特許第6257946号(P6257946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6257946
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】地熱タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/04 20060101AFI20171227BHJP
   F01D 25/10 20060101ALI20171227BHJP
   F01D 25/12 20060101ALI20171227BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20171227BHJP
   F03G 4/00 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   F01D9/04
   F01D25/10 Z
   F01D25/12 B
   F01D25/24 K
   F03G4/00 551
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-159455(P2013-159455)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-31175(P2015-31175A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−220850(JP,A)
【文献】 実開平04−119303(JP,U)
【文献】 特開昭54−058105(JP,A)
【文献】 特開2007−332778(JP,A)
【文献】 特開平03−294603(JP,A)
【文献】 特開2012−122390(JP,A)
【文献】 実開昭59−130005(JP,U)
【文献】 特開平07−279610(JP,A)
【文献】 特開平07−091202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02 − 9/04
25/10 − 25/24
F03G 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータシャフトの外周に配置した複数の動翼列と、前記ロータシャフトを収納するケーシングの内周にそれぞれ翼取付部を介して支持される複数の静翼列とを具備する、地熱タービンであって、
前記複数の静翼列を支持するそれぞれの翼取付部のうち、初段静翼列を支持する翼取付部の内部に、冷却水が流れる一つの冷却流路が連続的に周回する環状冷却部、若しくは冷却水が流れる複数の冷却流路によって断続的に周回する環状冷却部が設けられ、
前記初段静翼列を支持する翼取付部は、前記ケーシングの内周に固定された、前記ケーシングとは別部材で構成される環状の外輪からなり、前記環状冷却部は前記静翼列との接続部を有さないことを特徴とする地熱タービン。
【請求項2】
前記外輪は、複数の分割体が前記ケーシング内周側に固定されることで一体化されてなる分割外輪で構成され、
前記分割体の内部に前記冷却流路がそれぞれ形成されると共に、
前記分割体が一体化されることで前記分割外輪の内部に、断続的に周回する前記環状冷却部が形成される、ことを特徴とする請求項1記載の地熱タービン。
【請求項3】
ロータシャフトの外周に配置した複数の動翼列と、前記ロータシャフトを収納するケーシングの内周にそれぞれ翼取付部を介して支持される複数の静翼列とを具備する、地熱タービンであって、
前記複数の静翼列を支持するそれぞれの翼取付部のうち、初段静翼列を支持する翼取付部の内部に、冷却水が流れる一つの冷却流路が連続的に周回する環状冷却部、若しくは冷却水が流れる複数の冷却流路によって断続的に周回する環状冷却部が設けられ、
前記初段静翼列を支持する翼取付部は、前記ケーシングの内周に固定された、前記ケーシングとは別部材で構成される環状の外輪からなり、該外輪の内部に前記環状冷却部が設けられ、
前記外輪は、複数の分割体が前記ケーシング内周側に固定されることで一体化されてなる分割外輪で構成され、
前記分割体の内部に前記冷却流路がそれぞれ形成されると共に、
前記分割体が一体化されることで前記分割外輪の内部に、断続的に周回する前記環状冷却部が形成されることを特徴とする地熱タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地熱タービンに係り、特に、地熱タービンにおける蒸気導入側の静翼列を冷却することで、静翼列に蒸気通過によるスケールが付着するのを防止するようにした、地熱タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地熱エネルギーの利用として、例えば図8に示す地熱発電システム1があり、かかる地熱発電システム1は、地下深部の熱源により熱水を発生する生産井2と、生産井2から地上まで導いて沸騰した熱水を、蒸気と分離させるセパレータ3を具備する。
また地熱発電システム1は、セパレータ3で分離された熱水を戻す還元井4と、分離された蒸気により回転する地熱タービン5と、地熱タービン5に接続の発電機6とを具備する。
さらに、地熱発電システム1は、地熱タービン5を通過した蒸気を温水化する復水器7と、温水を冷却する冷却塔8とを具備する。
【0003】
また、図9に地熱発電システム1に用いられる地熱タービン5としての蒸気タービンの一例を示す。
この蒸気タービン5は、例えば、周知の軸流式蒸気タービンであり、ロータシャフト5a側に複数の動翼5bとケーシング5c側に固定された複数の静翼(ノズル)5dとが、多段的に交互に対向するように列設されている。ロータシャフト5aには、発電機6のロータが連結されている。セパレータ3からの蒸気は、蒸気入口から初段静翼5dを通じて導入され、多段の動翼5b、静翼5d間を膨張しながら通過して蒸気排出口から放出され、運動エネルギーにより動翼5bが回転してロータシャフト5aを回し、発電機6のロータを回転駆動させ、電力を取り出すようになっている。
【0004】
ところで、生産井から噴出する高温の熱水は、井戸水や河川水よりもカルシウムや溶存シリカを多く含むため、炭酸カルシウムや非晶質シリカなどのスケールを析出しやすい。特に地上部や還元井では、熱水が地上部で温度降下することにより発生するシリカスケールを抑制することが課題である。
【0005】
これまで、地熱発電用地熱タービンのノズル(特に、初段静翼)に付着堆積したスケールを除去するものとしては、たとえば、特許文献1において開示されているものがある。
ここでは、ノズル板を円環状に必要な枚数だけ所定の角度に並べ、内輪と外輪に鋳込んで、一体化される仕切り板におけるノズルの冷却水通路の製造方法として、ノズルをブロック構成として、各ブロックにおいて、冷却水通路を冷却水接続管で接続して連通せしめ、冷却水供給管から冷却水を流し、冷却水排水管に戻すような構成とし、仕切り板における全ノズル板内に冷却水通路を確保し、且つ、その接続をシール溶接等、によって行う手段を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3046907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記手段では、全ノズル板内に冷却水通路を形成して、内輪から外輪にかけてつづら折り状に、全周に亘って配管する構成であるので、構造が複雑化し、製造コストの上昇は避けられない。
本発明は、上記の課題を改善するために提案されたものであって、特に地熱タービンにおける蒸気導入側の静翼列を効果的に冷却して、蒸気通過によるスケールが静翼列に付着するのを防止することができる、地熱タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1にかかる本発明では、ロータシャフトの外周に配置した複数の動翼列と、ロータシャフトを収納するケーシングの内周にそれぞれ翼取付部を介して支持される複数の静翼列とを具備する、地熱タービンであって、複数の静翼列を支持するそれぞれの翼取付部のうち、初段静翼列を支持する翼取付部の内部に、冷却水が流れる一つの冷却流路が連続的に周回する環状冷却部、若しくは冷却水が流れる複数の冷却流路によって断続的に周回する環状冷却部が設けられ、初段静翼列を支持する翼取付部は、ケーシングの内周に固定された、ケーシングとは別部材で構成される環状の外輪からなり、環状冷却部は静翼列との接続部を有さないことを特徴とする。
【0009】
請求項1によれば、初段静翼列では、タービン入口の高温熱によって静翼面が高温化して乾湿が繰り返されることに起因してスケールが生成されるので、初段静翼列を支持する翼取付部に設けられる環状冷却部に冷却媒体を流して初段静翼列を冷却することで、初段静翼列の乾湿繰返しを阻止して、初段静翼列にスケールが生成されるのを防止することができる。
また、ケーシングとは別部材で構成される環状の外輪に設けられた環状冷却部は、静翼列との接続部を有さないので、製造工程も容易である。
初段静翼列を支持する外輪に設けられる環状冷却部に冷却媒体を流して初段静翼列を冷却することで、初段静翼列の乾湿繰返しを阻止して、初段静翼列にスケールが生成されるのを防止することができる。
【0010】
また、請求項2にかかる本発明では、外輪は、複数の分割体がケーシング内周側に固定されることで一体化されてなる分割外輪で構成され、分割体の内部に冷却流路がそれぞれ形成されると共に、分割体が一体化されることで分割外輪の内部に、断続的に周回する環状冷却部が形成される、ことを特徴とする。
【0011】
これにより、複数の分割体をそれぞれケーシング内周側に組み込むことで一体化する分割外輪として初段静翼列を支持することができる。そして、各分割体に形成された冷却流路を断続的に周回する環状冷却部として、環状冷却部に冷却媒体を流すことで、初段静翼列は好適に冷却される。
【0012】
また、請求項3記載の本発明では、ロータシャフトの外周に配置した複数の動翼列と、ロータシャフトを収納するケーシングの内周にそれぞれ翼取付部を介して支持される複数の静翼列とを具備する、地熱タービンであって、複数の静翼列を支持するそれぞれの翼取付部のうち、初段静翼列を支持する翼取付部の内部に、冷却水が流れる一つの冷却流路が連続的に周回する環状冷却部、若しくは冷却水が流れる複数の冷却流路によって断続的に周回する環状冷却部が設けられ、初段静翼列を支持する翼取付部は、ケーシングの内周に固定された、ケーシングとは別部材で構成される環状の外輪からなり、外輪の内部に環状冷却部が設けられ、外輪は、複数の分割体が前記ケーシング内周側に固定されることで一体化されてなる分割外輪で構成され、分割体の内部に冷却流路がそれぞれ形成されると共に、分割体が一体化されることで分割外輪の内部に、断続的に周回する前記環状冷却部が形成される、ことを特徴とする。
【0013】
これにより、初段静翼列では、タービン入口の高温熱によって静翼面が高温化して乾湿が繰り返されることに起因してスケールが生成されるので、初段静翼列を支持する翼取付部に設けられる環状冷却部に冷却媒体を流して初段静翼列を冷却することで、初段静翼列の乾湿繰返しを阻止して、初段静翼列にスケールが生成されるのを防止することができる。
また、ケーシングとは別部材で構成される環状の外輪に環状冷却部を設けることで、ケーシングに直接環状冷却部を設ける必要はなく、製造工程も容易である。
初段静翼列を支持する外輪に設けられる環状冷却部に冷却媒体を流して初段静翼列を冷却することで、初段静翼列の乾湿繰返しを阻止して、初段静翼列にスケールが生成されるのを防止することができる。
さらに、複数の分割体をそれぞれケーシング内周側に組み込むことで一体化する分割外輪として初段静翼列を支持することができる。そして、各分割体に形成された冷却流路を断続的に周回する環状冷却部として、環状冷却部に冷却媒体を流すことで、初段静翼列は好適に冷却される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、初段静翼列では、タービン入口の高温熱によって静翼面が高温化して乾湿が繰り返されることでスケールが生成されるので、初段静翼列を冷却することで、初段静翼列の乾湿繰返しを阻止して、初段静翼列にスケールが生成されるのを抑制することができる。
また、初段静翼列を支持する翼取付部に形成された環状冷却部により、静翼を間接的に好適に冷却することができる。
したがって、初段静翼列にスケール等が生成されることにより、蒸気の導入通路がスケールの成長によって閉塞されるようなことはなく、メインテナンスの負担も軽減され、維持管理等の費用も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】地熱発電システムの一例を示す全体系統説明図である。
図2図1に示す地熱発電システムに用いられる地熱タービンの一例を示す、要部断面説明図である。
図3図2に示す地熱タービンの蒸気導入側近傍の初段静翼および動翼の拡大図である。
図4図2に示すA−A線に沿って切断した、初段静翼列と初段静翼列を支える外輪および内輪の第1実施形態にかかる切断矢視図である。
図5図2に示すA−A線に沿って切断した、初段静翼列と初段静翼列を支える外輪および内輪の第2実施形態にかかる切断矢視図である。
図6図2に示すA−A線に沿って切断した、初段静翼列と初段静翼列を支える外輪および内輪の第3実施形態にかかる切断矢視図である。
図7図2に示すA−A線に沿って切断した、初段静翼列と初段静翼列を支える外輪および内輪の別の実施形態にかかる切断矢視図である。
図8】従来の地熱発電システムの一例を示す、概略系統説明図である。
図9図8に示す地熱発電システムに用いられる地熱タービンの一例を示した、要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0019】
図1に、本発明にかかる地熱タービンが用いられる地熱発電システム10の一実施形態を挙げ、添付の図面に基づいて説明する。
この地熱発電システム10は、地下深部の熱源により高温高圧の熱水を発生する生産井11と、高温高圧の熱水を地上まで導いて沸騰した熱水を、蒸気と分離させるセパレータ12と、セパレータ12で分離された熱水を戻す還元井13と、分離された蒸気により作動する地熱タービン14と、地熱タービン14に接続された発電機15と、地熱タービン14を通過した蒸気を温水化する復水器16と、温水を冷却する冷却塔17とを具備する。
【0020】
生産井11からセパレータ12へは、熱水取出し流路18を通じて熱水が取り出される。熱水取出し流路18には流量調節弁19が介在される。
【0021】
セパレータ12は例えばサイクロン型気水分離器であり、セパレータ容器上部側に蒸気、容器下部側に熱水を集めることで熱水から蒸気を分離するようにしている。セパレータ12で分離された蒸気は蒸気流路20を通じて地熱タービン14に送り込まれるようになっている。
なお、セパレータ12の容器下部側に集められた熱水は、還流路21を通じて還元井13に戻されるようになっている。
【0022】
地熱タービン14は、詳細は後述するが、例えば周知の軸流式蒸気タービンが可能である。
【0023】
復水器16は、地熱タービン14を通過した蒸気を凝縮して温水化するもので、ここでは復水器16は、蒸気を凝縮するために冷却塔17で冷却された水を用いるようにしている。
【0024】
冷却塔17には、復水器16からの温水が、復水流路22を通じて介在されるポンプ23により導入されるようになっている。
冷却塔17は、復水器16からの温水を、冷却塔17内で送風機24により強制的に送り込んだ外気と接触させて冷却するようにしている。このとき、復水は一部が蒸発することで、蒸発のための潜熱で温水は、さらに効果的に冷却される。また、冷却塔17に充填剤を配設して復水を通過させることで、外気と接触させる時間を長くして冷却するようにしてもよい。
【0025】
次に、地熱タービン14について、図2に要部を、図3に地熱タービンの蒸気導入側近傍の初段静翼および動翼の拡大図を示し、以下、説明する。
地熱タービン14は、ロータシャフト25側に突設された動翼26とケーシング27側に、翼取付部27bを介して固定された静翼28とが、多段的に交互に対向するように列設される構成としている。なお、動翼26は、ロータシャフト25の周方向に複数列設されて動翼列を構成し、また静翼28はケーシング27の内周側に翼取付部27bを介して周方向に複数列設されて静翼列を構成している。そして図2では、動翼26及び静翼28は、それぞれ動翼列、静翼例の一部として示している。そこで、以下、動翼列、静翼例をそれぞれ動翼26及び静翼28として説明する。
かかる地熱タービン14において、蒸気は、蒸気入口29から、静翼28のうち、蒸気入口29寄りの初段静翼28aを通じて導入され、多段の動翼26、静翼28間を通過して蒸気排出口(図示省略)から放出される構成としている。
【0026】
そして初段静翼28aは、初段静翼28aが固定支持される翼取付部27bの内部に、詳細は後述するが、冷却媒体が流れる一つの冷却流路が連続的に周回する環状冷却部、若しくは冷却媒体が流れる複数の冷却流路によって断続的に周回する環状冷却部30が設けられている。
蒸気入口29からの蒸気(例えば200℃以上)が初段静翼28aを接触通過することで加熱される初段静翼28aを、翼取付部27bに連続的にまたは断続的に周回する環状冷却部30に冷却水を流すことで間接的に熱交換によって冷却するようにしている。
なお、環状冷却部30に通流させる冷却水は、例えば強制循環手段(ポンプ、図示省略)を備えた水循環系統(図示省略)から供給することができる。
かかる初段静翼28aでは、タービン入口の高温熱によって静翼面が高温化して乾湿が繰り返されることでスケールが生成されるので、初段静翼28aを冷却することで、初段静翼28aの乾湿繰返しを阻止して、初段静翼28aにスケールが生成されるのを防止するようにしている。
【0027】
そこで、ケーシング27の翼取付部27bに連続的にまたは断続的に周回する環状冷却部30を形成する具体的な構造としては、以下の実施形態のように構成することができる。
(第1実施形態)
図4は、図2のA−A線で示された、初段静翼28aと初段静翼28aを支持する翼取付部27bの、切断断面を模式的に示している。
ここでは、翼取付部27bはケーシング27の内周に固定された、ケーシング27とは別部材で構成される環状の外輪27bからなる。外輪27bの内部には環状冷却部30が設けられている
また、外輪27bに支持される初段静翼列28aの内周側には内輪27iが設けられている。
そして、環状冷却部30は外輪27bに同心円状に、一回り周回する外輪環状冷却部30pとして構成されている。また、かかる外輪環状冷却部30pは、所定の位置に互いに近接配置した入口30pin、出口30poutを介して冷却水を図示しない強制循環手段を備えた水循環系統と循環させるようにしている。
【0028】
また、ケーシング27の翼取付部27bに連続的にまたは断続的に周回する環状冷却部30を形成する具体的な構造としては、以下のように構成することもできる。
(第2実施形態)
図5は、第1実施形態同様、ケーシング27の翼取付部27bは、ケーシング27の内周に固定された、ケーシング27とは別部材で構成される環状の外輪27bからなる。外輪27bの内部には環状冷却部30が設けられている。
また、外輪27bに支持される初段静翼列28aの内周側には内輪27iが設けられている。
そして、ここでは、外輪27bに、外輪環状冷却部30pが閉ループ状に形成され、外輪環状冷却部30pに、入口30pin、出口30poutが径方向に対向するように設けられ、冷却水の導入、放出を行っている。
【0029】
以上説明した、第1、第2実施形態においては、環状冷却部30が翼取付部である外輪27bに同心円状に、略一回り周回する外輪環状冷却部30pとして構成されているため、外輪環状冷却部30pを流れる冷却水と外輪27bの内側に支持された初段静翼28aとの間で満遍なく熱交換がなされる。
このため、初段静翼28aは好適に冷却され、初段静翼28aの乾湿繰返しを阻止して、初段静翼28aにスケールが生成されるのを防止することができる。
【0030】
なお、第1実施形態では、外輪27b内に形成される外輪環状冷却部30pの長さが、略一周分であり、入口30pinから流入した冷却水は外輪環状冷却部30pを略一周流れて出口30poutから流出する。外輪環状冷却部30pを略一周流れることにより、冷却水は熱交換作用により水温が上昇し、初段静翼28aに対する冷却効果が位置によって変わる。
したがって、第1実施形態の構造では、入口30pinは、最も温度が高い、地熱タービン14の蒸気入口29に近接した位置に配置することが望ましい。
【0031】
一方、第2実施形態では、径方向に対向するように配置された入口30pinから出口30poutに至るまで冷却水の流通距離は半周分であり、入口30pinから出口30poutにいくにつれ、初段静翼28aに対する冷却効果は冷却水の温度上昇が実施例1よりも緩やかでありより高くなる。
したがって、第2実施形態の構造においても、入口30pinは、最も温度が高い、地熱タービン14の蒸気入口29に近接した位置に配置することが望ましい。
【0032】
また、ケーシング27の翼取付部27bに連続的にまたは断続的に周回する環状冷却部30を形成する具体的な構造としては、以下のように構成することもできる。
(第3実施形態)
図6に示すように、ここでは、環状冷却部30は、翼取付部である外輪27bに半周毎に点対称に配置した一対の外輪環状冷却部30pと、内輪27iに周回形成した内輪環状冷却部30piとを有する。
一対の外輪環状冷却部30pは、内輪環状冷却部30piを介して連通するように接続されている。すなわち一方の外輪環状冷却部30pは、一端側に水循環系統から冷却水を取り入れる入口30pinと外輪27bの半周方向他端側に、初段静翼28aを貫通して、内輪環状冷却部30piに連結される連結路30plが設けられている。また、入口30pinに近接した位置において内輪環状冷却部30piから他方の外輪環状冷却部30pの端部に、初段静翼28aを貫通して連通する連結路30plが設けられている。そして、他方の外輪環状冷却部30pの外輪27bの半周方向末端側に冷却水を排出する出口30poutが設けられている。
【0033】
以上のような環状冷却部30を有する第3実施形態において、水循環系統から冷却水は、外輪環状冷却部30pの入口30pinから外輪環状冷却部30pに導入され、外輪環状冷却部30pを外輪27bの半周方向に沿って流れ、連結路30plに至る。
次いで、初段静翼28aを貫通する連結路30plを介して内輪環状冷却部30piに至り、内輪27i内を任意の周回方向に半周、周回して入口30pinに近接した位置において内輪環状冷却部30piから、初段静翼28aを貫通する連結路30plを介して他方の外輪環状冷却部30pの端部に至り、外輪環状冷却部30pを外輪27bの半周方向に沿って流れ、外輪環状冷却部30pの外輪27bの半周方向末端側の出口30poutに至り、冷却水を排出することができる。
【0034】
このように、第3実施形態では、環状冷却部30が、翼取付部27bである外輪27bと内輪27iに、それぞれ同心円状に周回する外輪環状冷却部30pと、内輪環状冷却部30piとして構成されたため、初段静翼28aには、冷却水による熱交換作用が外輪27bおよび内輪27iとから及ぼされ、初段静翼28aを好適に冷却することができる。
したがって、初段静翼28aにスケール等が生成されることにより、蒸気の導入通路がスケールの成長によって閉塞されるようなことはなく、メインテナンスの負担も軽減され、維持管理等の費用も抑制することができる。
【0035】
以上、本発明にかかる地熱タービンについて、第1〜第3実施形態を挙げ、それぞれ詳細に作用効果を説明した。
本発明にかかる地熱タービンは、第1〜第3実施形態に限られるものではない。
例えば、図7に示すように、外輪27bは、複数の分割体27bpがケーシング27内周側に固定されることで一体化されてなる分割外輪で構成することができる。ここでは、分割外輪27bは、4分割された分割体27bpで構成される。勿論、分割外輪27bは、4分割に限らず、2分割あるいは3分割された分割体で構成することもできる。
そして、図7では、各分割体27bpの内部に冷却流路30pdがそれぞれ形成されると共に、分割体27bpが一体化されることで分割外輪27bの内部に、断続的に周回する環状冷却部30として形成される。
【0036】
これにより、初段静翼28aは、複数の分割体27bpがケーシング27内周側に固定されることで一体化されてなる分割外輪27bで支持することができる。そして、各分割体27bpに形成された冷却流路30pdを断続的に周回する環状冷却部30として、環状冷却部30に冷却媒体を流すことで、初段静翼28aを好適に冷却することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、地熱発電用の地熱タービンに係わらず、様々な規模の、さらには、船舶用機関、水中航走体等の蒸気タービンに適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
14 地熱タービン
23 ポンプ
25 ロータシャフト
26 動翼
27 ケーシング
27i内輪
27b翼取付部(外輪、分割外輪)
27bp分割体
28 静翼
28a初段静翼
29 蒸気入口
30 環状冷却部
30p外輪環状冷却部
30pin入口
30pout出口
30pi内輪環状冷却部
30pl連結路
30pd冷却流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9