特許第6257079号(P6257079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6257079凝集処理剤及びそれを用いた汚泥の脱水方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257079
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】凝集処理剤及びそれを用いた汚泥の脱水方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/14 20060101AFI20171227BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20171227BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20171227BHJP
   C08F 226/02 20060101ALI20171227BHJP
   C08F 222/36 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   C02F11/14 DZAB
   B01D21/01 107A
   B01D21/01 107Z
   C08F220/34
   C08F226/02
   C08F222/36
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-28311(P2014-28311)
(22)【出願日】2014年2月18日
(65)【公開番号】特開2015-150534(P2015-150534A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142148
【氏名又は名称】ハイモ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂野 幸治
(72)【発明者】
【氏名】山白 高嗣
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−053617(JP,A)
【文献】 特開2012−206024(JP,A)
【文献】 特開2012−206023(JP,A)
【文献】 特開2002−166299(JP,A)
【文献】 特開平11−347600(JP,A)
【文献】 特開2002−045899(JP,A)
【文献】 特開2003−275503(JP,A)
【文献】 特開2013−154287(JP,A)
【文献】 特開2002−166104(JP,A)
【文献】 特開2013−255863(JP,A)
【文献】 特開2012−170943(JP,A)
【文献】 米国特許第06262168(US,B1)
【文献】 国際公開第2008/015769(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00− 11/20
B01D 21/01
C02F 1/52− 1/56
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び/又は(2)で表される水溶性単量体2080モル%、下記一般式(3)で表される水溶性単量体0〜50モル%、非イオン性水溶性単量体2080モル%及び架橋性単量体からなる水溶性単量体混合物を重合して得た架橋型カチオン性あるいは架橋型両性重合体であり、該架橋型カチオン性あるいは架橋型両性重合体の25℃における、0.2質量%水溶液粘度をAQV、0.5質量%の4質量%食塩水溶液中粘度をSLVとすると、AQVとSLVの比が、
10≦AQV/SLV≦60
であり、且つ、SLVが10〜60mPa・sである架橋型カチオン性あるいは架橋型両性重合体と、下記一般式(4)で表される水溶性単量体70〜100モル%を含有する水溶性単量体混合物を重合して得た一級アミノ基含有重合体であり、該一級アミノ基含有重合体の25℃における、0.5質量%の4質量%食塩水溶液中粘度SLVが5〜70mPa・sである一級アミノ基含有重合体からなる凝集処理剤。
一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキルあるいはヒドロキシアルキル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数7〜20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基を表わす、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基あるいはヒドロキシアルキル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(3)
は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、AはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素またはCOOY、YあるいはYは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。

一般式(4)
10は水素またはメチル基、Aは酸素原子またはNH、Bは炭素数2〜3のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【請求項2】
前記一般式(4)で表わされる水溶性単量体が、2−アミノエチルメタクリレートの有機酸あるいは無機酸の塩であることを特徴とする請求項1に記載の凝集処理剤。
【請求項3】
請求項1〜のいずれかに記載の凝集処理剤を汚泥に添加し脱水機により脱水することを特徴とする汚泥の脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集処理剤及びそれを使用した汚泥の脱水方法に関するものであり、詳しくは、架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体と一級アミノ基含有重合体からなる凝集処理剤及びそれを使用した汚泥の脱水方法である。
【背景技術】
【0002】
都市下水などの処理場において、下水から沈降させた初沈生汚泥、活性汚泥槽からの流出水から沈降させた余剰汚泥あるいは混合生汚泥といった有機性の汚泥に高分子凝集剤を添加すると強固なフロックを形成する。このフロックをベルトプレス、スクリュープレス、フィルタープレスなどの圧搾脱水装置、または遠心分離機、真空濾過機などの脱水装置で処理すると顕著な効果で脱水を行なうことができ、その結果、低含水率の脱水ケーキが得られる。一般的には高分子凝集剤としてポリアクリルアミド(PAM)系ポリマーが汎用されており、特に四級アンモニウム塩基を含有しているポリマーが使用されている。これは、一級〜三級アミノ基は、pH7以上ではアミノ基の解離が抑えられるのに対して、四級アンモニウム塩基を含有しているポリマーではpH9以上でも解離することが可能なため、カチオンとしての機能を広範囲のpH域において維持することができるためである。これに対して汚泥の性状や添加条件により様々なポリマーが提案され適用されている。特許文献1では、架橋型イオン性水溶性高分子からなる凝集処理剤が開示されている。又、三、四級アミンに対して一級アミンは水素結合力が高く、含水率が低下しやすいと考えられるため、含水率低下を促進するために一級アミン塩基を含有するポリマーを用いる処方も種々提案されている。例えば、特許文献2では、一級アミン塩基を有するラジカル重合性(メタ)アクリル系モノマーを必須構成単位とするビニル系水溶性重合体及び三級アミン塩基を有するラジカル重合性(メタ)アクリル系モノマーを必須構成単位とするビニル系水溶性重合体からなる高分子凝集剤組成物について開示されている。特許文献3では、一級アミノ基含有重合体とジメチルジアリルアンモニウム塩系重合体とを併用する汚泥の脱水方法について開示されている。これら一級アミノ基含有重合体を用いるとある程度の効果は得られるものの近年の難脱水汚泥には十分には対応しきれていない状況である。特許文献4では、架橋型水溶性高分子とアミジン系水溶性高分子からなる凝集処理剤、特許文献5では、架橋型水溶性高分子とビニルアミン系水溶性高分子からなる凝集処理剤がそれぞれ開示されている。しかし、アミジン系水溶性高分子やビニルアミン系水溶性高分子は製法が非常に煩雑であり薬品コストが掛かる問題点がある。このため、比較的薬品コストが掛からずに難脱水汚泥に対して効率よく含水率が低下できる凝集処理剤を用いた汚泥の脱水方法が求められている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−25094号公報
【特許文献2】特開2003−275503号公報
【特許文献3】特開2002−166299号公報
【特許文献4】特開2004−25095号公報
【特許文献5】特開2004−25097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、下水、し尿、産業排水の処理で生じる汚泥に対して凝集処理剤を添加し、効率が良い脱水処理を可能とする凝集処理剤及びそれを用いた汚泥の脱水方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明者は、鋭意検討した結果、以下に述べる発明に達した。即ち、架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体と一級アミノ基を含有する重合体からなる凝集処理剤及びそれを使用した汚泥の脱水方法である。
【発明の効果】
【0006】
従来、高分子凝集剤を用いて汚泥の脱水を実施する場合、特に汚泥性状の変動が大きい場合や、汚泥有機分の上昇や汚泥の腐敗による汚泥性状が変化した難脱水汚泥に対して優れた脱水処理効果が達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体と一級アミノ基を含有する重合体からなる凝集処理剤について説明する。
本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体及び一級アミノ基を含有する重合体の製品形態は、油中水型エマルジョン、油中水型分散液、粉末、塩水中分散液など特に限定はないが、特に好ましい形態は、油中水型エマルジョンあるいは粉末状タイプである。溶解液同士を混合しても良いので油中水型エマルジョンと粉末の混合でも良いが、製品同士を混合すると作業効率が高いので、油中水型エマルジョン同士あるいは粉末同士の混合が好ましく、粉末同士の混合は油中水型エマルジョン同士に比べて輸送コストが低いという利点がある。
本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体は、下記一般式(1)及び/又は(2)で表される水溶性単量体10〜100モル%、下記一般式(3)で表される水溶性単量体0〜50モル%、非イオン性水溶性単量体0〜90モル%及び架橋性単量体からなる水溶性単量体混合物を重合して得られたものである。
一般式(1)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキルあるいはヒドロキシアルキル基、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数7〜20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基を表わす、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(2)
は水素又はメチル基、R、Rは炭素数1〜3のアルキル基あるいはヒドロキシアルキル基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。

一般式(3)
は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、AはSO、CSO、CONHC(CHCHSO、CCOOあるいはCOO、Rは水素またはCOOY、YあるいはYは水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【0008】
本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体を重合する際に使用する一般式(1)で表されるカチオン性単量体としてジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジアリルアルキルアミンの3級塩、塩化メチル等のハロゲン化アルキル、あるいは塩化ベンジルなどのハロゲン化アリール化合物による4級化物等が挙げられ、これらのカチオン性ビニル系単量体は1種を単独で用いることができ、2種以上を組み合わせて用いることもできる。一般式(1)で表されるカチオン性単量体は、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルベンジルジメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルベンジルジメチルアンモニウム塩化物等である。一般式(2)で表されるカチオン性単量体は、ジアリルメチルアンモニウム塩化物、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物等がある。一般式(3)で表されるアニオン性単量体は、(メタ)アクリル酸あるいはそのナトリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、マレイン酸やイタコン酸あるいはそのアルカリ金属塩、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミドアルカンスルホン酸あるいはそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。一般式(1)及び/又は(2)で表される水溶性単量体のモル数は10〜100モル%であるが、好ましくは20〜80モル%、更に好ましくは30〜80モル%である。これは、低モルよりも中高モルの方が汚泥中の懸濁粒子の有するアニオン電荷をできる限り低下させることにより汚泥の含水率低下に対して有効に作用するためである。汚泥の性状によっては、モル数が高くなりすぎると高い分子量が得られ難いため好ましくない場合がある。一般式(1)及び/又は(2)で表される水溶性単量体、一般式(3)で表される水溶性単量体を使用して重合して得られる両性水溶性高分子を製造する場合、一般式(3)で表される水溶性単量体は、最大50モル%であるが、15モル%が好ましく、10モル%が更に好ましい。これは、モル数が高くなる程、高分子量のものが得られ難くなるためである。
【0009】
非イオン性単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、アクリロイルモルホリン、アクリロイルピペラジン等が挙げられる。
【0010】
本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体を製造する際に架橋性単量体を共存する。架橋性単量体を共存させて重合した重合体、即ち架橋型水溶性高分子は、直鎖性高分子に比べて水中における分子の広がりが抑制される。そのためにより「密度の詰まった」分子形態として存在する。架橋型水溶性高分子が汚泥中に添加されると懸濁粒子に吸着し、粒子同士の接着剤として作用し結果として粒子の凝集が起こる。この時「密度の詰まった」分子形態であるため懸濁粒子表面と多点で結合し巨大フロック化せず、より締った強度の高いフロックが形成され、汚泥脱水性の改善が発現する。
【0011】
架橋性単量体としては、メチレンビスアクリルアミドやエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの複数の重合性二重結合を有する単量体である。添加率としては単量体混合物全質量に対し0.0002〜0.01%であり、好ましくは0.0002〜0.005%であり、更に好ましくは0.001〜0.03%である。また、重合度を調節するためイソプロピルアルコール等の連鎖移動剤を対単量体0.1〜5質量%併用すると効果的である。
【0012】
架橋型水溶性高分子の架橋度合いについては、製造時の架橋性単量体の添加率だけによるのではなく重合条件や組成によっても変化するため、一概には言えないが、本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性重合体は、0.2質量%水溶液粘度をAQV、前記両性水溶性高分子の0.5質量%の4質量%食塩水溶液中粘度をSLVとした場合の、AQVとSLVの比を架橋度合いの指標とする。
この数値は架橋の度合いを表すのに使用することができる。架橋型のイオン性水溶性高分子は、分子内で架橋しているために、水中においても分子が広がり難い性質を有し、直鎖状高分子に較べれば水中での広がりは小さいはずであるが、架橋度が増加するに従い、B型粘度計(回転粘度計の一種)に測定した場合の粘度は大きくなる。この原因はB型粘度計のローター(測定時の回転子)と溶液との摩擦かあるいは絡み合いによるものと推定されるが正確には不明である。一方、架橋型のイオン性水溶性高分子の塩水中の粘度は、架橋度が増加するに従い低下していく。架橋によって分子が収縮しているので、塩水の多量のイオンによってその影響をより大きく受けるものと考えられる。従ってこれらの理由によって二つの粘度測定値の比、AQV/SLVは、架橋度が高くなるに従い大きくなる。架橋がさらに進み水不溶性になった場合は、この関係は成り立たない。
【0013】
本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性重合体のAQV/SLVの比は、
10≦AQV/SLV≦60(25℃において)
の範囲であり、好ましくは12〜60の範囲であり、更に好ましくは12〜50の範囲である。この値が10以下であると直鎖状の水溶性高分子、あるいは弱く架橋した水溶性高分子であると考えられる。60を超えると架橋がかなり進行することを考慮すると本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性重合体は、低から中程度に架橋した水溶性高分子であると言える。10より低いと架橋度が低く本発明の効果を発揮しない、又、60を超えると架橋が高くなり過ぎ、効果を発揮するためには添加量を増やす必要があり好ましくはない。
尚、AQVは、B型粘度計において2号ローター、30rpm(25℃)、SLVは、1号ローター、60rpm(25℃)で測定した値である。B型粘度計としては東京計器製、B8M等が使用される。
【0014】
本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性重合体の粉末の製造方法としては、公知の方法が適用される。例えば、単量体混合物をラジカル重合開始剤あるいは光増感剤と紫外光あるいは可視光、電子線などの照射によって重合を開始し重合物を得る。重合物の形態は、シートなど薄膜状のものあるいは直方体など厚みのある形態に重合し、その後粗砕し、ミートチョッパーなどによって造粒し、乾燥、乾燥物の粉砕、篩い分けなどの工程を経て粉末状にすることが一般的である。又、前記油中水型エマルジョンを製造後、噴霧乾燥機中に油中水型エマルジョンを噴霧し、乾燥する方法がある。これは操作が簡便であり容易であるが、粒径が細かくなり、更に粒径調節の加工が必要である。また油中水型エマルジョンを直接乾燥機に入れ、一定時間乾燥し、塊状物を粉砕する方法もある。この方法は、乾燥温度や乾燥時間の管理に注意する必要がある。乾燥時間を長くしすぎる場合、あるいは乾燥温度が高すぎる場合などは、水溶性高分子に架橋反応が発生して水に溶解しなくなることがある。又、油中水型エマルジョンをエマルジョンブレイクすることにより塊状化させ、乾燥後細粒化した粉末状とすることもできる。
【0015】
本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体を油中水型エマルジョンにより製造する場合は、イオン性単量体、あるいはイオン性単量体と共重合可能な非イオン性単量体、及び架橋性単量体を含有する単量体混合物を水、少なくとも水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させ重合することにより合成する。
【0016】
又、分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油などの鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度などの特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物が挙げられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20質量%〜50質量%の範囲であり、好ましくは20質量%〜35質量%の範囲である。
【0017】
単量体の重合濃度は20〜50質量%の範囲であり、単量体の組成、重合法、開始剤の選択によって適宜重合の濃度と温度を設定する。
【0018】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB1〜8のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテートなどが挙げられる。これら低HLBの界面活性剤により乳化、重合した場合は重合後に転相剤と呼ばれる親水性界面活性剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行い、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9〜15のノニオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルコールエーテル系等である。
高HLB界面活性剤を使用すると乳化させ油中水型エマルジョンを形成させ重合したエマルジョンは、このままで水となじむので転相剤を添加する必要がない場合もある。高HLB界面活性剤としては、HLB11〜20の界面活性剤があり、その具体例としては、カチオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルコールエーテル系、ポリオキシエチレンアルキルエステル系などである。具体的には、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレート等である。高HLB界面活性剤を使用することによって重合後、希釈時、特に転相剤を添加しなくても水に溶解可能な油中水型エマルジョンを形成させることが可能である。これら界面活性剤の添加率としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%である。これら界面活性剤の添加率としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0019】
重合は窒素雰囲気下にて、重合開始剤、例えば2、2’−アゾビス(アミジ
ノプロパン)二塩化水素化物または2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物のような水溶性アゾ系重合開始剤、あるいは過硫酸アンモニウムおよび亜硫酸水素ナトリウム併用のような水溶性レドックス系重合開始剤を添加し、撹拌下ラジカル重合を行う。
【0020】
本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体は、液粘性があまり高いと汚泥中に分散し難くなり好ましくない。そのため液粘性、0.2質量%水溶液粘度では、50〜1500mPa・sであるが、好ましくは50〜1200mPa・sである。又、架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体の重量平均分子量としては、100万〜1000万であるが、更に好ましくは300万〜700万の範囲である。本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体を4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように完全溶解したときの25℃において回転粘度計にて測定した塩水溶液粘度は、5mPa・s以上、70mPa・s以下、好ましくは10mPa・s以上、60mPa・s以下、更に好ましくは20mPa・s以上、50mPa・s以下であればその効果を最大限に発揮することができる。
【0021】
次に、本発明における一級アミノ基を含有する重合体について説明する。一級アミノ基を含有する重合体は、下記一般式(4)で表される水溶性単量体を必須として含有する水溶性単量体混合物を重合して得られたものである。一般式(4)で表わされるカチオン性単量体の例としては、2−アミノエチルアクリレート、2−アミノエチルメタアクリレート、3−アミノプロピルアクリレート、3−アミノプロピルメタアクリレートなどの有機酸や無機酸の塩が挙げられる。これらの単量体は、通常、無機あるいは有機の酸塩の形でのみ存在が可能であり、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸塩等が挙げられる。これらのうち、硫酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩が好ましい。好ましいのは、2−アミノエチルアクリレート塩酸塩、2−アミノエチルメタクリレート塩酸塩、2−アミノエチルアクリレート硫酸塩、2−アミノエチルメタクリレート硫酸塩、2−アミノエチルアクリレートメタンスルホン酸塩、2−アミノエチルメタクリレートメタンスルホン酸塩、2−アミノエチルアクリレートパラトルエンスルホン酸塩、2−アミノエチルメタクリレートパラトルエンスルホン酸塩である。

一般式(4)
10は水素またはメチル基、Aは酸素原子またはNH、Bは炭素数2〜3のアルキレン基またはアルコキシレン基、Xは陰イオンをそれぞれ表わす。
【0022】
一般式(4)で表される水溶性単量体は、単独で重合しても良く、他の単量体と共重合しても良い。一般式(4)で表される水溶性単量体は、(メタ)アクリル型の単量体であるため種々の単量体と良好な共重合反応が可能である。例えば、非イオン性単量体の(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどが挙げられ、非イオン性の単量体のうちから一種または二種以上と組み合わせ共重合することも可能である。最も好ましい非イオン性単量体の例としては、アクリルアミドである。又、アニオン性単量体のビニルスルフォン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸あるいはマレイン酸などとも共重合可能であり、この場合は両性となる。更に三級アミノ基や四級アンモニウム基含有単量体とも共重合可能である。三級アミノ基含有単量体の例としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどである。また、四級アンモニウム基単量体の例としては、前記三級アミノ基含有単量体の塩化メチルや塩化ベンジルによる四級化物である(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ2−ヒドロキシプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩化物等が挙げられる。更にジメチルジアリルアンモニウム塩化物等とも共重合可能である。これら四級アンモニウム基含有単量体と非イオン性単量体と本発明で使用するカチオン性重合体中で必須成分となる一級アミノ基含有アクリル型単量体からなる三元共重合体も本発明の汚泥の脱水方法において使用可能である。
【0023】
これら一級アミノ基含有重合体中の一般式(4)で表わされる一級アミノ基含有単量体のモル%としては、好ましくは70〜100モル%であり、更に好ましくは80〜100モル%である。70モル%以下であると、イオン強度が低く、汚泥性状によっては効果が得られない場合がある。両性の場合、アニオン性単量体のモル%としては、1〜20モル%であり、好ましくは1〜15モル%である。
【0024】
次いで、本発明における一級アミノ基を含有する重合体の重合方法を述べる。本発明で使用する一級アミノ基含有重合体を製造するには公知の方法が適用される。例えば、先ず、一般式(4)で表わされるカチオン性単量体、あるいは共重合する場合は、共重合する単量体を共存させた水溶液を調製し、pHを2.0〜6.0に調節した後、窒素置換により反応系の酸素を除去しラジカル重合性開始剤を添加することによって重合を開始させ、重合体を製造することができる。重合方法は、既知の重合法である水溶液重合法、油中水型エマルジョン重合法、油中水型分散重合法、塩水溶液中分散重合法などにより合成することが可能であり、そのため重合濃度としては、5〜60質量%の範囲での実施が可能であり、好ましくは20〜50質量%で行うのが適当である。また、反応の温度としては、10〜100℃の範囲で行うことができる。
【0025】
重合の機構としては、ラジカル重合開始剤を使用した一般的なラジカル重合によって重合体を生成することができる。即ち開始剤としては、アゾ系、過酸化物系、レドックス系いずれでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオネ−ト)などが挙げられ、水混溶性溶剤に溶解し添加する。水溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などがあげられる。またレドックス系の例としては、ペルオキシ二硫酸アンモニウムあるいはカリウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどとの組み合わせが挙げられる。更に過酸化物の例としては、ペルオクソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエートなどをあげることができる。こらのなかで特に好ましい開始剤としては、水溶性のアゾ系開始剤である2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩化水素化物などである。又、光増感剤を加えた後、紫外線等を照射してもよい。粉末化を行なうには、これら重合物を適宜に細断化する。熱風乾燥、溶剤沈澱・乾燥、油中水型エマルジョンの場合は、エマルジョンブレイカー添加、機械シェア、加熱によるエマルジョンブレイク等の工程を経た後、任意に粉砕すればよい。
【0026】
本発明における一級アミノ基含有重合体の液粘性については、0.2質量%水溶液粘度では、50〜800mPa・sの範囲であり、4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように完全溶解したときの25℃において回転粘度計にて測定した塩水溶液粘度は、5mPa・s以上、70mPa・s以下の範囲である。一級アミノ基含有重合体の重量平均分子量は、100万〜600万であり、100万以下では凝集性能が不足し、600万より高くなると溶液粘度が高くなり過ぎ分散性が低下するので好ましくはない。
【0027】
一級アミノ基含有重合体のイオン当量値は、pH3でのコロイド当量値が2.0meq/g以上が好ましく、2.5meq/g以上が更に好ましい。コロイド当量値については、一般的なコロイド滴定法で測定する。例えば、pH3でのコロイド当量値は、ビーカーに蒸留水100mLとポリマーの0.2質量%溶解液5mLを加え、トルイジンブルーを指示薬として2〜3滴滴下、5N酢酸を加えpH3とする。その後、1/400Nポリビニル硫酸カリウム(PVSK)を2mL/分の滴下速度で滴定、液の色が青から赤紫色に変色するまでの滴定量により算出する。
コロイド当量値=1/400NPVSK滴定量×1/400NPVSK滴定液のファクター×1/2
【0028】
本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体と一級アミノ基含有重合体からなる凝集処理剤を汚泥中に添加すると、凝集処理剤中の架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体が汚泥中の懸濁粒子に吸着し、粒子同士の接着剤として作用し結果として粒子の凝集が起こる。この時に「密度の詰まった」分子形態であるため懸濁粒子表面と多点で結合し巨大フロック化せず、より締まった強度の高いフロックを形成する。更に凝集処理剤中の一級アミノ基含有重合体の一級アミンは水素結合力が高く親水性微粒子への吸着性が高いため、更に締まった強度の高いフロックが形成される結果、含水率低減効果が促進されると推定される。本発明の架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体と一級アミノ基含有重合体からなる凝集処理剤中の架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体と一級アミノ基含有重合体の混合比率は、9:1〜1:9の範囲が好ましく、8:2〜2:8の範囲が更に好ましい。汚泥の性状変化に広範囲に対応するには、7:3〜3:7の範囲がより一層好ましい。
【0029】
本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性水溶性重合体と一級アミノ基含有重合体からなる凝集処理剤の適用可能な汚泥は、製紙排水、化学工業排水、食品工業排水などの生物処理したときに発生する余剰汚泥、あるいは都市下水、し尿、産業排水の処理で生じる有機性汚泥(いわゆる生汚泥、余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、凝沈・浮上汚泥およびこれらの混合物)に添加される。汚泥に対する添加率は、汚泥種、脱水機種によっても異なるが、通常汚泥固形分に対し0.005〜2.0質量%、好ましくは0.01〜2.0質量%である。対象とする汚泥に特に限定されないが、繊維分の少ない汚泥、有機分含有量(VSS/SS)が70%以上の高い汚泥、腐敗度の高い汚泥に対し特に有効であり好ましい。又、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、PAC、硫酸バンドなどの無機系凝集剤と併用しても良い。
【0030】
使用する脱水機の種類は、ベルトプレス、遠心脱水機、スクリュープレス、多重円板型脱水機、ロータリープレス、フィルタープレス等に対応できる。特に高い圧搾力が与えられるスクリュープレスや多重円板型脱水機で有効である。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。先ず、架橋型カチオン性あるいは架橋型両性重合体として、表1に示すAQV/SLVの値を示す試料A〜E[アクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(40/60モル%)共重合体]を用意した。これらは何れも製造時に架橋性単量体を共存して製造したものである。次いで、本発明における一級アミノ基含有重合体として、2−アミノエチルメタアクリレート硫酸塩重合体(以下、2EMA試料1と略記、AQV;166mPa・s、SLV;14mPa・s、コロイド当量値(pH3); 3.96meq/g、(pH7);2.06meq/g、粉末)、及び2−アミノエチルメタアクリレート硫酸塩重合体(以下、2EMA試料2と略記、AQV;130mPa・s、SLV;11mPa・s、コロイド当量値(pH3);2.82meq/g、(pH7);1.45meq/g、油中水型エマルジョン、濃度40%)を用意した。
【0032】
(表1)
WA;アクリルアミド、DMQ;アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、
AQV;0.2質量%水溶液粘度(mPa・s)、SLV;0.5質量%の4質量%食塩水溶液中粘度(mPa・s)、分子量;重量平均分子量、EM;油中水型エマルジョン(濃度40%)
【0033】
その他、試験用の試料として、アミジン系水溶性高分子(重量平均分子量300万、粉末)、試料X(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物重合体、重量平均分子量400万、粉末)、試料Y[アクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(10/90モル%)共重合体、重量平均分子量400万、粉末]、試料Z[アクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物(40/60モル%)共重合体、AQV 282、SLV 34、AQV/SLV 8.3、重量平均分子量400万、粉末]を用意した。これらは何れも一般的に汎用されている高分子凝集剤である。
【0034】
(実施例1)
下水余剰汚泥(pH6.16、SS分14750mg/L、有機分含有量83.1%)を用い、ベルトプレス型脱水機を想定した汚泥脱水試験を実施した。汚泥200mLをポリビーカーに採取し、表1の試料Aと2EMA試料1(2−アミノエチルメタクリレート硫酸塩重合体)、試料Bと2EMA試料1、試料Cと2EMA試料1をそれぞれ1:1の質量比で混合したものの0.2質量%溶解液を対汚泥SS分に対して、120〜210ppm加え、ビーカー移し替え20回撹拌後、T−1197Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、60秒後の濾液量の測定、及びフロック径を測定した。測定後、60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/cm2で60秒間脱水し、脱水ケーキ径、含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。結果を表2に示す。
【0035】
(比較例1)
実施例1と同様の汚泥を用い同様な汚泥脱水試験を実施した。汚泥200mLをポリビーカーに採取し、表1の試料A単独の0.2質量%溶解液を対汚泥SS分に対して、120〜210ppm加え、ビーカー移し替え20回撹拌後、T−1197Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、60秒後の濾液量の測定、及びフロック径を測定した。測定後、60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/cm2で30秒間脱水し、脱水ケーキ径、含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。又、その他の試料単独、あるいは、試料Zと2EMA試料1、試料Xと2EMA試料1をそれぞれ質量比1:1で混合したものについても同様に汚泥脱水試験を実施した。その結果を表2に示す。
【0036】
(表2)
【0037】
試料A〜Cと2EMA試料1を混合した実施例では、添加率を上げるとケーキ含水率は低下を示した。又、濾水量も向上を示し、濾水性、ケーキ搾水性共に良好な傾向が認められた。一方、比較例の試料単独添加あるいは試料Zと2EMA試料1を混合したもの、試料Xと2EMA試料1を混合したものを添加した場合には、添加率を上げてもケーキ含水率の大きな低下は認められず、濾水性、ケーキ含水率共に良好な結果を示すものは得られなかった。アミジン系水溶性高分子は、ケーキ含水率については一定の効果を示すものの濾水量については添加率を上げても大きな効果は得られなかった。又、薬品コストが掛かるため実用するには困難であることが考えられる。本発明の凝集処理剤が良好な結果を示したことは、本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性重合体と一級アミノ基含有重合体からなる凝集処理剤中の四級アンモニウム塩含有架橋型高分子の凝集性能とより締まった強度の高いフロックの形成、更に一級アミノ基含有高分子の水素結合力による親水性微粒子への吸着性により含水率低減効果が促進され、優れた濾水性、搾水性が得られたものと考えられる。
【0038】
(実施例2)
下水余剰汚泥(pH6.4、SS分16500mg/L、有機分含有量83.3%)を用い、ベルトプレス型脱水機を想定した汚泥脱水試験を実施した。汚泥200mLをポリビーカーに採取し、表1の試料Dと2EMA試料2(2−アミノエチルメタクリレート硫酸塩重合体)を1:1の質量比で混合したものの0.2質量%溶解液を対汚泥SS分に対して、150〜180ppm加え、ビーカー移し替え20回撹拌後、T−1197Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、60秒後の濾液量の測定、及びフロック径を測定した。測定後、60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/cm2で60秒間脱水し、脱水ケーキ径、含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。結果を表3に示す。
【0039】
(比較例2)
実施例2と同様の汚泥を用い同様な汚泥脱水試験を実施した。汚泥200mLをポリビーカーに採取し、表1の試料D単独の0.2質量%溶解液を対汚泥SS分に対して、150〜180ppm加え、ビーカー移し替え20回撹拌後、T−1197Lの濾布(ナイロン製)により濾過し、60秒後の濾液量の測定、及びフロック径を測定した。測定後、60秒間濾過した汚泥をプレス圧3Kg/cm2で30秒間脱水し、脱水ケーキ径、含水率(105℃で20hr乾燥)を測定した。結果を表3に示す。
【0040】
(表3)
【0041】
試料Dと2EMA試料2を混合した実施例2では、汎用されている代表的な油中水型エマルジョンタイプの架橋型高分子凝集剤である試料D単独添加よりも濾水性、搾水性が優れ、本発明における架橋型カチオン性あるいは架橋型両性重合体と一級アミノ基含有重合体からなる凝集処理剤の効果が確認できた。又、試料Eと2EMA試料2を1:1の質量比で混合したものの0.2質量%溶解液を対汚泥SS分に対して180ppm添加すると、実施例2の試料Dと2EMA試料2を1:1の質量比で混合したものを150ppm添加時と同程度のケーキ含水率を示すことを確認した。