(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の誘電率を有するとともに幅寸法を二分する中心軸線によって区画された第1および第2領域を有する誘電体基板と、前記中心軸線上に位置し、軸方向へ延びる所定長さの無給電部および前記無給電部から軸方向前方へ延びる給電部を有する不平衡給電材と、所定面積を有する板状に成型されて前記誘電体基板の一方の面に固定された共振用導体と、所定面積を有する板状に成型されて前記誘電体基板の一方の面に固定され、前記共振用導体に一連につながるグランド用導体と、所定面積を有する板状に成型されて前記誘電体基板の一方の面に固定され、前記給電部に電気的に接続された放射用導体とを備え、
前記共振用導体が、前記不平衡給電材に電気的に接続された接続エリアと、前記接続エリアにつながって前記誘電体基板の第1領域に位置し、前記不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して軸方向へ延びる第1共振エリアと、前記接続エリアにつながって前記誘電体基板の第2領域に位置し、前記不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して軸方向へ延びる第2共振エリアとを有し、
前記グランド用導体が、前記誘電体基板の第1領域に位置し、前記不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して前記第1共振エリアから軸方向後方へ延びる第1グランドエリアと、前記誘電体基板の第2領域に位置し、前記不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して前記第2共振エリアから軸方向後方へ延びる第2グランドエリアとを有し、
前記放射用導体が、前記第1および第2共振エリアの間に位置して前記共振用導体の接続エリアから軸方向前方へ延びていて後端部が前記給電部に接続された第1放射エリアと、前記第1放射エリアの前端部から軸方向前方へ延びていて幅寸法が該第1放射エリアのそれよりも大きい第2放射エリアとを有し、
前記第1共振エリアの前端部に対向する前記第2放射エリアの第1後端部には、前記中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む複数の放射階段状部分が形成され、前記第2共振エリアの前端部に対向する前記第2放射エリアの第2後端部には、前記中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む複数の放射階段状部分が形成され、
前記第1グランドエリアの後端部には、前記中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む複数の減衰階段状部分が形成され、前記第2グランドエリアの後端部には、前記中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む複数の減衰階段状部分が形成されていることを特徴とするアンテナ。
前記第2放射エリアの第1後端部に形成された放射階段状部分と該第2放射エリアの第2後端部に形成された放射階段状部分とが、前記中心軸線の側に位置して前記第1および第2後端部から軸方向前方へ凹む第1放射階段状部分と、前記第1放射階段状部分の幅方向外方に位置して該第1放射階段状部分から軸方向前方へ凹む第2放射階段状部分と、前記第2放射階段状部分の幅方向外方に位置して前記中心軸線から次第に離間するように傾斜する第3放射階段状部分とを有する請求項1ないし請求項4いずれかに記載のアンテナ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示のアンテナ100は、広帯域かつ高い利得が得られるとともに、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。具体的には、アンテナ100では、使用周波数が約2.0GHz〜約4.0GHzであってVSWR(電圧定在波比)が2以下である。しかし、前記特許文献1に開示のアンテナ100では、その小型化を維持しつつ広帯域を維持した状態で下限周波数を低い周波数帯(たとえば、700MHz)に下げることができないとともに、全帯域においてVSWRを2以下にすることができない。
【0005】
本発明の目的は、使用可能な周波数帯域(比帯域)のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能なアンテナを提供することにある。本発明の他の目的は、広い周波数帯域において電波を送受信しつつ、700MHz〜3.2GHzの帯域において高利得を得ることができ、小型化を維持した状態におけるVSWRが2以下のアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明に
係るアンテナ
の第1の特徴は、所定の誘電率を有するとともに幅寸法を二分する中心軸線によって区画された第1および第2領域を有する誘電体基板と、中心軸線上に位置し、軸方向へ延びる所定長さの無給電部および無給電部から軸方向前方へ延びる給電部を有する不平衡給電材と、所定面積を有する板状に成型されて誘電体基板の一方の面に固定された共振用導体と、所定面積を有する板状に成型されて誘電体基板の一方の面に固定され、共振用導体に一連につながるグランド用導体と、所定面積を有する板状に成型されて誘電体基板の一方の面に固定され、給電部に電気的に接続された放射用導体とを備え、共振用導体が、不平衡給電材に電気的に接続された接続エリアと、接続エリアにつながって誘電体基板の第1領域に位置し、不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して軸方向へ延びる第1共振エリアと、接続エリアにつながって誘電体基板の第2領域に位置し、不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して軸方向へ延びる第2共振エリアとを有し、グランド用導体が、誘電体基板の第1領域に位置し、不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して第1共振エリアから軸方向後方へ延びる第1グランドエリアと、誘電体基板の第2領域に位置し、不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して第2共振エリアから軸方向後方へ延びる第2グランドエリアとを有し、放射用導体が、第1および第2共振エリアの間に位置して共振用導体の接続エリアから軸方向前方へ延びていて後端部が給電部に接続された第1放射エリアと、第1放射エリアの前端部から軸方向前方へ延びていて幅寸法が第1放射エリアのそれよりも大きい第2放射エリアとを有し、第1共振エリアの前端部に対向する第2放射エリアの第1後端部には、中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む複数の放射階段状部分が形成され、第2共振エリアの前端部に対向する第2放射エリアの第2後端部には、中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む複数の放射階段状部分が形成され
、第1グランドエリアの後端部には、中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む複数の減衰階段状部分が形成され、第2グランドエリアの後端部には、中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む複数の減衰階段状部分が形成されていることにある。
【0007】
前記第1の特徴を有する本発明
のアンテナの一例としては、
第1グランドエリアの後端部に形成された減衰階段状部分と第2グランドエリアの後端部に形成された減衰階段状部分とが、中心軸線の側に位置してそれら共振エリアの後端部から軸方向前方へ凹む第1減衰階段状部分と、第1減衰階段状部分の幅方向外方に位置して第1減衰階段状部分から軸方向前方へ凹む第2減衰階段状部分とを有する。
【0008】
前記課題を解決するための本発明に係るアンテナの第2の特徴は、所定の誘電率を有するとともに幅寸法を二分する中心軸線によって区画された第1および第2領域を有する誘電体基板と、中心軸線上に位置し、軸方向へ延びる所定長さの無給電部および無給電部から軸方向前方へ延びる給電部を有する不平衡給電材と、所定面積を有する板状に成型されて誘電体基板の一方の面に固定された共振用導体と、所定面積を有する板状に成型されて誘電体基板の一方の面に固定され、共振用導体に一連につながるグランド用導体と、所定面積を有する板状に成型されて誘電体基板の一方の面に固定され、給電部に電気的に接続された放射用導体とを備え、共振用導体が、不平衡給電材に電気的に接続された接続エリアと、接続エリアにつながって誘電体基板の第1領域に位置し、不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して軸方向へ延びる第1共振エリアと、接続エリアにつながって誘電体基板の第2領域に位置し、不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して軸方向へ延びる第2共振エリアとを有し、グランド用導体が、誘電体基板の第1領域に位置し、不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して第1共振エリアから軸方向後方へ延びる第1グランドエリアと、誘電体基板の第2領域に位置し、不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して第2共振エリアから軸方向後方へ延びる第2グランドエリアとを有し、放射用導体が、第1および第2共振エリアの間に位置して共振用導体の接続エリアから軸方向前方へ延びていて後端部が給電部に接続された第1放射エリアと、第1放射エリアの前端部から軸方向前方へ延びていて幅寸法が第1放射エリアのそれよりも大きい第2放射エリアとを有し、第1共振エリアの前端部に対向する第2放射エリアの第1後端部には、中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む複数の放射階段状部分が形成され、第2共振エリアの前端部に対向する第2放射エリアの第2後端部には、中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む複数の放射階段状部分が形成され、第1共振エリアの前端部と第2放射エリアの第1後端部との間に延びる誘電体基板には、放射階段状部分の近傍に位置して軸方向前方へ向かうにつれて前記中心軸線から次第に離間するように延びる第1スリットが形成され、または、放射階段状部分の近傍に位置して軸方向前方へ向かうにつれて中心軸線から次第に離間するように並ぶ複数の第1貫通孔が形成され、第2共振エリアの前端部と第2放射エリアの第2後端部との間に延びる誘電体基板には、放射階段状部分の近傍に位置して軸方向前方へ向かうにつれて中心軸線から次第に離間するように延びる第2スリットが形成され、または、放射階段状部分の近傍に位置して軸方向前方へ向かうにつれて中心軸線から次第に離間するように並ぶ複数の第2貫通孔が形成されていることにある。
【0009】
前記課題を解決するための本発明に係るアンテナの第3の特徴は、所定の誘電率を有するとともに幅寸法を二分する中心軸線によって区画された第1および第2領域を有する誘電体基板と、中心軸線上に位置し、軸方向へ延びる所定長さの無給電部および無給電部から軸方向前方へ延びる給電部を有する不平衡給電材と、所定面積を有する板状に成型されて誘電体基板の一方の面に固定された共振用導体と、所定面積を有する板状に成型されて誘電体基板の一方の面に固定され、共振用導体に一連につながるグランド用導体と、所定面積を有する板状に成型されて誘電体基板の一方の面に固定され、給電部に電気的に接続された放射用導体とを備え、共振用導体が、不平衡給電材に電気的に接続された接続エリアと、接続エリアにつながって誘電体基板の第1領域に位置し、不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して軸方向へ延びる第1共振エリアと、接続エリアにつながって誘電体基板の第2領域に位置し、不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して軸方向へ延びる第2共振エリアとを有し、グランド用導体が、誘電体基板の第1領域に位置し、不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して第1共振エリアから軸方向後方へ延びる第1グランドエリアと、誘電体基板の第2領域に位置し、不平衡給電材から幅方向外方へ所定寸法離間して第2共振エリアから軸方向後方へ延びる第2グランドエリアとを有し、放射用導体が、第1および第2共振エリアの間に位置して共振用導体の接続エリアから軸方向前方へ延びていて後端部が給電部に接続された第1放射エリアと、第1放射エリアの前端部から軸方向前方へ延びていて幅寸法が第1放射エリアのそれよりも大きい第2放射エリアとを有し、第1共振エリアの前端部に対向する第2放射エリアの第1後端部には、中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む複数の放射階段状部分が形成され、第2共振エリアの前端部に対向する第2放射エリアの第2後端部には、中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む複数の放射階段状部分が形成され、第1共振エリアの前端部と第2放射エリアの第1後端部との間には、誘電体基板が存在しない第1空所部が形成され、第2共振エリアの前端部と第2放射エリアの第2後端部との間には、誘電体基板が存在しない第2空所部が形成されていることにある。
【0010】
前記第1〜第3の特徴を有する本発明
のアンテナの一例としては、第2放射エリアの第1後端部に形成された放射階段状部分と第2放射エリアの第2後端部に形成された放射階段状部分とが、中心軸線の側に位置して第1および第2後端部から軸方向前方へ凹む第1放射階段状部分と、第1放射階段状部分の幅方向外方に位置して第1放射階段状部分から軸方向前方へ凹む第2放射階段状部分と、第2放射階段状部分の幅方向外方に位置して中心軸線から次第に離間するように傾斜する第3放射階段状部分とを有する。
【0011】
前記第1〜第3の特徴を有する本発明
のアンテナの他の一例として、第1共振エリアの前端部には、中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向後方へ段階的に凹む複数の共振階段状部分が形成され、第2共振エリアの前端部には、中心軸線から幅方向外方に向かうにつれて軸方向後方へ段階的に凹む複数の共振階段状部分が形成されている。
【0012】
前記第1〜第3の特徴を有する本発明
のアンテナの他の一例としては、第1共振エリアの前端部に形成された共振階段状部分と第2共振エリアの前端部に形成された共振階段状部分とが、中心軸線の側に位置してそれら共振エリアの前端部から軸方向後方へ凹む第1共振階段状部分と、第1共振階段状部分の幅方向外方に位置して第1共振階段状部分から軸方向後方へ凹む第2共振階段状部分と、第2共振階段状部分の幅方向外方に位置して第2共振階段状部分から軸方向後方へ凹む第3共振階段状部分とを有する。
【0013】
前記第1〜第3の特徴を有する本発明
のアンテナの他の一例として、第1共振エリアの前端部と第2放射エリアの第1後端部との間に延びる誘電体基板には、共振階段状部分の近傍に位置して軸方向後方へ向かうにつれて中心軸線から次第に離間するように延びる第3スリットが形成され、または、共振階段状部分の近傍に位置して軸方向後方へ向かうにつれて中心軸線から次第に離間するように並ぶ複数の第3貫通孔が形成され、第2共振エリアの前端部と第2放射エリアの第2後端部との間に延びる誘電体基板には、共振階段状部分の近傍に位置して軸方向後方へ向かうにつれて中心軸線から次第に離間するように延びる第4スリットが形成され、または、共振階段状部分の近傍に位置して軸方向後方へ向かうにつれて中心軸線から次第に離間するように並ぶ複数の第4貫通孔が形成されている。
【0014】
前記第1〜第3の特徴を有する本発明
のアンテナの他の一例としては、第1領域に位置する第1共振エリアと第2領域に位置する第2共振エリアとが、中心軸線に対して線対称の関係にあり、第1領域に位置する第1グランドエリアと第2領域に位置する第2グランドエリアとが、中心軸線に対して線対称の関係にあるとともに、第1領域に位置する第1および第2放射エリアと第2領域に位置する第1および第2放射エリアとが、中心軸線に対して線対称の関係にある。
【0015】
前記第1〜第3の特徴を有する本発明
のアンテナの他の一例としては、不平衡給電材が、軸方向へ延びる第1導体と、第1導体の外周面を包被する絶縁体と、絶縁体の外周面を包被して軸方向へ延びる第2導体とから作られ、無給電部が、第1および第2導体と絶縁体とから形成され、給電部が、第1導体から形成され、共振用導体の接続エリアが、第2導体に電気的に接続されている。
【0016】
前記第1〜第3の特徴を有する本発明
のアンテナの他の一例としては、グランド用導体の軸方向の長さ寸法が、10〜15cmの範囲にあり、700MHzの約1/4波長の長さに設定されている。
【発明の効果】
【0017】
前記第1の特徴を有する本発明
のアンテナによれば、軸方向前方へ段階的に凹む複数の放射階段状部分が第2放射エリアの第1および第2後端部に形成されているから、第2放射エリアの第1および第2後端部の複数の放射階段状部分と共振用導体の第1および第2共振エリアの前端部との間に略同一方向の高周波電流が流れ、所定の誘電率を有する誘電体基板に固定された第2放射エリアのそれら放射階段状部分と第1および第2共振エリアの前端部とが略同一方向の高周波電流を介して複数共振し、誘電体基板に固定された第1放射エリアに誘起される高周波電流と第1および第2共振エリアに誘起される高周波電流とが共振するとともに、誘電体基板に固定されたグランド用導体の第1および第2グランドエリアに誘起される高周波電流と無給電部に誘起される高周波電流とが共振し、それによって帯域が異なる複数の共振周波数を得ることができる。アンテナは、帯域が異なる複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が連続的に隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うことによってアンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。アンテナは、VSWR(電圧定在波比)が2以下の高い利得を得ることができるとともに、それが使用可能な周波数帯域(比帯域)のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)において使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
アンテナは、複数の減衰階段状部分が第1グランドエリアの後端部に形成され、複数の減衰階段状部分が第2グランドエリアの後端部に形成されており、第1および第2グランドエリアの後端部において高周波電流が流れると、その高周波電流がアンテナに接続された送受信機の筐体や接続ケーブルに流れ、その影響を受けてアンテナにおける電波の放射パターンや利得が変化するが、第1および第2グランドエリアの後端部に形成された複数の減衰階段状部分によって電波を減衰または遮断させることができるから、送受信機の筐体や接続ケーブルに高周波電流が流れることはなく、電波の放射パターンの変化や利得の変化を防ぐことができ、アンテナにおいて設計どおりの放射パターンおよび利得を確保することができる。
【0018】
第1および第2グランドエリアの減衰階段状部分が中心軸線の側に位置する第1減衰階段状部分と第1減衰階段状部分の幅方向外方に位置する第2減衰階段状部分とを有するアンテナは、第1および第2グランドエリアの後端部に形成された第1および第2減衰階段状部分によって電波を減衰または遮断させることができるから、送受信機の筐体や接続ケーブルに高周波電流が流れることはなく、アンテナにおける電波の放射パターンの変化や利得の変化を防ぐことができ、アンテナにおいて設計どおりの放射パターンおよび利得を確保することができる。
【0019】
前記第2の特徴を有する本発明のアンテナによれば、軸方向前方へ段階的に凹む複数の放射階段状部分が第2放射エリアの第1および第2後端部に形成されているから、第2放射エリアの第1および第2後端部の複数の放射階段状部分と共振用導体の第1および第2共振エリアの前端部との間に略同一方向の高周波電流が流れ、所定の誘電率を有する誘電体基板に固定された第2放射エリアのそれら放射階段状部分と第1および第2共振エリアの前端部とが略同一方向の高周波電流を介して複数共振し、誘電体基板に固定された第1放射エリアに誘起される高周波電流と第1および第2共振エリアに誘起される高周波電流とが共振するとともに、誘電体基板に固定されたグランド用導体の第1および第2グランドエリアに誘起される高周波電流と無給電部に誘起される高周波電流とが共振し、それによって帯域が異なる複数の共振周波数を得ることができる。アンテナは、帯域が異なる複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が連続的に隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うことによってアンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。アンテナは、VSWR(電圧定在波比)が2以下の高い利得を得ることができるとともに、それが使用可能な周波数帯域(比帯域)のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)において使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。アンテナは、放射階段状部分の近傍に位置する第1スリットまたは複数の第1貫通孔が第1共振エリアの前端部と第2放射エリアの第1後端部との間に延びる誘電体基板に形成され、放射階段状部分の近傍に位置する第2スリットまたは複数の第2貫通孔が第2共振エリアの前端部と第2放射エリアの第2後端部との間に延びる誘電体基板に形成されており、放射階段状部分の近傍に位置するスリットまたは貫通孔を誘電体基板に形成することで、第1および第2共振エリアの前端部と第2放射エリアの第1および第2後端部との間に延びる誘電体基板の結合容量を下げることができるから、電波にならずに熱に変化する割合を少なくすることができ、アンテナにおける電波変換効率の要素としてのtanδを大幅に向上させることができる。アンテナは、放射階段状部分の近傍の誘電体基板にスリットまたは貫通孔を形成ことによってその放射利得を上げることができ、電波を遠くに飛ばすことができる。
【0020】
前記第3の特徴を有する本発明のアンテナによれば、軸方向前方へ段階的に凹む複数の放射階段状部分が第2放射エリアの第1および第2後端部に形成されているから、第2放射エリアの第1および第2後端部の複数の放射階段状部分と共振用導体の第1および第2共振エリアの前端部との間に略同一方向の高周波電流が流れ、所定の誘電率を有する誘電体基板に固定された第2放射エリアのそれら放射階段状部分と第1および第2共振エリアの前端部とが略同一方向の高周波電流を介して複数共振し、誘電体基板に固定された第1放射エリアに誘起される高周波電流と第1および第2共振エリアに誘起される高周波電流とが共振するとともに、誘電体基板に固定されたグランド用導体の第1および第2グランドエリアに誘起される高周波電流と無給電部に誘起される高周波電流とが共振し、それによって帯域が異なる複数の共振周波数を得ることができる。アンテナは、帯域が異なる複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が連続的に隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うことによってアンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。アンテナは、VSWR(電圧定在波比)が2以下の高い利得を得ることができるとともに、それが使用可能な周波数帯域(比帯域)のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)において使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。アンテナは、第1共振エリアの前端部と第2放射エリアの第1後端部との間に誘電体基板が存在しない第1空所部が形成され、第2共振エリアの前端部と第2放射エリアの第2後端部との間に誘電体基板が存在しない第2空所部が形成されており、第1共振エリアの前端部と第2放射エリアの第1後端部との間や第2共振エリアの前端部と第2放射エリアの第2後端部との間に誘電体基板が存在しない第1および第2空所部を形成することで、第1および第2共振エリアの前端部と第2放射エリアの第1および第2後端部との間の結合容量を大幅に下げることができるから、電波にならずに熱に変化する割合を少なくすることができ、アンテナにおける電波変換効率の要素としてのtanδを大幅に向上させることができる。アンテナは、それら空所部を形成ことによってその放射利得を上げることができ、電波を遠くに飛ばすことができる。
【0021】
第2放射エリアの第1および第2後端部の放射階段状部分が中心軸線の側に位置する第1放射階段状部分と第1放射階段状部分の幅方向外方に位置する第2放射階段状部分と第2放射階段状部分の幅方向外方に位置する第3放射階段状部分とを有するアンテナは、第2放射エリアの第1および第2後端部の第1〜第3放射階段状部分と共振用導体の第1および第2共振エリアの前端部との間に略同一方向の高周波電流が流れ、第1〜第3放射階段状部分と第1および第2共振エリアの前端部とが略同一方向の高周波電流を介して複数共振し、第1放射エリアに誘起される高周波電流と第1および第2共振エリアに誘起される高周波電流とが共振するとともに、第1および第2グランドエリアに誘起される高周波電流と無給電部に誘起される高周波電流とが共振するから、それによって帯域が異なる複数の共振周波数を得ることができる。アンテナは、それら共振周波数が連続的に隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うことにより、広範囲の使用周波数帯域を確保することができる。
【0022】
複数の共振階段状部分が第1共振エリアの前端部に形成され、複数の共振階段状部分が第2共振エリアの前端部に形成されたアンテナは、第2放射エリアの複数の放射階段状部分と第1および第2共振エリアの複数の共振階段状部分との間に略同一方向の高周波電流が流れ、それら放射階段状部分とそれら共振階段状部分とが略同一方向の高周波電流を介して複数共振し、第1放射エリアに誘起される高周波電流と第1および第2共振エリアに誘起される高周波電流とが共振するとともに、第1および第2グランドエリアに誘起される高周波電流と無給電部に誘起される高周波電流とが共振するから、それによって帯域が異なる複数の共振周波数を得ることができる。アンテナは、それら共振周波数が連続的に隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うことにより、広範囲の使用周波数帯域を確保することができる。
【0023】
第1および第2共振エリアの共振階段状部分が中心軸線の側に位置する第1共振階段状部分と第1共振階段状部分の幅方向外方に位置する第2共振階段状部分と第2共振階段状部分の幅方向外方に位置する第3共振階段状部分とを有するアンテナは、第2放射エリアの第1および第2後端部の第1〜第3放射階段状部分と第1および第2共振エリアの前端部の第1〜第3共振階段状部分との間に略同一方向の高周波電流が流れ、第1〜第3放射階段状部分と第1〜第3共振階段状部分とが略同一方向の高周波電流を介して複数共振し、第1放射エリアに誘起される高周波電流と第1および第2共振エリアに誘起される高周波電流とが共振するとともに、第1および第2グランドエリアに誘起される高周波電流と無給電部に誘起される高周波電流とが共振するから、それによって帯域が異なる複数の共振周波数を得ることができる。アンテナは、それら共振周波数が連続的に隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うことにより、広範囲の使用周波数帯域を確保することができる。
【0024】
共振階段状部分の近傍に位置する第3スリットまたは複数の第3貫通孔が第1共振エリアの前端部と第2放射エリアの第1後端部との間に延びる誘電体基板に形成され、共振階段状部分の近傍に位置する第4スリットまたは複数の第4貫通孔が第2共振エリアの前端部と第2放射エリアの第2後端部との間に延びる誘電体基板に形成されたアンテナは、共振階段状部分の近傍に位置するスリットまたは貫通孔を誘電体基板に形成することで、第1および第2共振エリアの前端部と第2放射エリアの第1および第2後端部との間に延びる誘電体基板の結合容量を下げることができるから、電波にならずに熱に変化する割合を少なくすることができ、アンテナにおける電波変換効率の要素としてのtanδを大幅に向上させることができる。アンテナは、共振階段状部分の近傍の誘電体基板にスリットまたは貫通孔を形成ことによってその放射利得を上げることができ、電波を遠くに飛ばすことができる。
【0025】
第1領域に位置する第1共振エリアと第2領域に位置する第2共振エリアとが中心軸線に対して線対称の関係にあり、第1領域に位置する第1グランドエリアと第2領域に位置する第2グランドエリアとが中心軸線に対して線対称の関係にあるとともに、第1領域に位置する第1および第2放射エリアと第2領域に位置する第1および第2放射エリアとが中心軸線に対して線対称の関係にあるアンテナは、第1および第2共振エリアや第1および第2グランドエリアを中心軸線に対して線対称にするとともに、第1領域に位置する第1および第2放射エリアと第2領域に位置する第1および第2放射エリアとを中心軸線に対して線対称にすることで、それらが中心軸線に対して非対称になることによる電波の放射パターンの変化を防ぐことができ、アンテナにおいて設計どおりの放射パターンを確保することができる。アンテナは、それらを中心軸線に対して線対称に配置することで、第2放射エリアの第1および第2後端部と共振用導体の第1および第2共振エリアの前端部とが略同一の結合容量で複数共振し、第1放射エリアと第1および第2共振エリアとが共振するとともに、グランド用導体の第1および第2グランドエリアと無給電部とが略同一の結合容量で共振するから、それによって帯域が異なる複数の共振周波数を得ることができ、広範囲の使用周波数帯域を確保することができる。
【0026】
不平衡給電材が第1導体および第1導体の外周面を包被する絶縁体と絶縁体の外周面を包被して軸方向へ延びる第2導体とから作られ、無給電部が第1および第2導体と絶縁体とから形成され、共振用導体の接続エリアが第2導体に電気的に接続されたアンテナは、第2放射エリアと第1および第2共振エリアとが複数共振し、第1放射エリアと第1および第2共振エリアとが共振し、それによってそれによって帯域が異なる複数の共振周波数を得ることができ、広範囲の使用周波数帯域を確保することができる。アンテナは、第1導体と第2導体との間に絶縁体が介在することにより、インピーダンスを安定に保持することができるとともに、不平衡給電材の第1導体と第2導体とショートを防ぐことができ、それら導体がショートすることによる送受信機の高周波回路の破壊を防ぐことができる。
【0027】
グランド用導体の軸方向の長さ寸法が10〜15cmの範囲にあり、700MHzの約1/4波長の長さに設定されているアンテナは、グランド用導体の軸方向の長さ寸法を前記範囲にすることで、長さ寸法が700MHzの約1/4波長の長さになり、アンテナにおける使用周波数帯域を700MHz〜3.2GHzの範囲にすることができ、アンテナの小型化を維持した状態において下限周波数を700MHzまで下げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
一例として示すアンテナ10Aの平面図である
図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかるアンテナの実施形態の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、
図2は、
図1の2−2線矢視断面図であり、
図3は、
図1の3−3線矢視断面図である。
図1では、軸方向を矢印Aで示し、幅方向を矢印Bで示すとともに、軸方向前方を矢印A1で示し、軸方向後方を矢印A2で示す。
図1では、中心軸線S1を一点鎖線で示す。
【0030】
アンテナ10Aは、所定の誘電率を有する誘電体基板11(プリント基板)および不平衡給電材12(同軸ケーブルまたはセミリジットケーブル)と、共振用導体13およびグランド用導体14と、放射用導体15とから形成されている。誘電体基板11は、所定の誘電率を有するガラスエポキシから作られている。誘電体基板11は、ガラスエポキシの他に、所定の誘電率を有する熱可塑性合成樹脂や熱硬化性合成樹脂、セラミック基板から作ることもできる。
【0031】
誘電体基板11は、所定の厚みを有する板状であって、その平面形状が軸方向へ長い方形に成型されている。誘電体基板12は、上面16(一方の面)および下面17(他方の面)を有し、その幅寸法を二分する中心軸線S1によって区画された第1領域18および第2領域19を有する。誘電体基板11は、アンテナ10Aにおいて電荷を蓄積する容量性(コンデンサ)として機能する。誘電体基板11の軸方向の長さ寸法や幅方向の長さ寸法、上下面間16,17の厚み寸法に特に制限はなく、それら寸法を自由に設計することによって周波数帯域幅を自由に調整することができる。
【0032】
不平衡給電材12は、誘電体基板11の上面16であって中心軸線S1上に位置し、所定長さを有して軸方向へ延びている。不平衡給電材12は、
図1,2に示すように、棒状の細長い第1導体20(中心金属導体)と、第1導体20の外周面を包被する断面円形の絶縁体21と、絶縁体21の外周面を包被する断面円筒状の第2導体22(外側金属導体)とから作られている。不平衡給電材12では、第1導体20の外周面と絶縁体21の内周面とが固着され、絶縁体21の外周面と第2導体22の内周面とが固着されている。不平衡給電材12は、所定長さ(約λ/4)に設定されて軸方向へ直状に延びる無給電部23と、無給電部23から軸方向前方へ延びる給電部24とを有する。不平衡給電材12の後端には、コネクタ25が取り付けられている。
【0033】
無給電部23は、第1導体20と絶縁体21と第2導体22とから形成されている。給電部24は、第1導体20から形成されている。第1導体20や第2導体22には、金やニッケル、銅、銀等の導電性金属を使用することができ、絶縁体21には、不平衡給電材12のインピーダンスを固定するための材料となる熱可塑性合成樹脂(特にプラスチック系の誘電率を有するポリテトラフルオロエチレン)を使用することができる。
【0034】
共振用導体13は、導電性金属(金やニッケル、銅、銀等)から作られ、所定面積を有する板状に成型されている。共振用導体13は、誘電体基板11の上面16に固定されている。共振用導体13は、不平衡給電材12に電気的に接続された接続エリア26と、誘電体基板11の第1領域18に位置する第1共振エリア27と、誘電体基板11の第2領域19に位置する第2共振エリア28とを有する。
【0035】
接続エリア26は、中心軸線S1に跨って幅方向へ延びている。接続エリア26には不平衡給電材12の第2導体22の周面が当接し、第2導体20が接続エリア26に溶接(半田付け等)(固定手段)によって電気的に接続(固定)されている。第1共振エリア27は、接続エリア26につながり、中心軸線S1(後記する放射用導体の第1放射エリア)から幅方向外方へ所定寸法離間して軸方向へ延びている。第2共振エリア28は、接続エリア26につながり、中心軸線S1(放射用導体の第1放射エリア)から幅方向外方へ所定寸法離間して軸方向へ延びている。接続エリア26や第1および第2共振エリア27,28は、誘電体基板11の上面16に固定されている。第1共振エリア27と第2共振エリア28とは、所定の幅寸法を有して軸方向へ長い方形を呈し、それらの平面形状が同形同大であり、それらが中心軸線S1に対して線対称の関係にある。
【0036】
第1共振エリア27は、幅方向へ延びる第1前端部29aと、軸方向へ延びる第1内側部30aおよび第1外側部31aとを有し、第2共振エリア28は、幅方向へ延びる第2前端部29bと、軸方向へ延びる第2内側部30bおよび第2外側部31bとを有する。第1および第2共振エリア27,28では、それら前端部29a,29bの幅方向の長さ寸法が同一であり、それら内側部30a,30bの軸方向の長さ寸法が同一であるとともに、それら外側部31a,31bの軸方向の長さ寸法が同一である。さらに、内側部30a,30bの中心軸線S1(放射用導体15の第1放射エリア37)からの第1離間寸法が同一であり、内側部30a,30bが中心軸線S1(第1放射エリア37)に対して平行している。
【0037】
グランド用導体14は、導電性金属(金やニッケル、銅、銀等)から作られ、所定面積を有する板状に成型され、共振用導体13に一連につながっている(共振用導体13と一体に作られている)。グランド用導体14は、誘電体基板11の上面16に固定されている。グランド用導体14は、誘電体基板11の第1領域18に位置する第1グランドエリア32と、誘電体基板11の第2領域19に位置する第2グランドエリア33とを有する。
【0038】
第1グランドエリア32は、第1共振エリア27につながり、中心軸線S1(不平衡給電材12)から幅方向外方へ所定寸法離間して第1共振エリア27から軸方向後方へ延びている。第2グランドエリア33は、第2共振エリア28につながり、中心軸線S1(不平衡給電材12)から幅方向外方へ所定寸法離間して第2共振エリア28から軸方向後方へ延びている。第1グランドエリア32や第2グランドエリア33は、誘電体基板11の上面16に固定されている。第1グランドエリア32と第2グランドエリア33とは、所定の幅寸法を有して軸方向へ長い方形を呈し、それらの平面形状が同形同大であり、それらが中心軸線S1に対して線対称の関係にある。
【0039】
第1グランドエリア32は、幅方向へ延びる第1後端部34aと、軸方向へ延びる第1内側部35aおよび第1外側部36aとを有し、第2グランドエリア33は、幅方向へ延びる第2後端部34bと、軸方向へ延びる第2内側部35bおよび第2外側部36bとを有する。第1および第2グランドエリア32,33では、それら後端部34a,34bの幅方向の長さ寸法が同一であり、それら内側部35a,35bの軸方向の長さ寸法が同一であるとともに、それら外側部36a,36bの軸方向の長さ寸法が同一である。さらに、内側部35a,35bの中心軸線S1(不平衡給電材12)からの第2離間寸法が同一であり、内側部35a,35bが中心軸線S1(不平衡給電材12)に対して平行している。
【0040】
放射用導体15は、導電性金属(金やニッケル、銅、銀等)から作られ、所定面積を有する板状に成型され、誘電体基板11の上面16に固定されている。放射用導体15は、第1および第2共振エリア27,28の間に位置して接続エリア26から軸方向前方へ延びる第1放射エリア37と、第1放射エリア37の前端部39から軸方向前方へ延びる第2放射エリア38とを有する。第1および第2放射エリア37,38は、それらが一体に作られている。
【0041】
第1放射エリア37は、共振用導体13の第1および第2共振エリア27,28の間に位置している。第1放射エリア37は、所定の幅寸法を有して軸方向へ長い方形を呈し、誘電体基板11の上面16に固定されている。第1放射エリア37では、誘電体基板11の第1領域18に位置するエリア37と第2領域19に位置するエリア37とが中心軸線S1に対して線対称の関係にある。第1放射エリア37の後端部40は、不平衡給電材12の給電部24に電気的に接続されている。
【0042】
第2放射エリア38は、第1および第2共振エリア27,28の第1および第2前端部29a,29bから軸方向前方へ所定寸法離間し、誘電体基板11の上面16に固定されている。第2放射エリア38は、その幅寸法が第1放射エリア37のそれよりも大きい。第2放射エリア38では、誘電体基板11の第1領域18に位置するエリア38と第2領域19に位置するエリア38とが中心軸線S1に対して線対称の関係にある。
【0043】
第1共振エリア27の第1前端部29aに対向する第2放射エリア38の第1後端部41には、中心軸線S1から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む(エリア38の両側部から中心軸線S1に向かうにつれて軸方向後方へ段階的に膨らむ)複数の放射階段状部分42が形成されている。放射階段状部分42は、中心軸線S1の側に位置して第1後端部41から軸方向前方へ凹む第1放射階段状部分42aと、第1放射階段状部分42aの幅方向外方に位置して第1放射階段状部分42aから軸方向前方へ凹む第2放射階段状部分42bと、第2放射階段状部分42bの幅方向外方に位置して中心軸線S1から次第に離間するように傾斜する第3放射階段状部分42cとを有する。なお、放射階段状部分42の数は3つに限定されず、4つ以上の放射階段状部分42が作られていてもよい。
【0044】
第2共振エリア28の第2前端部29bに対向する第2放射エリア38の第2後端部43には、中心軸線S1から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む(エリア38の両側部から中心軸線S1に向かうにつれて軸方向後方へ段階的に膨らむ)複数の放射階段状部分44が形成されている。放射階段状部分44は、中心軸線S1の側に位置して第2後端部43から軸方向前方へ凹む第1放射階段状部分44aと、第1放射階段状部分44aの幅方向外方に位置して第1放射階段状部分44aから軸方向前方へ凹む第2放射階段状部分44bと、第2放射階段状部分44bの幅方向外方に位置して中心軸線S1から次第に離間するように傾斜する第3放射階段状部分44cとを有する。なお、放射階段状部分44の数は3つに限定されず、4つ以上の放射階段状部分44が作られていてもよい。
【0045】
第1および第2共振エリア27,28の第1および第2前端部29a,29bと第2放射エリア38の第1および第2後端部41,43との軸方向の離間寸法に対し、第1および第2共振エリア27,28の第1および第2前端部29a,29bと第1放射階段状部分42a,44aとの軸方向の離間寸法が大きく、第1および第2前端部29a,29bと第1放射階段状部分42a,44aとの軸方向の離間寸法に対し、第1および第2前端部29a,29bと第2放射階段状部分42b,44bとの軸方向の離間寸法が大きい。第1および第2前端部29a,29bと第2放射階段状部分42b,44bとの軸方向の離間寸法に対し、第1および第2前端部29a,29bと第3放射階段状部分42c,44cとの軸方向の離間寸法が大きい。
【0046】
アンテナ10Aでは、所定の誘電率を有する誘電体基板11が誘電体として機能し、第2放射エリア38の第1後端部41の第1〜第3放射階段状部分42a〜42cと第1共振エリア27の第1前端部29aとの間に略同一方向の高周波電流が流れ、第1〜第3放射階段状部分42a〜42cと第1前端部29aとが略同一方向の高周波電流を介して複数共振し、第2放射エリア38の第2後端部43の第1〜第3放射階段状部分44a〜44cと第2共振エリア28の第2前端部29bとの間に略同一方向の高周波電流が流れ、第1〜第3放射階段状部分44a〜44cと第2前端部29bとが略同一方向の高周波電流を介して複数共振する。
【0047】
さらに、アンテナ10Aでは、第1および第2共振エリア27,28の第1および第2前端部29a,29bに誘起された高周波電流と第2放射エリア38の第1および第2後端部41,43に誘起された高周波電流とが共振し、第1および第2共振エリア27,28(第1および第2内側部30a,30b)に誘起された高周波電流と第1放射エリア37に誘起された高周波電流とが共振する。
【0048】
アンテナ10Aは、第2放射エリア38と第1および第2共振エリア27,28とが複数共振するとともに、第1および第2共振エリア27,28と第1放射エリア37とが共振するから、帯域が異なる複数の共振周波数を得ることができる。アンテナ10Aは、帯域が異なる複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が連続的に隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナ10Aにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。アンテナ10Aは、VSWRが2以下を達成することができるとともに、それが使用可能な周波数帯域(比帯域)のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0049】
アンテナ10Aは、第1および第2共振エリア27,28の第1および第2内側部30a,30bと中心軸線S1との間の離間寸法が0.5〜1.0mmの範囲にあり、第1および第2グランドエリア32,33の第1および第2内側部35a,35bと中心軸線S1との間の離間寸法が1.9〜10mmの範囲にある。それら離間寸法が前記範囲を超過すると、アンテナ10Aの使用可能な周波数帯域が最も広い状態で飽和し、それ以上アンテナ10Aの周波数帯域を広げることができない。アンテナ10Aは、それら離間寸法を前記範囲において変更することで、アンテナ10Aの使用周波数帯域の広狭を調整することができ、共振帯域を安定化させることができる。
【0050】
アンテナ10Aは、それら離間寸法を前記範囲にすることで、電波の共振効率が最適となり、第2放射エリア38と第1および第2共振エリア27,28とを効率よく複数共振させることができ、第1および第2共振エリア27,28と第1放射エリア37とを効率よく共振させることができる。
【0051】
アンテナ10Aでは、グランド用導体14の軸方向の長さ寸法が10〜15cmの範囲にあり、長さ寸法が700MHzの約1/4波長(約λ/4)の長さに設定されている。長さ寸法を前記範囲にすることで、長さ寸法が700MHzの約1/4波長の長さになるから、アンテナ10Aの小型化を維持した状態において下限周波数を700MHzまで下げることができる。
【0052】
図4は、他の一例として示すアンテナ10Bの平面図であり、
図5は、他の一例として示すアンテナ10Cの平面図である。
図4のアンテナ10Bが
図1のそれと異なるところは、誘電体基板11(プリント基板)にそれを貫通する第1および第2スリット45a,45bが形成されている点にあり、
図5のアンテナ10Cが
図1のそれと異なるところは、誘電体基板11(プリント基板)にそれを貫通する複数の第1および第2貫通孔46a,46bが形成されている点にある。それらアンテナ10B,10Cのその他の構成は、
図1のアンテナ10Aのそれらと同一であるから、
図1のアンテナ10Aと同一の符号を付すとともに、アンテナ10Aの説明を援用することで、それらアンテナ10B,10Cのその他の構成の説明は省略する。
【0053】
アンテナ10B,10Cは、
図1のそれと同様に、誘電体基板11および不平衡給電材12と、共振用導体13およびグランド用導体14と、放射用導体15とから形成されている。誘電体基板11や不平衡給電材12、共振用導体13、グランド用導体14、放射用導体15は、
図1のアンテナ10Aのそれらと同一である。また、第1および第2共振エリア27,28の第1および第2内側部30a,30bと中心軸線S1との間の離間寸法や第1および第2グランドエリア32,33の第1および第2内側部35a,35bと中心軸線S1との間の離間寸法は、
図1のアンテナ10Aのそれらと同一である。共振用導体13の軸方向の長さ寸法とグランド用導体14の軸方向の長さ寸法との合計寸法は、
図1のアンテナ10Aのそれと同一である。
【0054】
アンテナ10Bの第1共振エリア27の第1前端部29aと第2放射エリア38の第1後端部41との間に延びる誘電体基板11には、基板11を貫通する第1スリット45aが形成されている。アンテナ10Bの第2共振エリア28の第2前端部29bと第2放射エリア38の第2後端部43との間に延びる誘電体基板11には、基板11を貫通する第2スリット45bが形成されている。
【0055】
第1スリット45aは、放射階段状部分42(第1〜第3放射階段状部分42a〜42c)の近傍に位置し、第1後端部41から軸方向前方へ向かうにつれて中心軸線S1から次第に離間するように傾斜して延びている。換言すれば、第1スリット45aが第1〜第3放射階段状部分42a〜42cに沿うように延びている。第2スリット45bは、放射階段状部分44(第1〜第3放射階段状部分44a〜44c)の近傍に位置し、第2後端部43から軸方向前方へ向かうにつれて中心軸線S1から次第に離間するように傾斜して延びている。換言すれば、第2スリット45bが第1〜第3放射階段状部分44a〜44cに沿うように延びている。
【0056】
アンテナ10Cの第1共振エリア27の第1前端部29aと第2放射エリア38の第1後端部41との間に延びる誘電体基板11には、基板11を貫通する複数の第1貫通孔46aが形成されている。アンテナ10Cの第2共振エリア28の第2前端部29bと第2放射エリア38の第2後端部43との間に延びる誘電体基板11には、基板11を貫通する複数の第2貫通孔46bが形成されている。
【0057】
第1貫通孔46aは、放射階段状部分42(第1〜第3放射階段状部分42a〜42c)の近傍に位置し、第1後端部41から軸方向前方へ向かうにつれて中心軸線S1から次第に離間するように傾斜して並んでいる。換言すれば、第1貫通孔46aが第1〜第3放射階段状部分42a〜42cに沿うように並んでいる。第2貫通孔46bは、放射階段状部分44(第1〜第3放射階段状部分44a〜44c)の近傍に位置し、第2後端部43から軸方向前方へ向かうにつれて中心軸線S1から次第に離間するように傾斜して並んでいる。換言すれば、第2貫通孔46bが第1〜第3放射階段状部分44a〜44cに沿うように並んでいる。
【0058】
それらアンテナ10B,10Cは、
図1のアンテナ10Aが有する効果に加え、以下の効果を有する。アンテナ10B,10Cは、第1〜第3放射階段状部分42a〜42c,44a〜44cの近傍に位置する第1および第2スリット45a,45bまたは第1および第2貫通孔46a,46bを誘電体基板11に形成することで、第1および第2共振エリア27,28の第1および第2前端部29a,29bと第2放射エリア38の第1および第2後端部41,43との間に延びる基板11の結合容量を下げることができるから、電波にならずに熱に変化する割合を少なくすることができ、アンテナ10B,10Cにおける電波変換効率の要素としてのtanδを大幅に向上させることができる。アンテナ10B,10Cは、放射階段状部分42a〜42c,44a〜44cの近傍の誘電体基板11にスリット45a,45bまたは貫通孔46a,46bを形成ことによってそれらの放射利得を上げることができ、電波を遠くに飛ばすことができる。
【0059】
図6は、他の一例として示すアンテナ10Dの平面図である。
図6のアンテナ10Dが
図1や
図4,5のそれらと異なるところは、第1および第2空所部47a,47bが形成されている点にあり、アンテナ10Dのその他の構成は
図1や
図4,5のアンテナ10A〜10Cのそれらと同一であるから、
図1や
図4,5のアンテナ10A〜10Cと同一の符号を付すとともに、アンテナ10A〜10Cの説明を援用することで、アンテナ10Dのその他の構成の説明は省略する。
【0060】
第1共振エリア27の第1前端部29aと第2放射エリア38の第1後端部41との間には、誘電体基板11が存在しない空所部47aが形成されている。第2共振エリア28の第2前端部29bと第2放射エリア38の第2後端部43との間には、誘電体基板11が存在しない空所部47bが形成されている。それら空所部47a,47bは、中心軸線S1から幅方向外方に向かうにつれて軸方向の寸法が次第に大きくなる三角形状を呈するが、空所部47a,47bの形状は三角形に限定されず、第1前端部29aと第1後端部41との間や第2前端部29bと第2後端部43との間に誘電体基板11が存在しないあらゆる形状の部位が作られていればよい。
【0061】
アンテナ10Dは、
図1のアンテナ10Aが有する効果に加え、以下の効果を有する。アンテナ10Dは、第1共振エリア27の第1前端部29aと第2放射エリア38の第1後端部41との間や第2共振エリア28の第2前端部29bと第2放射エリア38の第2後端部43との間に誘電体基板11が存在しない第1および第2空所部47a,47bを形成することで、第1および第2共振エリア27,28の第1および第2前端部29a,29bと第2放射エリア38の第1および第2後端部41,43との間の結合容量を大幅に下げることができるから、電波にならずに熱に変化する割合を少なくすることができ、アンテナ10Dにおける電波変換効率の要素としてのtanδを大幅に向上させることができる。アンテナ10Dは、それら空所部47a,47bを形成ことによってその放射利得を上げることができ、電波を遠くに飛ばすことができる。
【0062】
図7は、他の一例として示すアンテナ10Eの平面図である。
図7では、軸方向を矢印Aで示し、幅方向を矢印Bで示すとともに、中心軸線S1を一点鎖線で示す。
図7のアンテナ10Eが
図1のそれと異なるところは、第1共振エリア27の第1前端部29aに複数の共振階段状部分48が形成され、第2共振エリア28の第2前端部29bに複数の共振階段状部分49が形成されている点、第1グランドエリア32の第1後端部34aに複数の減衰階段状部分50が形成され、第2グランドエリア33の第2後端部34bに複数の減衰階段状部分51が形成されている点にある。アンテナ10Eのその他の構成は、
図1のアンテナ10Aのそれらと同一であるから、
図1のアンテナ10Aと同一の符号を付すとともに、アンテナ10Aの説明を援用することで、アンテナ10Eのその他の構成の説明は省略する。
【0063】
アンテナ10Eは、
図1のそれと同様に、誘電体基板11および不平衡給電材12と、共振用導体13およびグランド用導体14と、放射用導体15とから形成されている。誘電体基板11や不平衡給電材12、共振用導体13、グランド用導体14、放射用導体15は、
図1のアンテナ10Aのそれらと同一である。また、第1および第2共振エリア27,28の第1および第2内側部30a,30bと中心軸線S1との間の離間寸法や第1および第2グランドエリア32,33の第1および第2内側部35a,35bと中心軸線S1との間の離間寸法は、
図1のアンテナ10Aのそれらと同一である。共振用導体13の軸方向の長さ寸法とグランド用導体14の軸方向の長さ寸法との合計寸法は、
図1のアンテナ10Aのそれと同一である。
【0064】
第1共振エリア27の第1前端部29aには、中心軸線S1から幅方向外方に向かうにつれて軸方向後方へ段階的に凹む(エリア27の第1外側部31aから中心軸線S1に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に膨らむ)複数の共振階段状部分48が形成されている。共振階段状部分48は、中心軸線S1の側に位置して第1共振エリア27の第1前端部29aから軸方向後方へ凹む第1共振階段状部分48aと、第1共振階段状部分48aの幅方向外方に位置して第1共振階段状部分48aから軸方向後方へ凹む第2共振階段状部分48bと、第2共振階段状部分48bの幅方向外方に位置して第2共振階段状部分48bから軸方向後方へ凹む第3共振階段状部分48cとを有する。なお、共振階段状部分48の数は3つに限定されず、4つ以上の共振階段状部分48が作られていてもよい。
【0065】
第2共振エリア28の第2前端部29bには、中心軸線S1から幅方向外方に向かうにつれて軸方向後方へ段階的に凹む(エリア28の第2外側部31bから中心軸線S1に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に膨らむ)複数の共振階段状部分49が形成されている。共振階段状部分49は、中心軸線S1の側に位置して第2共振エリア28の第2前端部29bから軸方向後方へ凹む第1共振階段状部分49aと、第1共振階段状部分49aの幅方向外方に位置して第1共振階段状部分49aから軸方向後方へ凹む第2共振階段状部分49bと、第2共振階段状部分49bの幅方向外方に位置して第2共振階段状部分49bから軸方向後方へ凹む第3共振階段状部分49cとを有する。なお、共振階段状部分49の数は3つに限定されず、4つ以上の共振階段状部分49が作られていてもよい。
【0066】
第1および第2共振エリア27,28の第1および第2前端部29a,29bと第2放射エリア38の第1および第2後端部41,43との軸方向の離間寸法に対し、第1および第2共振エリア27,28の第1共振階段状部分48a,49aと第2放射エリア38の第1放射階段状部分42a,44aとの軸方向の離間寸法が大きく、第1共振階段状部分48a,49aと第1放射階段状部分42a,44aとの軸方向の離間寸法に対し、第2共振階段状部分48b,49bと第2放射階段状部分42b,44bとの軸方向の離間寸法が大きい。第2共振階段状部分48b,49bと第2放射階段状部分42b,44bとの軸方向の離間寸法に対し、第3共振階段状部分48c,49cと第3放射階段状部分42c,44cとの軸方向の離間寸法が大きい。
【0067】
第1グランドエリア32の第1後端部34aには、中心軸線S1から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む(エリア32の第1外側部36aから中心軸線S1に向かうにつれて軸方向後方へ段階的に膨らむ)複数の減衰階段状部分50が形成されている。減衰階段状部分50は、中心軸線S1の側に位置して第1グランドエリア32の第1後端部34aから軸方向前方へ凹む第1減衰階段状部分50aと、第1減衰階段状部分50aの幅方向外方に位置して第1減衰階段状部分50aから軸方向前方へ凹む第2減衰階段状部分50bとを有する。なお、減衰階段状部分50の数は2つに限定されず、3つ以上の減衰階段状部分50が作られていてもよい。
【0068】
第2グランドエリア33の第2後端部34bには、中心軸線S1から幅方向外方に向かうにつれて軸方向前方へ段階的に凹む(エリア33の第2外側部36bから中心軸線S1に向かうにつれて軸方向後方へ段階的に膨らむ)複数の減衰階段状部分51が形成されている。減衰階段状部分51は、中心軸線S1の側に位置して第2グランドエリア33の第2後端部34bから軸方向前方へ凹む第1減衰階段状部分51aと、第1減衰階段状部分51aの幅方向外方に位置して第1減衰階段状部分51aから軸方向前方へ凹む第2減衰階段状部分51bとを有する。なお、減衰階段状部分51の数は2つに限定されず、3つ以上の減衰階段状部分51が作られていてもよい。
【0069】
アンテナ10Eでは、第2放射エリア38の第1後端部41の第1〜第3放射階段状部分42a〜42cと第1共振エリア27の第1前端部29aの第1〜第3共振階段状部分48a〜48cとの間に略同一方向の高周波電流が流れ、第1〜第3放射階段状部分42a〜42cと第1〜第3共振階段状部分48a〜48cとが略同一方向の高周波電流を介して複数共振し、第2放射エリア38の第2後端部43の第1〜第3放射階段状部分44a〜44cと第2共振エリア28の第2前端部29bの第1〜第3共振階段状部分49a〜49cとの間に略同一方向の高周波電流が流れ、第1〜第3放射階段状部分44a〜44cと第1〜第3共振階段状部分49a〜49cとが略同一方向の高周波電流を介して複数共振する。
【0070】
さらに、アンテナ10Eでは、第1および第2共振エリア27,28の第1および第2前端部29a,29bに誘起された高周波電流と第2放射エリア38の第1および第2後端部41,43に誘起された高周波電流とが共振し、第1および第2共振エリア27,28(第1および第2内側部30a,30b)に誘起された高周波電流と第1放射エリア37に誘起された高周波電流とが共振する。アンテナ10Eでは、第1および第2グランドエリア32,33の第1および第2後端部34a,34bに形成された第1および第2減衰階段状部分50a,50b,51a,51bによって電波が減衰または遮断される。
【0071】
アンテナ10Eは、第2放射エリア38と第1および第2共振エリア27,28とが複数共振し、第1および第2共振エリア27,28と第1放射エリア37とが共振するから、帯域が異なる複数の共振周波数を得ることができる。アンテナ10Eは、帯域が異なる複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が連続的に隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナ10Eにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。アンテナ10Eは、VSWRが2以下を達成することができるとともに、それが使用可能な周波数帯域(比帯域)のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0072】
アンテナ10Eは、第1および第2グランドエリア32,33の第1および第2後端部34a,34bにおいて高周波電流が流れると、その高周波電流がアンテナ10Eに接続された送受信機の筐体や接続ケーブルに流れ、その影響を受けてアンテナ10Eにおける電波の放射パターンや利得が変化するが、第1および第2グランドエリア32,33の第1および第2後端部34a,34bに形成された第1および第2減衰階段状部分50a,50b,51a,51bによって電波を減衰または遮断させることができるから、送受信機の筐体や接続ケーブルに高周波電流が流れることはなく、アンテナ10Eにおける電波の放射パターンの変化や利得の変化を防ぐことができ、アンテナ10Eにおいて設計どおりの放射パターンおよび利得を確保することができる。
【0073】
アンテナ10Eは、第1および第2共振エリア27,28の第1および第2内側部30a,30bと中心軸線S1との間の離間寸法を0.5〜1.0mmの範囲にするとともに、第1および第2グランドエリア32,33の第1および第2内側部35a,35bと中心軸線S1との間の離間寸法を1.9〜10mmの範囲にすることで、電波の共振効率が最適となり、第2放射エリア38と第1および第2共振エリア27,28とを効率よく複数共振させることができ、第1および第2共振エリア27,28と第1放射エリア37とを効率よく共振させることができるとともに、無給電部22と第1および第2グランドエリア32,33とを効率よく共振させることができる。
【0074】
アンテナ10Eでは、グランド用導体14の軸方向の長さ寸法が10〜15cmの範囲にあり、長さ寸法が700MHzの約1/4波長(約λ/4)の長さに設定されている。長さ寸法を前記範囲にすることで、長さ寸法が700MHzの約1/4波長の長さになるから、アンテナ10Eの小型化を維持した状態において下限周波数を700MHzまで下げることができる。
【0075】
図8は、他の一例として示すアンテナ10Fの平面図であり、
図9は、他の一例として示すアンテナ10Gの平面図である。
図8のアンテナ10Fが
図1や
図7のそれらと異なるところは、誘電体基板11(プリント基板)にそれを貫通する第1〜第4スリット45a,45b,52a,52bが形成されている点にあり、
図9のアンテナ10Gが
図1や
図7のそれらと異なるところは、誘電体基板11(プリント基板)にそれを貫通する複数の第1〜第4貫通孔46a,46b,53a,53bが形成されている点にある。それらアンテナ10F,10Gのその他の構成は、
図1や
図7のアンテナ10A,10Eのそれらと同一であるから、アンテナ10A,10Dと同一の符号を付すとともに、アンテナ10A,10Dの説明を援用することで、それらアンテナ10F,10Gのその他の構成の説明は省略する。
【0076】
アンテナ10Fの第1共振エリア27の第1前端部29aと第2放射エリア38の第1後端部41との間に延びる誘電体基板11には、基板11を貫通する第1スリット45aおよび第3スリット52aが形成されている。アンテナ10Fの第2共振エリア28の第2前端部29bと第2放射エリア38の第2後端部43との間に延びる誘電体基板11には、基板11を貫通する第2スリット45bおよび第4スリット52bが形成されている。
【0077】
第1スリット45aは、放射階段状部分42(第1〜第3放射階段状部分42a〜42c)の近傍に位置し、第1後端部41から軸方向前方へ向かうにつれて中心軸線S1から次第に離間するように傾斜して延びている。第2スリット45bは、放射階段状部分44(第1〜第3放射階段状部分44a〜44c)の近傍に位置し、第2後端部43から軸方向前方へ向かうにつれて中心軸線S1から次第に離間するように傾斜して延びている。
【0078】
第3スリット52aは、共振階段状部分48(第1〜第3共振階段状部分48a〜48c)の近傍に位置し、第1前端部29aから軸方向後方へ向かうにつれて中心軸線S1から次第に離間するように傾斜して延びている。換言すれば、第3スリット52aが第1〜第3共振階段状部分48a〜48cに沿うように延びている。第4スリット52bは、共振階段状部分49(第1〜第3共振階段状部分49a〜49c)の近傍に位置し、第2前端部29bから軸方向後方へ向かうにつれて中心軸線S1から次第に離間するように傾斜して延びている。換言すれば、第4スリット52bが第1〜第3共振階段状部分49a〜49cに沿うように延びている。
【0079】
アンテナ10Gの第1共振エリア27の第1前端部29aと第2放射エリア38の第1後端部41との間に延びる誘電体基板11には、基板11を貫通する複数の第1貫通孔46aおよび第3貫通孔53aが形成されている。アンテナ10Gの第2共振エリア28の第2前端部29bと第2放射エリア38の第2後端部43との間に延びる誘電体基板11には、基板11を貫通する複数の第2貫通孔46bおよび第4貫通孔53bが形成されている。
【0080】
第1貫通孔46aは、放射階段状部分42(第1〜第3放射階段状部分42a〜42c)の近傍に位置し、第1後端部41から軸方向前方へ向かうにつれて中心軸線S1から次第に離間するように傾斜して並んでいる。第2貫通孔46bは、放射階段状部分44(第1〜第3放射階段状部分44a〜44c)の近傍に位置し、第2後端部43から軸方向前方へ向かうにつれて中心軸線S1から次第に離間するように傾斜して並んでいる。
【0081】
第3貫通孔53aは、共振階段状部分48(第1〜第3共振階段状部分48a〜48c)の近傍に位置し、第1前端部29aから軸方向後方へ向かうにつれて中心軸線S1から次第に離間するように傾斜して並んでいる。換言すれば、第3貫通孔53aが第1〜第3共振階段状部分48a〜48cに沿うように並んでいる。第4貫通孔53bは、共振階段状部分49(第1〜第3共振階段状部分49a〜49c)の近傍に位置し、第2前端部29bから軸方向後方へ向かうにつれて中心軸線S1から次第に離間するように傾斜して並んでいる。換言すれば、第4貫通孔53bが第1〜第3共振階段状部分49a〜49cに沿うように並んでいる。
【0082】
それらアンテナ10F,10Gは、
図1や
図7のアンテナ10A,10Eが有する効果に加え、以下の効果を有する。アンテナ10F,10Gは、第1〜第3放射階段状部分42a〜42c,44a〜44cの近傍に位置する第1および第2スリット45a,45bまたは第1および第2貫通孔46a,46bを誘電体基板11に形成するとともに、第1〜第3共振階段状部分48a〜48c,49a〜49cの近傍に位置する第3および第4スリット52a,52bまたは第3および第4貫通孔53a,53bを誘電体基板11に形成することで、第1および第2共振エリア27,28の第1および第2前端部29a,29bと第2放射エリア38の第1および第2後端部41,43との間に延びる基板11の結合容量を下げることができるから、電波にならずに熱に変化する割合を少なくすることができ、アンテナ10F,10Gにおける電波変換効率の要素としてのtanδを大幅に向上させることができる。アンテナ10F,10Gは、放射階段状部分42a〜42c,44a〜44cや第1〜第3共振階段状部分48a〜48c,49a〜49cの近傍の誘電体基板11にスリット45a,45b,52a,52bまたは貫通孔46a,46b,53a,53bを形成ことによってそれらの放射利得を上げることができ、電波を遠くに飛ばすことができる。
【0083】
図10は、他の一例として示すアンテナ10Hの平面図である。
図10のアンテナ10Hが
図7〜
図9のそれらと異なるところは、第1および第2空所部47a,47bが形成されている点にあり、アンテナ10Hのその他の構成は
図7〜
図9のアンテナ10E〜10Gのそれらと同一であるから、
図7〜
図9のアンテナ10E〜10Gと同一の符号を付すとともに、アンテナ10E〜10Gの説明を援用することで、アンテナ10Hのその他の構成の説明は省略する。第1共振エリア27の第1前端部29aと第2放射エリア38の第1後端部41との間には、誘電体基板11が存在しない空所部47aが形成されている。第2共振エリア28の第2前端部29bと第2放射エリア38の第2後端部43との間には、誘電体基板11が存在しない空所部47bが形成されている。
【0084】
アンテナ10Hは、
図1や
図7のアンテナ10A,10Eが有する効果に加え、以下の効果を有する。アンテナ10Hは、第1共振エリア27の第1前端部29aと第2放射エリア38の第1後端部41との間や第2共振エリア28の第2前端部29bと第2放射エリア38の第2後端部43との間に誘電体基板11が存在しない第1および第2空所部47a,47bを形成することで、第1および第2共振エリア27,28の第1および第2前端部29a,29bと第2放射エリア38の第1および第2後端部41,43との間の結合容量を大幅に下げることができるから、電波にならずに熱に変化する割合を少なくすることができ、アンテナ10Hにおける電波変換効率の要素としてのtanδを大幅に向上させることができる。アンテナ10Hは、それら空所部47a,47bを形成ことによってその放射利得を上げることができ、電波を遠くに飛ばすことができる。
【0085】
図11は、それらアンテナ10A〜10HのVSWR(電圧定在波比)と使用帯域との相関関係を示す図であり、
図12は、アンテナ10A〜10Hの利得特性を示す図である。
図13,14は、アンテナ10A〜10Hの3平面(XY面、YZ面、ZX面)の周り方向において計測した電波強度を示す図である。
図13は、XY面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度の計測結果を示し、
図14は、YZ面またはZX面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度の計測結果を示す。
【0086】
それらアンテナ10A〜10Hは、
図11に示すように、使用周波数が約700MHz〜約3.2GHzにおいてVSWR(電圧定在波比)が2以下であり、低いVSWR(電圧定在波比)を維持した状態で、広い使用周波数帯域を持っていることが分かる。また、
図12に示すように、前記使用周波数帯域において2.5dB以上の利得を得ることができる。さらに、
図13に示すように、XY面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度が略真円を画き、
図14に示すように、YZ面またはZX面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度がバタフライ型を画いており、アンテナ10A〜10Hが良好な無指向性を有していることが分かる。