特許第6257780号(P6257780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6257780不透明な石英ガラス部品を形成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257780
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】不透明な石英ガラス部品を形成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20171227BHJP
   C03B 23/047 20060101ALI20171227BHJP
   C03B 23/053 20060101ALI20171227BHJP
   C03B 23/07 20060101ALI20171227BHJP
   C03B 23/13 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   C03B20/00 E
   C03B20/00 K
   C03B23/047
   C03B23/053
   C03B23/07
   C03B23/13
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-542685(P2016-542685)
(86)(22)【出願日】2013年12月23日
(65)【公表番号】特表2017-501104(P2017-501104A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】US2013077505
(87)【国際公開番号】WO2015099659
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】516139182
【氏名又は名称】ヘレーウス クオーツ アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quartz America LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ジェイ. ダンロン
(72)【発明者】
【氏名】アーノ ピッツェン
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−267724(JP,A)
【文献】 特開2001−354438(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/069194(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00
C03B 23/047
C03B 23/053
C03B 23/07
C03B 23/13
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明な石英ガラス部品の形成方法であって、
(a)石英ガラスで作られた出発プリフォームを用意すること、ここで前記出発プリフォームは、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、肉厚3mmにおいて0.1〜1%であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%であり、密度が少なくとも2.15g/cmであり、前記出発プリフォームの孔の少なくとも80%が最大孔寸法が1〜20μmである、
(b)前記出発プリフォームの少なくとも一部を、前記石英ガラスの粘度が10×1010×1012ポアズの範囲であり、密度が少なくとも2.10g/cmである所定の温度に加熱すること、ここで前記加熱されたプリフォームの孔の少なくとも80%が最大孔寸法が1〜45μmである、
(c)前記加熱されたプリフォームの少なくとも一部を前記所定の温度で変形させて、前記加熱されたプリフォームの形状および寸法の少なくとも一方を変更して、前記不透明な石英ガラス部品を形成すること、ここで前記不透明な石英ガラス部品は、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、肉厚3mmにおいて0.2〜3%であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%である、を含む方法。
【請求項2】
前記出発プリフォームは、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、肉厚3mmにおいて0.1〜0.5%であり、前記不透明な石英ガラス部品は、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、肉厚3mmにおいて0.2〜1.5%であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱されたプリフォームは、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、肉厚3mmにおいて0.2〜3%であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記出発プリフォームは多孔度が最大で2.5%であり、前記加熱されたプリフォームは多孔度が最大で5%である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記石英ガラスは、化学的純度が少なくとも99.9%であり、クリストバライト含有量が1%を超えない請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記所定の温度は1100℃〜2300℃の範囲の温度である請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記出発プリフォームの前記孔の少なくとも80%が最大孔寸法が15〜20μmである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱されたプリフォームの前記孔の少なくとも80%が最大孔寸法が25〜45μmである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱されたプリフォームを変形させることは、吹き込み、引っ張り、スランピング、およびサイズ変更からなる群から選択される1又は複数のプロセスによって行なわれる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記出発プリフォームの少なくとも一部を機械加工し、その後それを加熱することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記不透明な石英ガラス部品は、管、管の部分、リング、およびドームのうちの1つである請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(i)第1のダミー管を前記出発プリフォームの第1の端部に、第2のダミー管を前記出発プリフォームの第2の端部に取り付けることと、
(ii)前記出発プリフォームの少なくとも前記一部を加熱しながら前記出発プリフォームをその長手軸の周りに回転させること、
(iii)内部過圧および内部遠心力の少なくとも一方を前記出発プリフォームに印加し、それを同時に回転させること、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(i)透明ガラス管を前記出発プリフォームの第1の端部に、接合継ぎ目において取り付けることと、
(ii)前記出発プリフォームをサイズ変更して不透明な石英ガラス管を形成することを、前記不透明な石英ガラス管と前記透明ガラス管との間の前記接合継ぎ目において実質的にわずかな不均一性も無いように行なうことと、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、不透明な石英ガラス又はシリカ・ガラス部品を形成する方法に関し、より詳細には、溶融石英又は溶融シリカ・ガラスを所望の形状および寸法の不透明な加工部品に形成および成形する方法に関する。
【0002】
石英ガラス加工部品(例えば管、ロッド、パネル、ドーム、プレート、リング、およびブロック)は、半製品又は製品のいずれかとして熱工学応用において重要な部品であり、良好な断熱とともに高温安定性および熱疲労抵抗が不可欠である。特に半導体産業の応用例では、不透明な石英ガラス管および他の部品を用いることに対する要求が増え続けている。これらの応用例では、石英ガラス部品は、主に波長スペクトルの赤外領域で不透明であること、また可能な限り純粋であることが求められている。しかしこれらの要求を満たすことは難しい可能性がある。なぜならば、不透明度と純度は競合する性質となる傾向があるからである。より詳細には、石英ガラス中に存在する不純物が実際にはガラスの不透明度に寄与するため、不透明な石英ガラスは典型的に純度が低い。
【0003】
不純な不透明な石英ガラスは一般的に、前述したような応用例(すなわち、半導体産業)で用いることには適していない。なぜならば、ガラスに含まれる不純物の著しい悪影響があるからである。具体的には、混入物がわずかでも存在すると半導体ウェハの汚染、石英ガラスの失透が生じる可能性があり、その結果、それらから形成される石英ガラス部品が脆くなり熱疲労抵抗が低下することになる。また、不純な不透明な石英ガラスから作製される石英ガラス部品は、比較的大きなサイズの孔が不均一に分布する傾向がある。これは、不透明度への寄与はほとんどなく、不透明な石英ガラスの密度が減少し、石英ガラス部品の機械的安定性および耐用年数が下がる。
【0004】
そのため、比較的に純粋で不透明な石英ガラス部品を純粋な出発原料を用いて形成するためのプロセスが開発されている。高純度石英ガラスの実施例は以下の文献に見出すことができる。US特許第5,585,173号、第5,674,792号、および第5,736,206号。このようなプロセスは典型的に、不透明で純粋な石英ガラスのプリフォーム又は半加工品から始まる。このようなプリフォームは典型的に、石英ガラスの大きなブロックの形状である。しかし、ガラス・プリフォームに加熱を施すことを例えば熱改質プロセスにおいて行なったところ、出発不透明ガラスが澄むか透明になり、その不透明度を失うことが判明した。このような熱改質プロセスは種々の先行技術文献に記載されている。例えば日本国出願第04026522号および第4485826号、日本国出願公開第2004−149325号および第2005−145740号、US特許第7,832,234号、およびUS出願公開第2010/0107694号である。しかし、これらの参考文献のうちどれも、不透明で純粋な石英ガラスの熱改質については向けられていない。US特許第2002/0134108号には、不透明な石英ガラスに対する熱改質プロセスが記載されているが、ガラスは合成石英ガラスである。
【0005】
出発の不透明で純粋な石英ガラスの不透明度の損失(熱改質を受けたとき)は、薄肉の不透明部品(例えば、石英ガラス管又は管部分)を形成する場合に特に問題がある。なぜならば、ブロック状の石英ガラス・プリフォームを、所望の管状形状および低肉厚を実現するために著しい熱改質にかけなければならないからである。それに応じて、このような熱改質プロセスは一般的に、出発プリフォームが純粋で不透明な石英ガラスで作られているときには回避されている。
【0006】
その代わりに、不透明な石英ガラス部品(例えば管および管部分)の形成は従来、不透明で純粋な石英ガラスのプリフォームから出発した後、ガラス・プリフォームを所望の形状に機械加工して不透明な石英ガラス部品を形成することによって行なわれている。このような機械加工プロセスには、例えば、ガラス・プリフォームの研削、研磨、機械加工、コア穿孔、超音波ミリング、レーザー切断などが含まれ、所望の形状および寸法が実現されるまで行なわれる。しかし、作ろうとする石英ガラス部品に応じて、純粋な出発プリフォームの石英ガラスの大部分は、機械的処理の結果、利用されない場合がある。例えば、リング又は短管を、例えば半導体加工管用に作るとき、典型的に出発プリフォームの石英ガラスの約15%のみが、不透明な石英ガラス部品(すなわち、リング)において実際に用いられるのである。高価な不透明で純粋な石英ガラスの残りの85%は単純に無駄である。このように、純粋で不透明な石英ガラス部品を形成するための従来の機械加工プロセスは費用がかかり、一般的に非効率である。
【0007】
それに応じて、高純度で高不透明度の石英ガラスで作られる部品を費用対効果の高い方法で形成するための方法およびシステムを提供することが望ましいであろう。
【0008】
より詳細には、不透明で純粋な溶融石英ガラスを、半導体産業で用いる部品(例えば、ドーム、管、管状部分、プレート、ロッド、パネル、およびリング)に形成するための単純化された効率的で費用対効果の高いシステムおよび方法を提供することは有益であろう。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一実施形態は不透明な石英ガラス部品を形成する方法に関する。本方法には、(a)石英ガラスで作られた出発プリフォームを用意することであって、出発プリフォームは、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nmにおいて約0.1〜1%であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nm、肉厚3mmにおいて少なくとも60%であり、密度が少なくとも2.15g/cmであり、出発プリフォームの孔の少なくとも80%が最大孔寸法が1〜20μmである、を用意することと、(b)出発プリフォームの少なくとも一部を加熱して、石英ガラスの粘度が10E2〜10E12ポアズの範囲であり密度が少なくとも2.10g/cmである所定の温度にすることであって、加熱されたプリフォームの孔の少なくとも80%が最大孔寸法が1〜45μmである、を加熱することと、(c)加熱されたプリフォームの少なくとも一部を所定の温度で変形させて、加熱されたプリフォームの形状および寸法の少なくとも一方を変更して、不透明な石英ガラス部品を形成することと、が含まれる。不透明な石英ガラス部品は、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、肉厚3mmにおいて約0.2〜3%であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%である。
【0010】
前述の概要、並びに以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明は、添付の図面とともに読むことでより良好に理解される。説明を目的として、図面に現時点で好ましい実施形態を示す。しかし当然のことながら、システムおよび方法は、図示した正確な配置および手段に限定されない。
【0011】
図面において。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の実施形態による円柱形の固体の出発プリフォームの斜視図である。
図1B図2Aに示す円柱形の固体の出発プリフォームの斜視図であって、貫通する穿孔を形成した後の図である。
図2】本発明の実施形態による管状で中空の出発プリフォームの斜視図である。
図3】本発明の実施形態による図1Aに示す円柱形の固体プリフォーム又は図2に示す管状の出発プリフォームのいずれかから製造される短管の斜視図である。
図4】本発明の実施形態による円板状のプリフォームの側面斜視図である。
図5】本発明の実施形態による図4に示す円板状の出発プリフォームから製造されるドームの側面図である。
図6図5に示すドームによって保護された半導体加工チャンバ内に収容されたウェハと、従来の透明な石英ガラス・ドームによって保護された半導体加工チャンバ内に収容されたウェハとの温度回復のグラフ比較を示す図である。
図7】本発明の実施形態による不透明な石英ガラス部品の直接分光透過率のグラフ表示である。
図8A】本発明の実施形態による透明ガラス管に取り付けられた図2に示す管状の出発プリフォームの初期状態の側面図である。
図8B図8Aに示す組立品の側面図であって、管状の出発プリフォームをサイズ変更して本発明の実施形態による短い不透明管を形成した後の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、高純度で不透明な溶融石英ガラスを形成するための方法に関し、より詳細には、所望の形状の高純度で不透明な溶融石英ガラス部品を形成するための方法に関する。当業者であれば分かるように、本明細書で説明する部品は単に典型的であり、後述する方法を用いて、種々のタイプの目的および応用例に対して用いても良い種々のタイプの部品を形成しても良い。より詳細には、本発明は、不透明な石英ガラスからなる種々のタイプの部品であって、純粋な出発原料から製造され、高断熱および高温均一性を必要とする応用例で用いることに特に適している部品の製造に関する。
【0014】
当然のことながら、本出願の文脈において、用語「約」又は「ほぼ」は、説明又は主張された値の±5%の変動、より好ましくは説明又は主張された値の±2%の変動、最も好ましくは説明又は主張された正確な値を意味している。
【0015】
次の用語を用いてシリカ濃度の異なる組成物又は部品を示す場合があるが、本明細書で用いる場合、用語「石英ガラス」を、「シリカ・ガラス」、「溶融石英ガラス」、又は「溶融シリカ・ガラス」と交換可能に用いる場合がある。
【0016】
本発明のプロセスの第1のステップは、石英ガラスの不透明な出発プリフォーム、半加工品、又は本体を用意することである。好ましくは、不透明な出発プリフォームを形成するために用いる材料は、非常に純粋な非晶質二酸化ケイ素であり、化学的純度が約95〜99.9999%、より好ましくは約99.9999%であり、ケイ砂又は水晶から製造される。好ましくは、出発プリフォームの石英ガラスは天然シリカから作られている。当然のことながら、出発原料の石英ガラスには、石英ガラスの微細構造が影響を受けない限り、1又は複数のドーパントが含まれていても良い。当業者であれば分かるように、前述の基準を満たす任意の出発原料を出発プリフォームを形成するために用いても良い。しかし最も好ましくは、出発原料は、以下の文献に記載される出発原料である。モリッツ(Moritz)らのUS特許第5,674,792号(「モリッツ」)および/又はイングリッシュ(Englisch)らのUS特許第5,736,206号(「イングリッシュ」)。これらの文献の全体の開示は、本明細書において参照により取り入れられている。
【0017】
不透明な出発プリフォームは好ましくは、スリップ・キャスティング法によって製造する。しかし当業者であれば分かるように、出発プリフォームの形成を、ガラス・プリフォームを形成するための従来知られている任意の技術(例えば、粉末プレス、テープ・キャスティング、ロール圧密成形、静水圧粉末プレス、ゾル・ゲルなど)によって行なっても良い。最も好ましくは、出発プリフォームを、モリッツおよびイングリッシュに開示されたスリップ・キャスティング法によって出発原料から形成する。出発プリフォームを形成するためのプロセスの簡単な説明は、モリッツおよびイングリッシュに開示されているように、以下の通りである。
【0018】
出発原料(すなわち、ケイ砂又は水晶から製造される化学的純度が99.9%の非晶質二酸化ケイ素)を粉砕して、粒径が70μm未満の粉末にする。次に粉末からスリップを形成し、1〜240時間の間安定化させることを連続運動に保つことによって行なう。安定化させたスリップを、プリフォームに対応する多孔質成形型内に投じて、ある程度の時間そこに留まらせる。次にプリフォーム半加工品を成形型から取り出して、乾燥させ、炉内で加熱することを加熱速度が1〜60K/分で、約1,350℃〜1,450℃の範囲の焼結温度まで行なう。焼結させたプリフォームを次に、約1,300℃を超える温度にさらすことを少なくとも40分間行なって、冷却する。
【0019】
好ましくは、出発原料から形成される出発プリフォームは、石英ガラス体であって、高純度で、不透明で、多孔質で、気体不透過であり、クリストバライト含有量が1%を超えない石英ガラス体である。当業者であれば分かるように、材料の不透明度は材料の直接分光透過率に直接関係する。直接分光透過率は、材料を透過する光の量の目安である。非常に不透明な材料は大抵、光を遮断し、反射し、又は吸収して、少量の光のみを透過させるため、直接分光透過率が比較的低い。より詳細には、出発プリフォームは好ましくは、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、3mm肉厚において、ほぼ一定で、約5%未満、より好ましくは約3%未満、最も好ましくは約2%未満である。一実施形態では、出発プリフォームは好ましくは、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、3mm肉厚において、ほぼ一定で、約0.1〜1%である。別の実施形態では、出発プリフォームは好ましくは、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、3mm肉厚において、ほぼ一定で、約0.1〜0.5%である。より詳細には、出発プリフォームは好ましくは、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nm、3mm肉厚において、ほぼ一定で、約50%を超え、より好ましく約55%を超え、最も好ましくは約60%を超えている。
【0020】
出発プリフォームの化学的純度は好ましくは、少なくとも95%であり、より好ましくは約99〜99.9%の範囲であり、最も好ましくは約99.5〜99.9999%の範囲である。また出発プリフォームは好ましくは、密度が約2.12〜2.19g/cm、より好ましくは約2.13〜2.17g/cmである。一実施形態では、出発プリフォームは好ましくは、密度が少なくとも2.15g/cm、より好ましくは約2.17〜2.18g/cmである。
【0021】
出発プリフォームの孔の少なくとも80%が、最大孔寸法が約20μm以下である。好ましくは、出発プリフォームの孔の少なくとも80%が、最大孔寸法が約5〜20μm、より好ましくは約10〜20μm、最も好ましくは約15〜20μmである。出発プリフォームの孔含有量(すなわち、多孔度)は、最大で約5%/単位体積、好ましくは約0.1〜4.5%/単位体積、より好ましくは約0.2〜4%/単位体積である。より具体的には、出発プリフォームの多孔度は、好ましくは最大で2.5%、最も好ましくは約1〜2.5%/単位体積の範囲である。
【0022】
最も好ましくは、出発プリフォームは、モリッツおよびイングリッシュに開示されたモールド又は成形された本体のすべての特性および特徴を有している。
【0023】
出発プリフォームを任意の所望形状に製造することを、前述しまたモリッツおよびイングリッシュで述べたスリップ・キャスティング・プロセスによって行なうことができる。例えば、出発プリフォームの形状は、立方、管状、矩形、楕円形、円柱形、円錐形、球状、円錐台形などであっても良い。さらに、出発プリフォームは、中空、部分的に中空、又は全体に渡って完全に固体であっても良い。好ましくは、出発プリフォームを形成する形状は、出発プリフォームから製造すべき不透明な石英ガラス部品の形状に概ね適合又は補完して、材料および人件費および形成時間が低減されるようなものである。
【0024】
例えば、不透明な石英ガラス部品が反応器用のドームである場合、出発プリフォームは好ましくは、略平坦な円板の形状であり、ブロックではない。なぜならば、ドーム形状の部品を形成する場合には、円板が必要とするであろう改質および再形成はブロックの場合よりも少ないからである。また当業者であれば分かるように、出発プリフォームの寸法は、出発プリフォームから作製すべき不透明な石英ガラス部品の寸法に基づいて変えても良い。したがって、当然のことながら、好ましい実施形態について以下で詳細に説明するものの、本発明は本明細書で説明する特定の形状、サイズ、構成、および寸法に決して限定されない。
【0025】
次に、不透明な出発プリフォームを任意的に、機械加工プロセス(例えば、研削、機械加工、コア穿孔、超音波ミリング、レーザー切断、インゴットを再形成することからなる固体の熱間成形など)にかけて、出発プリフォームをサイズ変更し、出発プリフォームから作製すべき不透明な石英ガラス部品の寸法に、より良好に対応させても良い。このような任意的なステップを好ましくは、必要又は希望する場合にのみ行なって、不透明な出発プリフォームをサイズ変更し、出発プリフォームから作製すべき不透明部品の寸法に、より良好に対応させる。
【0026】
好ましくは、すべての出発プリフォームの表面は概ね滑らかで外来粒子が無い。知られている機械的および/又は化学的な仕上げプロセス(例えば、研磨および研削)を任意的に用いて、出発プリフォームの表面が好ましい平滑度を有してわずかな外来粒子も不純物もないことを確実にしても良い。
【0027】
次に、不透明な出発プリフォームを改質するか又はサイズ変更して不透明な石英ガラス部品を形成する。より詳細には、出発プリフォームの少なくとも一部又はゾーンを加熱して、純粋で不透明な出発プリフォームの石英ガラスが軟化し始める所定の温度にする。より好ましくは、出発プリフォーム全体を(任意的にゾーン様の方法で)加熱して、純粋で不透明な石英ガラスが軟化し始める所定の温度にする。好ましくは、出発プリフォームを加熱して、約1100〜2300℃、より好ましくは約1200〜2200℃、最も好ましくは約1250〜2150℃の温度にする。このような温度において、不透明な石英ガラスは、好ましくは粘度が約10E12〜10E2ポアズ、より好ましくは約10E10〜10E5ポアズ、最も好ましくは約10E6ポアズであり、この石英ガラスを扱って、出発プリフォームをサイズ変更又は再形成して所定および所望の形状および寸法の不透明な石英ガラス部品にしても良い。
【0028】
また、このような温度において、加熱および軟化した出発プリフォームは、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、3mm肉厚において、実質的に一定で約5%未満、より好ましくは約3%未満、最も好ましくは約2%未満であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%である。より詳細には、加熱および軟化した出発プリフォームは好ましくは、波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、3mm肉厚において、直接分光透過率がほぼ一定で約0.2〜3%、より好ましくは約0.2〜1.5%であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%である。加熱および軟化した出発プリフォームの化学的純度は好ましくは、出発プリフォームのそれから実質的に変わっていない(すなわち、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは約99.0〜99.9%の範囲、最も好ましくは約99.5〜99.9999%の範囲である)。しかし、加熱および軟化した出発プリフォームの密度、多孔度、および孔寸法は好ましくは、出発プリフォームのそれらから少なくともわずかに変化している。
【0029】
より具体的には、加熱および軟化した出発プリフォームは好ましくは、密度が約2.08〜2.19g/cm、より好ましくは約2.10〜2.18g/cmである。一実施形態では、加熱および軟化した出発プリフォームは好ましくは、密度が少なくとも約2.10g/cm、より好ましくは約2.14〜2.15g/cmである。また、加熱および軟化した出発プリフォームの孔の少なくとも80%が、最大孔寸法が約60μm以下である。好ましくは、加熱および軟化した出発プリフォームの孔の少なくとも80%が、最大孔寸法が約10〜45μm、より好ましくは約20〜45μm、最も好ましくは約25〜45μmである。こうして、加熱および軟化した出発プリフォームでは、孔が出発プリフォームから膨張している。加熱および軟化した出発プリフォーム10の孔含有量(多孔度)は、最大で約5%/単位体積、好ましくは約0.1〜5%/単位体積、より好ましくは約0.2〜4.5%/単位体積である。より具体的には、加熱および軟化した出発プリフォームの多孔度は好ましくは、最大で4.7%、最も好ましくは約2〜4.5%/単位体積の範囲である。
【0030】
出発プリフォームを加熱している間に、出発プリフォームの少なくとも一部又はゾーンを好ましくは変形もさせて、出発プリフォーム10の1又は複数の寸法および/又は形状を変更する。より詳細には、出発プリフォームを加熱している間に、出発プリフォームにサイズ変更又は改質プロセスも施して、出発プリフォームのサイズおよび/又は形状を変更して所望の不透明な石英ガラス部品を作製する。
【0031】
任意の知られている熱再形成、改質、又はサイズ変更プロセスを用いて出発プリフォーム10を処理して、不透明な石英ガラス部品にしても良い。例えば、出発プリフォーム10に以下のプロセスのうちの1又は複数を施しても良い。引っ張り、吹き込み、スランピング、プレス、リーマ仕上げ、再流し込みなど。特に好ましい熱再形成方法が、ウェルデッカー(Werdecker)らのUS特許出願第2002/0134108号(「ウェルデッカー」)に開示されている。なおこの文献の開示内容全体は本明細書において参照により取り入れられている。
【0032】
さらに、種々の技術およびメカニズム用いて、出発プリフォームを再形成、改質、又はサイズ変更して不透明な石英ガラス部品にすることを容易にしても良い。例えば、1又は複数の挿入装置、1又は複数の圧縮装置、圧縮圧力、および1又は複数の伸展装置を用いて、出発プリフォームを膨張、収縮、サイズ変更および/又は再形成して、所望の寸法および形状の不透明な石英ガラス部品にしても良い。
【0033】
出発プリフォームの改質、再形成、および/又はサイズ変更プロセス用に用いる部品はそれぞれ、好ましくはグラファイト、石英ガラス、炭化ケイ素、又は他の耐熱性セラミックもしくは耐熱性金属材料で形成されている。より好ましくは、部品はそれぞれ、全体にグラファイトで、最も好ましくは純粋なグラファイトで作られている。なぜならば、石英ガラスはグラファイトと反応することもグラファイトに付着することもないからである。しかし、当業者であれば分かるように、あらゆる加工部品を全体にグラファイトから作る必要はない。その代わりに、一部の加工部品を全体にグラファイトで形成し、一方で、他方を石英ガラス、炭化ケイ素、又は他の耐熱性セラミックもしくは耐熱性金属材料で形成して、グラファイト又は非付着性で非反応性のコーティングを、出発プリフォームの石英ガラスに実際に接触する表面のみに含むようにしても良い。
【0034】
当業者であれば分かるように、出発プリフォームを改質、再形成、および/又はサイズ変更して不透明な石英ガラス部品を形成するのに必要な時間は、いくつかの要因に基づいて変わる。例えば加熱温度、任意の圧縮圧力の存在又は不在、出発プリフォーム10の形状およびサイズ、不透明な石英ガラス部品の形状およびサイズなどである。
【0035】
出発プリフォームを再形成、改質、および/又はサイズ変更して不透明な石英ガラス部品にする間、出発プリフォームの石英ガラスは不透明なままである。より詳細には、出発プリフォームの再形成、改質、および/又はサイズ変更の間に、石英ガラスが波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、3mm肉厚において受けるのは、好ましくはその光学特性の10%未満の変化、より好ましくは不透明度の5%未満の変化、最も好ましくは不透明度の3%未満の変化である。
【0036】
出発プリフォームの石英ガラスを改質し、サイズ変更し、および/又は再形成して所望の不透明な石英ガラス部品にした後に、不透明な石英ガラス部品に所定の継続時間の冷却期間を施して、特に溶融石英ガラスの失透を防止する。好ましくは、不透明な石英ガラス部品を放冷して室温にする。これは典型的に、約1〜30分間、より好ましくは約20分間かかる。当業者であれば分かるように、当該技術分野で知られているか又は開発される他の冷却技術を用いて、特に冷却プロセスを速めても良い。
【0037】
本発明による不透明な石英ガラス部品は不透明で高純度である。より詳細には、不透明な石英ガラス部品の石英ガラスが、波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、3mm肉厚において受けるのは、好ましくはその光学特性の10%未満の変化、より好ましくは不透明度の5%未満の変化、最も好ましくは不透明度の3%未満の変化である。一実施形態では、不透明な石英ガラス部品は遮光特性の損失が約3%〜5%のみであり、不透明な石英ガラス部品は、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、肉厚3mmにおいて、ほぼ一定で、約5%未満、より好ましくは約3%未満、最も好ましくは約2%未満であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%である。より詳細には、不透明な石英ガラス部品は好ましくは、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、3mm肉厚において、ほぼ一定で、約0.2〜3%、より好ましくは約0.2〜1.5%であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%である。一実施形態では、不透明な石英ガラス部品は、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、肉厚3mmにおいてほぼ一定で約1%であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%である。本発明の一実施形態による不透明な石英ガラス部品の直接分光透過率のグラフ表示を図7に示す。加えて、不透明な石英ガラス部品は熱伝導率が約1.3W/m−K(23℃)である。
【0038】
不透明な石英ガラス部品の化学的純度は好ましくは、出発プリフォームのそれから実質的に変わっていない(すなわち、少なくとも95%、より好ましくは約99〜99.9%の範囲、最も好ましくは約99.5〜99.9999%の範囲である)。また不透明な石英ガラス部品は好ましくは、密度が少なくとも2.10g/cm、好ましくは約2.12〜2.19g/cm、より好ましくは約2.13〜2.18g/cmである。最も好ましくは、不透明な石英ガラス部品は密度が約2.14〜2.15g/cmである。
【0039】
好ましくは、不透明な石英ガラス部品の孔の少なくとも80%が、最大孔寸法が約60μm以下、より好ましくは約10〜45μm、最も好ましくは約25〜45μmである。不透明な石英ガラス部品の孔含有量(多孔度)は、最大で約5%/単位体積、好ましくは約0.1〜5%/単位体積、より好ましくは約0.2〜4.5%/単位体積である。より具体的には、不透明な石英ガラス部品の多孔度は、好ましくは最大で4.7%、最も好ましくは約2〜4.5%/単位体積の範囲である。
【0040】
以後、何の機械プロセス(例えば研削)も用いる必要はない。こうして、不透明な石英ガラス部品の形成を、従来の技術よりも費用対効果が高く時間がかからないプロセスで行なう。詳細には、出発プリフォーム10の石英ガラス材料の好ましくは最大で25%、より好ましくは最大で15%を機械加工によって除去して、不透明な石英ガラス部品を形成する。最も好ましくは、出発プリフォーム10の石英ガラス材料の約0%〜10%のみを機械加工によって除去して、不透明な石英ガラス部品を形成する。しかし当業者であれば分かるように、出発プリフォーム10のサイズ変更が必要ではない(例えば、図1の出発プリフォーム10が不透明な中空管であり、不透明な石英ガラス部品が図4に示すように不透明なスペーサ管である)場合には、出発プリフォームの石英ガラス材料の損失はない。また、すべてのタイプの不透明な石英ガラス部品に対して、カスタマイズされた出発プリフォームを作る必要がない。その代わりに、熱改質又はサイズ変更技術を用いて、任意の寸法を有する任意のタイプの不透明な石英ガラス部品を、単一の出発プリフォームから形成しても良い。
【0041】
本発明による不透明な石英ガラス部品は任意の所望形状および/又は寸法を有していても良い。好ましくは、本発明による不透明な石英ガラス部品は、半導体産業用(例えば、半導体ウェハ加工用)の部品として機能する。例えば、不透明な石英ガラス部品は、半導体ウェハ加工チャンバ用のドーム、管、管状部分もしくは管状体、又はリングであっても良い。本発明のプロセスは、種々の長さ(すなわち、10mm〜5,000mm)の不透明な石英ガラスの薄肉管(すなわち、肉厚が0.5〜15mmの管)および半導体ウェハ加工チャンバ用の不透明な石英ガラス・ドームを作るのに、特に適している。より好ましくは、本発明による不透明な石英ガラス部品を、任意の加工であって、高温均一性および安定性、最小の熱伝導率、高純度、最小の熱および/又は放射損失(すなわち、高断熱)、制御雰囲気、および/又は高い熱疲労抵抗を必要とする任意の加工に対して用いても良い。
【0042】
次に本発明を以下の非限定的な例に関してさらに説明する。
実施例1
【0043】
半導体ウェハ加工チャンバ用の薄肉の短管26(より詳細には、スペーサ管26)(図3に示す)を、高純度の不透明な石英ガラスで形成された出発プリフォーム10(図1A〜1Bに示す)を用いて作った。図1Aを参照して、不透明な出発プリフォーム10は、略円形の断面形状を有する固体円柱である。より詳細には、出発プリフォーム10は第1の端部又は上端部12、第2の端部又は下端部14を有し、第1の端部12と第2の端部14との間を又は第1の端部12から第2の端部14に延びる円柱体24を有している。円柱体24は外面18を有している。出発プリフォーム10は外径OD10が約300mmであった。当業者であれば分かるように、出発プリフォーム10は任意の外径を有していても良い。好ましい実施形態では、出発プリフォームの外径は約100〜300mmである。
【0044】
図1Aに示す出発プリフォーム10を形成した後に、出発プリフォーム10の内部を通して第1の端部12から第2の端部14まで穴又は孔28を穿孔するかそうでなければ形成し(図1Bに示す)、こうしてプリフォーム10として、管状の側壁16を有し、内面20が略円柱形の内部空洞22を囲む略管状のプリフォーム10を形成する。管状の側壁16は厚さT16が約70mmであった。当業者であれば分かるように、出発プリフォーム10の管状の側壁16は任意の厚さを有していても良い。好ましい実施形態では、出発プリフォームの管状の側壁16の厚さT16は約20〜70mmである。
【0045】
出発プリフォーム10の石英ガラス材料は、ケイ砂又は水晶から製造される高純度の非晶質二酸化ケイ素であり、化学的純度が約99.9%であった。より詳細には、出発プリフォーム10を出発原料から製造することを、モリッツおよびイングリッシュに開示されたスリップ・キャスティング法によって行なった。出発プリフォーム10は、クリストバライト含有量が1%を超えず、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nmにおいて略一定で約5%未満であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%であり、化学的純度が少なくとも約95%であり、密度が少なくとも約2.15g/cmであり、多孔度が最大で約2.5%であった。また、不透明な出発プリフォーム10の孔の約80%が最大孔寸法が約1〜20μmであった。
【0046】
出発プリフォーム10を次にサイズ変更して所望の直径および肉厚の短管26にすることを、吹き込みプロセスによって行なった。具体的には、出発プリフォーム10を水平方向に置いて、その長手軸の周りに回転させた後に、供給機構(図示せず)によって炉(図示せず)内に連続的に前進させた。炉内では、出発プリフォーム10の連続ゾーンを加熱して約2000℃の温度にした。その時点で、各加熱ゾーンの石英ガラスの粘度は約10E4ポアズであった。同時に、空気圧を出発プリフォーム10の内部空洞22内に印加して、この内部過圧によって、出発プリフォームの連続的な加熱ゾーン(この時点で非常に粘性がある)に空気を入れるか膨張させた。熱および空気圧を印加することによって、出発プリフォーム10を膨張させて長くて膨張した不透明な石英ガラス管を形成することが容易になった。長くて膨張した不透明な石英ガラス管は長さが約600mmであり、外径が約354mmであり、側壁厚さが約6mmであった。当業者であれば分かるように、長くて膨張した不透明な石英ガラス管の寸法を、最終用途又は応用例の特定の仕様を満足するように必要に応じて変えても良い。例えば、一実施形態では、長くて膨張した不透明な石英ガラス管は、外径が最大で360mm、側壁厚さが2〜100mmであっても良い。
【0047】
最後に、長くて膨張した不透明な石英ガラス管を放冷し、切断して所望の長さの短管26にした。より詳細には、結果として得られる管26はそれぞれ、長さL26が約100mm、外径OD26が約354mm、側壁厚さT26が約6mmであった。しかし当然のことながら、任意の所望の寸法の短管を、長くて膨張した不透明な石英ガラス管から切断しても良い。
【0048】
短管26の形状の不透明な石英ガラス部品は不透明であり、高純度の石英ガラスから作られていた。より詳細には、管26は化学的純度が少なくとも約95%、密度が少なくとも約2.10g/cm、多孔度が最大で約4.5%であった。また、短管26の孔の約80%が最大孔寸法が約45μmであった。また短管26は、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、3mm肉厚においてほぼ一定で約1%であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%であった。
実施例2
【0049】
図3の管26を、図2に示すような高純度の不透明な石英ガラスで作られた出発プリフォーム10’を用いて作った。しかし当然のことながら、スペーサ管26を代替的に、図2A〜2Bの出発プリフォーム10を用いて作っても良い。
【0050】
図2の不透明な出発プリフォーム10’は、図1Bに示す出発プリフォーム10と構造的に同一である。すなわち、図2の不透明な出発プリフォーム10’はすでに管状形状であるため、プリフォーム体を通して穿孔を形成する必要はない。それに応じて、以下では、出発プリフォーム10’のみについて言及するが、当然のことながら、同じプロセスを、出発プリフォーム10のサイズ変更、再形成、および/又は再形成に対して適用しても良い。出発プリフォーム10’を、実施例1のそれと同じプロセスおよび同じ出発原料から作った。
【0051】
出発プリフォーム10’の管状の側壁16’は、厚さT16’が約50mmであった。出発プリフォーム10’の側壁16’の外面18’および内面20’に任意的な研削プロセスを施して、側壁16’をサイズ変更し、同心で一様な内径および外径を形成し、所定の肉厚T16’の約6〜20mmを実現した。当業者であれば分かるように、研削前後の出発プリフォーム10’の厚さは、最終用途又は応用例の特定の仕様を満足するように必要に応じて変えても良い。
【0052】
一実施形態では、出発プリフォーム10’の側壁16’の外面18’および内面20’に研削プロセスを施すことを、外径OD10’として約235mmおよび側壁厚さT16’として約6〜9mmが実現されるまで行なう。別の実施形態では、出発プリフォーム10’の側壁16’の外面18’および内面20’に研削プロセスを施すことを、外径OD10’として約200mmおよび側壁厚さT16’として約10mmが実現されるまで行なう。また当業者であれば分かるように、出発プリフォーム10’は、最終用途又は応用例の特定の仕様に適合するように必要に応じて任意の長さを有していても良い。
【0053】
次に出発プリフォーム10’をサイズ変更して所望の直径および肉厚のスペーサ管26にすることを、吹き込みおよび引っ張りプロセスによって行なった。具体的には、出発プリフォーム10’を水平方向に置いて、ダミー管(図示せず)を出発プリフォーム10’の各端部に取り付けた後に、出発プリフォーム10’をその長手軸の周りに回転させ、同時に、出発プリフォーム10’の連続ゾーンをガス・バーナー(図示せず)によって約2000℃の温度に加熱した。その時点で、各加熱ゾーンの石英ガラスの粘度は約10E4ポアズであった。出発プリフォーム10’の回転速度は約10〜200RPMであった。同時に、空気圧および/又は遠心力を出発プリフォーム10’の内部空洞22’内に印加して、内部過圧および/又は遠心力によって、出発プリフォーム10’の連続的な加熱ゾーン(この時点で非常に粘性がある)に空気を入れるか膨張させて、膨張した不透明な石英ガラス管を形成した。膨張した不透明な石英ガラス管は長さが約600mm、外径が約354mm、側壁厚さが約6mmであった。当業者であれば分かるように、膨張した不透明な石英ガラス管の寸法を、最終用途又は応用例の特定の仕様を満足するように必要に応じて変えても良い。
【0054】
また当然のことながら、出発プリフォーム10’を膨張させて所望の外径および側壁厚さに到達させることを一連の連続的な熱印加で行なって、出発プリフォーム10’が第1の熱印加の後に第1の外径および側壁厚さに達し、そして第2の熱印加の後に第1の外径および側壁厚さよりも大きい第2の外径および側壁厚さに達する等を、所望の外径および側壁厚さが実現されるまで行なっても良い。
【0055】
最後に、膨張した不透明な石英ガラス管を約10分間放冷した(しかし任意の冷却時間を用いても良い)後に、切断して所望の長さの短管26にした。より詳細には、結果として得られる管26はそれぞれ、長さが約100mmであった。しかし当然のことながら、任意の所望の長さの短管を、長くて膨張した不透明な石英ガラス管から切断しても良い。
【0056】
管26の形状の不透明な石英ガラス部品は不透明であり、高純度の石英ガラスから作られていた。より詳細には、管26は化学的純度が少なくとも約95%、密度が少なくとも約2.10g/cm、多孔度が最大で約4.5%であった。また、短管26の孔の約80%が最大孔寸法が約45μmであった。また短管26は、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、3mm肉厚においてほぼ一定で約1%であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%であった。
実施例3
【0057】
半導体ウェハ加工チャンバ用のドーム30(図5に示す)を、出発プリフォーム32(図4に示す)を用いて作った。出発プリフォーム32は高純度の不透明な石英ガラスで作られていた。出発原料と、出発プリフォーム32を作るためのプロセスとは、実施例1〜2の出発プリフォーム10、10’のそれと同一であった。しかし出発プリフォーム32は、略円形の断面形状を有する略平坦な円板の形状である。出発円板32は直径が約480mmで、肉厚が約6mmであった。
【0058】
出発プリフォーム32をドーム30に再形成することをスランピング・プロセスによって行なった。具体的には、出発プリフォーム32を凹状成形型(図示せず)の最上部に配置した。次に、組み立てた出発プリフォーム32および成形型を炉(図示せず)内に置いて、約1300℃の温度まで加熱した。その時点で、出発プリフォーム32の石英ガラスの粘度は約10E10ポアズであった。重力および真空によって、加熱および軟化した出発プリフォーム32を次に成形型内に自然にスランプさせて、ドーム30の形状を形成した。ドーム30を次に約10時間、放冷したが、より短い冷却時間を用いても良い。最後に、ドーム30を管体(図示せず)(好ましくは、不透明な管体)上につなぎ合わせて、火炎研磨した。
【0059】
ドーム30の形状の不透明な石英ガラス部品は不透明であり、高純度の石英ガラスから作られていた。より詳細には、ドーム30は化学的純度が少なくとも約95%、密度が少なくとも約2.10g/cm、多孔度が最大で約4.5%であった。また、ドーム30の孔の約80%が最大孔寸法が約45μmであった。またドーム30は、直接分光透過率が波長範囲λ=190nm〜λ=4990nm、3mm肉厚においてほぼ一定で約1%であり、拡散反射率が波長範囲λ=190nm〜λ=2500nmにおいて少なくとも60%であった。またドーム30は直径が約460mmで、曲率半径が約440mmで、肉厚が約6mmであった。
【0060】
次に不透明な石英ガラス・ドーム30の性能を測定して従来の透明な石英ガラス・ドームと比較することを、模擬ウェハ交換動作を通じて行なった。これを図6に示す。具体的には、図6に例示するのは、ウェハ交換動作用に炉ドアを開閉した後の半導体炉内でのウェハの温度回復である。ウェハが炉内に適切に配置されると、ウェハの中間領域は本質的にドーム30によって完全に覆われ、一方でウェハの縁部領域がドーム30からうける影響はそれほどない。図6に示すように、不透明なドーム30によって覆われたウェハの中間領域の方が、相対的に高い加熱又は熱回復速度である約14℃/分を示した。対照的に、従来のドームによって覆われたウェハの中間領域の方が、相対的に低い加熱又は熱回復速度である約6℃/分を示した。新しいウェハの縁部領域での熱回復速度についてはそれほどはっきりとした違いはない。なぜならば、これらの領域は、対応するドームからそれほど影響を受けないからである。しかし、不透明なドーム30によって覆われたウェハの縁部領域の熱回復速度15℃/分は、従来のドームによって覆われたウェハの縁部領域の熱回復速度12℃/分よりもわずかに高い。
【0061】
こうして、図6に明らかに示すように、実施例3の不透明な石英ガラス・ドーム30による周囲環境からの熱の保持は、従来のドームよりも良好である。具体的には、本発明による不透明な石英ガラス・ドーム30は、このように、ウェハを交換するときに、透明な石英ガラス・ドームよりも温度均一性が良好で温度回復が速い。より詳細には、不透明な石英ガラス・ドーム30によって保護された半導体加工チャンバが被る熱損失は、従来の透明な石英ガラス・ドームを備えるものよりも小さかった。こうして、不透明な石英ガラス・ドームによって保護された半導体加工チャンバから半導体ウェハを取り出してそこに再挿入する間に、半導体ウェハが温度(すなわち、熱)を回復する速度は、透明な石英ガラス・ドーム30によって保護された半導体加工チャンバから半導体ウェハを取り出してそこに再挿入した場合と比べて著しく速かった。
【0062】
当業者であれば分かるように、本発明による不透明な石英ガラス部品の比較を、本明細書では不透明な石英ガラス・ドームに対してのみ説明したが、本発明による不透明な石英ガラス管、管状部分、又はリングを透明な石英ガラス管、管状部分、又はリングと比べたときに、同じ効果が生じるであろう。
実施例4
【0063】
出発プリフォーム10’(実施例2に説明した)を調製した。次に出発プリフォーム10’を透明ガラス管34に、接合継ぎ目36において接合した。これを図8Aに示す。次に、透明ガラス管34に接合する間に、出発プリフォーム10’をサイズ変更して所望の直径のスペーサ管26にすることを吹き込みプロセスによって行なって、半導体チャンバの全部又は一部を形成した。具体的には、出発プリフォーム10’を水平方向に置いて、透明ガラス管34を出発プリフォーム10’の両端に取り付けた。当然のことながら、1本の透明ガラス管34のみを出発プリフォーム10’の一方の端部のみに取り付けても良い。最初は、接合継ぎ目36において、出発プリフォーム10’と透明ガラス管34との間に肉厚および直径の不均一性又は変動はなかった。
【0064】
出発プリフォーム10’を次に、その長手軸の周りに回転させながら、出発プリフォーム10’の連続ゾーンを加熱および膨張させて、所望の直径の膨張した不透明な石英ガラス・スペーサ管26を形成した。各ゾーンの加熱は複数回行なっても良い。当然のことながら、実施例2で用いた同じプロセスを、出発プリフォーム10’を膨張させるために用いても良い。連続的な複数の加熱ステップの間に、出発プリフォーム10’がサイズ変更されているために、接合継ぎ目36における厚さおよび/又は直径の不均一性又は変動が徐々に小さくなっていた。図8Bに示すように、サイズ変更プロセスが終了した後に、結果として得られる不透明な石英ガラス・スペーサ管26と透明ガラス管34との間の接合継ぎ目36における厚さおよび/又は直径の不均一性又は変動は、実質的に低減されているか又は取り除かれていた。これは、従来の半導体チャンバの接合継ぎ目(不透明なスペーサ管を最初に形成して透明ガラス管に圧接する)に存在する不均一性に対する顕著な改善であることが判明した。
【0065】
当業者であれば分かるように、前述した実施形態に変更を施すことを、その概略的な本発明の考え方から逸脱することなく行なうことができる。したがって、本発明は開示した特定の実施形態には限定されず、添付の請求項によって規定される本発明の趣旨および範囲内の変更に及ぶことが意図されていることが理解される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B