(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の清掃部の少なくとも1つは、対応するトラップ表面に沿って前記回転機構部の駆動により移動するよう前記回転機構部に取り付けられている紐状部材を備え、前記紐状部材の側面は、前記喫水面を跨ぐように前記トラップ表面に接触する接触部位を有することを特徴とする請求項1に記載の清掃装置。
前記複数の清掃部の少なくとも1つは、前記紐状部材として、弾性を有する第1清掃ワイヤを備え、前記第1清掃ワイヤに作用する弾性力によって前記接触部位が前記トラップ表面に押し付けられるように前記第1清掃ワイヤの端部が前記回転機構部に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の清掃装置。
前記回転機構部は、前記排水トラップに回転自在に支持される回転体を備え、前記複数の清掃部は、前記回転体に取り付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の清掃装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、排水装置には排水に接する表面が複数設けられている場合がある。また、清掃をすべき複数の表面のうちある1つの表面を見ても、現実にはたいてい、比較的汚れやすい場所とそれほどではない場所とがある。しかし、上述のトラップ部材においては、そのような実情への考慮は特段なされていない。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、排水トラップを効率的に清掃する清掃装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の清掃装置は、封水を貯留する排水トラップを清掃する複数の清掃部と、前記複数の清掃部を駆動する回転機構部と、を備える。前記排水トラップは、各々が前記封水の喫水面に接する複数のトラップ表面を有する。前記複数の清掃部の各々は、前記複数のトラップ表面のうち対応するトラップ表面を清掃するために設けられており、前記対応するトラップ表面に沿って前記喫水面を跨ぐように配設されている。
【0008】
この態様によると、排水トラップの複数の表面を清掃することができる。また、各清掃部は、対応するトラップ表面に沿って延在し、封水の水位にあたる喫水面を跨ぐように配設されている。本発明者の知見によると、喫水面は、排水トラップにおいて最も汚れやすい部分の1つである。よって、喫水面を跨ぐように清掃部を配設することにより、そうした汚れやすい部分を狙って清掃することができる。このようにして、排水トラップを効率的に清掃する清掃装置を提供することができる。
【0009】
回転機構部は、給水の水流によって回転するよう構成されていてもよく、例えば、給水の水流を受けて回転する水車部と、水車部の回転により回転する回転体(例えば回転軸)と、を備えてもよい。水車部と回転体とは機械的に連結されていなくてもよく、例えば、水車部と回転体とが磁気カップリングを形成していてもよい。あるいは、回転機構部は、排水の水流によって回転するよう構成されていてもよく、例えば、排水の水流を受けて回転する回転羽根を有する回転体を備えてもよい。回転機構部においては、清掃部の取付部が回転体に一体に設けられていてもよいし、あるいは回転体の回転を伝達する伝達機構を介して取付部が回転体に連結されていてもよい。なお、回転機構部の駆動源は水流に限られず、回転機構部は、モータまたはその他の任意の駆動源によって回転するよう構成されていてもよい。
【0010】
排水に接する排水トラップの表面を本書では「排水面」と称する場合がある。よって、排水トラップは、封水の喫水面に接する複数の排水面を有する。喫水面に接する排水面には例えば、回転機構部の回転軸線を囲むよう配設されている内筒の内面、当該内筒の外面、及び、当該内筒を囲むよう配設されている外筒の内面の3つが含まれる。清掃部は、これら3つの面のうち少なくとも2つの面を清掃するために設けられている少なくとも2つの清掃部を備えてもよい。
【0011】
前記複数の清掃部の少なくとも1つは、対応するトラップ表面に沿って前記回転機構部の駆動により移動するよう前記回転機構部に取り付けられている紐状部材を備えてもよい。前記紐状部材の側面は、前記喫水面を跨ぐように前記トラップ表面に接触する接触部位を有してもよい。
【0012】
この態様によると、紐状部材は、その側面の接触部位が回転機構部の駆動により排水トラップの表面に対し接触しながら移動するように、回転機構部に取り付けられている。このようにして、紐状部材の側面を用いて、排水トラップの表面を清掃することができる。よって、一般的な刷子またはブラシ等に比べて、水の抵抗や摩擦抵抗を低減した清掃装置を提供することができる。また、刷子等に比べて汚れにくい清掃装置を提供することができる。
【0013】
「紐状部材」は、その長手方向に延在する側面を有し、当該側面の少なくとも一部分が排水面に接触する任意の部材であり、例えば、ワイヤ状部材、線状部材、ひげ状部材、繊維状部材、または任意の長尺部材であってもよい。紐状部材は、外力により変形可能であってもよく、好ましくは、長手方向に垂直な方向に曲げ変形可能であってもよい。その場合、紐状部材の初期形状(すなわち変形前の形状)は、直線的であってもよいし、湾曲していてもよいし、その他の任意の形状であってもよい。また、紐状部材の長手方向に垂直な断面は、円形またはその他の任意の形状であってもよい。
【0014】
前記複数の清掃部の少なくとも1つは、前記紐状部材として、弾性を有する第1清掃ワイヤを備え、前記第1清掃ワイヤに作用する弾性力によって前記接触部位が前記トラップ表面に押し付けられるように前記第1清掃ワイヤの端部が前記回転機構部に取り付けられていてもよい。
【0015】
この態様によると、第1清掃ワイヤが弾性的な復元力によってトラップ表面に押し付けられるので、第1清掃ワイヤがトラップ表面に軽く接触している場合に比べて、トラップ表面に付着した汚れを掻き取りやすい。また、第1清掃ワイヤがトラップ表面に対し移動するとき、第1清掃ワイヤ自身に作用する弾性的な復元力によってトラップ表面に追従して接触し続けることができる。よって、例えば、排水トラップの中心から回転機構部の回転軸線が偏心している場合や排水トラップの断面が真円ではない場合のように、回転軸線とトラップ表面との距離が周方向に変化する場合にも、第1清掃ワイヤはトラップ表面を容易に清掃することができる。
【0016】
本書においてある部材が「弾性」を有するとは、その部材が理想的な弾性体であることを含むが、それに限られない。第1清掃ワイヤを例に挙げると、排水トラップに取り付けたとき第1清掃ワイヤはトラップ表面との接触により初期形状からある程度の塑性変形を呈してもよい。また、第1清掃ワイヤは、回転機構部の駆動によりトラップ表面に対し移動するとき、周方向の少なくとも一部において回転軸線とトラップ表面との距離変化に追従するものであってもよい。つまり、第1清掃ワイヤは、回転軸線とトラップ表面との距離変化に全周にわたって追従しなくてもよい。
【0017】
前記排水トラップは、前記封水の喫水面に接する外周面を有する内筒を備えてもよい。前記複数の清掃部の少なくとも1つは、前記紐状部材として、弾性を有し、前記外周面を囲う環を形成する第2清掃ワイヤを備え、前記第2清掃ワイヤに作用する弾性力によって前記接触部位が前記外周面に押し付けられるように前記第2清掃ワイヤの両端部が前記回転機構部に取り付けられていてもよい。
【0018】
この態様によると、排水トラップの内筒外周面の清掃に環状の第2清掃ワイヤが用いられるので、排水トラップの内筒外周面を容易に清掃することができる。第2清掃ワイヤの「弾性」についても、第1清掃ワイヤと同様に、理想的な弾性体であることを要しない。
【0019】
前記回転機構部は、前記排水トラップに回転自在に支持される回転体を備え、前記複数の清掃部は、前記回転体に取り付けられていてもよい。
【0020】
この態様によると、共通の回転体に複数の清掃部が取り付けられるので、清掃部ごとに回転体を設ける場合に比べて、回転機構部の構成を簡略にすることができる。
【0021】
前記清掃装置は、前記複数の清掃部の少なくとも1つを前記回転機構部に連結する弾性部をさらに備えてもよい。
【0022】
この態様によると、回転機構部との清掃部の連結部分である弾性部を変形させ、例えば清掃部を回転機構部に接近させることができる。そのため、清掃装置を排水トラップに取り付ける際に、排水トラップの比較的小さい開口部から清掃装置を挿入することが可能となる。弾性部の変形は取り付け後に弾性的に復元され、清掃部は初期位置に戻されるので、清掃装置の使用にあたり影響は生じない。
【0023】
前記回転機構部は、前記排水トラップに回転自在に支持される回転体を備えてもよい。前記紐状部材の端部は、前記回転体の回転軸方向に関して前記接触部位とは異なる位置で、前記回転体に取り付けられていてもよい。
【0024】
この態様によると、紐状部材の接触部位と取付端とが回転軸方向に異なる位置にある。これは、比較的狭い隙間を容易に清掃することに役立つ。例えば、紐状部材の一端を軸方向下方にて取り付け、軸方向上方に設けられている隙間に紐状部材の他端を進入させ、そうした隙間に面する排水面を清掃することが可能となる。
【0025】
前記接触部位は、前記回転機構部の駆動による前記紐状部材の移動方向とは異なる方向に延在してもよい。
【0026】
この態様によると、紐状部材は排水面との接触部位において、排水面に対する移動方向と交差する(例えば直交する)方向に延在する。そのため、紐状部材が排水面に沿って移動するとき、紐状部材の接触部位の軌跡は排水面上である幅をもつ帯状の領域となる。したがって、排水面に対する紐状部材の移動により、紐状部材は排水面上で帯状に広がる領域を清掃することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、排水トラップを効率的に清掃する清掃装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る排水装置100の側面図を示す。
図2は、本発明の第1実施形態に係る清掃装置10の要部の側面図を示す。
図1には、清掃装置10が排水装置100に取り付けられた状態を示し、
図2には、排水装置100に取り付ける前の清掃装置10の初期形状を示す。
図1においては清掃装置10の全体を図示するために、排水トラップ104は断面を示す。また、
図3(a)及び
図3(b)は、
図2に示す清掃装置10の第1清掃ワイヤ12の変形を例示する概略図である。
図4(a)及び
図4(b)は、
図2に示す清掃装置10の第2清掃ワイヤ22の変形を例示する概略図である。
【0031】
図1に示されるように、排水装置100は、キッチンのシンク等の槽体(図示せず)の底部に設けられる排水ボウル102と、排水ボウル102の底部に設けられる排水トラップ104と、を備える。排水ボウル102は、槽体の底部から下向きに凹んだ凹部であり、その底部には排水口106が形成されている。排水トラップ104は、排水ボウル102の下側に設置されており、排水口106に接続されている。排水トラップ104には、封水108が貯留されている。
【0032】
排水トラップ104は、内筒110及び外筒112を有する。封水108は、内筒110と外筒112とによって保持されている。したがって、排水トラップ104は、4つの排水面、すなわち、内筒内周面114、内筒外周面116、外筒内周面118、及び外筒底面120を有する。これら4つの排水面のうち3つ、すなわち内筒内周面114、内筒外周面116、及び外筒内周面118は、各々が封水108の喫水面109に接する。
【0033】
内筒110及び外筒112はそれぞれ概ね円筒形状に形成されており、内筒110と外筒112とは同軸に配設されている。外筒112の側部上方には、排水トラップ104から外部に排水を流すための排水管(図示せず)が接続される出口部122が設けられている。外筒112の上端は接続部124により内筒110の上端に固定されている。内筒110の上端は排水口106に取り付けられており、そこから内筒110は軸方向下方へと出口部122を越えて外筒底面120に向けて延在する。
【0034】
排水トラップ104には、水車ユニット126が付設されている。水車ユニット126は外筒112の外側下部に設置されている。水車ユニット126は、水車(図示せず)を回転自在に収納する水車ハウジング128を備える。水車ハウジング128は給水管130から給水を受ける。水車ユニット126は、給水の水流によって水車が回転軸線140まわりに一定方向に回転するよう構成されている。水車ユニット126は、槽体への給水経路上にある。よって、槽体に設けられている水栓(図示せず)の吐水操作がなされると、水車が回転されるとともに、槽体に水が供給される。
【0035】
また、排水装置100は、羽根車ユニット132を備える。羽根車ユニット132は、羽根車134、回転軸136、及び駆動部138を備える。羽根車134は、排水口106の僅かに上方に配置されており、回転軸136の上端に取り外し可能に固定されている。羽根車134の外周部には回転羽根142が設けられており、羽根車134の中心部には通水孔144が形成されている。回転軸136の回転軸線140は、内筒110及び外筒112の中心軸に一致する。
【0036】
駆動部138は、回転軸136の下端に固定されている。駆動部138は、回転軸136から径方向外側に拡径された略円錐形状の部分である。駆動部138は、略円錐面状の駆動部側部146と、平坦な駆動部底部148と、を備える。駆動部138は、内筒110の下端と外筒底面120との間に配置され、内筒110とは非接触にかつ外筒底面120に回転自在に支持されている。
【0037】
駆動部138の内部には、磁石(図示せず)が納められている。この磁石に対応する磁石が水車ユニット126の水車に納められており、駆動部138は水車ユニット126の水車と磁気カップリングを形成する。従って、水車が回転するとき駆動部138も回転軸線140まわりに回転する。
【0038】
水栓の吐水操作がなされると、上述のように、水車が回転されるとともに、槽体に水が供給される。槽体からの排水は排水口106へと流入する。このとき、水車の回転により羽根車ユニット132も回転している。排水口106に流入する水は回転羽根142の回転により径方向外側に押し出され、排水口106の周囲に渦流が生じる。この渦流は、排水ボウル102の底面に付着したヌメリ等の汚れを除去する洗浄作用を提供する。このようにして、羽根車ユニット132は、排水ボウル102の底面を清掃する。よって、羽根車ユニット132は、清掃装置10の一部を構成する。
【0039】
回転羽根142により押し出された排水は主として通水孔144を通じて排水トラップ104に流入する。排水は、内筒110の内側に流入し、内筒110の下側から内筒外周面116と外筒内周面118との間へと流入し、さらに、出口部122から排水管へと流出する。このようにして、排水装置100は、槽体から排水トラップ104を経由して排水管へと排水を導く排水路を形成する。
【0040】
清掃装置10は、排水トラップ104を清掃する清掃部と、清掃部を駆動する回転機構部と、を備える。詳しくは後述するが、清掃部は、複数の紐状部材、例えば複数の清掃ワイヤを備える。回転機構部は、水車ユニット126及び羽根車ユニット132を備える。
【0041】
図1及び
図2に示されるように、清掃装置10は、複数の第1清掃ワイヤ12を備える。第1清掃ワイヤ12の初期形状は
図2に示されるように直線的であるが、排水トラップ104に設置された状態では
図1に示されるように、対応する排水面によって湾曲される。
【0042】
第1清掃ワイヤ12の素材は、排水トラップ104の素材とは異なることが望ましい。後述する第2清掃ワイヤ22についても同様である。一般に、同素材どうしの摩擦においては分子間力が強く働くので、摩耗が促進される。したがって、清掃ワイヤと排水トラップ104とを異素材で形成することにより、摩耗の進行を抑制することができる。また、排水トラップ104の保護をより確実にするためには、清掃ワイヤの素材は、排水トラップ104の素材に対してワイヤ側が摩耗するよう選定されることが望ましい。
【0043】
複数の第1清掃ワイヤ12は、具体的には、それぞれ異なる長さを有する4本のワイヤからなる。以下では説明の便宜上、これら4本のワイヤを長い方から順に、第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、第3ワイヤ12c、第4ワイヤ12dと称する。
【0044】
複数の第1清掃ワイヤ12は、それぞれ対応する排水面を清掃するために設けられている。第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、及び第3ワイヤ12cは、外筒内周面118に対応づけられており、第4ワイヤ12dは外筒底面120に対応づけられている。つまり、第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、及び第3ワイヤ12cは、外筒内周面118を清掃し、第4ワイヤ12dは、外筒底面120を清掃する。
【0045】
第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、及び第3ワイヤ12cは、内筒110と外筒112との間において、外筒内周面118に沿って概ね回転軸方向に延在するよう配置されている。第4ワイヤ12dは、羽根車ユニット132の駆動部138と外筒112との間において、外筒底面120に沿って概ね径方向に延在するよう配置されている。
【0046】
第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、及び第3ワイヤ12cはそれぞれ、駆動部側部146に取り付けられているワイヤ取付端14a、14b、14cを有する。第4ワイヤ12dは、駆動部底部148に取り付けられているワイヤ取付端14dを有する。また、第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、第3ワイヤ12c、及び第4ワイヤ12dはそれぞれ、ワイヤ取付端14a、14b、14c、14dと反対側にワイヤ先端16a、16b、16c、16dを有する。ワイヤ先端16は固定されておらず、自由端である。このようにして、第1清掃ワイヤ12は、一端のみが駆動部138に取り付けられている。よって、第1清掃ワイヤ12は、駆動部138の回転により回転軸線140まわりに回転する。
【0047】
第1清掃ワイヤ12は、その初期形状におけるワイヤ取付端14からワイヤ先端16までの距離が、排水トラップ104に設置したときのワイヤ取付端14から対応する排水面までの距離よりも長くなるように、設計されている。言い換えれば、そうした距離関係が得られるように、第1清掃ワイヤ12の駆動部138への取付位置または取付角度が定められ、及び/または、第1清掃ワイヤ12の寸法(例えば長さ)または形状が定められている。
【0048】
図3(a)には、第1ワイヤ12aの初期形状を例示する。図示されるように、第1ワイヤ12aの長さLは、ワイヤ取付端14aからワイヤ先端16aまでの距離Hがワイヤ取付端14aから外筒内周面118までの距離Kより長くなるよう十分に長い。ここで、距離H及び距離Kはいずれも回転軸線140に直交する径方向の距離である。
図3(a)においては外筒内周面118を破線で示す。第1ワイヤ12aは、ワイヤ先端16aを斜め上方に向けるように取り付けられている。よって、回転軸線140からワイヤ先端16aまでの距離R1は、回転軸線140からワイヤ取付端14aまでの距離R2より長い。
【0049】
第2ワイヤ12b及び第3ワイヤ12cについても同様である。ただし、第2ワイヤ12bの取付位置は第1ワイヤ12aと比べて軸方向に僅かに下方にあり、第2ワイヤ12bと回転軸線140とのなす角度は第1ワイヤ12aと回転軸線140とのなす角度より大きい。また、第3ワイヤ12cの取付位置は第2ワイヤ12bと比べて軸方向に僅かに下方にあり、第3ワイヤ12cと回転軸線140とのなす角度は第2ワイヤ12bと回転軸線140とのなす角度より大きい。第3ワイヤ12cはワイヤ先端16cを概ね水平方向に向けるように取り付けられている。
【0050】
第4ワイヤ12dは、ワイヤ先端16dを斜め下方に向けるように取り付けられている。第4ワイヤ12dの長さは、ワイヤ取付端14dからワイヤ先端16dまでの軸方向距離がワイヤ取付端14dから外筒底面120までの軸方向距離より長くなるよう十分に長い。
【0051】
このような距離関係のもとでは、
図3(a)から理解されるように、第1清掃ワイヤ12が初期形状を保持したまま清掃装置10を排水トラップ104に収容することはできない。そこで、第1清掃ワイヤ12は、弾性、例えば曲げ弾性を有する。第1清掃ワイヤ12は、その長手方向に垂直な方向に弾性的に曲げ変形可能であるよう構成されている。
【0052】
これにより、
図1及び
図3(b)に示されるように、第1清掃ワイヤ12は、排水面に接触する接触部位18をワイヤ先端16側に有する。また、第1清掃ワイヤ12は、接触部位18とワイヤ取付端14とを接続する撓み部位20を有する。
図3(b)には接触部位18及び部位20を第1ワイヤ12aについて例示する。
【0053】
接触部位18においては、第1清掃ワイヤ12の側面が排水面に接触する。第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、及び第3ワイヤ12cについてはそれらの側面が外筒内周面118に接触する。第1ワイヤ12a、第2ワイヤ12b、及び第3ワイヤ12cはそれぞれ、異なる軸方向位置にて外筒内周面118に接触する。第1ワイヤ12aが最も上方で外筒内周面118に接触し、第2ワイヤ12bは第1ワイヤ12aより下方で外筒内周面118に接触し、第3ワイヤ12cは第2ワイヤ12bより下方で外筒内周面118に接触する。特に、第1ワイヤ12aは、外筒内周面118に沿って喫水面109を跨ぐように配設されている。第4ワイヤ12dは外筒底面120に接触する。
【0054】
また、撓み部位20においては、
図3(b)において矢印21で図示するように、第1清掃ワイヤ12の曲げ弾性により曲げ変形が生じている。そのため第1清掃ワイヤ12には径方向外向きの弾性力が作用する。この弾性力によって、接触部位18が排水面に押し付けられる。
図3(b)においては第1ワイヤ12aの初期形状を破線で示す。また、第1清掃ワイヤ12が回転するときに生じる遠心力も、接触部位18の排水面への押し付けに寄与する。
【0055】
したがって、駆動部138の回転により第1清掃ワイヤ12が回転軸線140まわりに回転するとき、第1清掃ワイヤ12の接触部位18は、排水面に押し付けられながら周方向に移動する。こうして、第1清掃ワイヤ12はその側面により排水面を擦りながら回転する。このようにして、第1清掃ワイヤ12は、排水面に付着した汚れを除去し、排水面を清掃することができる。
【0056】
また、第1清掃ワイヤ12の接触部位18は、ワイヤ取付端14とは回転軸方向に異なる位置にある。そのため、第1清掃ワイヤ12は、ワイヤ取付端14から回転軸方向に離れた場所を清掃することができる。例えば、第1ワイヤ12aは、ワイヤ取付端14aが回転軸方向において下方にあり、そこから上方に向けて内筒外周面116と外筒内周面118との隙間の深部(即ち上部)へと進入している。このようにして、第1清掃ワイヤ12は、比較的狭い隙間に面する排水面を容易に清掃することができる。
【0057】
第1清掃ワイヤ12の接触部位18は、回転軸方向に延在しており、駆動部138の回転により外筒内周面118に沿って周方向に移動する。接触部位18の延在方向と接触部位18の移動方向とは直交する。よって、第1清掃ワイヤ12は、接触部位18の長さに応じた幅をもつ帯状の比較的広い領域を清掃することができる。
【0058】
更に、
図1に示されるように、清掃装置10は、内筒外周面116を清掃する第2清掃ワイヤ22を備える。第2清掃ワイヤ22は、取付の態様が第1清掃ワイヤ12と異なるが、その余については同様である。冗長を避けるため、相違点を中心に説明する。
【0059】
第2清掃ワイヤ22は、その両端部がそれぞれ駆動部側部146に取り付けられている。これら2つの取付部24は、回転軸136に対し一方側に位置しており互いにごく近接している。第2清掃ワイヤ22の中央部26は回転軸136に対し取付部24とは反対側に位置する。中央部26は取付部24に比べて軸方向に上方に位置するので、第2清掃ワイヤ22は、回転軸線140に対し斜めに配置されている。第2清掃ワイヤ22は内筒外周面116を囲う環を形成する。この環は略楕円形状を有する。なお、中央部26は、湾曲していてもよいし、折り返されていてもよい。
【0060】
第2清掃ワイヤ22は、中央部26と取付部24との間においてワイヤ側面が内筒外周面116に接触する。第2清掃ワイヤ22は、この接触部位28が内筒外周面116に沿って喫水面109を跨ぐように配設されている。第2清掃ワイヤ22は、弾性、例えば曲げ弾性及びねじれ弾性を有しており、第2清掃ワイヤ22に作用する弾性力によって接触部位28が外周面に押し付けられる。
【0061】
仮に、第2清掃ワイヤ22を単に湾曲させて環状に取り付けたとすると、その曲げ変形による弾性的な復元力は、径方向に外向きに作用することになる。この場合、第2清掃ワイヤ22を弾性力によって充分に内筒外周面116に内向きに押し付けるのは難しい。そこで、第2清掃ワイヤ22には取付上の工夫がなされている。これを次に説明する。
【0062】
取付前の第2清掃ワイヤ22は第1清掃ワイヤ12と同様に直線状である。取付に際して第2清掃ワイヤ22は湾曲され、上述のように略楕円形の環を形成する。しかし、
図4(a)に示されるように、第2清掃ワイヤ22の初期形状において楕円環は回転軸136の外側にあり、従って第2清掃ワイヤ22は回転軸136を囲んでいない。
【0063】
清掃装置10の取付に際し予め、第2清掃ワイヤ22は、
図4(a)に矢印30で図示するように、取付部24を中心として回転される。そうして第2清掃ワイヤ22は、
図4(b)に示すように、楕円環が回転軸136を囲う角度位置に達するまでねじられる。よって、第2清掃ワイヤ22には、曲げだけでなく、ねじれ変形も生じている。この変形状態で、第2清掃ワイヤ22は、
図1に示されるように、内筒外周面116を囲う環を形成するよう排水トラップ104に取り付けられる。このようにして、第2清掃ワイヤ22に曲げ及びねじれの連成変形を生じさせることにより、第2清掃ワイヤ22の長手方向に沿って局所的に弾性力を径方向内向きに作用させることができる。こうして径方向内向きに弾性力が作用する領域が上述の接触部位28に相当する。
【0064】
駆動部138の回転により第2清掃ワイヤ22が回転軸線140まわりに回転するとき、第2清掃ワイヤ22の接触部位28は、内筒外周面116に押し付けられながら周方向に移動する。こうして、第2清掃ワイヤ22はその側面により内筒外周面116を擦りながら回転する。したがって、第2清掃ワイヤ22は、内筒外周面116に付着した汚れを除去し、内筒外周面116を清掃することができる。
【0065】
第2清掃ワイヤ22の接触部位28は、回転軸方向に対し斜めに延在しており、駆動部138の回転により内筒外周面116に沿って周方向に移動する。接触部位28の延在方向と接触部位28の移動方向とは斜めに交差する。よって、第2清掃ワイヤ22は、接触部位28の長さに応じた幅をもつ帯状の比較的広い領域を清掃することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によると、清掃装置10は、多数の毛材を有する典型的なブラシ等に比べて、顕著に少数の清掃ワイヤを有する。そのため、回転に伴う水の抵抗や摩擦抵抗が低減され、小さい駆動力で容易に清掃装置10を駆動することができる。また、汚れの絡まりや付着も軽減されるので、汚れにくい清掃装置10及び排水装置100を提供することができる。
【0067】
また、清掃装置10は、排水トラップ104の複数の排水面を清掃することができる。特に、経験的に汚れやすいことがわかっている封水108の喫水面109に接する領域を清掃することができる。よって、人手による清掃の手間を軽減することができる。好ましくは、人手による清掃が不要となる。
【0068】
清掃装置10においては複数の清掃ワイヤが共通の回転体、即ち駆動部138に取り付けられている。そのため、清掃ワイヤごとに回転体を設ける場合に比べて、回転機構部の構成を簡略にすることができる。
【0069】
なお、清掃ワイヤの配置は上述のものに限られず、追加の清掃ワイヤが設けられていてもよい。例えば、
図5に示されるように、内筒内周面114を清掃する第5ワイヤ12eが設けられていてもよい。第5ワイヤ12eは、既述の他の第1清掃ワイヤ12と同様に駆動部138に取り付けられている。第5ワイヤ12eは、内筒内周面114に沿って喫水面109を跨ぐように配設されていてもよい。
【0070】
また、内筒外周面116を清掃する第1清掃ワイヤ12が設けられていてもよい。この場合、初期形状におけるワイヤ取付端からワイヤ先端までの径方向距離Hがワイヤ取付端から内筒外周面116までの距離Kより長くてもよい。回転軸線140からワイヤ先端までの距離R1が回転軸線140からワイヤ取付端までの距離R2より短くてもよい。こうした距離関係で第1清掃ワイヤ12を取り付けるために、図示される駆動部138よりも大径の駆動部が用いられてもよい。
【0071】
あるいは、排水ボウル102の底面を清掃する第1清掃ワイヤ12が羽根車134に取り付けられていてもよい。
【0072】
2本またはそれ以上の清掃ワイヤが、ある排水面の同じ領域を清掃してもよい。例えば、同じ寸法及び形状を有する複数の清掃ワイヤが同じ取付位置及び取付角度で駆動部138に取り付けられていてもよい。あるいは、同じ寸法及び形状を有する複数の清掃ワイヤが同じ取付角度で周方向に等角度間隔で駆動部138に取り付けられていてもよい。
【0073】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る排水装置100の側面図を示す。
図7は、本発明の第2実施形態に係る清掃装置50の要部の斜視図を示す。第1実施形態に係る清掃装置10が清掃部として清掃ワイヤを備えるのに対し、第2実施形態に係る清掃装置50は、清掃部としてブラシを備える点で異なる。この相違点を除き、第2実施形態に係る清掃装置50は、第1実施形態に係る清掃装置10と同様である。以下の説明では同様の箇所については同様の符号を付し、冗長を避けるためそれらの説明を適宜省略する。
【0074】
清掃装置50は、排水トラップ104を清掃する複数の清掃ブラシ52と、清掃部を駆動する回転機構部と、を備える。回転機構部は、第1実施形態と同様に、水車ユニット126及び羽根車ユニット132を備える。
【0075】
複数の清掃ブラシ52は、それぞれ対応する排水面を清掃するために設けられている。複数の清掃ブラシ52は、具体的には、3つのブラシからなる。以下では説明の便宜上、これら3つのブラシをそれぞれ、第1ブラシ52a、第2ブラシ52b、第3ブラシ52cと称する。
【0076】
第1ブラシ52aは、外筒内周面118に沿って喫水面109を跨ぐように配設されており、外筒内周面118において喫水面109に接する部分を含む領域を清掃する。第2ブラシ52bは、内筒外周面116に沿って喫水面109を跨ぐように配設されており、内筒外周面116において喫水面109に接する部分を含む領域を清掃する。第3ブラシ52cは、内筒内周面114に沿って喫水面109を跨ぐように配設されており、内筒内周面114において喫水面109に接する部分を含む領域を清掃する。
【0077】
回転軸136には、複数の清掃ブラシ52を支持するブラシ支持部53が設けられている。ブラシ支持部53は、内筒110の内側において回転軸136を囲む筒部材であり、回転軸136と一体に回転するよう回転軸136に固定されている。ブラシ支持部53は、第1ブラシ52a及び第2ブラシ52bを回転軸136の一方側に支持し、第3ブラシ52cを回転軸136の他方側に支持する。
【0078】
第1ブラシ52aは、ブラシ支持部53に対し固定的に支持される第1ブラシ基部54aと、第1ブラシ基部54aに垂直に植設された多数の毛材を有する第1ブラシ毛部56aと、を備える。第1ブラシ基部54aは、内筒110と外筒112との間において回転軸線140と平行に延在する。第1ブラシ毛部56aは、第1ブラシ基部54aの長手方向の全体にわたって設けられている。第1ブラシ毛部56aは、回転軸136の回転方向58、すなわち排水トラップ104における周方向における下流側に向けられており、毛材の先端及び側面が外筒内周面118に接触している。
【0079】
第1ブラシ基部54aは、連結部材60に固定されている。連結部材60は、第1ブラシ52aをブラシ支持部53に取り付けるために設けられている。第1ブラシ52aは、連結部材60を介して回転軸136に連結されている。
【0080】
連結部材60は、第1ブラシ基部54aを固定するブラシ固定部62と、ブラシ支持部53に取り付けられる取付部64と、ブラシ固定部62と取付部64とを接続する接続部66と、を備える。連結部材60は、棒状部材又は細幅の板状部材をその中間部において180度湾曲させ又は折り曲げた形状を有する。湾曲部分が接続部66に相当し、その片側がブラシ固定部62であり、もう片側が取付部64である。ブラシ固定部62は、内筒110と外筒112との間において回転軸線140と平行に延在する。第1ブラシ基部54aは、ブラシ固定部62の外側面に固定されている。取付部64はブラシ固定部62より短い。
【0081】
連結部材60は、弾性を有する材料で形成されている。そのため、接続部66は弾性的に変形可能である。これは、次に述べるように、排水トラップ104への清掃装置50の取付に役立つ。
【0082】
清掃装置50の外径は、外筒内周面118を清掃する第1ブラシ52aによって定められる。つまり、清掃装置50の外径は、外筒112の内径に相当する。取付の際、清掃装置50は排水口106側から挿入されるが、その挿入口の内径は内筒110程度であり、外筒112の内径より小さい。よって、清掃装置50はそのままの形状ではこの挿入口を通れない。
【0083】
ところが、本実施形態においては、接続部66を変形させ、第1ブラシ52aを回転軸136に接近させることができる。こうして、清掃装置50の径を小さくして、排水口106側から挿入口を通じて清掃装置50を定位置に取り付けることができる。接続部66の変形は取り付け後に弾性的に復元されるので、清掃装置50の使用にあたり影響は生じない。
【0084】
第2ブラシ52bは、第1ブラシ52aとほぼ同様の構成を有する。第2ブラシ52bは、連結部材60を介してブラシ支持部53に取り付けられ、回転軸136に連結されている。
【0085】
第2ブラシ52bは、ブラシ固定部62の内側面に固定され、ブラシ支持部53に対し固定的に支持される第2ブラシ基部54bと、第2ブラシ基部54bに垂直に植設された多数の毛材を有する第2ブラシ毛部56bと、を備える。第2ブラシ基部54bは、内筒110と外筒112との間において回転軸線140と平行に延在する。第2ブラシ毛部56bは、第2ブラシ基部54bの長手方向のほぼ全体にわたって設けられている。第2ブラシ毛部56bは、回転軸136の回転方向58における下流側に向けられており、毛材の先端及び側面が内筒外周面116に接触している。
【0086】
第3ブラシ52cは、ブラシ支持部53に固定される第3ブラシ基部54cと、第3ブラシ基部54cに垂直に植設された多数の毛材を有する第3ブラシ毛部56cと、を備える。第3ブラシ基部54cは、内筒110の内側にて回転軸線140と平行に延在する。第3ブラシ毛部56cは、第3ブラシ基部54cの長手方向の全体にわたって設けられている。第3ブラシ毛部56cは、回転軸136の回転方向58における下流側に向けられており、毛材の先端及び側面が内筒内周面114に接触している。
【0087】
よって、第1ブラシ52aは、回転軸136が回転するとき第1ブラシ基部54aを先頭として周方向に移動する。このとき、第1ブラシ毛部56aは、毛材の先端及び側面が外筒内周面118に接触しながら周方向に移動する。このようにして、第1ブラシ52aは、外筒内周面118に付着した汚れを除去する。
【0088】
同様に、第2ブラシ52bは、回転軸136が回転するとき第2ブラシ基部54bを先頭として周方向に移動する。このとき、第2ブラシ毛部56bは、毛材の先端及び側面が内筒外周面116に接触しながら周方向に移動する。このようにして、第2ブラシ52bは、内筒外周面116に付着した汚れを除去する。
【0089】
第3ブラシ52cについても同様に、回転軸136が回転するとき第3ブラシ基部54cを先頭として周方向に移動する。このとき、第3ブラシ毛部56cは、毛材の先端及び側面が内筒内周面114に接触しながら周方向に移動する。このようにして、第3ブラシ52cは、内筒内周面114に付着した汚れを除去する。
【0090】
本実施形態によると、複数の清掃ブラシ52を用いて排水トラップ104の複数の表面、具体的には、内筒内周面114、内筒外周面116、及び外筒内周面118を清掃することができる。特に、これら表面において喫水面109に接する部分を清掃することができる。汚れやすい部分を自動的に清掃することにより、排水トラップ104の清掃の手間を軽減することができる。
【0091】
なお、第2実施形態に係る清掃装置50は、清掃ブラシ52に加えて、第1の実施形態に係る第1清掃ワイヤ12及び/または第2清掃ワイヤ22を備えてもよい。例えば、清掃装置50は、外筒底面120を清掃する第4ワイヤ12dを備えてもよい。また、複数の清掃ブラシ52のいずれかに代えて、第1清掃ワイヤ12及び/または第2清掃ワイヤ22が設けられていてもよい。
【0092】
(第3実施形態)
第1実施形態及び第2実施形態において清掃装置10はキッチンのシンクの排水トラップ104に設けられているが、本発明の実施の形態に係る清掃装置は、その他の水回り設備の排水トラップに設けられてもよい。また、第1実施形態及び第2実施形態において清掃装置10は給水の流れによって駆動されているが、本発明の実施の形態に係る清掃装置は、排水の流れによって駆動されてもよい。
【0093】
図8は、本発明の第3実施形態に係る排水装置200及び清掃装置230の側断面図を概略的に示す。排水装置200は、浴室用または洗濯機用の防水パンに設けられている。
【0094】
図8に示されるように、床スラブ201の上側に、床スラブ201の上面から離隔して下地板202が配設されている。下地板202の下面からは、複数本の足ボルト(アジャスタボルト)203が下方に向って突設されており、この足ボルト203によって下地板202が所定の高さに支持されている。各足ボルト203は、下地板202の下面に設けられたナット203aに螺着されており、各足ボルト203のナット203aへのねじ込み量を調節することにより、下地板202の高さの調整や水平出しが行われる。下地板202の上側に防水シート206が敷設されている。防水シート206の上側にセメント板207が敷設され、このセメント板207の上にタイル208が貼り付けられている。
【0095】
床スラブ201の所定位置から排水管209が立ち上げられており、この排水管209の上側に配置された下地板202には、排水トラップ設置用の開口210が設けられている。この開口210に排水トラップ211が設置され、排水管209に接続されている。
【0096】
排水トラップ211は、上部が開放した容器形状のトラップ本体212と、トラップ本体212の底部に設けられた流出口213と、流出口213を取り囲むようにトラップ本体212の底部上面から立設された周回壁状の溢流壁214と、溢流壁214に対し上方から被さった封水椀215と、トラップ本体212の底部下面から下方へ突設された、流出口213と排水管209とを接続するための排水管接続筒216と、トラップ本体212の上縁外周から全周にわたって側方へ突設された鍔部217と、鍔部217に対し上方から重ね合わされる押えリング218とを有している。
【0097】
開口210は、このトラップ本体212の通過は許容するが、鍔部217の通過は許容しない大きさである。下地板202の上面は、開口210の周縁部が周囲よりも一段低い段部219となっている。この段部219は、鍔部217が上方から係合可能であり、その深さは、鍔部217の厚みと同等か又はそれよりも若干大きなものとなっている。
【0098】
排水トラップ211の上側に排水ユニット本体221が装着される。この排水ユニット本体221は、トラップ本体212に内嵌する筒部221aと、筒部221aの上縁外周から放射状に形成された水受け皿221bとを有している。水受け皿221bは、押えリング218の上面をすっぽりと覆いうる大きさ及び形状となっている。水受け皿221bの周縁部には土手部221cが形成されている。
【0099】
この排水ユニット本体221を排水トラップ211に装着するに当っては、上方から筒部221aをトラップ本体212内に挿入し、水受け皿221bを押えリング218の上側に重ね合わせる。なお、筒部221aの外周にはOリング221dが装着されており、筒部221aとトラップ本体212の内周面との間はこのOリング221dによって封止される。
【0100】
清掃装置230は、回転機構部232と、回転機構部232により回転駆動される複数の第1清掃ワイヤ234と、を備える。回転機構部232は、封水椀215の頂部下面に設けられている軸受部236と、軸受部236に回転自在に支持されている回転軸238と、を備える。軸受部236は例えば滑り軸受けであり、回転軸238の上端を回転可能に支持する。回転軸238は、溢流壁214の内側にて、封水椀215及び溢流壁214と同軸に延在する。回転軸238の下端には羽根部240またはプロペラ部材が設けられている。羽根部240またはプロペラ部材は、溢流壁214に流入する排水の水流を受けて回転するよう構成されている。
【0101】
第1清掃ワイヤ234は、回転軸238と一体に回転するよう回転軸238の上端部に取り付けられている。第1清掃ワイヤ234は、3本のワイヤからなる。外側から順に、1本目のワイヤは、回転軸238の上端部から封水椀215の内面に沿って封水椀215の下端へと延びている。2本目のワイヤは、回転軸238の上端部から溢流壁214の外面に沿って溢流壁214の下部へと延びている。3本目のワイヤは、回転軸238の上端部から溢流壁214の内面に沿って溢流壁214の下部へと延びている。
【0102】
第1清掃ワイヤ234の側面が対応する排水面に接触している。第1清掃ワイヤ234に作用する弾性力によって、第1清掃ワイヤ234は対応する排水面に押し付けられている。また、第1清掃ワイヤ234は、それぞれ対応する排水面に沿って、封水242の喫水面244を跨ぐようにして、配設されている。封水242は、封水椀215と溢流壁214とにより保持されている。
【0103】
溢流壁214の内側に排水が流入すると、羽根部240の回転により回転軸238及び第1清掃ワイヤ234が回転する。第1清掃ワイヤ234は、その側面により排水面を擦りながら周方向に移動する。こうして、1本目のワイヤは封水椀215の内面を清掃し、2本目のワイヤは溢流壁214の外面を清掃し、3本目のワイヤは溢流壁214の内面を清掃する。
【0104】
なお、第3実施形態に係る清掃装置230は、第1清掃ワイヤ234とともに、または第1清掃ワイヤ234の少なくとも1つに代えて、他の清掃部、例えば第2実施形態に係る清掃ブラシ52を備えてもよい。例えば、上述の3本目のワイヤに代えて、溢流壁214の内面を清掃するブラシが回転軸238に設けられていてもよい。
【0105】
以上、本発明を実施の形態にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0106】
第1実施形態及び第3実施形態においては、第1清掃ワイヤ12等の紐状部材は、その長手方向の全体にわたって弾性を有する。しかし、紐状部材が弾性を有する場合においては、その一部だけが弾性を有してもよい。例えば、紐状部材は、取付端またはその近傍に弾性部を有してもよい。この場合、紐状部材は、その長手方向において中間部から弾性部と反対側の先端部にかけて剛体部を有してもよい。剛体部は、排水面に接触するよう適合された湾曲形状または屈曲形状を有してもよい。このようにしても、紐状部材を排水面に弾性的に押し付けることが可能である。