(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部により切り替えられる前記第1スイッチおよび前記第2スイッチの状態には、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチがオン状態となる第1モードと、前記第1スイッチがオフ状態となる一方で前記第2スイッチがオン状態となる第2モードと、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチがオフ状態となる第3モードとが含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の電子管用電源装置。
前記制御部は、パルス運転時に、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチの状態を前記第1モードにした後、前記第2巻線を流れる電流がゼロになる前に前記第1モードから前記第2モード、前記第3モードの順に切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載の電子管用電源装置。
前記第1の電流規制手段は、アノードが前記整流平滑回路の高電圧側の出力端に接続され、かつカソードが前記第2巻線の一端に接続されるように、前記整流平滑回路の高電圧側の出力端と前記第2巻線の一端との間に介装されたダイオードである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子管用電源装置。
前記第2スイッチは、前記制御部により制御される第2能動スイッチ素子と、前記第2巻線の一端から前記第2能動スイッチ素子を経由して前記第2巻線の他端に流れる電流を規制する第2の電流規制手段を有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子管用電源装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、核融合実験等に使用されるプラズマ加熱装置では、プラズマの熱伝導率評価や閉じ込め性能を調べるため、大電力高周波発生源として用いられている大電力電子管(ジャイロトロン)でパルス状の高周波を発生させ、当該パルス状の高周波をプラズマ中に入射させる場合がある(例えば、非特許文献1参照)。この場合、電子管用電源装置では、パルス状の電圧を大電力電子管に供給するパルス運転が行われる。
【0003】
図6に、パルス運転を行う従来の電子管用電源装置1Bを示す。同図に示すように、電子管用電源装置1Bは、変圧器102で昇圧された交流電源101の交流電圧を整流および平滑する整流平滑回路2(整流器201、平滑リアクトル202、制動抵抗器203および平滑コンデンサ204)と、直流高電圧スイッチ302と、短絡電流抑制用のリアクトル311およびエネルギー吸収用の抵抗器321が並列接続された限流回路と、直流高電圧スイッチ302を制御する制御部502と、を備えている。なお、直流高電圧スイッチ302、短絡電流抑制用のリアクトル311およびエネルギー吸収用の抵抗器321については、電子管用電源装置1Bの入力側を一端とし、電子管用電源装置1Bの出力側を他端とする。
【0004】
大電力電子管4は、電子ビームを発生させるためのカソード401およびアノード402と、発生した電子ビームを捕捉するためのコレクタ403と、を備えている。コレクタ403は接地されており、直流高電圧スイッチ302がオン状態となっている間、カソード401には電子管用電源装置1Bから負の電圧が供給され、アノード402には当該負の電圧を抵抗器421および抵抗器422を含むアノード分圧器で分圧した電圧が供給される。
【0005】
図7に、パルス運転時における電子管用電源装置1B各部の電圧波形および電流波形を示す。同図において、v
Kはコレクタ403の電圧を基準としたカソード401の電圧、v
S1は直流高電圧スイッチ302の一端の電圧を基準とした他端の電圧、v
Rはエネルギー吸収用の抵抗器321の他端の電圧を基準とした一端の電圧、i
Kはカソード401の電流、i
Lは短絡電流抑制用のリアクトル311の電流である。i
Kについては、電子管用電源装置1Bの出力端からカソード401に向かう方向を正とし、i
Lについては、短絡電流抑制用のリアクトル311の他端から一端に向かう方向を正とする。また、電子管用電源装置1Bの定格出力電圧を−A[V]とし、平滑コンデンサ204の容量は十分に大きいものとする。
【0006】
時刻t
21よりも前は、制御部502の制御下で直流高電圧スイッチ302がオフ状態となっている。また、時刻t
21よりも前は、直流高電圧スイッチ302の一端に整流平滑回路2の出力端間の電圧(平滑コンデンサ204の両端電圧)である−A[V]が印加されるため、電圧v
S1は+A[V]となる。
【0007】
時刻t
21において、制御部502が直流高電圧スイッチ302をオフ状態からオン状態に切り替えると、整流平滑回路2から出力される−A[V]の電圧が大電力電子管4のカソード401に供給されるので、カソード401の電圧v
Kが−A[V]まで立ち上がる。また、カソード401の電圧v
Kに応じてカソード401の電流i
Kも立ち上がる。
【0008】
その後、時刻t
22において、制御部502が直流高電圧スイッチ302をオン状態からオフ状態に切り替えると、整流平滑回路2から出力される電圧がカソード401に供給されなくなるので、カソード401の電圧v
Kおよび電流i
Kが立ち下がる。
【0009】
このように、制御部502が直流高電圧スイッチ302をオフ状態、オン状態、オフ状態と切り替えることで、1つのパルス電圧および1つのパルス電流が大電力電子管4に供給される。したがって、電子管用電源装置1Bによれば、直流高電圧スイッチ302のオン状態とオフ状態の切り替えを繰り返し行うことで、大電力電子管4にパルス状の電圧を繰り返し供給することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の電子管用電源装置1Bでは、制御部502が直流高電圧スイッチ302をオン状態からオフ状態に切り替えると、リアクトル311を流れる電流i
Lが、エネルギー吸収用の抵抗器321に流れて熱エネルギーとして消費されるので、電力損失が過大になるという問題があった。
【0012】
さらに、従来の電子管用電源装置1Bでは、エネルギー吸収用の抵抗器321が大型(例えば、100kW級)であること、および抵抗器321の冷却系が必要になることから、装置全体が大型化してしまうという問題もあった。
【0013】
また、リアクトル311の電流i
Lがエネルギー吸収用の抵抗器321に流れると、抵抗器321で電圧降下が生じ、抵抗器321の電圧v
Rが上昇する。このため、オン状態からオフ状態に切り替わった直後の直流高電圧スイッチ302には、一端に整流平滑回路2の出力端間の電圧である−A[V]が印加され、他端に抵抗器321の電圧v
Rが印加される。その結果、オン状態からオフ状態に切り替わった直後の直流高電圧スイッチ302の電圧v
S1は、
図7に示すように+2A[V]程度まで上昇する。
【0014】
このように、従来の電子管用電源装置1Bでは、オン状態からオフ状態に切り替わった直後の直流高電圧スイッチ302に過大な電圧が印加され、直流高電圧スイッチ302の動作責務が重くなるので、直流高電圧スイッチ302を構成するスイッチング素子の数を増やしたり、直流高電圧スイッチ302に含まれる絶縁物を大型化したりする必要があった。その結果、従来の電子管用電源装置1Bでは、装置全体の大型化を招いてしまうという問題があった。なお、従来の電子管用電源装置1Bでは、直流高電圧スイッチ302は、100個程度のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子を直列接続した構造となっている。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、エネルギー吸収用の抵抗器に起因する電力損失の問題と装置の大型化の問題を解消することが可能な電子管用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係る電子管用電源装置は、入力された交流電圧を平滑コンデンサを含む整流平滑回路で整流および平滑して電子管に供給する電子管用電源装置であって、一端が整流平滑回路の高電圧側の出力端に接続された第1スイッチと、一端が第1スイッチの他端に接続されるとともに他端が電子管に接続された第1巻線、および一端が整流平滑回路の高電圧側の出力端に接続されるとともに他端が整流平滑回路の低電圧側の出力端に接続された第2巻線からなる変圧器と、第1巻線に並列接続された、第1巻線を流れる電流を還流させる還流手段と、一端が第2巻線の一端に接続されるとともに他端が第2巻線の他端に接続された第2スイッチと、第2巻線の一端および第2スイッチの一端から整流平滑回路の高電圧側の出力端に向かって流れる電流を規制する第1の電流規制手段と、第1スイッチおよび第2スイッチを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
上記電子管用電源装置では、制御部により切り替えられる第1スイッチおよび第2スイッチの状態は、第1スイッチおよび第2スイッチがオン状態となる第1モードと、第1スイッチがオフ状態となる一方で第2スイッチがオン状態となる第2モードと、第1スイッチおよび第2スイッチがオフ状態となる第3モードとが含まれることが好ましい。
【0018】
上記電子管用電源装置における制御部は、パルス運転時に、第1スイッチおよび第2スイッチの状態を第1モードにした後、第2巻線を流れる電流がゼロになる前に第1モードから第2モード、第3モードの順に切り替えることが好ましい。
【0019】
上記電子管用電源装置における第1の電流規制手段は、アノードが整流平滑回路の高電圧側の出力端に接続され、かつカソードが第2巻線の一端に接続されるように、整流平滑回路の高電圧側の出力端と第2巻線の一端との間に介装されたダイオードであってもよい。
【0020】
上記電子管用電源装置における第2スイッチは、制御部により制御される第2能動スイッチ素子と、第2巻線の一端から第2能動スイッチ素子を経由して第2巻線の他端に流れる電流を規制する第2の電流規制手段を有してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、エネルギー吸収用の抵抗器に起因する電力損失の問題と装置の大型化の問題を解消することが可能な電子管用電源装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る電子管用電源装置の実施形態について説明する。
【0024】
[電子管用電源装置の構成]
図1に、本発明の一実施形態に係る電子管用電源装置1Aを示す。同図に示すように、本実施形態に係る電子管用電源装置1Aは、変圧器102で昇圧された交流電源101の交流電圧を、整流および平滑して大電力電子管(ジャイロトロン)4に供給するものである。
【0025】
大電力電子管4は、電子ビームを発生させるためのカソード401およびアノード402と、発生した電子ビームを捕捉するコレクタ403と、を備えている。コレクタ403は接地されており、後述する第1直流高電圧能動スイッチ301がオン状態となっている間、カソード401には電子管用電源装置1Aから負の電圧が供給され、アノード402には当該負の電圧を抵抗器421および抵抗器422を含むアノード分圧器で分圧した電圧が供給される。
【0026】
電子管用電源装置1Aは、変圧器102で昇圧された交流電源101の交流電圧を整流および平滑する整流平滑回路2を備えている。整流平滑回路2は、変圧器102の二次側に接続された整流器201と、一端が整流器201のアノード側に接続された平滑リアクトル202と、一端が平滑リアクトル202の他端に接続された制動抵抗器203と、一端が制動抵抗器203の他端に接続されるとともに他端が整流器201のカソード側に接続された平滑コンデンサ204と、を備えている。なお、本発明では、負電圧となる整流平滑回路2の出力端aを高電圧側の出力端とし、接地された整流平滑回路2の出力端bを低電圧側の出力端とする。
【0027】
また、電子管用電源装置1Aは、本発明の第1スイッチに相当する第1直流高電圧能動スイッチ301と、短絡電流抑制用の変圧器312と、本発明の還流手段に相当する還流ダイオード322と、本発明の第2スイッチに相当する第2直流高電圧スイッチ33と、本発明の第1の電流規制手段に相当するエネルギー回生用のダイオード333と、を備えている。第2直流高電圧スイッチ33は、本発明の第2能動スイッチ素子に相当する第2直流高電圧能動スイッチ331と本発明の第2の電流規制手段に相当する逆流防止用のダイオード332とからなる。
【0028】
第1直流高電圧能動スイッチ301は、一端が整流平滑回路2の出力端aに接続され、他端が短絡電流抑制用の変圧器312の第1巻線を介して大電力電子管4のカソード401に接続されている。また、第1直流高電圧能動スイッチ301は、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT素子)を直列接続した構造となっている。
【0029】
短絡電流抑制用の変圧器312は、一端が第1直流高電圧能動スイッチ301の他端に接続され、かつ他端が大電力電子管4のカソード401に接続された第1巻線と、一端がエネルギー回生用のダイオード333を介して整流平滑回路2の出力端aに接続され、かつ他端が整流平滑回路2の出力端bおよび大電力電子管4のコレクタ403に接続された第2巻線と、を備えている。第1巻線と第2巻線の巻数比は、1対1になっている。
【0030】
還流ダイオード322は、アノードが第1直流高電圧能動スイッチ301の他端に接続され、カソードが変圧器312の第1巻線の他端に接続されている。還流ダイオード322は、変圧器312の第1巻線を流れる電流を還流させる。
【0031】
第2直流高電圧能動スイッチ331は、一端が逆流防止用のダイオード332を介して変圧器312の第2巻線の一端に接続され、かつ他端が変圧器312の第2巻線の他端に接続されている。変圧器312の第1巻線と第2巻線の巻数比が1対1になっていることから、第2直流高電圧能動スイッチ331には、第1直流高電圧能動スイッチ301と同じものを用いることができる。言い換えれば、第1直流高電圧能動スイッチ301と第2直流高電圧能動スイッチ331は、スイッチング素子の数や絶縁物の量および寸法を同じにすることができる。
【0032】
逆流防止用のダイオード332は、アノードが第2直流高電圧能動スイッチ331の一端に接続され、かつカソードが変圧器312の第2巻線の一端に接続されるように、第2直流高電圧能動スイッチ331の一端と第2巻線の一端との間に介装されている。逆流防止用のダイオード332は、変圧器312の第2巻線の一端から第2直流高電圧能動スイッチ331を経由して第2巻線の他端に流れる電流を規制する。
【0033】
エネルギー回生用のダイオード333は、アノードが整流平滑回路2の出力端aに接続され、かつカソードが変圧器312の第2巻線の一端に接続されるように、整流平滑回路2の出力端aと第2巻線の一端との間に介装されている。エネルギー回生用のダイオード333は、変圧器312の第2巻線の一端および第2直流高電圧能動スイッチ331の一端から整流平滑回路2の出力端aに向かって流れる電流を規制する。
【0034】
また、電子管用電源装置1Aは、第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331を制御する制御部501を備えている。制御部501は、第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331の状態を切り替える。第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331の状態には、第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331がオン状態となる第1モードと、第1直流高電圧能動スイッチ301がオフ状態となる一方で第2直流高電圧能動スイッチ331がオン状態となる第2モードと、第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331がオフ状態となる第3モードとが含まれる。
【0035】
[電子管用電源装置の動作]
電子管用電源装置1Aは、大電力電子管4に対してパルス状の電圧を供給するパルス運転と、大電力電子管4に対してパルス状ではない連続的な電圧を供給する直流運転とを行う。
【0036】
(パルス運転)
図2に、パルス運転時における電子管用電源装置1Aの動作を示し、
図3に、パルス運転時における電子管用電源装置1A各部の電圧波形および電流波形を示す。
【0037】
図3において、v
Kはコレクタ403の電圧を基準としたカソード401の電圧、v
S1は第1直流高電圧能動スイッチ301の一端の電圧を基準とした第1直流高電圧能動スイッチ301の他端の電圧、v
S2は第2直流高電圧能動スイッチ331の一端の電圧を基準とした第2直流高電圧能動スイッチ331の他端の電圧、i
Kはカソード401の電流、i
Lは変圧器312の第1巻線の電流、i
S2は第2直流高電圧能動スイッチ331の電流、i
S3はエネルギー回生用のダイオード333の電流である。i
K、i
S3については、電子管用電源装置1Aの入力側から出力側に向かう方向(
図2の左から右に向かう方向)を正とし、i
L、i
S2、については、電子管用電源装置1Aの出力側から入力側に向かう方向(
図2の右から左に向かう方向)を正とする。また、電子管用電源装置1Aの定格出力電圧を−A[V]とし、コンデンサ204の容量は十分に大きいものとする。
【0038】
図3に示すように、時刻t
1よりも前は、制御部501の制御下で第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331がオフ状態となっている(第3モード)。第1直流高電圧能動スイッチ301の一端に整流平滑回路2の出力端aの電圧である−A[V]が印加されるため、電圧v
S1は+A[V]となる。
【0039】
時刻t
1において、制御部501が第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331の状態を第1モードに切り替えると、整流平滑回路2の出力端aから出力される−A[V]の電圧が大電力電子管4のカソード401に供給されるので、カソード401の電圧v
Kが−A[V]まで立ち上がる。また、
図2(A)に示すように、カソード401から変圧器312の第1巻線、第1直流高電圧能動スイッチ301、平滑リアクトル202、整流器201を経由してコレクタ403に至る電流経路が形成されるので、カソード401の電流i
Kも立ち上がる。
【0040】
さらに、変圧器312の第1巻線に電流i
Lが流れると、変圧器312の第2巻線にも電流が流れる。第2巻線の電流は、第2直流高電圧能動スイッチ331、逆流防止用のダイオード332を経て第2巻線に還流する。第1巻線の電流i
Lは、平滑コンデンサ204の容量が十分に大きいため一旦立ち上がるとほとんど減衰しないが、第2巻線の電流(第2直流高電圧能動スイッチ331を流れる電流i
S2)は第2直流高電圧能動スイッチ331および逆流防止用のダイオード332のオン抵抗による電圧降下のため立ち上がった後減衰していく。
【0041】
時刻t
2において、制御部501が第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331の状態を第1モードから第2モードに切り替えると、整流平滑回路2の出力端aから出力される−A[V]の電圧がカソード401に供給されなくなるので、カソード401の電圧v
Kおよび電流i
Kは立ち下がる。
【0042】
時刻t
3では、カソード401の電圧v
Kおよび電流i
Kはゼロになり、第1巻線の電流i
Lは、全て還流ダイオード322を介して還流する(
図2(B)参照)。なお、還流する第1巻線の電流i
Lは、第2巻線の電流とほぼ同じ減衰率で減衰する。
【0043】
時刻t
3以降の第2モードにおいて、第1直流高電圧能動スイッチ301の一端に整流平滑回路2の出力端aの電圧である−A[V]が印加されるため、電圧v
S1は+A[V]となる。
【0044】
時刻t
4において、制御部501が第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331の状態を第2モードから第3モードに切り替えると、第2直流高電圧能動スイッチ331を流れる電流i
S2および第1巻線の電流i
Lはゼロに向かって急激に減少する一方、第2直流高電圧能動スイッチ331の一端の電圧が降下してエネルギー回生用のダイオード333に電流i
S3が流れ始める。この電流i
S3は、
図2(C)に示すように変圧器312の第2巻線を経由して平滑コンデンサ204に回生される。すなわち、変圧器312で発生した電磁エネルギーは、平滑コンデンサ204に回生される。
【0045】
時刻t
5では、第2直流高電圧能動スイッチ331を流れる電流i
S2および第1巻線の電流i
Lがゼロになる一方、エネルギー回生用のダイオード333を流れる電流i
S3は最大になり、第2直流高電圧能動スイッチ331の電圧v
S2は+A[V]となる。その後、エネルギー回生用のダイオード333の電流i
S3は減少し、時刻t
6においてゼロになると、第2直流高電圧能動スイッチ331の電圧v
S2は+A[V]から減少し、時刻t
7においてゼロになる。時刻t
7以降、電子管用電源装置1Aは時刻t
1以前と同じ状態になる。したがって、時刻t
7以降、制御部501が、第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331の状態を再び第1モードにし、変圧器312の第2巻線を流れる電流がゼロになる前に第1モードから第2モード、第3モードの順に切り替える制御を繰り返し行うことで、パルス状の電圧を大電力電子管4のカソード401に繰り返し供給することができる。
【0046】
結局、電子管用電源装置1Aによれば、変圧器312で発生した電磁エネルギーを平滑コンデンサ204に回生しているので、従来の電子管用電源装置1Bと異なりエネルギー吸収用の抵抗器321は不要となる。このため、電子管用電源装置1Aでは、エネルギー吸収用の抵抗器321に起因する電力損失の問題や装置全体が大型化の問題は発生しない。
【0047】
また、電子管用電源装置1Aでは、第1直流高電圧能動スイッチ301をオン状態からオフ状態に切り換えたときに、定格電圧(+A[V])を大幅に超過する電圧が第1直流高電圧能動スイッチ301に印加されることはないので(
図3の時刻t
3参照)、第1直流高電圧能動スイッチ301を構成するスイッチング素子の数を減らしたり、第1直流高電圧能動スイッチ301に含まれる絶縁物を小型化したりすることができる。その結果、電子管用電源装置1Aは、従来の電子管用電源装置1Bよりも装置全体を小型化することができる。
【0048】
(直流運転)
図4に、直流運転時における電子管用電源装置1Aの動作を示し、
図5に、直流運転時における電子管用電源装置1A各部の電圧波形および電流波形を示す。なお、
図5は、
図3と同様の見方をするものとする。
【0049】
図5に示すように、時刻t
11よりも前は、制御部501の制御下で第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331がオフ状態となっており、第1直流高電圧能動スイッチ301の一端に整流平滑回路2の出力端aの電圧である−A[V]が印加されるため、電圧v
S1は+A[V]となる。
【0050】
時刻t
11において、制御部501が第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331の状態を第1モードに切り替えると、カソード401の電圧v
Kが−A[V]まで立ち上がり、カソード401の電流i
Kも立ち上がる。
【0051】
さらに、変圧器312の第1巻線に電流i
Lが流れると、変圧器312の第2巻線にも電流が流れる(
図4(A)参照)。第1巻線の電流i
Lは、交流電源101から変圧器102、整流器201および平滑リアクトル202を介して電力供給を受けるため一旦立ち上がるとほとんど減衰しない。一方、第2巻線の電流(第2直流高電圧能動スイッチ331を流れる電流i
S2)は、第2直流高電圧能動スイッチ331および逆流防止用のダイオード332のオン抵抗による電圧降下のため立ち上がった後減衰していき、時刻t
12においてゼロになる(
図4(B)参照)。
【0052】
時刻t
13において、制御部501が第1直流高電圧能動スイッチ301の状態をオン状態からオフ状態に切り替えると、整流平滑回路2の出力端aから出力される−A[V]の電圧がカソード401に供給されなくなるので、カソード401の電圧v
Kおよび電流i
Kが立ち下がる一方、第1直流高電圧能動スイッチ301の電圧v
S1が立ち上がる。
【0053】
時刻t
14では、カソード401の電圧v
Kおよび電流i
Kはゼロになり、第1巻線の電流i
Lは、全て還流ダイオード322を介して還流する(
図4(C)参照)。なお、時刻t
14の前後で第1巻線の電流i
Lの電流値は変化しないので、第2巻線の電流はゼロのままである。
【0054】
また、時刻t
14において、第1直流高電圧能動スイッチ301の一端に整流平滑回路2の出力端aの電圧である−A[V]が印加されるため、電圧v
S1は+A[V]となる。
【0055】
このように、電子管用電源装置1Aでは、第1直流高電圧能動スイッチ301をオン状態からオフ状態に切り換えたときに、定格電圧(+A[V])を大幅に超過する電圧が第1直流高電圧能動スイッチ301に印加されることはないので(
図5の時刻t
14参照)、第1直流高電圧能動スイッチ301を構成するスイッチング素子の数を減らしたり、第1直流高電圧能動スイッチ301に含まれる絶縁物を小型化したりすることができる。その結果、電子管用電源装置1Aは、従来の電子管用電源装置1Bよりも装置全体を小型化することができる。
【0056】
なお、直流運転時における電子管用電源装置1Aでは、通常、変圧器312で発生した電磁エネルギーはコンデンサ204に回生されない。しかしながら、変圧器312の第2巻線を流れる電流がゼロになる前に(
図4(A)の状態で)大電力電子管4が短絡した場合は、制御部501が、第1直流高電圧能動スイッチ301および第2直流高電圧能動スイッチ331の状態を、変圧器312の第2巻線を流れる電流がゼロになる前に第1モードから第2モード、第3モードの順に切り替えるので、変圧器312で発生した電磁エネルギーがコンデンサ204に回生される。
【0057】
以上、本発明に係る電子管用電源装置の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0058】
直列に接続された素子の入替えは等価と見做される。例えば、逆流防止用のダイオード332は、アノードが変圧器312の第2巻線の他端および整流平滑回路2の出力端bに接続され、かつカソードが第2直流高電圧能動スイッチ331の他端に接続されるように、第2巻線の他端と整流平滑回路2の出力端bとの接続点と第2直流高電圧能動スイッチ331の他端との間に介装してもよい。
【0059】
上記実施形態では、第1巻線と第2巻線の巻数比が1対1の変圧器312を用いたが、巻数比は適宜変更することができる。巻数比を変更することで、回生時間(
図3の時刻t
4から時刻t
6まで時間)を長くしたり短くしたりすることができる。
【0060】
上記実施形態では、還流手段として還流ダイオード322を使用しているが、変圧器312の第1巻線を流れる電流を還流させることができるものであれば、還流ダイオード322に換えて使用することができる。
【0061】
上記実施形態では、第1の電流規制手段としてダイオード333を使用しているが、変圧器312の第2巻線の一端および第2直流高電圧能動スイッチ331の一端から整流平滑回路2の出力端aに向かって流れる電流を規制することができるものであれば、ダイオード333に換えて使用することができる。例えば、制御部501の制御下で第1モードおよび第2モードのときにオフ状態となり、第3モードのときにオン状態となるスイッチを使用してもよい。
【0062】
上記実施形態では、第2の電流規制手段としてダイオード332を使用しているが、変圧器312の第2巻線の一端から第2直流高電圧能動スイッチ331を経由して変圧器312の第2巻線の他端に流れる電流を規制することができるものであれば、ダイオード332に換えて使用することができる。
【0063】
上記実施形態では、第2直流高電圧スイッチ33を、第2直流高電圧能動スイッチ331と逆流防止用のダイオード332とで構成しているが、制御部501の制御下でオン状態とオフ状態とが切り替わり、かつ変圧器312の第2巻線の一端から当該第2直流高電圧スイッチ33を経由して第2巻線の他端に流れる電流を規制できるのであれば、適宜その構成を変更することができる。
【0064】
また、本発明に係る電子管用電源装置は、大電力電子管(ジャイロトロン)4以外の電子管にも適用することができる。