特許第6257905号(P6257905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257905
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】無段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/36 20060101AFI20171227BHJP
   F16H 9/18 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   F16H55/36 H
   F16H9/18 B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-60414(P2013-60414)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-185681(P2014-185681A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中澤 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】服部 治博
(72)【発明者】
【氏名】山根 伸志
(72)【発明者】
【氏名】森 敬祐
【審査官】 佐々木 訓
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−007762(JP,U)
【文献】 特開2008−223938(JP,A)
【文献】 特開昭63−115966(JP,A)
【文献】 特開平11−315899(JP,A)
【文献】 特開2000−337480(JP,A)
【文献】 特開平11−30299(JP,A)
【文献】 特開2009−150496(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第4342736(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/32 − 55/56
F16H 9/00 − 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
V溝を形成する対向する円錐面を各々有する対をなすシーブをそれぞれ含む2個のプーリ間に、無端可撓部材を巻き渡し、対をなすシーブ間の距離を変更してプーリ間の伝達速度比を変更する無段変速機であって
少なくとも1つのシーブの、当該シーブの軸に隣接する部分に固定され、固定された位置より径方向外側の当該シーブの背面に対向する部分は当該シーブから間隔を空けて位置し、径方向の更に外側の部分は当該シーブの径方向外側を向いた最外周面に圧接する制振構造体を有する無段変速機。
【請求項2】
請求項1に記載の無段変速機であって、制振構造体は、シーブを取り囲むように位置する複数の箇所または全周で、シーブに接している、無段変速機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無段変速機であって、シーブの、制振構造体が圧接する最外周面はテーパ形状である、無段変速機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の無段変速機であって、制振構造体は、シーブの最外周面に対向して位置する円環形状の部分を有し、この円環形状の部分の少なくとも一部がシーブの最外周面に圧接する、無段変速機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の無段変速機であって、対をなすシーブは、軸に対し一方が固定され他方が移動可能であり、制振構造体は軸に対して固定されたシーブの円板部分の中央径より内側にて当該シーブに固定される、無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝幅を変更可能なV溝を有する2個のプーリに、無端可撓部材を巻き渡した無段変速機に関し、特にその構造に関する。
【背景技術】
【0002】
溝幅を変更可能なV溝を有する2個のプーリに、ベルト、チェーン等の無端可撓部材を巻き渡した無段変速機が知られている。それぞれのプーリは、円錐面が形成された対をなすシーブを含み、各々のシーブの円錐面が対向してV溝を形成している。このV溝に嵌まるようにして無端可撓部材が2個のプーリに掛け渡されている。一方のプーリの回転が無端可撓部材を介して他方のプーリに伝達される。
【0003】
対をなすシーブを相対的に移動させて、これらの間の距離を変更することで、V溝の溝幅が変更される。溝幅の変更によって無端可撓部材のプーリに対する巻き掛かり半径が変更され、2個のプーリ間の速度比を変更することができる。対をなすシーブの相対距離について連続的な値が採れるようにすることで、2個のプーリ間の速度比を連続的に変更すること、つまり無段階で変更することができる。
【0004】
下記特許文献1には、無端可撓部材(Vベルト(3))を用いた無段変速機のプーリ構造が記載されている。このプーリ構造においては、シーブ(プーリ半体(4))の振動を抑制するために、シーブの円錐面と反対側の面に振動抑制部材(7)または(18)を設けている(第2頁左下欄第15行〜同頁右上欄第1行、第4頁右上欄第9〜13行参照)。シーブと振動抑制部材の間に働く摩擦作用によりシーブの振動が抑制される(第3頁右下欄第13〜16行、第4頁第10〜16行参照)。なお、上記の括弧付きの符号は、下記特許文献1にて用いられた符号であり、本願の発明の実施形態の説明で用いられる符号とは関連しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−115966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シーブが振動するとき、上記特許文献1において摩擦力が作用する位置における振幅が大きくない場合があり、十分な制振効果を得ることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、無段変速機のシーブの振動を効果的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無段変速機は、V溝を形成する対向する円錐面を各々有する対をなすシーブをそれぞれ含む2個のプーリ間に、無端可撓部材を巻き渡し、対をなすシーブ間の距離を変更してプーリ間の伝達速度比を変更する無段変速機であって、少なくとも1つのシーブの、軸に隣接する部分に固定され、固定された位置より径方向外側の当該シーブの背面に対向する部分は当該シーブから間隔を空けて位置し、径方向の更に外側の部分は、当該シーブの径方向外側を向いた最外周面に圧接する制振構造体を有する。
【0009】
また、制振構造体は、シーブを取り囲むように位置する複数の箇所または全周で、シーブに接するようにできる。
【0010】
さらに、シーブの、制振構造体が接する外周面はテーパ形状とすることができる。
【0011】
さらに、制振構造体は、シーブの外周面に対向して位置する円環形状の部分を有するようにでき、この円環形状の部分の少なくとも一部がシーブの外周面に圧接する。
【0012】
さらにまた、対をなすシーブは、軸に対し一方が固定され他方が移動可能とすることができ、制振構造体は軸に対して固定されたシーブの円板部の中央径より内側にて当該シーブに固定されるようにできる。
【発明の効果】
【0013】
振幅の大きなシーブの外周面に制振構造体を圧接することにより、効果的に摩擦力を作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】チェーン式無段変速機の変速機構に係る構成を示す図である。
図2】固定シーブの振動の固有モードの一つを示す図である。
図3】固定シーブの振動の固有モードの一つを示す図である。
図4】固定シーブの振動の固有モードの一つを示す図である。
図5】固定シーブの断面を示す図である。
図6】固定シーブを背面側から見た状態を示す図である。
図7】制振プレートの接触圧を変化させたときの測定結果を示す図である。
図8】制振プレートの接触圧を変化させたときの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1には、無端可撓部材を用いた無段変速機10の変速機構に係る構成が示されている。無段変速機10は2個のプーリ12,14とこれらのプーリに巻き渡された無端可撓部材としてのチェーン16を有する。2個のプーリの一方を入力プーリ12、他方を出力プーリ14と記す。入力プーリ12は、入力軸18に固定された固定シーブ20と、入力軸18上を入力軸に沿ってスライドして移動可能な移動シーブ22を有する。固定シーブ20と移動シーブ22の互いに対向する面は、円錐側面の形状を有する。これらの面を円錐面24,26と記す。この円錐面24,26によりV字形の溝が形成され、このV溝内に、円錐面24,26に側面を挟まれるようにしてチェーン16が位置する。出力プーリ14も、入力プーリ12と同様に、出力軸28に固定された固定シーブ30と、出力軸28上を出力軸に沿ってスライドして移動可能な移動シーブ32を有する。固定シーブ30と移動シーブ32の互いに対向する面は、円錐側面の形状を有する。これらの面を円錐面34,36と記す。この円錐面34,36によりV字形の溝が形成され、このV溝内に、円錐面34,36に側面を挟まれるようにしてチェーン16が位置する。
【0016】
入力プーリの移動シーブ22の円錐面26の反対側には、移動シーブ22を移動させる液圧アクチュエータ38が配置される。以降において、各シーブの円錐面の反対側をシーブの「背面側」と記す。液圧アクチュエータ38によって移動シーブ22は、入力軸上を入力軸に沿ってスライドする。このとき、移動シーブ22は、回転に関しては固定され、入力軸18と一体に回転する。出力プーリの移動シーブ32の背面側には、移動シーブ32を移動させる液圧アクチュエータ40が配置される。液圧アクチュエータ40によって移動シーブ32は、出力軸上を出力軸に沿ってスライドする。このとき、移動シーブ32は、回転に関しては、出力軸28と一体に回転する。
【0017】
入力プーリ12と出力プーリ14の固定シーブと移動シーブの配置は逆となっている。すなわち、入力プーリ12において移動シーブ22が図1中、右側であるのに対し、出力プーリ14において移動シーブ32は左側に配置される。液圧アクチュエータ38,40により移動シーブ22,32をスライドさせることにより、互いに対向する円錐面24,34、26,36の距離が変化し、これらの円錐面で形成されるV溝の幅が変化する。この溝幅の変化により、チェーン16の巻き掛かり半径が変わる。すなわち、移動シーブ22,32が固定シーブ20,30から離れると溝幅が広がり、チェーン16は溝の深い位置に移動して、巻き掛かり半径が小さくなる。逆に、移動シーブ22,32が固定シーブ20,30に近づくと溝幅が狭くなり、チェーン16は溝の浅い位置に移動して、巻き掛かり半径が大きくなる。巻き掛かり半径の変化を、入力プーリ12と出力プーリ14で逆にすることにより、チェーン16がたるまないようにされている。移動シーブ22,32がスライドすることにより、V溝の幅は連続的に変化し、巻き掛かり半径も連続的に変化する。これにより、入力軸18から出力軸28への伝達における変速比を連続的に変化させることができる。
【0018】
チェーン16は、チェーンの周回方向に配列される板状のリンクと、チェーン周回方向に隣接するリンクを連結するピン42を含む。ピン42は、チェーンの周回方向に所定の間隔で配列される。入力および出力プーリ12,14が回転すると、ピン42は、次々とこれらのプーリ12,14に挟み込まれる。入力および出力プーリ12,14がピン42を挟み込むとき、ピン42から反力を受け、プーリ12,14は変形する。このピン42から受ける反力が起振力となって、入力および出力プーリ12,14を構成する部材が振動する。起振力の周波数、およびその高調波の周波数が入力および出力プーリ12,14を構成する部材、特に各シーブの固有振動数に一致すると共振音が発生する。例えば、固定シーブ20,30は、3〜5kHz付近に外周端がプーリの回転軸線方向に大きく振れる振動モードを有する場合があり、固定シーブ20,30から音が放射される。また、固定シーブ20,30から放射される音が問題ないレベルであっても、振動が入力軸18、出力軸28等の構造材を伝わって、他の場所から音が放射される場合がある。
【0019】
図2図4には、3〜5kHzの出力プーリ14の固有モードが示されている。入力プーリ12についてもほぼ同様である。各図において、プーリの回転軸線方向の振幅が大きい部分が斜線、より大きい部分が二重斜線で示されている。図2に示すモードにおいて、固定シーブ30は、一つの直径が節となり振動する。これにより、固定シーブ30の外周の2箇所に振幅が大きい部分が生じる。図3に示すモードにおいて、固定シーブ30は、中心付近、つまり出力軸28付近では振幅が小さく、外周全体の振幅が大きくなっている。図4に示すモードでは、直交する二つの直径が節となって振動し、外周の4箇所に振幅の大きい部分が生じる。出力軸28に関して反対側に位置する部分は、同相に振動し、周方向において隣の部分は逆相に振動する。いずれのモードにおいても、固定プーリの外周に振幅が大きい部分が存在することが理解できる。振動を抑制するためには、振幅が大きい部分の動きを拘束することが好ましい。
【0020】
入力および出力プーリのシーブの振動により生じる音を抑えるために、少なくとも一つのシーブに制振構造を設けることができる。制振構造を設けるシーブは、音発生の抑制に関し効果のあるシーブを選択して設けることができる。この無段変速機10においては、出力プーリの固定シーブ30に制振構造を設けている。入力プーリの固定シーブ20にも設けることができ、入力プーリの固定シーブ20のみに設けることもできる。また、入力プーリおよび出力プーリの移動シーブ22,32の一方または双方に設けることもできる。以下においては、出力プーリの固定シーブ30に設けられた制振構造を例として説明する。制振構造は、具体的には固定シーブ30の外周面44と、この外周面44に接する制振構造体46を含む。
【0021】
図5および図6は、固定シーブ30に設けられた制振構造の詳細を示す図である。図5は固定シーブ30の回転軸線を含む断面を示し、図6図5の右側から固定シーブ30を見た状態を示す図である。制振構造体46は、中心に大きな開口を有する全体として円環板形状を有し、以降、制振構造体46を制振プレート46と記す。固定シーブ30は、出力軸28と一体に形成されており、出力軸28の最大外径rs より内側の部分をシーブ軸部分48、外側の部分をシーブ円板部分50と記す。また、固定シーブ30の外周面44は、背面側に向かって細くなるテーパ形状となっている。
【0022】
制振プレート46は、シーブ円板部分50の背面52の内側部分、特に、出力軸28に隣接する部分に固定される。固定の方法は、例えば、ボルトなどの締結要素を用いたものとすることができる。制振プレート46は、締結要素の近傍において固定シーブの背面52に接し、ここからプーリ径方向の外側に離れた部分では、固定シーブ30から間隔を空けて位置している。制振プレート46の背面52に対向する部分は、若干高低のある円板形状である。この円板形状の部分(以下、円板部分54と記す。)の外側には、固定シーブの外周面44に対向し、外周面44に接する周縁部分56が設けられている。周縁部分56は、円板部分54の外縁から、おおよそプーリ回転軸線の方向に延びて、皿の縁のような形状を有する。周縁部分56はまた、固定シーブ30を囲む円環形状を有し、この円環形状の内周面の少なくとも一部が外周面44に接触している。接触する箇所は固定シーブ30を取り囲むように複数とすることができ、さらに全周にわたって接触するようにもできる。また、周縁部分56は、外周面44のテーパに合わせてテーパ形状とすることができる。この場合、外周面44と周縁部分56は、固定シーブ30を周回する帯状の領域で接触するようにできる。
【0023】
制振プレート46の周縁部分56は、固定シーブ30の外周面44に対し、所定の接触圧が作用する状態で接する。この状態を以降「圧接」と記す。この接触圧は、静的な状態で発生していることが好ましいが、動的な状態、すなわち固定シーブ30が振動している状態となってから発生するものであってもよい。前記の接触圧は、制振プレート46自身の弾性力により発生させることができる。静的な状態で接触圧を発生させるためには、制振プレート46を固定シーブ30に固定する際、制振プレート46が弾性変形するようにする。この弾性変形の反力として外周面44に対して接触圧が発生する。
【0024】
固定シーブ30が、図2〜4に示すような固有モードで振動すると、固定シーブ30の外周に振幅の大きな部分が出現する。固定シーブ30の外周が振動すると、ここに接している制振プレートの周縁部分56との間で相対移動が生じ、摩擦が発生する。このときの摩擦力が固定シーブ30の外周の振動を抑制するように作用する。振幅が大きな部分で接していることにより、大きな制振効果を得ることができる。
【0025】
また、固定シーブの外周面44がテーパ形状とされていることで、外周面44が制振プレート46に近づく方向(図5中、右方向)に移動するとき、外周面44と周縁部分56の接触圧が増加する。これにより摩擦力が増加し、より大きな制振効果を得ることができる。また、制振プレートの周縁部分56が円環形状であることで、外周面44が周縁部分56に近づく方向に移動するときに、周縁部分56がプーリ半径方向外側に広がるように動くことが抑えられ、接触圧がより効果的に増加する。
【0026】
固定シーブ30の外周との相対移動量を大きくするために、制振プレート46は出力プーリ14の回転軸線方向の振幅が小さい部分に固定されることが望ましい。例えば、出力軸28に固定することができる。また、固定シーブの円板部分50に固定する場合であっても、なるべく内側にて固定することが望ましい。例えば、円板部分50の内径ri(=rs)と外径ro の平均値である中央径rm(=(ri+ro)/2)より内側の位置にて固定するようにできる。
【0027】
図7および図8は、固定シーブ30と制振プレート46の接触状態を変えたときの、固定シーブ30の振動の測定結果を示す図である。固定シーブ30と制振プレート46の間にシムを挿入し、シムの厚さで接触状態を変更している。厚いシムを挿入すると、制振プレート46は固定シーブ30から離れ、シムを薄くすると近づく。固定シーブの外周面44は、テーパ形状となっているため、上記シムによる制振プレート46の位置調整により固定シーブ30と制振プレート46の接触圧が調整できる。固定シーブ30の外縁のプーリ回転軸線方向の振動加速度を測定し、図7では3〜5kHz におけるオーバーオール(OA)の値が示され、図8では周波数分布が示されている。
【0028】
図7において、シム厚がt1 のとき、静的状態、つまり固定シーブ30が回転していない状態で、接触圧が0で接している。点C0 は、制振プレート46を装着しない状態での測定結果である。点C1 〜C3 は、シムを挿入して接触圧を調整した測定結果である。点C2 が静的状態で接触圧がほぼ0となる条件である。図8は、図7に示された各測定結果に対応したグラフが示されている。破線で示すグラフは制振プレート46を装着しない状態での測定結果である。二点鎖線が図7の点C1 の測定条件に対応し、一点鎖線が点C2 に、実線が点C3 に対応する。
【0029】
図7および図8において、静的状態で接触圧がある程度加えられている状態(点C3 )が最も制振効果が高いことが分かる。また、静的状態で接触していない場合であっても(点C1 )、ある程度の効果が得られる。これは、動的状態において固定シーブ30が振動し、この振動によって固定プーリの外周面44が制振プレートの周縁部分56に接するためと考えられる。図7において、点C2 、点C1 、点C0 と効果が少なくなっていくことから、制振プレート46を装着したことによる効果ではなく、固定シーブ30と制振プレート46の摩擦による効果であることが理解できる。
【0030】
固定シーブの外周面44および制振プレートの周縁部分54の一方または双方をテーパ形状としたことで、上述したシム調整等により固定シーブ30と制振プレート46の距離を調整して接触圧を容易に調整できるようになる。また、制振プレート46の円板部分54を半径方向に延びる複数の板状部材に置き換え、この板状部材により周縁部分54を支持するようにしてもよい。また、制振プレート46の周縁部分54の周方向の複数箇所にリブまたは突起を設け、リブまたは突起の先端にて固定シーブ30の外周面44に接するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 無段変速機、12 入力プーリ、14 出力プーリ、16 チェーン(無端可撓部材)、18 入力軸、20 固定シーブ、22 移動シーブ、28 出力軸、30 固定シーブ、32 移動シーブ、42 ピン、44 外周面、46 制振プレート(制振構造体)、56 周縁部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8