特許第6257275号(P6257275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257275
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】検出センサおよび測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/22 20060101AFI20171227BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20171227BHJP
   G01R 15/06 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   G01R1/22 A
   G01R15/20 C
   G01R15/06 A
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-232330(P2013-232330)
(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2014-238386(P2014-238386A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-99042(P2013-99042)
(32)【優先日】2013年5月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】中島 謙太郎
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−025653(JP,A)
【文献】 実開昭52−060870(JP,U)
【文献】 米国特許第05634828(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/22
G01R 15/00−15/26
G01R 19/00−19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸を中心として回動自在に連結された一対のクリップ片の揺動する各一端に互いに対向した状態で一対の挟み部が形成され、
前記一対の挟み部のうちの一方の挟み部における他方の挟み部との対向面の一部は、直径の異なる複数種類の測定対象を受ける受け面として形成され、
前記他方の挟み部における前記一方の挟み部との対向面の一部は、当該他方の挟み部の長さ方向に沿った長さが前記受け面よりも短く規定されると共に当該各挟み部間に位置する前記測定対象の外周面と接触して当該測定対象を前記受け面に押し付ける押付面として形成され、
前記測定対象の未挟持状態において前記一対のクリップ片が回動して前記押付面が前記受け面方向に移動したときに、当該受け面における当該押付面が最も接近する部位の近傍に前記測定対象の被測定量を検出する検出部が配設され
前記受け面における前記検出部が配設されている部位の近傍は、前記一方の挟み部を側面視した状態において、当該受け面における他の部位よりも凹む凹部に形成されている検出センサ。
【請求項2】
回動軸を中心として回動自在に連結された一対のクリップ片の揺動する各一端に互いに対向した状態で一対の挟み部が形成され、
前記一対の挟み部のうちの一方の挟み部における他方の挟み部との対向面の一部は、直径の異なる複数種類の測定対象を受ける受け面として形成され、
前記他方の挟み部における前記一方の挟み部との対向面の一部は、当該他方の挟み部の長さ方向に沿った長さが前記受け面よりも短く規定されると共に当該各挟み部間に位置する前記測定対象の外周面と接触して当該測定対象を前記受け面に押し付ける押付面として形成され、
前記測定対象の未挟持状態において前記一対のクリップ片が回動して前記押付面が前記受け面方向に移動したときに、当該受け面における当該押付面が最も接近する部位の近傍に前記測定対象の被測定量を検出する検出部が配設され、
前記一方の挟み部における前記対向面の前記一部には、当該一方の挟み部の幅方向に沿って延びる第1歯状突起が、前記検出部が配設されている部位の近傍を除いて当該一方の挟み部の長さ方向に複数並設され、
前記受け面は、前記複数の第1歯状突起の先端の包絡面と、当該包絡面よりも凹む凹部として形成される前記一方の挟み部における前記対向面の前記一部のうちの前記検出部が配設されている部位の近傍の部位の表面とで形成されている検出センサ。
【請求項3】
前記複数の第1歯状突起のうちの前記凹部に隣接する第1歯状突起は、断面形状が矩形に形成されている請求項記載の検出センサ。
【請求項4】
前記他方の挟み部の前記回動軸からの長さは、前記一方の挟み部の前記回動軸からの長さよりも短く規定され、
前記未挟持状態において、前記一対のクリップ片が回動して前記押付面が前記受け面方向に移動したときに、当該押付面は当該受け面における前記回動軸寄りの部位に接近する請求項1からのいずれかに記載の検出センサ。
【請求項5】
前記他方の挟み部の前記対向面における前記押付面と前記回動軸との間の部位のうちの当該押付面寄りの部位、および前記一方の挟み部の前記対向面における前記受け面と前記回動軸との間の部位のうちの当該受け面寄りの部位のうちの少なくとも一方に、前記押付面によって前記受け面に押し付けられている前記測定対象の当該受け面から前記回動軸方向への移動を規制する規制部が突設されている請求項1からのいずれかに記載の検出センサ。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の検出センサと、当該検出センサによって検出された前記被測定量についての検出量に基づいて当該被測定量を測定する測定部とを備えている測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対のクリップ片によって測定対象を挟持(クリップ)可能なクリップ状に構成されると共に、測定対象の被測定量を検出する検出部が少なくとも一方のクリップ片内に配設された検出センサ、およびこの検出センサを備えた測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の検出センサとして、下記の非特許文献1に開示された検相器に使用されている電圧センサが知られている。この電圧センサ51は、クリップした測定対象としての測定対象電線Wの被測定量(測定対象電線Wに印加されている電圧(測定対象電線Wに供給されている物理量の一例))を検出するためのものであり、図14に示すように、一端が挟み部52に形成されると共に、他端が摘み部53に形成された第1クリップ片54と、一端が挟み部55に形成されると共に、他端が摘み部56に形成された第2クリップ片57とを備え、各クリップ片54,57が、互いの挟み部52,55同士が対向し、かつ互いの摘み部53,56同士が対向した状態で、回動軸A(各クリップ片54,57の中央に規定された軸)を中心として回動自在に連結されて構成されている。また、各クリップ片54,57内には、挟み部52,55同士が互いに接近するように各クリップ片54,57を常時付勢する不図示のスプリングが配設されている。
【0003】
また、挟み部52,55は互いの長さ(回動軸Aからの長さ)が同じに規定されると共に、挟み部52,55の対向面における先端側には、挟んだ(クリップした)測定対象電線Wの挟み部52,55間での挟み位置を規定し、かつ挟み部52,55間からの測定対象電線Wの抜け出しを防止するための凹部58,59がそれぞれ対向して形成されている。この電圧センサ51では、各凹部58,59は、複数の太さの測定対象電線Wのうちの直径が最大の測定対象電線Wの断面形状(円形)に合わせた円弧状に形成されると共に、挟み部52,55の長さ方向に沿った長さが同じに規定されている。
【0004】
また、挟み部52の内部における凹部58の近傍、および挟み部55の内部における凹部59の近傍の少なくとも一方(本例では両方)には、挟み部52,55間(具体的には、挟み部52,55の凹部58,59間)で挟持される測定対象電線Wと容量結合する電極60,61が配設されている。本例では、電極60は凹部58の中央部の近傍に配設され、また電極61は凹部59の中央部の近傍に配設されている。また、挟み部52,55の側面には、電極60,61の位置を示すためのマーク(一例として三角マーク)62,63が表示されている。
【0005】
この電圧センサ51では、各挟み部52,55が上記のような凹部58,59を有してそれぞれ構成されていることにより、図14に示すように直径の小さな測定対象電線Wであっても、また、図15に示すように直径の大きな測定対象電線Wであっても、測定対象電線Wが各挟み部52,55の凹部58,59に表示されているマーク62,63間に位置決めされた状態で、つまり、測定対象電線Wが電極60,61の近傍に位置決めされた状態で、測定対象電線Wを挟む(クリップする)ことが可能になっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3129,3129−10 検相器 取扱説明書、2009年8月 改訂7版、日置電機株式会社ホームページ、[平成25年2月19日検索]、インターネット<http://www.hioki.com/download/manual/field/3129.3129-10JE_07.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記の電圧センサ51には、以下のような改善すべき課題が存在している。すなわち、この電圧センサ51では、様々な太さの測定対象電線Wを安定して挟むことができるように、各凹部58,59の円弧の直径(この円弧を含む仮想円の直径)を最も太い測定対象電線Wの直径に合わせて規定し、かつ各凹部58,59の長さ(上記したように挟み部52,55の長さ方向に沿った長さ)もこの太い測定対象電線Wの直径を考慮してある程度長く規定している。
【0008】
この構成により、この電圧センサ51では、直径の小さな測定対象電線Wを、マーク62,63間に位置する状態で挟むことも勿論できるが、図16に示すように、マーク62,63から外れた位置(各凹部58,59の長さ方向の各端部近傍の位置)でも容易に挟んで保持する(クリップする)ことが可能になる。したがって、この電圧センサ51には、直径の小さな測定対象電線Wをマーク62,63間に位置する状態で挟めない事態(直径の小さな測定対象電線Wを電極60,61に近接する位置で挟めない事態)が生じる虞があることから、測定対象電線Wの電圧を正確に検出することが困難になることがあるという改善すべき課題が存在している。
【0009】
本発明は、かかる課題を改善すべくなされたものであり、各挟み部で直径の異なる測定対象を、挟み部に配設された検出部に近接する状態で確実に挟持し得る検出センサ、およびこの検出センサを備えた測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく請求項1記載の検出センサは、回動軸を中心として回動自在に連結された一対のクリップ片の揺動する各一端に互いに対向した状態で一対の挟み部が形成され、前記一対の挟み部のうちの一方の挟み部における他方の挟み部との対向面の一部は、直径の異なる複数種類の測定対象を受ける受け面として形成され、前記他方の挟み部における前記一方の挟み部との対向面の一部は、当該他方の挟み部の長さ方向に沿った長さが前記受け面よりも短く規定されると共に当該各挟み部間に位置する前記測定対象の外周面と接触して当該測定対象を前記受け面に押し付ける押付面として形成され、前記測定対象の未挟持状態において前記一対のクリップ片が回動して前記押付面が前記受け面方向に移動したときに、当該受け面における当該押付面が最も接近する部位の近傍に前記測定対象の被測定量を検出する検出部が配設され、前記受け面における前記検出部が配設されている部位の近傍は、前記一方の挟み部を側面視した状態において、当該受け面における他の部位よりも凹む凹部に形成されている
【0013】
また、請求項記載の検出センサは、回動軸を中心として回動自在に連結された一対のクリップ片の揺動する各一端に互いに対向した状態で一対の挟み部が形成され、前記一対の挟み部のうちの一方の挟み部における他方の挟み部との対向面の一部は、直径の異なる複数種類の測定対象を受ける受け面として形成され、前記他方の挟み部における前記一方の挟み部との対向面の一部は、当該他方の挟み部の長さ方向に沿った長さが前記受け面よりも短く規定されると共に当該各挟み部間に位置する前記測定対象の外周面と接触して当該測定対象を前記受け面に押し付ける押付面として形成され、前記測定対象の未挟持状態において前記一対のクリップ片が回動して前記押付面が前記受け面方向に移動したときに、当該受け面における当該押付面が最も接近する部位の近傍に前記測定対象の被測定量を検出する検出部が配設され、前記一方の挟み部における前記対向面の前記一部には、当該一方の挟み部の幅方向に沿って延びる第1歯状突起が、前記検出部が配設されている部位の近傍を除いて当該一方の挟み部の長さ方向に複数並設され、前記受け面は、前記複数の第1歯状突起の先端の包絡面と、当該包絡面よりも凹む凹部として形成される前記一方の挟み部における前記対向面の前記一部のうちの前記検出部が配設されている部位の近傍の部位の表面とで形成されている。
【0014】
また、請求項記載の検出センサは、請求項記載の検出センサにおいて、前記複数の第1歯状突起のうちの前記凹部に隣接する第1歯状突起は、断面形状が矩形に形成されている。
【0018】
また、請求項記載の検出センサは、請求項1からのいずれかに記載の検出センサにおいて、前記他方の挟み部の前記回動軸からの長さは、前記一方の挟み部の前記回動軸からの長さよりも短く規定され、前記未挟持状態において、前記一対のクリップ片が回動して前記押付面が前記受け面方向に移動したときに、当該押付面は当該受け面における前記回動軸寄りの部位に接近する。
【0019】
また、請求項記載の検出センサは、請求項1からのいずれかに記載の検出センサにおいて、前記他方の挟み部の前記対向面における前記押付面と前記回動軸との間の部位のうちの当該押付面寄りの部位、および前記一方の挟み部の前記対向面における前記受け面と前記回動軸との間の部位のうちの当該受け面寄りの部位のうちの少なくとも一方に、前記押付面によって前記受け面に押し付けられている前記測定対象の当該受け面から前記回動軸方向への移動を規制する規制部が突設されている。
【0020】
請求項記載の測定装置は、請求項1からのいずれかに記載の検出センサと、当該検出センサによって検出された前記被測定量についての検出量に基づいて当該被測定量を測定する測定部とを備えている。
【発明の効果】
【0021】
請求項記載の検出センサおよび請求項記載の測定装置によれば、一対のクリップ片の各挟み部間に位置する測定対象を、一方の挟み部に形成された受け面に他方の挟み部に形成された押付面で押し付けて挟持することにより、測定対象を確実に挟持しつつ、各挟み部の少なくとも一方に配設された検出部を直径の異なる複数種類の測定対象のすべてに対して、良好な状態で容量結合させたり、良好な状態で磁束を検出できるようにしたり、良好な状態で温度を検出できるようにしたりして、測定対象の被測定量(例えば、電圧、電流および温度などの物理量など)を良好な状態で検出することができる。したがって、この測定装置によれば、測定部が、検出センサによって検出された測定対象の被測定量についての検出量に基づいて、この被測定量を正確に測定することができる。
【0022】
また、この検出センサおよびの測定装置では、一方の挟み部における他方の挟み部との対向面の一部や、他方の挟み部における一方の挟み部との対向面の一部に凹部が形成されている。したがって、この検出センサおよび測定装置によれば、断面形状が細長い長方形のバスバーのようなものが測定対象であっても、その幅方向に沿った一端や他端が凹部内に位置するようにして一対の挟み部間で挟持(クリップ)することで、測定対象の一端側や他端側の角部が凹部の内面に引っ掛かる状態で、測定対象を挟持することが可能になる。このため、測定対象の一端や他端が一対の挟み部の内側で滑らないように測定対象を挟持することができる。これにより、この検出センサおよび測定装置によれば、断面形状が細長い長方形であることに起因して、測定対象が一対の挟み部の内側で滑って検出部の位置の近傍から外れたり、一対の挟み部間から外れたりするという不具合の発生を確実に防止することができる。
【0023】
請求項記載の検出センサおよび請求項記載の測定装置では、凹部に隣接する第1歯状突起は、断面形状が矩形に形成されている。したがって、この検出センサおよび測定装置によれば、断面形状が三角形となる形状を採用した構成と比較して、断面形状が細長い長方形の測定対象の幅方向に沿った一端や他端の角部の凹部の内面との引っ掛かりがより良好になるため、測定対象が一対の挟み部の内側で滑って大きく位置がずれるという事態の発生をより確実に防止することができる。
【0024】
請求項記載の検出センサおよび請求項記載の測定装置によれば、回動軸から押付面までの距離を短くすることができるため、より強い力で測定対象を挟持することができる。
【0025】
請求項記載の検出センサおよび請求項記載の測定装置によれば、押付面によって受け面に押し付けられている測定対象の受け面から回動軸方向への移動を規制部で規制することができ、検出部を測定対象に対して常に良好な状態で容量結合させたり、常に良好な状態で磁束を検出できるようにしたり、常に良好な状態で温度を検出できるようにしたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】検出センサ1の構成を示す構成図である(中程度の直径の測定対象電線Wを挟持した状態の側面図である)。
図2】検出センサ1の構成を示す構成図である(直径の大きな測定対象電線Wを挟持した状態の側面図である)。
図3】検出センサ1の構成を示す構成図である(小程度の直径の測定対象電線Wを挟持した状態の側面図である)。
図4】検出センサ1の構成を示す構成図である(測定対象電線Wの未挟持状態の側面図である)。
図5】他の検出センサ1Aの構成を示す構成図である(小程度の直径の測定対象電線Wを挟持した状態の側面図である)。
図6】他の検出センサ1Bの構成を示す構成図である(小程度の直径の測定対象電線Wを挟持した状態の側面図である)。
図7】受け面15および押付面16のそれぞれの一部に凹部31,32を形成した構成を示す挟み部11,13の拡大側面図である。
図8図7の構成の検出センサ1の動作を説明するための拡大側面図である。
図9】複数の第1歯状突起33の先端の包絡面を受け面15の一部とし、かつ複数の第2歯状突起34の先端の包絡面を押付面16の一部とすると共に、受け面15および押付面16のそれぞれの一部に各歯状突起33,34を設けないで凹部31,32に形成した構成を示す挟み部11,13の拡大側面図である。
図10図9の構成の検出センサ1の動作を説明するための拡大側面図である。
図11】受け面15および押付面16に各歯状突起33,34を設けた検出センサ1の他の構成を説明するための要部側面図である。
図12】検出センサ1,1A,1Bのいずれかで電圧センサ22および電流センサ23の少なくとも一方が構成された電力計21の構成を示す構成図である。
図13】検出センサ1,1A,1Bのいずれかを備えた測定装置41の構成を示す構成図である。
図14】電圧センサ51の構成を示す構成図である(中程度の直径の測定対象電線Wを挟持した状態の側面図である)。
図15】電圧センサ51の構成を示す構成図である(直径の大きな測定対象電線Wを挟持した状態の側面図である)。
図16】電圧センサ51の構成を示す構成図である(小程度の直径の測定対象電線Wを挟持した状態の側面図である)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、検出センサおよび測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0028】
最初に、検出センサ1の構成について、図面を参照して説明する。
【0029】
検出センサ1は、図1に示すように、一対のクリップ片2,3を備え、測定対象としての測定対象電線Wを挟持(クリップ)可能に構成されている。本例では一例として、一方のクリップ片2は一端が挟み部11に形成されると共に他端が摘み部12に形成され、他方のクリップ片3は一端が挟み部13に形成されると共に他端が摘み部14に形成されて、各クリップ片2,3は、互いの挟み部11,13同士が対向し、かつ互いの摘み部12,14同士が対向した状態で互いの中央部分に規定された回動軸Aを中心として回動自在に連結されている。
【0030】
また、各クリップ片2,3内には、不図示のスプリングが配設されて、挟み部11,13同士が接近する方向に、各クリップ片2,3を常時付勢している。
【0031】
また、クリップ片2,3の各挟み部11,13のうちの一方の挟み部11における他方の挟み部13との対向面の一部は、長尺な円柱体であって直径の異なる複数種類の測定対象電線W(測定対象)の外周面の少なくとも一部と接触して測定対象電線Wを受け止める凹状の受け面15として形成されている。本例では一例として、受け面15は、測定対象として取り扱い得るすべての測定対象電線Wのうちの直径が最大の測定対象電線Wの断面形状(円形)に合わせた円弧状の凹面に形成されると共に、その長さ(挟み部11の長さ方向に沿った長さ)は、図2に示すように、直径が最大の測定対象電線Wを安定して(位置ずれのない状態で)挟持し得るように、この最大直径の測定対象電線Wの全周の少なくとも約1/4程度の長さに規定されている。なお、本例では一例として、受け面15の表面には、図1図3に示すように、全体に亘ってぎざぎざ部が形成されているが、ぎざぎざ部を省略することもできる。
【0032】
一方、他方の挟み部13における一方の挟み部11との対向面の一部は、挟み部11,13間に位置している測定対象電線Wを、挟み部11の受け面15に押し付ける押付面16として形成されている。また本例では一例として、押付面16は、直径が最大の測定対象電線Wの断面形状(円形)に合わせた円弧状の凹面に形成されると共に、その長さ(挟み部13の長さ方向に沿った長さ)は受け面15よりも短く規定されている(一例として受け面15の約1/3の長さ)。なお、本例では一例として、押付面16の表面には、図1図3に示すように、全体に亘ってぎざぎざ部が形成されているが、ぎざぎざ部を省略することもできる。
【0033】
なお、後述するように、押付面16によって受け面15に押し付けられた測定対象電線Wは、受け面15が上記のような凹状に形成されていることにより、受け面15によって安定した状態で受け止められる。これにより、測定対象電線Wは、受け面15から外れずに受け面15と押付面16との間で安定して挟持される。このため、押付面16は、測定対象電線Wの外周面と接触する部位の面積がある程度確保できるのであれば、上記の凹面に形成する構成に限定されず、例えば、平面に形成する構成や、さらには凸面に形成する構成を採用することもできる。
【0034】
また、挟み部13の長さ(回動軸Aからの長さ)は、挟み部11の長さ(回動軸Aからの長さ)よりも短く規定されている。また、受け面15は、挟み部11の挟み部13との対向面(同図中における上面)における挟み部11の先端側(回動軸Aとは逆側の端部)の部位に形成され、押付面16は、挟み部13の挟み部11との対向面(同図中における下面)における挟み部13の先端側(回動軸Aとは逆側の端部)の部位に形成されている。
【0035】
この構成の検出センサ1では、図2に示すように、直径の大きな測定対象電線Wを挟み部11,13間で挟持している状態においては、押付面16は、受け面15の中央領域にほぼ正対している状態になっているが、測定対象電線Wの直径が小さくなるに従い、挟み部11,13同士が接近するようにクリップ片2に対してクリップ片3が回動する。このため、押付面16は、図1,3に示すように、受け面15のうちの回動軸A寄りの部位に徐々に接近し、図4に示す測定対象電線Wの未挟持状態においては、受け面15のこの回動軸A寄りの部位Xに最も接近した状態(接する状態の場合もある)に移行する。
【0036】
また、挟み部11,13同士が接近するようにクリップ片3がクリップ片2に対して回動するのに伴い、図1図3に示すように、測定対象電線Wの外周面における押付面16との接点Bと測定対象電線Wの中心点Cとを含む半直線LNが受け面15と交差する点(交差点)Dは、徐々に回動軸A方向へ移動する。つまり、押付面16と受け面15との間で挟持される測定対象電線Wの受け面15内における位置は、測定対象電線Wの直径が小さくなるに従い、回動軸A方向へ移動する。言い替えれば、押付面16と受け面15との間で挟持される測定対象電線Wの受け面15内における位置は、測定対象電線Wの直径が大きくなるに従い、挟み部11の先端方向に移動する。
【0037】
しかしながら、本例では、種々の直径の測定対象電線Wを挟持した場合であっても、この交差点Dの位置、つまり、受け面15が測定対象電線Wから最も多くの力を受ける点が、受け面15の長さ方向に沿った各端部(クリップ片2における先端部側の端部と回動軸A側の端部)に達したり、さらには受け面15から外れたりしないように、挟み部11,13の長さ、受け面15および押付面16の長さ、並びに挟み部11,13における対向面上での受け面15および押付面16の位置が予め規定されている。したがって、検出センサ1は、この構成と受け面15が凹状に形成されている構成とにより、押付面16によって受け面15に押し付けられた測定対象電線Wが受け面15から外れない状態で安定して挟持することが可能になっている。
【0038】
また、上記したように、押付面16と受け面15との間で挟持される測定対象電線Wの受け面15内での位置は、測定対象電線Wの直径が小さくなるに従い、押付面16の位置に伴って回動軸A方向へ移動する。このため、本例では、このような直径の小さな測定対象電線Wについても、測定対象電線Wとの間の距離ができる限り短くなるように、挟み部11の内部であって、測定対象電線Wの未挟持状態においてクリップ片3がクリップ片2に対して回動して押付面16が受け面15方向に移動したときに、受け面15における押付面16が最も接近する上記の部位X(本例では、最も回動軸A寄りの部位X)の近傍に検出部18が配設されている。また、挟み部11の外面(本例では側面)には、内蔵されている検出部18の位置を示すためのマーク(一例として三角マーク)19が表示されている。
【0039】
この場合、検出部18は、測定対象の被測定量(本例では一例として、測定対象電線Wに供給されている物理量(電圧および電流のいずれか))を検出するための部品であり、例えば、物理量が電圧の場合には、測定対象電線Wの導体と容量結合する電極などの非接触の状態で電圧を検出する非接触型の電圧検出素子で構成され、一方、物理量が電流の場合には、ホール素子などの測定対象電線Wに対して非接触の状態で電流を検出する非接触型の電流検出素子で構成される。したがって、検出センサ1は、検出部18がこのような電極で構成されたときには、電圧センサとして構成され、検出部18がこのような電流検出素子で構成されたときには、電流センサとして構成される。
【0040】
また、本例では、各挟み部11,13間に導入された測定対象電線Wが、挟持前の状態において、誤って受け面15および押付面16よりも奥側に移動するのを防止するために、挟み部13の対向面における押付面16と回動軸Aとの間の部位のうちの押付面16寄りの部位、および挟み部11の対向面における受け面15と回動軸Aとの間の部位のうちの受け面15寄りの部位のうちの少なくとも一方(本例では一例として、挟み部13の挟み部11との対向面のみ)に、押付面16によって受け面15に押し付けられている測定対象電線Wの受け面15から回動軸A方向への移動を規制する規制部17を突設する好ましい構成を採用している。なお、この規制部17は、上記したように、挟み部11の挟み部13との対向面にのみ突設させる構成や、挟み部11,13の双方の対向面に突設させる構成を採用することもできるし、各挟み部11,13のいずれにも設けない構成を採用することもできる。
【0041】
次いで、測定対象電線Wを挟持(クリップ)したときの検出センサ1の動作について説明する。
【0042】
まず、一対のクリップ片2,3の各摘み部12,14を摘まんで、スプリングの付勢力に抗して各摘み部12,14を近づける。これにより、クリップ片3がクリップ片2に対して相対的に回動して、挟み部11,13同士が離反する。次いで、離反している挟み部11,13間に測定対象電線Wを導入し、この状態において、摘まんでいた各摘み部12,14を離す。これにより、クリップ片3がクリップ片2に対してスプリングの付勢力で相対的に逆方向に回動して、挟み部11,13同士が接近する。この結果、検出センサ1は、挟み部11の受け面15と挟み部13の押付面16との間で測定対象電線Wを挟持する。
【0043】
測定対象電線Wの挟持状態において、この測定対象電線Wの直径が大きいときには、図2に示すように、挟み部11に形成されている受け面15は、その長さ方向において、測定対象電線Wの外周面と長い距離に亘って接触した状態になる。このため、検出センサ1は、受け面15と押付面16との間で、測定対象電線Wをぶれの少ない状態で挟持する。また、これにより、測定対象電線Wは、受け面15の回動軸A寄りの部位に近接した状態で挟み部11の内部に配設された検出部18と近接する状態になっている。このため、検出部18は、電極で構成されているときには測定対象電線Wと良好な状態で容量結合することから、また電流検出素子で構成されているときには測定対象電線Wからの磁束を良好な状態で検出することから、検出センサ1は、挟み部11,13間で測定対象電線Wを安定して挟持しつつ、測定対象電線Wに供給されている物理量(測定対象電線Wに印加されている電圧または測定対象電線Wに流れている電流)を良好な状態で検出することが可能になっている。
【0044】
また、測定対象電線Wの挟持状態において、この測定対象電線Wの直径が中程度から小程度のときには、図1図3に示すように、測定対象電線Wは、押付面16と共に受け面15の回動軸A寄りの部位に移動して、この部位において押付面16と受け面15とで挟持される。これにより、測定対象電線Wは、挟み部11の内部に配設された検出部18と近接する状態になっている。このため、検出部18は、電極で構成されているときには測定対象電線Wと良好な状態で容量結合することから、また電流検出素子で構成されているときには測定対象電線Wからの磁束を良好な状態で検出することから、検出センサ1は、挟み部11,13間で測定対象電線Wを安定して挟持しつつ、測定対象電線Wに供給されている物理量(測定対象電線Wに印加されている電圧または測定対象電線Wに流れている電流)を良好な状態で検出することが可能になっている。
【0045】
この場合、直径が小さい測定対象電線Wは、受け面15が測定対象電線Wの最大の直径を考慮した大きめの円弧に形成されていることから、図3において破線で示すように、押付面16における長さ方向(挟み部13の長さ方向に沿った方向)の中心位置を基準として、押付面16の長さ方向に沿って前後にずれた状態で挟持される場合もある。しかしながら、この検出センサ1では、押付面16自体の挟み部13の長さ方向に沿った長さが、背景技術で説明した電圧センサとは異なり、受け面15の挟み部11の長さ方向に沿った長さよりも十分に短い長さに規定されている。
【0046】
このため、押付面16の長さの範囲内で測定対象電線Wの挟持位置がずれた場合であっても、図3に示すように、測定対象電線Wが検出部18と近接して位置する状態が維持される。したがって、検出部18は、直径が小さい測定対象電線Wについても、この測定対象電線Wと良好な状態で容量結合したり、測定対象電線Wからの磁束を良好な状態で検出したりすることから、検出センサ1は、測定対象電線Wに供給されている物理量を良好な状態で検出することが可能になっている。
【0047】
このように、この検出センサ1では、一方の挟み部11における他方の挟み部13との対向面の一部は、直径の異なる複数種類の測定対象電線Wの外周面と接触可能な凹状の受け面15(本例では、直径が最大の測定対象電線Wの断面形状に合わせた円弧状の凹面)として形成され、他方の挟み部13における一方の挟み部11との対向面の一部は、挟み部13の長さ方向に沿った長さが受け面15よりも短く規定されると共に各挟み部1,13間に位置する測定対象電線Wの外周面と接触して測定対象電線Wを受け面15に押し付ける押付面16として形成され、測定対象電線Wに供給されている物理量を検出する検出部18が、挟み部11の内部であって、測定対象電線Wの未挟持状態において一対のクリップ片2,3が回動(相対的に回動)して押付面16が受け面15の方向に移動したときに、受け面15における押付面16が最も接近する部位Xの内側に配設されている。
【0048】
したがって、この検出センサ1によれば、各挟み部11,13間に位置する測定対象電線Wを、挟み部11の凹状に形成された受け面15に挟み部13に形成された押付面16で押し付けて挟持することにより、測定対象電線Wを確実に挟持しつつ、挟み部11に配設された検出部18を測定対象として取り扱い得る直径の異なる複数種類の測定対象電線Wのすべてに対して良好な状態で容量結合させたり、良好な状態で磁束を検出できるようにさせたりできる結果、測定対象電線Wに供給されている物理量を良好な状態で検出することができる。
【0049】
また、この検出センサ1では、上記したように、他方の挟み部13の回動軸Aからの長さを一方の挟み部11の回動軸Aからの長さよりも短く規定し、測定対象電線Wの未挟持状態において、一対のクリップ片2,3が回動して押付面16が受け面15の方向に移動したときに、押付面16が受け面15における回動軸A寄りの部位に接近する構成(以下では、第1の構成ともいう)を採用しているが、測定対象電線Wの未挟持状態において、押付面16が、受け面15における中央部位に接近する構成(以下では、第2の構成ともいう)や、さらには受け面15における挟み部11の先端寄りの部位に接近する構成(以下では、第3の構成ともいう)を採用することもできる。この第2の構成および第3の構成においても、挟み部11における押付面16が接近する部位の近傍に検出部18を配設することで、第1の構成と同様にして、挟み部11,13間で測定対象電線Wを確実に挟持しつつ、挟み部11に配設された検出部18を様々な直径の測定対象電線Wに対して良好な状態で容量結合させたり、良好な状態で磁束を検出できるようにさせたりできる結果、測定対象電線Wに供給されている物理量を良好な状態で検出することができる。
【0050】
ただし、第1の構成では、第2の構成および第3の構成と比較して、回動軸Aから押付面16までの距離を最も短くすることができるため、同じ付勢力のスプリングを使用しつつ、より強い力で測定対象電線Wを挟持することができる。
【0051】
また、この検出センサ1によれば、他方の挟み部13の対向面における押付面16と回動軸Aとの間の部位のうちの押付面16寄りの部位、および一方の挟み部11の対向面における受け面15と回動軸Aとの間の部位のうちの受け面15寄りの部位のうちの少なくとも一方に規制部17が突設されているため、押付面16によって受け面15に押し付けられている測定対象電線Wの受け面15から回動軸A方向への移動を規制することができ、検出部18を測定対象電線Wに対して常に良好な状態で容量結合させたり、常に良好な状態で磁束を検出できるようにさせたりすることができる。
【0052】
なお、上記の例では、一方の挟み部11にのみ検出部18を配設する構成を採用しているが、背景技術で説明した電圧センサと同様にして、他方の挟み部13側にも検出部18を配設する構成を採用したり、他方の挟み部13側にのみ検出部18を配設する構成を採用したりすることもできる。このように他方の挟み部13側に検出部18を配設する場合には、図1において破線で示すように、他方の挟み部13の内部であって、押付面16における長さ方向のいずれかの部位の近傍、好ましくは中央部位の近傍に検出部18を配設する。また、この場合には、上記のマーク(一例として三角マーク)についても表示するのが好ましい。
【0053】
この構成により、測定対象として取り扱い得るすべての測定対象電線Wのうちの直径が最小の測定対象電線Wが押付面16のこの領域内において押付面16の長さ方向に沿って位置ずれしたとしても、検出部18は、電極で構成されているときには測定対象電線Wとの間において十分に容量結合したり、電流検出素子で構成されているときにはこの測定対象電線Wからの磁束を十分に検出したりすることが可能になる。すなわち、この検出部18は、直径の異なるすべての測定対象電線Wとの間において良好な状態で容量結合したり、測定対象電線Wからの磁束を十分に検出したりすることが可能になる。
【0054】
したがって、この挟み部13側に検出部18を配設した検出センサ1においても、各挟み部11,13間に位置する測定対象電線Wを、挟み部11の凹状に形成された受け面15に挟み部13に形成された押付面16で押し付けて挟持することにより、測定対象電線Wを確実に挟持しつつ、挟み部13に配設された検出部18を測定対象になる直径の異なる複数種類の測定対象電線Wのすべてに対して常に良好な状態で容量結合させたり、常に良好な状態で磁束を検出できるようにさせたりすることができる結果、測定対象電線Wに供給されている物理量を良好な状態で検出することができる。
【0055】
なお、上記の検出センサ1では、受け面15および押付面16は、測定対象電線Wの一般的な断面形状である円形に合わせて円弧状に形成されているが、この構成に限定されるものではなく、く字状(またはL字状)またはコ字状の凹状に形成することもできる。例えば図5に示す検出センサ1Aのクリップ片2A,3Aのように、受け面15をコ字状に形成すると共に、押付面16をく字状(またはL字状)に形成することもできる。なお、検出センサ1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略した。
【0056】
また、上記の検出センサ1,1Aでは、クリップ片2を、挟み部11および摘み部12を有する構成とし、クリップ片3を、挟み部13および摘み部14を有する構成としているが、図6に示す検出センサ1Bのように、摘み部12を省いて挟み部11だけでクリップ片2Bを構成し、摘み部14を省いて挟み部13だけでクリップ片3Bを構成することもできる。なお、検出センサ1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略した。
【0057】
また、上記の検出センサ1,1A,1Bでは、断面形状が円形の電線を測定対象電線Wとしているが、バスバーのような断面形状が細長い長方形の電線(金属製の棒状体)を測定対象とする場合もある。この場合、バスバーを検出センサ1,1A,1Bで挟持(クリップ)したときには、上記したようなバスバーの断面形状に起因して、バスバーが挟み部11,13の内側で滑って検出部18の位置の近傍から外れたり、挟み部11,13間から外れたりするという不具合が生じる虞がある。
【0058】
以下、この不具合を解消し得る構成について、図7図11を参照して説明する。一例としてこの構成を上記の検出センサ1に適用した例を挙げて説明するが、検出センサ1と同一の構成については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、検出センサ1に代えて、上記の検出センサ1A,1Bに適用してもよいのは勿論である。
【0059】
図7に示す検出センサ1では、クリップ片2側の一方の挟み部11の内部に検出部18が配設されると共に、クリップ片3側の他方の挟み部13の内部にも他の検出部18が配設されている構成において、一方の挟み部11における他方の挟み部13との対向面の一部に形成された受け面15における検出部18が配設されている部位の近傍(受け面15の領域E)が、一方の挟み部11を同図のように側面視した状態において、受け面15における他の部位(受け面15の領域F)よりも凹む凹部31に形成されている。また、他方の挟み部13における一方の挟み部11との対向面の一部に形成された押付面16における他の検出部18が配設されている部位の近傍(押付面16の領域G)が、他方の挟み部13を同図のように側面視した状態において、押付面16における他の部位(押付面16の領域H)よりも凹む凹部32に形成されている。
【0060】
この図7に示す検出センサ1では、凹部31の一方の挟み部11の長さ方向(同図中の左右方向)に沿った長さ、および凹部32の他方の挟み部13の長さ方向(同図中の左右方向)に沿った長さが、図8に示すように、バスバーのような断面形状が細長い長方形の測定対象電線Wの厚みTよりも若干長く形成されている。これにより、この測定対象電線Wの幅方向(同図中の上下方向)に沿った一端(下端)が凹部31内に位置し、かつこの幅方向(同図中の上下方向)に沿った他端(上端)が凹部32内に位置するようにして、測定対象電線Wを挟み部11,13間で挟持(クリップ)することで、測定対象電線Wの一端側および他端側の角部が凹部31,32の内面に引っ掛かる状態で、測定対象電線Wを挟持することが可能になる。このため、測定対象電線Wの一端および他端が挟み部11,13の内側で滑らないように測定対象電線Wを挟持(クリップ)することができる。
【0061】
したがって、この図8に示す検出センサ1によれば、断面形状が細長い長方形であることに起因して、測定対象電線Wが挟み部11,13の内側で滑って検出部18の位置の近傍から外れたり、挟み部11,13間から外れたりするという不具合の発生を確実に防止することができる。なお、このように受け面15に凹部31が形成され、かつ押付面16に凹部32が形成された検出センサ1においても、凹部31,32が形成されていない構成の検出センサ1と同様にして、図8において一点鎖線で示すように、断面円形の測定対象(本例では測定対象電線W)を挟み部11の受け面15と挟み部13の押付面16との間で挟持(クリップ)することが可能になっている。
【0062】
また、図7に示す検出センサ1では、挟み部11,13の双方に凹部31,32を形成する構成を採用しているが、この挟み部11,13のうちの挟持(クリップ)した測定対象電線W(断面形状が細長い長方形の測定対象電線W)との間で滑りがより生じやすい一方にのみ凹部を形成する構成を採用することもできる。
【0063】
また、図9に示す他の検出センサ1では、クリップ片2側の一方の挟み部11の内部に検出部18が配設されると共に、クリップ片3側の他方の挟み部13の内部にも他の検出部18が配設されている構成において、一方の挟み部11における他方の挟み部13との対向面の一部には、一方の挟み部11の幅方向(図9における紙面に対して前後方向)に沿って延びる第1歯状突起33が、検出部18が配設されている部位の近傍(一方の挟み部11における対向面の領域J)を除いて、一方の挟み部11における対向面の領域Kに、一方の挟み部11の長さ方向に沿って複数並設されている。また、この構成の検出センサ1では、受け面15は、複数の第1歯状突起33の先端の包絡面(図9において破線で示すように、各第1歯状突起33の先端と接する曲面(各第1歯状突起33の先端を結ぶ曲面))、およびこの包絡面よりも凹む凹部31として形成される一方の挟み部11における対向面の一部のうちの検出部18が配設されている部位の近傍の部位(領域J)で形成されている
【0064】
また、この図9に示す検出センサ1では、他方の挟み部13における一方の挟み部11との対向面の一部には、他方の挟み部13の幅方向(図9における紙面に対して前後方向)に沿って延びる第2歯状突起34が、他の検出部18が配設されている部位の近傍(他方の挟み部13における対向面の領域L)を除いて、他方の挟み部13における対向面の領域Mに、他方の挟み部13の長さ方向に沿って複数並設されている。この構成の検出センサ1では、押付面16は、複数の第2歯状突起34の先端の包絡面(図9において破線で示すように、各第2歯状突起34の先端と接する曲面(各第2歯状突起34の先端を結ぶ曲面))、およびこの包絡面よりも凹む凹部32として形成される他方の挟み部13における対向面の一部のうちの他の検出部18が配設されている部位の近傍の部位(領域L)で形成されている。
【0065】
この図9に示す検出センサ1では、凹部31の一方の挟み部11の長さ方向(同図中の左右方向)に沿った長さ、および凹部32の他方の挟み部13の長さ方向(同図中の左右方向)に沿った長さが、図10に示すように、断面形状が細長い長方形の測定対象電線Wの厚みTよりも若干長く形成されている。これにより、この測定対象電線Wの幅方向(同図中の上下方向)に沿った一端(下端)が凹部31内に位置し、かつこの幅方向(同図中の上下方向)に沿った他端(上端)が凹部32内に位置するようにして、測定対象電線Wを挟み部11,13間で挟持(クリップ)することで、測定対象電線Wの一端側および他端側の角部が凹部31,32の内面に引っ掛かる状態で、測定対象電線Wを挟持することが可能になる。このため、測定対象電線Wの一端および他端が挟み部11,13の内側で滑らないように測定対象電線Wを挟持(クリップ)することができる。
【0066】
したがって、この図9に示す検出センサ1によれば、断面形状が細長い長方形であることに起因して、測定対象電線Wが挟み部11,13の内側で滑って検出部18の位置の近傍から外れたり、挟み部11,13間から外れたりするという不具合の発生を確実に防止することができる。なお、このように受け面15に凹部31が形成され、かつ押付面16に凹部32が形成された検出センサ1においても、凹部31,32が形成されていない構成の検出センサ1と同様にして、図10において一点鎖線で示すように、断面円形の測定対象(本例では測定対象電線W)を挟み部11の受け面15と挟み部13の押付面16との間で挟持(クリップ)することが可能になっている。
【0067】
また、図9に示す検出センサ1では、挟み部11,13の双方に凹部31,32を形成する構成を採用しているが、この挟み部11,13のうちの挟持(クリップ)した測定対象電線W(断面形状が細長い長方形の測定対象電線W)との間で滑りがより生じやすい一方においてのみ、歯状突起を形成しない領域(挟み部11の領域Jや挟み部12の領域L)を設けて凹部を形成する構成を採用することもできる。
【0068】
また、図9に示す構成の検出センサ1でのクリップ片2側の挟み部11における第1歯状突起33、およびクリップ片3側の挟み部13における第2歯状突起34の各形状は、歯状突起33,34の長さ方向(紙面に対して前後方向)と直交する方向に沿った断面形状が三角形となる形状(鋸歯形状)や、歯状突起33,34の長さ方向と直交する方向に沿った断面形状が矩形となる形状など種々の形状を採用することができるが、図11に示すように、挟み部11側の凹部31に隣接する第1歯状突起33(斜線を付した突起)、および挟み部13側の凹部32に隣接する第2歯状突起34(斜線を付した突起)については、上記の断面形状が矩形となる形状にするのが好ましい。この構成を採用した検出センサ1によれば、断面形状が三角形となる形状を採用した構成と比較して、バスバーのような断面形状が細長い長方形の測定対象電線W(図11では図示せず)を、その幅方向に沿った一端が凹部31内に位置し、かつ他端が凹部32内に位置するようにして、挟み部11,13間で挟持(クリップ)した際の測定対象電線Wの各端の角部の凹部31,32の内面との引っ掛かりがより良好になるため、測定対象電線Wが挟み部11,13の内側で滑って大きく位置がずれるという事態の発生をより確実に防止することができる。
【0069】
なお、図11では、凹部31に隣接する2つの第1歯状突起33、および凹部32に隣接する2つの第2歯状突起34の断面形状を矩形に形成しているが、これに限定されるものではなく、凹部31,32のうちの測定対象電線Wの端部の角部との引っ掛かりをより良好にすべき一方のみにおいて、その第1歯状突起33または第2歯状突起34の断面形状を矩形とする構成を採用してもよいのは勿論である。
【0070】
また、上記の例では、凹部31に隣接する2つの第1歯状突起33、および凹部32に隣接する2つの第2歯状突起34の断面形状を矩形に形成しているが、凹部31に隣接する2つの第1歯状突起33のうちの一方のみの断面形状を矩形とする構成や、凹部32に隣接する2つの第2歯状突起34のうちの一方のみの断面形状を矩形とする構成を採用することもできる。
【0071】
また、上記の検出センサ1,1A,1Bについては、電極で検出部18を構成して電圧センサとすることで、背景技術で述べたような検相器用の電圧センサとして使用することもできる。また、電極で検出部18を構成して電圧センサとしたり、電流検出素子で検出部18を構成して電流センサとしたりすることにより、図12に示す構成を備えた測定装置としての電力計21用の電圧センサ22や電流センサ23として使用することもできる。
【0072】
この電力計21では、検出センサ1,1A,1Bのいずれかで電圧センサ22を構成したときには、例えば、この電圧センサ22に、外部から供給される基準電位Vfと測定対象電線Wの電圧との間の電位差に応じた電圧信号Vvを検出して出力する電気回路(差動増幅器などで構成される電気回路)を配設し、処理部24が、基準電位Vfを生成して電圧センサ22に出力しつつ、入力している電圧信号Vvの電圧がゼロに近づくように基準電位Vfの電圧を制御することで、測定対象電線Wの電圧を検出する。なお、測定対象電線Wの電圧を非接触または接触して検出する他の方法を採用してもよいのは勿論である。また、電流センサ23には、測定対象電線Wに供給されている電流の電流値に応じた電圧値の電圧信号Viを出力する公知の電流センサを使用する。なお、測定対象電線Wの電流を非接触または接触して検出する他の方法を採用してもよいのは勿論である。
【0073】
これにより、この電力計21では、処理部24は、電圧信号Vvの電圧がゼロ(測定対象電線Wの電圧との間の電位差がゼロ)になったときの基準電位Vfの電圧(つまり、測定対象電線Wの電圧)と、電流センサ23から出力される電圧信号Viで示される測定対象電線Wに流れる電流とに基づいて、測定対象電線Wに供給されている電力Pを算出して、算出した電力Pを出力部25に出力する。この場合、出力部25をLCDなどの表示装置で構成したときには、測定された電力Pが表示装置に表示される。
【0074】
したがって、この電力計21によれば、検出センサ1,1A,1Bのいずれかで電圧センサ22を構成したことにより、測定対象として取り扱い得る直径の異なる複数種類の測定対象電線Wのすべてに対して検出部18を良好な状態で容量結合させることができる結果、測定対象電線Wに供給されている電圧を良好な状態で検出することができ、これによって測定対象電線Wに供給されている電力Pを高い精度で測定することができる。
【0075】
また、この電力計21において、検出センサ1,1A,1Bのいずれかで電流センサ23を構成したときには、電流センサ23の検出部18としての電流検出素子から、測定対象電線Wに供給されている電流の電流値に応じた電圧値の電圧信号Viが出力される。また、電圧センサ22としては、上記のように検出センサ1,1A,1Bのいずれかを使用して構成された電圧センサや、公知の他の方法によって測定対象電線Wの電圧を検出する電圧センサを採用する。また、処理部24は、電圧センサ22から出力される電圧信号Vvと、電流センサ23から出力される電圧信号Viとに基づいて、測定対象電線Wの電力Pを算出し、算出した電力Pを出力部25に出力する。
【0076】
したがって、この電力計21によれば、検出センサ1,1A,1Bのいずれかで電流センサ23を構成したことにより、測定対象として取り扱い得る直径の異なる複数種類の測定対象電線Wのすべてに対して、測定対象電線Wからの磁束を検出部18において良好に検出することができる結果、測定対象電線Wに供給されている電流を良好な状態で検出することができ、これによって測定対象電線Wに供給されている電力Pを高い精度で測定することができる。
【0077】
なお、上記の例では、検出部18を電極で構成して検出センサ1,1A,1Bを電圧センサとし、検出部18を電流検出素子で構成して検出センサ1,1A,1Bを電流センサとして、この両センサを電力計21に使用しているが、図13に示すように、検出センサ1,1A,1Bのうちのいずれか1つを使用して測定装置41を構成することもできる。
【0078】
この場合、検出センサ1,1A,1Bは、この検出センサ1,1A,1Bによって検出された検出量に基づいて被測定量を測定する測定部42と組み合わせて測定装置41として構成する。この測定装置41では、検出部18を物理量センサ(電流センサ、電圧センサ、温度センサおよび流量センサなどのうちの少なくとも1つ)として、電流、電圧、温度および流量などの物理量のうちの少なくとも1つを被測定量として測定したり、検出部18を化学量センサ(密度センサおよび成分センサなどのうちの少なくとも1つ)として、密度や成分など化学量のうちの1つを被測定量として測定することができる。
【0079】
なお、検出部18に温度検出素子を使用して、検出センサ1,1A,1Bを温度センサとしたときには、測定対象が受け面15と押付面16との間で挟持されている状態において、温度検出素子は測定対象の温度を良好に検出し得る範囲内で測定対象の近傍に配設されていれば十分であるが、温度検出素子が測定対象の温度をより正確に検出し得るように、温度検出素子を受け面の表面や押付面の表面に配設して測定対象に接触させる構成を採用するのが好ましい。
【0080】
また、測定対象として測定対象電線Wを例に挙げて説明したが、水道管やガス管などを測定対象として、水道管に流れる水の流量や温度を測定したり、ガス管に流れるガスの流量や温度を測定したりする検出センサにも、上記の検出センサ1,1A,1Bを適用することができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0081】
1,1A,1B 検出センサ
2,3 クリップ片
11,13 挟み部
12,14 摘み部
15 受け面
16 押付面
17 規制部
18 検出部
21 電力計
22 電圧センサ
23 電流センサ
A 回動軸
P 電力
W 測定対象電線
図1
図2
図3
図4
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