(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、抗菌技術の分野においては、有機系抗菌剤と比較して安全性、耐熱性及び永続性に優れることから、銀イオンを抗菌成分の主体とした無機系抗菌剤が主流となっている。そして、その抗菌剤の具体的形態としては、銀イオンの抗菌性能を有効に発揮させることができると同時に、使用しやすい形態であることから、多孔性セラミックに銀イオンを保持させた構造が一般的になっている。その際、担持体である多孔性セラミックとしては、ゼオライト、層状ケイ酸塩、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、酸化チタンなどが利用されている。
銀の抗菌性能を十分に発揮させるためには、金属状態の銀を保持させるよりも、反応性に富んだイオン状態の銀を保持させるほうが望ましく、担持体に銀を銀イオンとして固定化することや、担持体から銀を銀イオンとして放出する技術は公知のものである。
しかしながら、上記のように銀イオンを担持体に固定化する方法や、銀イオンとして被処理液中に放出する方法、あるいは、従来より行われてきた金属銀粉末を直接被処理液中に投与する方法は、長期間安定な抗菌活性を得るには十分な方法ではなかった。さらに、無機系抗菌剤は抗菌性を効果的に発現させることが難しく、所望の抗菌活性を得るためには無機系抗菌剤を多量配合する必要があるという問題もあった。
【0003】
一方、近年風呂水に芳香や色調を与え入浴の気分を爽快にしたり、血行を促進したり、新陳代謝を活発にして冷え性・疲労回復などの効果を与える目的で、風呂水に入浴剤を入れることが一般に普及しているが、入浴剤を入れたお湯は、入浴剤に含まれる成分と風呂水の温度が繁殖に適しているために雑菌が増殖しやすく、それらが風呂水の臭いやヌメリの原因となるという問題や、さらには、冷めた湯の沸かし直しや入浴に適した温度を長期間維持したりすることは、衛生面で問題があった。
ここで、家庭用の風呂水の殺菌は、塩素系殺菌剤を適量投入して行われるのが従来一般的であったが、塩素系殺菌剤の殺菌効果は優れているものの、投入量によっては塩素臭や皮膚刺激等の問題があり、投入後しばらくは入浴に不適であることや、投入量を適量にコントロールする必要があった。また、銀イオンを入浴剤中に溶解させる技術も提案されたが、銀イオンとして一般的に知られている塩化銀やヨウ化銀は、水に対する溶解度が低く、入浴剤と共に風呂水に溶解させることは困難である。さらに、塩化銀やヨウ化銀などの塩素イオン及びヨウ素イオンは人体への安全性が低いという問題もあった。
【0004】
さらに、ゼオライト等の多孔性セラミックに銀イオンを担持させた構造の無機系抗菌剤は、使用しやすい形態であるとして、医薬部外品や化粧品など、高い安全性が求められる分野においても抗菌成分として使用されている。しかしながら、この銀イオンを担持体に担持した抗菌剤を入浴剤に使用した場合、初期には優れた抗菌力を発揮するものの、抗菌効果が経時的に低下してしまうという問題があった。
これは、銀イオンが、入浴剤に含まれる他の成分や風呂水中に存在する塩素イオン等と反応し、抗菌性をほとんど有さない塩や錯イオンとなることや、温度、熱または光の影響により様々な化学反応を起こし変化してしまうことに由来するためと考えられている。これに対して、所望の抗菌活性を得るために、銀イオンを担持体に担持した抗菌剤を多量に配合することも考えられるが、水に溶けない抗菌剤が沈殿するなど入浴者が不快に感じ、入浴剤としては、この方法は適していなかった。さらに、長期保存下において、抗菌効力が低下し、製剤が劣化するという問題もあった。また、入浴剤に使用した際には、銀イオンと入浴剤に含まれる成分との様々な化学反応の結果と考えられる製剤の変色が発生するという問題もあった。
【0005】
このような問題を解決するために、銀と銀以外の抗菌性金属とを併用する殺菌剤(特許文献1)、非晶質の合成ケイ酸アルミニウム系化合物(特許文献2)、銀担持リン酸ジルコニウム系(特許文献3)、ヒドロキシカルボン酸銀(特許文献4)を使用する方法が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の硫酸ナトリウムを有効成分とする銀担持体からの銀溶出向上剤、該向上剤と銀担持体を含有する抗菌剤組成物、さらに、該抗菌剤組成物を含有する入浴剤について詳細に説明する。
【0012】
本発明の銀担持体からの銀溶出向上剤は、硫酸ナトリウムを有効成分としている。硫酸ナトリウムは、無水物と10水和物の2種類が汎用されており、本発明においては、いずれの硫酸ナトリウムを使用しても良いが、無水物(乾燥硫酸ナトリウムともいう)が好ましい。
本発明における向上剤の配合量は、銀担持体に対する所望の効果が発揮されれば特に限定されないが、使用する銀担持体を1質量部としたとすると、10〜3500質量部の範囲で配合することが好ましく、50〜1000質量部の範囲がより好ましい。さらに、硫酸ナトリウムは入浴剤の基剤や主剤としての機能も有するので、本発明の抗菌剤組成物を含有する入浴剤は、銀担持体からの銀溶出向上剤および基剤や主剤として硫酸ナトリウムを使用することができる。
【0013】
本発明の銀担持体は、担持体に銀または銀イオンが固定化された担持物を意味する。担持体としてはゼオライト、層状ケイ酸塩、リン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、酸化チタンなどの多孔性セラミックのものが含まれる。本発明の銀担持体としては、銀を担持させた後に800℃以上で焼成させたものは好ましくない。これは、担持体上の銀または銀イオンが800℃以上の高温焼成において酸化物に変じるためイオン化しにくく、抗菌性能が発揮されず好ましくないからである。さらに、本発明の銀担持体としては銀担持ゼオライトが好ましく、特に800℃以上の高温焼成していない銀担持ゼオライトが好ましく、例えば、商品名ゼオミックとして株式会社シナネンゼオミックから入手可能なものが好適に使用できる。
銀担持体の使用量は、銀担持体に対する所望の効果が発揮されれば特に限定されないが、例えば、入浴剤として使用する場合には、入浴剤の全量に対して、銀担持量が0.5〜10質量%の範囲の銀担持体を0.01〜5.0質量%の範囲で添加すればよく、好ましくは0.05〜2.0質量%、特に好ましくは0.1〜1.0質量%の範囲で添加すればよい。
さらに、銀担持体は、風呂水中に、0.01〜30ppm、好ましくは0.1〜10ppm、特に好ましくは0.2〜3.0ppmの濃度範囲で存在すればよい。
【0014】
本発明の入浴剤には、上述した銀担持体と硫酸ナトリウムの他に、必要に応じて、当該分野で知られている各種成分(以下「任意成分」と称することもある)を1種又は2種以上組合せて配合することができる。以下に本発明の入浴剤に配合することのできる任意成分を例示するが、ここに記載された成分等に限定されないことは言うまでもない。
【0015】
<無機塩類>
塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム等の塩化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、チオ硫酸カリウム、次亜硫酸ナトリウム等の硫酸塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム等の硝酸塩、リン酸ナトリウム(リン酸三ナトリウムを除く)、ポリリン酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム等のリン酸塩、イオウ、硫化ナトリウム、硫化カリウム、亜硫化鉄等の硫化物、無水ケイ酸、メタケイ酸、雲母末、中性白土等のケイ素化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、ホウ砂、ホウ酸、酸化カルシウム、臭化カリウム、過マンガン酸カリウム、人工カルルス塩、鉱泉、鉱砂、湯の花等。
<有機酸類>
リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、ピロリドンカルボン酸等の有機酸を、本発明の入浴剤は含有してもよいし、また、含有しなくてもよい。ここで、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸は、キレート剤として機能し金属と錯体を形成するので、本発明の入浴剤はヒドロキシカルボン酸を含有しない方が好ましい。特に、リンゴ酸は銀とのキレート能が高いので、本発明では含有しない方が好ましい。
<油性成分類>
ヌカ油、オリーブ油、大豆油、流動パラフィン、白色ワセリン、ステアリルアルコール、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、モノグリセライド、トリグリセライド、米ぬかエキス、米胚芽油、セラミド、シリコーン等。
【0016】
<高分子物質類>
カルボキシメチルセルロース、スチレン重合体エマルション、デキストリン、カゼイン、卵黄末、脱脂粉乳、いりぬか等。
<薬効成分類>
メントール、カンフル、サリチル酸メチル、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、安息香酸等。
<酵素類>
トリプシン、α−キモトリプシン、ブロメライン、パパイン、プロテアーゼ、プロクターゼ、セラチオペプチダーゼ、リゾチーム、フィシン等。
【0017】
<香料・精油類>
ハッカ、ユーカリ、レモン、ペルペナ、シトロネラ、カヤプテ、サルビア、タイム、クローブ、ローズマリー、ヒソップ、ジャスミン、カモミール、ネロリ、ヨモギ、ペリラ、マジョラム、ローレル、ジュニパーベリー、ナツメグ、ジンジャー、オニオン、ガーリック、ラベンダー、ベルガモット、クラリーセージ、ペパーミント、バジル、ローズ、プチグレン、シナモン、メース、シトラール、シトロネラール、ボルネオール、リナロール、ゲラニオール、ネロール、ロジノール、オレンジ、アルテミジア、カンフル、メントール、シネオール、オイゲノール、ヒドロキシシトロネラール、サンダルウッド、コスタス、
ラブダナム、アンバー、ムスク、α−ピネン、リモネン、サリチル酸メチル、ソウジュツ、ビャクジュツ、カノコソウ、ケイガイ、コウボク、センキュウ、トウヒ、トウキ、ショウキョク、シャクヤク、オウバク、オウゴン、サンシン、ケイヒ、ニンジン、ブクリョウ、ドクカツ、ショウブ、ガイヨウ、マツブサ、ビャクシ、ジュウヤク、ウイキョウ、チンピ、カンピ、カミツレ等の精油類、亜硝酸アミル、トリメチルシクロヘキサノール、アリルサルファイド、ノニルアルコール、デシルアルコール、フェニルエチルアルコール、炭酸メチル、炭酸エチル、フェニル酢酸エステル、グアヤコール、インドール、クレゾール、チオフェノール、p−ジクロロベンゼン、p−メチルキノリン、イソキノリン、ピリジン、アブシンス油酢酸、酢酸エステル等。
【0018】
<顔料類>
タルク、ベンガラ、黄酸化鉄、ケイ酸マグネシウム、マイカ、雲母、チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、無水ケイ酸、酸化亜鉛、これらの被覆粒(顆粒)等。
<美白成分類>
ビタミンEフェルラ酸エステル、ビタミンCおよびその誘導体、エラグ酸、コウジ酸、α−ヒドロキシ酸、ヒアルロン酸等。
<色素類>
青色1号、青色202号、赤色106号、赤色2号、黄色5号、黄色4号、緑色3号、橙色205号、黄色202(1)号、緑色204号、緑色201号、赤色102号、青色2号、赤色3号等の法定色素、クロロフィル、リボフラビン、アンナット、アントシアニン等の天然色素等。
【0019】
<イオウ類>
イオウ、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸カリウム、硫化カルシウム、重硫化カルシウム、硫化カリウム、硫化ナトリウム、硫化アンモニウム、硫化バリウム、硫化亜鉛、硫化すず、硫化アンチモン、硫化鉄、二硫化炭素、硫化リン等。
<皮脂分泌促進成分類>
分岐脂肪酸コレステリルエステル、γ−オリザノール、ヨクイニンもしくはヨクイニン抽出物等。
<ビタミン類>
ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンH、パントテン酸、ニコチン酸又はその誘導体、ビタミンEニコチン酸エステル、イノシット等。
【0020】
<海藻抽出物類>
アナアオサ、ミル、ウスバアオノリ、ヒトエグサ、スジアオノリ、カサノリ、ヘライワヅタ、ハネモ、ナガミル等の緑藻植物、ウミウチワ、アミジグサ、モズク、イロロ、マツモ、イワヒゲ、ハバノリ、ウルシグサ、カジメ、マコンブ、ワカメ、トロロコンブ、ヒジキ、アラメ、ホンダワラ、ウミトラノオ等の褐藻植物、マルバアマノリ、アサクサノリ、スサビノリ、ウミゾウメン、ヒラクサ、マクサ、トリアシ、ハナフノリ、フクロフノリ、トサカノリ、トゲキリンサイ、アカバギンナンソウ、コトジツノマタ、ツノマタ、アヤニ
シキ、マクリ、エゴノリ、オゴノリ、イバラノリ等の紅藻植物等から得られる抽出物等。
<冷感物質類>
メントール、カンフル、チモール等のメントール誘導体、単環式化合物、二環式アルコール、三環式アルコール、三環式アミド等。
【0021】
<保湿成分類>
乳酸ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、グルタミン酸二ナトリウム等の有機酸塩類、イソプレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、キシロース、キシリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のムコ多糖類、コラーゲンやその誘導体、蛋白質、ケラチン、フィブロイン及びその加水分解物等。
【0022】
<界面活性剤>
ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等。
<その他>
ブドウ糖、ショ糖、トレハロース、フィトコラージュ、イソフラボン、グリチルリチン酸塩およびその誘導体、グリチルレチン酸塩およびその誘導体、パラオキシ安息香酸エステル、イソプロピルメチルフェノール、野菜又は果物抽出物(エキス)、精製水、イオン水、海洋深層水等。
【0023】
上述した任意成分の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定すればよい。
【0024】
本発明の入浴剤は、1gの入浴剤をイオン交換水1000gに20℃で溶解させる溶解性試験において20分以内に溶解することが好ましい。これにより、本発明の入浴剤を浴湯に投入した時に速やかに溶解させることができる。
なお、本発明の入浴剤の剤型は、特に制限されるものではなく、例えば、粉末剤、顆粒剤、微細粒剤、錠剤、ブロック剤等の固形製剤、乳剤、ゲル剤、液剤等の液状製剤、発泡製剤、エアゾール製剤、フォーム製剤等とすることができる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例において本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、銀担持ゼオライトと硫酸ナトリウムやそれ以外の無機塩とを混合し、抗菌剤組成物の光や温度による影響を、変色、臭い、溶出銀イオン濃度の変化から検証した。なお、実施例において、特に明記しない限り、部は質量部を意味し、硫酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムは無水物を使用した。
【0026】
[光と温度による影響確認試験]
(1)試験検体
銀担持ゼオライト(銀含有量5.5質量%)0.74部、乾燥硫酸ナトリウム99.26部を配合し、抗菌剤組成物の処方A(実施例1)を得た。
表1に示す銀担持ゼオライト(銀含有量5.5質量%)、乾燥硫酸ナトリウムの含有量に基づき、「処方A」と同様にして処方B〜Dの試験検体(比較例1〜3)を得た。また、銀担持ゼオライトのみを含有するコントロールを準備した。
【0027】
【表1】
【0028】
(2)試験方法1:光による影響の確認
試験検体をトレイに適量とり、蛍光灯の下(照度:1200Lux)で24時間静置した。24時間後、製剤色、臭気、溶出銀イオン濃度を評価した。
製剤色は目視評価、臭気は官能評価を行った。
溶出銀イオン濃度については、次の手順により測定した。
試験検体を1.0g/Lの濃度(コントロールについてのみ、7.4mg/Lの濃度)で40℃の精製水に溶解し、24時間の溶出時間経過後の溶液を分析溶液とする。この分析溶液を0.2μmのメンブランフィルターでろ過分離し、溶液を硝酸酸性として原子吸光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、Z−2310、Z−8200)を使って、溶出した銀イオン濃度(μg/L)について定量分析を行った。
(3)光による影響確認の試験結果
全ての検体において臭気の発生は認められなかった。
また、製剤色と溶出銀イオン濃度の評価結果は表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
銀イオンは光の影響により黒く変色することが知られているが、本発明は銀担持ゼオライトを硫酸ナトリウムと組み合わせることにより、そのほかの無機塩との組み合わせに比べて、光による変色度合いが低いことが確認できた。
また、溶出銀イオン濃度は、銀担持ゼオライトを硫酸ナトリウムと組み合わせることにより、そのほかの無機塩との組み合わせに比べて約1.5〜2倍程度、水中への銀イオンの溶出を促進することが確認できた。
【0031】
(4)試験方法2:温度による影響の確認
試験検体をアルミニウム層を含む積層樹脂フィルムで密封した分包に40g充填し、50℃と5℃の条件下に静置した。1ヶ月後に50℃保管検体について製剤色と臭気の評価を、50℃、5℃両方の保管検体について溶出銀イオン濃度を評価した。
製剤色は目視評価、臭気は官能評価を行った。
溶出銀イオン濃度については、上述の光による影響確認の試験と同様に行った。
その結果を表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】
本発明の銀担持ゼオライトと硫酸ナトリウムとの組み合わせは、そのほかの無機塩との組み合わせに比べて、高温保管品において製剤色の変化がなく、また臭気の発生もないことから、長期保存安定性に優れることが確認できた。
また、銀担持ゼオライトと硫酸ナトリウムとの組み合わせは、そのほかの無機塩との組み合わせに比べて水中への銀イオンの溶出が促進されるばかりでなく、高温保管後でも溶出銀イオン濃度に大きな変化はなく、保存安定性に優れ保存後も安定した溶出銀イオン濃度が得られることが確認できた。
【0034】
[入浴剤の保存安定性試験1]
(1)試験検体
銀担持ゼオライト(銀含有量5.5質量%)0.72部、硫酸ナトリウム97.18部、グリシン0.1部、無水ケイ酸1.0部及び香料1.0部を配合し、入浴剤処方a(実施例2)を得た。
入浴剤処方aにおいて、銀担持ゼオライトを0.36部、硫酸ナトリウムを炭酸水素ナトリウム97.54部に変更した以外は同様に配合して、入浴剤処方b(比較例4)を得た。
処方a、bについて、表4に処方をまとめて示す。
【0035】
【表4】
【0036】
(2)試験方法
試験検体をアルミニウム層を含む積層樹脂フィルムで密封した分包に40g充填し、50℃、5℃の条件下で2ヶ月間静置したのち、以下の分析方法に従い溶出銀イオン濃度を測定した。
保管後の試験検体を0.2g/Lの濃度で40℃の精製水に溶解し、24時間の溶出時間経過後の溶液を分析溶液とする。この分析溶液を0.2μmのメンブランフィルターでろ過分離し、溶液を硝酸酸性として原子吸光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、Z−2310、Z−8200)を使って、溶出した銀イオン濃度(μg/L)について定量分析を行った。分析結果を表5に示した。5℃で保管した試験検体の溶出銀イオン濃度を1とした、50℃で保管した試験検体の溶出銀イオン濃度比を、表5に併せて示した。
【0037】
【表5】
【0038】
本発明の銀担持ゼオライトと硫酸ナトリウムとの組み合わせは、入浴剤とした場合においても、特異的に溶出銀イオン濃度を向上させることが明らかとなった。しかも、高温(50℃)保管した場合においても、低温(5℃)保管に比べて、本発明の銀担持ゼオライトと硫酸ナトリウムとの組み合わせは溶出する銀イオン濃度の低下は見られず、無機塩の中から硫酸ナトリウムを選択することにより、長期保存安定性に優れる入浴剤が得られることが確認できた。さらに、本発明の銀担持ゼオライトと硫酸ナトリウムとの組み合わせは、抗菌活性を長期的に安定化させるものであり、風呂水の雑菌繁殖を長時間抑制することができる入浴剤とし得るものである。
【0039】
[入浴剤の保存安定性試験2]
(1)試験検体
銀担持ゼオライト(銀含有量5.5質量%)0.72部、硫酸ナトリウム97部、グリシン0.1部、無水ケイ酸1部、香料1部およびその他成分(抗菌成分、着色剤等)を加え全量100部を配合し、入浴剤処方E(実施例3)を得た。
入浴剤処方Eにおいて、硫酸ナトリウムを96部に変更し、さらに炭酸水素ナトリウム1部を加えた以外は同様に配合して、入浴剤処方F(実施例4)を得た。
処方E、Fについて、表6に処方をまとめて示す。
【0040】
【表6】
【0041】
(2)試験方法
試験検体をアルミニウム層を含む積層樹脂フィルムで密封した分包に40g充填し、5℃の条件下で1ヶ月間静置した。
溶出銀イオン濃度は、以下の分析方法に従い測定した。
保管後の試験検体を1.0g/Lの濃度で40℃の精製水に溶解し、24時間の溶出時間経過後の溶液を分析溶液とする。この分析溶液を0.2μmのメンブランフィルターでろ過分離し、溶液を硝酸酸性として原子吸光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、Z−2310、Z−8200)を使って、溶出した銀イオン濃度(μg/L)について定量分析を行った。
また、官能評価により、保管後の試験検体の臭気発生の有無を確認した。
溶出銀イオン濃度の分析結果と臭気官能評価を表7にまとめて示す。
【0042】
【表7】
【0043】
本発明の銀担持ゼオライトと硫酸ナトリウムとの組み合わせは、入浴剤の基剤として汎用される無機塩である炭酸水素ナトリウムを併用した場合においても、溶出銀イオン濃度を特異的に向上させる性能は維持されることが明らかとなった。これにより、本発明の銀担持ゼオライトと硫酸ナトリウムとの組み合わせは、入浴剤としての性能も備え、かつ、風呂水の雑菌繁殖を長時間抑制することができる入浴剤とし得ることが明らかとなった。