特許第6257658号(P6257658)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257658
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】ファイバレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/067 20060101AFI20171227BHJP
   H01S 3/117 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   H01S3/067
   H01S3/117
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-11577(P2016-11577)
(22)【出願日】2016年1月25日
(65)【公開番号】特開2017-135151(P2017-135151A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2016年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】西田 和宏
【審査官】 佐藤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−036078(JP,A)
【文献】 特開2007−035696(JP,A)
【文献】 特開2010−115698(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0010025(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光源からの励起光が入射する増幅用光ファイバと、
前記増幅用光ファイバの一端側に設けられ前記増幅用光ファイバのコアを伝搬する光を当該コアに反射する第1反射部と、
前記増幅用光ファイバの他端側に設けられ前記コアを伝搬する光を前記第1反射部よりも低い反射率で当該コアに反射する反射状態と前記コアを伝搬する光を当該コアに反射しない非反射状態とに切り換え可能な第2反射部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
待機状態において前記第2反射部を前記反射状態にすると共に前記励起光源から励起光を出射させ、
前記待機状態において出射命令が入力されると当該出射命令が入力されてから第1の所定期間後に前記第2反射部を前記非反射状態とし、
前記第2反射部が前記非反射状態とされてから前記増幅用光ファイバで光が自己発振しない第2の所定期間後に前記第2反射部を前記反射状態とし、
前記第1の所定期間は、前記第2の所定期間よりも長い
ことを特徴とするファイバレーザ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2の所定期間後における前記第2反射部の前記反射状態を前記第1の所定期間よりも長い期間維持する
ことを特徴とする請求項に記載のファイバレーザ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2の所定期間後に前記第2反射部が前記反射状態とされ、かつ、前記増幅用光ファイバの活性元素の励起状態が前記待機状態における当該活性元素の励起状態よりも低い状態において、第3の所定期間だけ前記第2反射部を前記非反射状態とし、
前記第3の所定期間は、前記活性元素の励起状態が前記待機状態における当該活性元素の励起状態と同じ励起状態となる期間よりも短い
ことを特徴とする請求項に記載のファイバレーザ装置。
【請求項4】
前記第1の所定期間は、前記第2の所定期間よりも長く、
前記制御部は、前記第3の所定期間後における前記第2反射部の前記反射状態を前記第1の所定期間よりも長い期間維持する
ことを特徴とする請求項に記載のファイバレーザ装置。
【請求項5】
励起光源からの励起光が入射する増幅用光ファイバと、
前記増幅用光ファイバの一端側に設けられ前記増幅用光ファイバのコアを伝搬する光を当該コアに反射する第1反射部と、
前記増幅用光ファイバの他端側に設けられ前記コアを伝搬する光を前記第1反射部よりも低い反射率で当該コアに反射する反射状態と前記コアを伝搬する光を当該コアに反射しない非反射状態とに切り換え可能な第2反射部と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
待機状態において前記第2反射部を前記反射状態にすると共に前記励起光源から励起光を出射させ、
前記待機状態において出射命令が入力されると当該出射命令が入力されてから第1の所定期間後に前記第2反射部を前記非反射状態とし、
前記第2反射部が前記非反射状態とされてから前記増幅用光ファイバで光が自己発振しない第2の所定期間後に前記第2反射部を前記反射状態とし、
前記第2の所定期間後に前記第2反射部が前記反射状態とされ、かつ、前記増幅用光ファイバの活性元素の励起状態が前記待機状態における当該活性元素の励起状態よりも低い状態において、第3の所定期間だけ前記第2反射部を前記非反射状態とし、
前記第3の所定期間は、前記活性元素の励起状態が前記待機状態における当該活性元素の励起状態と同じ励起状態となる期間よりも短い
ことを特徴とするファイバレーザ装置。
【請求項6】
前記第1の所定期間は、前記第2の所定期間よりも長く、
前記制御部は、前記第3の所定期間後における前記第2反射部の前記反射状態を前記第1の所定期間よりも長い期間維持する
ことを特徴とする請求項に記載のファイバレーザ装置。
【請求項7】
励起光源からの励起光が入射する増幅用光ファイバと、前記増幅用光ファイバの一端側に設けられ前記増幅用光ファイバのコアを伝搬する光を当該コアに反射する第1反射部と、前記増幅用光ファイバの他端側に設けられ前記コアを伝搬する光を前記第1反射部よりも低い反射率で当該コアに反射する反射状態と前記コアを伝搬する光を当該コアに反射しない非反射状態とに切り換え可能な第2反射部と、制御部と、を備えるファイバレーザ装置のパルス光出射方法であって、
前記制御部は、
待機状態において前記第2反射部を前記反射状態にすると共に前記励起光源から励起光を出射させ、
前記待機状態で出射命令が入力されると当該出射命令が入力されてから第1の所定期間後に前記第2反射部を前記非反射状態とし、
前記第2反射部が前記非反射状態とされてから前記増幅用光ファイバで光が自己発振しない第2の所定期間後に前記第2反射部を前記反射状態とし、
前記第1の所定期間は、前記第2の所定期間よりも長い
ことを特徴とするファイバレーザ装置のパルス光出射方法。
【請求項8】
励起光源からの励起光が入射する増幅用光ファイバと、前記増幅用光ファイバの一端側に設けられ前記増幅用光ファイバのコアを伝搬する光を当該コアに反射する第1反射部と、前記増幅用光ファイバの他端側に設けられ前記コアを伝搬する光を前記第1反射部よりも低い反射率で当該コアに反射する反射状態と前記コアを伝搬する光を当該コアに反射しない非反射状態とに切り換え可能な第2反射部と、制御部と、を備えるファイバレーザ装置のパルス光出射方法であって、
前記制御部は、
待機状態において前記第2反射部を前記反射状態にすると共に前記励起光源から励起光を出射させ、
前記待機状態で出射命令が入力されると当該出射命令が入力されてから第1の所定期間後に前記第2反射部を前記非反射状態とし、
前記第2反射部が前記非反射状態とされてから前記増幅用光ファイバで光が自己発振しない第2の所定期間後に前記第2反射部を前記反射状態とし、
前記第2の所定期間後に前記第2反射部が前記反射状態とされ、かつ、前記増幅用光ファイバの活性元素の励起状態が前記待機状態における当該活性元素の励起状態よりも低い状態において、第3の所定期間だけ前記第2反射部を前記非反射状態とし、
前記第3の所定期間は、前記活性元素の励起状態が前記待機状態における当該活性元素の励起状態と同じ励起状態となる期間よりも短い
ことを特徴とするファイバレーザ装置のパルス光出射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス状の出力光を出射するファイバレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を用いて加工を行う加工機や、レーザ光を使ったメス等の医療機器等に用いるレーザ装置の一つとして、希土類添加ファイバにより信号光を増幅して出射するファイバレーザ装置が用いられている。このようなファイバレーザ装置の一つとして、種光を増幅して出射するMO−PA(Master Oscillator Power Amplifier)型のファイバレーザ装置が知られている。このファイバレーザ装置の種光を出射するMO部である種光部もまた共振型のファイバレーザ装置から構成される場合がある。
【0003】
下記特許文献1には、このようなファイバレーザ装置が記載されている。特許文献1に記載のファイバレーザ装置は、種光部が上記と同様に共振型のファイバレーザ装置から成り、増幅用光ファイバの一方の端部に第1のFBG(Fiber Bragg Grating)が形成されており、他方の端部が音響光学素子(AOM:Acoustic Optic Modulation)に接続され、さらにAOMの増幅用光ファイバ側と反対側が第2のFBGに接続されている。AOMは、入射する光をオン状態とオフ状態とで異なる方向に伝搬する。このファイバレーザ装置では、オン状態では、第2のFBGに光を伝搬し、オフ状態では第2のFBGに光が伝搬しないようにする。つまり、AOMがオン状態では第2のFBGで光が反射し、オフ状態で光が反射しない。従って、AOMがオン状態では、増幅用光ファイバ及びAOMを介して第1のFBGと第2のFBGとの間で共振器が形成され、AOMがオフ状態では、当該共振器が形成されない。このファイバレーザ装置の種光部では、AOMがオン状態とオフ状態とを繰り返しているため、AOMがオン状態となる度にパルス状の種光が出射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4647696号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のファイバレーザ装置では、上記のようにパルス状の種光がAOMのオン/オフに同期して立て続けに出射している。従って、アンプ部の増幅用光ファイバに励起光が入射すると、当該パルス状の種光が増幅されて、パルス状の出射光がAOMのオン/オフに同期して立て続けに出射する。
【0006】
ところで、出射光を1パルスのみ出射させるファイバレーザ装置が求められている。このようなワンショットパルスの光を出射するためには、AOMをオフ状態で待機して、ワンショットパルスの出射光を出射させたいタイミングでAOMをオン状態とすることが考えられる。
【0007】
しかし、AOMをオフ状態で待機すると、増幅用光ファイバ内の希土類元素の励起エネルギーが高くなりすぎ、不要な発振(自己発振)を起こす場合がある。このような発振を起こすと、意図しないタイミングでジャイアントパルスが出射して、励起光源等の光学素子を破壊する懸念がある。
【0008】
そこで、本発明は、光学素子の損傷を抑制してワンショットパルスの光を出射することができるファイバレーザ装置、及び、ファイバレーザ装置のパルス光出射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のファイバレーザ装置は、励起光源からの励起光が入射する増幅用光ファイバと、前記増幅用光ファイバの一端側に設けられ前記増幅用光ファイバのコアを伝搬する光を当該コアに反射する第1反射部と、前記増幅用光ファイバの他端側に設けられ前記コアを伝搬する光を前記第1反射部よりも低い反射率で当該コアに反射する反射状態と前記コアを伝搬する光を当該コアに反射しない非反射状態とに切り換え可能な第2反射部と、制御部と、を備える。また、本発明のファイバレーザ装置のパルス光出射方法では、このファイバレーザ装置を用いる。このファイバレーザ装置では、パルス光を出射する場合、次のように動作する。すなわち、前記制御部は、待機状態において前記第2反射部を前記反射状態にすると共に前記励起光源から励起光を出射させ、前記待機状態で出射命令が入力されると当該出射命令が入力されてから第1の所定期間後に前記第2反射部を前記非反射状態とし、前記第2反射部が前記非反射状態とされてから前記増幅用光ファイバで光が自己発振しない第2の所定期間後に前記第2反射部を前記反射状態とする。
【0010】
このようなファイバレーザ装置、及び、ファイバレーザ装置のパルス光出射方法では、待機状態において、励起光源から励起光が増幅用光ファイバに入射しているため増幅用光ファイバ内の活性元素が励起状態とされる。しかし、第2反射部が反射状態とされるので、第1反射部と第2反射部との間で発振が起きる。この発振が起きている間、第2反射部からパワーの小さな光が連続的に出射しているため、当該発振により活性元素は高い励起状態とされない。このため、待機状態が長い場合や第1の所定期間が長い場合であっても、意図しない自己発振により尖塔値の高い不要な光が出射することを抑えることができる。また、第2の所定期間では、上記発振が生じないため増幅用光ファイバの活性元素が高い励起状態とされるが、第2の所定期間は自己発振しない期間であるため、第2の所定期間において尖塔値の高い意図しない光が出射することを抑えることができる。そして、第2の所定期間後に第2反射部が反射状態とされることで、再び発振が起きる。上記のように第2の所定期間において活性元素が高い励起状態とされるため、当該発振により尖塔値の高いパルス状の光を出射することができる。こうして、本発明のファイバレーザ装置、及び、ファイバレーザ装置のパルス光出射方法によれば、光学素子の損傷を抑制してワンショットパルスの光を出射することができる。
【0011】
また、前記第1の所定期間は、前記第2の所定期間よりも長いことが好ましい。
【0012】
第1の所定期間が長いことにより、出射命令からワンショットパルス光の出射までの間に他の動作を行うことができる。例えば、増幅用光ファイバを用いたアンプにファイバレーザ装置から出射するワンショットパルス光を入射して更に増幅する場合に、第1の所定期間においてアンプの増幅用光ファイバの活性元素を励起することができる。
【0013】
前記制御部は、前記第2の所定期間後における前記第2反射部の前記反射状態を前記第1の所定期間よりも長い期間維持することが好ましい。
【0014】
パルス光が出射された直後の増幅用光ファイバ内の活性元素の励起状態は、第2の所定期間が始まる直前における所定の励起状態と同じ状態になりづらい。しかし、第2の所定期間が第1の所定期間よりも長いことで、第2の所定期間が第1の所定期間よりも短い場合と比べて、増幅用光ファイバ内の活性元素の励起状態を上記所定の励起状態に近づけることができる。そして、出射命令が入力されると更に第1の所定期間だけ第2反射部が反射状態とされ、増幅用光ファイバ内の活性元素の励起状態を上記所定の励起状態により近づけることができる。このため、ワンショットパルス光の尖塔値やパルス幅が出射ごとに変化することを抑制することができる。
【0015】
また、前記制御部は、前記第2の所定期間後に前記第2反射部が前記反射状態とされ、かつ、前記増幅用光ファイバの活性元素の励起状態が前記待機状態における当該活性元素の励起状態よりも低い状態において、第3の所定期間だけ前記第2反射部を前記非反射状態とし、前記第3の所定期間は、前記活性元素の励起状態が前記待機状態における当該活性元素の励起状態と同じ励起状態となる期間よりも短いことが好ましい。
【0016】
ワンショットパルス光が出射されると、増幅用光ファイバ内の活性元素は低い励起状態となる。この励起状態は待機状態における励起状態よりも低くなる場合がある。そこで、活性元素の励起状態が待機状態における当該活性元素の励起状態よりも低い状態で、第3の所定期間だけ第2反射部を非反射状態とする。第2反射部が短期間である第3の所定期間だけ非反射状態とされることで、早期に増幅用光ファイバ内の活性元素を待機状態における当該活性元素の励起状態に近づけることができる。また、上記のように、第3の所定期間は活性元素の励起状態が待機状態における当該活性元素の励起状態と同じ励起状態となる期間よりも短い期間とされる。従って、第3の所定期間後に再び第2反射部が非反射状態とされても、パルス光が出射することを抑制することができる。
【0017】
この場合、前記第1の所定期間は、前記第2の所定期間よりも長く、前記制御部は、前記第3の所定期間後における前記第2反射部の前記反射状態を前記第1の所定期間よりも長い期間維持することが好ましい。
【0018】
上記のように第2反射部が反射状態とされる期間が第1の所定期間よりも長いことで、第2の所定期間が第1の所定期間よりも短い場合と比べて、ワンショットパルス光の尖塔値やパルス幅が出射ごとに変化することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、光学素子の損傷を抑制してワンショットパルスの光を出射することができるファイバレーザ装置、及び、ファイバレーザ装置のパルス光出射方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るファイバレーザ装置を光源として有するMO−PA型のファイバレーザ装置を示す図である。
図2図1のファイバレーザ装置の動作を模式的に示すタイミングチャートである。
図3】ワンショットパルス光の出射時における各部位から出射する光のパワーの大きさの様子を示す図である。
図4図1のファイバレーザ装置の他の動作を模式的に示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るファイバレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【0023】
図1に示すように、ファイバレーザ装置1は、種光を出射する種光部MOと、種光部MOから出射する種光を増幅するプリアンプPRと、メインアンプPAと、種光部MOとプリアンプPRとの間に設けられる波長変換部RFと、波長変換部RFとメインアンプPAとの間に設けられる波長選択フィルタFLと、種光部MO、プリアンプPR、及び、メインアンプPAを制御する制御部CPと、を主な構成として備える。このようにファイバレーザ装置1は、種光部MOが、Master Oscillatorとされ、メインアンプPAがPower Amplifierとされる、いわゆるMO−PA型のファイバレーザ装置である。
【0024】
<種光部MOの構成>
種光部MOは、励起光を出射する励起光源11と、励起光源11から出射する励起光が入射し、当該励起光により励起される活性元素が添加される増幅用光ファイバ13と、増幅用光ファイバ13の一端側に設けられる第1反射部としてのFBG(Fiber Bragg Grating)12と、増幅用光ファイバ13の他端に接続される第2反射部としてのAOM14と、を主な構成として備える。このように種光部MOは、共振型のファイバレーザ装置から成る。
【0025】
種光部MOの励起光源11は、連続光を出射する光源であり、例えばレーザダイオードから構成される。励起光源11は、増幅用光ファイバ13に添加される活性元素を励起する波長の励起光、例えば波長が915nmの光を出射する。また、励起光源11は第1光ファイバ18に接続されており、種光部MOの励起光源11から出射する光は、第1光ファイバ18を伝搬する。
【0026】
種光部MOの増幅用光ファイバ13は、コアと、コアの外周面を隙間なく囲むクラッドとを有する。増幅用光ファイバ13において、コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも高く、コアを構成する材料としては、例えば、屈折率を上昇させるゲルマニウム等の元素、及び、種光部MOの励起光源11から出射する種光部の光により励起されるイッテルビウム(Yb)等の活性元素が添加された石英が挙げられる。このような活性元素としては、希土類元素が挙げられ、希土類元素としては、上記Ybの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)等が挙げられる。また、増幅用光ファイバ13のクラッドを構成する材料としては、例えば、何らドーパントが添加されていない純粋石英が挙げられる。
【0027】
上記の第1光ファイバ18のコアは増幅用光ファイバ13のコアと接続されている。また、第1光ファイバ18のコアには、FBG12が設けられている。こうしてFBG12は、増幅用光ファイバ13の一端側に設けられている。FBG12は、第1光ファイバ18の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、この周期が調整されることにより、励起状態とされた増幅用光ファイバ13の活性元素が放出する光の内、特定波長の光を反射するように構成されている。FBG12は、上述のように増幅用光ファイバ13に添加される活性元素がイッテルビウムである場合、例えば、波長が1060nmの光の反射率が100%とされる。
【0028】
種光部MOの増幅用光ファイバ13の他端にはAOM14が接続されている。AOM14は、反射状態と非反射状態とを切り換えることができる。反射状態では、増幅用光ファイバ13のコアからAOM14へ入射する光が、AOM14内をプリアンプPRに向かって伝搬しつつAOM14のプリアンプPR側の端面でフルネル反射を起こし、再び増幅用光ファイバ13のコアに入射する。このフルネル反射の反射率は、FBG12の反射率よりも低くされる。また、非反射状態では、増幅用光ファイバ13のコアからAOM14へ入射する光がAOM14内反射状態と異なる方向に向かって伝搬する。このため、非反射状態では、AOM14に入射した光が増幅用光ファイバ13のコアに向かって反射しない。
【0029】
<プリアンプPRの構成>
プリアンプPRは、励起光源21と、増幅用光ファイバ23と、カプラ22とを主な構成として備える。
【0030】
プリアンプPRの励起光源21は、例えば複数のレーザダイオードから構成され、後述のようにプリアンプPRの増幅用光ファイバ23に添加される活性元素を励起する波長の励起光、例えば波長が915nmの励起光を出射する。また、励起光源21は、光ファイバ28に接続されており、励起光源21から出射する励起光は、光ファイバ28を伝播する。光ファイバ28としては、例えば、マルチモードファイバが挙げられ、この場合、当該励起光は光ファイバ28をマルチモード光として伝播する。
【0031】
プリアンプPRの増幅用光ファイバ23は、コアと、コアの外周面を隙間なく囲む内側クラッドと、内側クラッドの外周面を被覆する外側クラッドとを有している。増幅用光ファイバ23において、コアの屈折率は内側クラッドの屈折率よりも高く、内側クラッドの屈折率は外側クラッドの屈折率よりも高くされる。つまり、増幅用光ファイバ23はダブルクラッド構造とされる。増幅用光ファイバ23において、コアを構成する材料としては、例えば、上記の種光部MOの増幅用光ファイバ13のコアと同様の材料を挙げることができ、内側クラッドを構成する材料としては、例えば、上記の種光部MOの増幅用光ファイバ13のクラッドと同様の材料を挙げることができる。また、増幅用光ファイバ23の外側クラッドを構成する材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂を挙げることができる。
【0032】
本実施形態において、種光部MOのAOM14は、第2光ファイバ29に接続される。カプラ22は、第2光ファイバ29及び光ファイバ28と、増幅用光ファイバ23の一端とを接続している。具体的には、カプラ22において、第2光ファイバ29のコアが、増幅用光ファイバ23のコアに接続されており、さらに光ファイバ28のコアが、増幅用光ファイバ23の内側クラッドに接続されている。従って、種光部MOのAOM14から出射する光は、第2光ファイバ29を介して、増幅用光ファイバ23のコアに入射してコアを伝搬する。また、励起光源21から出射する励起光は、増幅用光ファイバ23の内側クラッドに入射し内側クラッドを主に伝搬する。従って、増幅用光ファイバ23のコアを伝搬する光により、励起光源21が出射する励起光により励起される活性元素が誘導放出を起こすことで、当該コアを伝搬する光を増幅する。
【0033】
<波長変換部RF、波長選択フィルタFLの構成>
波長変換部RFは、プリアンプPRの増幅用光ファイバ23に接続されている。波長変換部RFは、入射する光のうちパワーが所定のパワーより大きな光を、入射する光より長波長の光に変換して出射し、入射する光のうちパワーが所定のパワーより小さな光を、入射する光の波長のまま出射する。
【0034】
このような波長変換部RFとしては、誘導ラマン散乱を起こすラマン光ファイバを挙げることができる。このラマン光ファイバとしては、コアに非線形光学定数を上昇させるドーパントが添加される光ファイバが挙げられる。このようなドーパントとしては、ゲルマニウムやリンが挙げられる。この波長変換部RFがラマン光ファイバである場合、波長変換する光の強度の閾値は、コアの直径、ドーパントの添加濃度、長さ等によって変えることができる。
【0035】
波長選択フィルタFLには、プリアンプPRから出射する光が波長変換部RFを介して入射する。そして、波長変換部RFにおいて波長変換された光が波長選択フィルタFLに入射する場合、波長選択フィルタFLはこの波長変換された光をメインアンプPAに向かって透過し、波長変換部RFにおいて波長変換されない光が波長選択フィルタFLに入射する場合に、波長選択フィルタFLはこの波長変換されない光のメインアンプPAに向かう透過を抑制する。このような波長選択フィルタFLとしては、例えば、WDMカプラや誘電体多層膜フィルタを挙げることができる。
【0036】
<メインアンプPAの構成>
メインアンプPAは、入射する光をプリアンプPRよりも高い増幅率で増幅する点においてプリアンプPRと異なり、複数の励起光源31と、増幅用光ファイバ33と、カプラ32とを主な構成として備える。
【0037】
メインアンプPAの励起光源31のそれぞれは、例えば複数のレーザダイオードから構成され、後述のようにメインアンプPAの増幅用光ファイバ33に添加される活性元素を励起する波長の励起光、例えば波長が915nmの励起光を出射する。また、それぞれの励起光源31は、光ファイバ38に接続されており、それぞれの励起光源31から出射する励起光はそれぞれの光ファイバ38を伝播する。それぞれの光ファイバ38としては、例えば、プリアンプPRの励起光源21に接続される光ファイバ28と同様とされ、この場合、当該励起光は光ファイバ38をマルチモード光として伝播する。
【0038】
メインアンプPAの増幅用光ファイバ33は、プリアンプPRの増幅用光ファイバ23と同様の構成とされる。
【0039】
また、本実施形態において、波長選択フィルタFLは第3光ファイバ39に接続される。カプラ32は、第3光ファイバ39及びそれぞれの光ファイバ38と、増幅用光ファイバ33の一端とを接続している。具体的には、カプラ32において、第3光ファイバ39のコアが、増幅用光ファイバ33のコアに接続されており、さらにそれぞれの光ファイバ38のコアが、増幅用光ファイバ33の内側クラッドに接続されている。従って、波長選択フィルタFLからメインアンプPAに向かって出射する光は第3光ファイバ39を介して、増幅用光ファイバ33のコアに入射してコアを伝搬し、それぞれの励起光源31から出射する励起光は、増幅用光ファイバ33の内側クラッドに入射し内側クラッドを主に伝搬する。従って、増幅用光ファイバ33のコアを伝搬する光により、励起光源31が出射する励起光により励起される活性元素が誘導放出を起こすことで、当該コアを伝搬する光を増幅する。
【0040】
メインアンプPAの増幅用光ファイバ33の他端には第4光ファイバ40が接続されている。この第4光ファイバ40は、増幅用光ファイバ33から出射する光を所定の場所まで伝搬させて出射する光ファイバであり、デリバリ光ファイバと呼ばれる場合がある。
【0041】
<その他の構成>
制御部CPは、論理ゲートや、CPU(Central Processing Unit)等で構成されており、種光部MO、プリアンプPR、及び、メインアンプPAを制御する。具体的には、外部からの命令を受け付ける構成を有し、当該命令により、種光部MOの励起光源11及びAOM14、プリアンプPRの励起光源21、メインアンプの励起光源31を制御することができる。
【0042】
<ファイバレーザ装置1の動作>
次に、このようなファイバレーザ装置1からワンショットパルス光が出射する動作について説明する。
【0043】
図2は、図1のファイバレーザ装置の動作を模式的に示すタイミングチャートである。具体的には、制御部CP、種光部MOの励起光源11、プリアンプPRの励起光源21、メインアンプPAの励起光源31、及び、AOM14の各状態と、種光部MOから出射する光の様子を示す図である。なお、図2では、各励起光源11,21,31及び種光部MOから出射する光についてパワーの大きな光が出射している状態が高いレベルで示される。
【0044】
ファイバレーザ装置1の電源が投入されると、制御部CPは待機状態となる。このとき、制御部CPは、種光部MOのAOM14及び励起光源11を制御して、AOM14を反射状態とすると共に励起光源11を出射状態とする。種光部MOの励起光源11から励起光が出射すると、種光部MOの増幅用光ファイバ13に添加される活性元素の励起状態が高くなる。増幅用光ファイバ13に添加される活性元素の励起状態が高くなることによって当該活性元素から放出される光に起因して、FBG12とAOM14のプリアンプPR側の端面との間で共振が起き、増幅用光ファイバ13での利得と損失とが釣り合った状態で発振が生じる。ただし、この発振状態において、この光は、増幅用光ファイバ13に添加される活性元素の励起状態が然程高くないことから然程増幅されておらず、パワーの小さな連続光となる。
【0045】
また、本実施形態では、待機状態において、制御部CPは、プリアンプPRの励起光源21、及び、メインアンプPAの励起光源31を制御して、それぞれの励起光源21,31を非出射状態とする。従って、プリアンプPRの増幅用光ファイバ23、及び、メインアンプPAの増幅用光ファイバ33のそれぞれに添加される活性元素は励起状態とされない。従って、種光部MOから出射するパワーの小さな連続光がプリアンプPRの増幅用光ファイバ23に入射しても増幅されない。増幅されない連続光は増幅用光ファイバ23から波長変換部RFに入射するが、パワーが小さいため波長変換されない。このため、当該連続光は、波長選択フィルタFLにより、メインアンプPAへの入射が抑制される。
【0046】
次に外部から制御部CPに出射命令が入力される。すると、制御部CPは、出射状態となり、プリアンプPRの励起光源21及びメインアンプPAの励起光源31を制御して、それぞれの励起光源21、31を出射状態とする。従って、それぞれの励起光源21、31から励起光が出射される。このためプリアンプPRの増幅用光ファイバ23、及び、メインアンプPAの増幅用光ファイバ33のそれぞれに添加される活性元素は励起状態となる。このとき、種光部MOから出射するパワーの小さな連続光がプリアンプPRの増幅用光ファイバ23に入射することで、励起状態とされたプリアンプPRの活性元素が誘導励起を起こし、種光部MOからプリアンプPRに入射する連続光は増幅される。しかし、連続光のパワーが小さなため、プリアンプPRから出射する光のパワーは、波長変換部RFで波長変換さえる程のパワーに達しない。このため、プリアンプPRから出射する連続光は、波長変換部RFで波長変換されず、待機状態と同様にして、波長選択フィルタFLにより、メインアンプPAへの入射が抑制される。
【0047】
また、本実施形態では、励起光源21、31の増幅用光ファイバ23,33が十分な励起状態とされると、制御部CPは、プリアンプPRの励起光源21及びメインアンプPAの励起光源31を制御して、それぞれの励起光源21、31を非出射状態とする。
【0048】
そして、制御部CPは、出射命令が入力されてから第1の所定期間T1後にAOM14を制御して、AOM14を非反射状態とする。従って、増幅用光ファイバ13からAOM14に入射する光が増幅用光ファイバ13に向かって反射しない。このため、増幅用光ファイバ13では発振が止まる。このとき励起光源11は出射状態のままとされる。従って、増幅用光ファイバ13には励起光源11から励起光が入射し続けているため、増幅用光ファイバ13の活性元素の励起状態が更に高くなる。
【0049】
次に制御部CPは、第1の所定期間T1後から更に第2の所定期間T2後に、AOM14を制御して、AOM14を再び反射状態とする。つまり、制御部CPは、出射命令が入力されてから第1の所定期間T1内においてAOM14を反射状態とし、第1の所定期間T1後からの第2の所定期間T2においてAOM14を非反射状態とする。この第2の所定期間T2は、増幅用光ファイバ13で光が自己発振しない期間とされる。従って、第2の所定期間T2内に意図しないジャイアントパルス光が出射することは抑制されている。AOM14が再び反射状態とされると、FBG12とAOM14のプリアンプPR側の端面との間で共振が生じる、この共振光により、上記のように高い励起状態とされた増幅用光ファイバ13の活性元素が誘導放出を起こし、共振光が増幅されAOM14からパルス状の光が出射し、種光部MOからワンショットパルス光としてのパルス状の種光が出射する。
【0050】
なお、上記のように第1の所定期間T1は、プリアンプPRの増幅用光ファイバ23及びメインアンプPAの増幅用光ファイバ33のそれぞれに添加される活性元素が励起光により十分に高い励起状態になるよう励起される期間であり、第2の所定期間T2は、増幅用光ファイバ13が自己発振しない期間である。一般的に種光部MOの増幅用光ファイバ13に添加される活性元素が励起光により十分に高い励起状態になるよう励起される時間よりも、プリアンプPRの増幅用光ファイバ23及びメインアンプPAの増幅用光ファイバ33のそれぞれに添加される活性元素が励起光により十分に高い励起状態になるよう励起される時間は長い。このため、本実施形態では、第1の所定期間T1は第2の所定期間T2よりも長い期間とされる。
【0051】
図3は、ワンショットパルス光の出射時における各部位から出射する光のパワーの大きさの様子を示す図である。具体的には、種光部MOから出射する光、プリアンプPRから出射する光、波長変換部RFから出射する光、波長選択フィルタFLから出射する光、及び、メインアンプPAから出射する光のパワーの大きさの時間的変化及び波長の様子を示す図である。それぞれ光のパワーの時間的変化を示す図において、縦軸が光のパワー密度を示し、横軸が時間を示す。
【0052】
種光部MOから出射するパルス状の光のパワーの時間的変化の形状はガウス分布形状とされる。また、種光部MOから出射する種光の波長は、例えば、1060nmとされる。上記のように種光部MOから出射するワンショットパルス光としての種光は、増幅用光ファイバ23のコアに入射する。
【0053】
プリアンプPRの増幅用光ファイバ23では、上記のように励起光により活性元素が励起状態とされている。従って、パルス状の種光が増幅用光ファイバ23に入射すると、励起された活性元素は種光部MOからの光により誘導放出を起こし、この誘導放出により当該光のパワーが増幅されて、増幅用光ファイバ23からパルス状の光が出射する。増幅用光ファイバ23は、パワーの時間変化がガウス分布形状の光が入射すると、入射光に対してパワー密度を増幅したガウス分布形状の光を出射する。従って、図3に示すように、プリアンプPRからは、パワーの時間変化の形状がパワー密度方向に延伸されたガウス分布形状の光が出射する。
【0054】
プリアンプPRから出射した光の一部は、波長変換部RFで波長変換されるパワー密度とされる。従って、波長変換部RFでは、入射した光のうち、破線で示すある特定のパワー密度より高いパワー密度の光成分が一次散乱光とされる。この一次散乱光のパワー密度は波長変換されない程度のパワー密度とされる。例えば、上記のように種光部MOから出射する光の波長が1060nmである場合、波長変換部RFでは所定のパワーより大きなパワーの光の波長が例えば1120nmとされる。そして、波長変換部RFからは、波長変換されない光及び一次散乱光が出射する。このうち、図3に示すように、波長変換されない波長1060nmの光は、その時間的変化の形状がガウス分布形状における裾引き部分を含む形状の光であり、一次散乱光である波長1120nmの光は、その時間的変化の形状がプリアンプPRから出射した光におけるガウス分布形状の頂点部分と同様の形状を含む形状の光である。
【0055】
波長変換部RFから出射する光は、波長選択フィルタFLに入射する。上記のように波長選択フィルタFLは、波長変換部RFにおいて波長変換された光が入射するとこの光をメインアンプPAに向かって透過し、波長変換部RFにおいて波長変換されない光が入射するとこの光のメインアンプPAに向かう透過を抑制する。従って、図3において破線で示すようにプリアンプPRから出射する光のうち、波長変換されないパワー密度の小さな光の波長選択フィルタFLの透過は抑制され、図3において実線で示されるプリアンプPRから出射する光の一次散乱は波長選択フィルタFLを透過する。この一次散乱光のパルス幅は、プリアンプPRから出射する光のパルス幅よりも小さくされる。
【0056】
メインアンプPAの増幅用光ファイバ33では、上記のように励起光により活性元素が励起状態とされている。従って、パルス幅が小さくされたパルス状の光が波長選択フィルタFLに入射すると、励起された活性元素は当該光により誘導放出を起こし、この誘導放出により当該光のパワーが増幅されて、増幅用光ファイバ33からパルス状の光が出射する。従って、種光部MOから出射する光よりもパルス幅が狭くパワーが増幅された光が出射する。
【0057】
メインアンプPAから出射する光は、第4光ファイバ40を伝搬し、ファイバレーザ装置1から出射する。
【0058】
こうしてAOM14が反射状態とされる第2の所定期間T2後にパルス状の光が出射する。なお、第2の所定期間T2後、制御部CPは、AOM14の反射状態を少なくとも第1の所定期間T1より長く保ち、待機状態となる。
【0059】
次に本発明の作用について説明する。
【0060】
本実施形態のファイバレーザ装置1の種光部MOはファイバレーザ装置から成り、制御部CPは、待機状態において第2反射部であるAOM14を反射状態にすると共に励起光源11から励起光を出射させ、この待機状態で出射命令が入力されると当該出射命令が入力されてから第1の所定期間T1後にAOM14を非反射状態とし、AOM14が非反射状態とされてから増幅用光ファイバ13で光が自己発振しない第2の所定期間T2後にAOMを反射状態とする。
【0061】
このような種光部MO、及び、種光部MOのパルス光出射方法では、待機状態において、励起光源11から励起光が増幅用光ファイバ13に入射しているため増幅用光ファイバ13内の活性元素が励起状態とされる。しかし、AOM14が反射状態とされるので、第1反射部であるFBG12とAOM14との間で発振が起きる。この発振が起きている間、AOMからパワーの小さな光が連続的に出射しているため、当該発振により活性元素は高い励起状態とされない。このため、待機状態が長い場合や第1の所定期間T1が長い場合であっても、意図しない自己発振により尖塔値の高い不要な光が出射することを抑えることができる。また、第2の所定期間T2では、上記発振が生じないため増幅用光ファイバ13の活性元素が高い励起状態とされるが、第2の所定期間T2は自己発振しない期間であるため、第2の所定期間T2において尖塔値の高い意図しない光が出射することを抑えることができる。そして、第2の所定期間T2後にAOM14が反射状態とされることで、再び発振が起きる。上記のように第2の所定期間T2において活性元素が高い励起状態とされるため、当該発振により尖塔値の高いパルス状の光を出射することができる。こうして、本発明のファイバレーザ装置である種光部MO、及び、ファイバレーザ装置である種光部MOのパルス光出射方法によれば、光学素子の損傷を抑制してワンショットパルスの光を出射することができる。
【0062】
また、本実施形態では、第1の所定期間T1は、第2の所定期間T2よりも長い。このため出射命令からワンショットパルス光の出射までの間に他の動作を行うことができる。本実施形態では、第1の所定期間T1において、プリアンプPRやメインアンプPAの増幅用光ファイバ23,33の活性元素を励起している。なお、第1の所定期間T1が第2の所定期間T2よりも短くても良いが、この場合、本実施形態のファイバレーザ装置1では、プリアンプPRやメインアンプPAの増幅用光ファイバ23,33の活性元素の励起を出射命令よりも前から行う必要がある。従って、上記のように第1の所定期間T1は、第2の所定期間T2よりも長いことが好ましい。
【0063】
また、本実施形態では、制御部CPは、第2の所定期間T2後におけるAOM14の反射状態を第1の所定期間T1よりも長い期間維持している。上記のように第2の所定期間T2後にワンショットパルス光が出射される。ワンショットパルス光が出射された直後の増幅用光ファイバ13内の活性元素の励起状態は、第2の所定期間T2が始まる直前における励起状態と同じ状態になりづらい。しかし、第2の所定期間T2が第1の所定期間T1よりも長いことで、第2の所定期間T2が第1の所定期間T1よりも短い場合と比べて、増幅用光ファイバ13内の活性元素の励起状態を第2の所定期間T2が始まる直前における励起状態に近づけることができる。そして、出射命令が入力されると更に第1の所定期間T1だけAOM14が反射状態とされ、増幅用光ファイバ13内の活性元素の励起状態を第2の所定期間T2が始まる直前における励起状態により近づけることができる。このため、本実施形態のファイバレーザ装置1によれば、ワンショットパルス光の尖塔値やパルス幅が出射ごとに変化することを抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態のファイバレーザ装置1では、プリアンプPRで増幅された種光部MOからのパルス状の光のうち、パワーの大きな光が波長変換部RFで波長変換され、当該波長変換された光が波長選択フィルタFLを透過する。一方、種光部MOから出射するパワーの小さな連続光は、プリアンプPRで増幅されても波長変換部RFで波長変換されず波長変換フィルタFLの透過が抑制される。従って、種光部MOから出射するパワーの小さな連続光に起因する光がファイバレーザ装置1から出射することを抑制できる。なお、種光部MOから出射するパルス状の光のパワーによっては、プリアンプPRが無くても良い。例えば、種光部MOから出射するパルス状の光のパワーが、プリアンプPRから出射するパルス状の光のパワーと同等であれば、プリアンプPRを省略することができる。
【0065】
また、本実施形態のファイバレーザ装置1では、波長選択フィルタFLを透過する光がメインアンプPAで増幅される。上記のように波長選択フィルタFLを透過する光の時間的なパルス幅は、種光部MOから出射するパルス状の光の時間的なパルス幅よりも小さい。従って、ファイバレーザ装置1は尖塔値が高い時間的なパルス幅の小さな光を出射することができる。
【0066】
<ファイバレーザ装置1の他の動作>
次に、このようなファイバレーザ装置1の他の動作について説明する。
【0067】
図4は、図1のファイバレーザ装置の動作を図2と同様にして示すタイミングチャートである。図4に示すように、本動作では、第2の所定期間T2後において、AOM14が反射状態とされた後、第3の所定期間T3だけAOM14を非反射状態とする。この第3の所定期間は、第2の所定期間T2後にAOM14が反射状態とされた後で、増幅用光ファイバ13の活性元素の励起状態が待機状態における活性元素の励起状態よりも低い状態に開始される。第3の所定期間T3では、上記のようにAOM14が非反射状態とされるため、第2の所定期間T2と同様にして、増幅用光ファイバ13の活性元素の励起状態が急に高くなる。しかし、この第3の所定期間T3は、増幅用光ファイバ13の活性元素の励起状態が待機状態における活性元素の励起状態と同じ状態となる期間よりも短く設定される。
【0068】
こうして、第3の所定期間T3の間にAOM14が非反射状態とされない場合と比べて、早期に増幅用光ファイバ13内の活性元素を待機状態における当該活性元素の励起状態に近づけることができる。なお、上記のように、第3の所定期間T3は活性元素の励起状態が待機状態における当該活性元素の励起状態と同じ励起状態となる期間よりも短いため、第3の所定期間T3後に再びAOM14が非反射状態とされても、パルス光が出射することを抑制することができる。
【0069】
また、本動作においても、第1の所定期間T1は、第2の所定期間T2よりも長いことが好ましく、制御部CPは、第3の所定期間T3後におけるAOM14の反射状態を第1の所定期間T1よりも長い期間維持することが好ましい。
【0070】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
例えば、上記実施形態のファイバレーザ装置1において、種光部MOの第2反射部としてAOM14を例に示したが、本発明はこれに限らない。例えば、AOM14とプリアンプPRとの間にFBG12よりも反射率が低い第2のFBGが設けられ、AOM14がオンとなり光がAOM14を透過すると第2のFBGで光が反射して、FBG12と第2のFBGとの間で発振を起こすよう構成することができる。従って、この場合、AOM14と第2のFBGとで第2反射部が形成される。なお、この場合、AOM14のプリアンプPR側の端面が無反射加工されることが好ましい。
【0072】
また、上記ファイバレーザ装置1は、種光部MOの他に、プリアンプPRと、メインアンプPAと、波長変換部RFと、波長選択フィルタFLとを備えた。しかし、ファイバレーザ装置である種光部MOから出射する光のパワーが大きければ、プリアンプPRと、メインアンプPAと、波長変換部RFと、波長選択フィルタFLが備わっていなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明によれば、光学素子の損傷を抑制してワンショットパルスの光を出射することができるファイバレーザ装置、及び、ファイバレーザ装置のパルス光出射方法が提供され、加工機や、医療機器といったレーザ光を用いる分野での利用ができる。
【符号の説明】
【0074】
1・・・ファイバレーザ装置
11,21,31・・・励起光源
13,23,33・・・増幅用光ファイバ
FL・・・波長選択フィルタ
MO・・・種光部(ファイバレーザ装置)
PA・・・メインアンプ
PR・・・プリアンプ
RF・・・波長変換部
図1
図2
図3
図4