特許第6257721号(P6257721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6257721
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】燃料電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20171227BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20171227BHJP
【FI】
   H01M8/02 E
   H01M8/02 Z
   H01M8/02 R
   !H01M8/12
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-172944(P2016-172944)
(22)【出願日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年5月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 憲次
(72)【発明者】
【氏名】新海 正幸
(72)【発明者】
【氏名】児玉 法子
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/050330(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給側である基端側からガス排出側である先端側に向かって延びるガス流路を有する多孔質の支持基板と、
前記支持基板に支持される少なくとも1つの発電素子部と、
前記発電素子部よりも基端側において前記ガス流路を画定する内壁面を覆い、前記支持基板よりも緻密な補強膜と、
を備える、燃料電池セル。
【請求項2】
前記発電素子部は、複数の前記発電素子部を含み、
前記複数の発電素子部のうち、最も基端側に配置される発電素子部である基端側発電素子部よりも基端側において、前記補強膜は、前記内壁面を覆う、
請求項1に記載の燃料電池セル。
【請求項3】
前記補強膜は、緻密質材料から構成される、
請求項1又は2に記載の燃料電池セル。
【請求項4】
前記補強膜は、前記支持基板と同じ主成分を有する、
請求項1から3のいずれかに記載の燃料電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池セルは、ガス流路を有する多孔質の支持基板と、支持基板上に支持される発電素子部とを備えている。発電素子部は、内側電極(例えば、燃料極)、電解質、及び外側電極(例えば、空気極)を有している。燃料極に燃料ガスを供給するとともに、空気極に空気を供給することによって、発電素子部が発電する。なお、ガス流路内にガスを供給すると、ガス流路内を流れるガスは支持基板内を介して発電素子部の内側電極へと供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−76339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように構成された燃料電池セルにおいて、支持基板の基端部にクラックが生じることがあった。そこで、本発明の課題は、支持基板の基端部にクラックが生じることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、支持基板の基端部側から余熱不足のガスがガス流路に供給されることによって支持基板の基端部が急冷され、ガス流路を画定する内壁面にクラックが生じるおそれがあることを見出した。そこで、本発明のある側面に係る燃料電池セルを以下のように構成した。すなわち、本発明のある側面に係る燃料電池セルは、支持基板と、少なくとも1つの発電素子部と、補強膜と、を備えている。支持基板は、基端側から先端側に向かって延びるガス流路を有している。支持基板は多孔質である。発電素子部は、支持基板に支持されている。補強膜は、発電素子部よりも基端側において、ガス流路を画定する内壁面を覆っている。補強膜は、支持基板よりも緻密である。
【0006】
この構成によれば、上述したように支持基板よりも緻密な補強膜がガス流路の内壁面を覆っているため、余熱不足のガスがガス流路に供給された場合であっても、支持基板の基端部においてクラックが生じることを抑制することができる。
【0007】
好ましくは、発電素子部は、複数の発電素子部を含んでいる。複数の発電素子部のうち、最も基端側に配置される発電素子部である基端側発電素子部よりも基端側において、補強膜は、内壁面を覆っている。
【0008】
好ましくは、補強膜は、緻密質材料から構成される。この構成によれば、ガス流路に供給されたガスが、補強膜に覆われた部分から支持基板内へ浸透することを抑制することができる。
【0009】
好ましくは、補強膜は、支持基板と同じ主成分を有する。この構成によれば、補強膜は、支持基板と近い値の熱膨張係数となるため、クラックの発生をより抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持基板の基端部にクラックが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】燃料電池スタックの斜視図。
図2】燃料電池スタックの断面図。
図3】燃料マニホールドの斜視図。
図4】燃料電池セルの斜視図。
図5】燃料電池セルの断面図。
図6】燃料電池セルの基端側の断面図。
図7】燃料電池セルと燃料マニホールドとの接合を示す図。
図8】空気の供給方法を示す図。
図9】燃料電池セル内を流れる電流を示す図。
図10】燃料電池セルの製造方法を示す図。
図11】燃料電池セルの製造方法を示す図。
図12】燃料電池セルの製造方法を示す図。
図13】燃料電池セルの製造方法を示す図。
図14】燃料電池セルの製造方法を示す図。
図15】燃料電池セルの製造方法を示す図。
図16】燃料電池セルの製造方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る燃料電池セルを用いた燃料電池スタックの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、燃料電池スタック100は、燃料マニホールド200と、複数の燃料電池セル301と、を備えている。
【0014】
[燃料マニホールド]
図3に示すように、燃料マニホールド200は、燃料ガスを各燃料電池セル301に分配するように構成されている。燃料マニホールド200は、中空状であり、内部空間を有している。燃料マニホールド200の内部空間には、導入管201を介して燃料ガスが供給される。燃料マニホールド200は、互いに間隔をあけて並ぶ複数の貫通孔202を有している。各貫通孔202は、燃料マニホールド200の天板203に形成されている。各貫通孔202は、燃料マニホールド200の内部空間と外部とを連通する。
【0015】
[燃料電池セル]
図2に示すように、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200から延びている。詳細には、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200の天板203から上方(x軸方向)に延びている。すなわち、各燃料電池セル301の長手方向(x軸方向)は、上方に延びている。燃料電池セル301の基端部が貫通孔202に挿入されている。図4に示すように、燃料電池セル301は、複数の発電素子部10と、支持基板20とを備えている。
【0016】
[支持基板]
支持基板20は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に沿って延びる複数のガス流路21を内部に有している。各ガス流路21は、支持基板20の基端側から先端側に向かって延びている。各ガス流路21は、互いに実質的に平行に延びている。なお、基端側とは、ガス流路のガス供給側を意味する。具体的には、燃料マニホールド200に燃料電池セル301を取り付けた場合において、その燃料マニホールド200に近い側を意味する。また、先端側とは、ガス流路のガス供給側とは反対側を意味する。具体的には、燃料電池セル301を燃料マニホールド200に取り付けた場合において、その燃料マニホールド200から遠い側を意味する。例えば、本実施形態の図2では、下側が基端側であり、上側が先端側となる。
【0017】
図5に示すように、支持基板20は、複数の第1凹部22を有している。各第1凹部22は、支持基板20の一対の主面23に形成されている。各第1凹部22は支持基板20の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。なお、各第1凹部22は、支持基板20の幅方向(y軸方向)の両端部には形成されていない。
【0018】
支持基板20は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板20は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板20は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板20の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
【0019】
[発電素子部]
各発電素子部10は、支持基板20の各主面23に支持されている。なお、各発電素子部10は、支持基板20の一方の主面23のみに支持されていてもよい。各発電素子部10は、支持基板20の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施形態に係る燃料電池セル301は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。長手方向に隣り合う発電素子部10は、インターコネクタ31によって互いに電気的に接続されている。
【0020】
発電素子部10は、燃料極4、電解質5、及び空気極6を有している。また、発電素子部10は、反応防止膜7をさらに有している。
【0021】
[燃料極]
燃料極4は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極4は、燃料極集電部41と燃料極活性部42とを有する。
【0022】
[燃料極集電部]
燃料極集電部41は、第1凹部22内に配置されている。詳細には、燃料極集電部41は、第1凹部22内に充填されており、第1凹部22と同様の外形を有する。燃料極集電部41は、第2凹部411及び第3凹部412を有している。第2凹部411内には、燃料極活性部42が配置されている。また、第3凹部412には、インターコネクタ31が配置されている。
【0023】
燃料極集電部41は、電子伝導性を有する。燃料極集電部41は、燃料極活性部42よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。燃料極集電部41は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0024】
燃料極集電部41は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部41は、NiO(酸化ニッケル)とY(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部41の厚さ、及び第1凹部22の深さは、50〜500μm程度である。
【0025】
[燃料極活性部]
燃料極活性部42は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。燃料極活性部42は、燃料極集電部41よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、燃料極活性部42における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、燃料極集電部41における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0026】
燃料極活性部42は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部42は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部42の厚さは、5〜30μmである。
【0027】
[電解質]
電解質5は、燃料極4上を覆うように配置されている。詳細には、電解質5は、あるインターコネクタ31から隣のインターコネクタ31まで長手方向に延びている。すなわち、支持基板20の長手方向(x軸方向)において、電解質5とインターコネクタ31とが交互に連続して配置されている。電解質5は、支持基板20の各主面23を覆うように構成されている。
【0028】
電解質5は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質5は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質5は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質5の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0029】
[反応防止膜]
反応防止膜7は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜7は、電解質5と空気極活性部61との間に配置されている。反応防止膜7は、電解質5内のYSZと空気極6内のSrとが反応して電解質5と空気極6との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。
【0030】
反応防止膜7は、希土類元素を含むセリアを含んだ材料から構成されている。反応防止膜7は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0031】
[空気極]
空気極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極6は、電解質5を介して、燃料極4と反対側に配置されている。空気極6は、空気極活性部61と空気極集電部62とを有している。
【0032】
[空気極活性部]
空気極活性部61は、反応防止膜7上に配置されている。空気極活性部61は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。空気極活性部61は、空気極集電部62よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、空気極活性部61おける、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、空気極集電部62における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0033】
空気極活性部61は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極活性部61は、LSF=(La,Sr)FeO(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極活性部61は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極活性部61の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0034】
[空気極集電部]
空気極集電部62は、空気極活性部61上に配置されている。また、空気極集電部62は、空気極活性部61から、隣の発電素子部に向かって延びている。なお、燃料極集電部41と空気極集電部62とは、発電領域から互いに反対側に延びている。なお、発電領域とは、燃料極活性部42と電解質5と空気極活性部61とが重複する領域である。
【0035】
空気極集電部62は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電部62は、空気極活性部61よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。空気極集電部62は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0036】
空気極集電部62は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電部62は、LSC=(La,Sr)CoO(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電部62は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電部62の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0037】
[インターコネクタ]
インターコネクタ31は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に隣り合う発電素子部10を電気的に接続するように構成されている。詳細には、一方の発電素子部10の空気極集電部62は、他方の発電素子部10に向かって延びている。また、他方の発電素子部10の燃料極集電部41は、一方の発電素子部10に向かって延びている。そして、インターコネクタ31は、一方の発電素子部10の空気極集電部62と、他方の発電素子部10の燃料極集電部41とを電気的に接続している。インターコネクタ31は、燃料極集電部41の第3凹部412内に配置されている。詳細には、インターコネクタ31は、第3凹部412内に埋設されている。
【0038】
インターコネクタ31は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ31は、例えば、LaCrO(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ31は、(Sr,La)TiO(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ31の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0039】
[補強膜]
図6に示すように、補強膜8は、基端側発電素子部10aよりも基端側において、ガス流路21の内壁面を覆っている。なお、基端側発電素子部10aとは、各主面23に支持された複数の発電素子部10のうち、最も基端側(図6の最も左側)に配置された発電素子部10をいう。
【0040】
支持基板20の長手方向(x軸方向)において、補強膜8は、支持基板20の基端面24から、好ましくは基端側発電素子部10aの燃料極活性部42に到達しない程度に延びており、より好ましくは燃料極集電部41に到達しない程度に延びている。すなわち、補強膜8の先端は、支持基板20の長手方向(x軸方向)において、好ましくは基端側発電素子部10aの燃料極活性部42の基端よりも基端側に位置しており、より好ましくは基端側発電素子部10aの燃料極集電部41の基端よりも基端側に位置している。
【0041】
また、特に限定されるものではないが、支持基板20の長手方向(x軸方向)における基端面24からの補強膜8の長さは、5〜50mm程度とすることができる。また、補強膜8の厚さは、10〜200μm程度とすることができる。
【0042】
補強膜8は、ガス流路21を画定する内壁面のみでなく、支持基板20の基端面24、及び支持基板20の一対の主面23を覆っていてもよい。なお、支持基板20の各主面23を覆う補強膜8の先端は、支持基板20の長手方向(x軸方向)において、好ましくは基端側発電素子部10aの燃料極活性部42の基端よりも基端側に位置しており、より好ましくは基端側発電素子部10aの燃料極集電部41の基端よりも基端側に位置している。例えば、ガス流路21を画定する内壁面を覆う補強膜8の先端と、支持基板20の一対の主面23を覆う補強膜8の先端とは、支持基板20の長手方向(x軸方向)において、ほぼ同じ位置にある。なお、支持基板の各主面23を覆う補強膜8の先端部は、電解質5の基端部を覆っていてもよい。
【0043】
補強膜8は、支持基板20よりも緻密である。好ましくは、補強膜8は、緻密質材料から構成されている。例えば、補強膜8の気孔率は、10%以下程度とすることができる。補強膜8は、支持基板20と同じ主成分を有していることが好ましい。補強膜8は、例えば、MgO-MgAl、MgO-Y、又はCaZrO等によって構成され得る。
【0044】
[集電部材]
以上のように構成された燃料電池セル301は、隣り合う燃料電池セル301と、集電部材302によって電気的に接続されている。図2に示すように、集電部材302は、一対の燃料電池セル301間に配置されている。そして、集電部材302は、厚さ方向(z軸方向)において隣り合う燃料電池セル301同士を電気的に接続するよう、導電性を有している。詳細には、集電部材302は、燃料電池セル301の基端側において、隣り合う燃料電池セル301同士を接続している。集電部材302は、基端側発電素子部10aよりも基端側に配置されている。詳細には、図6に示すように、集電部材302は、基端側発電素子部10aから延びる空気極集電部62上に配置されている。
【0045】
集電部材302は、例えば、直方体状又は円柱状などのようなブロック状である。集電部材302は、例えば、酸化物セラミックスの焼成体で構成されている。このような酸化物セラミックスとしては、例えば、ペロブスカイト酸化物、又はスピネル酸化物などが挙げられる。ペロブスカイト酸化物としては、例えば、(La,Sr)MnO、又は(La,Sr)(Co,Fe)O等が挙げられる。スピネル酸化物としては、例えば、(Mn,Co)、又は(Mn,Fe)等が挙げられる。この集電部材302は、例えば、可撓性を有していない。なお、集電部材302は、金属板などによって形成されていてもよい。
【0046】
集電部材302は、第1接合材101によって、各燃料電池セル301に接合されている。すなわち、第1接合材101は、各集電部材302と各燃料電池セル301とを接合している。第1接合材101は、例えば、(Mn,Co)、(La,Sr)MnO又は(La,Sr)(Co,Fe)O等よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0047】
図2に示すように、各燃料電池セル301は、燃料マニホールド200に支持されている。詳細には、各燃料電池セル301は、第2接合材102によって、燃料マニホールド200の天板203に固定されている。より詳細には、図7に示すように、各燃料電池セル301の基端部が、燃料マニホールド200の貫通孔202に挿入されている。燃料電池セル301は、貫通孔202に挿入された状態で、第2接合材102によって燃料マニホールド200に固定されている。
【0048】
第2接合材102は、燃料電池セル301が挿入された状態の貫通孔202内に充填される。すなわち、第2接合材102は、燃料電池セル301の外周面と、貫通孔202を画定する壁面との隙間に充填される。第2接合材102は、例えば、結晶化ガラスである。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO−B系、SiO−CaO系、又はSiO−MgO系が採用され得る。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、第2接合材102の材料として、非晶質ガラス、ろう材、又はセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、第2接合材102は、SiO−MgO−B−Al系及びSiO−MgO−Al−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0049】
燃料マニホールド200から突出している各燃料電池セル301の長手方向(x軸方向)の長さは、100〜300mm程度とすることができる。また、各燃料電池セル301は、燃料電池セル301の厚さ方向(z軸方向)に間隔をあけて並んでいる。この燃料電池セル301同士の間隔は、1〜5mm程度とすることができる。
【0050】
[発電方法]
以上のように構成された燃料電池スタック100は、次のようにして発電する。燃料マニホールド200を介して各燃料電池セル301のガス流路21内に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板20の両面を酸素を含むガス(空気等)に曝す。
【0051】
酸素を含むガスは、例えば、図8に示すように、支持基板20の幅方向(y軸方向)に沿って流れるように、基端側発電素子部10aよりも基端側に供給される。詳細には、燃料電池スタック100は、ガス供給部材400をさらに有している。ガス供給部材400は、各燃料電池セル301の間において、空気などのガスを供給するように構成されている。なお、ガス供給部材400から供給されたガスが効率的に上方へ流れるよう、案内板401がガス供給部材400と反対側に設置されていてもよい。案内板401は、平板状であって、燃料電池セル301の長手方向に延びるとともに、燃料電池セル301の厚さ方向に延びている。
【0052】
以上のように、燃料ガス、及び酸素を含むガスを供給された各発電素子部10において、電解質5の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。この燃料電池スタック100を外部の負荷に接続すると、空気極6において下記(1)式に示す電気化学反応が起こり、燃料極4において下記(2)式に示す電気化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O+2e→O …(1)
+O→HO+2e …(2)
発電状態においては、電流は、図9において矢印で示すように流れる。インターコネクタ31、及び発電素子部10において、電流は厚さ方向に流れる。
【0053】
[製造方法]
次に、上述したように構成された燃料電池セルの製造方法について説明する。図10から図16において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が焼成前であることを示している。
【0054】
まず、図10に示すように、支持基板の成形体20gを作製する。この支持基板の成形体20gは、例えば、支持基板20の材料(例えば、CSZ)の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、押し出し成形、及び切削等の手法を利用して作製され得る。
【0055】
支持基板の成形体20gが作製されると、次に、図11に示すように、支持基板の成形体20gの各主面23に形成された各第1凹部22に、燃料極集電部の成形体41gを充填する。燃料極集電部の成形体41gは、例えば、上述した燃料極集電部41の材料の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、印刷法等によって作製される。
【0056】
次に、図12に示すように、燃料極集電部の成形体41gの各第2凹部411内に、燃料極活性部の成形膜42gを形成する。この成形膜42gは、例えば、上述した燃料極活性部42の材料の粉末にバインダーなどを添加して得られるスラリーを用いて、印刷法などによって形成される。
【0057】
また、各燃料極集電部の成形体41gの各第3凹部412内に、インターコネクタの成形膜31gを形成する。各インターコネクタの成形膜31gは、例えば、上述したインターコネクタ31の材料の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、印刷法等によって形成される。
【0058】
次に、図13に示すように、燃料極活性部の成形膜42g上に、電解質の成形膜5gを形成する。詳細には、電解質の成形膜5gの先端部は、インターコネクタの成形膜31g上に配置されている。また、別の電解質の成形膜5gの基端部も、同じインターコネクタの成形膜31g上に配置されている。これによって、燃料極集電部の成形体41g、及び燃料極活性部の成形膜42gが形成された状態の支持基板の成形体20gの各主面23は、インターコネクタの成形膜31g、及び電解質の成形膜5gによって覆われている。電解質の成形膜5gは、例えば、上述した電解質5の材料の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、印刷法、又はディッピング法等によって形成される。
【0059】
次に、図14に示すように、電解質の成形膜5g上に、反応防止膜の成形膜7gを形成する。各反応防止膜の成形膜7gは、例えば、上述した反応防止膜7の材料の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、印刷法等によって形成される。
【0060】
また、ガス流路21を画定する内壁面を覆うように、補強膜の成形膜8gを形成する。詳細には、ガス流路21の内壁面のうち、基端側発電素子部10aよりも基端側の内壁面を覆うように、補強膜の成形膜8gを形成する。また、支持基板の成形体20gの基端面24及び各主面23を覆うように、補強膜の成形膜8gを形成する。各主面23上において、補強膜の成形膜8gの先端部は、電解質の成形膜5gの基端部上に形成されていてもよい。
【0061】
そして、このように種々の成形膜が形成された状態の支持基板の成形体20gを、空気中にて1200〜1600℃程度で1〜10時間程度焼成する。これにより、空気極6が形成されていない状態の燃料電池セルが得られる。
【0062】
次に、図15に示すように、各反応防止膜7上に、空気極活性部の成形膜61gを形成する。各空気極活性部の成形膜61gは、例えば、上述した空気極活性部61の材料の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、印刷法等によって形成される。
【0063】
次に、図16に示すように、空気極活性部の成形膜61g上に、空気極集電部の成形膜62gを形成する。詳細には、空気極集電部の成形膜62gは、空気極活性部の成形膜61gから隣の発電素子部に向かって延びるように形成される。また、基端側発電素子部10aの空気極集電部の成形膜62gは、空気極活性部の成形膜61gから基端側に向かって延びている。各空気極集電部の成形膜62gは、例えば、上述した空気極集電部62の材料の粉末にバインダー等を添加して得られるスラリーを用いて、印刷法等によって形成される。
【0064】
そして、このように空気極の成形膜61g、62gが形成された状態の支持基板20を、空気中にて900〜1200℃程度で1〜10時間程度焼成する。これによって、燃料電池セル301が完成する。
【0065】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0066】
変形例1
上記実施形態では、支持基板20は平板状であったが、円筒状であってもよい。すなわち、燃料電池セル301は、円筒型であってもよい。
【0067】
変形例2
上記実施形態では、燃料極集電部41が第2凹部411及び第3凹部412を有しているが、燃料極集電部41の構成はこれに限定されない。例えば、燃料極集電部41は第2凹部411及び第3凹部412などの凹部を有していなくてもよい。この場合、燃料極活性部42は、燃料極集電部41上に形成されており、燃料極集電部41に埋設されていない。また、インターコネクタ31は、燃料極集電部41上に形成されており、燃料極集電部41に埋設されていない。
【符号の説明】
【0068】
8 :補強膜
10 :支持基板
10 :発電素子部
10a :基端側発電素子部
20 :支持基板
21 :ガス流路
301 :燃料電池セル
【要約】      (修正有)
【課題】支持基板の基端部にクラックが生じることを抑制する構造を有する燃料電池セルの提供。
【解決手段】支持基板20と、少なくとも1つの発電素子部10(10a)と、補強膜8と、を備えている。支持基板20は、基端側24から先端側に向かって延びるガス流路21を有している燃料電池セル301。支持基板20は多孔質であり、発電素子部10が、支持基板20に支持されており、補強膜8は、基端側発電素子部10aよりも基端側において、ガス流路を画定する内壁面を覆っている。補強膜8は、支持基板20よりも緻密である燃料電池セル301。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16