(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257653
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】(メタ)アクリロキシ含有トリシロキサン、シロキサン含有ポリマー、およびそれらによる生物医学用具
(51)【国際特許分類】
C07F 7/08 20060101AFI20171227BHJP
C08F 30/08 20060101ALI20171227BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20171227BHJP
C09D 143/04 20060101ALI20171227BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20171227BHJP
【FI】
C07F7/08 XCSP
C08F30/08
G02C7/04
C09D143/04
!C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-557009(P2015-557009)
(86)(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公表番号】特表2016-509607(P2016-509607A)
(43)【公表日】2016年3月31日
(86)【国際出願番号】US2014014796
(87)【国際公開番号】WO2014123956
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】61/761,259
(32)【優先日】2013年2月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ニコルソン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,ピン
(72)【発明者】
【氏名】クマル,ヴィクラム
(72)【発明者】
【氏名】ザクセナ,アヌブハヴ
(72)【発明者】
【氏名】センスヒルクマル,ウマパシー
(72)【発明者】
【氏名】ポール,エリック
(72)【発明者】
【氏名】グエール,ケンドール
【審査官】
高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第84/00763(WO,A1)
【文献】
特公昭50−025461(JP,B1)
【文献】
米国特許第4690993(US,A)
【文献】
米国特許第4633003(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0283378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
C08F 30/08
C09D 133/08
C09D 133/10
G02C 7/04
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化4】
〔式中、Rは水素またはメチルであり;Y
1は水素またはヒドロキシルであり;そしてY
2は水素またはヒドロキシルであり、但し、Y
1またはY
2の少なくとも一つはヒドロキシル基である〕
のトリシロキサン。
【請求項2】
2−ヒドロキシ−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、2−ヒドロキシ−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステル、2−ヒドロキシ−3−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、2−ヒドロキシ−3−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステル、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載のトリシロキサン。
【請求項3】
トリシロキサンが、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステル、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−3−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−3−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステル、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項2に記載のトリシロキサン。
【請求項4】
トリシロキサンが、式(II):
【化5】
〔式中、Rは水素またはメチルである〕
の立体化学構造を持つ、請求項1に記載のトリシロキサン。
【請求項5】
二つの異性体の合計重量に基づく、40〜99重量%のトランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステルおよび1〜60重量%のトランス−2−ヒドロキシ−シス−4−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、または二つの異性体の合計重量に基づく、40〜99重量%のトランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステルおよび1〜60重量%のトランス−2−ヒドロキシ−シス−4−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステルを含む、請求項3に記載のトリシロキサン。
【請求項6】
(a)エテニル−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンを1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチル−トリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させてヒドロシリル化物を得るステップ;および
(b)ステップ(a)のヒドロシリル化物を(メタ)アクリル酸と、任意でオキシラン開環触媒の存在下で反応させ、請求項1に記載のトリシロキサンを製造するステップ
を含む、
請求項1に記載のトリシロキサンを調製するプロセス。
【請求項7】
エテニル−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンの85重量%を越えるものが、シクロヘキシル環の1および6位の炭素原子にC−1エクアトリアルおよびC−6アキシアル位で結合する、オキシラン環の酸素原子を有し、そしてシクロヘキシル環の3位の炭素原子にエクアトリアル位で結合するエテニル基を有する、3−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンであり、または、エテニル−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンの85重量%を越えるものが、シクロヘキシル環の1および6位の炭素原子にC−1アキシアルおよびC−6エクアトリアル位で結合する、オキシラン環の酸素原子を有し、そしてシクロヘキシル環の2位の炭素原子にエクアトリアル位で結合するエテニル基を有する、2−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンである、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
請求項1に記載のトリシロキサン、活性化炭素−炭素二重結合を含有するモノマー、および架橋剤を含む共重合可能な混合物を共重合化によって得られるコポリマー。
【請求項9】
トリシロキサンが、2−ヒドロキシ−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、2−ヒドロキシ−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステル、2−ヒドロキシ−3−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、2−ヒドロキシ−3−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステル、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項10】
トリシロキサンが、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステル、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−3−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−3−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステル、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項11】
トリシロキサンが、二つの異性体の総重量に基づく、40〜99重量%のトランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステルおよび1〜60重量%のトランス−2−ヒドロキシ−シス−4−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、または二つの異性体の総重量に基づく、40〜99重量%のトランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステルおよび1〜60重量%のトランス−2−ヒドロキシ−シス−4−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステルを含む、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項12】
活性化炭素−炭素二重結合を含有するモノマーが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリル酸メチル、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、メタクリル酸およびジメチルアクリルアミド、およびそれらの混合物からなる群より選択される、および/または、架橋剤が、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジクロトネート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジクロトネート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ヘキサエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、トリブチレングリコールジメタクリレート、テトラブチレングリコールジメタクリレート、ヘキサメチレングリコールジメタクリレート、オクタメチレングリコールジメタクリレート、デカメチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジアリルタータレート、ジアリルマレエート、トリアリルメラミン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ジビニルシトラコネート、ジアリルフマレート、ジビニルスルホン、トリアリルホスファイト、ジアリルベンゼンホスホネート、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアクリルトリアジン、ジビニルエーテル、トリアリルシトレート、ポリシロキサニルビス(アルキルグリセロールアクリレート)、ポリシロキサニルビス(アルキルグリセロールメタクリレート)、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項8〜11のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項13】
トリシロキサンの、活性化炭素−炭素二重結合を含有するモノマーに対する比率が、1:2〜2:1、および/または、共重合可能な混合物が、混合物の総重量に基づいて、40〜60重量%のトリシロキサン、20〜30重量%のジメチルアクリルアミド、15〜25重量%の2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1〜10重量%のN−ビニルピロリドン、および0.1〜3重量%のエチレングリコールジメチルアクリレートを含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項14】
請求項8〜11のいずれか一項に記載のコポリマーを含む、コンタクトレンズ。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のトリシロキサン、または請求項8〜11のいずれか一項に記載のコポリマーを含む、コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサン、その作製プロセス、およびそれらからの生物医学用具、特にコンタクトレンズの製造に有用なポリマーおよびハイドロゲル組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
長時間連続装用を目的とするコンタクトレンズは、ポリジメチルシロキサンによって調製されるシリコーンラバーにより作製される。高含水量のコンタクトレンズは、ポリ−N−ビニルピロリドンポリマーより作製される。シリコーンラバーコンタクトレンズは非常に撥水性であり、熱伝導率および熱拡散率のような熱特性において角膜と大きく異なり、それらは、酸素透過性を持つのにも関わらず、異物感、特に灼熱感をもたらす。シリコーンラバーより作製されるコンタクトレンズは、装着するのに快適ではない。さらに、シリコーンラバーはソフトで、弾力性であり、そのために切断、研削、および研磨のような機械的処理を正確に実施するのを難しくする。シリコーンラバーの表面を親水性にするための多くの試みが実施されてきたが、完全に満足できるコンタクトレンズが開発されてきてはいない。高含水量のコンタクトレンズは約60重量%〜約80重量%の水を含むが、それらは、低含水量のコンタクトレンズと比べて物質の品質の点で弱いという欠点を持ち、使用中にレンズへと浸透して蓄積する涙に含まれる無機化合物および有機化合物によって簡単に汚染され、そして、使用後に水が蒸発することによってレンズの輪郭の維持が悪く、それゆえに、その屈折力が容易に変化してしまう。
【0003】
2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)から作製される従来のハイドロゲル物質は、貧弱な酸素透過性と、吸収した水分子を経由する酸素から眼への貧弱な酸素移送を持つ。水は低い酸素透過性を持つ。2−ヒドロキシエチルメタクリラートモノマーから作製されるコンタクトレンズは、長期間での大気への曝露においてゆっくりと脱水して角膜への酸素透過量が減少する。眼への刺激、眼の充血およびその他の角膜合併症が生じ得、それゆえに、レンズの使用が限られた装着期間に制限される。
【0004】
シリコーンハイドロゲルフィルムは、その高い酸素透過性、柔軟性、快適さ、および減少した角膜合併症などのために、長時間装用ソフトコンタクトレンズの作製に使用される。これらのシリコーンハイドロゲルは、従来のハイドロゲル物質と比べて高い酸素透過性を持ち、快適なソフトコンタクトレンズを作製できるので、シリコーンハイドロゲルは、従来のハイドロゲルを超える装着期間に対する障害を乗り越えるものである。しかしながら、これらのシリコーンハイドロゲルは欠点を持つ。例えば、ジメチルポリシロキサンの直鎖ブロックを用いる多くのシリコーンハイドロゲルは、酸素透過性を高める。二価炭化水素基もしくはアミノ含有炭化水素基(ヘテロカーボン基)を介して結合するα,ω末端不飽和基を含むポリシロキサンは、ソフトコンタクトレンズの調製に使用されてきたことが知られる。α,ω−ジビニルポリシロキサンを持つ低分子量の不飽和シロキサン−ポリエーテルコポリマーは、不飽和ポリシロキサン−ポリエーテルコポリマー、ならびに相溶化剤とともに用いられてきた。これらのポリマーは、ポリマー中に疎水性部分を形成する線状疎水性ジメチルポリシロキサン鎖を含み、それは、角膜合併症を引き起こす可能性があり、正確な機械的処理の実施を困難にする可能性がある。
【0005】
メタクリロキシプロピルトリス−(トリメチルシロキシ)シランモノマーは、シリコーン含有ハイドロゲルの調製に使用されてきた。(メタ)アクリロキシプロピルトリス−(トリメチルシロキシ)シランは、疎水性であり、そしてポリウレタン−シリコーンポリマーの調製において用いられる。これらのポリウレタンシリコーンポリマーは、疎水性シリコーンブロックを含有する。これらのポリマーから作製されるコンタクトレンズは、ポリマー内部の疎水性領域による目の不快感を起こす可能性がある。
【0006】
シリコーンハイドロゲルは、ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)のような親水性モノマーと、メチルメタクリル酸(MA)およびジメチルアクリルアミド(DMA)などのような他のモノマーとを、架橋剤およびフリーラジカル開始剤もしくは光開始剤の存在下で重合したアクリラートもしくはメタクリラート官能化シリコーンモノマーから典型的に作製される。架橋剤は一般的に、二つもしくはそれ以上の反応性官能基を分子上の異なる位置に持つ。典型的には、それらの位置は重合可能なエチレン性不飽和基を持つ。シリコーンハイドロゲルを作製するための硬化中、それらは二つの異なるポリマー鎖と共有結合を形成し、安定な三次元ネットワークを形成し、ポリマーの強度を向上する。コンタクトレンズにおいて従来使用される架橋剤は、エチレングリコールジメタクリラートおよびトリメチロイルプロパントリメタクリラートを含む。他の有用な架橋剤は、ジエチレングリコールジメタクリラート、ビスフェノールAジメタクリラート、ジグリシジルビスフェノールAジメタクリラート、ジメタクリラート末端化ポリエチレングリコールおよび反応性線状ポリエーテル修飾シリコーンを含む。これらのシリコーンハイドロゲルの酸素透過性は、架橋ポリマーの調製に使用されるアクリラートもしくはメタクリラート官能化シリコーンモノマーの化学構造、ならびに反応性炭素−炭素二重結合を含む他のモノマーの選択によって影響を受ける。
【0007】
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの材料は、典型的には、疎水性単官能性シリコンモノマーもしくは多官能性親水性シリコーンモノマーのいずれかを用いて作製され、二次表面処理が後に続く。単官能性シリコーンモノマーは多官能性シリコーンモノマーよりもコンタクトレンズ産業において高頻度で使用され、それは後者がそれらより作製されるレンズの剛性を高めるためである。しかしながら、公知の単官能性シリコーンモノマーは欠点を持ち得る。例えば、単官能性シロキサンポリエーテル(メタ)アクリラートは、大気の酸化に対し感受性が高い。六員環上の、(メタ)アクリロキシ基からシロキサン基への1,4−置換を持つ単官能性(メタ)アクリロキシ官能性シロキサン、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−4−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルエステルは、高度に秩序化されたコポリマーを形成し、それはシリコーンハイドロゲルを通る酸素の透過性を阻害し得る。
【0008】
ソフトコンタクトレンズに対する技術分野における状態は向上し続けているが、シリコーン系物質は、最適ではない表面湿潤性や酸素透過性、ならびにポリマー調製における相溶化剤の必要性といった未だに重大な欠点がある。これらの欠点を克服するための試みにおいて、本技術分野の状況は、「プラズマ酸化」と呼ばれる高価な二次的な表面処理、または内部湿潤化剤のいずれかを実施している。これらの試みは酸素透過性を減じ、相溶化剤の使用を必要とするため、製造プロセスにおけるコストを増加させる。
【0009】
このように、本質的に利点のある湿潤性、大気の酸化に対する安定性、高い酸素透過性および、相溶化剤を必要としないで、ポリマー作製のために使用される他の反応性モノマーに対する高い溶解性を持つ、親水性シリコーンモノマーに対する必要性は存在する。本発明の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンは、乏しい湿潤性、酸化不安定性、最適とはいえない酸素透過性、高価な表面処理、そしてことに関連する加工コストもしくは、より親水性の低い従来技術の材料を含有するシリコーンに付きものとなる相溶化剤の使用に加工コストという欠点のないコンタクトレンズの作製に用いられる。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、式(I):
【化1】
〔式中、Rは水素またはメチルであり;Y
1は水素またはヒドロキシル(−OH)であり;そしてY
2は水素またはヒドロキシル(−OH)であり、但し、Y
1またはY
2の少なくとも一つはヒドロキシル基である〕
の構造を有する、新規のモノアクリレートまたはメタクリレート官能化トリシロキサンモノマーを開示する。
【0011】
本発明はまた、一般式(I)を有するトリシロキサンモノマーを活性化炭素−炭素二重結合を含有する親水性モノマーと反応させることによって作製される、3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンを作製するプロセスを述べる。
【0012】
本発明によって、一般式(I):
【化2】
〔式中、Rは水素またはメチルであり;Y
1は水素またはヒドロキシル(−OH)であり;そしてY
2は水素またはヒドロキシル(−OH)であり、但し、Y
1またはY
2の少なくとも一つはヒドロキシル基である
を有する(メタ)アクリロキシ含有トリシロキサンが提供される。更に具体的には、式中、Rは水素であり、Y
1はヒドロキシル基であり、そしてY
2は水素である、モノ−アクリレートまたはメタクリレート官能化トリシロキサンモノマーが提供され、或いは、式中、Rは水素であり、Y
1は水素であり、そしてY
2はヒドロキシル基である、モノ−アクリレートまたはメタクリレート官能化トリシロキサンモノマーが提供される。
【0013】
一つの実施態様において、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル基に対する(メタ)アクリロキシ基の立体化学は、シクロヘキシル基のトランス−1,3−置換である。特定の理論にこだわることなく、シクロヘキシル基のトランス−1,3−置換は、本発明のモノマーを含有するポリマーに対し、よりランダム性(エントロピー)をもたらし、それによって大きな自由体積とより良い酸素透過性をもたらすと考えられている。
【0014】
3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンの非限定的な代表例は、2−ヒドロキシ−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、2−ヒドロキシ−5−[2−ビス−(トリメチルシロキ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステル、2−ヒドロキシ−3−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、および2−ヒドロキシ−3−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステル、およびそれらの混合物を含む。好ましくは、3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンの非限定的な代表例は、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステル、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−3−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、およびトランス−2−ヒドロキシ−トランス−3−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステル、およびそれらの混合物を含む。更に好ましくは、3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンの非限定的な代表例は、式(II):
【化3】
〔式中、Rは水素またはメチルである〕
の立体化学を有する構造を持つ、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステルおよびトランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステルを含む。式(II)で表される化学構造において、(メタ)アクリロキシ基が結合する環上の炭素原子は、環上の1位(C−1)が当てられる。(メタ)アクリロキシ基は、シクロヘキサン環のC−1炭素にアキシアル位で結合する。ヒドロキシル基は、シクロヘキサン環のC−2炭素上のアキシアル位を占める。ヒドロキシル基の立体化学は、(メタ)アクリロキシ基に対してトランスである。2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル基は、シクロヘキサン環のC−5炭素原子上のエクアトリアル位を占め、そして(メタ)アクリロキシ基に対してトランスである。トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステルの割合は、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステルおよびトランス−2−ヒドロキシ−シス−4−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステルの総重量に基づく、好ましくは85重量%を越え、更に好ましくは95重量%を越える。トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステルの割合は、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステルおよびトランス−2−ヒドロキシ−シス−4−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステルの総重量に基づく、好ましくは85重量%を越え、更に好ましくは95重量%を越える。
【0015】
他の実施態様において、3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサン組成物は、二つの異性体の合計重量に基づく、40〜99重量%のトランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステルおよび1〜60重量%のトランス−2−ヒドロキシ−シス−4−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステル、または二つの異性体の合計重量に基づく、40〜99重量%のトランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステルおよび1〜60重量%のトランス−2−ヒドロキシ−シス−4−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルメタクリル酸エステルを含む。
【0016】
一般式(I)を有する、3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンを調製するプロセスは、(a)エテニル−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンを1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチル−トリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させるステップ;および
(b)ステップ(a)の生成物を(メタ)アクリル酸と、任意で添加触媒の存在下で反応させ、オキシラン環を開環し、そして3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を提供するステップ
を含む。
【0017】
3−エテニル−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンの好ましい立体化学は、シクロヘキシル基の1および6位の炭素原子にC−1エクアトリアルおよびC−6アキシアル位で結合する、オキシラン環の酸素原子を有し、そしてビニル基がシクロヘキシル環の3位の炭素原子にエクアトリアル位で結合し、そして2−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンは、シクロヘキシル基の1および6位の炭素原子にC−1アキシアルおよびC−6エクアトリアル位で結合する、オキシラン環の酸素原子を有し、そしてビニル基がシクロヘキシル環の2位の炭素原子にエクアトリアル位で結合する。これらの立体異性体は、(メタ)アクリレート求核剤のエポキシ環へのアキシアルアタックを促進し、そしてそれにより、ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル基に対して、(メタ)アクリロキシ基によるシクロヘキシル環の1,3−置換を促進する。
【0018】
市販の3−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンおよび実験的に製造される2−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンは、それぞれ、4−ビニル−シクロへキセンおよび2−ビニル−シクロへキセンのエポキシ化から作製される。より高度に置換された炭素−炭素二重結合のエポキシ化は、アルケンを一つの酸素原子を付与する過酸化物含有試薬で処理することによって成される。典型的な過酸化試薬は、過酸化水素、ペルオキシカルボン酸(in situで生成またはあらかじめ形成された)、アルキルヒドロペルオキシド、およびジメチルジオキシランを含む。更に具体的には、エポキシ化剤は、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸、モノ過フタル酸、および過酢酸からなる群より選択される。これらのエポキシ化剤は、形成されたエポキシドの単離を可能にする。反応は、塩素化炭化水素、エーテル、エステル等の有機溶媒中で行われてよい。該溶媒の非限定的な代表例は、塩化メチレン、クロロホルム、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、および酢酸エチルを含む。
【0019】
エポキシ化反応は、3−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンの二つの立体異性体、そして2−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンの二つの立体異性体を作り出す。3−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンの立体異性体または2−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンの立体異性体は、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチル−トリシロキサンとの反応の前に互いに分離されることが好ましい。立体異性体は、分留、分取ガスクロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、或いは立体異性体の分離において一般的に用いられる他の方法によって分離されてよい。好ましくは、立体異性体は、立体異性体の混合物の高温、および低大気圧、大気圧または超大気圧での分留を用いて分離される。最も好ましくは、立体異性体は、大気圧および165℃〜170℃の範囲の温度での、20を越える理論段数を有する精留塔を用いた分留によって分離される。
【0020】
シクロヘキシル基の1および6位の炭素原子にC−1エクアトリアルおよびC−6アキシアル位で結合する、オキシラン環の酸素原子を有し、そしてシクロヘキシル環の3位の炭素原子にエクアトリアル位で結合するビニル基を有する3−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンは、二つの立体異性体の総重量に基づく、好ましくは85重量%を超え、そして更に好ましくは95重量%を超える。同様に、シクロヘキシル基の1および6位の炭素原子にC−1アキシアルおよびC−6エクアトリアル位で結合する、オキシラン環の酸素原子、そしてシクロヘキシル環の2位の炭素原子にエクアトリアル位で結合するビニル基を有する2−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンは、二つの立体異性体の総重量に基づく、好ましくは85重量%を超え、そして更に好ましくは95重量%を超える。
【0021】
1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチル−トリシロキサンは、特に、Bトリメチルクロロシランおよびメチルジクロロシランの加水分解および縮合の後、生成物の分離、またはヘキサメチルジシロキサンとシラン系シリコーン流体との平衡、および分留を用いた目的生成物の分離を含む種々の方法によって調製される。高分子量オリゴマーおよびヘキサメチルジシロキサンのない、高純度の1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチル−トリシロキサン(標準沸点142℃)を調製するために、再蒸留等の更なる精製がしばしば用いられる。
【0022】
1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチル−トリシロキサンとエテニル−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンとの間のヒドロシリル化反応は、ヒドロシリル化触媒、とりわけ貴金属ヒドロシリル化触媒の存在下で行われる。該触媒は、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、およびロジウム、またこれらの金属を含有する化合物を含む。これらの触媒は、活性炭、酸化アルミニウム、セラミック材料等、または、金属塩の還元によってin situでしばしば形成されるコロイド懸濁液に担持されてよい。エタノール、イソプロパノールまたはオクタノールに溶解した塩化白金酸、およびキシレンまたはポリ締めチルシロキサンオイルに溶解した白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体(カールシュタット触媒として知られる)を含む均一系触媒が好ましい。
【0023】
触媒は、ヒドロシリル化反応を誘発し、そして完了させるのに十分な触媒量で用いられる。具体的には、触媒量は、金属の重量、および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチル−トリシロキサンとエテニル−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンとの総重量に基づく、1〜100ppmの金属触媒である。ヒドロシリル化反応は、反応体が反応器に導入され、そして混合物の温度が、0℃〜180℃、そして更に具体的には20℃〜120℃の範囲内に調製される、連続式プロセスまたはバッチ式プロセスで行われてよい。触媒を添加すると、反応は通常発熱反応であり、75℃〜200℃の温度に達する。該反応は、窒素等の不活性雰囲気で行われてよい。
【0024】
ヒドロシリル化反応は、米国特許第4,847,398号;5,191,103号;または5,159,096号(関連する部分は、参照することによってここに組み込まれる)に記載のように、開始剤の存在下で任意に行われる。これらの開始剤は、式(III):
RCO
2M (III)
〔式中、
Mは水素、アルカリまたはアルカリ土類金属、アンモニウムまたはホスホニウム塩であり;そして
Rは水素または1〜20の炭素原子の一価の炭化水素基を表す〕
を有するカルボン酸の塩を含む。好ましいカルボン酸は、3〜20の炭素原子を含有するものカルボン酸である。カルボン酸から誘導された開始剤の濃度は、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチル−トリシロキサンおよびエテニル−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンの合計重量に基づく、少なくとも200ppm、更に具体的には200ppm〜10,000ppmの量で用いられる。
【0025】
他の開始剤は、ヒンダードアミン、ヒンダードホスフィン、ケトン含有化合物、ヒドロキシル含有化合物、およびヒドロキシル置換有機化合物を含む。開始剤の非限定的な代表例は、酢酸ナトリウム、プロパン酸ナトリウム、オクタン酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムプロパン酸塩等のカルボン酸の塩、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール、1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン、ベンジルジイソプロピルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルエチレンジアミン、N−イソプロピルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4(2−ヒドロキシエトキシ)−、ピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン等のヒンダードアミン開始剤、およびトリ−tert−ブチルホスフィン、ベンジルジイソプロピルホスフィン、エチル ジ−tert−ブチルホスフィン、ジ−tert−ブチルペンチルホスフィン等のヒンダードホスフィン開始剤を含む。
【0026】
1,1,1,2,3,3,3−ヘプタメチル−トリシロキサンのエテニル−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンとのヒドロシリル化反応は、溶媒ありまたはなしで行われてよい。典型的な溶媒は、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素、およびテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテルを含む。
【0027】
ヒドロシリル化反応の反応生成物、[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンは、不純物、副生成物および未反応出発原料を除くため、更に精製されてよい。出発原料のエテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンは、例えば蒸留等によって立体異性体が分離されない限り、エポキシ化の後の異性体の混合物であることは理解されよう。4−ビニルシクロヘキサンのエポキシ化は、二つの異性体の総重量に基づく、40〜60重量%のシス−3−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンおよび40〜60重量%のトランス−3−エテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンの混合物を産生する。反応体のエテニル−7−オキサ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタンの沸点はより低いので、ヒドロシリル化反応の前に立体異性体を分離することは好ましく、これにより精製および分離プロセスを促進する。或いは、[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンの立体異性体を分離してシクロヘキシル環の所望の位置へ(メタ)アクリレート)の付加を促進するような立体異性体を産生するようにできる。
【0028】
[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンの開環反応は、触媒の存在下でも非存在下でも起こり得る。付加反応中に形成するベータヒドロキシル基を、[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンのオキシラン環とさらに反応して、(メタ)アクリロキシ含有トリシロキサンのダイマーもしくはオリゴマーを形成することから防ぐための触媒の存在下において反応を実施することは好ましい。反応のための触媒はBronsted酸もしくは塩基、Lewis酸もしくは塩基であってよい。具体的に、アルカリ金属ヒドロキシドもしくはアルカリ土類金属ヒドロキシド、鉱物酸、金属塩もしくは金属キレートが使用できる。特に、チタンテトラアルコキシドが使用され、ここでアルコキシ基が1〜12個の炭素原子を含むモノアルコールに由来する。チタンテトラアルコキシドの非限定的な代表例は、チタンテトラメトキシド、チタンテトラエトキシド、およびチタンテトライソプロプロキシドを含む。
【0029】
[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンのメタクリル酸またはアクリル酸またはそれらの塩との反応は、15℃〜180℃の温度で、低大気圧、大気圧または超大気圧で起きる。好ましくは、該反応は、60℃〜120℃の温度で大気圧で行われる。
【0030】
アクリロキシまたはメタクリロキシ基の活性化炭素−炭素二重結合の重合を阻止するために、反応は、重合防止剤の存在下で行われる。重合防止剤は、フェノール、ハイドロキノン、芳香族アミン、およびピペリジン−N−オキシルラジカルの誘導体を含む。重合防止剤の非限定的な代表例は、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルラジカル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルラジカル等を含む。
【0031】
3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンから得られるシリコーンハイドロゲルフィルムは、(メタ)アクリロキシおよび2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル基の1,3−置換のために、高い酸素透過性を示す。特定の理論にこだわることなく、シクロヘキシル基のトランス1,3−置換は、本発明のモノマーを含むポリマーに対し、よりランダム性(エントロピー)を導入し、それゆえに、大きな自由体積とよりよい酸素透過性を導入すると信じられている。本発明の化合物のハイドロゲル官能基は親水性モノマーとともに、シリコーンハイドロゲルが十分な量の水と少量で十分な領域のケイ素含有単位を持つことができるようにし、眼が高シリコーン含量の領域と直接接触することにより生じ得る眼への刺激、眼の充血およびその他の角膜合併症を生じたりせず、それゆえに、レンズの使用を限られた装着期間に制限しないようなフィルムを提供する。
【0032】
本発明の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンは、望ましい物理強度および吸水後の引き裂き抵抗を有する効果エラストマーを得るために使用されてよい。生物医学用具、特にコンタクトレンズにおける、本発明の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンの使用を以下に更に述べる。
【0033】
本発明はまた、3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンと少なくとも一つの従来の有機モノマー(コモノマーとも呼ばれる)とを含むシリコーンハイドロゲル組成物を提供する。新規のコポリマーは、一つもしくはそれ以上のアルキル−2−アルケノアート、シクロアルキル2−アルケノアート、ビニル含有アリール化合物、ビニル含有アラルキル化合物および比較的少量の架橋性モノマーと共重合した一つもしくはそれ以上の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンを含む。一般的に、20〜80重量部の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンと、80〜20重量部の広範囲の好適な性質を持つ2−アルケノアート、ビニル含有アリール、ビニル含有アラルキルモノマーからなる新規のコポリマーが調製される。本発明の一実施態様において、新規のコポリマーは、70〜45重量部のC1〜C4アルキルメタクリラートおよび/もしくはアクリラートおよび/もしくはシクロヘキシルメタクリラートおよび/もしくはアクリラートと、好ましくは少量の架橋性モノマーとともに共重合された30〜55重量部の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンを含む。
【0034】
コモノマーの非限定的な代表例は、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、ブチルメタクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、メチルアクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、N−ビニルピロリドン(NVP)、メタクリル酸(MA)、およびジメチルアクリルアミド(DMA)、スチレン、α−メチルスチレン、およびそれらの混合物を含む。
【0035】
架橋剤は、全モノマーの量に基づいて5重量%までの量およびそれ以上の量で、望ましくは0.1〜3重量%の量で、そして好ましくは2重量%までの量で存在し得る。架橋剤はそれらの組み合わせを含み、少なくとも二つの重合可能なエチレン結合を含む従来のエチレン性不飽和化合物の任意のものであってよい。アルキレングリコールおよびアクリル酸、メタクリル酸のポリアルキレグリコールエステル、もしくはクロトン酸ならびにジビニルベンゼンを使用し得る。架橋剤の非限定的な代表例は、エチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、プロピレングリコールジアクリラート、プロピレングリコールジメタクリラート、1,4−ブチレングリコールジメタクリラート、エチレングリコールジクロトナート、ジエチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、ジプロピレングリコールジメタクリラート、ジプロピレングリコールジアクリラート、トリメチレングリコールジアクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、トリエチレングリコールジクロトナート、テトラエチレングリコールジメタクリラート、ヘキサエチレングリコールジメタクリラート、トリプロピレングリコールジアクリラート、トリプロピレングリコールジメタクリラート、テトラプロピレングリコールジメタクリラート、トリブチレングリコールジメタクリラート、テトラブチレングリコールジメタクリラート、ヘキサメチレングリコールジメタクリラート、オクタメチレングリコールジメタクリラート、およびデカメチレングリコールジメタクリラートを含む。
他の好適な架橋剤は、アリルメタクリラート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ジアリルタルトラート、ジアリルマレアート、トリアリルメラミン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ジビニブシトラコナート、ジアリルフマラート、ジビニルスフホン、トリアリルホスフィト、ジアリルベンゼンホスホナート、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアクリルトリアジン、ジビニルエーテル、トリアリルシトラートを含む。架橋剤として有用なものは、ポリシロキサニルビス(アルキルグリセロールアクリラート)およびポリシロキサニルビス(アルキルグリセロールメタクリラート)のようなポリシロキサニル含有ポリエチレン性不飽和化合物である。
【0036】
本発明の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンは、望ましくは均質化剤の必要が一切なく、親水性コモノマーと混和性であり、これにより、モノマー〜コモノマー組成物のすべての範囲にわたって透明であるシリコーンハイドロゲルを可能にする。
【0037】
新規のコポリマーの高い酸素透過性は、そのシロキサン含量による。しかしながら、新規のコポリマーにおけるシロキサン結合の数がより多くなるとポリマー中に発生する望ましくない撥水性の傾向を高める。そのような状況において、重合混合物中に、他のコモノマーとともに、2−ヒドロエチルメタクリラート、2−ヒドロエチルアクリラート、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミドのような親水性モノマーを含めることが望ましい。
【0038】
重合は従来の条件にて実施できる。例えば、具体的には20℃〜80℃にて、より具体的には25℃〜45℃にて実施できる。重合は、重合可能なモノマーの全重量に基づいて、0.05〜1%の濃度の範囲の触媒的に十分な量のフリーラジカル触媒を用いて実施される。フリーラジカル触媒の非限定的な代表例は、t−ブチルペルオクトアート、ベンゾイルエルオキシド、イソプロピルペルカーボナート、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、およびジクミルペルオキシドを含む。使用され得る追加のフリーラジカル重合開始剤は、ビス−(tert−ブチルシクロヘキシル)−ペルオキシジカーボナート、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスジメチルバレロニトリルを含む。コバルト60照射のような、紫外線、ガンマ光、および高エネルギー放射線による照射は、モノマーの重合に使用できる。
【0039】
本発明のコポリマーは、透明(モノマーの貧弱な混和性により生ずる濁りがない)なポリマーであり、約10重量%から約60重量%の水を吸収し、優れた表面湿潤性と効果的な酸素透過性を示し、これらの全ては、レンズを装着したときのよりよい快適さのために必要であり、かつヒトの角膜の良好な健康のために必要である。本発明はまた、請求される発明のシリコーンハイドロゲルフィルムより作製されるコンタクトレンズをも提供する。本発明のシリコーンハイドロゲルフィルムより製造されるコンタクトレンズは、湿潤性を向上するためのプラズマ酸化、プラズマコーティング、内部湿潤剤のような高価な二次処理をまったく必要としない。すなわち、本発明のシリコーンハイドロゲルフィルムより製造されるコンタクトレンズは、二次処理なしに、ソフトで、本質的に質純正であり、高い酸素透過性を示す。
【0040】
本発明はまた、3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンと他の活性化炭素−炭素二重結合含有モノマーおよび架橋剤との反応により作製されるコポリマーをも対象とする。これらのコポリマーは、一つまたはそれ以上の本発明の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンと少なくとも一つのシリコーンハイドロゲルにおける使用に好適な他の親水性不飽和有機モノマーとから作製される。これらの親水性不飽和有機モノマーは、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシ−エチルメタクリラート(HEMA)、N−ビニルピロリドン、およびメタクリル酸のような非限定的な代表例を含む。そのようなコポリマーにおいて、本発明の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサン対他の活性化炭素−炭素二重結合含有モノマーの比率は、1:100〜100:1、好ましくは1:20〜20:1、そしてより好ましくは1:2〜2:1である。
【0041】
特定の一実施態様において、コポリマーは、本発明の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサン、ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、N−ビニルピロリンおよびエチレングリコールジメチルアクリラートの全重量に基づいて、40〜60重量%の本発明の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサン、20〜30重量%のジメチルアクリルアミド、15〜25重量%の2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、1〜10重量%のN−ビニルピロリンおよび0.1〜3重量%のエチレングリコールジメチルアクリラートから調製される。
【0042】
本発明のモノマーを用いるコポリマーを作製するために、望ましいモノマーが混合され、生じる混合物は、架橋剤の存在下においてペルオキシドもしくは光効果剤のいずれかを用いる公知の熱硬化技術もしくはUV硬化技術によって重合もしくは硬化されて透明の薄膜が形成される。コポリマーを作製するための重合の前の混合物を作製する前にモノマー混合物に添加されモノマーは、モノポリマーもしくはプレポリマーであってよい。「プレポリマー」は、重合可能な基を持つ中程度の分子量の反応中間体ポリマーである。
【0043】
本発明のポリマーは、透明で透過性で均一で単相の溶液を形成し、追加の均質化溶剤を用いることなく直接的に硬化できる。本発明の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンは、親水性ハイドロゲルモノマーと混和性である。Fedors法(Robert F. Fedors、Polymer Engineering and Science、1974年2月、14巻2号)によって計算された本発明のモノマーの溶解度パラメーター値は、おおよそ16.5〜おおよそ19(J/mol)
1/2の範囲であり、TRISのようなシリコーンモノマーと比べて、(HEMA、NVPおよびDMAのような)従来のハイドロゲルモノマーの溶解度パラメーター値により近い。本発明のモノマーと親水性コモノマーの間の溶解度パラメーターが約7.3(J/mol)
1/2未満であるとき、混和性が実現される。
【0044】
本発明の他の実施態様において、当技術分野に公知の方法によってポリマーをシリコーンハイドロゲルフィルムに作製できる。本発明のシリコーンハイドロゲルフィルムは、ソフトで、柔軟性でかつ高透過性である。本発明のシリコーンハイドロゲルフィルムは、80°〜30°の範囲の水と動的前進接触角を持ち、約10〜60重量%の水を吸収し、これらはシリコーンハイドロゲルフィルムの調製に使用される他の親水性不飽和有機モノマーによって変化する。作製されるシリコーンハイドロゲルは、コンタクトレンズ用途に必要とされる優れた機械的特性(低いモジュラスや高い引裂強度のような)を持つことが見出された。
【0045】
従来のシリコーンハイドロゲルフィルムは一般的に、疎水性シリコーンモノマーと親水性ハイドロゲルモノマーとの混合物を、それらがお互いに相溶性でないために約10〜40重量%の溶媒の存在下で硬化することによって製造される。しかしながら、本発明においては、3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンは、(HEMA、NVPおよびDMAのような)従来の親水性ハイドロゲルモノマーと一般的に混和性であることが見出され、溶媒を用いることなくシリコーンハイドロゲルフィルムを製造するのに好適な均一な溶液を作製することができる。
【0046】
本発明において、生じたポリマーは、当技術分野に公知の方法によってシリコーンハイドロゲルフィルムとされる。従って、本発明は、本発明のホモポリマーもしくはコポリマーから作製されるコンタクトレンズをも対象とする。本発明のモノマー/ポリマーは、米国特許第3,408,429号および米国特許第3,496,254号に開示されるようなスピンキャスティング法によって、米国特許第4,084,459号および米国特許第4,197,266号に開示されるようなキャスト成形によって、またはそれらの方法に組み合わせによって、あるいは、コンタクトレンズ作製のための他の任意の公知の方法によって、コンタクトレンズに成形できる。重合は、所望のコンタクトレンズの形に対応して、スピンモールドや固定モールドのいずれかによって実行され得る。必要に応じて、レンズはさらに機械的表面処理へと供され得る。所望の形のコンタクトレンズをもたらすために、ボタン、プレート、ロッドを作製するために適切なモールドもしくは容器において重合が実行され、そして(例えば旋盤もしくはレーザーによる切断もしくは研磨によって)加工され得る。
【0047】
本発明において生じるポリマーから作り上げられるコンタクトレンズの相対的な柔らかさや硬さは、変化させ得る。一般的に、3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンの、ポリマーを調製するのに用いられる他のモノマーに対する比を増加させると、材料の柔らかさは増大する。
【0048】
本発明のコポリマーは、紫外線吸収剤、顔料および着色剤を添加剤もしくはコモノマーの形態で含み得る。
【0049】
上述のように、本発明のシリコーンハイドロゲルは、高い酸素透過性と改善された表面湿潤性能とを示す。本発明によって使用されるモノマーおよびプレポリマーは容易に重合して、酸素を透過させ、よりよい機械的性能と光学的透明度を持ち、改善された湿潤性を持つ三次元ネットワークを形成する。
【0050】
フィルムの具体的な使用は、眼内コンタクトレンズ、人工角膜、使い捨て長期装用ソフトコンタクトレンズ、生物医学用具のコーティングを含む。
【0051】
本発明の他の実施態様において、3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンおよびそれらからのコポリマーの他の具体的な用途は、コーティング剤および接着剤のための添加剤もしくは樹脂としてである。本発明の添加剤もしくはコポリマーを含むコーティング剤は、低い表面エネルギー、スリップ、ソフトな感触、流動性および平滑性、耐水性及び放出特性のような数多くのすぐれた性質を示し得る。これらの性質は、グラフィック、布地、プラスチック、木、建築、自動車、金属、感圧接着剤用途のためのコーティング剤における主要な関心の対象である。3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサンの単官能性は、ポリマー合成中に過度の粘度が発生するのを防ぐ。新規の3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシルシクロヘキシル)エチル基を含有するトリシロキサン(添加剤)およびそれから作製されるコポリマーを含むコーティング剤は、粉体塗装、化成皮膜、不動態化コーティング、下地コーティング、ハイソリッドコーティング、水性コーティング、溶媒性コーティング、e−コーティング、ハードコートなどを含み得る。
【実施例】
【0052】
以下の実施例は、例示のみであって、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。他に明示されない限りすべての部および%は、重量によるもので、そしてすべての温度は摂氏である。
【0053】
作製されたシリコーンハイドロゲルフィルムのレンズ特性を下記の方法を用いて評価した。
【0054】
平衡含水率
フィルムを脱イオン化水に48時間浸漬した。その後、表面の水をリントレスのティッシュペーパーを用いて静かに拭き取った。水和されたフィルムを正確に秤量した後、オーブンで37℃48時間乾燥し、そして乾燥重量として再び秤量した。含水量を以下の式を用いて重量の変化に基づいて計算した。
%含水量=[水和したレンズの重量−乾燥レンズの重量]×100%÷水和したレンズの重量
【0055】
水湿潤性
水湿潤性を、Neumann AW, Godd RJ. Techniques of measuring contact angles. In: Good RJ, Stromberg RR, Editors. Surface and Colloid science - Experimental methods, 11巻. New York: Plenum Publishing; (1979), 31−61ページに従って測定した。
【0056】
フィルム表面の水湿潤性を、Rame Hart NRL CAのゴニオメータによって動的接触角法と気泡法の両方を用いて接触角を測定することによって評価した。動的接触角法において、濡れたフィルムがリントレスティッシュペーパーによって圧迫され、水滴が表面上に配置される。接触角はゴニオメータを用いて時間の関数で測定した。眼の状況をシミュレートするのにより良い気泡法において、シリンジから射出される気泡がMilli−Q水で浸漬されたフィルムと接触するようにされ、接触角が測定される。より低い接触角の値は、親水性の度合いがより大きいこともしくはフィルムの表面湿潤性がよりよいことを表す。
【0057】
酸素透過性(Dk値)
これらのサンプルの酸素透過度(Dk値)は、ISO 9913標準法によるポーラログラフ技術を用いて測定した。フィルムを透過セルにクランプし、ドナーチャンバが酸素飽和PBS(リン酸緩衝生理食塩水)によって満たした。受容セルの酸素の濃度を観測し、時間の関数としてプロットし、透過性をプロットの初期の傾きによって決定した。
【0058】
ここで酸素透過係数はBarrerで表されるDk値とも言われ、ここで1 Barrer=10
−11(cm
3O
2)cm cm
−2 s
−1 mmHg
−1であり、ここで、「cm
3O
2」は標準温度および標準圧での水の量であり、「cm」は物質の厚さを表し、「cm
−2」は物質の表面面積の逆数もしくは3.348×10
−19kmol m/(m
2sPa)である。水のDkは80Barrerである。
【0059】
モジュラス
水和フィルムのヤング率は、Instron引張試験機を用いて測定した。湿潤下サンプルを6cm×0.8cmのストリップに切断し、機械的性質は、50Nの荷重セルと10mm/分のクロスヘッド速度によって測定した。モジュラスは、応力−歪み曲線の初期の傾きから決定した。モジュラスは物質の柔らかさと直接的に相関する。モジュラスが低くなると、物質はより柔らかくなる。
【0060】
屈折率
屈折率は、20℃における炭化水素液体の屈折率および屈折分散のためのASTM D1218標準試験法によって測定した。
【0061】
密度
密度は、20℃における液体工業化学の比重(見かけ上)のためのASTM D891−09法によって測定した。
【0062】
実施例1 エポキシ開環反応にチタンアルコキシド触媒を用いた、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステルの調製
【0063】
温度調節器、加熱マントル、およびコンデンサを備えた500mLの丸底フラスコに、3−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(57.8グラム、0.47モル)を添加した。溶液をマグネチックスターラーで攪拌し、75℃に加熱した。塩化白金酸(20ppm)を添加した後、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン(100グラム、0.45モル)を添加漏斗経由でゆっくりと添加した。発熱は85℃を超えないようにした。添加後、反応を75℃で2時間保持した。得られた生成物を0.9torrの真空下で15.24センチメートル(6インチ)のVigreuxカラムを通じて蒸留した。生成物の3−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンは、110℃〜120℃の間で放出された。純粋な生成物(151.1グラム、収率96%)は、透明な無色の液体であった。
【0064】
3−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(100グラム、0.288モル)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(0.0034グラム)、およびチタンテトラエトキシド(0.44グラム)を、マグネチックスターラーを備えた三口丸底フラスコに入れた。フラスコを90℃に加熱した。その後、アクリル酸(20.8グラム、0.288モル)をフラスコに入れ、90℃および大気圧で8時間に渡って攪拌した。その後、反応フラスコを90℃で更に3時間加熱した。生成物を室温まで冷却し、窒素下で保存した。生成物をガスクロマトグラフィおよびガスクロマトグラフィ/マススペクトルで分析し、明らかになった。
【0065】
0.4重量% 3−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−
エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン
42.0重量% トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−
(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−
シクロヘキシルアクリル酸エステル
4.5重量% シス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−
(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−
シクロヘキシルアクリル酸エステル
43.4重量% トランス−2−ヒドロキシ−トランス−4−[2−ビス−
(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−
シクロヘキシルアクリル酸エステル
2.9重量% シス−2−ヒドロキシ−トランス−4−[2−ビス−
(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−
シクロヘキシルアクリル酸エステル
0.8重量% 2−アクリロイルオキシ−5−[ビス−
(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−
シクロヘキシルアクリル酸エステル
3.3重量% 5−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−
エチル]−2−(5−[ビス−(トリメチルシロキシ)
メチルシラニル−エチル]−2−ヒドロキシ−
シクロヘキシルオキシ)−シクロヘキシルアクリル酸
エステル、および関連二量体
【0066】
エポキシ開環反応におけるチタンテトラエトキシド触媒の使用は、非常に低い濃度の二量体またはオリゴマー成分を有する反応生成物を生じた。
【0067】
実施例2 エポキシ開環触媒を用いない、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステルの調製
【0068】
温度調節器、加熱マントル、およびコンデンサを備えた500mLの丸底フラスコに、3−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(57.8グラム、0.47モル)を添加した。溶液をマグネチックスターラーで攪拌し、75℃に加熱した。塩化白金酸(20ppm)を添加した後、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン(100グラム、0.45モル)を添加漏斗経由でゆっくりと添加した。発熱は85℃を超えないようにした。添加後、反応を75℃で2時間保持した。得られた生成物を0.9torrの真空下で15.24センチメートル(6インチ)のVigreuxカラムを通じて蒸留した。生成物の3−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンは、110℃〜120℃の間で放出された。純粋な生成物(151.1グラム、収率96%)は、透明な無色の液体であった。
【0069】
3−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(50グラム、0.144モル)、および2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(0.0021グラム)を、マグネチックスターラーを備えた三口丸底フラスコに入れた。フラスコを90℃に加熱した。その後、アクリル酸(10.4グラム、0.144モル)を、シリンジポンプを用いて0.043mL/分の速度で4時間掛けてフラスコに添加した。反応フラスコの混合物を90℃で更に3時間加熱した。反応生成物を室温まで冷却し、窒素下で保存した。生成物をガスクロマトグラフィおよびガスクロマトグラフィ/マススペクトルで分析し、明らかになった。
【0070】
9.1重量% 3−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−
エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン
27.1重量% トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−
(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−
シクロヘキシルアクリル酸エステル
2.3重量% シス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−
(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−
シクロヘキシルアクリル酸エステル
26.2重量% トランス−2−ヒドロキシ−トランス−4−[2−ビス−
(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−
シクロヘキシルアクリル酸エステル
1.4重量% シス−2−ヒドロキシ−トランス−4−[2−ビス−
(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−
シクロヘキシルアクリル酸エステル
0.3重量% 2−アクリロイルオキシ−5−[ビス−
(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−
シクロヘキシルアクリル酸エステル
31.8重量% 5−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−
エチル]−2−(5−[ビス−(トリメチルシロキシ)
メチルシラニル−エチル]−2−ヒドロキシ−
シクロヘキシルオキシ)−シクロヘキシルアクリル酸
エステル、および関連二量体
【0071】
3−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンとアクリル酸との間の反応が、チタンテトラエトキシドエポキシ開環反応なしに行われた場合、生成物は大量の5−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−2−(5−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−2−ヒドロキシ−シクロヘキシルオキシ)−シクロヘキシルアクリル酸エステル、および関連二量体を含有した。
【0072】
実施例3 シス−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンを用いる、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステルの調製
【0073】
温度調節器、加熱マントル、金属の削りくずを充填した160cmの精留カラム、およびコンデンサを備えた5Lの丸底フラスコに、シスおよびトランス−3−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(2,000)の混合物を大気圧で蒸留し、シス−3−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンを得る。
【0074】
温度調節器、加熱マントル、およびコンデンサを備えた500mLの丸底フラスコに、シス−3−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(57.8グラム、0.47モル)を添加する。溶液をマグネチックスターラーで攪拌し、75℃に加熱する。塩化白金酸(20ppm)を添加した後、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン(100グラム、0.45モル)を添加漏斗経由でゆっくりと添加する。発熱は85℃を超えないようにする。添加後、反応を75℃で2時間保持する。得られた生成物を0.9torrの真空下で15.24センチメートル(6インチ)のVigreuxカラムを通じて蒸留する。生成物のシス−3−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンが得られる。
【0075】
シス−3−[ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(100グラム、0.288モル)、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(0.0034グラム)、およびチタンテトラエトキシド(0.44グラム)を、マグネチックスターラーを備えた三口丸底フラスコに入れる。フラスコを90℃に加熱する。アクリル酸(20.8グラム、0.288モル)を、添加漏斗を経由してフラスコにゆっくり添加し、そして反応混合物を90℃および大気圧で8時間掛けて攪拌する。反応フラスコの混合物を90℃で更に3時間加熱する。生成物を室温まで冷却し、窒素下で保存する。
【0076】
シス−3−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンのシス−異性体のみが、トランス−2−ヒドロキシ−トランス−5−[2−ビス−(トリメチルシロキシ)メチルシラニル−エチル]−シクロヘキシルアクリル酸エステルの調製に用いられる場合、生成物は、目的の立体異性体が豊富になるかもしれない。
【0077】
比較例A 2−[2−(3−トリメチルシラニル−プロポキシ)−ヘプタ−エトキシ]−エチル 2−メチルアクリル酸エステルの調製
【0078】
1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチル−トリシロキサン(70グラム、0.32モル)、および平均8のエチレンオキサイド(EO)単位を鎖に有するメタリル末端ポリエチレングリコールを、還流コンデンサ、メカニカルスターラー、熱電対を有する温度調節器、および窒素入口を備えた500mLの三口丸底フラスコに入れた。内容物を、デヒドロカップリング反応のような副反応が起きないように、カールシュタット触媒(1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンの白金錯体、入れた全ての反応体の重量に基づく30ppm白金)および50ppmのプロピオン酸ナトリウム緩衝液の存在下で80℃〜85℃に加熱した。ヒドロシリル化の完了後、揮発性化合物を減圧下で蒸留(除去)した。生成物のヒドロキシ末端シリコーンポリエーテルを無色、透明の液体として、望ましくない副生成物のない定量的な収率で得た。
【0079】
上記ステップで合成したヒドロキシ末端シリコーンポリエーテル(201グラム、0.32モル)、トリエチルアミン(30.3グラム)およびメチルエチルケトン(250ml)を、滴下漏斗および攪拌ブレードを備えた三口の1リットル丸底フラスコに入れた。フラスコを氷浴に浸け、そして塩化メタクリロイル(31.2グラム、0.30モル)をおよそ1時間掛けて攪拌を継続しながら滴下した。滴下終了後、攪拌を更に三時間室温で続けた。そして形成したトリエチルアミン塩酸塩が、反応中に凝結した。溶媒を回転式真空エバポレーターで除去し、そして最終モノマーを無色、透明の液体として得た。低沸点の溶媒の使用により、溶媒は約30℃〜40℃の温度で、1333.2Pa(10mmHg)の真空で完全に除去することが出来た。得られた親水性モノマー生成物は、無色〜淡黄色であった。
【0080】
実施例4 シリコーンハイドロゲルの作製に用いたコモノマーおよび実施例1の生成物の密度、屈折率および溶解パラメーター
【0081】
密度および屈折率は、ハイドロゲルの作製に用いた一連のモノマーについて、ASTM法D1218およびD891−09によって20℃で測定する。溶解パラメーターは、Fedors method (Rober F. Fedors, Polymer Engineering and Science, 1974年2月、14巻2号)に基づく方法を用いて算出した。結果を表Iに報告する。
【0082】
【表I】
1TRISは3−メタクリロキシプロピル−トリス−(トリメチルシロキシ)シランである。
2Comp.Example Aは2−[2−(3−トリメチルシラニル−プロポキシ)−ヘプタ−エトキシ]−エチル 2−メチル−アクリル酸である。
3HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレートである。
4DMAはジメチルアクリルアミドである。
5NPVはN−ビニルピロリドンである。
【0083】
実施例1の3−アクリロキシ置換(ヒドロキシシクロヘキシル)エチルトリシロキサンと表中の有機親水性コモノマーの間の溶解パラメーターの差は、2.9〜6.6(J/mol)
1/2の範囲であり、そして全てが上記の7.3(J/mol)
1/2の基準未満である。これらのデータは、本発明の、3−(メタ)アクリロキシ置換(ヒドロキシシクロヘキシル)エチル基を有する、(メタ)アクリロキシ含有トリシロキサンは、反応体の混和性を向上するために共溶媒を必要とせずに、親水性モノマーと重合化されることを示す。
【0084】
実施例5 実施例1の化合物および2−ヒドロキシエチルメタクリレートコモノマーを用いたシリコーンハイドロゲルの調製
【0085】
実施例1で得られた化合物(49重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(49重量部)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA、0.5重量部)、および過酸化ベンゾイル(0.5重量部)を混合し、そして攪拌した。得られた透明、均一、そして澄明な反応混合物を窒素ガスでパージし、鋼金型に注ぎ、そして85℃〜90℃で5〜6時間、温風オーブンで硬化した。フィルム厚は1〜2ミリメートルの間であった。硬化後、フィルムを熱湯に浸して金型から外した。浸出するモノマーをイソプロパノール−水洗浄を用いて除去した。その後、フィルムを脱イオン水に保存した。
【0086】
製造されたシリコーンハイドロゲルフィルムは、澄明で、柔らかく、そして表IIに報告する特性を有していた。
【0087】
比較例B 比較例Aの化合物を用いたシリコーンハイドロゲルの調製
【0088】
比較例Aで得られた化合物(49重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(49重量部)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA、0.5重量部)、および過酸化ベンゾイル(0.5重量部)を混合し、そして攪拌した。得られた透明、均一、そして澄明な反応混合物を窒素ガスでパージし、鋼金型に注ぎ、そして85℃〜90℃で5〜6時間、温風オーブンで硬化した。フィルム厚は1〜2ミリメートルの間であった。硬化後、フィルムを熱湯に浸して金型から外した。浸出するモノマーをイソプロパノール−水洗浄を用いて除去した。その後、フィルムを脱イオン水に保存した。
【0089】
製造されたシリコーンハイドロゲルフィルムは、澄明で、そして表IIに報告する特性を有していた。
【0090】
比較例C 3−メタクリロキシプロピル−トリス−(トリメチルシロキシ)シランおよびヒドロキシエチルメタクリレートコモノマーを用いたシリコーンハイドロゲルの調製
【0091】
3−メタクリロキシプロピル−トリス−(トリメチルシロキシ)シラン(49重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(49重量部)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA、0.5重量部)、および過酸化ベンゾイル(0.5重量部)を混合し、そして攪拌した。得られた透明、均一、そして澄明な反応混合物を窒素ガスでパージし、鋼金型に注ぎ、そして85℃〜90℃で5〜6時間、温風オーブンで硬化した。フィルム厚は1〜2ミリメートルの間であった。硬化後、フィルムを熱湯に浸して金型から外した。浸出するモノマーをイソプロパノール−水洗浄を用いて除去した。その後、フィルムを脱イオン水に保存した。
【0092】
製造されたシリコーンハイドロゲルフィルムは、澄明で、そして表IIに報告する特性を有していた。
【0093】
【表II】
【0094】
実施例5のモノマーで作製されたハイドロゲルは、26%の低いシロキサン含率、88%の%透過率、および良好な吸水性を有し、それが透明さを維持しながらのよりよい感触、およびより少ない角膜合併症に繋がる。3−メタクリロキシプロピル−トリス−(トリメチルシロキシ)シランで作製されたハイドロゲル(比較例C)は、35%の高いシロキサン含率、60%の低い透過率、そして良好な吸水性を有した。
【0095】
実施例6 実施例1の化合物およびジメチルアクリルアミドコモノマーを用いたハイドロゲルの調製
【0096】
実施例1で得られた化合物(49重量部)、ジメチルアクリルアミド(49重量部)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)(1重量部)、および1,2−オクタンジオン 1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)(1重量部 Irgacure OXE01)を混合し、そして攪拌した。得られた透明、均一、そして澄明な反応混合物を窒素ガスでパージし、そしてポリスチレンペトリ皿で覆われたアルミニウムパンに注いだ。反応混合物の薄膜をチャンバーで15mW/cm
2、20分間のUV照射に曝した。硬化後、フィルムをイソプロピルアルコールに浸漬し、その後、脱イオン水中に48時間置いた。製造されたシリコーンハイドロゲルフィルムは、澄明で、柔らかく、そして表IIIに報告する特性を有していた。
【0097】
比較例D 実施例1の化合物およびN−ビニルピロリドンコモノマーを用いたシリコーンハイドロゲルの調製
【0098】
実施例1で得られた化合物(49重量部)、N−ビニルピロリドン(49重量部)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA、0.5重量部)、および過酸化ベンゾイル(0.5重量部)を混合し、そして攪拌した。得られた透明、均一、そして澄明な反応混合物を窒素ガスでパージし、鋼金型に注ぎ、そして85℃〜90℃で5〜6時間、温風オーブンで硬化した。フィルム厚は1〜2ミリメートルの間であった。硬化後、フィルムを熱湯に浸して金型から外した。浸出するモノマーをイソプロパノール−水洗浄を用いて除去した。その後、フィルムを脱イオン水に保存した。
【0099】
製造されたシリコーンハイドロゲルフィルムは、澄明で、柔らかく、そして弾力があり、そして表IIIに報告する特性を有していた。
【0100】
実施例8 実施例1の化合物を用いたシリコーンハイドロゲルの調製
【0101】
実施例1で得られた化合物(49重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(14.7重量部)、ジメチルアクリルアミド(34.3重量部)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA、0.5重量部)、および過酸化ベンゾイル(0.5重量部)を混合し、そして攪拌した。得られた透明、均一、そして澄明な反応混合物を窒素ガスでパージし、鋼金型に注ぎ、そして85℃〜90℃で5〜6時間、温風オーブンで硬化した。フィルム厚は1〜2ミリメートルの間であった。硬化後、フィルムを熱湯に浸して金型から外した。浸出するモノマーをイソプロパノール−水洗浄を用いて除去した。その後、フィルムを脱イオン水に保存した。
【0102】
製造されたシリコーンハイドロゲルフィルムは、澄明で、柔らかく、そして弾力があり、そして表IIIに報告する特性を有していた。
【0103】
【表III】
【0104】
これらの結果は、高い含水量を持つ透明な、澄明なシリコーンハイドロゲルは、3−アクリロキシ置換(ヒドロキシシクロヘキシル)エチル基を有する、アクリロキシ含有トリシロキサンと、該トリシロキサンの値の7.3(J/mol)
1/2以内の溶解パラメーターを持つ親水性コモノマーから形成されることを示す。実施例8において、実施例1の化合物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびジメチルアクリルアミドのターポリマーは、非常に高い%透過率、低いシロキサン含量、そして良好な吸水性を有した。
【0105】
実施例9 実施例1の化合物、ジメチルアクリルアミド、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートコモノマーを用いたシリコーンハイドロゲルの調製
【0106】
実施例1で得られた化合物(49重量部)、ジメチルアクリルアミド(34.3重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(14.7重量部)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA、0.5重量部)、および過酸化ベンゾイル(0.5重量部)を混合し、そして攪拌した。得られた透明、均一、そして澄明な反応混合物を窒素ガスでパージし、鋼金型に注ぎ、そして85℃〜90℃で5〜6時間、温風オーブンで硬化した。フィルム厚は1〜2ミリメートルの間であった。硬化後、フィルムを熱湯に浸して金型から外した。浸出するモノマーをイソプロパノール−水洗浄を用いて除去した。その後、フィルムを脱イオン水に保存した。
【0107】
製造されたシリコーンハイドロゲルフィルムは、澄明で、柔らかく、そして弾力があり、そして特性:
%含水量: 30±2%
キャプティブバブル接触角: 35±4°
%透過率: 95%を超える
モジュラス: 0.45±0.05Mpa
を有していた。
【0108】
実施例10 実施例1の化合物、ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、およびN−ビニルピロリドンコモノマーを用いたハイドロゲルの調製
【0109】
実施例1で得られた化合物(50重量部)、ジメチルアクリルアミド(25重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(20重量部)、N−ビニルピロリドン(5重量部)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA、0.5重量部)、および過酸化ベンゾイル(0.5重量部)を混合し、そして攪拌した。得られた透明、均一、そして澄明な反応混合物を窒素ガスでパージし、鋼金型に注ぎ、そして85℃〜90℃で5〜6時間、温風オーブンで硬化した。フィルム厚は1〜2ミリメートルの間であった。硬化後、フィルムを熱湯に浸して金型から外した。浸出するモノマーをイソプロパノール−水洗浄を用いて除去した。その後、フィルムを脱イオン水に保存した。製造されたシリコーンハイドロゲルフィルムは、澄明で、柔らかく、そして弾力があり、そして特性:
%含水量: 25±2%
キャプティブバブル接触角: 30±4°
%透過率: 95%を超える
モジュラス: 0.4±0.1Mpa
を有していた。
【0110】
上述の説明は多くの具体例を含むがこれらの具体例は本発明の範囲を限定することを意図せず、その好ましい実施態様の例示に過ぎない。当業者なら、添付の請求項に定義される本発明の範囲および精神を離れることなく、他の多くの変更を想到し得るであろう。