(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2ケース部材が円筒部をさらに備え、前記第2ケース部材の円筒部の内周面に他のラジアル軸受フォイルを取り付け、前記内方部材の軸部の外周面と前記他のラジアル軸受フォイルの軸受面との間のラジアル軸受隙間に生じる流体圧で前記内方部材をラジアル方向に支持する請求項1〜5の何れかに記載のフォイル軸受ユニット。
前記第1ケース部材の外周に設けられた取付部材と、前記第1ケース部材と前記取付部材とを連結する減衰材とを備え、前記減衰材の変形により、前記取付部材に対する前記第1ケース部材の移動を許容した請求項1〜6の何れかに記載のフォイル軸受ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなターボ機械において、ターボ機械に設けられたハウジングの内周面に直接フォイルを固定する作業は難しい。このため、通常、上記特許文献1及び2のように、円筒状のケースの内周にフォイルを固定したフォイル軸受カートリッジを予め形成し、このフォイル軸受カートリッジをハウジングの内周面に固定することで、組立作業の容易化を図っている。一方ハウジングの端面にフォイルを固定する作業は比較的容易であるため、上記特許文献1及び2では、ハウジングの端面にスラストフォイルが直接固定されている。
【0006】
ところで、上記のようにラジアル方向及びスラスト方向に軸を支持するフォイル軸受において、回転軸を高精度に支持するためには、ラジアル方向の支持を行うフォイル(ラジアル軸受フォイル)とスラスト方向の支持を行うフォイル(スラスト軸受フォイル)との相対的な位置関係が重要となる。このため、ラジアル軸受フォイルを取り付ける取付面とスラスト軸受フォイルを取り付ける取付面との相対的な位置精度(例えば直角度)を高精度に設定する必要がある。しかし、上記のような構成では、ラジアル軸受フォイルの取付面が軸受カートリッジのケースの内周面に設けられる一方で、スラスト軸受フォイルの取付面がハウジングの端面に設けられるため、これらの取付面の相対的な位置精度を高めるためには、各部材の高精度な加工及び組み付けが必要となり、製造コストが高くなってしまう。
【0007】
本発明は、製造コストの高騰を招くことなく、回転軸を高精度に支持可能なフォイル軸受ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、円筒部及び該円筒部から外径に延びる平板部を一体に有する第1ケース部材と、前記第1ケース部材の円筒部の内周面に取り付けられたラジアル軸受フォイルと、前記第1ケース部材の平板部の端面に取り付けられたスラスト軸受フォイルと、前記第1ケース部材の円筒部の内周に挿入される軸部、及び、前記軸部から外径に突出したフランジ部を有する内方部材とを備え、前記ラジアル軸受フォイルの軸受面と前記軸部の外周面との間のラジアル軸受隙間に生じる流体圧で前記内方部材をラジアル方向に支持すると共に、前記スラスト軸受フォイルの軸受面と前記フランジ部の一端面との間のスラスト軸受隙間に生じる流体圧で前記内方部材をスラスト方向に支持するものである。
【0009】
このように、円筒部及び平板部を一体に有する第1ケース部材に、ラジアル軸受フォイル及びスラスト軸受フォイルを取り付けることで、両軸受フォイルの取付面の相対的な位置精度、ひいては、ラジアル軸受フォイルの軸受面(ラジアル軸受面)とスラスト軸受フォイルの軸受面(スラスト軸受面)の相対的な位置精度を、各部材の加工精度や組み付け精度によらず高精度に設定することが可能となる。こうして、ラジアル軸受面及びスラスト軸受面の相対的な位置精度が高精度に設定されたフォイル軸受ユニットを作成し、このユニットをターボ機械等に組み込むことで、内方部材、ひいてはターボ機械等の回転軸を高精度に支持することができる。
【0010】
上記のフォイル軸受ユニットは、例えば、内方部材の軸部を中空のスリーブ部で構成し、このスリーブ部とフランジ部とを一体に形成することができる。このように、内方部材のスリーブ部とフランジ部とを一体に形成することにより、各軸受面と対向するスリーブ部の外周面とフランジ部の端面との相対的な位置精度が高精度に設定される。また、スリーブ部の内周面を、ターボ機械等の回転軸の外周面に嵌合固定することで、例えばフランジ部単体を回転軸の外周面に嵌合固定する場合と比べて、固定領域の軸方向寸法が大きくなる。従って、回転軸に対する内方部材の相対的な位置精度(回転軸に対するスリーブ部の同軸度やフランジ部の直角度等)を高精度に設定できる。
【0011】
上記のフォイル軸受ユニットは、例えば、前記第1ケース部材に取り付けられた平板部を有する第2ケース部材と、前記第2ケース部材の平板部の端面に取り付けられた他のスラスト軸受フォイルとをさらに備え、前記内方部材のフランジ部の他端面と前記他のスラスト軸受フォイルの軸受面との間のスラスト軸受隙間に生じる流体圧で前記内方部材をスラスト方向に支持する構成とすることができる。これにより、内方部材の回転に伴って、フランジ部の一端面と第1ケース部材に取り付けたスラスト軸受フォイルの軸受面との間、及び、フランジ部の他端面と第2ケース部材に取り付けたスラスト軸受フォイルの軸受面との間にそれぞれスラスト軸受隙間が形成され、これらのスラスト軸受隙間に生じる流体圧で、内方部材を両スラスト方向に支持することができる。また、この場合、第1及び第2ケース部材がフランジ部に軸方向両側から係合することで、第1及び第2ケース部材(軸受ケース)からの内方部材の抜けを規制できるため、軸受ケース及び内方部材を一体的に取り扱うことが可能となり、フォイル軸受ユニットのターボ機械等への組み付け性が向上する。
【0012】
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との軸方向間にスペーサを設ければ、両ケース部材の軸方向距離をスペーサで高精度に設定することができる。これにより、各ケース部材に取り付けられたスラスト軸受フォイルの軸受面とフランジ部の端面との間のスラスト軸受隙間の大きさを高精度に設定でき、スラスト方向の支持精度を高めることができる。
【0013】
例えば、上記のフォイル軸受ユニットが、高温のガスでタービンが駆動されるターボ機械に組み込まれる場合、タービン付近に配されたフォイル軸受ユニットが高温となる。この場合、上記のスペーサの内周と外周とを連通する連通孔を設ければ、フランジ部の回転に伴う遠心力により、軸受ケースの内部の流体を連通孔を介して外部に排出することができる。これにより、軸受ケースの内部の高温の空気を排出すると共に、外部から低温の空気を導入することができるため、軸受ケース内部の空気、ひいてはフォイル軸受ユニット自体を冷却することができる。特に、前記スリーブ部の内周面と、この内周面に固定される回転軸の外周面との間に、前記ラジアル軸受隙間と外部とを連通する連通路を形成すれば、外部の空気をラジアル軸受隙間に積極的に導入することができ、冷却効果が高まる。
【0014】
上記のフォイル軸受ユニットは、第2ケース部材の内周面に他のラジアル軸受フォイルを取り付け、前記軸部の外周面と前記他のラジアル軸受フォイルの軸受面との間のラジアル軸受隙間に生じる流体圧で前記内方部材をラジアル方向に支持する構成とすることができる。これにより、フランジ部の軸方向両側にラジアル軸受隙間が設けられるため、フランジ部が大径である場合であっても内方部材を安定的に支持することができる。
【0015】
前記第1ケース部材の外周に設けられた取付部材と、前記第1ケース部材と前記取付部材とを連結する減衰材とを備え、前記減衰材の変形により、前記取付部材に対する前記第1ケース部材の移動を許容した構成とすれば、フォイル軸受ユニットの振動を減衰材の変形により吸収することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明のフォイル軸受ユニットによれば、製造コストの高騰を招くことなく、回転軸を高精度に支持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に、ターボ機械の一種であるガスタービンの構成を概念的に示す。このガスタービンは、翼列を形成したタービン1および圧縮機2と、発電機3と、燃焼器4と、再生器5とを主に備える。タービン1、圧縮機2、および発電機3には、水平方向に延びる共通の回転軸6が設けられ、この回転軸6と、タービン1および圧縮機2とで一体回転可能のロータが構成される。吸気口7から吸入された空気は、圧縮機2で圧縮され、再生器5で加熱された上で燃焼器4に送り込まれる。この圧縮空気に燃料を混合して燃焼させ、高温、高圧のガスでタービン1を回転させる。タービン1の回転力が回転軸6を介して発電機3に伝達され、発電機3が回転することにより発電し、この電力がインバータ8を介して出力される。タービン1を回転させた後のガスは比較的高温であるため、このガスを再生器5に送り込んで燃焼前の圧縮空気との間で熱交換を行うことで、燃焼後のガスの熱を再利用する。再生器5で熱交換を終えたガスは、排熱回収装置9を通ってから排ガスとして排出される。
【0020】
図2〜
図4に、上記ガスタービンにおけるロータの回転軸6を支持するフォイル軸受ユニット100を示す。フォイル軸受ユニット100は、ガスタービンのハウジング10の内周に固定される。フォイル軸受ユニット100は、回転軸6に固定された内方部材20と、内方部材20を収容する軸受ケース30と、軸受ケース30に取り付けられたラジアル軸受フォイル40及びスラスト軸受フォイル50とを備える。
【0021】
内方部材20は、軸部(本実施形態では、中空のスリーブ部21)と、スリーブ部21の円筒面状の外周面21aから外径に突出した円盤状のフランジ部22とを備える。本実施形態では、スリーブ部21及びフランジ部22が一体に形成され、例えば、溶製材に切削加工や鍛造加工を施すことにより、あるいは、焼結金属で一体成形することにより形成される。図示例では、スリーブ部21の圧縮機2側(
図3の左側)の軸方向端部にフランジ部22が設けられる。スリーブ部21の内周面21bには、回転軸6の外周面が嵌合固定される。
【0022】
軸受ケース30は、第1ケース部材31と、第2ケース部材32とを備える。第1ケース部材31は、円筒部31aと、円筒部31aの圧縮機2側(
図3の左側)の軸方向端部から外径に延びる平板部31bとを一体に備える。図示例では、軸方向と直交する円盤で第1ケース部材31の平板部31bが構成される。第2ケース部材32は平板部を備え、図示例では軸方向と直交する円盤で第2ケース部材32が構成される。第1ケース部材31は、溶製材に切削加工や鍛造加工を施すことにより、あるいは、焼結金属で一体成形することにより形成される。第1ケース部材31の円筒部31aの内周面31cには、ラジアル軸受フォイル40(
図3では点線で示す)が取り付けられる。第1ケース部材31の平板部31bの端面31d及び第2ケース部材32の端面32aには、それぞれスラスト軸受フォイル50(
図3では点線で示す)が取り付けられる。
【0023】
第1ケース部材31の円筒部31aの内周面31cには、
図5に示すように、ラジアル軸受フォイル40を取り付けるための溝31eが形成される。溝31eは、円筒部31aの内周面31cの軸方向全長にわたって延び、円周方向等間隔の複数箇所(図示例では3箇所)に設けられる。
【0024】
ラジアル軸受フォイル40は、例えば、複数枚(図示例では3枚)のフォイル41で構成される。これらのフォイル41は、第1ケース部材31の内周面31cに円周方向に並べた状態で取り付けられる。各フォイル41の内径側の面は、ラジアル軸受面41aとして機能する。図示例では、3枚のフォイル41で多円弧型のラジアル軸受面を形成している。第1ケース部材31の内周面31cと各フォイル41との間には、フォイル41に弾性を付与するための部材(例えばバックフォイル)は設けられておらず、フォイル41の外径面41bと第1ケース部材31の内周面31cとが半径方向で直接対向している。
【0025】
各フォイル41は、一枚の金属フォイルにプレス加工を施すことにより一体に形成される。各フォイル41は、
図6(A)に示すように、周方向一端に設けられた凸部41cと、周方向他端に設けられた凹部41dとを備える。各フォイル41の凸部41cと凹部41dとは、軸方向で同じ位置に設けられる。これにより、
図6(B)に示すように、各フォイル41の凸部41cを、隣接するフォイル41の凹部41dに嵌め込むことで、3枚のフォイル41を筒状に仮組みすることができる。
図5に示すように、各フォイル41の周方向他端の凸部41eは、第1ケース部材31の内周面31cに設けられた溝31eに差し込まれる。各フォイル41の周方向一端の凸部41cは、隣接するフォイル41の外径面41bと第1ケース部材31の内周面31cとの間に配される。以上により、各フォイル41の周方向両端が、第1ケース部材31に接触した状態で保持される。
【0026】
スラスト軸受フォイル50は、例えば、複数枚のフォイル51で構成され、第1ケース部材31の平板部31bの端面31d、及び、第2ケース部材32の端面32aにそれぞれリング状の固定部材33により取り付けられる(
図3及び
図4参照)。各フォイル51は、
図7に示すように、本体部51aと、各ケース31,32の端面31d,32aに固定される固定部51bとを一体に備える。本体部51aの回転方向先行側の縁51c及び回転方向後方側の縁51dは、何れも中央部を回転方向先行側へ突出した略V字形状を成している。各縁51c,51dの中央部は、円弧状に丸まっている。各フォイル51の固定部51bは、外径側を回転方向後方側(
図8の矢印と反対側)に傾斜させた方向へ延びている。各スラスト軸受フォイル50において、複数のフォイル51の固定部51bは同一円周上に配され、リング状の固定部材33と各ケース部材31,32の端面31d,32aとで挟持固定される。
【0027】
スラスト軸受フォイル50を構成する複数のフォイル51は、
図8(A)(B)に示すように、第1ケース部材31の端面31d、及び、第2ケース部材32の端面32aに円周方向等ピッチで配される。
図9に示すように、各フォイル51の回転方向先行側の縁51cは、隣接するフォイル51の上(フランジ部22側)に配される。すなわち、各フォイル51の回転方向先行側部分は、隣接するフォイル51の回転方向後方側部分に乗り上げている。各フォイル51のうち、フランジ部22の端面22a,22bと直接対向している部分(
図8で見えている部分)は、スラスト軸受面51eとして機能する。
【0028】
フォイル41,51は、ばね性に富み、かつ加工性のよい金属、例えば鋼材料や銅合金からなる厚さ20μm〜200μm程度の金属フォイルで形成される。本実施形態のように流体膜として空気を用いる空気動圧軸受では、雰囲気に潤滑油が存在しないため、油による防錆効果は期待できない。鋼材料や銅合金の代表例として、炭素鋼や黄銅を挙げることができるが、一般的な炭素鋼では錆による腐食が発生し易く、黄銅では加工ひずみによる置き割れを生じることがある(黄銅中のZnの含有量が多いほどこの傾向が強まる)。そのため、金属フォイルとしては、ステンレス鋼もしくは青銅製のものを使用するのが好ましい。
【0029】
上記構成のフォイル軸受ユニット100は、以下のような手順で組み立てられる。
【0030】
まず、ラジアル軸受フォイル40を仮組みし{
図6(B)参照}、これを第1ケース部材31の内周面31cに取り付ける。具体的には、仮組みしたラジアル軸受フォイル40の各フォイル41の凸部41eを、第1ケース部材31の内周面31cに設けられた溝31eに軸方向一方側から差し込みながら、ラジアル軸受フォイル40を第1ケース部材31の内周に挿入する。
【0031】
そして、スラスト軸受フォイル50を、第1ケース部材31の端面31d、及び、第2ケース部材32の端面32aに取り付ける。具体的には、まず、
図10(A)に示すように、1枚の金属フォイルを切断して得られた複数のフォイル51からなるフォイル群を2組用意する(
図10では、理解しやすいように、一方のフォイル群に散点を付している。)。この2組のフォイル群を、各フォイルの半分だけ位相をずらして重ね合わせ{
図10(B)参照}、各フォイル51の回転方向先行側の縁51cを、隣接するフォイル51の上に重ねる。この状態で、各フォイル51の固定部51bを、第1ケース部材31の平板部31bの端面31dとリング状の固定部材33とで挟持することで、スラスト軸受フォイル50が第1ケース部材31に取り付けられる{
図8(A)参照}。同様に、各フォイル51の固定部51bを、第2ケース部材32の端面32aとリング状の固定部材33とで挟持することで、スラスト軸受フォイル50が第2ケース部材32に取り付けられる{
図8(B)参照}。尚、フォイル51の固定部51bを、第1ケース部材31の平板部31bの端面31dや第2ケース部材32の端面32a、あるいはリング状の固定部材33に、接着もしくは溶接してもよい。
【0032】
次に、第1ケース部材31に取り付けたラジアル軸受フォイル40の内周に、内方部材20のスリーブ部21を挿入する。その後、内方部材20のフランジ部22を軸方向両側から挟み込むように、第2ケース部材32を第1ケース部材31に取り付ける。具体的に、第1ケース部材31に取り付けた固定部材33と、第2ケース部材32に取り付けた固定部材33とを当接させ、この状態で、図示しないボルト等で両ケース部材31,32を軸方向に固定する。このとき、
図3に示すように、両固定部材33に設けた軸方向穴に、共通の位置決めピン34を嵌合させることで、両固定部材33の軸直交方向の位置決め、ひいては、両ケース部材31,32の軸直交方向の位置決めが行われる。
【0033】
以上により、フォイル軸受ユニット100が完成する。このフォイル軸受ユニット100は、軸受ケース30の内部に内方部材20が収容され、且つ、第1ケース部材31及び第2ケース部材32とフランジ部22とが軸方向で係合することで、軸受ケース30からの内方部材20の抜け止めが行われる。これにより、フォイル軸受ユニット100を一体的に取り扱うことができるため、ガスタービンへのハウジング10への組み付け性が向上する。
【0034】
以上の構成において、回転軸6を円周方向一方(
図5及び
図8の矢印方向)に回転させると、ラジアル軸受フォイル40の軸受面41aと内方部材20のスリーブ部21の外周面21aとの間のラジアル軸受隙間に空気膜が形成され、この空気膜の圧力により内方部材20及び回転軸6がラジアル方向に支持される。これと同時に、第1ケース部材31に取り付けられたスラスト軸受フォイル50の軸受面51eと内方部材20のフランジ部22の一方の端面22aとの間のスラスト軸受隙間、及び、第2ケース部材32に取り付けられたスラスト軸受フォイル50の軸受面51eと内方部材20のフランジ部22の他方の端面22bとの間のスラスト軸受隙間に、それぞれ空気膜が形成される。この空気膜の圧力により、内方部材20及び回転軸6が両スラスト方向に支持される。
【0035】
また、回転軸6が回転すると、回転軸6との摩擦及び空気の粘性により、ラジアル軸受フォイル40の各フォイル41は回転方向先行側(
図5の矢印方向)に回転しようとする。このとき、各フォイルの回転方向先行側の端部(凸部41e)が溝31eの角部に突き当たることで、各フォイル41の移動が規制される。これにより、
図11に示すように、各フォイル41の回転方向先行側の端部(凸部41e)が溝31eの内部で湾曲し、軸受面41aが内径側に凸となるように湾曲する。そして、ラジアル軸受隙間の空気膜の圧力が高まると、ラジアル軸受フォイル40の各フォイル41が外径側に押し込まれて弾性変形する。このときのフォイル41の弾性力と、ラジアル軸受隙間に形成される空気膜の圧力とが釣り合う位置で、フォイル41の形状が保持される。また、回転軸6の回転に伴ってスラスト軸受隙間の空気膜の圧力が高まると、スラスト軸受フォイル50の各フォイル51が第1及び第2ケース部材31,32側に押し込まれて弾性変形する(
図9参照)。このときのフォイル51の弾性力と、スラスト軸受隙間に形成される空気膜の圧力とが釣り合う位置で、フォイル51の形状が保持される。
【0036】
このとき、フォイル41,51が有する可撓性により、各フォイル41,51の軸受面41a,51eが、荷重や回転軸6の回転速度、周囲温度等の運転条件に応じて任意に変形するため、ラジアル軸受隙間及びスラスト軸受隙間は運転条件に応じた適切幅に自動調整される。そのため、高温・高速回転といった過酷な条件下でも、ラジアル軸受隙間及びスラスト軸受隙間を最適幅に管理することができ、内方部材20及び回転軸6を安定して支持することが可能となる。
【0037】
また、一体に形成された第1ケース部材31にラジアル軸受フォイル40及び一方のスラスト軸受フォイル50を取り付けることで、各軸受フォイル40,50が取り付けられる取付面(円筒部31aの内周面31c及び平板部31bの端面31d)の相対的な位置精度(直角度等)を高精度に設定できる。これにより、各軸受フォイル40,50の軸受面41a,51eの相対的な位置精度、ひいてはラジアル軸受隙間及びスラスト軸受隙間が高精度に設定されるため、内方部材20及び回転軸6を高精度に支持することができる。特に、本実施形態では、内方部材20のスリーブ部21及びフランジ部22が一体に形成されているため、第1ケース部材31に取り付けられた軸受フォイル40,50と対向する面(スリーブ部21の外周面21a及びフランジ部22の一方の端面22a)の相対的な位置精度も高精度に設定される。これにより、ラジアル軸受隙間及びスラスト軸受隙間の精度がさらに高められ、内方部材20及び回転軸6の支持精度がさらに高められる。
【0038】
また、本実施形態では、第1ケース部材31と第2ケース部材32との軸方向間に、固定部材33,33が設けられる。この場合、固定部材33,33が、第1ケース部材31の端面31dと第2ケース部材32の端面32aとの軸方向距離を決定するスペーサとして機能し、これらの軸方向距離が高精度に設定される。これにより、第1ケース部材31の端面31dと内方部材20のフランジ部22の一方の端面22aとの間のスラスト軸受隙間、及び、第2ケース部材32の端面32aと内方部材20のフランジ部22の他方の端面22bとの間のスラスト軸受隙間を高精度に設定することが可能となり、回転軸6のスラスト方向の支持精度を高めることができる。尚、本実施形態では、第1ケース部材31及び第2ケース部材32のそれぞれに固定部材33を設けたが、フォイル51の固定部51bを第1ケース部材31の平板部31bの端面31dおよび第2ケース部材32の端面32aに溶接などの方法でそれぞれ一体に接合した場合は、固定部材33は1個であってもよい。その場合、スラスト軸受すきまは1個の固定部材33の軸方向寸法のみで定めることができる。
【0039】
尚、回転軸6の停止直前や起動直後の低速回転時には、各フォイル41,51の軸受面41a,51eと内方部材20が接触摺動するため、これらの何れか一方または双方に、DLC膜、チタンアルミナイトライド膜、あるいは二硫化モリブデン膜等の低摩擦化被膜を形成してもよい。また、軸受の運転中は、フォイル41,51と各ケース部材31,32との間で微小摺動が生じるため、これらの何れか一方または双方に、上記のような低摩擦化被膜を形成してもよい。
【0040】
本発明は、上記の実施形態に限られない。
図12に示す実施形態では、固定部材33に半径方向の連通孔33aが設けられる。これにより、回転軸6及び内方部材20の回転に伴って、スラスト軸受隙間の空気が遠心力で外径側に流動し、連通孔33aから外部に排出される。このとき、第1ケース部材31とフランジ部22との間のスラスト軸受隙間の空気が連通孔33aから外部に排出されることで、これと連通したラジアル軸受隙間の空気がスラスト軸受隙間を介して連通孔33aから外部に排出される。フォイル軸受ユニット100は、タービン1側が高温となるため、タービン1に近接したラジアル軸受隙間の空気を外部に排出することで、軸受ケース30の内部の空気を冷却することができる。
【0041】
また、本実施形態では、ラジアル軸受隙間のタービン側の端部と、フォイル軸受ユニット100の圧縮機2側の空間とを連通する連通路60を設けている。具体的には、内方部材20の内周面21bに軸方向溝21cを設けると共に、内方部材20のタービン1側の端面に半径方向溝21dを設け、これらの軸方向溝21c及び半径方向溝21dで連通路60が形成される。これにより、回転軸6の回転によりスラスト軸受隙間の空気が連通孔33aから外部に排出されることで、連通路60を介して、圧縮機2側の空気がラジアル軸受隙間のタービン1側の端部から導入される。圧縮機2側の空気は、タービン1側の空気と比べてはるかに低温であるため、圧縮機2側の空気をラジアル軸受隙間に導入することで、フォイル軸受ユニット100を効率良く冷却することが可能となる。
【0042】
図13に示す実施形態では、軸受ケース30の外周に取付部材70が設けられると共に、これらが減衰材80を介して連結される。取付部材70の外周面が、ガスタービンのハウジング10に取り付けられる。図示例では、取付部材70が円筒状とされ、取付部材70の内周面71と軸受ケース30の外周面31fとが減衰材80を介して連結される。減衰材80は、例えばワイヤメッシュ、高粘度油、樹脂、ゴム等を使用できる。取付部材70と軸受ケース30との間にはOリング90が配される。Oリング90により、取付部材70に対する軸受ケース30の半径方向の移動が規制される。軸受ケース30は、減衰材80を変形させることにより、取付部材70に対する周方向及び軸方向の移動が許容される。これにより、軸受ケース30に振動が生じた場合、軸受ケース30の振動を減衰材80の変形で吸収することで、振動を減衰させることができる。
【0043】
図14に示す実施形態では、内方部材20のスリーブ部21の軸方向中間部(図示例では軸方向中央部)にフランジ部22が設けられると共に、第2ケース部材32に、円筒部32b及び円盤状の平板部32cを一体に設ける。第2ケース部材32の円筒部32bの内周面32dには、ラジアル軸受フォイル40が取り付けられる。これにより、フランジ部22の軸方向両側にラジアル軸受隙間が設けられるため、回転軸6の振れ回りに伴うモーメント力に対する支持力を高めることができる。特に、フランジ部22を大径化した場合(例えば、フランジ部22の直径が、スリーブ部21の軸方向長さよりも大きい場合)、上記のモーメント力が大きくなるため、本実施形態の構成が有効となる。
【0044】
以上の実施形態では、ラジアル軸受フォイル40を多円弧軸受で構成した場合を示したが、これに限らず、各フォイルの周方向一端を軸受ケース30の内周面に取り付けると共に、各フォイルの周方向他端を自由端とした、いわゆるリーフ型のラジアル軸受フォイルや、円筒状のトップフォイルの外径に波型のバックフォイルを配した、いわゆるバンプフォイル型のラジアル軸受フォイルを使用してもよい。
【0045】
また、以上の実施形態では、スラスト軸受フォイル50が、各フォイル51の外径端に設けられた固定部51bを軸受ケース30に固定した場合を示したが、これに限らず、各フォイル51の周方向一端を軸受ケース30に取り付け、周方向他端を自由端としてもよい。
【0046】
本発明にかかるフォイル軸受ユニット100の適用対象は、上述したガスタービンに限られず、例えば過給機のロータを支持する軸受としても使用することができる。過給機は、
図15に示すように、エンジン103で生じた排気ガスでタービン101を駆動し、その駆動力で圧縮機102を回転させて吸入エアを圧縮し、エンジン103のトルクアップや効率改善を図るものである。タービン101、圧縮機102、および回転軸6でロータが構成され、回転軸6を支持する軸受として、上記各実施形態のフォイル軸受ユニット100を使用することができる。
【0047】
本発明にかかるフォイル軸受は、ガスタービンや過給機等のターボ機械に限らず、潤滑油などの液体による潤滑が困難である、エネルギー効率の観点から潤滑油循環系の補機を別途設けることが困難である、あるいは液体のせん断による抵抗が問題になる等の制限下で使用される自動車等の車両用軸受、さらには産業機器用の軸受として広く使用することが可能である。
【0048】
また、以上に説明した各フォイル軸受は、圧力発生流体として空気を使用した空気動圧軸受であるが、これに限らず、圧力発生流体としてその他のガスを使用することもでき、あるいは水や油などの液体を使用することもできる。