(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0018】
(1)多孔質材料:
本発明の多孔質材料の一の実施形態は、Ti
3SiC
2(チタンシリコンカーバイド)の含有量が50質量%以上であり、金属Tiの含有量及びTiCの含有量の合計がTi
3SiC
2の含有量を100質量部としたときに6質量部以下である。
【0019】
このように、本実施形態の多孔質材料は、Ti
3SiC
2を50質量%以上含有し、金属Tiの含有量及びTiCの含有量の合計が、Ti
3SiC
2の含有量を100質量部としたときに6質量部以下である。そのため、耐熱衝撃性に優れたものである。これは、Ti
3SiC
2が高い強度を有するが一つの要因である。更に、「金属Tiの含有量及びTiCの含有量の合計が、Ti
3SiC
2の含有量を100質量部としたときに、6質量部以下」であることにより、金属Ti及びTiCの酸化による強度低下が、抑制されることが要因である。また、本発明の多孔質材料は、耐熱衝撃性に優れるため、PM再生時のPMの堆積量を増大させることができ、効率よく再生でき、燃費が向上する。
【0020】
本実施形態の多孔質材料は、1〜50質量%のSiC(炭化珪素)を含有
するものであり、2〜50質量%のSiCを含有していること
が好ましく、10〜50質量%のSiCを含有していることが特に好ましい。本実施形態の多孔質材料は、SiCを1〜50質量%含有することにより、熱伝導率が増加すると共に、熱膨張係数が低下し、耐熱衝撃性が大幅に向上する。ここで、例えば、SiCの含有量が1〜50質量%の範囲の場合、Ti
3SiC
2の含有量は50〜99質量%の範囲となる。また、Ti
3SiC
2質セラミックスは、耐クラック性(強度)に優れているが、熱伝導率が低く、熱膨張係数が高いものである。耐熱衝撃性は、「耐熱衝撃性=(熱伝導率)×(強度/ヤング率比)×(熱容量)/(熱膨張係数)」の式で示されるように、熱伝導率及び強度に比例し、熱膨張係数に反比例するという性質を有する。そのため、Ti
3SiC
2質セラミックスは、強度に優れているにもかかわらず、熱伝導率の低さ及び熱膨張係数の高さによって、十分に高い耐熱衝撃性を有するまでには至っていない。これに対し、上記のようにTi
3SiC
2質セラミックスと所定量の炭化珪素とを含有する多孔質材料は、粒子分散強化により更に強度が向上し、熱伝導率が大きくなると共に、熱膨張係数が低下することにより、耐熱衝撃性が大幅に向上したものである。そのため、Ti
3SiC
2質セラミックスと所定量の炭化珪素とを含有する多孔質材料は、Ti
3SiC
2質セラミックスよりも更に高い耐熱衝撃性を有する材料であるということができる
。SiCの含有量が1質量%未満であると、強度の向上が不十分である。またTi
3SiC
2が反応し難く、金属Tiの含有量及びTiCの含有量の合計が多くなることがある。また、SiCの含有量が50質量%を超えると、高い焼結温度が必要となることがある。
【0021】
本実施形態の多孔質材料は、気孔率が25〜70%であることが好ましく、40〜65%であることが更に好ましく、40〜60%であることが特に好ましい。25%未満であると、圧力損失が大きくなることがある。70%より大きいと、強度が低くなることがある。
【0022】
本実施形態の多孔質材料は、平均細孔径が10〜40μmであることが好ましく、15〜35μmであることが更に好ましく、15〜25μmであることが特に好ましい。10μmより小さいと、圧力損失が大きくなることがある。40μmより大きいと、本発明の多孔質材料をDPF等として用いたときに、排ガス中の粒子状物質の一部が捕集されずにDPF等を透過することがある。
【0023】
本実施形態の多孔質材料は、細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%以下であり、細孔径40μmを超える細孔が細孔全体の10%以下であることが好ましい。細孔径10μm未満の細孔が細孔全体の20%を超えると、細孔径10μm未満の細孔は触媒を担持する際に詰まり易いため、圧力損失が増大し易くなることがある。細孔径40μmを超える細孔が細孔全体の10%を超えると、細孔径40μmを超える細孔は粒子状物質が通過し易いため、DPF等のフィルター機能を十分に発揮し難くなることがある。
【0024】
本実施形態の多孔質材料は、Ti
3SiC
2結晶の平均粒子径が1〜100μmであることが好ましく、5〜100μmであることが更に好ましく、10〜40μmであることが特に好ましい。1μmより小さいと、焼成収縮量が大きくなり、焼成体の気孔率が25%未満となることがある。また焼成体中の10μm未満の細孔が細孔全体の20%超となることがある。100μmより大きいと、焼成体中の40μmを超える細孔が細孔全体の10%以上となることがある。さらに、ハニカム構造体を成形する場合には、口金の目詰まりの原因となり成形不良を起こすことがある。
【0025】
本実施形態の多孔質材料は、曲げ強度(強度)が6MPa以上であることが好ましく、7MPa以上であることが更に好ましく、10MPa以上であることが特に好ましく、13MPa以上であることが最も好ましい。また、曲げ強度は強いほど好ましいが、気孔率50%における本実施形態の多孔質材料においては18MPa程度が上限となる。但し、気孔率25%においては、84MPa程度が上限となる。曲げ強度は、JIS R 1601に準拠した曲げ試験によって得られた値である。曲げ強度が5MPaより小さいと、耐熱衝撃性が低下することがある。
【0026】
本実施形態の多孔質材料は、「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」が1.4×10
−3以上であることが好ましい。「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」が1.5×10
−3以上であることが更に好ましい。曲げ強度及び「曲げ強度(Pa)/ヤング率(Pa)比」を上記範囲とすることにより、多孔質材料の耐熱衝撃性を向上させることができる。ヤング率は以下の方法で得ることができる。上記「曲げ強度」の測定方法を用いて「応力−歪曲線」を作成し、当該「応力−歪曲線」の傾きを算出する。そして、得られた「応力−歪曲線の傾き」をヤング率とする。
【0027】
本実施形態の多孔質材料は、40〜800℃の線熱膨張係数が、8.6×10
−6/K以下であることが好ましい。そして、40〜800℃の線熱膨張係数は、8.3×10
−6/K以下であることが更に好ましく、6.7×10
−6/K以下であることが特に好ましい。8.6×10
−6/Kより大きいと、耐熱衝撃性が低下することがある。尚、線熱膨張係数は小さいほど好ましいが、本発明の構成上、6.7×10
−6/Kが下限となる。本明細書において、熱膨張係数は、JIS R 1618に準拠する方法で、測定した値である。
【0028】
本実施形態の多孔質材料は、熱伝導率が、14W/mK以上であることが好ましく、18W/mK以上であることが更に好ましく、36W/mK以上であることが特に好ましい。14W/mKより低いと、耐熱衝撃性が低下することがある。
【0029】
(2)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体は、上述した本発明の多孔質材料により構成され、「一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセル」を区画形成する隔壁、を備えたものである。上記セルは、流体の流路となるものである。また、ハニカム構造体は、最外周に位置する外周壁を有する構造であることが好ましい。隔壁の厚さの下限値は、30μmが好ましく、50μmが更に好ましい。隔壁の厚さの上限値は、1000μmが好ましく、500μmが更に好ましく、350μmが特に好ましい。セル密度の下限値は、10セル/cm
2が好ましく、20セル/cm
2が更に好ましく、50セル/cm
2が特に好ましい。セル密度の上限値は、200セル/cm
2が好ましく、150セル/cm
2が更に好ましい。
【0030】
ハニカム構造体の形状としては、特に限定されず、円筒状、底面が多角形(三角形、四角形、五角形、六角形等)の筒状等を挙げることができる。
【0031】
ハニカム構造体のセルの形状は、特に限定されない。例えば、セルの延びる方向に直交する断面におけるセル形状としては、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)、円形、またはこれらの組み合わせ等を挙げることができる。
【0032】
ハニカム構造体の大きさは、用途に合わせて適宜決定することができる。本発明のハニカム構造体は、本発明の多孔質基材によって構成されているため、耐熱衝撃性に優れるものである。そのため、ハニカム構造体の大きさを大きくすることが可能である。そして、ハニカム構造体の大きさの下限値としては、例えば、10cm
3程度とすることができる。ハニカム構造体の大きさの上限値としては、例えば、2.0×10
4cm
3程度とすることができる。
【0033】
本発明のハニカム構造体は、触媒担体として用いることができる。
【0034】
(3)ハニカムフィルタ:
本発明のハニカムフィルタの一実施形態は、本発明のハニカム構造体を備え、一方の端面における所定のセルの開口部及び他方の端面における残余のセルの開口部、に配設された目封止部を備えるものである。
【0035】
本発明のハニカムフィルタは、DPFとして用いることができる。また、DPFに触媒を担持することも好ましい態様である。本発明のハニカムフィルタをDPF等として使用する場合には、以下のような構造であることが好ましい。すなわち、本発明のハニカムフィルタの両端面において、目封止部を有するセルと目封止部を有さないセルとが交互に配置され、市松模様が形成されていることが好ましい。各セルは、片方の端部に目封止部が備えられ、残りの片方の端部に目封止部が備えられていないことが好ましい。但し、両端部に目封止部が備えられていないセルや、両端部に目封止部が備えられているセルが、一部に存在してもよい。ハニカム構造体に目封止部を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0036】
(4)多孔質材料(ハニカム構造体)の製造方法:
本発明の多孔質材料の製造方法について、以下に説明する。以下に説明する多孔質材料の製造方法は、多孔質材料によって構成される「ハニカム構造体」を、製造する方法でもある。
【0037】
まず、セラミック原料に、必要に応じて、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、成形原料を作製することが好ましい。セラミック原料は、チタニウム源原料、珪素源原料及び炭素源原料を含むものであることが好ましい。チタニウム源原料としては、金属チタン粉末、TiH
2粉末等を挙げることができる。珪素源原料としては、金属珪素粉末等を挙げることができる。炭素源原料としては、炭素粉末、フェノール樹脂等を挙げることができる。フェノール樹脂は、熱分解により炭素となるものである。また、それぞれが化合して得られる物質、例えば、炭化珪素粉末等を用いることができる。炭化珪素粉末は、炭素源原料であると共に珪素源原料でもある。セラミック原料を上記のような原料とすることにより、比較的安価に本発明の多孔質材料を得ることができる。
【0038】
セラミック原料からTi
3SiC
2を合成する際に、Ti
3SiC
2の形成に使用されない珪素と炭素の合計量(理論量)が、合成されるTi
3SiC
2の量を100質量部としたときに1質量部以上になるように、セラミック原料を調製することが好ましい。これにより、製造される多孔質材料の「金属Tiの含有量及びTiCの含有量の合計」を5質量%以下にすることができる。
【0039】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダを挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して2〜10質量%であることが好ましい。
【0040】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0041】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径の下限値は10μmであることが好ましい。また、造孔材の平均粒子径の上限値は30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、口金を用いた押出成形をする場合において、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。尚、造孔材が吸水性樹脂の場合、平均粒子径は、吸水後の値である。
【0042】
水の含有量は、成形しやすい坏土硬度となるように適宜調整されるが、成形原料全体に対して20〜80質量%であることが好ましい。
【0043】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0044】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体(成形体)を形成することが好ましい(成形工程)。押出成形には、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとするハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0045】
こうして得られたハニカム成形体について、焼成前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0046】
次に、ハニカム成形体のセルの延びる方向における長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0047】
次に、ハニカム成形体(成形体)を焼成して、ハニカム構造体(多孔質材料)を作製することが好ましい(焼成工程)。焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼を行うことが好ましい。仮焼は、大気雰囲気において、200〜600℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。焼成は、窒素、アルゴン等の非酸化雰囲気(不活性雰囲気)下(酸素分圧は10
−4気圧以下)で行うことが好ましい。これらの中でもアルゴン雰囲気下であることが好ましい。焼成温度は1250〜1800℃であることが好ましく、1300〜1750℃であることが更に好ましく、1350〜1700℃であることが特に好ましい。焼成温度が1250℃未満であると、焼結が十分に進行しない場合がある。一方、焼成温度が1800℃超であると、特殊な焼成炉が必要となる場合があるとともに、コストや製造歩留まりの面で不利になる傾向にある。焼成時の圧力は常圧であることが好ましい。焼成時間の下限値は、1時間であることが好ましい。焼成時間の上限値は、20時間であることが好ましい。このように、成形体を不活性雰囲気にて所定温度で焼成して多孔質材料を作製する工程が焼成工程である。また、焼成後、耐久性向上のために、大気中(水蒸気を含んでいてもよい)で、酸化処理を行ってもよい。酸化処理の温度の下限値は900℃であることが好ましい。酸化処理の温度の上限値は1400℃であることが好ましい。酸化処理の時間の下限値は、1時間であることが好ましい。酸化処理の時間の上限値は、20時間であることが好ましい。なお、仮焼及び焼成は、例えば、電気炉、ガス炉等を用いて行うことができる。
【0048】
本発明のハニカムフィルタ(目封止部を備えるハニカム構造体)を作製する際には、ハニカム成形体又はハニカム構造体に目封止材料を充填し、焼成して、ハニカムフィルタを得ることが好ましい。更に具体的には、以下のようにすることが好ましい。
【0049】
ハニカム成形体に目封止材料を充填する際には、まず、乾燥後のハニカム成形体の一方の端面側に目封止材料を充填する。一方の端面側に目封止材料を充填する方法としては、ハニカム成形体の一方の端面にシートを貼り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル」と重なる位置に孔を開けるマスキング工程と、「ハニカム成形体の、シートが貼り付けられた側の端部」を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、目封止材料をハニカム成形体のセル内に圧入する圧入工程と、を有する方法を挙げることができる。目封止材料をハニカム成形体のセル内に圧入する際には、目封止材料は、シートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルのみに充填される。
【0050】
目封止材料は、上記多孔質材料用原料の構成要素として挙げた原料を適宜混合して作製することができる。
【0051】
次に、ハニカム成形体の他方の端面に、上記方法と同様にして目封止材料を充填することが好ましい。このとき、ハニカム成形体の両端面に、セル開口部と目封止材料とにより市松模様が形成されていることが好ましい。また、各セルは、片方の端部のみに目封止材料が充填されていることが好ましい。但し、両端部に目封止部が備えられていないセルや、両端部に目封止部が備えられているセルが、一部に存在してもよい。
【0052】
次に、ハニカム成形体に充填された目封止材料を乾燥させることが好ましい。そして、上記のように、ハニカム成形体を焼成して、ハニカムフィルタ(目封止部を備えたハニカム構造体)を作製することが好ましい。
【0053】
また、ハニカム構造体に目封止部を形成する方法としては、上記、ハニカム成形体に目封止材料を充填してハニカムフィルタを作製する方法と、同様の方法を用いることが好ましい。つまり、ハニカム構造体の両端面に目封止材料を充填し、目封止材料が充填されたハニカム構造体を乾燥、焼成して、ハニカムフィルタ(目封止部を備えたハニカム構造体)を作製することが好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
金属チタン(Ti)粉末と炭化珪素(SiC)粉末と炭素(C)粉末を表1記載の比率で混合して「混合粉末」(セラミック原料)を作製した。そして、上記「混合粉末」に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材としてデンプン、吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。バインダの含有量は混合粉末を100質量部としたときに、7質量部であった。造孔材の含有量は混合粉末を100質量部としたときに、20質量部であった。水の含有量は混合粉末を100質量部としたときに、70質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は22.0μm、金属チタンの平均粒子径は20μm、炭素粉末の平均粒子径は1.6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。なお、金属チタン粉末、炭化珪素粉末、炭素粉末、造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0056】
次に、成形原料を混練し、土練して円柱状の坏土を作製した。そして、得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いてハニカム形状に成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、ハニカム乾燥体を得た。
【0057】
得られたハニカム乾燥体を、大気雰囲気にて450℃で3時間かけて脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気にて約1550℃で2時間焼成してハニカム焼成体を得た。そして、得られたハニカム焼成体を、1000℃で4時間、酸化処理を行ってハニカム構造の多孔質材料(ハニカム構造体)を得た。
【0058】
このときのハニカム構造体の、隔壁の厚さは300μmであり、セル密度は46.5(セル/cm
2)であった。また、ハニカム構造体の底面は一辺が35mmの正方形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは152mmであった。
【0059】
ハニカム構造体(多孔質材料)の、Ti
3SiC
2、炭化珪素、金属チタン及び炭化チタンの同定を行った。Ti
3SiC
2、炭化珪素、金属チタン及び炭化チタンの同定は、粉末X線回折による構成相の同定とともに、EPMAによる定性・定量分析及び元素マッピングの結果に基づいて行った。これにより、ハニカム構造体は、Ti
3SiC
2、炭化珪素、金属チタン及び炭化チタンを含むことが確認された。
【0060】
得られたハニカム構造の多孔質材料(ハニカム構造体)の気孔率は50%であり、平均細孔径は17.0μmであった。また、ハニカム構造体の曲げ強度は、酸化処理前で7MPa、酸化処理後も7MPaであった。尚、本明細書において、「強度」は、「曲げ強度」である。また、ハニカム構造体の熱膨張係数(40−800℃)は8.6×10
−6K
−1であった。得られた結果を表1に示す。なお、各測定値は、以下に示す方法によって求めた値である。
【0061】
また、耐熱衝撃性の評価結果を表1に示した。表1において、「耐熱衝撃性」の欄は、A及びBが合格、Cが不合格であることを示す。また、A及びBでは、「A」が最も耐熱衝撃性に優れていることを示す。また、「B」が「A」の次に耐熱衝撃性に優れていることを示す。尚、「C」は、耐熱衝撃性に劣ることを示す。耐熱衝撃性Aの条件は、(酸化処理後の強度)/(酸化処理後のヤング率)×(熱伝導率)/(熱膨張係数)が3より大きいこととした。また、耐熱衝撃性Bの条件は、(酸化処理後の強度)/(酸化処理後のヤング率)×(熱伝導率)/(熱膨張係数)が2〜3であることとした。また、耐熱衝撃性Cの条件は、(酸化処理後の強度)×(熱伝導率)/(熱膨張係数)が2より小さいこととした。また、多孔質材料に含有される各成分の量は、以下の「各成分の質量比率」の方法によって測定した値である。
【0062】
(気孔率)
気孔率は、水銀圧入法(JIS R 1655準拠)による全細孔容積[cm
3/g]とアルキメデス法により測定した見掛密度[g/cm
3]から算出する。気孔率の算出に際しては、「開気孔率(%)=100×全細孔容積/{(1/見掛密度)+全細孔容積}」の式を用いる。
【0063】
(平均細孔径)
水銀圧入法(JIS R 1655準拠)により測定する。
【0064】
(曲げ強度(強度))
ハニカム構造体をセルが貫通する方向を長手方向とした試験片(縦0.3mm×横4mm×長さ40mm)に加工し、JIS R 1601に準拠した曲げ試験により曲げ強度を算出する。
【0065】
(ヤング率)
上記「曲げ強度」の測定方法により「応力−歪曲線」を作成し、当該「応力−歪曲線」の傾きを算出する。得られた「応力−歪曲線の傾き」をヤング率とする。
【0066】
(熱膨張係数)
JIS R1618に準拠する方法で、ハニカム構造体から縦3セル×横3セル×長さ20mmの試験片を切り出し、40〜800℃のA軸方向(ハニカム構造体の流路に対して平行方向)の平均線熱膨張係数(熱膨張係数)を測定する。
【0067】
(各成分の質量比率)
多孔質材料(ハニカム構造体)における、各成分(Ti
3SiC
2、炭化珪素、金属チタン及び炭化チタン)の質量比率は以下のようにして求める。X線回折装置を用いて多孔質材料のX線回折パターンを得る。X線回折装置としては、回転対陰極型X線回折装置(理学電機製、RINT)を用いる。X線回折測定の条件は、CuKα線源、50kV、300mA、2θ=10〜60°とする。そして、「RIR(Reference Intensity Ratio)法を用いて、得られたX線回折データを解析して、各成分を定量する」簡易定量分析により、各成分の質量比率を算出する。X線回折データの解析は、MDI社製の「X線データ解析ソフトJADE7」を用いて行った。
【0068】
(熱伝導率)
ハニカム構造体から、直径10mm×2mm(セルの延びる方向の長さ)の形状の測定用試料を切り出して、JIS R 1611に準拠する方法で測定した。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例2〜6、比較例1,2)
各条件を表1に示すものとした以外は実施例1と同様にして多孔質材料(ハニカム構造体)を作製した。なお、実施例4は、造孔材の添加量を16質量部とすることにより、気孔率を表1のように変更した。また、実施例5は、造孔材の添加量を24質量部とすることにより、気孔率を表1のように変更した。また、比較例2は、造孔材の平均粒子径を35μmとすることにより、平均細孔径を表1のように変更した。実施例1の場合と同様にして、各評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
表1より、実施例1〜6の多孔質材料は、耐熱衝撃性に優れていることが分かる。また、比較例1,2の多孔質材料は、耐熱衝撃性に劣ることが分かる。