(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、医療・介護分野においては、患者や要介護者等の被介護者を椅子やベッド上から車椅子や便座などに移乗させる際、被介護者の立ち上がり動作を補助したり、介護者の労力負担を低減させたりする手段として、移乗機と呼ばれる移動介護機器が使用されている。また、近年では、特許文献2,3のように、電動アクチュエータ等を用いることにより機器の電動化を図り、介護者の労力負担をさらに低減したものも提案されている。
【0003】
図5は、従来の手動(人力駆動)の移乗機51における介助動作を示す説明図である。
図5に示すように、移乗機51では、まず、起立状態にあるシート52(
図5(a))を被介護者53側に傾ける(
図5(b))。次に、被介護者53が上半身をシート52上に倒し、シート上方に両脇が掛かる程度の位置に両腕を置く(同(c))。その状態で、介護者がフットペダル54を踏みつつ、被介護者53の上半身を引き付け、フットペダル54をターンテーブル55上に戻し、倒れ防止フック56を掛ける(同(d))。そして、ターンテーブル55を回し、車椅子等の移乗先器具57に対応して、被介護者53の向きを転換する(同(e))。
【0004】
被介護者53の向きを変えた後、フットペダル54を踏みつつ、倒れ防止フック56を解除する。その後、被介護者53の背中あたりを支えながらフットペダル54を踏む力を徐々に緩め、シート52を移乗先器具57側に倒して行き、被介護者53を移乗先器具57上に座らせる(同(f))。移乗先器具57上に座った被介護者53は、両腕をシート52から外し、上半身を起こす(同(g))。そして、シート52を元の起立位置に戻し、倒れ防止フック56を掛け、一連の介助動作を終了する(同(h))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図5に示すように、従来の手動の移乗機51では、被介護者53をシート52に乗せて起こす際、介護者がフットペダル54を踏み込みながら被介護者53を引き上げる必要がある。このため、介護者は片足をフットペダル54に載せた状態で被介護者53を引き上げなければならず、片足作業を余儀なくされ、介護者・被介護者共に不安定さを感じるという問題があった。特に介護者が小柄な女性の場合、体重の重い被介護者を起こすとき、全体重をフットペダル54に掛けなければならず、さらに不安定な姿勢の作業となるという問題があった。また、被介護者を起こす際、介護者は、移乗機51を挟んで被介護者の頭越しに介助作業を行う形になるため、被介護者が転倒しそうになったとき対処が取りにくいという問題もあり、このような不安定な状態は、被介護者を移乗先に着座させる際も同様であった。
【0007】
一方、電動の移乗機においては、アクチュエータの補助力により、作業負担が大きく軽減され、小柄な女性でも安定した形で介助作業を行うことができる。しかしながら、電動アクチュエータを用いた移乗機では、通常、被介護者を移乗させる一連の動作を全てアクチュエータ駆動にて行うため、介助作業に時間がかかるという問題があった。移乗機においてアクチュエータ駆動が必要となるのは、
図5(d),(f)のように、被介護者をシートに乗せて引き上げたり、着座させたりする作業の間のみであり、シートを被介護者側に倒したり、被介護者側から起こしたりする動作は、むしろ手動の方が作業を手早く行うことができ効率が良い。このため、電動の移乗機は確かに労力負担の軽減に資するところは大きいものの、シートが被介護者側や元の位置に向けてゆっくり動く動作は、介護者にとっては却って煩わしく、多忙時などには、装置の動作が疎ましく感じられることがあるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、介護者の労力軽減等を図るべく、電動のリニアアクチュエータを用いて移乗機を電動化し、さらに、特別な切替操作や準備等を行うことなく、手動と電動を適宜選択使用可能な電動移乗機を提供し、被介護者のスムーズな移乗を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動移乗機は、床上に載置され、床面と略平行に回転可能なターンテーブルと、前記ターンテーブル上に立設され、該ターンテーブルに対し略垂直な起立位置と、該起立位置から所定角度傾いた傾斜位置との間で起倒可能な可動ロッドと、前記可動ロッド上端に設けられ、被介護者の身体を支えるシートと、電動モータによって駆動され、前記可動ロッドを前記起立位置と前記傾斜位置との間にて起倒させる駆動力を付与するリニアアクチュエータと、を備えてなる電動移乗機であって、前記リニアアクチュエータは、一端側が前記可動ロッドに取り付けられ、他端側が前記ターンテーブルに対し軸方向に沿って相対的に移動可能に取り付けられることを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、可動ロッドを起立位置と傾斜位置との間で起倒させる駆動力をリニアアクチュエータによって付与する。また、リニアアクチュエータの一端側を可動ロッドに取り付けると共に、他端側をターンテーブルに対し軸方向に沿って相対的に移動可能に取り付ける。これにより、移乗機において補助力が必要とされる場面、すなわち、被介護者の引き上げや着座の間のみリニアアクチュエータの駆動力を利用し、素早い動きが好まれるシートの起倒操作は手動にて行うことが可能となる。
【0011】
前記電動移乗機において、前記リニアアクチュエータが、前記可動ロッドを前記起立位置と前記傾斜位置との間で起倒させる際に、前記ターンテーブルに対し軸方向に沿って相対的に移動するようにしても良い。また、前記リニアアクチュエータの他端側に、前記電動モータの作動に伴って伸縮する伸縮ロッドを設け、該伸縮ロッドを、前記ターンテーブルに対し軸方向に沿って相対的に移動可能に配置しても良い。さらに、前記リニアアクチュエータの前記一端側を、前記可動ロッドに設けられた第1ブラケットに揺動可能に取り付け、前記伸縮ロッドの先端部に、軸方向に沿って延びる接続ロッドを取り付け、該接続ロッドを、前記ターンテーブルに固定された第2ブラケットに、軸方向に沿って相対的に移動可能に取り付けても良い。
【0012】
加えて、前記接続ロッドに軸方向に沿って延在する長孔を形成し、該長孔に、前記第2ブラケットに固定されたピン部材を軸方向に沿って移動自在に挿入し、前記ピン部材が前記長孔内を移動することにより、前記リニアアクチュエータの前記他端側が前記ターンテーブルに対し軸方向に沿って相対的に移動するようにしても良い。その場合、前記可動ロッドを前記起立位置と前記傾斜位置との間で起倒させる際に、前記ピン部材が前記長孔内を移動するようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動移乗機によれば、可動ロッドを起立位置と傾斜位置との間で起倒させる駆動力をリニアアクチュエータによって付与し、介護者の労力軽減を図る一方、リニアアクチュエータの一端側を可動ロッドに取り付けると共に、他端側をターンテーブルに対し軸方向に沿って相対的に移動可能に取り付けることにより、移乗機において補助力が必要とされる被介護者の引き上げや着座の間のみリニアアクチュエータの駆動力を利用し、シートの起倒操作は手動にて素早く行うことが可能となる。このため、介護者は移乗機を取り扱う際、煩わしさを感じることなく作業ができ、作業効率の向上が図られる。また、切替作業工数を要することなく、電動と従来通りの手動の両方を適宜選択でき、場面に適した使い方で移乗機を活用することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である移乗機の全体構成を示す説明図である。
図5の移乗機1も、従来の手動の移乗機51と同様に、被介護者の身体を支える略T字状のシート2が傾動自在に配置されている。シート2は、ターンテーブル3上に立設された可動ロッド4の上端に固定されている。ターンテーブル3は床上に載置され、床面と略平行(矢示X方向)に回転可能となっている。これにより、シート2及び可動ロッド4は、ターンテーブル3と共にX方向に回転自在に設けられる。
【0016】
ターンテーブル3上には、可動ロッド取付用のロッド固定ブラケット5が固定されている。ロッド固定ブラケット5には、回動支持軸6を中心として、可動ブラケット7が矢示Y方向に揺動自在に取り付けられている。可動ブラケット7の上端側には、可動ロッド4の一端側が固定されている。可動ロッド4は、シート2と共に、ターンテーブル3上にてY方向に揺動自在となっており、ターンテーブル3に対し略垂直に起立した起立位置と、起立位置から所定角度傾いた傾斜位置との間で起倒可能に取り付けられている。
【0017】
可動ブラケット7の下端側には、フットペダル8が略直角状態に取り付けられている。フットペダル8は、可動ロッド4やシート2と共に、回動支持軸6を中心としてY方向に揺動する。従って、介護者がフットペダル8を踏み込んだり、踏む力を緩めたりすることにより、シート2をY方向に適宜揺動させることができる。すなわち、移乗機1においても、従来の移乗機51と同様の手動による介助動作が可能である。フットペダル8の先端側には、倒れ防止フック9が配置されている。倒れ防止フック9をフットペダル8に係合させることにより、フットペダル8の揺動が阻止され、可動ロッド4やシート2の揺動動作がロックされる。
【0018】
ターンテーブル3の
図1において右端部には、移動用ローラ11が取り付けられている。移乗機1を移動させる際は、まず、倒れ防止フック9にて可動ロッド4の揺動をロックする。次に、その状態でシート2を
図1において右側に倒すようにして、機器全体を傾ける。そして、移動用ローラ11を接地させ、ローラ11に機器全体を載せるようにしてシート2を押すことにより、移乗機1を所望の方向に容易に移動させることが可能となる。
【0019】
本発明の移乗機1にはさらに、シート2をY方向に動力駆動させるためのリニアアクチュエータ12が取り付けられている。リニアアクチュエータ12には、特許文献4のような、いわゆる電動送りねじ式のリニアアクチュエータが使用される。電動送りねじ式のリニアアクチュエータでは、雄ねじ部を備えたシャフトを電動モータによって回転駆動し、シャフトに螺合装着された雌ねじ部材をシャフトに沿って駆動させる。雌ねじ部材には、伸縮ロッド13が取り付けられており、電動モータの回転に伴い、伸縮ロッド13が軸方向に伸縮する。
【0020】
ターンテーブル3と可動ロッド4にはそれぞれ、リニアアクチュエータ取付用のアクチュエータブラケット14,15(第1,第2ブラケット、以下、ブラケット14,15と略記する)が固定されている。リニアアクチュエータ12は、このブラケット14,15の間に配置される。ブラケット14は、可動ロッド4の上端近傍に固定されている。ブラケット14には、アクチュエータ支持ピン16が取り付けられている。アクチュエータ支持ピン16は、リニアアクチュエータ12の上端側(一端側)に挿着される。リニアアクチュエータ12は、アクチュエータ支持ピン16によって、ブラケット14に可動(揺動可能)状態で取り付けられる。
【0021】
リニアアクチュエータ12の下端側(他端側)には、長孔ロッド(接続ロッド)17が取り付けられている。長孔ロッド17は、固定ピン18によって伸縮ロッド13の先端に固定されている。長孔ロッド17には、長手方向に沿って延びる長孔19が形成されている。長孔19には、ターンテーブル3側のブラケット15に固定された係合ピン(ピン部材)21が挿入されている。伸縮ロッド13の伸縮に伴い、長孔ロッド17は、長孔19と係合ピン21によってガイドされつつ上下方向に移動する。係合ピン21は、シート2をY方向に最大角度傾斜させたとき、長孔19の下端19aに当接する。一方、シート2を起立位置としたときは(
図1の状態)、係合ピン21は、長孔19の上端19b側に移動するが、
図1に示すように、上端19bとの間に若干のクリアランスを有した状態で配置される。
【0022】
このような移乗機1では、次のようにして介助動作が行われる。
図2は、床31に載置した移乗機1により、ベッド32上の被介護者33を車椅子等の移乗先器具34に移乗させる際の介助動作を示す説明図、
図3は、移乗機動作中における長孔19と係合ピン21の位置関係を示す説明図である。
図2に示すように、移乗機1においても、まず、倒れ防止フック9を解除し、起立状態にあるシート2(
図2(a))を被介護者33側に傾動させる(同(b))。この際、本発明による移乗機1では、シート2の傾倒は手動にて行うことができ、アクチュエータ動作を待つことなく、迅速にシート2を被介護者33側に寄せることができる。
【0023】
図2(a)→(b)の動作では、シート2や可動ロッド4は、回動支持軸6を中心として傾斜位置方向(Y方向)に倒れる。また、この時点ではリニアアクチュエータ12の伸縮ロッド13は伸びた状態にある。従って、係合ピン21は、シート2の傾動と共に、長孔19内を上端19b側(
図3(a))から下端19a側に移動し、それと共にリニアアクチュエータ12もY方向に傾く。
図3(b)に示すように、係合ピン21が長孔19の下端19aに当接すると、シート2はそれ以上傾動せず傾斜位置にて停止する。つまり、係合ピン21と長孔19は、シート2の傾斜角度を決める傾動規制手段としても作用する。
【0024】
シート2を被介護者33の腿の付け根付近に倒した後、被介護者33は、上半身をシート2側に倒し、シート2上に覆い被さるようにして寄りかかる。この際、被介護者33は、シート2の上縁部にその両脇が掛かるような状態で両腕を配し、シート2を抱え込む姿勢を取る(同(c))。そして、
図2(c)の状態で、伸縮ロッド13を縮める方向にリニアアクチュエータ12を作動させる。伸縮ロッド13の短縮に伴い、シート2及び可動ロッド4は、回動支持軸6を中心として起立方向(Y方向とは逆方向)に揺動し、起立位置に戻される(
図2(d))。このとき、係合ピン21は、
図3(c)に示すように、長孔下端19aに位置した状態で保持される。移乗機1を起立位置に戻した後、倒れ防止フック9が掛けられる。
【0025】
図2(c)→(d)の動作において、被介護者33は、リニアアクチュエータ12の作動力によってシート2と共に起こされる。すなわち、介護者がフットペダル8を踏むことなく、被介護者33を
図2(d)のような状態に起こすことができる。このため、移乗機1にあっては、被介護者33を引き起こす際、介護者はその体を軽く支えるだけで良く、小柄な女性などでも、体重の重い被介護者を容易に起こすことが可能となる。また、介護者は、両足で立った状態で被介護者33を介助でき、安定した介護作業が可能となると共に、被介護者33が転倒しそうになったときも対処し易くなり、被介護者33にも安心感を与えることができる。
【0026】
移乗機1を起立位置に戻した後、ターンテーブル3を回し、移乗先器具34に対応した方向に被介護者33の向きを転換する(同(e))。被介護者33の向きを変えた後、今度は伸縮ロッド13を伸ばす方向にリニアアクチュエータ12を作動させる。伸縮ロッド13の伸長に伴い、シート2及び可動ロッド4は、回動支持軸6を中心として傾斜方向に倒れる。被介護者33の背中あたりを支えつつ、シート2を移乗先器具34側に倒すことにより、シート2上の被介護者33は移乗先器具34上に下ろされ、着座状態となる(同(f))。
図2(f)の状態では、リニアアクチュエータ12の伸縮ロッド13は伸びた状態となり、移乗機1は、
図2(c)や
図3(b)と同様の形となり、係合ピン21は、
図3(d)に示すように、長孔下端19aに位置した状態で保持される。
【0027】
図2(e)→(f)の動作において、被介護者33は、リニアアクチュエータ12の作動力によってシート2と共に下ろされる。すなわち、介護者がフットペダル8を踏むことなく、被介護者33を
図2(f)のような着座姿勢にすることができる。このため、移乗機1にあっては、被介護者33を着座させる際、介護者はその体を軽く支えるだけで良く、小柄な女性などでも、体重の重い被介護者を容易に移乗先器具34に移すことが可能となる。また、この場合も、介護者は、両足で立った状態で被介護者33を介助できるため、安定した介護作業が可能となると共に、被介護者33が転倒しそうになったときも対処し易くなり、被介護者33にも安心感を与えることができる。
【0028】
移乗先器具34上に座った被介護者33は、両腕をシート2から外し、上半身を起こす(同(g))。この際、介護者は、適宜被介護者33の動作をサポートする。そして、シート2を元の起立位置に戻し、倒れ防止フック9を掛け、一連の介助動作を終了する(同(h))。ここで、
図2(g)の状態では、リニアアクチュエータ12の伸縮ロッド13は伸びた状態にあり、係合ピン21は、
図3(d)に示すように、長孔下端19aに位置している。この状態からシート2を起こして起立位置に戻すと、係合ピン21は、シート2の傾動と共に、長孔19内を下端19a側から上端19b側に移動する(
図3(e))。そして、
図2(h)の状態、すなわち、シート2が起立位置の状態では、
図3(a)の状態と同様に、係合ピン21は、長孔19内の上端19b側に配置される。この際、本発明による移乗機1では、シート2の傾動は手動にて行うことができ、アクチュエータ動作を待つことなく、迅速にシート2を起立位置に戻すことができる。
【0029】
このように、本発明による移乗機1は、可動ロッド4を起倒させる駆動力をリニアアクチュエータ12によって付与し、被介護者33をベッド等から引き上げたり、車椅子等に着座させたりする動作の補助を行う。従って、介護者は、フットペダル8を踏むことなく、両足で立った状態で被介護者33を介助でき、介護労力が軽減されると共に、安定した介護作業が可能となる。一方、移乗機1では、シート2を被介護者33に近付けたり、起立位置に戻したりする動作は、リニアアクチュエータ12の作動力を用いることなく手動にて行う。すなわち、介護者は、アクチュエータの動作を待つことなく、シート2の傾動を素早く手動にて行うことができる。このため、アクチュエータによるゆっくりとした動作に煩わされることなく介護作業を行うことができ、多忙時においてもスムーズで迅速な作業が可能となり、介護作業の効率化が図られる。
【0030】
本発明は前述のような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施形態では、被介護者33の移乗動作をリニアアクチュエータ12の作動力のみで補助しているが、本発明による移乗機1では、適宜手動による対応も可能である。例えば、引き上げ・着座動作の際に、適宜フットペダル8を踏んで動作補助を行うことも可能であり、また、リニアアクチュエータ12の作動力を用いずに、従来同様、フットペダル8の踏力のみにて補助動作を行うことも可能である。この場合、アクチュエータ駆動と手動の切替は、特別な操作や作業は必要なく、工数増大を招くことなく、電動と従来通りの手動を適宜選択でき、場面に適した使い方で移乗機を活用できる。
【0031】
一方、移乗機の傾倒・起立動作を、手動によらず、外部駆動力のみによって行うことも可能である。
図4は、傾倒・起立動作をリニアアクチュエータによって行う移乗機41の全体構成を示す説明図である。なお、移乗機1と同様の部材、部分については同一の符号を付し、その説明は省略する。
図4に示すように、移乗機41では、
図1の移乗機の長孔ロッド17に代えて接続ロッド42が使用されている。接続ロッド42には、長孔に代えて丸孔43が設けられている。丸孔43には、アクチュエータブラケット15に固定された係合ピン21が挿入係合している。係合ピン21は、丸孔43に対し回動自在な状態となっており、リニアアクチュエータ12の下端側は、接続ロッド42を介して、アクチュエータブラケット15に揺動自在に取り付けられる。
【0032】
図4の移乗機41では、移乗機1の
図2(a)→(b),(g)→(h)の動作もリニアアクチュエータ12によって行われる。移乗機41は、
図1,3における長孔19が丸孔43となっており、係合ピン21と接続ロッド42は軸方向(上下方向)には相対移動しない。従って、移乗機41の傾倒・起立は、リニアアクチュエータ12の伸縮ロッド13の伸縮によって行われる。
【0033】
図2(a)→(b)のように移乗機41を傾倒させる場合には、リニアアクチュエータ12を作動させる。伸縮ロッド13が伸びると、可動ロッド4は、回動支持軸6を中心としてY方向に傾動する。移乗機41の場合、起立位置では伸縮ロッド13が縮んだ状態となっており、伸縮ロッド13の伸び(長さ)に応じて、シート2及び可動ロッド4の傾斜角度が変化し、最大ストローク時が最大傾斜角となる。これに対し、シート2及び可動ロッド4を起立させる場合は、伸縮ロッド13を縮める方向にリニアアクチュエータ12を作動させる。伸縮ロッド13の短縮に伴い、シート2及び可動ロッド4は、回動支持軸6を中心として起立方向(Y方向とは逆方向)に揺動し、起立位置に戻される。