(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態の一例が適用されたアクチュエータの断面図である。なお、
図1は、2つのモータ106A、106Bの異同が分かるように断面図化されている。また、
図2、
図3は、それぞれ、
図1の矢視II−II線に沿った断面図、
図1の矢視III−III線に沿った断面図、である。概略構成について以下説明する。
【0013】
アクチュエータ100は、
図1に示す如く、3つ(複数)のモータ106A〜106C(以下、モータ106と記す)と、ブレーキ126A〜126C(以下、ブレーキ126と記す)と、減速機構130と、エンコーダ160Aと、を備える(モータ106Cとブレーキ126Cとが不図示)。ここで、減速機構130は、3つのモータ106のモータ軸108A〜108C(以下、モータ軸108と記す)によってそれぞれ回転される3本のクランク軸132A〜132C(以下、クランク軸132と記す)と、3本のクランク軸132にそれぞれ同位相で設けられた偏心体136A〜136C(以下、偏心体136と記す)と、を有する(モータ軸108Cとクランク軸132Cと偏心体136Cとが不図示)。更に、減速機構130は、偏心体136の外周に揺動回転可能に組込まれた外歯歯車144と、外歯歯車144と内接噛合する内歯歯車150と、を有する。また、ブレーキ126は、3本のクランク軸132を制動するように、3本のモータ軸108全てに設けられている。エンコーダ160Aは、クランク軸132Aの回転角を検出するように、クランク軸132Aに設けられている。
【0014】
なお、アクチュエータ100には、
図1に示す如く、軸方向Oに沿って円筒部材102が組込まれている。このため、アクチュエータ100は、その円筒部材102の貫通孔104によって配管や配線などを通過させることができる。即ち、全ての構成要素は、円筒部材102の内径d1より外側に配置されている。
【0015】
以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0016】
まず、モータ106Aとブレーキ126Aについて、主に説明する。なお、本実施形態では、モータ106Aとブレーキ126Aが、それぞれモータ106B(106C)とブレーキ126B(126C)と同一であることから、それらの説明については省略する。
【0017】
モータ106Aは、モータ軸108Aとロータ116Aとステータ118Aとを備えている。モータ軸108Aのロータ軸部110Aには、ロータ116Aが一体的に支持固定されている。ロータ116Aの表面には永久磁石が形成されている。
【0018】
一方、ステータ118Aは、ロータ軸部110Aに支持固定されたロータ116Aの外周と所定の間隔を隔てられて、本体ケーシング120の内側に取り付け固定されている。本体ケーシング120には、少なくともステータ118Aの側面(
図1の右側及び
図2)を覆うように中段カバー122が、ボルト182で固定されている。中段カバー122には、後述するブレーキ126Aを構成す
る固定部125Aが、取り付けられている。この固定部125Aで軸受166Aが支持される。また、中段カバー122には、ブレーキ126Aを覆うためのブレーキカバー128が、ボルト184により取り付けられている。なお、本体ケーシング120には、相手機械への取り付けを行うためのボルト孔186が設けてある。
【0019】
ブレーキ126Aは可動部124Aと固定部125Aとからなる。可動部124Aは、ブレーキディスクなどであり、モータ軸108Aの軸先端部114Aに取り付けられて、モータ軸108Aと一体に回転する。固定部125Aには、電磁コイルや電磁コイルで変位量が与えられて前記ブレーキディスクに摩擦力を付与する可動鉄心などが配置され、後述する本体ケーシング120に固定されている。このため、電磁コイルへの印加電圧を制御することで、モータ軸108Aの回転を自在に制動することができる。
【0020】
このように、モータ106Aとブレーキ126Aとは、小型とされて円筒部材102の内径d1とブレーキカバー128の外径d2との間の幅d3に配置されている。しかし、モータ106Aとブレーキ126Aとが小型とされていても、幅d3の間に周方向に等間隔に分散されてモータ106Aとブレーキ126Aとが3つ配置されている。このため、減速機構130に伝達される回転トルクと制動トルクを大きくすることができる。
【0021】
次に、減速機構130とエンコーダ160Aとについて、主に説明する。なお、エンコーダ160Aが設けられるクランク軸132Aの軸先端部140Aを除いて、他のクランク軸132B、132Cと、クランク軸132Aは同一である。このため、クランク軸132B、132Cと、それに関連する符号下1桁の英文字違いの部材については説明を省略する。
【0022】
減速機構130は、偏心体136と外歯歯車144と内歯歯車150とを有する。1本のクランク軸132Aに注目すると、1対の偏心体136Aが互いに180度ずれた位相の状態で一体形成されている。その1対の偏心体136は、3本のクランク軸132にそれぞれ同位相で設けられている。すなわち、3本のモータ軸108を回転制御することで、3本のクランク軸132上のそれぞれの偏心体136を同一の位相で同一の方向に同一の速度で回転させることができる。外歯歯車144は、偏心体孔148A〜148C(以下、偏心体孔148と記す)を備えている(
図3参照)。そして、偏心体孔148と偏心体136の間にころ軸受142A〜142C(以下、ころ軸受142と記す)を配置させている。このため、外歯歯車144は、ころ軸受142を介して偏心体136の外周と嵌合している。
【0023】
外歯歯車144は、内歯歯車150に内接している。内歯歯車150は、出力部材152と一体化されている。内歯歯車150の内歯151は、具体的にはピンで構成され(
図3参照)、その周方向の最小間隔Pから算出される数(内歯歯車150の歯数とする)は外歯歯車144の歯数より多く設定されている。なお、内歯歯車150の歯数と外歯歯車144の歯数との歯数差と、外歯歯車144の歯数とから、減速機構130の減速比が定まる。外歯歯車144には、また、柱孔145が周方向に一定間隔で、複数(本実施形態では6つ)形成されている(
図3参照)。そして、柱孔145にキャリアプレート156から一体的に突出形成された柱部155が遊嵌している。キャリアプレート156は、本体ケーシング120から軸方向Oに一体的に延在して形成された延在部154と、ボルト190で連結されることで、本体ケーシング120に固定されている。なお、延在部154とキャリアプレート156とからキャリア158が構成されている。また、外歯歯車144には、中心軸孔146が形成されて、そこに円筒部材102が遊嵌される構成とされている。
【0024】
出力部材152は、1対の軸受170、172で、キャリア158の外周に回転自在に支持されている。本実施形態では、本体ケーシング120を相手機械のケーシングにボルト孔186を用いて固定することで、出力部材152からアクチュエータ100の出力を相手機械に伝達する。しかし、出力部材152をボルト孔188を用いて相手機械のケーシングに固定して、本体ケーシング120からアクチュエータ100の出力を相手機械に伝達してもよい。なお、出力部材152の外径d4は、ブレーキカバーの外径d
2よりも大きくされて、大きなトルクを出力することができる。
【0025】
なお、クランク軸132Aは、モータ軸108Aと一体形成されている。即ち、モータ軸108Aはクランク軸132Aと兼用とされている。モータ軸108Aは、その軸端部112Aで軸受166Aによって、本体ケーシング120に対して回転可能に支持されている。言い換えれば、モータ106Aの反偏心体側端部で、モータ軸108Aは軸受166Aで支持されている。一方、クランク軸132Aは、その軸端部138Aで、軸受168Aによって回転可能に支持されている。言い換えれば、偏心体136Aの反モータ側端部でクランク軸132Aが軸受168Aで支持されている。軸受168Aは、前述のキャリアプレート156に支持されている。モータ軸108Aとクランク軸132Aとが一体成形されていることから、モータ軸108Aとクランク軸132Aとは、2つの軸受166A、168Aのみで、本体ケーシング120およびキャリアプレート156に支持されている。このため、軸受166Aの代わりにクランク軸132Aの軸中央
部134Aに軸受を配置してそれで支持する場合に比べて、本実施形態では2つの軸受166A、168Aの間のスパンL1を長くすることができる。即ち、軸受166A、168Aとも玉軸受などの安価な軸受を用いても、前記スパンが短ければ生じうるクランク軸132A(モータ軸108A)の軸振れを減少させることができる。このため、軸受166B(166C)、168B(168C)を用いたクランク軸132B(132C)も同様に軸振れを減少させることができる。なお以下、軸受166A〜166C、168A〜168Cはそれぞれ、軸受166、168と記す。
【0026】
エンコーダ160Aは、可動部161Aと固定部162Aとからなる。可動部161Aは、スリット板などであり、クランク軸132Aの軸先端部140Aに取り付けられて、クランク軸132Aと一体に回転する。固定部162Aには、発光素子や前記スリット板のスリットを通過した光を受光する受光素子などがあり、その固定部162Aはキャリアプレート156に固定されている。このため、エンコーダ160Aは、クランク軸132Aの回転角を検出することができる。なお、キャリアプレート156には、エンコーダ160Aを覆うように、エンコーダカバー164Aが取り付けられている。
【0027】
エンコーダ160Aに必要な軸方向Oの厚みt1は、クランク軸132Aの軸先端部140Aからエンコーダカバー164Aまでと考えられる。ここで、キャリアプレート156は、アクチュエータ100の出力を行う出力部材152を軸受172を介して支持している。即ち、キャリアプレート156で大きな出力トルク(制動トルク含む)を支持する必要があるため、高い剛性を持たせるのにキャリアプレート156に相応の厚みt2が必要とされる。このため、
図1に示す如く、キャリアプレート156にエンコーダ160Aを組込むことで、前記厚みt1は厚みt2と配置上相殺されて、その軸方向Oへの突出長さをt3とすることができる。即ち、例えばブレーキの外側(
図1の右側)にエンコーダを設けるよりも、突出長さt3は短くでき、アクチュエータ100の軸方向Oの長さの増大を最小限とすることができる。
【0028】
なお、符号174A、176A、178、180は、減速機構130で使用される潤滑剤を封止しておくためのオイルシールである。
【0029】
次に、このアクチュエータ100の作用を説明する。
【0030】
図示せぬモータドライバからの電気信号により、3つのモータ106のモータ軸108を同時に回転させる。このとき、3つのモータ106は、1つのモータドライバで制御してもよいし、別々のモータドライバで制御してもよい。この結果、モータ軸108と一体形成されている3本のクランク軸132が回転し、各クランク軸132にそれぞれ設けられている偏心体136が、同一の位相で、同一の方向に、同一の速度で回転する。
【0031】
これにより、ころ軸受142を介して各偏心体136と嵌合している外歯歯車144が揺動して、該外歯歯車144と内歯歯車150とが噛合する。ここで、外歯歯車144の柱孔145に遊嵌されているキャリアプレート156の柱部155は、(相手機械に取り付け固定された)本体ケーシング120に固定されている。このため、偏心体136が1回回転するたびに内歯歯車150は外歯歯車144との歯数差分だけ回転する。即ち、本体ケーシング120に対して内歯歯車150と一体とされている出力部材152が回転する。このときの出力部材152の回転角は、エンコーダ160Aで検出したクランク軸132Aの回転角に、減速機構130の減速比を乗ずることで求めることができる。なお、外歯歯車144の揺動成分はキャリアプレート156の柱部155と柱孔145との遊嵌によって吸収される。
【0032】
ここで、3本のモータ軸108全てにブレーキ126を設けている。このため、全てのブレーキ126を効かせることで、3本のクランク軸132全てがブレーキ126で制動される。つまり、一部のクランク軸だけに逆向きの負荷がかかりそのクランク軸だけに回転角のずれが生じることを防止することができる。そして、1本のクランク軸132Aにエンコーダ160Aを設けている。ブレーキ126Aが設けられたクランク軸132Aにエンコーダ160Aが設けられているため、ブレーキ
126Aによる制動があっても、エンコーダ160Aで検出される回転角の誤差を最小限にすることができる。
【0033】
同時に、本実施形態では、全てのクランク軸132にブレーキ126が設けられているので、ブレーキ126の制動によって各クランク軸132にかかる負荷が均等となり、更に各クランク軸132にかかる負荷も低減することができる。このため、一部のクランク軸だけが疲労することを防ぐことができ、アクチュエータ100を長寿命化することができる。
【0034】
また、エンコーダ160Aは、偏心体136A近傍であって、且つクランク軸132Aの
軸先端部140Aに配置されている。即ち、クランク軸132Aにおける、偏心体136Aの軸方向O反モータ側にエンコーダ160Aが配置されている。このため、エンコーダ160Aの取り付けはモータ106Aに関係なく容易に行うことができる。また、クランク軸132Aのエンコーダ160A近傍を軸受168Aが支持しているので、クランク軸132Aの回転角を更に正確に検出することができる。
【0035】
また、エンコーダ160Aは、
図1に示す如く、軸方向Oでブレーキ126Aの反対側のクランク軸132Aの軸先端部140Aであって、出力部材152の内側のキャリアプレート156に配置されている。このため、高精度な回転角の検出が可能でありながら、軸方向Oにおいてエンコーダ160Aのアクチュエータ100外部への突出長さt3を低減できる。つまり、アクチュエータ100の軸方向Oの長さの増大を最小限にとどめることができる。
【0036】
なお、突出長さt3は、出力部材152の軸方向長さを長くすることで解消することもできる。その際には、出力部材152を支持する軸受170、172の間のスパンL2を長くできる。このため、出力部材
152の回転振れを更に低減することができる。
【0037】
また、クランク軸132とモータ軸108とが一体成形されて、モータ106の反偏心体側端部で、モータ軸108を軸受166で支持している。このため、モータ軸108の軸振れを低減できる。且つ、モータ106の反偏心体側にあるブレーキ126からのモータ軸108への負荷を本体ケーシング120で支持することができる。即ち、モータ106の回転が安定して、モータ106を長寿命化することができる。
【0038】
また、モータ106Aの反偏心体側端部で、モータ軸108Aを軸受166Aで支持し、更に、偏心体136Aの反モータ側端部で、クランク軸132Aを軸受168Aで支持している。つまり、クランク軸132Aとモータ軸108Aとが2つの軸受166A、168Aのみで支持されている。即ち、軸受166A、168Aとの間のスパンL1を長く取ることができる。このため、例えば軸受の間のスパンが短いためにエンコーダでの軸振れが生じてエンコーダエラーが発生するといったことを防止することができる。即ち、クランク軸132Aの軸振れを最小限に低減でき、エンコーダ160Aでの回転角の検出を高精度に行うことができる。同時に、軸受166A、168Aが玉軸受であり、別の軸受も設けていないので、上記クランク軸132Aの軸振れの低減を低コストで実現することができる。
【0039】
即ち、本実施形態によれば、ブレーキ126による制動を行っても、アクチュエータ100の高精度な回転角制御が可能となる。なお、そのアクチュエータは、中心軸O方向に貫通孔104を備えて、外径大きさや軸方向長さなどの外形寸法でコンパクトでありながら、高出力とすることができる。
【0040】
本発明について本実施形態を挙げて説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0041】
上記実施形態においては、モータ106は3つで、それに伴いモータ軸108とクランク軸132と偏心体136なども3本であったが、本発明はこれに限定されずに、それらが2つ以上の複数であればよい。
【0042】
また、上記実施形態においては、エンコーダ160Aは、1本のクランク軸132Aに設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、更に他のクランク軸又は全てのクランク軸若しくはモータ軸に設けられていてもよい。その場合には、各クランク軸の制動のタイミングに僅かなずれが生じても、各エンコーダの検出結果から、より高精度にアクチュエータの回転角を求めることが可能となる。
【0043】
また、上記実施形態においては、モータ軸108とクランク軸132とが一体形成されていたが、本発明はこれに限定されない。モータ軸とクランク軸とが、例えば継ぎ手を介して一体に回転してもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、モータ軸108
Aの軸先端部114
Aにブレーキ126
A、クランク軸132Aの軸先端部140Aにエンコーダ160Aが設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えばエンコーダとブレーキとが逆の配置であってもよいし、一方の軸
先端部にエンコーダとブレーキの両方が設けられていてもよい。あるいは、モータ軸とクランク軸との間、即ち、偏心体とモータとの間にブレーキとエンコーダ若しくはいずれかが配置されていてもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、2つの軸受166A、168Aでモータ軸108Aとクランク軸132Aとが支持され、その外側にそれぞれブレーキ126Aとエンコーダ160Aとが設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えばモータと偏心体との間に更に軸受が配置されて3点支持としてもよいし、ブレーキとエンコーダの軸方向O外側に軸受が配置されていてもよい。更に、クランク軸の先端と、モータと偏心体との間と、にそれぞれ軸受が配置されて2点支持としてもよい。