特許第6258210号(P6258210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テルモ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6258210-生検デバイス 図000002
  • 特許6258210-生検デバイス 図000003
  • 特許6258210-生検デバイス 図000004
  • 特許6258210-生検デバイス 図000005
  • 特許6258210-生検デバイス 図000006
  • 特許6258210-生検デバイス 図000007
  • 特許6258210-生検デバイス 図000008
  • 特許6258210-生検デバイス 図000009
  • 特許6258210-生検デバイス 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6258210
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】生検デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/02 20060101AFI20171227BHJP
【FI】
   A61B10/02 110H
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-538322(P2014-538322)
(86)(22)【出願日】2013年9月3日
(86)【国際出願番号】JP2013073673
(87)【国際公開番号】WO2014050456
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年2月24日
(31)【優先権主張番号】特願2012-214272(P2012-214272)
(32)【優先日】2012年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】八田 知紀
【審査官】 姫島 あや乃
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−514905(JP,A)
【文献】 特表2010−502303(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/004776(WO,A1)
【文献】 特表2012−509096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のシャフト部と、
前記シャフト部の長手方向における先端に形成され、生体組織を穿刺する穿刺部と、
前記シャフト部に形成され、生体から採取される検体を先端側から手元側に導くためのスクリュー部と、
前記スクリュー部の先端部に形成され、前記検体を生体から剥離させるスクリューカッター部と、
前記スクリューカッター部から連続し、前記スクリュー部の一部を外周方向から覆う周壁部と、を有し、
前記スクリューカッター部は、前記穿刺部を生体組織に穿刺した状態で検体を採取することを特徴とする生検デバイス。
【請求項2】
前記スクリュー部は、前記スクリューカッター部に加えて、生体から剥離させた前記検体を生体から分離させる他のスクリューカッター部をさらに有する請求項1に記載の生検デバイス。
【請求項3】
前記スクリューカッター部、前記他のスクリューカッター部、及び前記周壁部の間に前記検体を取り込むための開口部が形成される請求項2に記載の生検デバイス。
【請求項4】
前記スクリューカッター部は、前記スクリュー部を時計方向又は反時計方向のいずれかの方向に回転させた際に前記検体を生体から剥離させ、
前記他のスクリューカッター部は、前記スクリュー部を逆方向に回転させた際に生体から剥離した検体を生体から分離させる請求項2又は3に記載の生検デバイス。
【請求項5】
前記周壁部は、前記スクリューカッター部が検体を剥離させる際の回転方向に前記周壁部を回転させた際の先端部が刃付けされる請求項1又は3に記載の生検デバイス。
【請求項6】
前記シャフト部の手元側から前記スクリュー部の手元側まで伸び、前記開口部に連通するルーメンを前記シャフト部の周囲に形成する中空の管状部材をさらに有する請求項3に記載の生検デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の採取に用いられる生検デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
癌などの病気に対して、患者の病変部から生体組織を採取して検査する生検術においては、内視鏡を用いて患部や採取部位を観察しながら採取を行っている。生検術により病気の確定診断を行う場合において、正確な診断結果を得るために可能な限り多くの生体組織に基づいて診断を行うことが好ましい。しかし、生検器具は一般的に鉗子や針を用いており、一回の穿刺で診断に必要な量を採取することは難しい。特許文献1では生体組織から試料を効率的に採取するために、らせん状の組織受容要素と、らせん状の組織受容要素の外周と協働して切断機能を与える切断要素を有する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004―517706号公報.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置を使用すれば一回の操作で組織受容要素に多くの試料を採取できるようにも思われるが、組織受容要素は細長く、らせん状をしており、剛性が十分であるとは言い難い。そのため、採取に当たり、装置を組織に対して固定するために組織に穿刺する場合でも、生体組織に素早く穿刺することは難しい。これは穿刺対象が肝臓や肺のような軟組織の場合に顕著に現れる。このように、穿刺部分を生体にしっかりと固定できないため、検体を採取しようとしても穿刺部分が外れてしまい、検体を効率的に採取することができない、といった問題がある。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を解決するために発明されたものであり、生体組織、特に軟組織の場合であっても効率よく検体を採取できる生検デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明に係る生検デバイスは、長尺状のシャフト部と、シャフト部の長手方向における先端側に形成され、生体組織を穿刺する穿刺部と、シャフト部に形成され、生体から採取される検体を先端側から手元側に導くためのスクリュー部と、スクリュー部の先端部に形成され、検体を生体から剥離させるスクリューカッター部と、スクリューカッター部から連続し、スクリュー部の一部を外周方向から覆う周壁部と、を有する。本発明においてスクリューカッター部は、穿刺部を生体組織に穿刺した状態で検体を採取することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る生検デバイスを示す斜視図である。
図2図1の2−2線に沿う断面図である。
図3】同生検デバイスを示す正面図である。
図4】同生検デバイスを示す右側面図である。
図5】同生検デバイスを示す左側面図である。
図6】同生検デバイスを示す底面図である。
図7】同生検デバイスを用いて生体組織から検体を採取する手技を説明する説明図である。
図8】同生検デバイスを用いて生体組織から検体を採取する手技を説明する説明図である。
図9】同生検デバイスを用いて生体組織から検体を採取する手技を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0009】
図1は本発明の一実施形態に係る生検デバイスを示す斜視図、図2図1の2−2線に沿う断面図、図3は同生検デバイスを示す正面図、図4は同生検デバイスを示す右側面図、図5は同生検デバイスを示す左側面図、図6は同生検デバイスを示す底面図である。
【0010】
図1図6を参照して概説すれば、本実施形態に係る生検デバイス100は、シャフト部10と、シャフト部10の長手方向における先端に形成される穿刺部20と、シャフト部10に形成され、検体を先端側から手元側に導くためのスクリュー部30と、を有する。また、生検デバイス100は、スクリュー部30に形成され、検体を生体から剥離させる第1スクリューカッター部31(スクリューカッター部に相当)、剥離させた検体を生体から分離させる第2スクリューカッター部32(他のスクリューカッター部に相当)、をも有している。また、生検デバイス100は、第1スクリューカッター部31から連続し、スクリュー部30の一部を外周方向から覆う周壁部40を有している。周壁部40は、第1スクリューカッター部31が生体から細胞を剥離させる際に回転する方向と同じ方向に回転させた際の先端部が刃付けされたブレード41を有している。第1スクリューカッター部31、第2スクリューカッター部32、及び周壁部40の間には、剥離された検体をスクリュー部30よりも手元側に取り込むための開口部50が形成される。また、シャフト部10は、径方向において管状部材60により包囲されている。また、生検デバイス100の手元側にはハンドル70及び保持部材80が設けられている。以下、詳述する。
【0011】
ハンドル70は、シャフト部10及びスクリュー部30を回転させるための円柱状の部材である。ハンドル70は回転した際に滑りが起きないように側面に凹凸等を設けてもよい。ハンドル70は、ポリプロピレンやポリカーボネート等から形成されるが、これに限定されない。
【0012】
保持部材80は、シャフト部10を管状部材60に回転可能に取り付けて保持する。保持部材80は管状部材60の手元側において熱融着等によって接着されている。保持部材80は、ハンドル70と同様の材料によって形成してもよいが、シャフト部10との接触部分は、摩耗による保持力の低下を防止するため、ポリカーボネート等の耐摩耗性プラスチックにより形成されることが望ましい。
【0013】
シャフト部10は、先端に穿刺部20、スクリュー部30、及び周壁部40を有する長尺状の部材である。シャフト部10は管状部材60と共に肺などの複雑な気管内に挿入する際に、気管内表面に衝突してもできるだけ衝撃を伝えないように軽量であることが望ましい。また、検体の採取は、ハンドル70を回転させ、シャフト部10にトルクを効かせることで行われる。そのため、シャフト部10は所定のねじり剛性を有するように構成される。シャフト部10の材料や長さ、及び断面形状はこのような条件を考慮して定められる。例を挙げれば材料はSUSであり、長さは1000mm程度、断面はφ0.4mmの円が挙げられるが、これに限定されない。
【0014】
管状部材60は、保持部材80を介してシャフト部10に取り付けられる中空の部材であり、シャフト部10の手元側からスクリュー部30の手元側までシャフト部10を包囲する。これにより、採取された検体は、開口部50を通じて生体と径方向において隔てられた管状部材60の内部ルーメン61に導入される。第1スクリューカッター部31、第2スクリューカッター部32、及びブレード41により採取された検体はスクリュー部30及びスクリュー部30よりも手元側のシャフト部10に付着する。検体は所定の粘性を有するため、スクリュー部30やシャフト部10に付着して脱落することはほとんどない。しかし、デバイス100の捩り動作等によって仮に検体がスクリュー部30やシャフト部10から脱落した場合でも管状部材60がシャフト部10を包囲しているため、振動等の外部入力があった場合でも採取された検体が生検デバイス100から脱落することはなく、これにより採取した悪性細胞等の検体が播種するといった合併症を抑制することができる。
【0015】
また、管状部材60の手元側にはポンプ等の負圧発生手段を接続してもよい。ポンプなどを接続することによって先端側で採取された検体は、回転操作によってシャフト部10を伝わって手元側まで移動させたり、デバイス100を生体から引き抜き、管状部材60をシャフト部10から取り外したりする操作を行わなくても検体を取り出すことができる。よって、検体の回収を効率的に行うことができる。
【0016】
穿刺部20は、検体の採取の際にデバイス100を生体に固定するために設けられる。穿刺部20の材料や形状は生体組織への穿刺のし易さや、穿刺後の外れにくさ等を考慮して定めることができる。穿刺のし易さを考慮すれば、穿刺部20はコルク抜きのような螺旋形状やドリル、又はのこぎりの刃のような鋸歯形状であってもよいが、これに限定されない。また、穿刺部20の軸方向長さLは、例えば2mmであり、肺のように複雑に湾曲した管路内に挿入した場合でも良好に操作できるように比較的短く構成している。
【0017】
また、穿刺部20は、例えば0度程度に冷凍した状態で生体内に導入してもよい。このように穿刺部20を冷凍した状態で生体組織に導入すると、採取する細胞周辺の水分が氷結することによって穿刺部20に周辺の組織が穿刺部20に容易に付着し、穿刺部20を生体組織により強固に固定することができる。
【0018】
スクリュー部30は、採取した検体を先端側から手元側に導くための部材である。本実施形態に係る生検デバイス100は、回転により生体組織から検体を採取するため、採取した検体は先端側から螺旋形状のスクリュー部30とシャフト部10を伝わって手元側まで導かれる。スクリュー部30は検体をスクリュー部30から脱落させずに円滑に手元側に移動させることができるように表面を粗くしたり、粘着性を有する表面加工を行ったりしてもよい。
【0019】
スクリュー部30は、例えばステンレス鋼で形成され、図4に示す板厚tが0.2mm、軸方向の長さLが2mm、及び図3に示すデバイス100の正面から見た径φが1.5mmとなるが、これに限定されない。
【0020】
第1スクリューカッター部31は、図3に示すようにスクリュー部30の螺旋形状を反時計周りに回転させた際に生体から細胞を剥離させる。第1スクリューカッター部31は、周囲の細胞を第1スクリューカッター部31から先端側と手元側に分断し、その中でも手元側に位置する細胞を生体から剥離させる。第1スクリューカッター部31は、図3に示す正面からのビューにおいて、スクリュー部30の螺旋形状を投影した際の円形状の半径に当る形状とすることができるが、これに限定されない。第1スクリューカッター部31の刃面の形状は、例えばストレートに刃付けしたものや、鋸のように鋸歯状にしたものを挙げることができるが、これに限定されない。
【0021】
周壁部40は、第1スクリューカッター部31から連続し、スクリュー部30の一部を外周方向から覆うようにスクリュー部30に取付けられる。周壁部40は、スクリュー部30と同様の材料によって形成してもよいし、シリコーン等の樹脂材料によって柔軟性を持たせてもよい。
【0022】
ブレード41は、第1スクリューカッター部31が細胞を生体から剥離させるために図3に示す反時計周りと同じ方向に回転させた際に、ブレード41の周囲に位置する細胞を生体から剥離させる。ブレード41は、スクリュー部30の外周部分に設けられており、ブレード41の周囲に位置する細胞をブレード41から略径方向内側と外側に分断し、その中でも径方向内側に位置する細胞を生体から剥離させる。ブレード41は、カッター部分の輪郭がシャフト部10の軸線と平行でなく、先端側から手元側に移動するにつれて、刃の位置がスクリュー部30を図3のデバイス先端側から見た際にスクリュー部30の外周輪郭形状に沿って移動するように形成されている。
【0023】
このようにブレード41が形成されることによって、ブレード41は、手元側の刃から生体組織と部分的に接触して、検体となる部位を剥離させるように切断する。そのため、接触抵抗が抑制され、検体が切断できない、といった状況を低減させることができる。
【0024】
第2スクリューカッター部32は、第1スクリューカッター部31によって生体から剥離された細胞を生体から分離させるためのカッターである。第2スクリューカッター部32は、図3に示すようにスクリュー部30を時計方向に回転させた際に、生体から剥離した細胞を生体から分離させる。第2スクリューカッター部32は、第1スクリューカッター部31及びブレード41によって生体から剥離された細胞を第2スクリューカッター部32から先端側と手元側に分断し、その中でも手元側に位置する細胞を生体から分離させて検体とする。このように第2スクリューカッター部32が第1スクリューカッター部31及びブレード41の回転方向と逆方向に回転させた際に生体から剥離した細胞を生体から分離できることによって、簡易な操作で検体を必要な量だけ生体から採取することができる。
【0025】
第1スクリューカッター部31、第2スクリューカッター部32及びブレード41の刃付け角度は例えば45度であるが、これに限定されない。
【0026】
また、検体は生検デバイス100の回転操作だけでなく、生検デバイス100を手元側に牽引することによって生体から分離させてもよい。当該方法によっても簡易な操作で検体を生体から取り出すことができる。
【0027】
開口部50は、第1スクリューカッター部31、第2スクリューカッター部32、及び周壁部40の間に形成される部位であり、生体から剥離した細胞は当該部位を通過する。スクリュー部30に周壁部40を取り付けることによって、第1スクリューカッター部31及びブレード41によって採取された細胞は開口部50からでなければ手元側へ移動することができない。その他の部位はスクリュー部30と周壁部40の形状によって採取された検体の飛散が防止される。このようにスクリュー部30及び周壁部40によって検体の移動を制限することにより、悪性細胞の播種等の合併症を抑制することができる。
【0028】
開口部50の大きさは、例示すれば1mm×0.5mm程度であるが、これに限定されない。
【0029】
次に本実施形態に係る生検デバイスを用いて生体から検体を採取する手技について説明する。図7から図9は本実施形態に係る生検デバイスを用いて生体組織から検体を採取する手技を説明する説明図である。
【0030】
生検デバイス100の導入に先立ち、X線、CT装置などの撮像手段を用いることにより、生検デバイス100を導入する経路を予め確認することができる。まず、患者の咽頭や喉頭に局部麻酔を行う。そして、撮像手段によって生体内の画像を取得しながら生検デバイス100を所定位置まで導入する。さらに、生検デバイス100を気管支鏡などに備えられるチャンネルを通して生体内に導入することもできる。
【0031】
生検デバイス100は、スクリュー部30を回転させる不図示の回転力発生手段と生検デバイス100の手元側において接続されている。穿刺部20、スクリュー部30は第1スクリューカッター部31及びブレード41が採取部位を採取する以外に、所定部位に到達するまでの部位を削って気胸や出血を起こしたりしないように管状部材60の内部に収容されている。
【0032】
図7に示すように生検デバイス100が所定の部位に到達したら、穿刺部20及びスクリュー部30を管状部材60から突出させる。そして、図8に示すように穿刺部10を生体組織Bに穿刺し、生検デバイス100を生体に固定する。その後、回転力発生手段を作動させて、スクリュー部30を図3に示す反時計周りに回転させる。
【0033】
これにより、図9に示すようにスクリュー部30の螺旋形状の先端に形成された第1スクリューカッター部31は、第1スクリューカッター部31の周囲に位置する細胞を第1スクリューカッター部31から先端側と手元側に分断し、その中でも手元側に位置する細胞S1、S2は開口部50に取り込まれる。同様に、周壁部40のブレード41は、ブレード41の周囲に位置する細胞をブレード41から略径方向内側と外側に分断し、その中でも内側に位置する細胞S1、S2を開口部50に取り込む。
【0034】
細胞S1、S2は、シャフト部10の回転によって開口部50からシャフト部10を伝わって生検デバイス100の手元側に誘導される。
【0035】
必要な量の検体を採取できたら、回転力発生手段を一旦停止させ、スクリュー部30を回転力発生手段によって図3に示す時計回りに回転させる。これにより、生体組織Bから剥離された細胞S1、S2が第2スクリューカッター部32によって第2スクリューカッター部32から先端側と手元側に分断され、その中でも手元側の細胞が検体として生体組織Bから分離される。生体組織Bから分離した細胞(検体)S1、S2を管状部材60の内部に取り込んだ状態で回転力発生手段を停止し、穿刺部20を生体から引き抜く。穿刺部20及びスクリュー部30は管状部材60の内部に収容し、生検デバイス100は生体から抜去される。
【0036】
生検デバイスはスクリュー状の部材を回転させることにより、生体組織から細胞を採取するものがあるが、生検デバイスと生体組織との固定が十分でないと、生検デバイスの回転と共に生体組織も回転してしまう。これでは生体組織から細胞を剥離させて採取することができず、このような状況は肝臓や肺のような軟組織の場合には顕著に現れてしまう。生体と生検デバイスを素早く固定できなければ、検体の採取もそれだけ遅れてしまい、検体の効率的な採取を阻害することとなってしまう。
【0037】
これに対し本実施形態に係る生検デバイス100は、シャフト部10の先端に形成された穿刺部20を生体組織に穿刺して生検デバイス100を生体組織に固定し、シャフト部10に形成されたスクリュー部30の第1スクリューカッター部31によって検体を生体から剥離させて採取している。そのため、第1スクリューカッター部31によって検体を剥離させる際には、シャフト部10に形成された穿刺部20によって生検デバイス100はしっかりと生体に固定されており、第1スクリューカッター部31により検体を剥離させようとしても生検デバイス100は生体から容易に外れない。よって、生体から検体を容易に剥離させて採取することができ、軟組織のような場合であっても効率的に検体を採取することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る生検デバイス100は、長尺状のシャフト部10と、シャフト部10の長手方向における先端側に形成され、生体組織を穿刺する穿刺部20と、シャフト部10に形成され、生体から採取される検体を先端側から手元側に導くためのスクリュー部30と、スクリュー部30に形成され、検体を生体から剥離させる第1スクリューカッター部31と、を有する。第1スクリューカッター部31は、穿刺部20を生体組織に穿刺した状態で検体を採取する。
【0039】
そのため、生検デバイス100を生体にしっかりと固定して検体を迅速に採取することができ、軟組織のような場合であっても検体を効率的に採取することができる。
【0040】
また、スクリュー部30は、第1スクリューカッター部31に加えて、生体から剥離した検体を生体から分離させる第2スクリューカッター部32をも有している。そのため、剥離された細胞を所望の量で生体から分離させて検体とすることができる。よって、細胞を生体から必要以上に採取することを防止し、検体の採取作業を迅速に行うことができる。
【0041】
また、第1スクリューカッター部31は、スクリュー部30の先端部に形成され、生検デバイス100は、第1スクリューカッター部31から連続し、スクリュー部30の一部を外周方向から覆う周壁部40を有している。そのため、第1スクリューカッター部31によって生体から剥離された細胞は周壁部40によってスクリュー部30の外周に飛散することが防止され、悪性細胞の播種等の合併症を防止することができる。
【0042】
また、第1スクリューカッター部31、第2スクリューカッター部32、及び周壁部40との間には検体を取り込むための開口部50が形成されている。そのため、第1スクリューカッター部31及びブレード41から剥離された検体は開口部50からでなければ回収することができず、第1スクリューカッター部31及び第2スクリューカッター部32によって、径方向だけでなく長手方向においても検体の周囲への飛散を抑制することができ、検体の播種を抑制することができる。
【0043】
また、第1スクリューカッター部31は、スクリュー部30を生検デバイス100の先端側から見て反時計周りに回転させた際に生体から細胞を剥離させ、第2スクリューカッター部32は、スクリュー部30を時計回りに回転させた際に生体から剥離した細胞を生体から分離させている。
【0044】
そのため、生体から細胞を剥離させる際と逆方向にスクリュー部30を回転させるだけで剥離させた細胞を生体組織から分離させて容易に検体として採取することができる。
【0045】
また、周壁部40は、第1スクリューカッター部31が生体から細胞を剥離させる回転方向と同じ方向に回転させた際の先端部が刃付けされ、ブレード41が形成されている。そのため、生体から細胞を剥離させる際には第1スクリューカッター部31が第1スクリューカッター部31から先端側及び手元側に細胞を分断して剥離させると共に、ブレード41は周囲の細胞をブレード41から略径方向における外側と内側に分断して細胞を剥離させることができる。よって、一回の生検で生体から剥離させる検体の量を増加させて、少ない回数で確定診断に必要な検体を採取することができる。
【0046】
また、スクリュー部30よりも手元側には開口部50に連通するルーメン61をシャフト部10の周囲に形成する中空の管状部材60を設けるように構成している。そのため、開口部50を通過してシャフト部10に付着した検体は生検デバイス100を回転させる動作をした際に、生検デバイス100から脱落して採取量が減少する、といった事態を防止できる。また、管状部材60によって採取された検体が位置するルーメン61を周囲の生体の管腔と隔てることによって、採取した悪性腫瘍等の検体の播種を抑制することもできる。
【0047】
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、特許請求の範囲に応じて種々の改変が可能である。
【0048】
周壁部40は、図3に示す生検デバイス100を先端側から見た際にスクリュー部30を反時計周りに回転させた際の回転方向先端部を刃付けしてブレード41に形成する実施形態について説明した。しかし、周壁部40はスクリュー部30を時計周りに回転させた際の回転方向先端部をスクリュー部30の第2スクリューカッター部32と同様に刃付けしてブレードに形成してもよい。
【0049】
本出願は、2012年9月27日に出願された日本特許出願番号2012−214272号に基づいており、その開示内容は参照され、全体として組み入れられている。
【符号の説明】
【0050】
10 シャフト部、
100 生検デバイス、
20 穿刺部、
30 スクリュー部、
31 第1スクリューカッター部(スクリューカッター部)、
32 第2スクリューカッター部(他のスクリューカッター部)、
40 周壁部、
41 ブレード、
50 開口部、
60 管状部材、
61 開口部50と通じる管状部材の内部ルーメン、
70 ハンドル、
80 保持部材、
B 生体組織、
(穿刺部の)軸方向長さ、
(スクリュー部の)軸方向長さ、
S1、S2 細胞(検体)
t (スクリュー部の)板厚
φ (スクリュー部の)径。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9