【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果について具体的に説明する。本実施例においては、下板(材質:JIS G 3106 SM490A、サイズ:厚さ16mm、幅100mm、長さ750mm)と、立板(材質:JIS G 3106 SM490A、サイズ:厚さ9mm、幅100mm、長さ750mm)を、下記表1に示す組成で、フラックス充填率が15.0質量%、破断強度が650MPaのフラックス入りワイヤを使用し、その他の条件を変えて片側すみ肉ガスシールドアーク溶接を行い、溶け込み及び溶接ビードなどを評価した。
【0052】
【表1】
【0053】
[評価基準]
図3A〜Cは溶け込み及びビード形状の判断基準例を示す顕微鏡写真であり、
図3A及びCは不良の例を示し、
図3Bは良好の例を示す。溶け込み形状の評価は、
図3Aに示すように溶込みが立板(リブ材)の板厚の8割未満の場合又は
図3Cに示すように溶け込みが立板(リブ材)貫通していた場合を不良(×)、
図3Bに示すように、溶込みが(リブ材)の板厚の8割以上でかつ完全溶込みでなかった場合を良好(○)、更に溶け込みが(リブ材)の板厚の8.5〜9.5割であった場合を優良(◎)とした。また、ビード形状の評価は、アンダーカットが発生した場合を不良(×)、アンダーカットが発生しなかった場合を良好(○)、更に、凸形状にならず滑らかなビードであった場合を優良(◎)とした。
【0054】
<第1実施例>
先ず、直径Dが異なる複数の電極ワイヤを使用し、それ以外の条件は同じにして溶接を行った。この第1実施例では、ビード形状及び溶け込み形状と併せて、ワイヤ送給性についても評価した。ワイヤ送給性の評価は、所定のワイヤ送給速度(無負荷の場合に相当)の8割未満の速度しか出なかった場合を不良(×)、8割以上が出た場合を良好(○)、更に、所定のワイヤ送給速度の9割以上が出た場合は優良(◎)とした。
【0055】
【表2】
【0056】
上記表2に示す比較例1,2は、ワイヤ径Dが本発明の範囲よりも太い場合の例であり、ワイヤ送給がスムーズではなく、その結果ビード形状も不良であった。また、比較例6,7は、ワイヤ径Dが本発明の範囲よりも細い場合の例であり、電極ワイヤが溶接中に座屈しやすく、ワイヤ送給性も低下し、良好なビードが得られなかった。これに対して、実施例3〜5は、ビード形状、溶け込み形状及びワイヤ送給性のいずれもが良好であった。
【0057】
<第2実施例>
第2実施例では、電極ワイヤの溶接方向における傾斜角度αを変えて、それ以外の条件は同じにして溶接を行い、ビード形状及び溶け込み形状を評価した。各種条件及び評価結果を下記表3にまとめて示す。
【0058】
【表3】
【0059】
上記表3に示す比較例8は電極ワイヤの後退角が大きすぎて、ビード形状及び溶け込み形状が劣化した。また、比較例13は、前進角が大きすぎて、ビード形状は良好であったが、溶け込みが浅くなり、立板(リブ材)板厚の8割に満たなかった。これに対して、実施例9〜12は、ビード形状及び溶け込み形状共に良好であった。
【0060】
<第3実施例>
第3実施例では、下板と立板とがなす角度θを変えて、それ以外の条件は同じにして溶接を行い、ビード形状及び溶け込み形状を評価した。各種条件及び評価結果を下記表4にまとめて示す。
【0061】
【表4】
【0062】
上記表4に示す比較例14は、下板と立板とがなす角度θが本発明の範囲よりも小さかったため、ビード形状及び溶け込み形状とも不良であった。また、比較例18は、下板と立板とがなす角度θが本発明の範囲よりも大きかったため、溶け込み形状は良好であったが、十分な脚長が得られず、良好なビード形状は得られなかった。これに対して、実施例15〜17は、ビード形状及び溶け込み形状共に良好であった。
【0063】
<第4実施例>
第4実施例では、下板の水平方向に対する傾斜角度βを変えて、それ以外の条件は同じにして溶接を行い、ビード形状及び溶け込み形状を評価した。各種条件及び評価結果を下記表5にまとめて示す。
【0064】
【表5】
【0065】
上記表5に示す比較例19は、傾斜角度βが本発明の範囲よりも小さいため、良好なビード形状及び溶け込み形状が得られなかった。また、比較例23は、傾斜角度βが本発明の範囲よりも大きいため、
図3Cに示すように、溶接金属が立板(リブ材)を貫通してしまった。これに対して、実施例20〜22は、ビード形状及び溶け込み形状共に良好であった。
【0066】
<第5実施例>
第5実施例では、電極ワイヤと下板とがなす角度γを変えて、それ以外の条件は同じにして溶接を行い、ビード形状及び溶け込み形状を評価した。各種条件及び評価結果を下記表6にまとめて示す。
【0067】
【表6】
【0068】
上記表6に示す比較例24は、角度γが本発明の範囲よりも小さいため、立板の脚長が小さくなり、ビード形状が劣化し、更に、完全溶け込みとなった。また、比較例28は、角度γが本発明の範囲よりも大きいため、良好なビード形状が得られず、また、溶け込みも立板(リブ材)の板厚の8割未満であった。これに対して、実施例25〜27は、ビード形状及び溶け込み形状共に良好であった。
【0069】
<第6実施例>
第6実施例では、溶接速度を変えて、それ以外の条件は同じにして溶接を行い、ビード形状及び溶け込み形状を評価した。各種条件及び評価結果を下記表7にまとめて示す。なお、下記表7に示すNo.29〜34は、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0070】
【表7】
【0071】
上記表7に示すように、実施例30〜33は、溶接速度を200〜700mm/分の範囲にしているため、ビード形状及び溶け込み形状共に優れていた。一方、実施例29は、溶接速度が遅めであったため、溶接金属が多くなり、ビード形状がやや垂れ気味であった。また、実施例34は、溶接速度が速かったため、溶け込みが立板(リブ材)の板厚の8割ぎりぎりとなり、余裕がなかった。
【0072】
<第7実施例>
第7実施例では、溶接電流を変えて、それ以外の条件は同じにして溶接を行い、ビード形状及び溶け込み形状を評価した。各種条件及び評価結果を下記表8にまとめて示す。なお、下記表8に示すNo.35〜40は、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0073】
【表8】
【0074】
上記表8に示すように、実施例36〜39は、溶接電流が200〜450Aであったため、ビード形状及び溶け込み形状共に優れていた。一方、実施例35は、溶接電流が低かったため、溶け込みが立板(リブ材)の板厚の8割ぎりぎりとなり、余裕がなかった。また、実施例40は、溶接電流が高めであったため、ビード形状がやや垂れ気味であった。
【0075】
<第8実施例>
第8実施例では、アーク電圧を変えて、それ以外の条件は同じにして溶接を行い、ビード形状及び溶け込み形状を評価した。各種条件及び評価結果を下記表9にまとめて示す。なお、下記表9に示すNo.41〜46は、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0076】
【表9】
【0077】
上記表9に示すように、実施例42〜45は、アーク電圧が20〜45Vであったため、ビード形状及び溶け込み形状共に優れていた。一方、実施例41は、アーク電圧が低かったため、ビード形状がやや凸形状であった。また、実施例46は、本アーク電圧が高めであったため、アーク長が長くなり、溶け込みが立板(リブ材)の板厚の8割ぎりぎりとなり、余裕がなかった。
【0078】
<第9実施例>
第9実施例では、チップ母材間距離を変えて、それ以外の条件は同じにして溶接を行い、ビード形状及び溶け込み形状を評価した。各種条件及び評価結果を下記表10にまとめて示す。なお、下記表10に示すNo.47〜51は、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0079】
【表10】
【0080】
上記表10に示すように、チップ母材間距離を15〜35mmにした実施例48〜50は、ビード形状及び溶け込み形状共に優れていた。一方、実施例47は、チップ母材間距離が短かったため、ノズルとリブ材との干渉を避けるために、溶接トーチの下板に対する角度(γ)を小さくする必要があった。このため、溶接金属がやや下板に寄っており、ビード形状及び溶け込み形状がやや不安定であった。また、実施例51は、チップ母材間の距離が長かったため、溶接中の振動などにより、ビード形状がやや不安定であった。
【0081】
<第10実施例>
第10実施例では、フラックス充填率が異なるフラックス入りワイヤを使用し、下記表11に示す溶接条件で溶接を行い、溶接金属の衝撃性能及びビード形状を評価した。
【0082】
【表11】
【0083】
本実施例で用いた各フラックス入りワイヤのフラックス充填率、成分組成及びワイヤの破断強度を、下記表12に示す。なお、下記表12に示すNo.52〜56のフラックス入りワイヤは、いずれも本発明の範囲内の実施例である。また、各ワイヤの破断強度は、各試験材から、JIS Z 2241 2号に対応した試験片を作製し、JIS Z 2241に準拠した方法で測定した値であり、以下の実施例においても同様である。
【0084】
【表12】
【0085】
また、下記表13に各フラックス入りワイヤの評価結果を示す。なお、下記表13に示す溶接金属の衝撃性能の評価は、各サンプルについて、JIS Z 3313に準拠して、−20℃における吸収エネルギーを3回測定し、その平均値が47J未満の場合を不良(×)、47J以上の場合を良好(○)、更に、60J以上の場合を優良(◎)とした。
【0086】
【表13】
【0087】
上記表13に示すように、フラックス充填率が10〜20質量%のフラックス入りワイヤを用いた実施例53〜55は、溶接金属の衝撃性能が高く及びビード形状も優れていた。一方、実施例52は、フラックスの充填率が低かったため、ビード形状がやや垂れ気味であった。また、実施例56は、フラックス充填率が高かったため、衝撃性能が47J以上ではあったが、60Jには届かなかった。
【0088】
<第11実施例>
第11実施例では、C含有量が異なるフラックス入りワイヤを使用し、上記表11に示す溶接条件で溶接を行い、溶接金属の衝撃性能及びビード形状を評価した。本実施例で用いた各フラックス入りワイヤのフラックス充填率、成分組成及びワイヤ強度を下記表14に、評価結果を下記表15に、それぞれ示す。なお、下記表14及び表15に示すNo.57〜61のフラックス入りワイヤは、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0089】
【表14】
【0090】
【表15】
【0091】
上記表13に示すように、C含有量が0.01〜0.10質量%のフラックス入りワイヤを用いた実施例58〜60は、溶接金属の衝撃性能が高く及びビード形状も優れていた。一方、実施例57は、C含有量が少なかったため、溶接金属の組織はやや粗く、衝撃性能が47J以上ではあったが、60Jには届かなかった。また、実施例61は、C含有量が多めであったため、硬いベーナイト組織になるので、衝撃性能が47J以上ではあったが、60Jには届かなかった。
【0092】
<第12実施例>
第12実施例では、Si含有量が異なるフラックス入りワイヤを使用し、上記表11に示す溶接条件で溶接を行い、溶接金属の衝撃性能及びビード形状を評価した。本実施例で用いた各フラックス入りワイヤのフラックス充填率、成分組成及びワイヤ強度を下記表16に、評価結果を下記表17に、それぞれ示す。なお、下記表16及び表17に示すNo.62〜66のフラックス入りワイヤは、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0093】
【表16】
【0094】
【表17】
【0095】
上記表17に示すように、Si含有量が0.5〜1.5質量%のフラックス入りワイヤを用いた実施例63〜65は、溶接金属の衝撃性能が高く及びビード形状も優れていた。一方、実施例62は、Si含有量が少なかったため、ビードの母材とのなじみが若干劣ってた。また、実施例66は、Si含有量が多めであったため、衝撃性能が47J以上ではあったが、60Jには届かなかった。
【0096】
<第13実施例>
第13実施例では、Mn含有量が異なるフラックス入りワイヤを使用し、上記表11に示す溶接条件で溶接を行い、溶接金属の衝撃性能及びビード形状を評価した。本実施例で用いた各フラックス入りワイヤのフラックス充填率、成分組成及びワイヤ強度を下記表18に、評価結果を下記表19に、それぞれ示す。なお、下記表18及び表19に示すNo.67〜71のフラックス入りワイヤは、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0097】
【表18】
【0098】
【表19】
【0099】
上記表19に示すように、Mn含有量が1.5〜3.5質量%のフラックス入りワイヤを用いた実施例63〜65は、溶接金属の衝撃性能が高く及びビード形状も優れていた。一方、実施例62は、Mn含有量が少なかったため、衝撃性能が47J以上ではあったが、60Jには届かなかった。また、実施例66は、Mn含有量が多めであったため、溶接金属が高強度化され、衝撃性能が60Jには届かなかった。
【0100】
<第14実施例>
強脱酸剤であるMg若しくはAl又はその両方の含有量が異なるフラックス入りワイヤを使用し、上記表11に示す溶接条件で溶接を行い、溶接金属の衝撃性能及びビード形状を評価した。本実施例で用いた各フラックス入りワイヤのフラックス充填率、成分組成及びワイヤ強度を下記表20に、評価結果を下記表21に、それぞれ示す。なお、下記表20及び表21に示すNo.72〜76のフラックス入りワイヤは、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0101】
【表20】
【0102】
【表21】
【0103】
上記表21に示すように、Mg及びAlの総含有量が0.1〜2.0質量%のフラックス入りワイヤを用いた実施例73〜75は、溶接金属の衝撃性能が優れていた。一方、実施例72は、MgおよびAl含有量が少なかったため、衝撃性能が47J以上ではあったが、60Jには届かなかった。また、実施例76は、MgおよびAl含有量が多めであったため、溶接作業性の劣化に起因したビード形状がやや不安定であった。
【0104】
<第15実施例>
第15実施例では、TiO
2含有量が異なるフラックス入りワイヤを使用し、上記表11に示す溶接条件で溶接を行い、溶接金属の衝撃性能及びビード形状を評価した。本実施例で用いた各フラックス入りワイヤのフラックス充填率、成分組成及びワイヤ強度を下記表22に、評価結果を下記表23に、それぞれ示す。なお、下記表22及び表23に示すNo.77〜81のフラックス入りワイヤは、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0105】
【表22】
【0106】
【表23】
【0107】
上記表23に示すように、TiO
2含有量が1.5〜6.0質量%のフラックス入りワイヤを用いた実施例78〜80は、溶接金属の衝撃性能が高く及びビード形状も優れていた。一方、実施例77は、TiO
2含有量が少なかったため、ビード形状がやや不安定であった。また、実施例81は、TiO
2含有量が多めであったため、衝撃性能が47J以上ではあったが、60Jには届かなかった。
【0108】
<第16実施例>
第16実施例では、アーク安定剤としてのアルカリ金属の含有量が異なるフラックス入りワイヤを使用し、下記表24に示す溶接条件で溶接を行い、溶接金属の拡散水素量及びビード形状を評価した。
【0109】
【表24】
【0110】
本実施例で用いた各フラックス入りワイヤのフラックス充填率、成分組成及びワイヤ強度を、下記表25に示す。なお、下記表25に示すNo.82〜87のフラックス入りワイヤは、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0111】
【表25】
【0112】
また、下記表26に各フラックス入りワイヤの評価結果を示す。なお、下記表26に示す拡散水素量の評価は、JIS Z 3118に準拠した方法により行い、その結果、拡散性水素量が8.0ml/100gを超えていた場合を不良(×)、8.0ml/100g以下の場合を良好(○)、更に5.0ml/100g以下の場合を優良(◎)とした。
【0113】
【表26】
【0114】
上記表26に示すように、Na化合物、Na化合物及びLi化合物の総含有量が0.05〜0.4質量%の範囲内のフラックス入りワイヤを用いた実施例83〜86は、溶接金属中の拡散性水素量が低く及びビード形状も優れていた。一方、実施例82は、Na化合物、K化合物及びLi化合物の総含有量が少なかったため、アークがやや不安定になり、ビード形状がやや不安定であった。また、実施例87は、Na化合物、K化合物及びLi化合物の総含有量が多めであったため、ワイヤが吸湿し、拡散性水素量が8.0ml/100g以下ではあったが、5.0ml/100g以上であった。
【0115】
<第17実施例>
第17実施例では、スラグ発生剤の添加量が異なるフラックス入りワイヤを使用し、上記表11に示す溶接条件で溶接を行い、溶接金属の衝撃性能及びビード形状を評価した。本実施例で用いた各フラックス入りワイヤのフラックス充填率、成分組成及びワイヤ強度を下記表27に、評価結果を下記表28に、それぞれ示す。なお、下記表27及び表28に示すNo.88〜92のフラックス入りワイヤは、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0116】
【表27】
【0117】
【表28】
【0118】
上記表28に示すように、Al
2O
3、ZrO
2、SiO
2及びTiO
2の総含有量が2〜8質量%であるフラックス入りワイヤを用いた実施例89〜91は、溶接金属の衝撃性能が高く及びビード形状も優れていた。一方、実施例88は、Al
2O
3、ZrO
2、SiO
2及びTiO
2の総含有量が少なかったため、ビード形状がやや不安定であった。また、実施例92は、Al
2O
3、ZrO
2、SiO
2及びTiO
2の総含有量が多かったため、衝撃性能が47J以上ではあったが、60Jには届かなかった。
【0119】
<第18実施例>
第18実施例では、Fe含有量が異なるフラックス入りワイヤを使用し、上記表11に示す溶接条件で溶接を行い、溶接金属の衝撃性能及びビード形状を評価した。本実施例で用いた各フラックス入りワイヤのフラックス充填率、成分組成及びワイヤ強度を下記表29に、評価結果を下記表30に、それぞれ示す。なお、下記表29及び表30に示すNo.93〜96のフラックス入りワイヤは、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0120】
【表29】
【0121】
【表30】
【0122】
上記表30に示すように、Fe含有量が86質量%以上のフラックス入りワイヤを用いた実施例94〜96は、溶接金属の衝撃性能が高く及びビード形状も優れていた。一方、実施例93は、Fe含有量が少なかったため、溶着効率が低く、ビード形状は所定の要求を満足しているが、余裕がなかった。
【0123】
<第19実施例>
第19実施例では、Mn/Siが異なるフラックス入りワイヤを使用し、上記表11に示す溶接条件で溶接を行い、溶接金属の衝撃性能及びビード形状を評価した。本実施例で用いた各フラックス入りワイヤのフラックス充填率、成分組成及びワイヤ強度を下記表31に、評価結果を下記表32に、それぞれ示す。なお、下記表31及び表32に示すNo.97〜101のフラックス入りワイヤは、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0124】
【表31】
【0125】
【表32】
【0126】
上記表32に示すように、Mn/Siが1.5〜5.5であるフラックス入りワイヤを用いた実施例98〜100は、溶接金属の衝撃性能が高く及びビード形状も優れていた。一方、実施例97は、Mn/Siが低かったため、衝撃性能が47J以上ではあったが、60Jには届かなかった。また、実施例101は、Mn/Siが高かったため、ビードの形状がやや不安定であった。
【0127】
<第20実施例>
第20実施例では、Ni及びMoの添加量が異なるフラックス入りワイヤを使用し、上記表11に示す溶接条件で溶接を行い、溶接金属の機械的性質及びビード形状を評価した。本実施例で用いた各フラックス入りワイヤのフラックス充填率、成分組成及びワイヤ強度を、下記表33に示す。なお、下記表33に示すNo.102〜106のフラックス入りワイヤは、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0128】
【表33】
【0129】
また、下記表34に各フラックス入りワイヤの評価結果を示す。なお、下記表34に示す溶接金属の機械的性質は、引張強度及び衝撃性能により評価し、引張強度が590MPa未満又は−40℃における衝撃性能が47J未満の場合は不良(×)、引張強度が590MPa以上かつ−40℃における衝撃性能が47J以上の場合を良好(○)、更に、引張強度が620〜650MPaかつ−40℃における衝撃性能が60J以上の場合を優良(◎)とした。
【0130】
【表34】
【0131】
上記表34に示すように、Ni及びMoの総含有量が0.1〜3.0質量%であるフラックス入りワイヤを用いた実施例103〜105は、溶接金属の機械的性質及びビード形状共に優れていた。一方、実施例102は、Ni及びMoの総含有量が少なかったため、−40℃における衝撃性能が47J以上ではあったが、60Jには届かなかった。また、実施例106は、Ni及びMoの総含有量が多かったため、引張強度が650MPaを超えた。
【0132】
<第21実施例>
第21実施例では、ワイヤ強度が異なるフラックス入りワイヤを使用し、上記表11に示す溶接条件で溶接を行い、ワイヤ送給性及びビード形状を評価した。本実施例で用いた各フラックス入りワイヤのフラックス充填率、成分組成及びワイヤ強度を下記表35に、評価結果を下記表36に、それぞれ示す。なお、下記表35及び表36に示すNo.107〜111のフラックス入りワイヤは、いずれも本発明の範囲内の実施例である。
【0133】
【表35】
【0134】
【表36】
【0135】
上記表36に示すように、破断強度が300〜900MPaであるフラックス入りワイヤを用いた実施例108〜110は、ワイヤ送給性及びビード形状共に優れていた。一方、実施例107は、ワイヤの破断強度が低くかったため、ワイヤがややスムーズに送給されず、ビード形状もやや不安定であった。実施例111は、ワイヤの破断強度が高過ぎて、ワイヤと送給ライナの摩擦抵抗が高くなり、ワイヤの送給性が極めて良好であるとまでは言えず、ビード形状もやや不安定であった。