【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や百分率は質量基準である。なお、実施例5、20
、21
、24及び25は参考例である。
【0039】
実施例1
パルパー分散タンク中の水に、ガラス繊維(商品名:ECS13S−552I、日本電気硝子株式会社製、13μm×13mm)、PVAバインダー繊維(商品名:VPB107、株式会社クラレ製、1.0デシテックス×3mm、湿熱接着性バインダー繊維)を7:1の質量比率で投入して10分間混合分散した後、貯蔵タンクに送り、抄紙ヘッドタンクから、坪量40g/m
2となるような抄造条件で、表面層を抄造した。
【0040】
別のパルパー分散タンク中の水に、ガラス繊維(商品名:ECS13S−552I、日本電気硝子株式会社製、13μm×13mm)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)バインダー繊維(商品名:TA07N、帝人株式会社製、1.2デシテックス×5mm、ポリエステル全溶融型、熱融着性バインダー繊維)を1:1の質量比率で投入して10分間混合分散した後、坪量5g/m
2となるような抄造条件で、表面層に抄き合わせを行い、湿紙状態の二層構造の紙を抄造した。湿紙状態でプレスを行い、表面層が120℃のヤンキードライヤーに当たるようにして乾燥し、坪量45g/m
2の二層構造の紙を得た。
【0041】
液状バインダーとして、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、株式会社クラレ製)を水に分散して塗抹液を調製した。本塗抹液をサチュレータ塗工装置にて、上記二層構造の紙の裏面層側から、付着量が乾燥質量5g/m
2になるような条件で塗抹した後乾燥し、坪量50g/m
2の湿式法不織布を得た。
【0042】
実施例2
表面層のガラス繊維とPVAバインダー繊維の質量比率を39:1に変えた以外は実施例1と同様に実施例2の湿式法不織布を得た。
【0043】
実施例3
表面層のガラス繊維とPVAバインダー繊維の質量比率を13:3に変えた以外は実施例1と同様に実施例3の湿式法不織布を得た。
【0044】
実施例4
表面層のガラス繊維とPVAバインダー繊維の質量比率を5:3に変えた以外は実施例1と同様に実施例4の湿式法不織布を得た。
【0045】
実施例5
裏面層のガラス繊維とポリエステルバインダー繊維の質量比率を4:1に変えた以外は実施例1と同様に実施例5の湿式法不織布を得た。
【0046】
実施例6
裏面層のガラス繊維とポリエステルバインダー繊維の質量比率を1:4に変えた以外は実施例1と同様に実施例6の湿式法不織布を得た。
【0047】
実施例7
裏面層の配合を、ポリエステルバインダー繊維100%とした以外は実施例1と同様に実施例7の湿式法不織布を得た。
【0048】
実施例8
繊維配合が実施例1と同様であり、且つ表面層と裏面層とPVA塗沫量の坪量比率も実施例1と同様である湿式法不織布を、全体の坪量が40g/m
2となるようにした以外は実施例1と同様に実施例8の湿式法不織布を得た。
【0049】
実施例9
繊維配合が実施例1と同様であり、且つ表面層と裏面層とPVA塗沫量の坪量比率も実施例1と同様である湿式法不織布を、全体の坪量を20g/m
2とした以外は実施例1と同様に実施例9の湿式法不織布を得た。
【0050】
実施例10
繊維配合が実施例1と同様であり、且つ表面層と裏面層とPVA塗沫量の坪量比率も実施例1と同様である湿式法不織布を、全体の坪量を70g/m
2とした以外は実施例1と同様に実施例10の湿式法不織布を得た。
【0051】
実施例11
繊維配合が実施例1と同様であり、且つ表面層と裏面層とPVA塗沫量の坪量比率も実施例1と同様である湿式法不織布を、全体の坪量を90g/m
2とした以外は実施例1と同様に実施例11の湿式法不織布を得た。
【0052】
実施例12
表面層の坪量を16g/m
2に変えた以外は実施例1と同様に実施例12の湿式法不織布を得た。
【0053】
実施例13
表面層の坪量を56g/m
2に変えた以外は実施例1と同様に実施例13の湿式法不織布を得た。
【0054】
実施例14
裏面層の坪量を0.5g/m
2に変えた以外は実施例1と同様に実施例14の湿式法不織布を得た。
【0055】
実施例15
裏面層の坪量を8g/m
2に変えた以外は実施例1と同様に実施例15の湿式法不織布を得た。
【0056】
実施例16
液状バインダーの付着量を乾燥重量で0.5g/m
2に変えた以外は実施例1と同様に実施例16の湿式法不織布を得た。
【0057】
実施例17
液状バインダーの付着量を乾燥重量で10g/m
2に変えた以外は実施例1と同様に実施例17の湿式法不織布を得た。
【0058】
実施例18
表面層の原材料を分散するパルパー分散タンク中の水に、ガラス繊維(商品名:ECS13S−552I、日本電気硝子株式会社製、13μm×13mm)、PVAバインダー繊維(商品名:VPB107、株式会社クラレ製、1.0デシテックス×3mm)、セルロース繊維を6:1:1の質量比率で投入したこと以外は実施例1と同様に実施例18の湿式法不織布を得た。
【0059】
実施例19
表面層の原材料を分散するパルパー分散タンク中の水に、ガラス繊維(商品名:ECS13S−552I、日本電気硝子株式会社製、13μm×13mm)、PVAバインダー繊維(商品名:VPB107、株式会社クラレ製、1.0デシテックス×3mm)、セルロース繊維を5:1:2の質量比率で投入したこと以外は実施例1と同様に実施例19の湿式法不織布を得た。
【0060】
実施例20
裏面層の原材料を分散するパルパー分散タンク中の水に、ガラス繊維(商品名:ECS13S−552I、日本電気硝子株式会社製、13μm×13mm)、ポリエステルバインダー繊維(商品名:TA07N、帝人株式会社製、1.1デシテックス×5mm)、セルロース繊維を1:1:2の質量比率で投入し、裏面層の坪量が10g/m
2となるように抄紙した以外は実施例1と同様に実施例20の湿式法不織布を得た。
【0061】
実施例21
裏面層の原材料を分散するパルパー分散タンク中の水に、ガラス繊維(商品名:ECS13S−552I、日本電気硝子株式会社製、13μm×13mm)、ポリエステルバインダー繊維(商品名:TA07N、帝人株式会社製、1.2デシテックス×5mm)、セルロース繊維を1:1:4の質量比率で投入し、裏面層の坪量が15g/m
2となるように抄紙した以外は実施例1と同様に実施例21の湿式法不織布を得た。
【0062】
実施例22
裏面層の坪量を10g/m
2に変えた以外は実施例1と同様に実施例22の湿式法不織布を得た。
【0063】
実施例23
裏面層の坪量を20g/m
2に変えた以外は実施例1と同様に実施例23の湿式法不織布を得た。
【0064】
実施例24
湿式不織布に使用するガラス繊維を繊維径の大きいもの(商品名:ECS25I−535K、日本電気硝子株式会社製、25μm×13mm)に変えた以外は実施例1と同様に実施例24の湿式法不織布を得た。
【0065】
実施例25
湿式不織布に使用するガラス繊維を繊維長の長いもの(商品名:CS25K−871、日東紡績株式会社製、13μm×25mm)に変えた以外は実施例1と同様に実施例25の湿式不織布を得た。
【0066】
比較例1
パルパー分散タンク中の水に、ガラス繊維(商品名:ECS13S−552I、日本電気硝子株式会社製、13μm×13mm)、PVAバインダー繊維(商品名:VPB107、株式会社クラレ製、1.0デシテックス×3mm)、ポリエステルバインダー繊維(商品名:TA07N、帝人株式会社製、1.2デシテックス×5mm)を15:2:1の比率で投入して10分間混合分散した後、貯蔵タンクに送り、抄紙ヘッドタンクから坪量45g/m
2となるような抄造条件で、湿紙状態の単層構造の紙を抄造した。湿紙状態でプレスを行い、ヤンキードライヤーに当たるようにして乾燥し、坪量45g/m
2の単層構造の紙を得た。
【0067】
液状バインダーとして、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、株式会社クラレ製)を水に分散して塗抹液を作製した。本塗抹液をサチュレータ塗工装置にて、上記単層構造の紙のヤンキードライヤー非接触面側から、付着量が乾燥質量5g/m
2になるような条件で塗抹した後乾燥し、坪量50g/m
2の比較例1の湿式法不織布を得た。
【0068】
(塗液浸透性)
JIS L1096に準じ、フラジール通気性の測定を行った。フラジール通気性が高い不織布ほど、ポリ塩化ビニル等の塗液浸透性が優れており、建材補強材として優れていると言える。なお、通気性試験機には(カトーテック株式会社製、商品名:KES−F8−AP1)を使用した。通気性は下記の度合いで評価した。
【0069】
「○」フラジール通気性が200cm
3/cm
2・s以上
「△」フラジール通気性が150cm
3/cm
2・s以上200cm
3/cm
2・s未満
「×」フラジール通気性が150cm
3/cm
2・s未満
【0070】
(毛羽立ち)
幅5cmの無機繊維シートの流れ方向を横切るように、表面、裏面それぞれを山にして折り目を付け、折り目の上にステンレス製の直径5cm、長さ40cmの円柱状ロールを転がし、折り目に発生した繊維の毛羽立ち本数を計測した。測定はn=4で行い、平均値を示す。毛羽立ちは下記の度合いで評価した。
【0071】
「○」毛羽の数が5本未満
「△」毛羽の数が5本以上10本未満
「×」毛羽の数が10本以上
【0072】
(耐熱寸法安定性)
幅40cm、流れ方向30cmの無機繊維シートの縦横の寸法を正確に測定し、温度が200℃の乾燥機の中で10分間熱をかけ、乾燥から取り出してから縦横の寸法を測定した。測定はn=4で行い、寸法変化率を平均値で示す。耐熱寸法変化は下記の度合いで評価した。
【0073】
「○」寸法変化率が0.02%未満
「△」寸法変化率が0.02%以上0.1%未満
「×」寸法変化率が0.1%以上
【0074】
(引張強度)
JIS P8113:2006に準じ、引張強度の測定を行った。なお、引張試験機には(日本A&D社製、商品名:テンシロンUTM−III−100型)を使用した。引張強度は下記の度合いで評価した。
【0075】
「○」引張強度が2.9kN/m以上
「△」引張強度が2.0kN/m以上2.9kN/m未満
「×」引張強度が2.0kN未満
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
実施例1と比較例1の湿式法不織布は、不織布全体における繊維の種類、各繊維の含有率、液状バインダーの付着量、坪量が同じであり、表面温度100℃以上のヤンキードライヤーでバインダー繊維を溶解する工程を含む製造方法によって、製造されている。実施例1と比較例1から、無機繊維と湿熱接着性バインダー繊維が含まれる層と熱融着性バインダー繊維が含まれる層の二層で構成されている実施例1の湿式法不織布は、単層抄きである比較例1の湿式法不織布と比較して、フラジール通気度が高く、引張強度、毛羽立ち、耐熱寸法安定性も良好であるという結果となり、そのため、建材用中間補強材として使用が可能である。比較例1においては、湿式法不織布全体の配合は実施例1と同じであるものの、単層抄きとなっており、裏面の毛羽立ちを抑制する熱融着性バインダー繊維が不織布全体に分散するため不足してしまい、毛羽が立ちやすくなるという結果となった。これにより建材用補強材として加工する際にロールに繊維が付着し、不備が発生した。
【0081】
実施例1〜7から、表面層を構成する全繊維に対し、湿熱接着性バインダー繊維の含有率が20質量%以下であり、裏面層を構成する全繊維に対し、熱融着性バインダー繊維の含有率が30質量%以上である実施例1〜3、6、7においては、フラジール通気度が高く、引張強度、毛羽立ち、耐熱寸法安定性も良好であるという結果となった。実施例1〜3、6、7と比較して、実施例4においては、表面層の湿熱接着性バインダー繊維が多く、無機繊維の含有率が減少したため、耐熱寸法安定性が悪化する傾向が見られた。実施例5においては、裏面層の熱融着性バインダー繊維が減少し、毛羽立ちを抑制する効果が少なくなったため、毛羽立ちが10本/5cm以上発生するようになった。
【0082】
実施例8〜17から、表面層の坪量が18〜98g/m
2であり、裏面層の坪量が1〜10g/m
2であり、液状バインダーの付着量が1〜10g/m
2であり、且つ不織布全体の坪量が20〜100g/m
2である実施例8、10、11、13、15、17においては、フラジール通気度が高く、引張強度、毛羽立ち、耐熱寸法安定性も良好であるという結果となった。実施例8、10、11、13、15、17と比較して、実施例9においては、不織布全体の坪量が小さいため、引張強度が弱くなる傾向が見られた。実施例12においては、不織布全体の坪量は大きいものの、空隙を構成する無機繊維の量が少なくなり、液状バインダーが空隙を塞ぐため、通気度が150cm
3/cm
2・sよりも低くなることで、建材加工する際に塗液の浸透性が悪くなる傾向が見られた。実施例14においては、裏面層の坪量が小さいため、毛羽立ちを抑制する効果が低くなり、毛羽が10本/5cm以上発生する傾向にあった。実施例16においては、液状バインダーの付着量が少ないため、強度が低下する傾向が見られた。
【0083】
実施例18〜21から、無機繊維が不織布全体の60質量%以上であり、セルロース繊維を少量配合している実施例18、20においては、フラジール通気度が高く、引張強度、毛羽立ち、耐熱寸法安定性も良好であるという結果となった。実施例18、20と比較して、実施例19においては、無機繊維が少なくなり、セルロース繊維を多く配合していることから、空隙が少なくなるため、フラジール通気度が150cm
3/cm
2・sよりも低くなり、また、セルロース繊維は熱によって変形しやすいため、耐熱寸法安定性も悪化する傾向が見られた。実施例21においても、実施例19と同様の理由でフラジール通気度が150cm
3/cm
2・sよりも低くなり、耐熱寸法安定性も悪化する傾向が見られた。
【0084】
実施例22、23から、表面層と裏面層の坪量比率が3〜200:1である実施例22においてはフラジール通気量が高く、塗工性に優れ、引張強度、毛羽立ち、耐熱寸法安定性も良好であるという結果となった。実施例22と比較して、実施例23においては、不織布全体の無機繊維の比率が低くなるため、耐熱寸法安定性が悪化する傾向が見られた。
【0085】
実施例1、実施例24、25から、不織布を構成するガラス繊維の平均繊維径が1〜20μmであり、且つ平均繊維長が1〜20mmである実施例1においては、フラジール通気量が高く、塗工性に優れ、引張強度、毛羽立ち、耐熱寸法安定性も良好であるという結果となった。実施例1と比較して、実施例24においては、無機繊維長が20mmを超えており、地合が悪く、湿式抄紙機で使用する毛布に無機繊維が取られるため、毛羽立ちが悪化する傾向が見られた。実施例25においては、無機繊維径が20μmを超えており、こちらも地合が悪く、毛布に無機繊維が取られるため、毛羽立ちが悪化する傾向が見られた。