【文献】
Wang J et al,Improved suppression of plaque-mimicking artifacts in black-blood cartid atherosclerosis imaging using a multislice motion-sensitized driven-equilibrium (MSDE) turbo spin-echo (TSE) sequence,Magnetic Resonance in Medicine,米国,2007年11月,vol. 58, no. 5,973-981
【文献】
Levitt M H,Composite Pulses,Historical Encycropedia of Nuclear Magnetic Resonance,米国,1396-1411,1996年,vol. 2
【文献】
A. N. Priest ,et al,Initial evaluation of a new NCE Angiography method in patients and comparison with TRICKS,Proceedings of International Society for magnetic Resonance in Medicne,2010年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0011】
図1は、本発明の一形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ)100は、マグネット2、テーブル3、受信RFコイル(以下、「受信コイル」と呼ぶ)4などを有している。
【0012】
マグネット2は、被検体13が収容されるボア21を有している。また、マグネット2には、静磁場を発生させるための超伝導コイル、勾配パルスを印加するための勾配コイル、およびRFパルスを印加するためのRFコイルなどを有している。
【0013】
テーブル3は、被検体13を支持するクレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体13はボア21に搬送される。
受信コイル4は、被検体13からの磁気共鳴信号を受信する。
【0014】
MR装置100は、更に、送信器5、勾配磁場電源6、受信器7、コンピュータ8、操作部11、および表示部12などを有している。
【0015】
送信器5は、RFコイルに電流を供給する。勾配磁場電源6は勾配コイルに電流を供給する。受信器7は、受信コイル4が受信した信号に対して、検波などの信号処理を行う。尚、マグネット2、受信コイル4、送信器5、勾配磁場電源6、受信器7を合わせたものがスキャン手段に相当する。
【0016】
コンピュータ8は、表示部12に必要な情報を伝送したり、画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。コンピュータ8は、プロセッサ9およびメモリ10などを有している。
【0017】
メモリ10には、プロセッサ9により実行されるプログラムなどが記憶されている。プロセッサ9は、メモリ10に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに記述されている処理を実行する。
図2に、プロセッサ9が実行する処理を示す。プロセッサ9は、メモリ10に記憶されているプログラムを読み出すことにより、画像作成手段91などを構成する。
【0018】
画像作成手段91は、受信器7から受け取ったデータに基づいて、撮影部位の画像を作成する。
プロセッサ9は、画像作成手段91を構成する一例であり、メモリ10に記憶されたプログラムを実行することによりこの手段として機能する。
【0019】
図1に戻って説明を続ける。
操作部11は、オペレータにより操作され、種々の情報をコンピュータ8に入力する。表示部12は種々の情報を表示する。
MR装置100は、上記のように構成されている。
【0020】
図3は、本形態における撮影部位を概略的に示す図である。
図3において、SI方向は被検体の頭尾方向を表しており、RL方向は被検体の左右方向を表しており、AP方向は被検体の前後方向を表している。
【0021】
本形態では、血液aの信号を低下させて血管Aの血管壁を撮影するためのスキャンを実行する例について説明する。尚、以下の説明では、本形態におけるスキャンの効果を明確にするために、本形態におけるスキャンを説明する前に、血管壁を撮影するために使用されている通常のスキャンについて説明する。
【0022】
図4は、通常のスキャンの一例を示す図である。
図4では、スキャンSCを、複数の期間W1〜Wzに分けて示してある。
期間W1では、プリパレーションシーケンスDPおよびデータ収集シーケンスDAQが実行される。
【0023】
プリパレーションシーケンスDPは、3つのRFパルス(90
xパルスP
0、180
−xパルスP
1、90
xパルスP
2)を有している。
【0024】
90
xパルスP
0は、撮影部位を励起するための励起パルスである。180
−xパルスP
1は、分散した磁化ベクトルを再収束させるためのリフォーカスパルスである。90
xパルスP
2は、磁化ベクトルの横磁化を縦磁化に戻すためのフリップバックパルスである。
【0025】
また、プリパレーションシーケンスDPは、位相を分散させるためのMPG(motion probing gradient)を有している。尚、本形態では、MPGは1軸にのみ印加されているが、MPGを複数の軸に印加してもよい。
【0026】
次に、3つのRFパルス(90
xパルスP
0、180
−xパルスP
1、90
xパルスP
2)のフリップ角および位相について説明する。
【0027】
図4の下側には、RFパルスの位相を表すための座標軸が示されている。z軸は静磁場方向を表している。
【0028】
90
xパルスP
0およびP
2の「90
x」は、RFパルスのフリップ角が90°であり、RFパルスの位相がx軸に設定されていることを表している。したがって、90
xパルスP
0およびP
2は、x軸を中心にして磁化を90°回転させるRFパルスである。
【0029】
180
−xパルスP
1の「180
−x」は、RFパルスのフリップ角が180°であり、RFパルスの位相が−x軸(xy面内において、x軸から180°ずれた軸)に設定されていることを表している。したがって、180
xパルスP
1は、−x軸を中心にして磁化を180°回転させるRFパルスである。
【0030】
プリパレーションシーケンスを実行することにより、動きのある組織(例えば、血液)の縦磁化を、静止組織(例えば、血管壁)の縦磁化よりも十分に小さくすることができる。
【0031】
プリパレーションシーケンスDPを実行した後、撮影部位からイメージングデータを収集するためのデータ収集シーケンスDAQが実行される。データ収集シーケンスDAQで使用されるRFパルスや勾配磁場は図示省略されている。プリパレーションシーケンスDPにより、動きのある組織の縦磁化は小さくなっているので、データ収集シーケンスDAQを実行することにより、動きのある組織の信号が静止組織の信号よりも十分に低減されたMR信号を収集することができる。
【0032】
図4では、期間W1で実行されるシーケンスについて説明されているが、他の期間W2〜Wzでも、期間W1と同様に、プリパレーションシーケンスDPおよびデータ収集シーケンスDAQが実行される。期間W1〜Wzでデータ収集を行うことにより、画像再構成に必要なk空間のデータを収集することができる。
【0033】
次に、プリパレーションシーケンスDPが実行されている間の静止組織の磁化ベクトルの挙動について説明する。本形態では、プリパレーションシーケンスDPが実行されている間の静止組織の磁化ベクトルの挙動を調べるため、
図4に示すプリパレーションシーケンスDPを実行したときの磁化ベクトルの挙動をシミュレーションした。以下に、そのシミュレーション結果について説明する。
【0034】
図5はプリパレーションシーケンスDPが実行されている間の静止組織の磁化ベクトルの挙動のシミュレーション結果の説明図である。
尚、
図5におけるシミュレーション条件は、以下の通りである。
(1)B0不均一およびB1不均一は発生していない。
(2)プリパレーションシーケンスDPの90
xパルスP
0が印加される直前の時点t0では、静止組織の磁化ベクトルVの縦磁化MzはMz=1である(
図5(a)参照)。
(3)T2減衰、T1回復は無視する。
【0035】
以下、
図5について説明する。
プリパレーションシーケンスDPでは、先ず、90
xパルスP
0が印加される。
図5(a)に、90
xパルスP
0が印加される直前の時点t0における磁化ベクトルVを示し、
図5(b)に、90
xパルスP
0が印加された直後の時点t1における磁化ベクトルVを示す。磁化ベクトルVは、90
xパルスP
0により、x軸を中心にして90°回転する。90
xパルスP
0が印加された後、MPGが印加される。
【0036】
また、時点t1〜t2の間に、磁化ベクトルの位相が分散する。
図5(c)に、時点t1〜時点t2までの間に生じた位相分散を示す。位相分散により、0°〜360°の間の任意の位相を持つベクトルが現れるが、
図5(c)では、説明の便宜上、分散した磁化ベクトルを、2本の磁化ベクトルV1およびV2で示してある。磁化ベクトルV1は位相が0°であり、一方、磁化ベクトルV2は位相が180°である。また、
図5(c)には、位相分散により発生した磁化ベクトルの頂点で囲まれる面Sを示してある。時点t2の直後に、180
−xパルスP
1が印加される。
【0037】
図5(d)に、180
−xパルスP
1が印加された直後の時点t3における磁化ベクトルを示す。磁化ベクトルは、180
−xパルスP
1により、−x軸を中心にして180°回転する。したがって、磁化ベクトルV1と磁化ベクトルV2の位置が入れ替わる。180
−xパルスP
1が印加された後、MPGが印加される。
【0038】
また、時点t3〜t4の間に、分散していた磁化ベクトルが収束する。
図5(e)に、時点t3〜時点t4の間に収束した磁化ベクトルVを示す。磁化ベクトルVはy軸上に収束する。時点t3〜時点t4の時間は、時点t1〜時点t2の時間と同じである。時点t4の直後に、90
xパルスP
2が印加される。
【0039】
図5(f)に、90
xパルスP
2が印加された直後の時点t5における磁化ベクトルVを示す。磁化ベクトルVは、90
xパルスP
2により、x軸を中心にして90°回転する。90
xパルスP
2によって、磁化ベクトルVの縦磁化MzをMz=1に戻すことができる。
【0040】
したがって、プリパレーションシーケンスDPを実行することによって、静止組織の磁化ベクトルの縦磁化MzをMz=1に戻すことができる。一方、動きのある組織は、MPGの影響を受けるので、縦磁化が1よりも小さくなる。したがって、各組織の移動速度に応じて縦磁化の値を調整することができる。
【0041】
しかし、実際には、送信磁場不均一(B1不均一)が原因で、撮影部位内に、送信磁場強度が理想値よりも小さくなる領域や、逆に、送信磁場強度が理想値よりも大きくなる領域が現れる。このような領域が現れると、磁化ベクトルは、RFパルスのフリップ角よりも小さい角度しかフリップしなかったり、逆に、RFパルスのフリップ角よりも大きくフリップしてしまう。そこで、送信磁場強度が理想値よりも小さい場合の磁化ベクトルの挙動と、送信磁場強度が理想値よりも大きい場合の磁化ベクトルの挙動についてもシミュレーションした。以下に、そのシミュレーション結果について説明する。
【0042】
図6は、送信磁場強度が理想値よりも小さい場合の磁化ベクトル挙動のシミュレーション結果の説明図である。
尚、
図6におけるシミュレーション条件は、以下の通りである。
(1)B1不均一により、送信磁場強度が理想値からΔB1=−20%だけずれている。つまり、送信磁場強度は、理想値よりも20%小さい値である。
(2)撮影部位内では静磁場不均一は発生していない。つまり、静磁場不均一による周波数のずれ量ΔB0(Hz)はΔB0=0Hzである。
(3)90
xパルスP
0が印加される直前の時点t0では、静止組織の磁化ベクトルVの縦磁化MzはMz=1である(
図6(a)参照)。
(4)T2減衰、T1回復は無視する。
【0043】
以下、
図6について説明する。
プリパレーションシーケンスDPでは、先ず、90
xパルスP
0が印加される。
図6(a)に、90
xパルスP
0が印加される直前の時点t0における磁化ベクトルVを示し、
図6(b)に、90
xパルスP
0が印加された直後の時点t1における磁化ベクトルVを示す。ΔB1=−20%であるので、90
xパルスP
0のフリップ角は、90°よりも20%小さい角度、つまり、72°になる。したがって、磁化ベクトルVはx軸を中心として72°しか回転しないので、磁化ベクトルVにはMz成分が残る。90
xパルスP
0が印加された後、MPGが印加される。
【0044】
また、時点t1〜t2の間に、磁化ベクトルの位相が分散する。
図6(c)に、時点t1〜時点t2までの間に生じた位相分散を示す。位相分散により、0°〜360°の間の任意の位相を持つベクトルが現れるが、
図6(c)では、説明の便宜上、分散した磁化ベクトルを、2本の磁化ベクトルV1およびV2で示してある。磁化ベクトルV1は位相が0°であり、一方、磁化ベクトルV2は位相が180°である。また、
図6(c)には、位相分散により発生した磁化ベクトルの頂点で囲まれる面Sを示してある。時点t2の直後に、180
−xパルスP
1が印加される。
【0045】
図6(d)に、180
−xパルスP
1が印加された直後の時点t3における磁化ベクトルを示す。ΔB1=−20%であるので、180
−xパルスP
2のフリップ角は、180°よりも20%小さい角度、つまり、144°になる。したがって、分散した磁化ベクトルV1およびV2は、−x軸を中心として144°しか回転しない。180
−xパルスP
1が印加された後、MPGが印加される。
【0046】
また、時点t3〜t4の間に、分散していた磁化ベクトルが収束する。ただし、
図6(d)に示すように、磁化ベクトルは144°しか回転していないので、分散した磁化ベクトルを完全に収束させることはできない。
図6(e)に、時点t3〜時点t4の間に収束した磁化ベクトルを示す。
図6(e)において、磁化ベクトルV1と磁化ベクトルV2とを比較すると、磁化ベクトルV1と磁化ベクトルV2の位相がずれている。したがって、磁化ベクトルの頂点を結ぶと、一定の広がりを持つ面S1が現れ、磁化ベクトルが完全には収束していないことがわかる。時点t4の直後に、90
xパルスP
2が印加される。
【0047】
図6(f)に、90
xパルスP
2が印加された直後の時点t5における磁化ベクトルを示す。ΔB1=−20%であるので、90
xパルスP
2のフリップ角は、90°よりも20%小さい角度、つまり、72°になる。したがって、磁化ベクトルは、x軸を中心として72°しか回転しない。
図6(f)を参照すると、面S1は、z軸からy軸の近くにまで広がっており、縦磁化が完全には1に戻らないことがわかる。
【0048】
図6では、送信磁場強度が理想値よりも小さい場合の磁化ベクトルの挙動を説明したが、送信磁場強度が理想値より大きくなることもある。次に、送信磁場強度が理想値よりも大きい場合の磁化ベクトルの挙動について説明する(
図7参照)。
【0049】
図7は、送信磁場強度が理想値よりも大きい場合の磁化ベクトルの挙動のシミュレーション結果の説明図である。
尚、
図7におけるシミュレーション条件は、以下の通りである。
(1)B1不均一により、送信磁場強度が理想値からΔB1=20%だけずれている。つまり、送信磁場強度は、理想値よりも20%大きい値である。
(2)撮影部位内では静磁場不均一は発生していない。つまり、静磁場不均一による周波数のずれ量ΔB0(Hz)はΔB0=0Hzである。
(3)90
xパルスP
0が印加される直前の時点t0では、静止組織の磁化ベクトルVの縦磁化MzはMz=1である(
図7(a)参照)。
(4)T2減衰、T1回復は無視する。
【0050】
以下、
図7について説明する。
プリパレーションシーケンスDPでは、先ず、90
xパルスP
0が印加される。
図7(a)に、90
xパルスP
0が印加される直前の時点t0における磁化ベクトルVを示し、
図7(b)に、90
xパルスP
0が印加された直後の時点t1における磁化ベクトルVを示す。ΔB1=20%であるので、90
xパルスP
0のフリップ角は、90°よりも20%大きい角度、つまり、108°になる。したがって、磁化ベクトルVはx軸を中心として108°回転するので、磁化ベクトルVにはMz成分が残る。90
xパルスが印加された後、MPGが印加される。
【0051】
また、時点t1〜t2の間に、磁化ベクトルの位相が分散する。
図7(c)に、時点t1〜時点t2までの間に生じた位相分散を示す。位相分散により、0°〜360°の間の任意の位相を持つベクトルが現れるが、
図7(c)では、説明の便宜上、分散した磁化ベクトルを、2本の磁化ベクトルV1およびV2で示してある。磁化ベクトルV1は位相が0°であり、一方、磁化ベクトルV2は位相が180°である。また、
図7(c)には、位相分散により発生した磁化ベクトルの頂点で囲まれる面Sを示してある。時点t2の直後に、180
−xパルスP
1が印加される。
【0052】
図7(d)に、180
−xパルスP
1が印加された直後の時点t3における磁化ベクトルを示す。ΔB1=20%であるので、180
−xパルスP
1のフリップ角は、180°よりも20%大きい角度、つまり、216°になる。したがって、分散した磁化ベクトルV1およびV2は、−x軸を中心として216°回転する。180
−xパルスP
1が印加された後、MPGが印加される。
【0053】
また、時点t3〜t4の間に、分散していた磁化ベクトルが収束する。ただし、
図7(d)に示すように、磁化ベクトルは216°回転しているので、分散した磁化ベクトルを完全に収束させることはできない。
図7(e)に、時点t3〜時点t4の間に収束した磁化ベクトルを示す。
図7(e)において、磁化ベクトルV1と磁化ベクトルV2とを比較すると、磁化ベクトルV1と磁化ベクトルV2の位相がずれている。したがって、磁化ベクトルの頂点を結ぶと、一定の広がりを持つ面S2が現れ、磁化ベクトルが完全には収束していないことがわかる。時点t4の直後に、90
xパルスP
2が印加される。
【0054】
図7(f)に、90
xパルスP
2が印加された直後の時点t5における磁化ベクトルを示す。ΔB1=20%であるので、90
xパルスP
2のフリップ角は、90°よりも20%大きい角度、つまり、108°になる。したがって、磁化ベクトルV1およびV2は、x軸を中心として108°回転する。
図7(f)を参照すると、面S2は、z軸から−y軸の近くにまで広がっており、縦磁化が完全には1に戻らないことがわかる。
【0055】
したがって、プリパレーションシーケンスDPでは、B1不均一の影響を受けて、静止組織の縦磁化を十分に1に戻すことができないという問題がある。そこで、本形態では、静止組織の縦磁化を1(又は1に近い値に)戻すことができるように、プリパレーションシーケンスを構成している。以下に、本形態で使用されるプリパレーションシーケンスについて説明する。
【0056】
図8は、本形態で使用されるプリパレーションシーケンスDP
0を示す図である。
本形態のプリパレーションシーケンスDP
0は、コンポジットパルスA、コンポジットパルスB、およびコンポジットパルスCを有している。以下、3つのコンポジットパルスA、B、およびCについて順に説明する。
【0057】
図9は、コンポジットパルスA、B、およびCの説明図である。
(1)コンポジットパルスAについて
コンポジットパルスAは、撮影部位を励起するための励起パルスであり、α
φ0パルスP
01およびβ
θ0パルスP
02を有している。
【0058】
図9(a)は、コンポジットパルスAの説明図である。
α
φ0パルスP
01は、フリップ角がαに設定され、位相がφ
0(xy面内においてx軸に対して角度φ
0だけ回転した軸:φ
0軸)に設定されたRFパルスを表している。
一方、β
θ0パルスP
02は、フリップ角がβに設定され、位相がθ
0(xy面内においてx軸に対して角度θ
0だけ回転した軸:θ
0軸)に設定されたRFパルスを表している。
【0059】
(2)コンポジットパルスBについて
コンポジットパルスBは、磁化ベクトルを再収束させるためのリフォーカスパルスであり、β
θ1パルスP
11、2α
φ1パルスP
12、およびβ
θ1パルスP
13を有している。
【0060】
図9(b)は、コンポジットパルスBの説明図である。
先ず、2α
φ1パルスP
12について説明する。
2α
φ1パルスP
12は、フリップ角が2αに設定され、位相がφ
1(xy面内においてx軸に対して角度φ
1だけ回転した軸:φ
1軸)に設定されたRFパルスを表している。φ
1は、以下の式を満たすように設定される。
φ
1=φ
0+λ
1 ・・・(1)
ここで、φ
0:コンポジットパルスAのα
φ0パルスP
01の位相
λ
1:位相差
【0061】
式(1)のλ
1は、以下の式で表される。
λ
1=λ+δ
1×m
1 ・・・(2)
ここで、λ:角度
δ
1:80°≦δ
1≦100°の範囲内の角度
m
1:整数
【0062】
本形態では、式(2)のδ
1は、δ
1=90°であるとする。したがって、式(2)は、以下の式で表される。
λ
1=λ+90°×m
1 ・・・(3)
【0063】
したがって、式(3)を式(1)に代入すると、φ
1は、以下の式で表すことができる。
φ
1=φ
0+λ+90°×m
1 ・・・(4)
【0064】
次に、β
θ1パルス(P
11およびP
13)について説明する。
β
θ1パルス(P
11およびP
13)は、フリップ角がβに設定され、位相がθ
1(xy面内においてx軸に対して角度θ
1だけ回転した軸:θ
1軸)に設定されたRFパルスを表している。θ
1は、以下の式を満たすように設定される。
θ
1=θ
0+λ
1 ・・・(5)
ここで、θ
0:コンポジットパルスAのβ
θ0パルスP
02の位相
λ
1:位相差
【0065】
式(5)のλ
1は、式(1)のλ
1と同様に、式(3)で表される。したがって、式(3)を式(5)に代入すると、θ
1は以下の式で表すことができる。
θ
1=θ
0+λ+90°×m
1 ・・・(6)
【0066】
(3)コンポジットパルスCについて
コンポジットパルスCは、磁化ベクトルの横磁化を縦磁化に戻すためのフリップバックパルスであり、β
θ2パルスP
21およびα
φ2パルスP
22を有している。
【0067】
図9(c)は、コンポジットパルスCの説明図である。
先ず、β
θ2パルスP
21について説明する。
β
θ2パルスP
21は、フリップ角がβに設定され、位相がθ
2(xy面内においてx軸に対して角度θ
2だけ回転した軸:θ
2軸)に設定されたRFパルスを表している。θ
2は、以下の式を満たすように設定される。
θ
2=θ
0+λ
2 ・・・(7)
ここで、θ
0:コンポジットパルスAのβ
θ0パルスP
02の位相
λ
2:位相差
【0068】
式(7)のλ
2は、以下の式で表される。
【0069】
λ
2=2λ+δ
2×m
2 ・・・(8)
ここで、λ:角度
δ
2:80°≦δ
2≦100°の範囲内の角度
m
2:整数
【0070】
本形態では、式(8)のδ
2は、δ
2=90°であるとする。したがって、式(8)は、以下の式で表される。
λ
2=2λ+90°×m
2 ・・・(9)
【0071】
したがって、式(9)を式(7)に代入すると、θ
2は以下の式で表すことができる。
θ
2=θ
0+2λ+90°×m
2 ・・・(10)
【0072】
次に、α
φ2パルスP
22について説明する。
α
φ2パルスP
22は、フリップ角がαに設定され、位相がφ
2(xy面内においてx軸に対して角度φ
2だけ回転した軸:φ
2軸)に設定されたRFパルスを表している。φ
2は、以下の式を満たすように設定される。
φ
2=φ
0+λ
2 ・・・(11)
ここで、φ
0:コンポジットパルスAのα
φ0パルスP
01の位相
λ
2:位相差
【0073】
式(11)のλ
2は、式(7)のλ
2と同様に、式(9)で表される。したがって、式(9)を式(11)に代入すると、φ
2は、以下の式で表すことができる。
φ
2=φ
0+2λ+90°×m
2 ・・・(12)
【0074】
プリパレーションシーケンスDP
0は、
図9に示すように構成されている。本形態では、プリパレーションシーケンスDP
0を実行した後、撮影部位からデータを収集するためのデータ収集シーケンスDAQ(
図8参照)を実行する。以下同様に、プリパレーションシーケンスDP
0とデータ収集シーケンスDAQとを交互に実行する。データ収集シーケンスDAQで収集されたデータはコンピュータ8に送信される。そして、画像作成手段91(
図2参照)が、データ収集シーケンスDAQで収集されたデータに基づいて、画像を作成する。
【0075】
プリパレーションシーケンスDP
0では、コンポジットパルスのフリップ角および位相を規定するために、上述したパラメータ(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)が使用されている。パラメータ(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)の値は、撮影条件に応じて設定することができる。ここで、プリパレーションシーケンスDP
0で使用されているコンポジットパルスのフリップ角および位相を理解しやすくするために、パラメータ(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)が、表1に示す値に設定されている場合について考える。
【表1】
【0076】
この場合、コンポジットパルスのフリップ角および位相は、
図10のように示される。
図10では、プリパレーションシーケンスを符号「DP
1」で示してある。以下、
図10に示すプリパレーションシーケンスDP
1について、コンポジットパルスA、B、およびCに分けて説明する。
【0077】
(1)コンポジットパルスAについて
図10(a)は、コンポジットパルスAの説明図である。
α=90°、φ
0=0°であるので、α
φ0パルスP
01は、フリップ角がα=90°に設定され、位相がφ
0=0°(つまり、x軸)に設定された90
xパルスとなる。また、β=90°、θ
0=90°であるので、β
θ0パルスP
02は、フリップ角がβ=90°に設定され、位相がθ
0=90°(つまり、y軸)に設定された90
yパルスとなる。
【0078】
(2)コンポジットパルスBについて
図10(b)は、コンポジットパルスBの説明図である。
先ず、2α
φ1パルスP
12について説明する。
2α
φ1パルスP
12のフリップ角は2α=180°である。
また、2α
φ1パルスP
12の位相φ
1は、式(4)に、φ
0=0°、λ=180°、m
1=0を代入することにより求められる。
φ
1=φ
0+λ+90°×m
1
=0°+180°+90°×0
=180°
【0079】
したがって、2α
φ1パルスP
12は、フリップ角が2α=180°に設定され、位相がφ
1=180°(つまり、−x軸)に設定された180
−xパルスとなる。
【0080】
次に、β
θ1パルス(P
11およびP
13)について説明する。
β
θ1パルス(P
11およびP
13)のフリップ角はβ=90°である。
また、β
θ1パルス(P
11およびP
13)の位相θ
1は、式(6)に、θ
0=90°、λ=180°、m
1=0を代入することにより求められる。
θ
1=θ
0+λ+90°×m
1
=90°+180°+90°×0
=270°
【0081】
したがって、β
θ1パルス(P
11およびP
13)は、フリップ角がβ=90°に設定され、位相がθ
1=270°(つまり、−y軸)に設定された90
−yパルスとなる。
【0082】
(3)コンポジットパルスCについて
図10(c)は、コンポジットパルスCの説明図である。
先ず、β
θ2パルスP
21について説明する。
β
θ2パルスP
21のフリップ角はβ=90°である。また、β
θ2パルスP
21の位相θ
2は、式(10)に、θ
0=90°、λ=180°、m
2=0を代入することにより求められる。
θ
2=θ
0+2λ+90°×m
2
=90°+2×180°+90°×0
=450°
【0083】
位相は360°ごとに等価となるので、θ
2=450°はθ
2=90°である。したがって、β
θ2パルスP
21は、フリップ角がβ=90°で、位相がθ
2=90°(つまり、y軸)に設定された90
yパルスとなる。
【0084】
次に、α
φ2パルスP
22について説明する。
α
φ2パルスP
22のフリップ角はα=90°である。また、α
φ2パルスP
22の位相φ
2は、式(12)に、φ
0=0°、λ=180°、m
2=0を代入することにより求められる。
φ
2=φ
0+2λ+90°×m
2
=0°+2×180°+90°×0
=360°
【0085】
位相は360°ごとに等価となるので、θ
2=360°はθ
2=0°である。したがって、α
φ2パルスP
22は、フリップ角がα=90°に設定され、位相がφ
2=0°(つまり、x軸)に設定された90
xパルスとなる。
【0086】
次に、
図10のプリパレーションシーケンスDP
1が実行されている間の静止組織の磁化ベクトルの挙動を調べるため、
図10に示すプリパレーションシーケンスDP
1を実行したときの磁化ベクトルの挙動をシミュレーションした。以下に、そのシミュレーション結果について説明する。
【0087】
図11〜
図15はプリパレーションシーケンスDP
1が実行されている間の静止組織の磁化ベクトルの挙動のシミュレーション結果の説明図である。
以下、
図11〜
図15について説明する。
【0088】
図11は、ΔB1=0%およびΔB0=0Hzにおける磁化ベクトルの挙動を表すシミュレーション結果の説明図である。
プリパレーションシーケンスDP
1では、先ず、コンポジットパルスAの90
xパルスP
01が印加される。
図11(a)に、90
xパルスP
01が印加される直前の時点t0における磁化ベクトルVを示し、
図11(b)に、90
xパルスP
01が印加された直後の時点t01における磁化ベクトルVを示す。ΔB1=0%であるので、磁化ベクトルVは、90
xパルスP
01により、x軸を中心にして90°回転する。したがって、磁化ベクトルVは−y軸上に位置する。90
xパルスP
01が印加された直後に、90
yパルスP
02が印加される。
【0089】
図11(c)に、90
yパルスP
02が印加された直後の時点t02における磁化ベクトルVを示す。ΔB1=0%であるので、磁化ベクトルVは、90
yパルスP
02により、y軸を中心にして90°回転する。ただし、磁化ベクトルVは−y軸上に位置しているので、90
yパルスP
02が印加されても、磁化ベクトルVに変化はない。したがって、磁化ベクトルVは、−y軸上に位置したままの状態に保持される。コンポジットパルスAが印加された後、MPGが印加される。
【0090】
また、時点t02〜t11の間に、磁化ベクトルの位相が分散する。
図11(d)に、時点t02〜t11までの間に生じた位相分散を示す。位相分散により、0°〜360°の間の任意の位相を持つベクトルが現れるが、
図11(d)では、説明の便宜上、分散した磁化ベクトルを、2本の磁化ベクトルV1およびV2で示してある。磁化ベクトルV1は位相が0°であり、一方、磁化ベクトルV2は位相が180°である。また、
図11(d)には、位相分散により発生した磁化ベクトルの頂点で囲まれる面Sを示してある。時点t11の直後に、コンポジットパルスBが印加される。
【0091】
コンポジットパルスBでは、先ず、90
−yパルスP
11が印加される。
図11(e)に、90
−yパルスP
11が印加された直後の時点t12における磁化ベクトルを示す。ΔB1=0%であるので、磁化ベクトルは、90
−yパルスP
11により、−y軸を中心にして90°回転する。90
−yパルスP
11が印加された直後に、180
−xパルスP
12が印加される。
【0092】
図11(f)に、180
−xパルスP
12が印加された直後の時点t13における磁化ベクトルを示す。ΔB1=0%であるので、磁化ベクトルは、180
−xパルスP
12により、−x軸を中心にして180°回転する。したがって、磁化ベクトルV1と磁化ベクトルV2の位置が入れ替わる。180
−xパルスP
12が印加された直後に、90
−yパルスP
13が印加される。
【0093】
図11(g)に、90
−yパルスP
13が印加された直後の時点t14における磁化ベクトルを示す。ΔB1=0%であるので、磁化ベクトルは、90
−yパルスP
13により、−y軸を中心にして90°回転する。したがって、
図11(d)と、
図11(g)とを比較すると、コンポジットパルスBは、磁化ベクトルを、−x軸を中心として180°回転(反転)させていることがわかる。90
−yパルスP
13が印加された後に、MPGが印加される。
【0094】
また、時点t14〜t21の間に、分散していた磁化ベクトルが収束する。
図11(h)に、時点t14〜t21の間に収束した磁化ベクトルVを示す。磁化ベクトルVはy軸上に収束する。時点t21の直後に、コンポジットパルスCが印加される。
【0095】
コンポジットパルスCでは、先ず、90
yパルスP
21が印加される。
図11(i)に、90
yパルスP
21が印加された直後の時点t22における磁化ベクトルVを示す。ΔB1=0%であるので、磁化ベクトルVは、90
yパルスP
21により、y軸を中心にして90°回転する。ただし、磁化ベクトルVはy軸に収束しているので、90
yパルスP
21を印加しても、磁化ベクトルVに変化はない。90
yパルスP
21が印加された直後に、90
xパルスP
22が印加される。
【0096】
図11(j)に、90
xパルスP
22が印加された直後の時点t23における磁化ベクトルVを示す。ΔB1=0%であるので、磁化ベクトルVは、90
xパルスP
22により、x軸を中心にして90°回転する。90
xパルスP
22によって、磁化ベクトルVを縦磁化に戻すことができる。
【0097】
したがって、ΔB1=0%の場合、プリパレーションシーケンスDP
1は、プリパレーションシーケンスDP(
図5参照)と同様に、静止組織の縦磁化を1に戻すことができる。
【0098】
次に、
図12について説明する。
図12は、ΔB1=−20%およびΔB0=0Hzにおける磁化ベクトルの挙動を表すシミュレーション結果の説明図である。
プリパレーションシーケンスDP
1では、先ず、コンポジットパルスAの90
xパルスP
01が印加される。
図12(a)に、90
xパルスP
01が印加される直前の時点t0における磁化ベクトルVを示し、
図12(b)に、90
xパルスP
01が印加された直後の時点t01における磁化ベクトルVを示す。ΔB1=−20%であるので、90
xパルスP
01のフリップ角は、90°よりも20%小さい角度、つまり、72°になる。したがって、磁化ベクトルVは、x軸を中心として72°しか回転しないので、磁化ベクトルVにはMz成分が残る。90
xパルスP
01の直後に、90
yパルスP
02が印加される。
【0099】
図12(c)に、90
yパルスP
02が印加された直後の時点t02における磁化ベクトルVを示す。ΔB1=−20%であるので、90
yパルスP
02のフリップ角は、90°よりも20%小さい角度、つまり、72°になる。したがって、磁化ベクトルVは、y軸を中心として72°回転する。これにより、磁化ベクトルVのMz成分の大部分がMx成分に変換されるので、磁化ベクトルVのMz成分を十分に小さくすることができる。コンポジットパルスAが印加された後、MPGが印加される。
【0100】
また、時点t02〜t11の間に、磁化ベクトルの位相が分散する。
図12(d)に、時点t02〜t11までの間に生じた位相分散を示す。位相分散により、0°〜360°の間の任意の位相を持つベクトルが現れるが、
図12(d)では、説明の便宜上、分散した磁化ベクトルを、2本の磁化ベクトルV1およびV2で示してある。磁化ベクトルV1は位相が0°であり、一方、磁化ベクトルV2は位相が180°である。また、
図12(d)には、位相分散により発生した磁化ベクトルの頂点で囲まれる面Sを示してある。時点t11の直後に、コンポジットパルスBが印加される。
【0101】
コンポジットパルスBでは、先ず、90
−yパルスP
11が印加される。
図12(e)に、90
−yパルスP
11が印加された直後の時点t12における磁化ベクトルを示す。ΔB1=−20%であるので、90
−yパルスP
11のフリップ角は、90°よりも20%小さい角度、つまり、72°になる。したがって、磁化ベクトルは、−y軸を中心にして72°回転する。90
−yパルスP
11が印加された直後に、180
−xパルスP
12が印加される。
【0102】
図12(f)に、180
−xパルスP
12が印加された直後の時点t13における磁化ベクトルを示す。ΔB1=−20%であるので、180
−xパルスP
12のフリップ角は、180°よりも20%小さい角度、つまり、144°になる。したがって、磁化ベクトルは、−x軸を中心として144°回転する。180
−xパルスP
12が印加された直後に、90
−yパルスP
13が印加される。
【0103】
図12(g)に、90
−yパルスP
13が印加された直後の時点t14における磁化ベクトルを示す。ΔB1=−20%であるので、90
−yパルスP
13のフリップ角は、90°よりも20%小さい角度、つまり、72°になる。したがって、磁化ベクトルは、−y軸を中心にして72°回転する。
【0104】
ここで、コンポジットパルスBの印加直前における磁化ベクトル(
図12(d)参照)と、コンポジットパルスBの印加直後における磁化ベクトル(
図12(g)参照)とを比較すると、磁化ベクトルV1は、コンポジットパルスBにより、−x軸を中心にして180°に近い角度だけ回転していることがわかる。同様に、磁化ベクトルV2も、コンポジットパルスBにより、−x軸を中心にして180°に近い角度だけ回転していることがわかる。
図12(g)では、磁化ベクトルV1およびV2のみが図示されているが、図示されていない残りの磁化ベクトルも、コンポジットパルスBにより、−x軸を中心にして180°に近い角度だけ回転している。したがって、B1不均一により、RFパルスのフリップ角が20%小さくなる場合であっても、コンポジットパルスBを印加することにより、磁化ベクトルを−x軸を中心に180°に近い角度だけ回転させることができる。コンポジットパルスBを印加した後、MPGが印加される。
【0105】
また、時点t14〜t21の間に、分散していた磁化ベクトルが収束する。
図12(h)に、時点t14〜t21の間に収束した磁化ベクトルを示す。
図12(h)を参照すると、磁化ベクトルは、B1不均一の影響を受けて完全には収束していない。ただし、磁化ベクトルV2は磁化ベクトルV1に十分に近い位置に収束するので、磁化ベクトルの頂点で囲まれる面S4の面積は十分に小さくなることがわかる。尚、磁化ベクトルV1およびV2の位置はy軸からずれているので、磁化ベクトルV1およびV2は、Mx成分を含んでいることがわかる。時点t21の直後に、コンポジットパルスCが印加される。
【0106】
コンポジットパルスCでは、先ず、90
yパルスP
21が印加される。
図12(i)に、90
yパルスP
21が印加された直後の時点t22における磁化ベクトルを示す。ΔB1=−20%であるので、90
yパルスP
21のフリップ角は、90°よりも20%小さい角度、つまり、72°になる。したがって、磁化ベクトルは、y軸を中心として72°回転するので、磁化ベクトルに含まれているMx成分(
図12(h)参照)の大部分を、Mz成分に戻すことができる。90
yパルスP
21が印加された直後に、90
xパルスP
22が印加される。
【0107】
図12(j)に、90
xパルスP
22が印加された直後の時点t23における磁化ベクトルVを示す。ΔB1=−20%であるので、90
xパルスP
22のフリップ角は、90°よりも20%小さい角度、つまり、72°になる。したがって、磁化ベクトルは、x軸を中心として72°回転する。90
xパルスP
22によって、面S4は、z軸の近傍に位置していることがわかる。
【0108】
したがって、ΔB1=−20%であっても、コンポジットパルスA、B、およびCを用いることにより、磁化ベクトルの縦磁化MzがMz=1に近い値に戻ることがわかる。ここで、
図12(j)に示す面S4を、単一RFパルスのプリパレーションシーケンスDPを実行したときに得られる面S1(
図6(f)参照)と比較し、面S1と面S4との違いについて説明する。
【0109】
図13は、面S1と面S4と違いの説明図である。
図13(a)は、左側から順に、面S1と、面S1のy軸方向への投影プロファイルS1yと、面S1のx軸方向への投影プロファイルS1xとを示す図である。
一方、
図13(b)は、左側から順に、面S4と、面S4のy軸方向への投影プロファイルS4yと、面S4のx軸方向への投影プロファイルS4xとを示す図である。
【0110】
図13(a)と
図13(b)とを比較すると、面S4は面S1よりも面積が十分に小さくなっている。したがって、コンポジットパルスを用いたプリパレーションシーケンスDP
1は、単一RFパルスを用いたプリパレーションシーケンスDPよりも、縦磁化Mzを1に近い値に戻せることができるので、高品質な画像を取得することができる。
【0111】
次に、
図14について説明する。
図14は、ΔB1=20%およびΔB0=0Hzにおける磁化ベクトルの挙動を表すシミュレーション結果の説明図である。
プリパレーションシーケンスDP
1では、先ず、コンポジットパルスAの90
xパルスP
01が印加される。
図14(a)に、90
xパルスP
01が印加される直前の時点t0における磁化ベクトルVを示し、
図14(b)に、90
xパルスP
01が印加された直後の時点t01における磁化ベクトルVを示す。ΔB1=20%であるので、90
xパルスP
01のフリップ角は、90°よりも20%大きい角度、つまり、108°になる。したがって、磁化ベクトルVは、x軸を中心として108°回転するので、磁化ベクトルVにはMz成分が残る。90
xパルスP
01の直後に、90
yパルスP
02が印加される。
【0112】
図14(c)に、90
yパルスP
02が印加された直後の時点t02における磁化ベクトルVを示す。ΔB1=20%であるので、90
yパルスP
02のフリップ角は、90°よりも20%大きい角度、つまり、108°になる。したがって、磁化ベクトルVは、y軸を中心として108°回転する。これにより、磁化ベクトルVのMz成分の大部分がMx成分に変換されるので、磁化ベクトルVのMz成分を十分に小さくすることができる。コンポジットパルスAが印加された後、MPGが印加される。
【0113】
また、時点t02〜t11の間に、磁化ベクトルの位相が分散する。
図14(d)に、時点t02〜t11までの間に生じた位相分散を示す。位相分散により、0°〜360°の間の任意の位相を持つベクトルが現れるが、
図14(d)では、説明の便宜上、分散した磁化ベクトルを、2本の磁化ベクトルV1およびV2で示してある。磁化ベクトルV1は位相が0°であり、一方、磁化ベクトルV2は位相が180°である。また、
図14(d)には、位相分散により発生した磁化ベクトルの頂点で囲まれる面Sを示してある。時点t11の直後に、コンポジットパルスBが印加される。
【0114】
コンポジットパルスBでは、先ず、90
−yパルスP
11が印加される。
図14(e)に、90
−yパルスP
11が印加された直後の時点t12における磁化ベクトルを示す。ΔB1=20%であるので、90
−yパルスP
11のフリップ角は、90°よりも20%大きい角度、つまり、108°になる。したがって、磁化ベクトルは、−y軸を中心にして108°回転する。90
−yパルスP
11が印加された直後に、180
−xパルスP
12が印加される。
【0115】
図14(f)に、180
−xパルスP
12が印加された直後の時点t13における磁化ベクトルを示す。ΔB1=20%であるので、180
−xパルスP
12のフリップ角は、180°よりも20%大きい角度、つまり、216°になる。したがって、磁化ベクトルは、−x軸を中心として216°回転する。180
−xパルスP
12が印加された直後に、90
−yパルスP
13が印加される。
【0116】
図14(g)に、90
−yパルスP
13が印加された直後の時点t14における磁化ベクトルを示す。ΔB1=20%であるので、90
−yパルスP
13のフリップ角は、90°よりも20%大きい角度、つまり、108°になる。したがって、磁化ベクトルは、−y軸を中心にして108°回転する。
【0117】
ここで、コンポジットパルスBの印加直前における磁化ベクトル(
図14(d)参照)と、コンポジットパルスBの印加直後における磁化ベクトル(
図14(g)参照)とを比較すると、磁化ベクトルV1は、コンポジットパルスBにより、−x軸を中心にして180°に近い角度だけ回転していることがわかる。同様に、磁化ベクトルV2も、コンポジットパルスBにより、−x軸を中心にして180°に近い角度だけ回転していることがわかる。
図14(g)では、磁化ベクトルV1およびV2のみが図示されているが、図示されていない残りの磁化ベクトルも、コンポジットパルスBにより、−x軸を中心にして180°に近い角度だけ回転している。したがって、B1不均一により、RFパルスのフリップ角が20%大きくなる場合であっても、コンポジットパルスBを印加することにより、磁化ベクトルを−x軸を中心に180°に近い角度だけ回転させることができる。コンポジットパルスBを印加した後、MPGが印加される。
【0118】
また、時点t14〜t21の間に、MPGが印加されている間に、分散していた磁化ベクトルが収束する。
図14(h)に、時点t14〜t21の間に収束した磁化ベクトルを示す。
図14(h)を参照すると、磁化ベクトルは、B1不均一の影響を受けて完全には収束していない。ただし、磁化ベクトルV2は磁化ベクトルV1に十分に近い位置に収束するので、磁化ベクトルの頂点で囲まれる面S5の面積は十分に小さくなることがわかる。尚、磁化ベクトルV1およびV2の位置はy軸からずれているので、磁化ベクトルV1およびV2は、Mx成分を含んでいることがわかる。時点t21の直後に、コンポジットパルスCが印加される。
【0119】
コンポジットパルスCでは、先ず、90
yパルスP
21が印加される。
図14(i)に、90
yパルスP
21が印加された直後の時点t22における磁化ベクトルを示す。ΔB1=20%であるので、90
yパルスP
21のフリップ角は、90°よりも20%大きい角度、つまり、108°になる。したがって、磁化ベクトルは、y軸を中心として108°回転するので、磁化ベクトルに含まれているMx成分(
図14(h)参照)の大部分を、Mz成分に戻すことができる。90
yパルスP
21が印加された直後に、90
xパルスP
22が印加される。
【0120】
図14(j)に、90
xパルスP
22が印加された直後の時点t23における磁化ベクトルVを示す。ΔB1=20%であるので、90
xパルスP
22のフリップ角は、90°よりも20%大きい角度、つまり、108°になる。したがって、磁化ベクトルは、x軸を中心として108°回転する。90
xパルスP
22によって、磁化ベクトルはz軸の近傍に戻るので、磁化ベクトルの縦磁化MzをMz=1に近い値に戻すことができる。
【0121】
したがって、ΔB1=20%であっても、コンポジットパルスを用いることにより、磁化ベクトルの縦磁化MzがMz=1に近い値に戻ることがわかる。ここで、
図14(j)に示す面S5を、単一RFパルスのプリパレーションシーケンスDPを実行したときに得られる面S2(
図7(f)参照)と比較し、面S2と面S5との違いについて説明する。
【0122】
図15は、面S2と面S5と違いの説明図である。
図15(a)は、左側から順に、面S2と、面S2のy軸方向への投影プロファイルS2yと、面S2のx軸方向への投影プロファイルS2xとを示す図である。
一方、
図15(b)は、左側から順に、面S5と、面S5のy軸方向への投影プロファイルS5yと、面S5のx軸方向への投影プロファイルS5xとを示す図である。
【0123】
図15(a)と
図15(b)とを比較すると、面S5は面S2よりも面積が十分に小さくなっている。したがって、ΔB1=20%であっても、コンポジットパルスを用いたプリパレーションシーケンスDP
1は、単一RFパルスを用いたプリパレーションシーケンスDPよりも、縦磁化Mzを1に近い値に戻せることができるので、高品質な画像を取得することができる。
【0124】
尚、上記の説明では、(ΔB0,ΔB1)として、3通りの組合せ、つまり、(0Hz,0%)、(0Hz,−20%)、および(0Hz,20%)について考察した。しかし、上記のコンポジットパルスA、B、およびCを用いることにより、(ΔB0,ΔB1)が別の値の組合せであっても、磁化ベクトルの縦磁化Mzを1に近い値に戻すことができる。このことを検証するため、ΔB1およびΔB0を変更し、プリパレーションシーケンスDP
1(
図10参照)を実行した直後(コンポジットパルスCを印加した直後)の磁化ベクトルの縦磁化の値を調べるためのシミュレーションを行った。以下に、シミュレーション結果について説明する(
図16参照)。
【0125】
図16は、シミュレーション結果を示す図である。
図16(a)は、コンポジットパルスを用いたプリパレーションシーケンスDP
1(
図10参照)のシミュレーション結果を示す図である。
図16(a)には、プリパレーションシーケンスDP
1を実行した直後の縦磁化の値を表すMzマップH1が示されている。MzマップH1の横軸はΔB1を表しており、縦軸はΔB0を表している。また、MzマップH1では、縦磁化Mzの値を白黒の明るさで示してある。MzマップH1の色が白に近いほど縦磁化が大きく、色が黒に近いほど縦磁化は小さいことを意味している。
【0126】
また、MzマップH1の右側には、2つのプロファイルF11およびF12が示されている。プロファイルF11は、MzマップH1のΔB0=0HzにおけるMzを表している。一方、プロファイルF12は、MzマップH1のΔB1=0%におけるMzを表している。
【0127】
一方、
図16(b)は、比較例として、単一RFパルスを用いたプリパレーションシーケンスDP(
図4参照)のシミュレーション結果を示している。
【0128】
図16(b)には、プリパレーションシーケンスDPを実行した直後の縦磁化の値を表すMzマップH2が示されている。また、MzマップH2の右側には、2つのプロファイルF21およびF22が示されている。プロファイルF21は、MzマップH2のΔB0=0HzにおけるMzを表している。一方、プロファイルF12は、MzマップH2のΔB1=0%におけるMzを表している。
【0129】
図16(a)と
図16(b)とを比較すると、プリパレーションシーケンスDP
1により得られたMzマップH1は、プリパレーションシーケンスDPにより得られたMzマップH2よりも、Mz=1に近い値を持つ領域が広範囲に広がっている。したがって、コンポジットパルスは、単一RFパルスよりも、B0不均一やB1不均一の影響を受けにくいことがわかる。特に、MzマップH1の領域R(ΔB1=−25%〜+25%およびΔB0=−250Hz〜+250Hzの範囲)の内側は、ΔB0およびΔB1の値に関わらず、縦磁化Mzの値のばらつきが小さいことがわかる。したがって、コンポジットパルスを用いることにより、B0不均一やB1不均一の影響を受けにくくすることができるので、高品質な画像を取得できることがわかる。
【0130】
尚、プリパレーションシーケンスDP
1(
図10参照)では、λ=180°に設定されている(表1参照)。しかし、λは180°に限定されることはなく、λを180°以外の値に設定してもよい。表2はλ=0°に設定した例を示し、表3はλ=50°に設定した例を示す。
【表2】
【表3】
【0131】
表2および表3は、表1と比較すると、λの値が異なっているが、(α,β,φ
0,θ
0,m
1,m
2)の値は同じである。
【0132】
次に、(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)が表2の値に設定された場合のプリパレーションシーケンスと、(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)が表3の値に設定された場合のプリパレーションシーケンスについて順に考察する。
【0133】
図17は、(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)が表2の値に設定された場合のプリパレーションシーケンスDP
2を示す図である。
【0134】
図17(a)は、コンポジットパルスAの説明図である。
α、φ
0の値に変化はないので、α
φ0パルスP
01は、
図10と同様に、90
xパルスである。また、β、θ
0にも変化はないので、β
θ0パルスP
02は、
図10と同様に、90
yパルスである。
【0135】
図17(b)は、コンポジットパルスBの説明図である。
先ず、2α
φ1パルスP
12について説明する。
2α
φ1パルスP
12のフリップ角は2α=180°である。また、2α
φ1パルスP
12の位相φ
1は、式(4)に、φ
0=0°、λ=0°、m
1=0を代入することにより求められる。
φ
1=φ
0+λ+90°×m
1
=0°+0°+90°×0
=0°
【0136】
したがって、2α
φ1パルスP
12は、フリップ角が2α=180°に設定され、位相がφ
1=0°(つまり、x軸)に設定された180°
xパルスとなる。
【0137】
次に、β
θ1パルス(P
11およびP
13)について説明する。
β
θ1パルス(P
11およびP
13)のフリップ角は、β=90°である。また、β
θ1パルス(P
11およびP
13)の位相θ
1は、式(6)に、θ
0=90°、λ=0°、m
1=0を代入することにより求められる。
θ
1=φ
0+λ+90°×m
1
=90°+0°+90°×0
=90°
【0138】
したがって、β
θ1パルス(P
11およびP
13)は、フリップ角がβ=90°に設定され、位相がθ
1=90°(つまり、y軸)に設定された90
yパルスとなる。
【0139】
図17(c)はコンポジットパルスCの説明図である。
先ず、β
θ2パルスP
21について説明する。
β
θ2パルスP
21のフリップ角はβ=90°である。また、β
θ2パルスP
21の位相θ
2は、式(10)に、θ
0=90°、λ=0°、m
2=0を代入することにより求められる。
θ
2=θ
0+2λ+90°×m
2
=90°+2×0°+90°×0
=90°
【0140】
したがって、β
θ2パルスP
21は、フリップ角がβ=90°に設定され、位相がθ
2=90°(つまり、y軸)に設定された90
yパルスとなる。
【0141】
次に、α
φ2パルスP
22について説明する。
α
φ2パルスP
22のフリップ角は、α=90°に設定される。また、α
φ2パルスP
22の位相φ
2は、式(12)に、φ
0=0°、λ=0°、m
2=0を代入することにより求められる。
φ
2=φ
0+2λ+90°×m
2
=0°+2×0°+90°×0
=0°
【0142】
したがって、α
φ2パルスP
22は、フリップ角がα=90°に設定され、位相がφ
2=0°(つまり、x軸)に設定された90
xパルスとなる。
【0143】
次に、(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)が表3の値に設定された場合のプリパレーションシーケンスについて順に考察する。
【0144】
図18は、(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)が表3の値に設定された場合のプリパレーションシーケンスDP
3を示す図である。
図18(a)は、コンポジットパルスAの説明図である。
α
φ0パルスP
01は90
xパルスであり、β
θ0パルスP
02は90
yパルスである。
【0145】
図18(b)は、コンポジットパルスBの説明図である。
先ず、2α
φ1パルスP
12について説明する。
2α
φ1パルスP
12のフリップ角は2α=180°である。また、2α
φ1パルスP
12の位相φ
1は、式(4)に、φ
0=0°、λ=50°、m
1=0を代入することにより求められる。
φ
1=φ
0+λ+90°×m
1
=0°+50°+90°×0
=50°
したがって、2α
φ1パルスP
12の位相φ
1はφ
1=50°に設定される。
【0146】
次に、β
θ1パルス(P
11およびP
13)について説明する。
β
θ1パルス(P
11およびP
13)のフリップ角は、β=90°である。また、β
θ1パルス(P
11およびP
13)の位相θ
1は、式(6)に、θ
0=90°、λ=50°、m
1=0を代入することにより求められる。
θ
1=φ
0+λ+90°×m
1
=90°+50°+90°×0
=140°
したがって、β
θ1パルス(P
11およびP
13)の位相θ
1は、θ
1=140°に設定される。
【0147】
図18(c)はコンポジットパルスCの説明図である。
先ず、β
θ2パルスP
21について説明する。
β
θ2パルスP
21のフリップ角はβ=90°である。また、β
θ2パルスP
21の位相θ
2は、式(10)に、θ
0=90°、λ=50°、m
2=0を代入することにより求められる。
θ
2=θ
0+2λ+90°×m
2
=90°+2×50°+90°×0
=190°
したがって、β
θ2パルスP
21の位相θ
2はθ
2=190°に設定される。
【0148】
次に、α
φ2パルスP
22について説明する。
α
φ2パルスP
22のフリップ角は、α=90°に設定される。また、α
φ2パルスP
22の位相φ
2は、式(12)に、φ
0=0°、λ=50°、m
2=0を代入することにより求められる。
φ
2=φ
0+2λ+90°×m
2
=0°+2×50°+90°×0
=100°
したがって、α
φ2パルスP
22の位相φ
2はφ
2=100°に設定される。
【0149】
図17および
図18を比較すると、λの値に応じて、コンポジットパルスBおよびCの位相が変化することがわかる。
【0150】
次に、
図17のプリパレーションシーケンスDP
2および
図18のプリパレーションシーケンスDP
3について、磁化ベクトルの挙動を調べるためのシミュレーションを行った。
図19および
図20に、シミュレーション結果を示す。尚、シミュレーション条件は、ΔB1=−20%、ΔB0=0Hzである。
【0151】
図19は、プリパレーションシーケンスDP
2のシミュレーション結果を示す図であり、
図20は、プリパレーションシーケンスDP
3のシミュレーション結果を示す図である。
図19(j)および
図20(j)を参照すると、どちらの場合でも、磁化ベクトルの縦磁化は、1に近い値に戻ることがわかる。上記の説明では、λ=0°、50°、および180°の場合について示されているが、λを他の値に設定しても、磁化ベクトルの縦磁化を1に近い値に戻すことができる。
【0152】
尚、表1、表2、および表3では、αとβは、(α,β)=(90°,90°)に設定されている。しかし、(α,β)は(90°,90°)に限定されることはない。表4に、(α,β)を(112.5°,75°)に設定した例を示す。
【表4】
【0153】
また、表1、表2、および表3では、φ
0およびθ
0は、(φ
0,θ
0)=(0°,90°)に設定されている。したがって、φ
0とθ
0との絶対値|φ
0−θ
0|は、以下の値に設定されている。
|φ
0−θ
0|=|0°−90°|
=|−90°|
=90°
【0154】
しかし、絶対値|φ
0−θ
0|の値は|φ
0−θ
0|=90°に限定されることはなく、|φ
0−θ
0|≠90°でもよい。表5に、|φ
0−θ
0|≠90°の一例を示す。
【表5】
【0155】
表5では、φ
0=0°、θ
0=100°であるので、|φ
0−θ
0|=100°の例が示されている。また、表5では、(α,β)=(120°,70°)である。
【0156】
ここで、(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)を表4の値に設定したプリパレーションシーケンスと、(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)を表5の値に設定したプリパレーションシーケンスについて順に考察する。
【0157】
図21は、(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)を表4の値に設定したプリパレーションシーケンスDP
4を示す図である。尚、
図21プリパレーションシーケンスDP
4は、
図10のプリパレーションシーケンスDP
1と比較すると、フリップ角が異なるが、位相は同じである。したがって、
図21のプリパレーションシーケンスDP
4については、フリップ角のみを説明する。
【0158】
コンポジットパルスAでは(
図21(a)参照)、α
φ0パルスP
01はフリップ角がα=112.5°に設定され、β
θ0パルスP
02はフリップ角がβ=75°に設定される。
【0159】
コンポジットパルスBでは(
図21(b)参照)、2α
φ1パルスP
12のフリップ角は2α=2×112.5°=225°に設定され、β
θ1パルス(P
11およびP
13)のフリップ角はβ=75°に設定される。
【0160】
コンポジットパルスCでは(
図21(c)参照)、β
θ2パルスP
21のフリップ角はβ=75°に設定され、α
φ2パルスP
22のフリップ角はα=112.5°に設定される。
【0161】
次に、(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)が表5の値に設定された場合のプリパレーションシーケンスについて順に考察する。
【0162】
図22は、(α,β,φ
0,θ
0,λ,m
1,m
2)が表5の値に設定された場合のプリパレーションシーケンスDP
5を示す図である。
図22(a)は、コンポジットパルスAの説明図である。
α=120°、φ
0=0°であるので、α
φ0パルスP
01は、フリップ角がα=120°に設定され、位相がφ
0=0°(つまり、x軸)に設定された120
xパルスとなる。また、β=70°、θ
0=100°であるので、β
θ0パルスP
02は、フリップ角がβ=70°に設定され、位相がθ
0=100°に設定された70
θ0=100°パルスとなる。
【0163】
図22(b)は、コンポジットパルスBの説明図である。
先ず、2α
φ1パルスP
12について説明する。
2α
φ1パルスP
12のフリップ角は2α=2×120°=240°である。また、2α
φ1パルスP
12の位相φ
1は、式(4)に、φ
0=0°、λ=180°、m
1=0を代入することにより求められる。
φ
1=φ
0+λ+90°×m
1
=0°+180°+90°×0
=180°
【0164】
したがって、2α
φ1パルスP
12は、フリップ角が2α=240°に設定され、位相がφ
1=180°(つまり、−x軸)に設定された240°
−xパルスとなる。
る。
【0165】
次に、β
θ1パルス(P
11およびP
13)について説明する。
β
θ1パルス(P
11およびP
13)のフリップ角は、β=70°である。また、β
θ1パルス(P
11およびP
13)の位相θ
1は、式(6)に、θ
0=100°、λ=180°、m
1=0を代入することにより求められる。
θ
1=φ
0+λ+90°×m
1
=100°+180°+90°×0
=280°
したがって、β
θ1パルス(P
11およびP
13)は、フリップ角がβ=70°に設定され、位相がθ
1=280°に設定された70
θ1=280°パルスとなる。
【0166】
図22(c)はコンポジットパルスCの説明図である。
先ず、β
θ2パルスP
21について説明する。
β
θ2パルスP
21のフリップ角はβ=70°である。また、β
θ2パルスP
21の位相θ
2は、式(10)に、θ
0=100°、λ=180°、m
2=0を代入することにより求められる。
θ
2=θ
0+2λ+90°×m
2
=100°+2×180°+90°×0
=460°
【0167】
位相は360°ごとに等価となるので、θ
2=460°はθ
2=100°である。したがって、β
θ2パルスP
21は、フリップ角がβ=70°に設定され、位相がθ
2=100°に設定された70
θ2=100°パルスとなる。
【0168】
次に、α
φ2パルスP
22について説明する。
α
φ2パルスP
22のフリップ角は、α=120°に設定される。また、α
φ2パルスP
22の位相φ
2は、式(12)に、φ
0=0°、λ=180°、m
2=0を代入することにより求められる。
φ
2=φ
0+2λ+90°×m
2
=0°+2×180°+90°×0
=360°
【0169】
位相は360°ごとに等価となるので、φ
2=360°はφ
2=0°である。したがって、α
φ2パルスP
22は、フリップ角がα=120°に設定され、位相がφ
2=0°(つまり、x軸)に設定された120
xパルスとなる。
【0170】
図21および
図22のプリパレーションシーケンスDP
4およびDP
5は、
図10に示すシーケンスDP
1と同様に、撮影部位内でB0不均一やB1不均一が発生しても、磁化ベクトルの縦磁化Mzを1に近い値に戻すことができる。このことを検証するため、ΔB0およびΔB1を変更し、
図21および
図22のプリパレーションシーケンスDP
4およびDP
5を実行した直後(コンポジットパルスCを印加した直後)の磁化ベクトルの縦磁化の値を調べるためのシミュレーションを行った。以下に、シミュレーション結果について説明する(
図23参照)。
【0171】
図23は、シミュレーション結果を示す図である。
図23(a)は、
図21のプリパレーションシーケンスDP
4のシミュレーション結果を示す図である。
図23(a)には、プリパレーションシーケンスDP
4を実行した直後の縦磁化の値を表すMzマップH3が示されている。MzマップH3の右側には、2つのプロファイルF31およびF32が示されている。プロファイルF31は、MzマップH3のΔB0=0HzにおけるMzを表している。一方、プロファイルF32は、MzマップH3のΔB1=0%におけるMzを表している。
【0172】
一方、
図23(b)は、
図22のプリパレーションシーケンスDP
5のシミュレーション結果を示している。
図23(b)には、プリパレーションシーケンスDP
5を実行した直後の縦磁化の値を表すMzマップH4が示されている。MzマップH4の右側には、2つのプロファイルF41およびF42が示されている。プロファイルF41は、MzマップH4のΔB0=0HzにおけるMzを表している。一方、プロファイルF42は、MzマップH4のΔB1=0%におけるMzを表している。
【0173】
図23(a)および(b)を参照すると、Mz=1に近い値を持つ領域が広範囲に渡って広がっていることがわかる。特に、MzマップH3およびH4の領域R(ΔB1=−25%〜+25%およびΔB0=−250Hz〜+250Hzの範囲)の内側は、ΔB0およびΔB1の値に関わらず、縦磁化Mzの値のばらつきが小さいことがわかる。したがって、表4や表5の値を持つコンポジットパルスを用いることにより、B0不均一やB1不均一の影響を更に受けにくくすることができるので、より高品質な画像を取得することができる。尚、表5では、|φ
0−θ
0|=100°、すなわち、|φ
0−θ
0|>90°の例が示されている。しかし、|φ
0−θ
0|を|φ
0−θ
0|<90°に設定してもよい。
【0174】
また、上記の例では、リフォーカスパルスの役割を果たすコンポジットパルスBを1回印加する例について説明したが、本発明では、コンポジットパルスBがn(≧1)回印加されるように構成してもよい。以下に、コンポジットパルスBがn回印加される例について説明する。
【0175】
図24は、コンポジットパルスBをn回印加するときのプリパレーションシーケンスDP
6を示す図である。
プリパレーションシーケンスDP
6は、コンポジットパルスAと、n(≧1)個のコンポジットパルスBと、コンポジットパルスCとを有している。尚、
図24では、n個のコンポジットパルスBを区別するために、記号「B」に、添字「1」、「2」、・・・「n」を付してある。以下、コンポジットパルスA、コンポジットパルスB
1〜B
n、およびコンポジットパルスCについて順に説明する。
【0176】
(1)コンポジットパルスAについて
図24(a)は、コンポジットパルスAの説明図である。
コンポジットパルスAは、先に説明したコンポジットパルスA(
図9(a)参照)と同じである。α
φ0パルスP
01は、フリップ角がαに設定され、位相がφ
0(xy面内においてx軸に対して角度φ
0だけ回転した軸:φ
0軸)に設定されたRFパルスである。一方、β
θ0パルスP
02は、フリップ角がβに設定され、位相がθ
0(xy面内においてx軸に対して角度θ
0だけ回転した軸:θ
0軸)に設定されたRFパルスである。
【0177】
(2)コンポジットパルスB
1〜B
nについて
先ず、n個のコンポジットパルスB
1〜B
nのうちのk番目のコンポジットパルスB
kについて考える。k番目のコンポジットパルスB
kは、β
θkパルスP
k1、2α
φkパルスP
k2、およびβ
θkパルスP
k3を有している。
【0178】
図24(b)は、k番目のコンポジットパルスB
kの説明図である。
先ず、2α
φkパルスP
k2について説明する。
2α
φkパルスP
k2は、フリップ角が2αに設定され、位相がφ
k(xy面内においてx軸に対して角度φ
kだけ回転した軸:φ
k軸)に設定されたRFパルスを表している。φ
kは、以下の式を満たすように設定される。
φ
k=φ
0+λ
k ・・・(13)
ここで、φ
0:コンポジットパルスAのα
φ0パルスP
01の位相
λ
k:位相差
【0179】
式(13)のλ
kは、kを用いて以下の式で表される。
λ
k=kλ+δ
k×m
k ・・・(14)
ここで、λ:角度
δ
k:80°≦δ
k≦100°の範囲内の角度
m
k:整数
【0180】
本形態では、式(14)のδ
kは、δ
k=90°であるとする。したがって、式(14)は、以下の式で表される。
λ
k=kλ+90°×m
k ・・・(15)
【0181】
したがって、式(15)を式(13)に代入すると、φ
kは、以下の式で表すことができる。
φ
k=φ
0+kλ+90°×m
k ・・・(16)
【0182】
次に、β
θkパルス(P
k1およびP
k3)について説明する。
β
θkパルス(P
k1およびP
k3)は、フリップ角がβに設定され、位相がθ
k(xy面内においてx軸に対して角度θ
kだけ回転した軸:θ
k軸)に設定されたRFパルスを表している。θ
kは、以下の式を満たすように設定される。
θ
k=θ
0+λ
k ・・・(17)
ここで、θ
0:コンポジットパルスAのβ
θ0パルスP
02の位相
λ
k:位相差
【0183】
式(17)のλ
kは、式(13)のλ
kと同様に、式(15)で表される。したがって、式(15)を式(17)に代入すると、θ
kは以下の式で表すことができる。
θ
k=θ
0+kλ+90°×m
k ・・・(18)
【0184】
(3)コンポジットパルスCについて
図24(c)は、コンポジットパルスCの説明図である。
コンポジットパルスCは、磁化ベクトルの横磁化を縦磁化に戻すためのフリップバックパルスであり、β
θn+1パルスP
n+1,1およびα
φn+1パルスP
n+1,2を有している。
【0185】
先ず、β
θn+1パルスP
n+1,1について説明する。
β
θn+1パルスP
n+1,1は、フリップ角がβに設定され、位相がθ
n+1(xy面内においてx軸に対して角度θ
n+1だけ回転した軸:θ
n+1軸)に設定されたRFパルスを表している。θ
n+1は、以下の式を満たすように設定される。
θ
n+1=θ
0+λ
n+1 ・・・(19)
ここで、θ
0:コンポジットパルスAのβ
θ0パルスP
02の位相
λ
n+1:位相差
【0186】
式(19)のλ
n+1は、n+1を用いて以下の式で表される。
λ
n+1=(n+1)λ+δ
n+1×m
n+1 ・・・(20)
ここで、λ:角度
δ
n+1:80°≦δ
n+1≦100°の範囲内の角度
m
n+1:整数
【0187】
本形態では、式(20)のδ
n+1は、δ
n+1=90°であるとする。したがって、式(20)は、以下の式で表される。
λ
n+1=(n+1)λ+90°×m
n+1 ・・・(21)
【0188】
したがって、式(21)を式(19)に代入すると、θ
n+1は以下の式で表すことができる。
θ
n+1=θ
0+(n+1)λ+90°×m
n+1 ・・・(22)
【0189】
次に、α
φn+1パルスP
n+1,2について説明する。
α
φn+1パルスP
n+1,2は、フリップ角がαに設定され、位相がφ
n+1(xy面内においてx軸に対して角度φ
n+1だけ回転した軸:φ
n+1軸)に設定されたRFパルスを表している。φ
n+1は、以下の式を満たすように設定される。
φ
n+1=φ
0+λ
n+1 ・・・(23)
ここで、φ
0:コンポジットパルスAのα
φ0パルスP
01の位相
λ
n+1:位相差
【0190】
式(23)のλ
n+1は、式(19)のλ
n+1と同様に、式(21)で表される。したがって、式(21)を式(23)に代入すると、φ
n+1は、以下の式で表すことができる。
φ
n+1=φ
0+(n+1)λ+90°×m
n+1 ・・・(24)
【0191】
図24に示すプリパレーションシーケンスDP
6は、上記のように構成されている。nの値は、任意の整数値に設定することができる。
図24において、n=1に設定した例が、
図9に示すプリパレーションシーケンスDP
0を表している。ここで、n≧2のプリパレーションシーケンスDP
6の一例について考察する。
図25に、n≧2のプリパレーションシーケンスDP
6の一例として、n=3のプリパレーションシーケンスDP
6が示されている。n=3の場合、プリパレーションシーケンスDP
6は、コンポジットパルスA、コンポジットパルスB1、B2、およびB3、並びにコンポジットパルスCを有する。
【0192】
ここで、n=3の場合のコンポジットパルスDP
6のフリップ角および位相を理解しやすくするために、パラメータ(α,β,φ
0,θ
0,λ)が、表6に示す値に設定されている場合について考える。
【表6】
【0193】
この場合、コンポジットパルスのフリップ角および位相は、
図26のように示される。
図26では、プリパレーションシーケンスを符号「DP
7」で示してある。以下、
図26に示すプリパレーションシーケンスDP
7について説明する。
【0194】
(1)コンポジットパルスAについて
図26(a)は、コンポジットパルスAの説明図である。
α=120°、φ
0=0°であるので、α
φ0パルスP
01は、フリップ角がα=120°に設定され、位相がφ
0=0°(つまり、x軸)に設定された120
xパルスとなる。また、β=70°、θ
0=100°であるので、β
θ0パルスP
02は、フリップ角がβ=70°に設定され、位相がθ
0=100°に設定された70
θ0=100°パルスとなる。
【0195】
(2)コンポジットパルスB
1について
図26(b1)は、コンポジットパルスB
1の説明図である。
先ず、2α
φ1パルスP
12について説明する。
2α
φ1パルスP
12のフリップ角は2α=2×120=240°である。
また、2α
φ1パルスP
12の位相φ
1は、式(16)に、k=1、φ
0=0°、λ=0°を代入することにより求められる。
φ
k=φ
0+kλ+90°×m
k
φ
1=φ
0+λ+90°×m
1
=0°+0°+90°×m
1
=90°×m
1 ・・・・・・・・・(25)
【0196】
したがって、2α
φ1パルスP
12は、フリップ角が2α=240°に設定され、位相がφ
1=90°×m
1に設定された240
φ1=90°×m1パルスとなる。
【0197】
次に、β
θ1パルス(P
11およびP
13)について説明する。
β
θ1パルス(P
11およびP
13)のフリップ角はβ=70°である。
また、β
θ1パルス(P
11およびP
13)の位相θ
1は、式(18)に、k=1、θ
0=100°、λ=0°を代入することにより求められる。
θ
k=θ
0+kλ+90°×m
k
θ
1=θ
0+λ+90°×m
1
=100°+0°+90°×m
1
=100°+90°×m
1 ・・・・・・・・・(26)
【0198】
したがって、β
θ1パルス(P
11およびP
13)は、フリップ角がβ=70°に設定され、位相がθ
1=100°+90°×m
1に設定された70
θ1=100°+90°×m1パルスとなる。
【0199】
(3)コンポジットパルスB
2について
図26(b2)は、コンポジットパルスB
2の説明図である。
先ず、2α
φ2パルスP
22について説明する。
2α
φ2パルスP
22のフリップ角は2α=2×120=240°である。
また、2α
φ2パルスP
22の位相φ
2は、式(16)に、k=2、φ
0=0°、λ=0°を代入することにより求められる。
φ
k=φ
0+kλ+90°×m
k
φ
2=φ
0+2λ+90°×m
2
=0°+2×0°+90°×m
2
=90°×m
2 ・・・・・・・・・(27)
【0200】
したがって、2α
φ2パルスP
22は、フリップ角が2α=240°に設定され、位相がφ
2=90°×m
2に設定された240
φ2=90°×m2パルスとなる。
【0201】
次に、β
θ2パルス(P
21およびP
23)について説明する。
β
θ2パルス(P
21およびP
23)のフリップ角はβ=70°である。
また、β
θ2パルス(P
21およびP
23)の位相θ
2は、式(18)に、k=2、θ
0=100°、λ=0°を代入することにより求められる。
θ
k=θ
0+kλ+90°×m
k
θ
2=θ
0+2λ+90°×m
2
=100°+2×0°+90°×m
2
=100°+90°×m
2 ・・・・・・・・・(28)
【0202】
したがって、β
θ2パルス(P
21およびP
23)は、フリップ角がβ=70°に設定され、位相がθ
2=100°+90°×m
2に設定された70
θ2=100°+90°×m2パルスとなる。
【0203】
(4)コンポジットパルスB
3について
図26(b3)は、コンポジットパルスB
3の説明図である。
先ず、2α
φ3パルスP
32について説明する。
2α
φ3パルスP
32のフリップ角は2α=2×120=240°である。
また、2α
φ3パルスP
32の位相φ
3は、式(16)に、k=3、φ
0=0°、λ=0°を代入することにより求められる。
φ
k=φ
0+kλ+90°×m
k
φ
3=φ
0+3λ+90°×m
3
=0°+3×0°+90°×m
3
=90°×m
3 ・・・・・・・・・(29)
【0204】
したがって、2α
φ3パルスP
32は、フリップ角が2α=240°に設定され、位相がφ
3=90°×m
3に設定された240
φ3=90°×m3パルスとなる。
【0205】
次に、β
θ3パルス(P
31およびP
33)について説明する。
β
θ3パルス(P
31およびP
33)のフリップ角はβ=70°である。
また、β
θ3パルス(P
31およびP
33)の位相θ
3は、式(18)に、k=3、θ
0=100°、λ=0°を代入することにより求められる。
θ
k=θ
0+kλ+90°×m
k
θ
3=θ
0+3λ+90°×m
3
=100°+3×0°+90°×m
3
=100°+90°×m
3 ・・・・・・・・・(30)
【0206】
したがって、β
θ3パルス(P
31およびP
33)は、フリップ角がβ=70°に設定され、位相がθ
3=100°+90°×m
3に設定された70
θ3=100°+90°×m3パルスとなる。
【0207】
(5)コンポジットパルスCについて
図26(c)は、コンポジットパルスCの説明図である。
先ず、β
θ4パルスP
41について説明する。
β
θ4パルスP
41のフリップ角はβ=70°である。また、β
θ4パルスP
41の位相θ
4は、式(22)に、n=3、θ
0=100°、λ=0°を代入することにより求められる。
θ
n+1=θ
0+(n+1)λ+90°×m
n+1
θ
4=θ
0+4λ+90°×m
4
=100°+4×0°+90°×m
4
=100°+90°×m
4 ・・・・・・・・・(31)
【0208】
したがって、β
θ4パルスP
41は、フリップ角がβ=70°で、位相がθ
4=100°+90°×m
4に設定された70
θ4=100°+90°×m4パルスとなる。
【0209】
次に、α
φ4パルスP
42について説明する。
α
φ4パルスP
42のフリップ角はα=120°である。また、α
φ4パルスP
42の位相φ
4は、式(24)に、n=3、φ
0=0°、λ=0°を代入することにより求められる。
φ
n+1=φ
0+(n+1)λ+90°×m
n+1
φ
4=φ
0+4λ+90°×m
4
=0°+4×0°+90°×m
4
=90°×m
4 ・・・・・・・・・(32)
【0210】
したがって、α
φ4パルスP
42は、フリップ角がα=120°に設定され、位相がφ
4=90×m
4に設定された120
φ4=90°×m4パルスとなる。
【0211】
ここで、式(25)〜(32)からわかるように、コンポジットパルスB
1、B
2、B
3、およびCの位相は、それぞれ、m
1、m
2、m
3、およびm
4の値に依存する。したがって、プリパレーションシーケンスDP
7を実行した直後の磁化ベクトルの縦磁化Mzの値は、(m
1,m
2,m
3,m
4)の値の組合せに応じて変化することがわかる。そこで、プリパレーションシーケンスDP
7を実行した直後の磁化ベクトルの縦磁化MzをMz=1(又は1に近い値)に戻すのに適した(m
1,m
2,m
3,m
4)の値の組合せを求めるためのシミュレーションを実行した。このシミュレーションから、(m
1,m
2,m
3,m
4)が以下の組み合わせのときに、良好な結果が得られることがわかった。
(m
1,m
2,m
3,m
4)=(1,0,1,0) ・・・(33)
【0212】
式(33)の値を式(25)〜(32)に代入すると、位相(φ
1,θ
1)、(φ
2,θ
2)、(φ
3,θ
3)、および(φ
4,θ
4)は、以下の値となる。
(φ
1,θ
1)=(90°,190°) ・・・(34)
(φ
2,θ
2)=( 0°,100°) ・・・(35)
(φ
3,θ
3)=(90°,190°) ・・・(36)
(φ
4,θ
4)=( 0°,100°) ・・・(37)
【0213】
図27に、位相が式(34)〜式(37)の値に設定されたときのプリパレーションシーケンスDP
8を示す。
図27から、φ
0〜φ
4は、0°(x軸)、90°(y軸)が交互に現れるように設定されており、一方、θ
0〜θ
4は、100°、190°が交互に現れるように設定されていることがわかる。
【0214】
図27のプリパレーションシーケンスDP
8は、撮影部位内でB0不均一やB1不均一が発生しても、磁化ベクトルの縦磁化Mzを1に近い値に戻すことができる。このことを検証するため、ΔB0およびΔB1を変更し、
図27のプリパレーションシーケンスDP
8を実行した直後(コンポジットパルスCを印加した直後)の磁化ベクトルの縦磁化の値を調べるためのシミュレーションを行った。以下に、シミュレーション結果について説明する(
図28参照)。
【0215】
図28は、シミュレーション結果を示す図である。
図28には、
図27のプリパレーションシーケンスDP
8を実行した直後の縦磁化の値を表すMzマップH5が示されている。MzマップH5の右側には、2つのプロファイルF51およびF52が示されている。プロファイルF51は、MzマップH5のΔB0=0HzにおけるMzを表している。一方、プロファイルF52は、MzマップH5のΔB1=0%におけるMzを表している。
【0216】
図28を参照すると、Mz=1に近い値を持つ領域が広範囲に渡って広がっていることがわかる。したがって、コンポジットパルスを用いることにより、B0不均一やB1不均一の影響を受けにくくすることができるので、高品質な画像を取得できることがわかる。
【0217】
尚、
図25〜
図28では、n=3の場合について説明されているが、nはn=3に限定されることはなく、任意の値に設定することができる。例えば、n=7に設定した場合について考える。n=7では、リフォーカスパルスの役割を果たすコンポジットパルスは、7回印加される。したがって、式(15)のm
kは、k=1〜7の整数、すなわち、(m
1,m
2,m
3,m
4,m
5,m
6,m
7)を考える必要がある。また、n=7であるので、式(21)のm
n+1は、m
n+1=m
8となる。したがって、n=7の場合、磁化ベクトルの縦磁化Mzは、(m
1,m
2,m
3,m
4,m
5,m
6,m
7,m
8)の値に応じて変化する。そこで、磁化ベクトルの縦磁化MzをMz=1(又は1に近い値)に戻すのに適した(m
1,m
2,m
3,m
4,m
5,m
6,m
7,m
8)の値の組み合わせを求めるためのシミュレーションを実行した。このシミュレーションから、良好な結果が得られる(m
1,m
2,m
3,m
4,m
5,m
6,m
7,m
8)の組合せの例として、以下の組合せが得られた。
(m
1,m
2,m
3,m
4,m
5,m
6,m
7,m
8)
=(1,0,1,1,0,1,0,0)
=(1,0,1,−1,0,−1,0,0)
=(2,2,0,2,2,0,0,0)
=(1,0,1,0,1,0,1,0)
=(1,0,1,−1,1,1,−1,0)
=(−1,0,−1,−1,0,−1,0,0)
=(0,2,2,2,2,0,0,0)
=(−1,0,−1,1,0,1,0,0)
=(0,2,2,0,2,2,0,0)
=(−1,0,−1,1,−1,−1,1,0)
=(1,0,1,0,0,2,2,0)
=(1,0,1,−1,−1,1,1,0)
=(1,0,1,0,2,2,0,0)
=(1,0,1,2,0,0,2,0)
=(1,0,1,1,−1,−1,1,0)
=(1,0,1,2,2,0,0,0)
【0218】
以下に、上記の組み合わせの中から、(1,0,1,1,0,1,0,0)について得られたMzマップを示す。
【0219】
図29に、(m
1,m
2,m
3,m
4,m
5,m
6,m
7,m
8)=(1,0,1,1,0,1,0,0)に設定したときのMzマップH6を示す。MzマップH6の右側には、2つのプロファイルF61およびF62が示されている。プロファイルF61は、MzマップH6のΔB0=0HzにおけるMzを表している。一方、プロファイルF62は、MzマップH6のΔB1=0%におけるMzを表している。
図29を参照すると、Mz=1に近い値を持つ領域が広範囲に渡って広がっていることがわかる。
【0220】
尚、本形態では、φ
0およびθ
0は、任意の値に設定することができる。したがって、φ
0とθ
0との差の絶対値|φ
0−θ
0|は、|φ
0−θ
0|=90°に設定されていてもよいし、|φ
0−θ
0|>90°に設定されていてもよいし、|φ
0−θ
0|<90°に設定されていてもよい。
【0221】
本形態では、δ
kおよびδ
n+1(式(14)、式(20)参照)は、δ
k=δ
n+1=90°の場合について説明されている。しかし、δ
kおよびδ
n+1は90°に近い値を有しているのであれば、90°に限定されることはない。一般的には、δ
kおよびδ
n+1は、80°≦δ
k,δ
n+1≦100°の範囲に含まれていれば、高品質な画像を得ることが可能である。また、δ
kおよびδ
n+1の値は、kの値およびn+1の値に応じて異なるように設定してもよい。
【0222】
本形態では、プリパレーションシーケンスDP
0〜DP
8は、コンポジットパルスと次のコンポジットパルスとの間に、勾配磁場(MPG)を1つ有している。しかし、コンポジットパルスと次のコンポジットパルスとの間に、複数の勾配磁場を備えてもよい。また、複数の勾配磁場は、同じ極性でもよいし、異なる極性でもよい。また、複数の勾配磁場として、正の極性の勾配磁場と負の極性の勾配磁場との組合せからなるバイポーラの勾配磁場を備えてもよい。更に、コンポジットパルスと次のコンポジットパルスとの間に、勾配磁場を備えなくてもよい。勾配磁場を備えないことにより、局所磁場不均一に起因した位相の分散の情報を含む画像や、T2強調画像を取得することができる。
【0223】
また、コンポジットパルスCを印加した直後に、横磁化を消去するためのキラー勾配磁場を印加してもよい。更に、コンポジットパルスAを印加する前に、脂肪抑制やT2強調を行うためのRFパルスを印加してもよい。
【0224】
尚、プリパレーションシーケンスDP
0〜DP
8は、心拍信号や呼吸信号などの生体信号に同期して実行してもよい。