特許第6257654号(P6257654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キム ビョンギュンの特許一覧

<>
  • 特許6257654-金属蓄熱装置 図000002
  • 特許6257654-金属蓄熱装置 図000003
  • 特許6257654-金属蓄熱装置 図000004
  • 特許6257654-金属蓄熱装置 図000005
  • 特許6257654-金属蓄熱装置 図000006
  • 特許6257654-金属蓄熱装置 図000007
  • 特許6257654-金属蓄熱装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257654
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】金属蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
   F24S 60/00 20180101AFI20171227BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20171227BHJP
   F24S 23/30 20180101ALI20171227BHJP
   F24S 10/70 20180101ALN20171227BHJP
【FI】
   F24J2/34 Z
   F28D20/00 A
   F24J2/08
   !F24J2/24 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-557935(P2015-557935)
(86)(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公表番号】特表2016-511819(P2016-511819A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】KR2014000321
(87)【国際公開番号】WO2014126342
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0017182
(32)【優先日】2013年2月18日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515058145
【氏名又は名称】キム ビョンギュン
【氏名又は名称原語表記】KIM, Byunggyun
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム ビョンギュン
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−104437(JP,A)
【文献】 特開昭50−122945(JP,A)
【文献】 米国特許第4449515(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 2/34
F24J 2/08
F28D 20/00
F24J 2/42
F24J 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状または方形状に配置される金属蓄熱媒体(2)と、
前記金属蓄熱媒体(2)を断熱するように、前記金属蓄熱媒体(2)の内側と外側と底とに、それぞれ内部断熱壁体(31)で構成された断熱内壁(32)と断熱外壁(33)と断熱底壁(34)とが配置された蓄熱媒体装入室(3)と、
前記金属蓄熱媒体(2)をさらに断熱するように、底壁(41)と中央柱(42)と外部壁体(43)と上部蓋(44)とを有するコンクリートで構成された外壁構造体(4)と、
前記金属蓄熱媒体(2)で発生する赤外線を反射するように、前記外壁構造体(4)の前記上部蓋(44)の下方に設置された赤外線反射鏡(5)と、
前記金属蓄熱媒体(2)の内側に螺旋状に配置されるとともに給水管(61)と排水管(62)とが前記外壁構造体(4)の外部に露出する熱交換器(6)と、
前記金属蓄熱媒体(2)に埋設される太陽熱ヒーター(7)と、
前記太陽熱ヒーター(7)に太陽熱エネルギーを供給することができるように、前記外部壁体(43)と前記断熱外壁(33)とを貫通して設置される高密度光入射部(8)と、
を備えることを特徴とする金属蓄熱装置。
【請求項2】
前記金属蓄熱媒体(2)は、鋳物状態のブロック体からなることを特徴とする請求項1に記載の金属蓄熱装置。
【請求項3】
前記内部断熱壁体(31)は、赤外線反射金属鏡(31a)と、高密度耐火断熱材(31b)と、多孔質耐火断熱材(31c)と、保温耐火断熱材(31d)とを積層して形成され、
前記赤外線反射金属鏡(31a)が前記金属蓄熱媒体(2)の方に位置するように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の金属蓄熱装置。
【請求項4】
前記外壁構造体(4)は、耐火セメントを使用し、防水剤を含んだコンクリートからなることを特徴とする請求項1に記載の金属蓄熱装置。
【請求項5】
前記外壁構造体(4)の前記上部蓋(44)とその下方に設置される前記赤外線反射鏡(5)との間に、エアロゲルタイプの軽量な材質からなる耐火断熱材(9)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の金属蓄熱装置。
【請求項6】
前記高密度光入射部(8)は、
前記外壁構造体(4)と前記内部断熱壁体(31)とを貫通するように設置されるとともに前記太陽熱ヒーター(7)に結合される高温断熱パイプ(81)と、
前記高温断熱パイプ(81)の先端に結合される凸レンズ(82)と、
前記高温断熱パイプ(81)の内部の前記凸レンズ(82)の焦点位置に設置されるとともに中央に通過孔(84)が形成された反射用金属放物鏡(83)と
を有することを特徴とする請求項1に記載の金属蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外部から伝達される熱を貯蔵するための金属蓄熱装置に関し、特に、太陽光集光装置などを通じて集光された高温の太陽熱エネルギーを高温で貯蔵してから徐々に放出できるようにすることによって、天然エネルギーである太陽熱の貯蔵を画期的に改善することができる金属蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱ボイラーの場合、太陽光集光装置を利用して太陽熱を集光して高温の太陽熱エネルギーを取得し、取得した太陽熱エネルギーを貯蔵して用いる。
【0003】
一般的に用いられる太陽熱ボイラーでの熱貯蔵は多様な方法で行われる。代表例として、韓国公開実用新案20−1999−0036697号公報(1999年9月27日)の太陽熱温水ボイラーが提案されている。この太陽熱温水ボイラーの構成は以下のとおりである。内部に電気ヒーターが設置されたボイラーにおいて、外部ケースの内側に配置されるとともに水を貯蔵する貯水筒と、外部ケースと貯水筒との間に断熱材を充填して形成された断熱壁と、貯水筒の一端に連結されるとともに水を供給する給水管と、貯水筒の他端に連結されるとともに各加熱部を循環した温水を回収する回収管と、回収管上に配置されるとともに温水を強制的に循環させる循環ポンプと、貯水筒上部の一端に連結されるとともに熱を必要とする加熱部に温水を供給する排水管と、によって、温水筒が構成される。さらに、集光装置を備え、集光装置は以下の構成を有する。建物外側の両フレームの回転軸に対し回転可能に設置されるとともに太陽熱を集光するレンズと、レンズの一端に設置された太陽光追尾センサーと、太陽光追尾センサーと連動して太陽の角度に応じてレンズを回転させる駆動モーターと、加熱管を有するとともに支持棒によってレンズの焦点位置に結合される集熱板と、を備え、過熱管の両端と貯水筒の上端及び下端は循環管によって連結され、循環管は貯水筒の上端と結合されて貯水筒に加熱された温水を供給し、循環管は貯水筒の下端に設置されて集熱板に加熱される温水を供給する。
【0004】
このように構成された太陽熱温水ボイラーは、集光部をからの太陽熱によって水を加熱した後、断熱層で囲まれた保温効率の良い貯水筒に温水を貯蔵してから暖房用水や温水として用いられ、特に、昼間に貯蔵され夜間に暖房用水として用いられる。しかし、水を直接加熱する方法では蓄熱率が低く、長時間使用できない等の問題があった。それゆえ、冬季には実際に使用することが困難であり、実用化には至らなかった。
【0005】
他の実施例として、韓国登録実用新案20−0438245号公報(2008年02月1日)の太陽熱ボイラーの蓄熱槽が提案されている。太陽熱ボイラーの蓄熱槽は、太陽熱集熱機の熱伝達媒体を利用して蓄熱槽の本体フレーム内の暖房水を加熱するように設置されたヒーターと、ヒーターで加熱された高温の暖房水と熱交換するように本体フレームの内部上方に設置されるとともに温水を加熱し供給するための熱交換器と、を備える。ヒーターは、第1のヒーターと第2のヒーターとを有し、第1のヒーターは、本体フレームの内部上方に配置された熱交換部の周囲にコイル管を巻き付けることによって水を加熱し、第2のヒーターは、本体フレームの内部下方にコイル管を巻き付けることによって水を加熱する。
【0006】
このような構成は、太陽熱で熱伝達媒体を加熱し、熱伝達媒体を利用して用水を加熱できるようにしたもので、単純に水を加熱する方法よりも蓄熱率を高めることができる等の長所があるが、この構成においても蓄熱槽が大型化し、曇った天気が続く場合にはその機能が発揮されない等の問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開実用新案第20−1999−0036697号公報
【特許文献2】韓国登録実用新案第200438245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者は前述した従来の蓄熱装置の諸問題を解決するため本発明を完成するに至った。本発明では、特に太陽光集光装置などを通じて集光された高温の太陽熱エネルギーを高温で貯蔵してから徐々に放出することができるようにすることで、天然エネルギーである太陽熱の貯蔵を画期的に改善することができる金属蓄熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、高温(100〜1300℃)の太陽熱エネルギーを貯蔵する金属蓄熱媒体を二重に断熱するように構成され、金属蓄熱媒体と近接するように熱交換器を設置することで、長時間暖房水を加熱することができるように構成される。
【0010】
上記金属蓄熱媒体を断熱する二重断熱手段として、本発明では、金属蓄熱媒体の内側と外側と底とにそれぞれ断熱内壁と断熱外壁と断熱底壁とを配置して形成された蓄熱媒体装入室と、底壁と中央柱と外壁体と上部蓋とを有するコンクリートで構成された外壁構造体と、上部蓋の下方に設置された赤外線反射鏡と、を利用することにより、熱の損失を最小限にすることができる。
【0011】
上記金属蓄熱媒体は、鋳物状態のブロック体で構成してもよい。
【0012】
上記内部断熱壁体は、赤外線反射金属鏡と、高密度耐火断熱材と、多孔質耐火断熱材と、熱抵抗性に優れた保温耐火断熱材とを積層して構成され、赤外線反射金属鏡を金属蓄熱媒体の方に位置されるように配置してもよい。
【0013】
上記外壁構造体は、耐火セメントを用い、防水剤を含むコンクリートで構成してもよい。
【0014】
上記金属蓄熱装置は、上記外壁構造体の上部蓋とその下方に設置される赤外線反射鏡との間に、エアロゲルタイプの軽量な材質で構成される耐火断熱材をさらに備えてもよい。
【0015】
上記高密度光入射部は、上記外壁構造体と上記内部断熱壁体とを貫通するように設置されるとともに上記太陽熱ヒーターに結合される高温断熱パイプと、上記高温断熱パイプの先端に結合される凸レンズと、上記高温断熱パイプ内部の凸レンズの焦点位置に設置されるとともにその中央に通過孔が形成された反射用金属放物鏡と、を含むように構成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる金属蓄熱装置は、鋳物状態の金属蓄熱媒体を備え、その外側を内部断熱壁体及びコンクリートをよって二重に断熱することで、熱の損失を完全に防ぐことができ、特に、太陽光集光装置などを通じて集光された高温の太陽熱エネルギーを高温で貯蔵してから徐々に放出することができるため、太陽熱ボイラーに適用することが可能である。
【0017】
したがって、本発明にかかる実施形態のように太陽熱ボイラーを構成する場合、天然エネルギーである太陽熱を利用して冬季でも暖房を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態にかかるリング状の金属蓄熱装置であって、約1000kWの蒸気発電に用いることができる金属蓄熱装置の正断面図である。
図2図1の平断面図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる金属蓄熱媒体の構成を示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態にかかる蓄熱媒体装入室を構成する内部断熱壁体の構成を示す拡大断面図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる熱交換器の構成を示す正面図である。
図6】本発明の一実施形態にかかる高密度光入射部の構成を示す拡大断面図である。
図7】本発明の一実施形態にかかる金属蓄熱装置に複数の太陽光集光装置を設置した状態の正断面図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明で提供する金属蓄熱装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態にかかるリング状の金属蓄熱装置であって、約1000kWの蒸気発電に用いることができる金属蓄熱装置の正断面図を示したものであり、図2図1の平断面図を示したものである。
【0021】
本実施形態では、特に太陽光集光装置などを利用して集光された熱エネルギーを高温(200〜1300℃)で貯蔵することができる金属蓄熱装置1を提供する。
【0022】
金属蓄熱装置1は、リング状に配置される金属蓄熱媒体2と、金属蓄熱媒体2を断熱するように金属蓄熱媒体2の内側と外側と底とにそれぞれ内部断熱壁体31を構成する断熱内壁32と断熱外壁33と断熱底壁34とを配置して形成された蓄熱媒体装入室3と、金属蓄熱媒体2をさらに断熱するように底壁41と中央柱42と外壁体43と上部蓋44を含むコンクリートで構成された外壁構造体4と、金属蓄熱媒体2で発生する赤外線を反射するように外壁構造体4を構成する上部蓋44の下方に設置された赤外線反射鏡5と、金属蓄熱媒体2の内側に螺旋状に配置されるとともに給水管61と排水管62とが外壁構造体4の外部に露出する熱交換器6と、金属蓄熱媒体2に埋設される太陽熱ヒーター7と、太陽熱ヒーター7に太陽熱エネルギーを供給することができるように外壁体43と断熱外壁33とを貫通して設置される高密度光入射部8と、を備える。
【0023】
上記のように、高温で熱エネルギーを貯蔵するためには耐熱性の高い金属蓄熱媒体2が必要となるが、本実施形態では、製造費用が低廉でありながらも耐熱性の高い金属蓄熱媒体2を提供する。
【0024】
図3は本実施形態にかかる金属蓄熱媒体2の斜視図を示したもので、金属蓄熱媒体2は金属スクラップなどを溶かして鋳物状態で構成したユニット部材で製作される。このとき、金属スクラップは加工チップや種々の大きさの金属片をリサイクルすることで、製造費用を最小限にすることができる。
【0025】
本実施形態において、上記のユニット部材型の金属蓄熱媒体2は、四角形のブロック状に積層可能であり、また、金属蓄熱媒体2には少なくとも1つの太陽熱ヒーター7が設置される。本実施形態では、金属蓄熱媒体2に1つの太陽熱ヒーター7を設置した例を示している。
【0026】
金属蓄熱媒体2はリング状に配置され、また積層されて多層構造となる。本実施形態では約50個をリング状に配列し、垂直方向に7層積層した例を示している。
【0027】
金属蓄熱媒体2を1次断熱する蓄熱媒体装入室3は、断熱内壁32と断熱外壁33と断熱底壁34とを備え、これらの壁は4重構造の内部断熱壁体31で構成される。
【0028】
図4は、本実施形態における蓄熱媒体装入室3を構成する内部断熱壁体31の拡大断面図である。4重構造の内部断熱壁体31は、図示したように、赤外線反射金属鏡31aと、高密度耐火断熱材31bと、多孔質耐火断熱材31cと、熱抵抗性に優れた保温耐火断熱材31dとを積層して構成され、赤外線反射金属鏡31aを金属蓄熱媒体2の方に位置するように配置される。
【0029】
本実施形態における内部断熱壁体31は、金属蓄熱媒体2において発生する高温の赤外線を赤外線反射金属鏡31aによって金属蓄熱媒体2の方に再び反射して、金属蓄熱媒体2を再度加熱し、同時に高密度耐火断熱材31bと多孔質耐火断熱材31cと熱抵抗性に優れた保温耐火断熱材31dなどによって金属蓄熱媒体2を多重に囲むことで外部に熱が放出されることを防止し、金属蓄熱媒体2の潜熱を熱損失なしに長時間貯蔵することができる。
【0030】
蓄熱媒体装入室3の外部の外壁構造体4はコンクリートで構成される。外壁構造体4は、耐火セメントを用い、また防水剤を含むことで、屋外に設置された場合でも水分を吸収することを防止することができる。
【0031】
外壁構造体4は上部蓋44を閉めることで外気と完全に遮断された状態を保持することができる。また、必要に応じて、外壁構造体4の内部を減圧して真空にすることで、高温の空気による金属酸化、並びに、空気の対流及び熱伝導を防止し、その結果、熱損失を防止することができる。
【0032】
外壁構造体4の上部蓋44の下方に設置される赤外線反射鏡5は、高温の金属蓄熱媒体2において発生する赤外線を金属蓄熱媒体2の方に再び反射することができる。また、上部蓋44と赤外線反射鏡5との間には耐火断熱材9が設置される。このとき、外壁構造体4の内部を真空状態に保持することで、内部断熱性をさらに向上させ、熱損失を低減することができる。
【0033】
耐火断熱材9には軽量な材質を用い、特にエアロゲルタイプの耐火断熱材を用いることが好ましい。
【0034】
図5は、本実施形態における熱交換器の正面図である。
【0035】
金属蓄熱媒体2の内側に螺旋形に配置される熱交換器6は、熱交換ができるようにしたもので、下側が狭く、上に行くに従い徐々に広くなる構成であり、金属蓄熱媒体2に近接する上側には給水管61が配置され、金属蓄熱媒体2から離隔する下側には排水管62が配置されることで、流体(水)が加熱される。
【0036】
給水管61には低温の流体が流入し、螺旋形に形成されている熱交換器6を移動しながら徐々に加熱された後に排水管62を通じて排出されるため、熱交換時間を充分に確保して流体を高温まで加熱することができる。
【0037】
本実施形態では金属蓄熱媒体2を加熱する手段として、太陽熱ヒーター7、及び、集光された太陽熱を太陽熱ヒーター7に供給する高密度光入射部8を用いる。
【0038】
太陽熱ヒーター7は、入口から徐々に径が大きくなる円錐状の形状を有する。
【0039】
図6は、本実施形態における高密度光入射部8の拡大断面図である。
【0040】
高密度光入射部8は、外壁構造体4と内部断熱壁体31とを貫通するように設置されるとともに太陽熱ヒーター7に結合された高温断熱パイプ81と、高温断熱パイプ81の先端に結合される凸レンズ82と、高温断熱パイプ81内部の凸レンズ82の焦点位置に設置されるとともに中央に通過孔84が形成された反射用金属放物鏡83とを備える。
【0041】
高温断熱パイプ81にはセラミックス材質などを用いることができる。
【0042】
このような構成によれば、集光装置から供給された太陽光を凸レンズ82で再度集光した後、反射用金属放物鏡83の通過孔84を通じて太陽熱ヒーター7に供給でき、金属蓄熱媒体2を加熱することができる。このとき、太陽熱ヒーター7において反射光が発生するが、本実施形態では、高温断熱パイプ81の内部に反射用金属放物鏡83が設置されており、太陽熱ヒーター7において反射される光を再び太陽熱ヒーター7に誘導し供給することで金属蓄熱媒体2を加熱することができ、加熱性をさらに高めることができる。
【0043】
図7において、符号100は本実施形態にかかる太陽追尾式集光装置を示す。
【0044】
以上のように構成される本実施形態にかかる金属蓄熱装置1は、図7に示すように、数個またはn個の太陽追尾式集光装置100と連携して用いることができる。以下、本実施形態を使用した運用について説明する。
【0045】
太陽追尾式集光装置100を通じて集光された太陽光エネルギーが高密度光入射部8に供給されると、太陽光エネルギーは高密度光入射部8の高温断熱パイプ81の先端に設置されている凸レンズ82を通じて再集光され、金属蓄熱媒体2に埋設されている太陽熱ヒーター7に供給される。
【0046】
このとき、凸レンズ82によって集光された太陽光は、高温断熱パイプ81の途中に設置されている反射用金属放物鏡83に形成された通過孔84に焦点が合わせられているので、反射用金属放物鏡83の通過孔84を通過した後に徐々に拡散されて太陽熱ヒーター7を加熱する。
【0047】
太陽熱ヒーター7が加熱されることによって金属蓄熱媒体2が加熱される。このとき、太陽熱ヒーター7は太陽追尾式集光装置100の大きさによっては200℃以上、場合によっては1200〜1300℃の高温まで鋳物状態の金属蓄熱媒体2を加熱する。
【0048】
200℃〜1300℃の高温で加熱される金属蓄熱媒体2は、鉄スクラップなどを溶かして製作され、鉄の融解点(1538℃)以内で熱を貯蔵することができ、金属蓄熱媒体2の体格を小さくしながらも高い熱貯蔵性を実現できる。
【0049】
また、4重構造の内部断熱壁体31とコンクリート製の外壁構造体4とによって金属蓄熱媒体2が二重に包囲されているため、金属蓄熱媒体2に貯蔵された熱エネルギーの損失を最小限にして長期貯蔵が可能となり、一度高温まで加熱すると数日以上追加加熱をしなくても金属蓄熱媒体2は冷めなくなる。
【0050】
一方、本実施形態では、金属蓄熱媒体2の内側に熱交換器6が螺旋形に配置されている。給水管61には低温の流体が流入し、螺旋形に配置されている熱交換器6を移動しながら徐々に加熱された後に排水管62を通じて排出されるので、熱交換時間を充分に確保して流体を高温まで加熱することができる。
【0051】
(比較例)
水1mが貯蔵するエネルギー量=比熱(1)×単位重量(1cm×比重1)×1000×上昇温度(90℃−40℃=50℃、水を沸騰させず90℃まで加熱する場合:40℃は熱交換可能な温度)=50000cal
鉄1mが貯蔵するエネルギー量=比熱(0.108)×単位重量(1cm×比重7.876)×1000×上昇温度(1200℃−40℃=1160℃、鉄を1200℃まで加熱する場合)=977184cal
【0052】
上記の計算式に示すように、本実施形態においては、水を貯蔵媒体として用いる場合より約20倍以上の熱を貯蔵することができる。従来の水を貯蔵媒体とする場合と同体積の金属蓄熱媒体2を用いる場合、本実施形態を家庭用ボイラーに適用し冬期暖房用として使用することが可能であり、クリーンな太陽熱エネルギーでの暖房が可能となる。
【0053】
一方、従来用いられていた溶融塩やPCM物質、熱媒体油は、本実施形態に比べて蓄熱温度が低くなる。また、これらは化学物質から製造されたものであるため、長期間使用する場合には酸化作用により寿命が短くなるという問題がある。一方、本実施形態における金属蓄熱媒体2は鋳物状態なので、表面にのみ酸化防止処理を施すことで永久に用いることができる。
【0054】
以上において本発明の特定の実施形態についての詳細な説明を行ったが、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な変形が可能であることは言うまでもない。よって、本発明の技術的範囲は上記で説明した実施形態に限定されるものではなく、後述する特許請求の範囲、及びそれらの均等な範囲等によって定められるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明にかかる金属蓄熱装置は、家庭用太陽熱ボイラーの他に、産業用太陽熱ボイラー、発電用熱貯蔵装置などに用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7