(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
各種実施形態に係る診断装置について各図を参照して説明する。
ここで、X線撮影部保持装置および医用寝台装置を有する診断装置を一例に挙げて説明する。
【0016】
X線撮影部保持装置は、前述したように、Cアーム、X線源、X線検出器を有する。
Cアームは、X線撮影部保持装置により、床に設置されるものがある(床置き型)。また、天井に吊るされ、かつ、走行可能なものがある(天井走行型)。さらに、床置き型と天井走行型とを組み合わせた複合型がある。
【0017】
一つの装置で、被検体の全身を撮影することが可能な医用寝台装置を提供するためには、このようなX線撮影部保持装置の型に応じて、医用寝台装置が構成される必要がある。
【0018】
どのような型のCアームであっても、Cアームは次のように構成される。
1)Cアームの形状に沿って移動可能に構成される。
2)Cアームの一端部と他端部との間の中間部が、略水平軸回りに回転可能に構成される。それにより、X線源およびX線検出器が、天板の長尺方向を含む垂直面上を円弧(略水平軸を中心とする)を描くように移動されることは、前述した通りである。
3)Cアームの一端部と他端部との間の中間部が、略垂直軸回りに回転可能に構成される。
【0019】
なお、医用寝台装置がCアームの構成に対応させて構成されることはいうまでもない。
さらに、医用寝台装置が設置されるとき、その周囲にはX線撮影部保持装置の他に、他の装置(医用設備)が配置されている。他の装置の配置に応じて医用寝台装置が構成される必要がある。
【0020】
<第1実施形態>
診断装置1の第1実施形態について各図を参照して説明する。
【0021】
以下の説明において、水平方向であって、互いに直交する方向を、X方向およびY方向で示し、垂直方向をZ方向で示す。なお、水平方向の軸(水平軸)をX軸またはY軸という場合がある。また、垂直方向の軸(垂直軸)をZ軸という場合がある。さらに、診断装置1において、被検体が載置される天板を、水平方向に対し傾斜させる傾動機構を有するものがあるが、説明の都合上、水平方向というときは、多少の傾斜を含むものとする。
【0022】
診断装置1は、X線撮影部保持装置2および医用寝台装置10を有する。
【0023】
[医用寝台装置10]
次に、医用寝台装置10の一例について
図3〜
図9を参照して説明する。
図3は第1実施形態に係る医用寝台装置のブロック図、
図4は医用寝台装置の一部を断面により示す横断面図である。
【0024】
図3に示すように、医用寝台装置10は、支柱部11、中間板12、天板13、保持部14、中間板スライド機構20および天板回転機構50を有する。
【0025】
支柱部11は設置場所に配置される。保持部14は、略長方形の板状の形状を有し、支柱部11に固定される。支柱部11と保持部14とが一体的に形成される。支柱部11および保持部14の全体を「支柱部」という場合がある。天板13には被検体が載置される。
【0026】
図4に示すように、中間板12は、支柱部11(保持部14)と天板13との間に配置される。中間板12は、略長方形の板状の形状を有する。
【0027】
〔中間板スライド機構20〕
次に、中間板スライド機構20の一例を説明する。
図5は医用寝台装置10の平面図、
図6は中間板を長手方向に移動させたときの医用寝台装置の平面図である。
図5および
図6では、天板13の長尺方向を“A1”、“A2”で示す。
図5ではA1方向に移動した中間板12を示す。
図6では、A2方向に移動した中間板12を示す。
【0028】
中間板スライド機構20は、ガイドレール21、スライダ22、ラックギア(図示省略)、ピニオン(図示省略)、および、モータ(図示省略)を有する。
【0029】
ガイドレール21は、支柱部11に固定される。スライダ22は、中間板12に固定される。スライダ22は、ガイドレール21により長手方向に沿って移動可能に嵌合する。スライダ22が長手方向に移動されることにより、中間板12が支柱部11に対し長手方向に移動可能となる。
【0030】
ラックギアは、ガイドレール21に沿って配置され、支柱部11に固定される。ピニオンは、ラックギアに噛み合うように配置され、中間板12に固定される。モータは、中間板12に固定され、ピニオンを回転させる。モータにはスイッチ(図示省略)を介して電力が供給される。
【0031】
スイッチがオンされると、電力がモータに供給され、モータが正方向または逆方向に回転される。スイッチがオフされると、モータへの電力供給が停止され、モータが停止される。
【0032】
モータがピニオンを例えば正方向に回転させると、ピニオンがラックギアに沿って転動する。それにより、中間板12がA2方向に移動する。モータがピニオンを例えば逆方向に回転させると、ピニオンがラックギアに沿って転動する。それにより、中間板12がA1方向に移動する。このとき、中間板12と一体的に天板13が移動する。モータの回転量と中間板12(および天板13)の移動量S1とが比例する(
図3参照)。
【0033】
〔天板回転機構50〕
次に、天板回転機構50の一例を説明する。
図7は天板13を天板用垂直軸51回りに回転させたときの医用寝台装置10の平面図、
図8はCアーム3の移動方向に天板13の長尺方向を一致させたときの医用寝台装置10の平面図、
図9はCアームの移動方向に天板の長尺方向を一致させたときの医用寝台装置の側面図である。
【0034】
図7に、天板用垂直軸51回りの方向として、時計回りの方向を“CW1”で示し、反時計回りの方向を“CW2”で示す。
図8に、Cアーム3の移動方向を“Y1”、および、“Y2”で示す。また、
図8に、天板13の先端部側にその頭部が載せられ、天板13の基端部側にその足部が載せられた被検体Pを示す。
【0035】
天板回転機構50は、天板用垂直軸51、ホイールギア(図示省略)、ウオーム(図示省略)、モータ(図示省略)、および、位置決め手段(図示省略)を有する。
【0036】
(天板用垂直軸51)
天板用垂直軸51は、支柱部11の中心軸とは外れた位置に配置され、中間板12に固定される。天板用垂直軸51回りに、天板13が中間板12に対し回転可能に構成される。
【0037】
天板用垂直軸51は、中間板12が長手方向に移動される前、支柱部11またはその近傍に位置し、中間板12と共に長手方向に移動されると、支柱部11から離間して位置し、天板用垂直軸51回りに天板13が回転されると、天板13の下方にCアーム3の一端部3a(X線源4またはX線検出器5)が入る空間が形成されるように配置される。
【0038】
ホイールギアは、天板用垂直軸51中心の円周方向に並べられた多数の歯を有し、中間板12に固定される。ウオームは、ホイールギアに噛み合うように配置され、天板13に固定される。モータは、天板13に固定され、ウオームを回転させる。モータにはスイッチ(図示省略)を介して電力が供給される。スイッチがオンされると、電力がモータに供給され、モータが正方向または逆方向に回転される。スイッチがオフされると、モータへの電力供給が停止され、モータが停止される。
【0039】
モータがウオームを例えば正方向に回転させると、ウオームがホイールギアに噛み合いながら円周方向に進む。それにより、天板13がCW1方向に回転される。モータがウオームを例えば逆方向に回転させると、ウオームがホイールギアに噛み合いながら円周方向に進む。それにより、天板13がCW2方向に回転される(
図7参照)。さらに、モータがウオームを例えば逆方向に回転させると、天板13がCW2方向にさらに回転される。それにより、Cアーム3の移動方向Y1、Y2(
図8参照)と、天板13の長尺方向(A1、A2)が一致するようになる。モータの回転量と天板13の回転角度θ2とが比例する(
図3参照)。
【0040】
中間板スライド機構20により天板13はS1移動し、さらに天板回転機構50により、天板13はθ2回転する。このときの天板13の変位量(移動量および回転角度)を
図3に“S1+θ2”で示す。
【0041】
(位置決め手段)
位置決め手段は、天板13を任意の回転角度で位置決めするように構成される。天板13の位置決めは、モータの保持トルク、および、ウオームとホイールギアとの摩擦力により可能であるため、位置決め手段として、モータ等の他に設ける必要がないが、天板13の回転を阻止するためのブレーキを設けてもよい。
【0042】
位置決め手段により、天板13を任意の回転角度に位置決めすることにより、Cアーム3の移動方向と天板13の長尺方向とを交差させた状態(
図7参照)、あるいは、両方の方向を一致させた状態(
図8参照)に天板13を拘束することが可能となる。これらの状態の詳細については後述する(診断装置1の動作を参照)。
【0043】
[X線撮影部保持装置2]
次に、X線撮影部保持装置2の一例について、
図8および
図9を参照して説明する。
図9は、Cアーム3の移動方向に天板の長尺方向を一致させたときの医用寝台装置の側面図である。
【0044】
(天井走行型)
第1実施形態の医用寝台装置10は、天井走行型のX線撮影部保持装置2に対応可能なものである。
【0045】
X線撮影部保持装置2は、Cアーム3、X線源4、および、X線検出器5を有する。
Cアーム3は、天井に吊るされ、天井に設備されたスライドレール(図示省略)により、天井(水平面)に沿って互いに直交する方向に移動可能に構成される。互いに直交する方向を
図8に“X1”、“X2”、“Y1”、“Y2”で示す。さらに、Cアーム3は、C字形状を有し、その一端部3aと他端部3bとの間の中間部3cを略中心(Z軸回り)に回転可能に構成される。その回転方向を
図8に“D1”、“D2”で示す。さらに、Cアーム3は、C字形状に沿って移動可能に構成される。その移動方向を
図9に“E1”、“E2”で示す。
【0046】
X線源4はCアーム3の一端部3aに配置される。X線検出器5は、Cアーム3の他端部3bに配置される。X線源4からX線検出器5に向かってX線が照射される。
【0047】
X線源4とX線検出器5との間に、天板13上の被検体Pを撮影する領域である撮影領域が形成される。X線検出器5は、X線源4から照射され、被検体を透過したX線を検出する。
【0048】
中間板スライド機構20および天板回転機構50を用いることにより、Cアーム3の移動方向と天板13の長尺方向とを一致させることが可能となる。
【0049】
これにより、Cアーム3は、天板13に対し長尺方向に移動可能に構成される。そのため、天板13の長尺方向の先端部から基端部までの任意の部位が撮影領域となり、天板13上の被検体Pの全身を撮影することが可能となる。なお、被検体Pの全身を撮影するとき、Cアーム3の一端部3a等が支柱部11等に干渉しないことはいうまでもない。
【0050】
(その他の構成)
診断装置1は、図示しないが、記憶部、制御部および表示部を有する。
記憶部には、中間板12、天板13、Cアーム3を含む診断装置1の各構成の座標系、および、各構成の目的となる位置や回転角度が記憶される。
【0051】
制御部は、オペレータによる操作情報を受けて、各構成の座標系に基づき、その制御により安全性が確保されるかどうかを判断する。安全性が確保されるとき、中間板スライド機構20および天板回転機構50を制御する。安全性が確保されないとき、中間板スライド機構20および天板回転機構50を停止させておき、表示部にその旨を表示させる。
【0052】
表示部には、各構成の位置(回転角度を含む)やその状態が表示される。また、表示部には、各構成が目的の位置に移動したかどうかが表示される。オペレータは、表示部に表示される各構成の位置や状態を見ながら、中間板スライド機構20および天板回転機構50を操作可能となる。また、安全性が確保されないとき、表示部にその旨を表示させるので、安全性が二重に確保される。
【0053】
なお、このような記憶部、制御部および表示部は、以下の各実施形態において、診断装置1の各構成を制御するときも同様である。
【0054】
[第1実施形態の診断装置1の動作]
以上、診断装置1の一例について説明した。
次に、この診断装置1により、天板13に載置された被検体を撮影するときの一連の動作について説明する。
【0055】
図5に、天板13の周囲において、天板13の側縁部に対向する位置を“P1”で示し、天板13の基端部に対向する位置を“P2”で示す。
【0056】
図5に示すように、中間板12(天板13)が他の装置M1、M2に挟まれているときおよび/または、被検体の全身を撮影するために移動させたCアーム3の一端部3a(またはX線源4)が他の装置M1、M2(または支柱部11)と干渉するときは、制御部がオペレータの操作情報を受けて、中間板スライド機構20を制御することにより、中間板12をA2方向の目的となる位置に移動させる(
図6参照)。
なお、天井走行型のCアーム3を、前述のスライドレールにより、P1の位置からP2の位置(
図5参照)に移動させる。
【0057】
このようにして、中間板12等と他の装置M1、M2等との干渉をなくしてから、制御部がオペレータの操作情報を受けて、天板回転機構50を制御することにより、Cアーム3の移動方向(この場合、Y1、Y2)と天板13の長尺方向A1、A2とを一致させるように(目的の回転角度となるように)、天板13を天板用垂直軸51回りに回転させる。CW2の方向に回転される天板13を
図7に示す。
【0058】
このとき、天板13の下方にCアーム3の一端部3a(X線源4またはX線検出器5)が入る空間が形成される。それにより、Cアーム3をY1、Y2方向に大きく移動させても、その一端部3a(またはX線源4)が他の装置M1、M2(または支柱部11)と干渉しないようになる。それにより、安全性の確保が容易となる。
【0059】
さらに、Cアーム3を大きく移動させることにより、被検体Pの全身を撮影することが可能となる。また、このとき、天板13に対し、被検体Pの向きを変える必要もない。
【0060】
さらに、中間板12と共に天板13をA2方向の目的の位置まで移動し、その目的の位置で、天板13を回転させれば、被検体Pの全身を撮影することができため、撮影時における天板13の移動ストロークをそれ以上長くしなくてもよく、機械的な安全性を容易に確保することが可能となる。
【0061】
(従来の診断装置の動作の一例)
これに対し、従来の診断装置では、中間板12および天板13が他の装置M1、M2に挟まれるように配置されるとき(
図5参照)、中間板12(天板13)を回転させると、中間板12(天板13)が他の装置M1、M2に干渉する。それにより、安全性の確保が困難となる。
図5に他の装置M1、M2に干渉した中間板12(天板13)を破線で示す。
【0062】
また、このとき、Cアーム3の中間位置33がP1の位置にある。天板13上の被検体の全身を撮影すべく、Cアーム3をX1方向に移動させると、Cアーム3の一端部3aやX線源4が他の装置M1、M2や支柱部11に干渉する。なお、Cアーム3をY1方向に移動させても、Cアーム3の一端部3aやX線源4が他の装置M1、M2や支柱部11に干渉する。それにより、安全性の確保が困難となる。
【0063】
<第1実施形態の変形例>
次に、第1実施形態の変形例について
図10及び
図11を参照した説明する。
【0064】
図10は、変形例に係る医用寝台装置のブロック図、
図11は、医用寝台装置の一部を断面により示す横断面図である。
図10および
図11に示すように、変形例では、第1実施形態の中間板スライド機構20および天板回転機構50に、天板スライド機構30を追加したものである。
【0065】
〔天板スライド機構30〕
次に、天板スライド機構30の一例について説明する。第1実施形態では、天板用垂直軸51により天板13を回転可能に構成したが、この変形例では、天板用垂直軸51に天板スライド機構30を回転可能に構成し、さらに、天板スライド機構30に天板13を移動可能に構成する。
【0066】
天板スライド機構30は、ガイドレール31、スライダ32、ラックギア(図示省略)、ピニオン(図示省略)、および、モータ(図示省略)を有する。
【0067】
ガイドレール31は、天板用垂直軸51に固定される。スライダ32は、天板13に固定される。スライダ32は、ガイドレール31により天板13の長尺方向に沿って移動可能に嵌合する。スライダ32が長尺方向に移動されることにより、天板13が中間板12に対し長尺方向に移動可能となる。
【0068】
ラックギアは、ガイドレール31に沿って配置され、中間板12に固定される。ピニオンは、ラックギアに噛み合うように配置され、天板13に固定される。モータは、天板13に固定され、ピニオンを回転させる。モータにはスイッチ(図示省略)を介して電力が供給される。
【0069】
スイッチがオンされると、電力がモータに供給され、モータが正方向または逆方向に回転される。スイッチがオフされると、モータへの電力供給が停止され、モータが停止される。
【0070】
モータがピニオンを例えば正方向に回転させると、ピニオンがラックギアに沿って転動する。それにより、天板13がA2方向に移動する。モータがピニオンを例えば逆方向に回転させると、ピニオンがラックギアに沿って転動する。それにより、天板13がA1方向に移動する。モータの回転量と天板13の移動量(中間板12に対する移動量)S2とが比例する(
図10参照)。
【0071】
[変形例の診断装置1の動作]
次に、変形例に係る医用寝台装置10を用いた診断装置1により、天板13に載置された被検体を撮影するときの一連の動作について説明する。
【0072】
第1実施形態と同様に、変形例においても、中間板スライド機構20および天板回転機構50を用いることにより、Cアーム3の相対的な移動方向(Y1、Y2)と天板13の長尺方向(A1、A2)とを一致させる。
【0073】
被検体の撮影をするとき、天板スライド機構30を用いて、天板13を長尺方向(A1、A2)に移動させることにより、Cアーム3をY1、Y2方向に移動させずに、Cアーム3を固定した状態で、被検体Pの全身を撮影することが可能となる。
【0074】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る診断装置1について、
図12から
図16を参照して説明する。
【0075】
[X線撮影部保持装置2]
X線撮影部保持装置2の一例について説明する。
【0076】
第1実施形態のX線撮影部保持装置2では、天井走行型であって、Cアーム3がスライドレールにより天井に沿って互いに直交する方向(X1、X2、Y1、Y2の方向)に移動可能に構成される。したがって、Cアーム3がP1の位置からP2の位置に移動可能に構成される(
図5参照)。これに対し、第2実施形態のX線撮影部保持装置2では、床置き型であって、Cアーム3が床面に固定されるものである。したがって、Cアーム3は、例えば、P2の位置に固定される(
図14参照)。
【0077】
第2実施形態のX線撮影部保持装置2では、上記の異なる点を除いて、第1実施形態と同じである。すなわち、第2実施形態のX線撮影部保持装置2は、Cアーム3、X線源4、X線検出器5を有する。
【0078】
[医用寝台装置10]
次に、医用寝台装置10の一例について説明する。
図12は医用寝台装置10のブロック図である。
【0079】
第1実施形態では、中間板スライド機構20が設けられたのに対し、第2実施形態では、中間板回転機構40が設けられている。なお、第1実施形態と同様に、第2実施形態においても、天板回転機構50が設けられている。
【0080】
天板回転機構50において、天板用垂直軸51は、支柱部11に対し中間板用垂直軸41よりも離間して位置し、天板用垂直軸51回りに天板13が回転されると、天板13の下方にCアーム3の一端部3a(X線源4またはX線検出器5)が入る空間が形成されるように配置される。
【0081】
〔中間板回転機構40〕
次に、中間板回転機構40の一例を説明する。
図13は医用寝台装置の一部を断面により示す横断面図、
図14は、天板の長尺方向の中間部を撮影領域に位置させたときの医用寝台装置の平面図である。
【0082】
図13および
図14に示すように、中間板回転機構40は、中間板用垂直軸41、ホイールギア(図示省略)、ウオーム(図示省略)、モータ(図示省略)、および、位置決め手段(図示省略)を有する。
【0083】
(中間板用垂直軸41)
中間板用垂直軸41は、支柱部11に固定される。中間板用垂直軸41回りに、中間板12が支柱部11に対し回転可能に構成される。
【0084】
ホイールギアは、中間板用垂直軸41中心の円周方向に並べられた多数の歯を有し、支柱部11に固定される。ウオームは、ホイールギアに噛み合うように配置され、中間板12に固定される。モータは、中間板12に固定され、ウオームを回転させる。モータにはスイッチ(図示省略)を介して電力が供給される。
【0085】
スイッチがオンされると、電力がモータに供給され、モータが正方向または逆方向に回転される。スイッチがオフされると、モータへの電力供給が停止され、モータが停止される。
【0086】
モータがウオームを例えば正方向に回転させると、ウオームがホイールギアに噛み合いながら円周方向に進む。それにより、中間板12がCW1方向に回転される(
図14参照)。このとき、天板13も中間板12と一体的に回転される。モータがウオームを例えば逆方向に回転させると、ウオームがホイールギアに噛み合いながら円周方向に進む。それにより、中間板12がCW2方向に回転される(
図14参照)。このとき、天板13も中間板12と一体的に回転される。モータの回転量と中間板12(天板13)の回転角度θ1とが比例する。
【0087】
第1実施形態と同様に、天板回転機構50を用いて、モータの回転量と天板13の回転角度θ2とが比例する。
【0088】
中間板回転機構40により、天板13が中間板用垂直軸41回りにθ1回転し、さらに、天板回転機構50により、天板13が天板用垂直軸回りにθ2回転する。天板13の変位量(回転角度)を
図12に“θ1+θ2”で示す。
【0089】
このような中間板回転機構40および天板回転機構50を用いて、天板13を変位させることにより、Cアーム3が固定されていても、天板13の長尺方向の先端部から基端部までの任意の部位を撮影領域に位置させる。言い換えれば、Cアーム3を天板13の長尺方向の先端部から基端部までの間を相対的に移動させる。
【0090】
(位置決め手段)
位置決め手段は、中間板12を任意の回転角度で位置決めするように構成される。中間板12の位置決めは、モータの保持トルク、および、ウオームとホイールギアとの摩擦力により可能であるため、位置決め手段として、モータ等の他に設ける必要がないが、中間板12の回転を阻止するためのブレーキを設けてもよい。
【0091】
位置決め手段により、中間板12を任意の回転角度に位置決めすることにより、Cアーム3の相対的な移動方向と天板13の長尺方向とを一致させた状態(
図14〜
図16参照)に天板13を拘束することが可能となる。これらの状態の詳細については後述する(診断装置1の動作を参照)。
【0092】
なお、
図5に示すように、中間板12が他の装置M1、M2に挟まれているときは、中間板12を中間板用垂直軸41回りに回転させると、中間板12が他の装置M1、M2に干渉するため、中間板12を中間板用垂直軸41回りに回転させるこのような構成は用いられず、このようなときは、第1実施形態の構成が用いられることはいうまでもない。
【0093】
[第2実施形態の診断装置1の動作]
次に、医用寝台装置10を用いた診断装置1により、天板13に載置された被検体を撮影するときの一連の動作について
図14〜
図16を参照して説明する。
図14は天板の長尺方向の中間部を撮影領域に位置させたときの医用寝台装置の平面図、
図15は天板の長尺方向の先端部を撮影領域に位置させたときの医用寝台装置の平面図、
図16は、天板の長尺方向の基端部を撮影領域に位置させたときの医用寝台装置の平面図である。なお、X線撮影部保持装置2は、床置き型であって、Cアーム3がP2の位置に固定されることは前述した。
【0094】
制御部がオペレータの操作情報を受けて、天板回転機構50を制御することにより、天板13を天板用垂直軸51回りに反時計回りCW2に回転させる。それにより、Cアーム3の移動方向Y1、Y2と天板13の長尺方向A1、A2とを一致させる。
図14に、Cアーム3の移動方向Y1、Y2と、天板13の長尺方向A1、A2とを一致させた状態を示す。
【0095】
図14に示す撮影状態では、天板13の長尺方向の中間部が撮影領域となる。それにより、天板13上の被検体Pの体軸方向の中間部(胸部、腹部など)を撮影可能となる。
【0096】
図14に示す撮影状態から、天板13の長尺方向の基端部を撮影領域とするには、制御部がオペレータの操作情報を受けて、中間板回転機構40を制御することにより、中間板12を中間板用垂直軸41回りに時計回りCW1に回転させるとともに、天板回転機構50により、天板13を天板用垂直軸51回りに反時計回りCW2に回転させる。それにより、Cアーム3の移動方向Y1、Y2と、天板13の長尺方向A1、A2とを一致させる。
図15に、Cアーム3の移動方向Y1、Y2と、天板13の長尺方向A1、A2とを一致させた状態を示す。
【0097】
図15に示す撮影状態では、天板13の長尺方向の基端部が撮影領域となる。それにより、天板13上の被検体Pの基端部(足先など)を撮影可能となる。
【0098】
図14に示す撮影状態から、天板13の長尺方向の先端部を撮影領域とするには、制御部がオペレータの操作情報を受けて、中間板回転機構40を制御することにより、中間板12を中間板用垂直軸41回りに反時計回りCW2に回転させるとともに、制御部がオペレータの操作情報を受けて、天板回転機構50を制御することにより、天板13を目的の回転角度となるように天板用垂直軸51回りに時計回りCW1に回転させる。それにより、Cアーム3の移動方向Y1、Y2と、天板13の長尺方向A1、A2とを一致させる。
図16に、Cアーム3の移動方向Y1、Y2と、天板13の長尺方向A1、A2とを一致させた状態を示す。
【0099】
図16に示す撮影状態では、天板13の長尺方向の先端部が撮影領域となる。それにより、天板13上の被検体Pの先端部(頭部など)を撮影可能となる。
【0100】
すなわち、中間板回転機構40および天板回転機構50を用いて、天板13を変位させることにより、Cアーム3が固定されていても、天板13の長尺方向の先端部から基端部までの任意の部位を撮影領域に位置させることができる。それにより、被検体Pの全身を撮影することが可能となる。
【0101】
さらに、中間板12と共に天板13を中間板用垂直軸41回りに回転させ(目的の回転角度とし)、その回転角度の位置で、天板13を天板用垂直軸51回転させれば、被検体Pの全身を撮影することができため、撮影時における天板13を支柱部11から大きく離間させずに済み、機械的な安全性を容易に確保することが可能となる。
【0102】
次に、2か所に配置されたX線撮影部保持装置2に対し、一つの医用寝台装置10で対応するときについて説明する。
図17は、2か所に配置されたX線撮影部保持装置2に対応可能な医用寝台装置の平面図である。
図17に、2か所に配置されたX線撮影部保持装置2の各Cアーム3の位置をP1、P2で示す。
【0103】
図17に示すように、Cアーム3がP1の位置にあるときの撮影では、上記の第2実施形態の診断装置1の動作と同じように、医用寝台装置10を動作させればよい。このときの中間板12および天板13を
図17に破線で示す。
【0104】
次に、CアームがP2の位置にあるときの撮影では、中間板12を中間板用垂直軸41回りに回転させ、かつ、天板13を天板用垂直軸51回りに回転させることにより、中間板12および天板13を
図17に実線で示す位置に移動させればよい。
【0105】
なお、
図17に破線で示す位置に中間板12および天板13があるときは、中間板用垂直軸41回りに時計回りの方向CW1に中間板12を回転させればよい。
このようにして、一つの医用寝台装置10により、2か所に配置されたX線撮影部保持装置2に対応させることが可能となる。
【0106】
<第2実施形態の変形例>
次に、第2実施形態の変形例について説明する。なお、第2実施形態では、中間板回転機構40および天板回転機構50が設けられるが、この天板回転機構50に代えて、または、天板回転機構50と共に、天板13を中間板12に対し長尺方向に移動可能な天板スライド機構30が設けられてもよい(
図24参照)。天板スライド機構30については、第1実施形態の変形例で説明したので、その説明を省略する。
【0107】
図18に示すように、第2実施形態の変形例1では、中間板回転機構40および天板回転機構50の他に、天板スライド機構30が設けられる。
【0108】
中間板回転機構40および天板回転機構50が設けられるが、天板スライド機構30が設けられない医用寝台装置10では、P2の位置に固定されたCアーム3に対し、中間板用垂直軸41回りに中間板12を回転させると、天板13とCアーム3との距離が変化する。
図14〜
図16に示す診断装置1では、その距離の変化がわずかであるため、Cアーム3をD1、D2方向に回転させることによりその変化に対応可能である。しかし、中間板12の回転角度が大きくなると、距離の変化も大きくなるため、Cアーム3をD1、D2方向に回転させることによっては、距離の変化に対応できない。
【0109】
第2実施形態の変形例1では、中間板回転機構40および天板回転機構50が設けられ、さらに、天板スライド機構30が設けられる医用寝台装置10では、天板13を長尺方向に移動させることにより、中間板12の回転角度が大きくし、距離が大きく変化しても、Cアーム3との距離を一定に保つことができる。
【0110】
次に、第2実施形態の変形例2について、
図19および
図20を参照して説明する。
図19は第2実施形態の変形例に係る医用寝台装置の正面図、
図20は医用寝台装置の側面図である。
【0111】
第2実施形態の変形例2に係る医用寝台装置は、天板スライド機構30および中間板回転機構40が設けられる(
図24参照)。
【0112】
このような天板スライド機構と中間板回転機構の組み合わせでは、中間板用垂直軸41は、支柱部11に対し離間して位置し、中間板用垂直軸41回りに中間板12と共に天板13が回転されると、天板13の下方にCアーム3の一端部3a(X線源4またはX線検出器5)が入る隙間が形成されるように配置される。
【0113】
図1に示す従来の医用寝台装置では、Cアーム3を大きく回転させたとき、Cアーム3やX線源4が支柱部11に干渉する。そのため、被検体Pの全身の一部、ここでは足先が撮影できないものであった。
【0114】
これに対し、変形例2では、制御部がオペレータの操作情報を受けて、中間板回転機構40を制御することにより、中間板12を中間板用垂直軸41回りに回転させ、かつ、天板スライド機構30を用いて、足先が撮影領域に位置するように中間板12に対し天板13を移動させることにより、足先が撮影可能となる。このように構成することにより、Cアーム3と、支柱部11とを干渉させずに、被検体Pの全身の撮影を可能とする。
【0115】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る医用寝台装置について
図21から
図23を参照して説明する。
図21は、第3実施形態に係る医用寝台装置のブロック図、
図22は医用寝台装置の一部を断面により示す横断面図、
図23は、医用寝台装置の側面図である。
【0116】
第3実施形態の医用寝台装置10は、前提として中間板スライド機構20および中間板回転機構40を有する。さらに、天板スライド機構30および天板回転機構50の少なくとも一方を有する。
【0117】
図21〜
図23に示すように、第3実施形態の医用寝台装置10の一例として、前提となる中間板スライド機構20および中間板回転機構40の他に、天板スライド機構30および天板回転機構50の両方を有する。
【0118】
中間板スライド機構20、天板スライド機構30、中間板回転機構40、および、天板回転機構50については、上記各実施形態に記載された各機構と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0119】
中間板スライド機構20、天板スライド機構30、中間板回転機構40、および、天板回転機構50を有することにより、医用寝台装置10全体の自由度がより高くなり、医用寝台装置10、X線撮影部保持装置2および他の装置M1、M2を含む全部の装置がどのようにレイアウトされても、X線撮影部保持装置2により被検体Pの全身を撮影することが可能となる。また、天板13に対し、被検体Pの向きを変える必要もない。
【0120】
なお、天板スライド機構30および天板回転機構50の両方を設けたものを示したが、両方に限らない。例えば、一方として天板スライド機構30を設けてもよく、また、一方として天板回転機構50を設けてもよい(
図24参照)。このような構成であっても、医用寝台装置10全体の自由度が高くなる。
【0121】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるととともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。