽引力を前記可動リングAに伝えるものであれば滑車以外のものであっても良く、ボルトボックス(図7に符号A1dで例示するものであって、セグメントリングどうしを接合するために使用されていたボルトボックス)に装着されるボルト(不図示)であっても、該ボルトボックスA1dを利用せずに可動リングA自体に打ち込まれるアンカーボルトであっても、ボルト以外の公知の何らかの部品であっても良い。ここで、図7に示す例では、前記力伝達手段14は、ボルトボックスA1d(つまり、セグメントリングどうしを連結するために使用されていたボルトボックスA1d)に取り付けられているが、このようにすることにより、該力伝達手段14を確実かつ簡便に可動リングAに取り付けることができる。
【0038】
一方、上述の第1支持部材11は、
図5及び図7に明示するように、前記可動リングAの内周面A1aに沿うように(該内周面A1aに近接した位置に)前記掘進機本体12から洞道軸方向Cに突設された突設部材110と、
図7に明示するように、該突設部材110に支持されて前記可動リングAの内周面A1aの前記一の周方向Rに沿うように前記索条部材10を移動自在にガイドするガイド部111と、
により構成すると良い。なお、図5に示す突設部材110は、洞道軸方向Cに延設された複数本の円柱状の部材であるが、もちろんこれに限られるものではなく、どのような形状(例えば、角柱状や円筒状や角筒状や)であっても良く、或いは、前記可動リングAの内径より少し小さい外径を持つ1つの筒状部材であっても良い。また、上述のガイド部111としては、
・ 前記索条部材10をガイドするように前記突設部材110に回転自在に支持された滑車や、
・ 該索条部材10を摺動自在に支持する溝部
などを挙げることができる。また、前記牽引手段13はブレーキ付きのものにしておいて、可動リングの切断をカッターで行う場合に該ブレーキを働かせて、可動リングによる切断刃の挟み込みを防止するようにすると良い。
【0039】
ところで、図7に詳示するように、前記力伝達手段14を、前記可動リングAの前記第1側面A1b又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第1動滑車”とする)141と、前記可動リングAの前記第2側面A1c又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第2動滑車”とする)142と、により構成しておき、前記第1支持部材11には、前記突設部材110に回転自在に支持された滑車(以下、“固定滑車”とする)112,113を設けておいて、前記第1動滑車141及び前記第2動滑車142には前記一の周方向Rに力を作用させると共に前記固定滑車112,113は前記他の周方向Rの反力を受けるように、前記索条部材10を前記第1動滑車141、前記固定滑車112,113及び前記第2動滑車142に巻き掛けておくと良い。そのようにした場合には、動滑車141,142の使用により牽引力をアップさせることができると共に、前記牽引手段13に小出力で小型のものを使用することができて占有スペースを小さくすることができる。なお、図7に示す固定滑車112,113は、
・ 前記第1動滑車141に略対向するように前記可動リングAの前記第1側面A1b又はその近傍にて回転自在に支持される第1固定滑車112と、
・ 該第1固定滑車112及び前記第2動滑車142に略対向するように前記可動リングAの前記第2側面A1c又はその近傍にて回転自在に支持される第2固定滑車113と、
であるが、前記他の周方向Rの反力を受けるように配置されるものであれば配置位置や個数をどのように設定しても良い。
【0040】
さらに、前記力伝達手段14は、前記第1動滑車141に略対向するように前記可動リングAの前記第1側面A1b又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第1対向動滑車”とする)143と、前記第2動滑車142に略対向するように前記可動リングAの前記第2側面A1c又はその近傍にて回転自在に支持される滑車(以下、“第2対向動滑車”とする)144と、を有するようにし、前記第1支持部材11は、前記固定滑車112,113と離間する位置にて前記突設部材110に回転自在に支持された滑車(以下、“対向固定滑車”とする)114,115を有するようにして、前記索条部材10は、前記各動滑車141,…,144及び前記各固定滑車112,…,115に適切な順序で巻き掛けられると共に両端(図7の符号10a,10b参照)が前記第1支持部材11の側に固定され、前記牽引手段13は前記索条部材10の両方向に牽引力を作用せしめるように構成されて、前記第1対向動滑車143及び前記第2対向動滑車144には前記他の周方向Rに力を作用させると共に前記対向固定滑車114,115は前記一の周方向Rの反力を受けるように構成しておくと良い。そのようにした場合には、前記既設セグメントリングA,A,…を前記一の周方向Rだけでなく前記他の周方向Rにも回転させることが可能となる。前記既設セグメントリングA,A,…を一の周方向Rにしか回転させられない場合には、図8(a) →(b) →(c) →図9(a) →(b) →(c) →図10(a) →(b) に示すように該既設セグメントリングAを回転させながら解体すると、前記力伝達手段14は、図10(c) に示す位置(つまり、前記一の周方向Rの回転終点端)に到達することとなる。そして、次の既設セグメントリングAを回転させるためには、該力伝達手段14を元の位置(つまり、図8(a) に示す位置であって、前記一の周方向Rの回転始点端)にまで作業者が手動で戻さなければならないが、その際に前記索条部材10が前記ガイド部111や滑車141,…等から外れてしまうおそれがある。しかし、既設セグメントリングを上述のように前記一の周方向Rだけでなく前記他の周方向Rにも回転させることができるようにしておくと、次の既設セグメントリングAは逆方向(前記他の周方向R)に回転させれば良いので、前記力伝達手段14を元の位置にまで戻す必要はなく、効率的に解体作業を進めることができる。また、既設セグメントリングの切断をカッターで行う場合に前記索条部材10を逆方向に少し回転させて該既設セグメントリングを持ち上げることも可能となり、既設セグメントリングによる切断刃の挟み込みを防止することも可能となる。ところで、上述の牽引手段13としては、
・ いわゆるエンドレスウインチと呼ばれるような往復牽引型のものを1つだけ用いても、
・ 一方向牽引型のウインチを2つ用いて往復牽引できるように構成しても、
どちらでも良い。
【符号の説明】
【0041】
10 駆動部材
11 第1支持部材
13 駆動源
20 駆動部材
21 第1支持部材
23 駆動源
既設セグメントリング(可動リング)
1a 可動リングの内周面
,… 既設セグメントリング(非可動リング)
,… 電力ケーブル
C 洞道軸方向
D 既設ラック
D’ 新設ラック
,… 新設セグメントリング
J 地山
M 内周面近傍スペース
一の周方向
既設洞道
W 第2支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14