(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257223
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】オイルスキマー
(51)【国際特許分類】
C02F 1/40 20060101AFI20171227BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
C02F1/40 H
B23Q11/00 U
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-177005(P2013-177005)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-44161(P2015-44161A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】591166307
【氏名又は名称】日本メッシュ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英一
(72)【発明者】
【氏名】堀内 伸章
(72)【発明者】
【氏名】宮村 昇
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭49−088347(JP,U)
【文献】
特開平08−071549(JP,A)
【文献】
米国特許第04089784(US,A)
【文献】
実開昭59−093786(JP,U)
【文献】
実公平05−043841(JP,Y2)
【文献】
実開昭50−076470(JP,U)
【文献】
特開2003−039276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/40
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液槽の液面に浮遊している油分を回収するオイルスキマーであって、液槽の上方に配設される機枠と、この機枠に回転自在に支持された回転駆動ローラと、回転駆動ローラを駆動する駆動手段と、回転駆動ローラに懸け渡されて回転駆動ローラから垂下し、その下端部を上記液槽内の液中に没入させる無端状の金属製メッシュベルトと、下端が回動自在に支持され、その下端から上端に向かってメッシュベルトに接近する方向に傾斜していると共に上記回転駆動ローラの下方近傍部においてその上端部をスプリング力によってメッシュベルトの内外表面にそれぞれ押し付けている矩形状の金属板からなる一対のスクレーパと、これらのスクレーパの下方に設置されている油回収槽とを備えてなり、上記スクレーパはその上端部を、メッシュベルトの網目の大きさの数倍の長さでもってメッシュベルトと平行になるように上方に向かって垂直状に屈折させてメッシュベルトの表面に面接触する押接面を有する押接上端部に形成していると共に、このスクレーパの押接上端部は、メッシュベルトの網目を形成している金属線の屈曲部との摺接によってメッシュベルトに対して接離する方向に振動するように構成していることを特徴とするオイルスキマー。
【請求項2】
メッシュベルトの表面に面接触するスクレーパの押接上端部の長さをメッシュベルトの網目の大きさの2〜6倍の長さに形成していることを特徴とする請求項1に記載のオイルスキマー。
【請求項3】
回転駆動ローラとメッシュベルトの内側表面に押接上端部を押し付けているスクレーパの下方に配設した油回収槽との間の空間部に、下端が回動自在に軸支され、その上端をスプリング力によって上記回転駆動ローラの下周面に押し付けている補助スクレーパを配設していることを特徴とする請求項1に記載のオイルスキマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械で使用される水性切削液に混じった油分や、工場排水の集合槽に浮上した油分などのように、液槽に浮上する油分を液体から分離、回収するオイルスキマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水などの液体の液面に浮上している油分を回収する一般的に知られたオイルスキマーとしては、例えば、特許文献1に記載されているように回転駆動ローラ(ホイール)と、この回転駆動ローラにその上端部を懸け渡して回転駆動ローラから垂下させているフェルト等からなる無端ベルトと、回転駆動ローラの下方近傍部における無端ベルト部分を挟むようにして配設され、その上端をスプリング力によって無端ベルトの内外両表面にそれぞれ圧接させている一対のスクレーパと、これらのスクレーパの下方に配設された油分回収樋とを備えた構造のものが知られている。
【0003】
そして、使用に際しては回転駆動ローラから垂下している無端ベルトの下端部を油分が浮遊している液槽中に没入させた状態となるように設置する。この状態にして、回転駆動ローラを作動させると、無端ベルトが回転して液槽の液面に浮上している油層を通過する際に油分を無端ベルトに付着させ、液槽から出て上昇途上に設けている上記一対のスクレーパに達した時に、これらのスクレーパの挟着力で無端ベルトに付着している油分が絞られてスクレーパを伝って油分回収樋に落下、回収される。
【0004】
このオイルスキマーにおいては、無端ベルトとして表面に油分を付着させることができるフェルト等の繊維製のベルトを使用しているが、特許文献2に記載されているように、網目の空間に油分を取り込むことができるステンレス等の金属製のメッシュベルトを使用したオイルスキマーも知られている。この特許文献2においては、スクレーパは使用していないが、回転駆動ローラに懸装、垂下させているこのメッシュベルトに、上記オイルスキマーと同様に、一対のスクレーパを配設し、これらのスクレーパの上端部をスプリング力によってメッシュベルトの内外両表面に圧接させてなるオイルスキマーも開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平5−43841号公報
【特許文献2】特開2003−39276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、回転駆動ホイールと液槽間を周回する無端ベルトは、液槽に浮上している油層を層厚方向に通過するために、油層と無端ベルトとの接触時間が極めて短く、そのため、無端ベルトとして上記前者のオイルスキマーのようにフェルト等の繊維製のベルトを使用していると、油層を通過中において油分が無端ベルトの内部にまで含浸することなく表面に付着するにとどまり、回収効率が悪いといった問題点がある。その上、無端ベルトの表面に付着している油分を絞り落とすには、スクレーパの先端を強く圧着させておかなければならないために大きな摩擦力が発生して無端ベルトが摩損し、長時間の使用に供することができなくなるといった問題点があった。
【0007】
これに対して、上記後者のオイルスキマーによれば、無端ベルトとしてステンレス等の金属製のメッシュベルトを使用しているので、このメッシュベルトを液槽の液面に浮上している油層を通過させた際に、その網目空間に油分を表面張力の作用で素早く捕捉することができ、従って、多量の油分をメッシュベルトに付着、含有させることができると共に金属製のメッシュベルトは長期の使用に供することができといった利点を有する。
【0008】
しかしながら、スクレーパの上端がメッシュベルトの表面に線接触状態で当接しているために、スクレーパの上端に対するメッシュベルトの摺接時間が極めて短くてメッシュベルトの網目空間に捕捉されている油分がスクレーパに充分に転移する前にメッシュベルトが上方に通過し、メッシュベルトからの油分の回収効率が低下するといった問題点が生じる。
【0009】
さらに、メッシュベルトは網目を形成する金属線の屈曲によってその表面が凹凸面に形成されているため、この凹凸面に先端を当接させているスクレーパが、メッシュベルトの回転移行に伴ってその基端(下端)を支点としてメッシュベルトに対し接離する方向に振動し、メッシュベルトの網目に捕捉されている油分に対するスクレーパの先端の接触が上記同様に充分に行われることなくメッシュベルトが上方に通過する事態が発生し、メッシュベルトに多量の油分が付着、含有させているにもかかわらず、メッシュベルトの網目からスクレーパの先端に転移する油分の量が少なくなるといった問題点がある。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、液槽の液面に浮上している油層を通過時にその網目空間に油分を捕捉したメッシュベルトが上方に移動してスクレーパを通過する際に、網目空間内の油分をスクレーパ側に円滑且つ効率よく転移させて油分の回収効率を向上させることができるオイルスキマーを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明のオイルスキマーは、請求項1に記載したように、液槽の液面に浮遊している油分を回収するオイルスキマーであって、液槽の上方に配設される機枠と、この機枠に回転自在に支持された回転駆動ローラと、回転駆動ローラを駆動する駆動手段と、回転駆動ローラに懸け渡されて回転駆動ローラから垂下し、その下端部を上記液槽内の液中に没入させる無端状のメッシュベルトと、下端が回動自在に支持され、その下端から上端に向かってメッシュベルトに接近する方向に傾斜していると共に上記回転駆動ローラの下方近傍部においてその上端部をスプリング力によってメッシュベルトの内外表面にそれぞれ押し付けている一対のスクレーパと、これらのスクレーパの下方に設置されている油回収槽とを備えてなり、上記スクレーパはその上端部を、メッシュベルトの網目の大きさの数倍の長さでもってメッシュベルトと平行になるように上方に向かって垂直状に屈折させてメッシュベルトの表面に面接触する押接面を有する押接上端部に形成していることを特徴とする。
【0012】
このように構成したオイルスキマーにおいて、請求項2に係る発明は、メッシュベルトの表面に面接触するスクレーパの押接上端部の長さをメッシュベルトの網目の大きさの2〜6倍の長さに形成していることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、上記回転駆動ローラとメッシュベルトの内側表面に押接上端部を押し付けているスクレーパの下方に配設した油回収槽との間の空間部に、下端が回動自在に軸支され、その上端をスプリング力によって上記回転駆動ローラの下周面に押し付けている補助スクレーパを配設していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、回転駆動ローラに懸け渡されてこの回転駆動ローラから垂下している無端状のメッシュベルトの内外表面に押し付けている一対のスクレーパにおいて、その上端部を、上記メッシュベルトの網目の大きさの数倍の長さでもってメッシュベルトと平行になるように上方に向かって垂直状に屈折させてメッシュベルトの表面に面接触する押接面を有する押接上端部に形成しているので、メッシュベルトが液槽に浮上している油層を通過してその網目に油分を捕捉したのち上昇してスクレーパに達した時に、スクレーパの押接上端部の下端部に網目内の油分を付着、転移させることができるばかりでなく、スクレーパを通過中においてもその網目の表面をスクレーパ上端部の押接面に摺接させて網目空間に捕捉している油分をスクレーパの押接面に付着、転移させることができ、網目を形成している線材表面以外のスクレーパと接触しない隙間を通じてスクレーパに付着、転移した油分をスクレーパの押接面を伝ってこの押接面の下端からメッシュベルトに対して徐々に離間するスクレーパの傾斜面に流下させ、下方の油回収槽に効率よく収容、回収することができる。
【0015】
さらに、メッシュベルトは、網目を形成する金属線の屈曲によってその表面が凹凸面に形成されているため、スクレーパはスプリング力によってメッシュベルトの表面に押し付けらているにもかかわらず、網目の凹凸面によって突き上げられるような作用力を受け、メッシュベルトが回転駆動ローラから揺動可能に垂下していることと相まって、スクレーパがメッシュベルトに対して接離する方向に振動して、スクレーパの押接上端部がメッシュベルトに摺接している時に網目空間に捕捉されている油分をこの押接上端部に付着、転移させることができると共に、スクレーパが瞬間的にメッシュベルトから離間する方向に振動した時に、スクレーパとメッシュベルトとの間に上下方向に連続した隙間が形成されてスクレーパに付着、転移した油分をスクレーパに伝わせながらこの隙間を通じて円滑に流下させることができる。
【0016】
この際、スクレーパの押接上端部の押接面が上記のように、メッシュベルトの網目の大きさの数倍の長さに形成されているので、この押接面を通過中に押接面から瞬間的に離間したメッシュベルトの網目部分を再び押接面に確実に接触させることができ、その上、スクレーパの押接面に対するメッシュベルトにおける全ての網目表面の摺接時間を長くすることができて、網目空間に捕捉されている油分を効果的にスクレーパに付着、転移させて、回収効率を増大させることができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、上記メッシュベルトに対するスクレーパの押接上端部の長さをメッシュベルトの網目の大きさの2〜6倍の長さに形成しているので、油分を捕捉しているメッシュベルトの網目部分がスクレーパの上記押接上端部を通過中に、スクレーパが振動によってメッシュベルトから瞬間的に離間しても再びメッシュベルトに押し付けてメッシュベルトの網目表面を押接面に確実に接触させ、網目からスクレーパの押接面に多量の油分を付着、転移させることができて押接面の下端からメッシュベルトに対して徐々に離間するスクレーパの傾斜面上を流下させながら、このスクレーパの下方に設置している油回収槽に回収することができる。
【0018】
また、請求項3に係る発明によれば、上記回転駆動ローラとメッシュベルトの内側表面に押接上端部を押し付けているスクレーパの下方に配設した油回収槽との間の空間部に、下端が回動自在に軸支され、その上端をスプリング力によって上記回転駆動ローラの下周面に押し付けている補助スクレーパを配設しているので、メッシュベルトが回転駆動ローラを周回、移動する際に、網目を形成している線材部分の表面に残存した油分を回転駆動ローラの周面に転移させることができ、その周面がメッシュベルトから離れて下方にまで回転した際に、上記補助スクレーバの上端によって回転駆動ローラの周面に付着している油分をローラ周面から掻き落とすようにして補助スクレーパ側に付着、転移させることができ、この補助スクレーパを伝って、上記メッシュベルトの内側表面に押し付けているスクレーパを伝う油分と共にこれらのスクレーパの下方に設置している油回収槽に流下、回収することができ、油分の回収能力を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】油分を回収している状態のオイルスキマーの斜視図。
【
図6】メッシュベルトの内側表面側から見たスクレーパの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の具体的な実施例を図面について説明すると、
図1、
図2において、オイルスキマーAは、矩形ボックス形状に形成されている機枠1と、この機枠1の垂直な背面板1aの前面に回転自在に軸支されているドラム形状の回転駆動ローラ2と、機枠1の背面板1aの後面面側に配設されている回転駆動ローラ2の駆動手段(図示せず)と、回転駆動ローラ2にその上端部を懸け渡されて回転駆動ローラ2から垂下しているループ状に形成された無端のメッシュベルト3と、このメッシュベルト3の下端側から回転駆動ローラ2に向かって周回、移動する途上に配設され、その上端部を回転駆動ローラ2の下方近傍部に位置するメッシュベルト3の内外表面にそれぞれ押し付けている一対のスクレーパ4、5と、これらのスクレーパ4、5の下方における上記機枠1の底板1b上に設置した油回収槽6、7とを備えてなるものである。
【0021】
このオイルスキマーAの構造をさらに詳述すると、上記回転駆動ローラ2は前後方向に長い金属製ローラであって、その前後両端部にリング状のフランジ部2a、2bを突設していると共にその後端を円形の端板2cによって閉止されてあり、この端板2cの中心部に固着した中心軸(図示せず)を上記機枠1の背面板1aに回転自在に挿通、支持させて背面板1aから後方に突出している突出部を上記駆動手段(図示せず)によって回転駆動するように構成している。なお、駆動手段は駆動モータの回転を減速機構を介して上記回転駆動ローラ2の中心軸に伝達するように構成している。
【0022】
この回転駆動ローラ2の両端フランジ部2a、2b間の周面に上記メッシュベルト3の上端部が懸け渡されてあり、下端部は機枠1の底板1bに設けている開口部(図示せず)を通じて下方に垂下し、使用に際しては機枠1を工作機械のクーラントタンクなどの廃油収容槽等の液槽Bの上方に設置し、メッシュベルト3の下端部をローラ等に懸け渡すことなくこの液槽Bに収容している液中に、この液面に浮上している油層Cを貫通して没入させている。このメッシュベルト3はステンレス鋼線によって幅方向及び長さ方向に多数の網目3aを編成してなる金属製メッシュベルトであり、その網目3aの大きさ(径)は3〜6mmに形成されている。
【0023】
上記一対のスクレーパ4、5は矩形状の金属板からなり、その幅は上記メッシュベルト3の幅に等しく形成されていてメッシュベルト3の全幅に亘ってその上端部を当接させていると共に、これらのスクレーパ4、5の下端は、メッシュベルト3の下方から回転駆動ローラ2側に周回、移動する途上におけるこのメッシュベルト3内外両側方に配設している支軸8a、8bにそれぞれ回動自在に支持されてあり、これらの下端から上端に向かってメッシュベルト3の内外表面にそれぞれ接近する方向に傾斜している。なお、上記支軸8a、8bは機枠1の背面板1aにその後端(一端)を固定、支持されてあり、背面板1aから前方に向かって水平状に突設している。
【0024】
さらに、支軸8a、8bに回転自在に支持されたスクレーパ4、5の下端に支軸8a、8bの長さ方向の中央部からこれらの支軸8a、8bに直交する方向に短軸部8a1 、8b1 をそれぞれ突設してあり、これらの短軸部8a1 、8b1 と、支軸6a、6bの上方において上記機枠1の背面板1a。から突設している軸体9a、9b間を引張スプリング10a 、10b によって連結して、これらの引張スプリング10a 、10b の引張力によってスクレーパ4、5の上端部を上記回転駆動ローラ2の下方近傍部においてメッシュベルト3の内外表面にそれぞれ押し付けている。
【0025】
上記一対のスクレーパ4、5の上端部4a、5aは、これらのスクレーパ4、5における傾斜面4a1、5a1 の上端から垂直状となるように上方に屈折してメッシュベルト2の内外表面にそれぞれ平行となるように形成されてあり、これらの垂直な上端部をメッシュベルト3の内外表面に面接触する押接面4a2 、5a2 を有する押接上端部に形成している。この押接上端部4a、5aの上下方向の長さは、上記メッシュベルト3の網目3aの上下方向の大きさ(径)の数倍、具体的には網目3aの大きさの2〜6倍の長さに形成されている。
【0026】
これらの一対のスクレーパ4、5とは別に、上記回転駆動ローラ2と、メッシュベルト3の内側表面にその押接上端部5aを押し付けているスクレーパ5の下方に配設した油回収層7との間の空間部に、下端が機枠1の背面板1aから突設している支軸8cに回転自在に支持され、上端を上記回転駆動ローラ2の下周面に押し付けている矩形状の金属板からなる補助スクレーパ11を配設している。
【0027】
この補助スクレーパ11の幅は、上記回転駆動ローラ2における両端フランジ部2a、2b間の長さに略等しく形成されていると共にその長さ方向の中間部と機枠1の背面板1aに突設している軸体9cとの間を引張スプリング10c によって連結してこの引張スプリング10c の引張力によって補助スクレーパ11の上端を回転駆動ローラ2の下周面に線接触状態に押し付けている。
【0028】
さらに、上記機枠1の底板1b上には、上記油回収槽6、7と配管を介して連通してこれらの油回収槽6、7内の油を集合させる集油槽12が配設されてあり、この集油槽12に油排出口13とスラジ排出口(図示せず)とを設けている。
【0029】
このように構成したオイルスキマーAの使用態様を説明すると、工作機械のクーラントタンクや金属熱処理工場における冷却水槽などの廃油収容槽Bの上方にオイルスキマーAの機枠1を設置し、回転駆動ローラ2に無端状に懸け渡してこの回転駆動ローラ2から垂下しているメッシュベルト3の下端部を液槽Bの液面下に該液面上に浮遊している油層Cを貫通して液面から例えば10cm程度だけ没入させた状態にする。
【0030】
この状態にして回転駆動ローラ2を回転させてメッシュベルト3を図において時計方向に回転移動させると、メッシュベルト3の下端部が油層Cを通過中に全ての網目3aの空間内に油分cが油の粘性と表面張力の作用により油膜を張った状態に付着、捕捉される。このように網目3aに油層Cから油分を捕捉したメッシュベルト3は、油層Cから上方に移動してメッシュベルト3の内外表面にその上端部4a、5aを引張スプリング10a 、10b によってそれぞれ押しつけている一対のスクレーパ4、5に油分cを捕捉している網目3aが達した時に、該網目3aの内外表面がこれらの一対のスクレーパ4、5における押接上端部4a、5aの押接上端部4a、5aの下端部に面接触状態に接して、その網目3aに捕捉されている油分cがこの網目3aに対する油分cの付着面積よりも大きいスクレーパ4、5の上記押接面4a2、5a2 の下端部に吸着されるように付着、転移し、押接面4a2、5a2 の下端からスクレーパ4、5の傾斜面4a1、5a1 の上端側に移行してこれらの傾斜面4a1、5a1 を伝って傾斜面4a1、5a1 の下端から下方に設置している油回収槽6、7に流下、回収される。
【0031】
さらに、メッシュベルト3の網目3aに捕捉されている油分cの一部がスクレーパ4、5の上記押接上端部4a、5aの下端部に付着、転移することなくこの押接上端部4a、5aを下端から上方側に移動した場合、或いは、スクレーパ4、5がメッシュベルト3の網目3aを形成している金属線の屈曲部との摺接等によって振動し、その振動によってその上記押接上端部4a、5aが瞬間的に網目3aの表面から離れて該網目3a内の油分cがスクレーパ4、5の押接上端部4a、5aの下端部に付着できない場合が生じても、その網目3aがスクレーパ4、5の押接上端部4a、5aの押接面4a2、5a2 を通過中にこの押接面4a2、5a2 に摺接させることができ、該網目3a内の油分cをスクレーパ4、5の押接面4a2、5a2 に付着、転移させてこの押接面4a2、5a2 とメッシュベルト3との間に生じている隙間、即ち、スクレーパ4、5に摺接する網目3aの表面以外のメッシュベルト3表面とスクレーパ4、5の押接面4a2、5a2 との対向面間に形成される隙間(空隙)を通じて、スクレーパ4、5の押接面4a2、5a2 を伝わせながらスクレーパ4、5の傾斜面4a1、5a1 側に流下させ、この傾斜面4a1、5a1 の下端から下方の油回収槽6、7に回収することができる。
【0032】
油分cを捕捉しているメッシュベルト3の網目3aがスクレーパ4、5の上記押接上端部4a、5aの押接上端部4a、5aを通過中に、スクレーパ4、5が振動によってメッシュベルト3から瞬間的に離間しても、再び、このスクレーパ4、5の押接上端部4a、5aをメッシュベルト3に押し付けて上記網目3aに捕捉している油分cをスクレーパ4、5の押接面4a2、5a2 に付着、転移させることができるようにするには、スクレーパ4、5の押接上端部4a、5aの押接面4a2、5a2 の上下方向の長さをメッシュベルト3の網目3aの大きさ(径)の2倍以上の長さに形成しておけばよく、また、その長さを必要以上に長くしてもそれ以上の効果が期待できないので6倍以下、好ましくは、網目3aの大きさの3〜5倍に形成しておけばよい。
【0033】
こうしてメッシュベルト3の網目3aの空間に捕捉されている油分cを一対のスクレーパ4、5の押接面4a2、5a2 側に付着、転移させることができる一方、網目3aを形成している線材部分の表面に付着している油分cの一部はスクレーパ4、5に転移することなく、スクレーパ4、5の押接面4a2、5a2 を上方に通過する。この場合には、メッシュベルト3が回転駆動ローラ2の上周部に懸け渡されているので、この回転駆動ローラ2を通過中に、回転駆動ローラ2の上周面に網目3aの線材部分の表面が接触してその表面に付着している油分cを回転駆動ローラ2の上周面に付着、転移させることができ、回転駆動ローラ2の回転によって油分cを付着している周面がメッシュベルト3から離れて下周面側に移動した時に、この回転駆動ローラ2の下周面にその上端を押し付けている補助スクレーパ11によって回転駆動ローラ2の下周面に付着している油分cをその下周面から掻き落とすようにしてこの補助スクレーパ11側に付着、転移させることができ、補助スクレーパ11の傾斜面を伝って、この補助スクレーパ11の下端から上記メッシュベルト3の内側表面に押し付けているスクレーパ5の下方に設置している油回収槽7に流下、回収することができる。
【符号の説明】
【0034】
A オイルスキマー
B 液槽
1 機枠
2 回転駆動ローラ
3 メッシュベルト
3a 網目
4、5 スクレーパ
4a、5a 押接上端部
6、7油回収槽
10a 、10b 引張スプリング
11 補助スクレーパ