特許第6257274号(P6257274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257274
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】ハブダイナモ
(51)【国際特許分類】
   B62J 6/12 20060101AFI20171227BHJP
【FI】
   B62J6/12
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-230315(P2013-230315)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-89734(P2015-89734A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】力石 真
(72)【発明者】
【氏名】山本 勉
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−049839(JP,A)
【文献】 特開2007−006550(JP,A)
【文献】 特開2012−101703(JP,A)
【文献】 特開2013−169805(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3148720(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するハブシェルおよび該ハブシェルの筒部内周に配置された永久磁石を有するロータと、
前記車輪を回転自在に支持するハブ軸に回転不能に固定され、前記ハブシェルの内部に収容された状態で前記永久磁石の内周側に配置され、前記ロータの回転により交番電流を出力するコイルを有したステータと、
前記ハブシェルの内部に収容されて前記コイルの出力する交番電流の処理回路を有する回路基板と、
前記ハブ軸に固定され、前記ステータの軸方向の移動を規制することで前記ステータを前記ハブ軸に位置決め固定する固定部材と、を備え、
前記固定部材には、軸方向の前記ステータ側にフランジが形成されていると共に、該フランジの前記ステータと反対側の側面に基板固定面が形成されており、
該基板固定面に、前記回路基板が固定されていることを特徴とするハブダイナモ。
【請求項2】
前記回路基板が、前記固定部材の前記ステータとは反対側に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のハブダイナモ。
【請求項3】
前記ハブ軸は、外周面に雄ねじを有している一方、前記固定部材は、前記雄ねじに螺合可能に形成されており、
前記フランジは、前記固定部材を締め込んだ際に、前記ステータの軸方向の端面に押圧されることで、該ステータに軸方向の締め付け力を付与するとを特徴とする請求項2に記載のハブダイナモ。
【請求項4】
前記回路基板は、軸方向からみて径方向中央に中心孔を有する環状に形成されており、
前記固定部材における前記フランジの前記ステータと反対側に、前記回路基板の前記中心孔が嵌り込んで前記回路基板の径方向の位置決めが行われる位置決め部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のハブダイナモ。
【請求項5】
前記回路基板の前記中心孔は、軸方向からみて円形状に形成されており、
前記位置決め部は、前記回路基板の前記中心孔に嵌合可能なように円筒状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のハブダイナモ。
【請求項6】
前記固定部材の前記フランジの外周部に、前記回路基板を前記基板固定面に固定するためのネジ固定部が設けられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のハブダイナモ。
【請求項7】
前記回路基板に前記処理回路の構成要素としての素子が搭載されており、該素子が前記フランジの外周縁よりも外側に配置されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載のハブダイナモ。
【請求項8】
前記回路基板には、出力線の一端が接続されており、
前記固定部材の外周に、前記出力線の他端を前記ハブシェルの外部に導出するための溝が、軸方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のハブダイナモ。
【請求項9】
前記コイルとして、位相のずれた交流出力を発生する2相以上のコイルが設けられており、
前記回路基板の前記処理回路が、前記交番電流を直流に変換する整流回路を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のハブダイナモ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハブダイナモに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自転車の前照灯や尾灯等に電力を供給するため、車輪の回転によって発電する発電機が広く普及している。このような発電機には様々な構造のものが存在するが、ハブ軸に取り付けられる、いわゆるハブダイナモが知られている。
従来のハブダイナモは、単相交流発電機として構成されたものが主流であり、ハブダイナモからランプまでの間が1〜2本の出力線で接続されていた。
【0003】
ところで、発電効率の向上のためやLEDランプを使用した場合のちらつき防止のために、二相交流や三相交流で発電することが検討されている。
しかし、例えば三相交流の場合、出力線が3〜4本になるため、それらすべての出力線をハブダイナモから引き出してランプに接続しようとすると、自転車上で引き回す電線の本数が増加することで見栄えが悪化したり、増加した電線の本数分だけコスト高になったりするという問題が出てくる。
【0004】
そこで、特許文献1に、それらの問題を解決するものとして、ハブシェル(ダイナモケース)の内部に、発電した交流電流を直流電流に変換する整流回路を備えた回路基板を配置し、それによりハブダイナモからランプまでの間を接続する出力線の本数を少なくしたハブダイナモが提案されている。
このハブダイナモでは、ステータユニットに整列して配置したホルダを、ナットの締め付けによりステータユニットと共にハブ軸(ハブ軸)に固定しており、そのホルダに回路基板を取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−182961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたハブダイナモでは、ステータユニットを固定するナットと、回路基板を取り付けるホルダとを別部品として用意しているので、部品点数が増加するという課題があった。
また、ナットにより、ステータユニットとホルダとを共締めしているので、ステータユニットを固定するのに必要な締結力が、ステータユニットと共にホルダにも作用する。このため、ホルダを、ステータユニットを固定するのに必要な締結力に耐え得る形状にする必要があり、この分、製造コストが増大するという課題があった。
【0007】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、回路基板をハブシェル内に配置して固定する際の部品点数の削減を可能にすると共に、製造コストの増大を抑制できるハブダイナモを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るハブダイナモは、車輪と共に回転するハブシェルおよび該ハブシェルの筒部内周に配置された永久磁石を有するロータと、前記車輪を回転自在に支持するハブ軸に回転不能に固定され、前記ハブシェルの内部に収容された状態で前記永久磁石の内周側に配置され、前記ロータの回転により交番電流を出力するコイルを有したステータと、前記ハブシェルの内部に収容されて前記コイルの出力する交番電流の処理回路を有する回路基板と、前記ハブ軸に固定され、前記ステータの軸方向の移動を規制することで前記ステータを前記ハブ軸に位置決め固定する固定部材と、を備え、前記固定部材には、軸方向の前記ステータ側にフランジが形成されていると共に、該フランジの前記ステータと反対側の側面に基板固定面が形成されており、該基板固定面に、前記回路基板が固定されていることを特徴とする。
【0009】
この構成においては、固定部材が、ステータをハブ軸に固定する部材と回路基板を固定する部材とを兼ねているので、従来のように回路基板を固定するためだけに用意したホルダを必要とせず、部品点数の削減を図ることができ、製造コストも低減できる。
また、ステータユニットを固定するのに必要な固定力が、回路基板に作用することがないので、回路基板の剛性を必要以上に高める必要がなく、より製造コストを低減できる。
【0010】
本発明に係るハブダイナモは、前記回路基板が、前記固定部材の前記ステータとは反対側に固定されていることを特徴とする。
【0011】
この構成においては、回路基板に、固定部材によってステータを固定するときの力が全く及ばないようにすることができるので、回路基板の損傷防止を図ることができる。
【0012】
本発明に係るハブダイナモにおいて、前記ハブ軸は、外周面に雄ねじを有している一方、前記固定部材は、前記雄ねじに螺合可能に形成されており、前記フランジは、前記固定部材を締め込んだ際に、前記ステータの軸方向の端面に押圧されることで、該ステータに軸方向の締め付け力を付与するとを特徴とする。
【0013】
この構成においては、固定部材に設けたフランジのステータと反対側の側面に回路基板を固定するようにしているので、回路基板を無用な力を受けない状態で容易に固定部材に対して固定することができる。
【0014】
本発明に係るハブダイナモにおいて、前記回路基板は、軸方向からみて径方向中央に中心孔を有する環状に形成されており、前記固定部材における前記フランジの前記ステータと反対側に、前記回路基板の前記中心孔が嵌り込んで前記回路基板の径方向の位置決めが行われる位置決め部が設けられていることを特徴とする。
この場合、前記回路基板の前記中心孔は、軸方向からみて円形状に形成されており、前記位置決め部は、前記回路基板の前記中心孔に嵌合可能なように円筒状に形成されていてもよい。
【0015】
この構成においては、回路基板を固定部材に対して径方向に容易に位置決めしながら固定することができる。
【0016】
本発明に係るハブダイナモは、前記固定部材の前記フランジの外周部に、前記回路基板を前記基板固定面に固定するためのネジ固定部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
この構成においては、回路基板を固定部材のフランジにネジ固定するので、回路基板の組み付けが容易にできる。また、回路基板の外周部寄りがネジ固定されることになるので、フランジに対する回路基板の固定面積を大きくすることができ、フランジに対する回路基板の固定状態を安定させることができる。
【0018】
本発明に係るハブダイナモは、前記回路基板に前記処理回路の構成要素としての素子が搭載されており、該素子が前記フランジの外周縁よりも外側に配置されていることを特徴とする。
【0019】
この構成においては、素子の配置位置をフランジの外周縁の外側に設定したので、フランジと素子が重なることがなく、そのため、フランジと回路基板を密着させて配置することができて、軸方向のコンパクト化に貢献することができる。
【0020】
本発明に係るハブダイナモは、前記回路基板には、出力線の一端が接続されており、前記固定部材の外周に、前記出力線の他端を前記ハブシェルの外部に導出するための溝が、軸方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成においては、固定部材の溝を利用してハブシェルの内部から外部に出力線を引き出すことができるので、例えば、固定部材に軸受を嵌合させた状態で、軸受の内側を通して無理なく出力線を外部に引き出すことができる。
【0022】
本発明に係るハブダイナモは、前記コイルとして、位相のずれた交流出力を発生する2相以上のコイルが設けられており、前記回路基板の前記処理回路が、前記交番電流を直流に変換する整流回路を含むことを特徴とする。
【0023】
この構成においては、コイルの出力する位相のずれた交番電流を直流に変換して出力することができる。従って、交流出力の整流後の合成出力に0Vに落ちる点がなく、この出力をLEDランプに供給することで、発光時のちらつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るハブダイナモによれば、固定部材が、ステータをハブ軸に固定する部材と回路基板を固定する部材とを兼ねているので、従来のように回路基板を固定するためのホルダが必要なく部品点数の削減を図ることができ、製造コストも低減できる。
また、ステータユニットを固定するのに必要な固定力が、回路基板に作用することがないので、回路基板の剛性を必要以上に高める必要がなく、より製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態におけるハブダイナモの取付概要図である。
図2】本発明の実施形態におけるハブダイナモの側面図である。
図3】本発明の実施形態におけるハブダイナモの断面図である。
図4】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータの斜視図である。
図5】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータの側面図である。
図6】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータの回路基板を取り付ける前の斜視図である。
図7】本発明の実施形態におけるハブダイナモを構成するステータのナット部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、この発明の実施形態を図1図7に基づいて説明する。
図1は、ハブダイナモ10の取付概要図である。なお、以下の説明では、本発明に係るハブダイナモ10を自転車1のハブ軸11に取り付け、自転車1の前照灯4に電力を供給する場合について説明する。
【0027】
この前照灯4には、ランプとして、フィラメント式の電球ではなく、LEDランプが使用されている。また、LEDランプの駆動回路には、ハブダイナモ10の出力を整流し合成する回路(処理回路)が組み込まれており、LEDランプの駆動回路を備えた回路基板200(後述)は、ハブダイナモ10の中(ハブシェル100の内部)に内蔵されている。
【0028】
(ハブダイナモの取付態様)
図1に示すように、自転車1の前輪5は、フレームの一部を構成するフロントフォーク3によりハブ軸11を介して回転可能に軸支されている。ハブ軸11は、両側がフロントフォーク3にナット(不図示)等により回転不能に締結固定されている。ハブ軸11の軸方向中央の大部分には、ハブダイナモ10がハブ軸11と同軸に取り付けられている。このハブダイナモ10は、前輪5の側方に配置された前照灯4に電力を供給している。
【0029】
ハブダイナモ10は、前輪5のスポーク2に接続されて前輪5と共にハブ軸11の周囲を回転するロータ12(後述)と、ロータ12の内周側に位置する状態でハブ軸11に回転不能に取り付けられたステータ13(後述)と、を備えている。
【0030】
以下、ハブ軸11の中心軸Oの軸方向を単に軸方向といい、軸方向に直交する方向を径方向といい、中心軸O周りに沿った方向を周方向という。なお、ハブ軸11のうち、少なくともステータ13(後述)が取り付けられた部分よりも軸方向外側に位置する部分には、雄ねじ部11a(後述)が形成されている。
【0031】
(ロータ)
図2は、ハブダイナモ10の側面図、図3は、ハブダイナモ10の断面図である。
図2図3に示すように、ロータ12は、ハブシェル100を主体に構成されている。ハブシェル100は、円筒状の胴部(筒部)60と、胴部60の軸方向両端開口を塞ぐ第1のエンドプレート70および第2のエンドプレート80と、からなる。なお、少なくとも胴部60は、磁性金属材料よりなる。
【0032】
図3に示すように、胴部60の軸方向一方P側(図3における左側)の開口には、その開口を塞ぐように第2のエンドプレート80が圧入固定されている。また、胴部60の軸方向他方Q側(図3における右側)の開口には、その開口を塞ぐように第1のエンドプレート70が圧入固定されている。
【0033】
各エンドプレート70、80の外周には、径方向外側に向かって張り出すフランジ部101が形成されている。各フランジ部101には、軸方向に貫通する支持孔102が周方向に等間隔で複数形成されている。支持孔102には、図1に示すように、前輪5のリム5aから内径側に延在する複数のスポーク2の内側端部が係合されている。なお、左右のフランジ部101の支持孔102は、半ピッチ分だけ周方向に位相がずれて配置されている。
【0034】
胴部60の軸方向他方Q側の開口を閉塞する第1のエンドプレート70は、胴部60の端部が内周に圧入され、軸方向一方P側の端部にフランジ部101が一体形成された円筒壁71を有している。円筒壁71の軸方向他方Q側の端部には、径方向内方につながる環状の側壁72が一体成形されている。側壁72の内周縁には、軸方向一方P側に向かって折れ曲がった円筒状のベアリング嵌合壁73が一体成形されている。ベアリング嵌合壁73の軸方向一方P側の端部には、径方向内側に折れ曲がったベアリング押え壁74が一体成形されている。
【0035】
また、胴部60の軸方向一方P側の開口を閉塞する第2のエンドプレート80は、胴部60の端部が内周に圧入され、軸方向他方Q側の端部にフランジ部101が一体成形された円筒壁81を有している。円筒壁81の軸方向一方P側の端部には、径方向内方につながる環状の側壁82が一体成形されている。側壁82の内周縁には、軸方向他方Q側に向かって折れ曲がった円筒状のベアリング嵌合壁83が一体成形されている。ベアリング嵌合壁83の軸方向他方Q側の端部には、径方向内側に折れ曲がったベアリング押え壁84が一体成形されている。
【0036】
第1のエンドプレート70および第2のエンドプレート80のベアリング嵌合壁73,83の径方向内側は、同軸上に位置する貫通孔75、85として開口している。これら貫通孔75、85を画成するベアリング嵌合壁73,83の内周に、ベアリング(軸受)121、122がそれぞれ嵌合されている。
そして、ハブシェル100を主体として構成されるロータ12は、ベアリング121、122を介してハブ軸11に回転可能に支持されることで、前輪5の回転と共にハブ軸11を中心に回転するようになっている。すなわち、ロータ12は、前輪5を回転可能に支持するハブとして機能している。
【0037】
ハブシェル100の胴部60の内周には、例えばフェライト等により形成された永久磁石19が配置されている。永久磁石19の外周面の曲率半径は、胴部61の内周面の半径と同等に設定されている。永久磁石19は、ヨークを介さずに磁性材料製の胴部61の内周に直接密着した状態で配置され、例えば接着剤等により貼付されている。永久磁石19を、胴部60の内周面に沿って円筒状に配置することで、永久磁石19はステータ13の外周面全体を覆っている。なお、永久磁石19は、周方向に複数に分割された状態で胴部60の内周に組み込まれている。
【0038】
この円筒状に配置された永久磁石19の内周面には、N極およびS極の磁極が周方向に沿って交互に着磁されている。具体的には、N極およびS極がそれぞれ10極ずつ、合計20極の磁極が交互にN極およびS極が並ぶように着磁されている。
【0039】
(ステータ)
図4は、ステータ13の斜視図、図5は、ステータの側面図である。
図3図4図5に示すように、ステータ13は、クローポール型の第1のステータユニット20Aと第2のステータユニット20Bとをハブ軸11の軸方向に組み合わせることで構成されている。第1のステータユニット20Aは、A相の交番電流・電圧(交流)を出力し、第2のステータユニット20BはB相の交番電流・電圧(交流)を出力するようになっている。
【0040】
図3に示すように、各ステータユニット20A、20Bは、ハブ軸11の周りにボビン23を介して環状に巻かれたコイル24と、コイル24を包囲すると共に外周部に永久磁石19と対向し、且つ磁極の数に対応した極数のティース22(22−1、22−2)を有したステータコア26と、をそれぞれ備えている。
【0041】
ステータコア26は、環状のコイル24の内周に配置された中心部ヨーク25と、環状のコイル24の軸方向一方P側および軸方向他方Q側に互いに対向して配置された一対の円板状の側部ヨーク21(21−1、21−2)と、ステータコア26の外周部に配置されてロータ12の永久磁石19の内周側に空隙を介して対向配置されたティース22(22−1、22−2)と、からなる。
【0042】
一対の側部ヨーク21(21−1、21−2)は、それぞれの内周部が中心部ヨーク25の一端および他端に磁気的に結合されている。
【0043】
ティース22(22−1、22−2)は、円板状の側部ヨーク21(21−1、21−2)にそれぞれ一体に形成されている。そして、軸方向一方P側の側部ヨーク21−1に一体に形成されたティース22−1と、軸方向他方Q側の側部ヨーク21−2に一体に形成されたティース22−2とが、円周方向に微小間隔を開けて交互に配列されている。
なお、各側部ヨーク21−1、21−2は、それぞれ10個のティース22−1、22−2を有し、全ティース22(22−1、22−2)の極数が永久磁石19の磁極数に対応している。
【0044】
ティース22(22−1、22−2)を一体に有した軸方向一方P側および軸方向他方Q側の側部ヨーク21(21−1、21−2)は、同形状のものである。そして、軸方向他方Q側の側部ヨーク21−1は、ティース22−1を軸方向一方P側に向け、軸方向一方P側の側部ヨーク21−2は、ティース22−2を軸方向他方Q側に向けている。両者は、ハブ軸11上で互いに組み合わせられている。
【0045】
円板状の側部ヨーク21(21−1、21−2)の中央には、ハブ軸11の外周に嵌合する中心孔21aが形成されており、この中心孔21aによりステータ13はハブ軸11に固定されている。
また、各側部ヨーク21(21−1、21−2)の中心孔21aよりも径方向外側には、コイル24の一端(出力線250)を軸方向外側に向かって引き出すためのスリット21s(図6参照)が形成されている。なお、コイル24の他端は、例えば、ハブ軸11に接続されて接地(ボディアース)されている。
【0046】
(第1のステータユニットと第2のステータユニット組み合わせ)
図4に示すように、第1のステータユニット20Aと第2のステータユニット20Bは、各ステータユニット20A、20Bのティース22の位置を所定角度だけ円周方向に相互にずらして組み合わせられている。これにより、各ステータユニット20A、20Bの各コイル24から、位相のずれたA相とB相の2相の交番電流・電圧が出力される。
【0047】
本実施形態では、第1および第2の各ステータユニット20A(A相)、20B(B相)におけるティース22(22−1、22−2)の極数および永久磁石19の磁極の極数をP、ティース22(22−1、22−2)のピッチ角をθ、第1のステータユニット20Aのティース22(22−1、22−2)と第2のステータユニット20Bのティース(22−1、22−2)の円周方向のずれ角度をαとしたとき、角度αは、
α=θ/2=(360°/P)/2・・・(1)
を満たすように設定されている。
【0048】
角度αが式(1)を満たすことにより、第1のステータユニット20Aのコイル24と、第2のステータユニット20Bのコイル24とが、ロータ12の回転に応じて、相互に電気角で90°位相のずれた交番電流・電圧を出力する。
【0049】
なお、第1のステータユニット20Aと第2のステータユニット20Bとを、ずれ角αだけ周方向に位相ずれした関係に組み合わせるために、図示しない周方向位置決め手段が設けられている。また、図3に示すように互いに隣接する、第1のステータユニット20Aの軸方向一方P側の側部ヨーク21−2と第2のステータユニット20Bの軸方向他方Q側の側部ヨーク21−1とは、背中合わせにスペーサ180を介して配置されている。
【0050】
(規制部)
図3図5に示すように、ハブ軸11のうち、ステータ13の軸方向両側に位置する部分には、ステータ13の軸方向の移動および周方向の回転を規制する規制部150が設けられている。規制部150は、ハブ軸11のうち、ステータ13の軸方向一方P側に設けられたスペシャルナット(固定部材)30と、軸方向他方Q側に設けられたステータ固定部材37と、第1のステータユニット20Aと第2のステータユニット20Bとの間に挟まれたスペーサ180と、を備えている。
【0051】
ステータ13を構成する第1のステータユニット20Aおよび第2のステータユニット20Bは、スペシャルナット30およびステータ固定部材37と、第1のステータユニット20Aと第2のステータユニット20Bとの間に設けられたスペーサ180とにより、軸方向の定位置に挟持固定されている。そして、挟持されることにより生じる摩擦抵抗により、第1のステータユニット20Aおよび第2のステータユニット20Bの周方向の回転も規制されている。なお、第1のステータユニット20Aおよび第2のステータユニット20Bの周方向の相対位置関係は、図示略の別の手段により予め設定されている。
【0052】
(スペシャルナット)
図6は、回路基板を取り付ける前のステータの斜視図、図7は、スペシャルナット(固定部材)の斜視図である。
図6および図7に示すように、スペシャルナット30は、軸方向他方Q側に形成されたフランジ31と、そのフランジ31の軸方向一方P側に形成された円筒部32と、その円筒部32の軸方向一方P側に形成された円筒状のスリーブ部33と、を有している。
【0053】
フランジ31は、所定厚の円板状のもので、軸方向他方Q側の側面が、ステータユニット20Bの軸方向一方P側の端面(軸方向一方P側の側部ヨーク21の外側面)を押圧する押圧面31bとされ、軸方向一方P側の側面(ステータユニット20A、20Bと反対側の側面)が、回路基板200(図4参照)を固定するための基板固定面31aとされ、外周縁31cが軸方向からみて円形状に形成されている。そして、基板固定面31aに回路基板200が固定されている。
【0054】
ここで、フランジ31の基板固定面31aに固定される回路基板200について説明する。
図4および図5に示すように、回路基板200は、外径がフランジ31の外径よりも大きく、且つステータユニット20A、20Bの外径よりも小さいドーナツ状(環状)に形成されており、軸方向からみて円形の中心孔201と、軸方向からみて円形の外周縁202を有している。また、この回路基板200は、少なくとも、ステータ13のコイル24から出力される交番電流を整流して直流に変換する整流回路(処理回路)を有しており、回路の構成要素である回路素子203の配置位置が、スペシャルナット30のフランジ31の外周縁31cよりも外側に設定されている。
【0055】
また、スペシャルナット30のフランジ31に隣接した円筒部32は、その外周面32aの径が、フランジ31の外径よりも小さく且つ回路基板200の中心孔201が外嵌する径に設定されている。そして、図4に示すように、その円筒部32の外周面32aに回路基板200の中心孔201を嵌めることにより、回路基板200が径方向に位置決めされている。
【0056】
また、スリーブ部33は、円筒部32の外径よりも小さく形成されており、その外周面は、第2のエンドプレート80のベアリング嵌合壁83に外輪を嵌合させたベアリング122の内輪の内周に圧入等により固定されている。なお、円筒部32の軸方向一方P側に位置する端面は、ベアリング122の内輪に軸方向で当接する位置決め壁32bとされている。これにより、ベアリング122は、外輪側がハブ軸11周りに回転自在となるように装着されている。
【0057】
また、スペシャルナット30の軸方向に貫通した中心孔の内周には雌ねじ34が形成されている。この雌ねじ34を、ハブ軸11の雄ねじ部11aに螺合することで、スペシャルナット30はハブ軸11の外周に固定されている。
【0058】
また、スペシャルナット30におけるフランジ31の外周部には、周方向にバランスよく配分して複数の耳部35が設けられている。各耳部35に、回路基板200を固定するための固定ネジ210を締め付けるための雌ねじ孔(ネジ固定部)36が設けられている。回路基板200は、基板固定面31aに背面を当接させた状態で、固定ネジ210(図4参照)を雌ねじ孔36に締め込むことにより、フランジ31に確実に固定されている。
【0059】
また、図4図6図7に示すように、スペシャルナット30の外周面(フランジ31、円筒部、スリーブ部33の外周面)には、ステータ13のコイル24から引き出された出力線(コイルの一端)250や回路基板200から引き出された出力線251(図4参照)を案内するための溝137が軸方向に沿って設けられている。
回路基板200からは、LEDランプ4に接続される1本の出力線251が引き出されており、その出力線251は、スペシャルナット30の溝137に収容されることで、ベアリング122の内周を通ってハブダイナモ10の外部に導出されている。
【0060】
なお、コイル24から引き出された出力線250を溝137に導入するために、ステータ13の側部ヨーク21に形成されたスリット21sとスペシャルナット30の溝137の位置が対応するように設定されている。また、回路基板200のアース線は、導電材料製のスペシャルナット30を介してハブ軸11に電気接続されている。
【0061】
図3に示すように、第2のエンドプレート80の外側にはコネクタ40が配設されている。このコネクタ40に、スペシャルナット30の溝137内を経由してハブダイナモ10の外部に引き出された出力線251(図4参照)の端末部が導入されている。コネクタ40の内周部には、スペシャルナット30のスリーブ部33が挿通されている。コネクタ40は、ワッシャ45を介してナット46によりハブ軸11に固定されている。
【0062】
また、ハブ軸11におけるステータ固定部材37よりも軸方向他方Q側には、スリーブ50が設けられている。このスリーブ50は、内周面に雌ねじが形成された筒状の部材であり、軸方向他方Q側からハブ軸11の雄ねじ部11aに螺合されている。
【0063】
スリーブ50は、軸方向一方P側の端面が、ステータ固定部材37の外周に嵌合された第1のエンドプレート70側のベアリング121の内輪に、軸方向で当接している。第1のエンドプレート70の外側には、ベアリング121およびスリーブ50を覆うようにカバー54が装着されている。カバー54は、椀形状に形成された部材であり、外部からロータ12の内部に水や塵埃等が浸入するのを防止している。カバー54の内周部には、スリーブ50を緩み止めするためにハブ軸11に螺着されたナット52が配置されている。
【0064】
(発電の仕組み)
このように構成されたハブダイナモ10の発電は、以下の要領で行われる。
すなわち、前輪5が回転すると、スポーク2により前輪5に接続されたロータ12が前輪5と共にハブ軸11周りに回転し、永久磁石19がステータ13周りを回転する。
【0065】
回転する永久磁石19の磁束により、軸方向他方Q側の側部ヨーク21−1に設けられた第1のティース22−1がN極、軸方向一方P側の側部ヨーク21−2に設けられた第2のティース22−2がS極となる状態と、第1のティ−ス22−1がS極、第2のティース22−2がN極となる状態と、が交互に繰り返される。これにより、A相の第1のステータユニット20Aのステータコア26とB相の第2のステータユニット20Bのステータコア26に交番磁束が発生する。この交番磁束により、第1および第2のステータユニット20A、20Bの各コイル24に電流が流れて発電が行われる。
【0066】
これにより、A相の第1のステータユニット20Aのステータコア26とB相の第2のステータユニット20Bのステータコア26に交番磁束が発生し、この交番磁束により、第1および第2のステータユニット20A、20Bの各コイル24に電流が流れて発電が行われる。
【0067】
この際、第1のステータユニット20Aのコイル24から出力される交番電流・電圧と、第2のステータユニット20Bのコイル24から出力される交番電流・電圧とは、位相がずれており、同時に交番電圧が0Vに落ちる点がない。
【0068】
特に、第1のステータユニット20Aのティース22(22−1、22−2)と第2のステータユニット20Bのティース22(22−1、22−2)の円周方向のずれ角度αがティース22のピッチ角θの1/2に設定されていることにより、A相とB相の2相のコイル24の電圧波形の位相ずれがちょうど電気角で90°になる。
【0069】
従って、第1のステータユニット20Aと第2のステータユニット20Bとから、それぞれ電気角で90°位相のずれた波形の交番電流・電圧が出力され、これら交番電流・電圧を回路基板200上の整流回路で全波整流することにより、全波整流後の合成出力の最小値と最大値の開きを小さくすることができ、全波整流後の合成出力をLEDランプに供給することで、LEDランプの発光時のちらつきを効果的に抑制することができる。
【0070】
例えば、従来の単相発電と同じ速度でロータ12が回転する場合には、LEDランプのちらつきを半分以下にすることができる。また、従来の単相発電と同程度のちらつきを許容する場合には、ステータ13の極数(ティースの数)を半減することができ、コスト低減に貢献することができる。
【0071】
また、本実施形態のハブダイナモ10は、3相ではなく2相の交流発電を行うものであるため、ちらつきを防止する上での必要最小限の装備で済み、コストダウンとコンパクト化に貢献することができる。
【0072】
(効果)
上述の実施形態によれば、スペシャルナット(固定部材)30が、ステータ13をハブ軸11に固定する部材と回路基板を固定する部材とを兼ねているので、従来のように回路基板を固定するためだけに用意したホルダを必要とせず、部品点数の削減を図ることができる。
【0073】
また、回路基板200が、スペシャルナット30のステータ13と反対側に固定されているので、回路基板200に、スペシャルナット30によってステータ13を固定するときの力が全く及ばないようにすることができ、回路基板200の損傷防止を図ることができる。換言すれば、ステータ13を固定するのに必要な締結力が、回路基板200に作用することがないので、回路基板200の剛性を必要以上に高める必要がなく、製造コストを低減できる。
【0074】
また、スペシャルナット30に設けたフランジ31のステータ13と反対側の側面に回路基板200を固定するようにしているので、回路基板200を無用な力を受けない状態で容易にスペシャルナット30に対して固定することができる。
【0075】
さらに、スペシャルナット30の円筒部32の外周面32aに回路基板200の中心孔201の内周を嵌合させているので、回路基板200をスペシャルナット30に対して径方向に容易に位置決めしながら固定することができる。
【0076】
また、スペシャルナット30におけるフランジ31の外周部には、周方向にバランスよく配分して複数の耳部35が設けられており、この耳部35に回路基板200を基板固定面31aに固定するための雌ねじ孔(ねじ固定部)36を設けている。このため、固定ネジ210により回路基板200をスペシャルナット30に容易に固定することができる。
さらに、回路基板200の外周部寄りを、固定ネジ210によりフランジ31に固定することになる。このため、フランジ31に対する回路基板200の固定面積を大きくすることができ、フランジ31に対する回路基板200の固定状態を安定させることができる。
【0077】
また、回路基板200の素子203の配置位置をフランジ31の外周縁31cの外側に設定したので、フランジ31と素子203が重なることがなく、そのため、フランジ31と回路基板200を密着させて配置することができて、軸方向のコンパクト化に貢献することができる。
【0078】
また、スペシャルナット30の溝137を利用してハブシェル100の内部から外部に出力線251を引き出すようにしているので、スペシャルナット30にスリーブ部33にベアリング122を嵌合させた状態で、ベアリング122の内側を通して無理なく出力線251を外部に引き出すことができる。
【0079】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、ステータ13が、2つのステータユニット20A,20Bで構成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、3つ以上のステータユニットによりステータ13を構成してもよい。
【0080】
また、上述の実施形態では、2つのステータユニット20A、20Bの位相をずらすことで、位相のずれた2相交流を出力する場合を説明したが、ロータ12側の永久磁石19の磁極の位置をずらして、位相のずれた2相交流を出力するようにすることもできる。また、例えば、三相スター結線により三相交流を出力するハブダイナモにも、本発明は適用することができる。
【0081】
さらに、上述の実施形態では、回路基板200の中心孔201が、軸方向からみて円形状に形成されていると共に、スペシャルナット30に、回路基板200の中心孔201が外嵌可能なように円筒部32を形成した場合について説明した。そして、これら中心孔201と円筒部32によって、回路基板200の径方向の位置決めが行われる場合について説明した。しかしながら、スペシャルナット30に対して回路基板200の径方向の位置決めが可能であれば、中心孔201の形状と円筒部32の形状は、上述の実施形態の形状に限られるものではない。例えば、中心孔201を、軸方向からみて多角形状としてもよいし、これに合わせて円筒部32の形状を多角筒状としてもよい。
【0082】
また、スペシャルナット30は、フランジ31と、円筒部32と、スリーブ部33とが一体成形されていてもよいし、それぞれ別々に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0083】
4…前照灯(発光ダイオード)
5…前輪
10…ハブダイナモ
11…ハブ軸
11a…雄ねじ部
12…ロータ
13…ステータ
19…永久磁石
24…コイル
60…胴部(筒部)
30…スペシャルナット(固定部材)
31…フランジ
31a…基板固定面
31c…外周縁
32…円筒部(位置決め部)
32a…外周面
36…雌ねじ(ネジ固定部)
100…ハブシェル
200…回路基板
201…中心孔
203…素子
251…出力線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7