特許第6258214号(P6258214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6258214
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】注射による誤用に対処可能な錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/22 20060101AFI20171227BHJP
   A61K 9/24 20060101ALI20171227BHJP
   A61K 9/26 20060101ALI20171227BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20171227BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20171227BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20171227BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   A61K9/22
   A61K9/24
   A61K9/26
   A61K47/32
   A61K47/36
   A61K47/58
   A61K31/485
【請求項の数】24
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-545260(P2014-545260)
(86)(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公表番号】特表2015-500264(P2015-500264A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2012074671
(87)【国際公開番号】WO2013083710
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2015年7月29日
(31)【優先権主張番号】1161249
(32)【優先日】2011年12月6日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500232329
【氏名又は名称】エティファルム
【氏名又は名称原語表記】ETHYPHARM
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】カトリーヌ、エリ
(72)【発明者】
【氏名】ポーリン、コンタマン
【審査官】 金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−528328(JP,A)
【文献】 特表2009−537456(JP,A)
【文献】 特表2007−501202(JP,A)
【文献】 特表平09−508410(JP,A)
【文献】 特表2011−506493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/485
A61K 9/22
A61K 47/32
A61K 47/36
A61K 47/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 薬物耽溺目的で誤用されうる少なくとも1種類の有効成分、
- 組成物の総重量の20〜60重量%の、ポリビニルアセテートとポリビニルピロリドンとの混合物であって、ポリビニルアセテートとポリビニルピロリドンとの比が80:20である混合物
- 組成物の総重量の5〜30重量%のキサンタンガム、
- 組成物の総重量の5〜40重量%のカルボマー
を含有する、徐放性錠剤の形態の経口医薬組成物。
【請求項2】
前記有効成分が、向精神薬、抗精神病薬、精神安定薬、催眠薬、鎮痛薬および抗不安薬を含んでなる群から選択されるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記有効成分が、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシモルフォン、トラマドール、メタドン、コデイン、フェンタニルおよびブプレノルフィン、カンナビノイド、コカイン、アンフェタミン、ならびにそれらの薬学上許容される塩を含んでなる群に属する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
pH安定剤を含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
組成物の総重量の0.1〜30重量%のpH安定剤を含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
組成物の総重量の1〜10重量%のpH安定剤を含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
下記物質(a)〜(e):
a)鼻腔および/または咽頭経路を刺激する物質;
b)催吐薬物質;
c)嫌悪着色剤;
d)苦味物質;
e)薬物耽溺目的で誤用されうる有効成分の拮抗薬
のうち少なくとも1以上またはそれらの混合物をさらに含んでなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
薬物耽溺目的で誤用されうる前記有効成分の拮抗薬が、ナロキソンもしくはナルトレキソンまたはそれらの薬学上許容される塩の1つである、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
外被を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記外被が、エチルセルロース誘導体およびメタクリルポリマーの群から選択される少なくとも1種類の徐放性ポリマーから形成される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
エチルセルロースの外被を含んでなる、請求項または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
マトリックス錠、多層錠またはマイクロ錠の形態である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
付着防止剤、打錠時に錠剤の凝集性を改善しうる薬剤、増量剤、滑沢剤、可塑剤、充填剤、甘味剤および着色剤を含んでなる群から選択される少なくとも1種類の薬学上許容される賦形剤を含んでなる、請求項12に記載のマトリックス錠。
【請求項14】
薬物耽溺目的の注射による誤用に対処するために使用するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
薬物耽溺目的の鼻腔経路を介した誤用に対処するための医薬として使用するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
薬物耽溺目的の経口経路を介した誤用に対処するための医薬として使用するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
不慮の誤用に対処するための医薬として使用するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
1日1回投与しうる医薬として使用するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
1日2回投与しる医薬として使用するための、請求項1〜13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
下記の工程:
- 有効成分をマトリックスの賦形剤と混合すること;
- 所望により造粒すること;および
- 前記混合物を、錠剤が少なくとも4MPaの耐破砕性を有するように選択した条件下で打錠すること
を含んでなる、請求項12または13に記載のマトリックス錠を製造する方法。
【請求項21】
前記錠剤が少なくとも6MPaの耐破砕性を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
打錠工程が、実際の打錠工程の前または打錠工程中に、打錠する混合物または打錠工具を加熱工程に曝さずに行われる、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記マトリックス錠をコーティングする工程をさらに含んでなる、請求項20および22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記外被の硬化工程をさらに含んでなる、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
薬物乱用は、ある種の薬物、特に、重度の疼痛を処置するため、またはオピエート薬物に対する常用癖を治療するための療法において使用される、数種の向精神薬または麻薬、例えばオピオイドもしくはその誘導体の薬物常用者による故意の誤用である。
【0002】
注射による誤用では、対象とする有効成分を含有する錠剤またはカプセル剤が薬物常用者の手近にある何らかの手段、特に、すり鉢やたばこ用ライターを用いて、場合によっては咀嚼したりかみ砕いたりすることによって、細かい粉末(en poudre fine)にする。次に、得られた粗粉末(必然的に、その剤形に含まれていた最初の賦形剤を含有する)を、時々予温した、かつ/またはそれらの基本形態中に存在する数種の有効成分(褐色ヘロイン、モルヒネベース)のための酸を添加した、少量(数ミリリットル)の液体に溶解しうる。その後、得られた液体を、静脈経路で注射する前に、血中に大きな粒子が入らないように、例えばタバコのフィルターを用いて大まかに濾過することができる。
【0003】
この場合、有効成分は直ちに、血中に入ることができ、薬物常用者が求める即時の向精神作用が得られる。
【0004】
薬物乱用にはまた、精製されていない、濾過が不十分または困難な、非殺菌性の、賦形剤および破砕残渣の注射に直接関連する多くの健康リスクも伴う。
【0005】
現況技術において、特許出願WO2007099152が知られている。この出願は、水不溶性および超硬質の徐放性マトリックス錠に関する。これらのマトリックス錠は、水不溶性、pH非依存性徐放性ポリマー、無機賦形剤およびそれらの混合物を含んでなる群から選択される少なくとも1種類の賦形剤から形成される打錠マトリックスに分散した有効成分を含んでなる。
【0006】
このような錠剤は、錠剤がアルコールとともに摂取される場合または患者が誤って咀嚼した場合の意図しない誤用の現象を防ぐことができる。WO2007099152に記載されている錠剤はまた、経口および鼻腔経路を介した有効成分の故意の誤用を防ぐことにより、薬物乱用も防止する。
【0007】
しかしながら、これらの錠剤は、注射経路を介した有効成分の誤用は考慮していない。
【0008】
現況技術において、文献 US4,070,494もまた知られている。この文献は、水の存在下での有効成分の抽出を制限することにより非経口経路を介した有効成分の誤用を防ぐ医薬組成物に関するものである。これらの組成物は、水中でゲル化する賦形剤を含んでなる。
【0009】
しかしながら、この文献には、酸または水性アルコール媒体中での有効成分抽出を防止するための対策がない。
【0010】
薬物常用者に広く誤用されているオキシコドン錠剤であるオキシコンチン(商標)も知られている。その処方が乱用を制限するために見直された。しかしながら、再処方の後であっても、注射による誤用はなお可能である。
【発明の概要】
【0011】
従って、水性(pHにかかわらず)または水性アルコールにかかわらず、あらゆる液体媒体、特に、塩酸、酢、レモン果汁、40%エタノール、50%エタノール、60%エタノール、70%エタノール、80%エタノール、90%エタノールおよび96%エタノールによる有効成分の抽出を困難にし、さらには不可能とする医薬組成物の開発の本質的な必要がある。
【0012】
この剤形は、迅速かつ低コストの極めて簡単な製造プロセスを用いて生産されるものでなければならない。
【0013】
よって、本発明の目的は、注射経路を介した誤用に対処するために医薬品として使用するための徐放性固体経口医薬組成物を提案することである。
【0014】
よって、本発明の主題は、
- 薬物耽溺目的で誤用されうる少なくとも1種類の有効成分、
- ポリビニルアセテートとポリビニルピロリドンの混合物、
- キサンタンガム、
- カルボマーおよび/またはアラビアガム
を含んでなる徐放性錠剤形態の経口医薬組成物である。
【0015】
定義
本発明において、「徐放性」とは、2回の一日用量または単回の一日用量のいずれかで有効成分の投与を可能とする、6時間より長い時間、好ましくは8時間より長い時間、さらには24時間より長い時間にわたる身体への1以上の有効成分の放出を意味する。
【0016】
本発明において、故意の誤用または薬物乱用の語とは、準備形態のいずれの故意の変更も表すために用いる。特に、故意の誤用という概念は、錠剤を粉末化した後に非経口注射を目的として少量の液体にそれらを溶解することに関する。
【0017】
好ましくは、「注射による誤用に対処する」とは、水性アルコール媒体中に抽出される有効成分の量がオキシコンチン(商標)中に含まれる量より少ない、すなわち、抽出されるのが有効成分の40%未満であることを意味する。水性媒体中に抽出される有効成分の量も、オキシコンチン(商標)中に含まれる量より少なく、すなわち、抽出されるのは有効成分の25%未満である。
【0018】
「水溶液」とは、少なくとも一部に水を含有する、そのpH、すなわち、酸性、中性または塩基性にかかわらず、任意の液体媒体を意味する。例として、水、酢、レモン果汁、清涼飲料水などが挙げられる。
【0019】
本発明において、「水性アルコール溶液」との表現は、少なくとも一部に水および一部にエタノールを含有する任意の液体媒体、例えば、40%エタノール、50%エタノール、60%エタノール、70%エタノール、80%エタノール、90%エタノールおよび96%エタノールと定義される。
【0020】
「カルボマー」または「カーボポール(商標)」とは、アリルスクロースまたはペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋された高分子量のアクリル酸ポリマーを意味する(Handbook of Pharmaceutical Excipients, 5th Edition, p.111)。例えば、それはカルボマー910、カルボマー934、カルボマー934P、カルボマー940、カルボマー941、カルボマー71G、カルボマー980、カルボマー971Pまたはカルボマー974Pであり得る。前記カルボマーの粘度は、0.5%w/wで4000〜60000cPの間である。
【0021】
本発明において、「錠剤」とは、マトリックス錠、多層錠、マイクロ錠を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による組成物は、種類は問わずに、誤用されうる1以上の有効成分を含有し得る。有利には、選択される有効成分は、長時間にわたって、すなわち、少なくとも6時間、好ましくは12時間を超える、さらに好ましくは20時間を超える時間にわたって身体に放出されることを意図する。
【0023】
よって、本発明による錠剤は、好ましくは、向精神薬系列に属する、すなわち、刺激作用、安定化作用または幻覚作用によって向精神活性を示す有効成分の持続的送達に使用される。
【0024】
例えば、本発明において使用可能な有効成分は、好ましくは、天然または合成の、アヘンの誘導体および/またはアルカロイド、例えば、コデイン、ナルセイン、ノスカピンおよびそれらの塩などである。
【0025】
本発明において使用可能な有効成分はまた、モルヒネ、その誘導体およびその塩、特に、モルヒネン類(例えば、フォルコジン、ナロルフィン、コデイン、ヒドロコドン、フォルコジン、ジヒドロコデイン、ヒドロモルホン)、およびモルヒナン類(例えば、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デキストロメトルファン、ナルブフィン、ナルトレキソン、ナロキソン、ナルメフェン、ヒドロコドン、オキシモルフォンおよびオキシコドン)ならびに一般に、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、トラマドール、アポモルフィンおよびエトルフィンなどのモルヒネのあらゆる類似体を含んでなる群に属する。
【0026】
本発明はまた、向精神作用を有する天然または合成のアルカロイド誘導体、例えば、コカインおよびその誘導体、ヘロイン、大麻およびカンナビノイドにも取り組む。
【0027】
最後に、本発明はまた、例えば、極めて広く誤用されているメタドンおよびブプレノルフィンなどの薬物耽溺の置換処置および支援離脱としての療法に現行使用されている物質の総てに取り組む。
【0028】
一般に、本発明はまた、現今において誤用を受けている他の総ての治療薬種、特に、抗精神病薬、精神安定薬、催眠薬、鎮痛薬、抗不安薬、特に、ベンゾジアゼピン類、アンフェタミン類(amphetaminics)も想定し得る。
【0029】
組成物中に含まれる有効成分は、組成物の総重量の1〜70重量%の間を占める。有利には、有効成分は、組成物の総重量の5〜50重量%、さらに有利には組成物の総重量の10%〜40重量%を占める。
【0030】
また、有効成分をミリグラム(mg)で定量することも可能である。よって、組成物中に含まれる有効成分は、錠剤中、0.1mg〜500mgの間である。有利には、有効成分は、錠剤中、1mg〜200mgである。例えば、オキシコドンの錠剤は、5〜80mgのオキシコドンを含有する。
【0031】
例えば、ヒドロモルホンの錠剤は4〜64mgのヒドロモルホンを含有し、モルヒネ錠剤は5〜200mgのモルヒネを含有する。
【0032】
本発明の組成物中に含まれる有効成分は、当業者に公知のいずれの形態で存在してもよく、特に、粉末、結晶または顆粒形態であり得る。
【0033】
本発明による組成物はまた、ポリビニルアセテートとポリビニルピロリドンの混合物を含有する。混合物中のポリビニルアセテートとポリビニルピロリドンの比は、(95:5)〜(70:30)の間であり、好ましくは(80:20)である。
【0034】
ポリビニルアセテート(PVA)とポリビニルピロリドン(PVP)の混合物は、組成物の総重量の10〜80重量%、好ましくは組成物の総重量の15〜70重量%、さらに好ましくは組成物の総重量の20〜60重量%を占める。
【0035】
キサンタンガムもまた、本発明の組成物中に存在する。キサンタンガムは、組成物の総重量の1〜88重量%、特に組成物の総重量の3〜50重量%、好ましくは10〜40%、より好ましくは5〜30%、さらに好ましくは15〜25%を占める。
【0036】
本発明による組成物は、カルボマー(カーボポール(商標))および/またはアラビアガムをさらに含んでなる。カルボマーおよび/またはアラビアガムの量は、組成物の総重量の1〜88重量%、特に2〜50%、好ましくは5〜40%、より好ましくは8〜30%、さらに好ましくは組成物の総重量の10〜30重量%を占める。
【0037】
驚くことに、本発明者らは、上記の化合物の特定の組合せが、その剤形が注射可能な容量の水性または水性アルコール溶液に溶かす目的で粉末にされる際に、注射による誤用防止を可能とすることを見出した。
【0038】
本発明の組成物を粉末状にして水溶液(pH<3であっても)または水性アルコール溶液中に入れると、ゲルが形成されて有効成分を捕捉し、非経口経路による投与が困難となる。
【0039】
さらに、その形成されたゲルの厚みを見ると、薬物常用者がこのような組成物を自ら注射することが強く抑止されるだろう。
【0040】
また、この組成物はアルコール媒体には不溶性であるので、アルコールの同時経口摂取という事態における身体への有効成分の大量放出を回避し、不慮の誤用に備える。
【0041】
この組成物のもう1つの利点は、鼻腔経路を介した誤用も制限することである。この組成物を鼻腔経路を介した吸収の目的で粉末にすると、粘液分泌と接触してゲルが形成され、これにより有効成分を捕捉する。
【0042】
本発明の医薬組成物はまた、少なくとも4MPa、有利には少なくとも6MPaの耐破砕性を有する。本出願では、錠剤を特徴付けるために、特許出願WO2007099152に記載されているものなどの耐破砕性と硬度の両方の概念が使用される。
【0043】
その耐破砕性により、本発明の組成物は経口経路を介した誤用の制限を可能とする。本組成物は、薬物常用者により慣用されている技術(コップの底もしく2本のスプーンの間での破砕)または咀嚼により破砕されるリスクを制限する構造を持つ。
【0044】
別の面によれば、本発明者らはまた、本発明の組成物にpH改変剤を加える場合、本組成物を粉末にして水性または水性アルコール溶液中に入れると、得られるゲルは、ゲルが20ゲージの針をもはや通過できないような粘度を持つということを確認して驚いた。この特性は、注射によって投与しようといういずれの試みも一掃するので、注目すべきことである。
【0045】
本発明のpH改変剤は、下記の化合物:クエン酸、重炭酸ナトリウム、フマル酸、リン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび炭酸ナトリウムのうち少なくとも1種類を含んでなる。
【0046】
例えば、本医薬組成物は、組成物の総重量中0.1〜30重量%のpH改変剤、好ましくは組成物の総重量中0.5〜20重量%のpH改変剤、より好ましくは組成物の総重量中1〜10重量%のpH改変剤を含んでなり得る。
【0047】
有利なことに、pH改変剤の存在は、有効成分が胃腸管を通る際にその放出をpH非依存性とすることができるということも確認された。従って、有効成分の放出は、種々の媒体のpH変動によって摂動され得ない。
【0048】
前記医薬組成物はまた、下記物質(a)〜(e):
- (a)鼻腔および/または咽頭経路を刺激する物質;
- (b)薬物耽溺手段に誤用されうる有効成分の拮抗薬;
- (c)催吐薬物質;
- (d)嫌悪剤としての着色剤;および
- (e)苦味物質;
のうち少なくとも1つまたはそれらの混合物をさらに含んでなり得る。
【0049】
有効成分が天然または合成オピエート誘導体である場合、拮抗薬は有利には、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナリド(nalid)、ナルメキソン(nalmexone)、ナロルフィンおよびナルフィン(naluphine)を含んでなる群から選択され、これらの種々の化合物はそれぞれ薬学上許容される形態、特に、塩基、塩の形態、または溶媒和物形態である。これらの拮抗薬は、慣用されている用量で、特に、組成物当たり0.5〜100mgの割合で存在する。
【0050】
本発明の1つの有利な実施態様では、前記拮抗薬は、ナロキソンまたはその薬学上許容される塩の1つである。
【0051】
本発明の特定の一実施態様によれば、組成物は、外被でフィルムコーティングすることができ、当業者ならば、このコーティングの必要および割り当て機能に関してどのように適合させればよいかが分かるであろう。
【0052】
例えば、外被は、有効成分が例えば胃媒体の低pH値に感受性がある場合には、有効成分を保護する目的で施すことができ、この場合には、胃耐性コーティングという用語が使用される。
【0053】
さらに、外被は、有効成分の拡散をさらに遅くするために施すこともできる。このために、種々のグレードのエチルセルロースまたはメタクリルポリマーが使用可能であり、当業者に周知である。
【0054】
最後に、外被は、患者にとっての組成物の外観(テクスチャー、色)および/または嗜好性(口当たり)を改良するために使用することができる。特に、必要であれば有効成分の味をマスキングするために当業者に周知のセルロース誘導体またはアクリル誘導体などの賦形剤を有利に使用することができる。
【0055】
よって、前記のコーティングは、上記に挙げた種々の機能のために、単独でまたは混合物として使用される、当業者に公知の種々のタイプの1以上の賦形剤の混合物を含んでなり得る。
【0056】
コーティングに使用される賦形剤は、当業者に公知の様式で、所望の機能を得るために必要な量で適用される。
【0057】
これらの賦形剤は、慣例通り、例えば多孔ドラムまたは流動床にて、溶媒中、コーティング剤の溶液または懸濁液を噴霧することによって組成物の表面に施すことができる。
【0058】
本発明による組成物は、あらゆる剤形(formes galeniques)に適合させることができ、特に、それはマトリックス錠、多層錠またはマイクロ錠の形態であり得る。
【0059】
マトリックス錠
用語「マトリックス」は、内部構造が組成物の中心から周辺まで均質かつ同一である医薬組成物を表して用いる。
【0060】
本発明の組成物は、粉末または顆粒形態の有効成分と、キサンタンガムおよびカーボポールおよび/またはアラビアガムと組み合わせたポリビニルアセテートおよびポリビニルピロリドンの少なくとも1つの混合物との均質な混合物から構成される。
【0061】
より詳しくは、有効成分は、打錠する混合物に直接加えるか、担体にマウントするか(微小顆粒を得るため)、または湿式もしくは乾式プロセスを介して造粒することができる(顆粒を得るため)。
【0062】
有効成分が微小顆粒の形態で存在する場合、これらの微小顆粒は、プレファブリックセルロース系(prefabriquees a base de cellulose)マイクロビーズもしくは「シュガースフェア(sugar spheres)」の名称で販売されている糖とデンプンの混合物などの薬学上中性の担体、または例えばラクトースなどのその他の賦形剤の顆粒の表面に有効成分を付着させる(マウントする)ことにより慣例的に得ることができる。
【0063】
有効成分の付着(マウント)プロセスは、当業者に公知の常法で行われ、付着させる有効成分のタイプ、量および脆弱性によって異なり得る。例えば、付着は、中性担体の表面に有効成分の溶液もしくは懸濁液を噴霧すること、または結合剤溶液で予め湿らせた担体の表面に粉末状の有効成分を噴霧することによって行うことができる。
【0064】
有効成分の顆粒はまた、一般に少なくとも1種類の結合剤と場合により技術に応じた湿潤液の存在下での、対象とする有効成分の乾式または湿式造粒により得ることもでき、これらもまた当業者に周知である。この造粒工程は、生産された錠剤の含量の均一性を改善する。
【0065】
得られた顆粒を
- ポリビニルアセテートとポリビニルピロリドンの混合物;
- キサンタンガム;ならびに
- カーボポールおよび/またはアラビアガム
と混合し、次にこの混合物を打錠する。
【0066】
よって、混合物の打錠工程が1回であることは、実際の打錠工程の前または打錠工程中に打錠工具および/または混合物を加熱することを必要とせずにその生産を可能とするので、本発明による錠剤のマトリックス構造は極めて簡単であり、簡単な工業生産を提供する。
【0067】
本マトリックスは、マトリックスの賦形剤に加えて、付着防止剤、例えば、コロイドシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)またはステアリン酸カルシウムなどの、打錠プロセスの実施を助長すること、またはこの機能のために慣用される結合剤、特に、デンプン、セルロース誘導体、または増量剤、または滑沢剤、または可塑剤、または充填剤または甘味剤または着色剤などの、打錠中に錠剤の凝集性を改善することを意図した1以上の賦形剤を含み得る。
【0068】
本発明の錠剤の例外的な硬度は、打錠前または打錠中に、打錠する混合物(打錠マトリックスおよび有効成分)および/または打錠工具(プレス)を加熱工程に曝すことを必要とせずに得ることができる。
【0069】
本発明の別の実施態様によれば、その粒径が許容する場合には、有効成分をそのまま、打錠マトリックスを形成する賦形剤と混合し、次に、この混合物を直接打錠する。
【0070】
最後に、本発明のもう1つの可能性のある実施態様は、有効成分を打錠マトリックスの賦形剤を混合すること、その後、この混合物を湿式または乾式プロセスを介して造粒し、直接打錠可能な顆粒を得ることである。
【0071】
本発明による錠剤は、硬度の高い錠剤を得ることを可能とするいずれの形状またはサイズであってもよい。
【0072】
よって、本発明は、低用量の有効成分を含有する錠剤と高用量の有効成分を含有する錠剤の両方の製造に適合させる。
【0073】
本発明はさらに、本発明のマトリックス錠を製造する方法に関する。この方法は、下記の工程:
- 有効成分をマトリックスの賦形剤と混合すること;
- 所望により造粒すること;および
- 前記混合物を、錠剤が少なくとも4MPa、有利には少なくとも6MPaの耐破砕性を有するように選択した条件下で打錠すること;
- 場合により前記錠剤をコーティングすること
を含んでなる。
【0074】
打錠は、ロータリー打錠機で行う。打錠パラメーターは、本発明に適合した硬度を有する錠剤が生産可能となるように選択されなければならない。しかしながら、本発明による錠剤に見られる例外的な硬度を達成する目的で、打錠前および/または打錠中に、打錠する混合物または打錠工具を加熱工程に曝すことは必要でない。適用される圧縮力は5kN〜60kNの間、有利には10kN〜30kNの間である。圧縮力は金型の材質に適合するように選択し、降伏強度が4MPaより高い、好ましくは6MPaより高い錠剤を得ることを可能としつつ、工業的生産速度で使用することができる。
【0075】
錠剤のコーティングポリマーが徐放性ポリマーである場合、本発明によるコーティング錠剤は有利には、その物理的および化学的安定性を保証するために前記コーティングポリマーの硬化段階を受ける。この工程は、制御された時間(コーティングポリマーに依存し、相対湿度50〜99%で1分〜数か月の間であり得る)、有効成分の融点よりも低く制御された温度条件下で行う。この工程はオーブンまたは多孔ドラム内で行うことができる。
【0076】
多層錠剤
剤形中に含まれる有効成分と処方物の一部の賦形剤の間、または処方物の2つの有効成分の間の化学的適合性の問題を克服するために、剤形は有利には多層形態とすることができる。よって、化学的に適合しない成分は分離することができ、例えば、キサンタンガムは有効成分を伴う層に含み、カルボマーは別の層に含むことができる。
【0077】
耐破砕性特性は維持され、この剤形は、粉末にされれば、マトリックス形態と同様に、水性/または水性アルコール媒体中で抽出を限定することを可能とする。
【0078】
マイクロ錠
「マイクロ錠」とは、直径4mm未満の錠剤を意味する。
【0079】
本発明のさらなる対象は、同じ外観の2集団のマイクロ錠を含有するマイクロ錠を含んでなる経口剤形である。第1の集団(1)は、少なくとも1種類のゲル化剤と耽溺に向くおそれのある少なくとも1種類の有効成分を含んでなり、第2の集団(2)は、カルボマー型の少なくとも1種類のゲル化剤を含んでなる。この経口剤形は、破砕とその後の注射または吸入による誤用が不可能であるマイクロ錠を含んでなる。これらのマイクロ錠は、カプセル内に入れることができる。
【0080】
マイクロ錠の別の変形形態は、同じ成分から形成される2集団を組み合わせるが、有効成分および賦形剤の量を変更し、これら2集団のマイクロ錠を混合することである。
【0081】
マイクロ錠の製造方法は、マトリックス錠に関する段落に記載した方法と同じである。
【実施例】
【0082】
実施例1:単一のゲル化剤としてキサンタンガムを含有し、カルボマーまたはアラビアガムを含まない40mgオキシコドンHClのマトリックス錠を製造するための、本発明の本質的要素を欠く比較例
【表1】
【0083】
実施例1では、成分1〜4を500μmの篩に通した後、ターブラーミキサー(Turbula)で10分間混合した。ステアリン酸マグネシウムを加え、滑沢化のために混合をさらに1分間混合を続けた。次に、この混合物を、直径7mmの丸型を備えたSviacロータリー打錠機で、16kNの力をかけて直接打錠した。得られた硬度は、7MPaより高い降伏強度に相当する。
【0084】
実施例1に従って得られた錠剤から種々の媒体中に抽出されたパーセンテージ:
【表2】
【0085】
錠剤を砕き、10mL容量の96%エタノールに溶かす場合、濾過後に回収されるオキシコドンHClの量は、最初の用量の58%である。従って、単一のゲル化剤としてキサンタンガムを含有する40mgオキシコドンHClのマトリックス錠は、96%エタノール中での有効成分の抽出を防止しない。
【0086】
実施例2:単一のゲル化剤としてカルボマーを含有し、キサンタンガムを含まない40mgオキシコドンHClのマトリックス錠を製造するための、本発明の本質的要素を欠く比較例
【表3】
【0087】
実施例2では、実施例1と同様に混合物を作製した。14kNの力の下で得られた錠剤の硬度は400Nより高く、対応する降伏強度は9MPaより大きかった。
【0088】
実施例2に従って得られた錠剤から種々の媒体中に抽出されたパーセンテージ:
【表4】
【0089】
実施例2に従って作製した錠剤を砕き、10mL容量の96%エタノールに溶かす場合、濾過後に回収されるオキシコドンHClの量は、最初の用量の21%である。他方、水性媒体中でのパーセンテージは、用量の50%より大きい。
【0090】
従って、単一のゲル化剤としてカルボマーを含有する40mgオキシコドンHClのマトリックス錠は、0.1N HCl中での有効成分の抽出を防止しない。
【0091】
実施例3:40mgオキシコドンHClを含有する錠剤であるオキシコンチン(商標)に基づく、本発明の本質的要素を欠く比較例
オキシコンチン(商標)錠から種々の媒体中に抽出されたパーセンテージ
【表5】
【0092】
錠剤を切断し、砕き、10mL容量の96%エタノールに溶かす場合、濾過後に回収されるオキシコドンHClの量は、最初の用量の39%である。濾過後に精製水中に回収される量は、最初の用量の25%である。
【0093】
従って、これらの結果は、有効成分の抽出が可能であることを示す。これらの結果は、本発明により改善される。
【0094】
実施例4:ゲル化剤としてキサンタンガムとカルボマーを含有する本発明による40mgオキシコドンHClのマトリックス錠
【表6】
【0095】
実施例4では、成分1〜5を500μmの篩に通し、ターブラーで10分間混合した。ステアリン酸マグネシウムを1分の滑沢化時間の間に加えた。次に、この混合物を直径7mmの丸型を備えたSviacロータリー打錠機で16kNの力をかけて直接打錠した。得られた硬度は400Nより大きく、相当する降伏強度は10MPaより高かった。
【0096】
実施例で得られた錠剤から種々の媒体中に抽出されたパーセンテージ:
【表7】
【0097】
実施例4に従って作製した錠剤を砕き、10mL容量の96%エタノールに溶かす場合、濾過後に回収されるオキシコドンHClの量は、最初の用量の23%である。水性媒体中に回収される量は10%未満である。
【0098】
実施例5:キサンタンガム、カルボマーおよび重炭酸ナトリウムを含有する、本発明による40mgオキシコドンHClのマトリックス錠
【表8】
【0099】
実施例5では、成分1〜6を500μmの篩に通し、ターブラーミキサーで10分間混合した。ステアリン酸マグネシウムを加え、滑沢化のためにさらに1分間混合を続けた。次に、この混合物を直径7mmの丸型を備えたSviacロータリー打錠機で13kNの力をかけて直接打錠した。得られた硬度は400Nより大きく、相当する降伏強度は9MPaより高かった。
【0100】
実施例に従って得られた錠剤から種々の媒体中に抽出されたパーセンテージ:
【表9】
【0101】
錠剤を砕き、10mL容量の96%エタノールに溶かす場合、濾過後に回収されるオキシコドンの量は、最初の用量の30%である。濾過後に供試水性媒体中に回収される量は0%である。
【0102】
また、この溶液を濾過せず、20ゲージ針を有するシリンジにそのまま入れる場合、この溶液の粘度は、針を通過しないようなものである。
【0103】
さらに、pH1.2およびpH6.8のバッファー媒体中で得られる溶解プロフィールは、この組成物のpH依存性を示さない。
【0104】
実施例6:キサンタンガム、カルボマーおよびクエン酸を含有する、本発明による40mgオキシコドンHClのマトリックス錠
【表10】
【0105】
実施例6は実施例5と同様にして作製した。得られた硬度は400Nより大きく、相当する降伏強度は8MPaより高かった。
【0106】
実施例に従って得られた錠剤から種々の媒体中に抽出されたパーセンテージ:
【表11】
【0107】
錠剤を砕き、10mL容量の96%エタノールに溶かす場合、濾過後に回収されるオキシコドンの量は、最初の用量の20%である。濾過後に供試水性媒体中に回収される量は0%である。
【0108】
さらに、この溶液を濾過せず、20ゲージ針を有するシリンジにそのまま入れる場合、この溶液の粘度は、針を通過しないようなものである。
【0109】
また、pH1.2およびpH6.8のバッファー媒体中で得られる溶解プロフィールは、この組成物のpH依存性を示さない。
【0110】
実施例7:キサンタンガム、カルボマーおよびクエン酸を含有する、本発明による32mgヒドロモルホンのマトリックス錠
【表12】
【0111】
実施例7は実施例6と同様に作製した。得られた硬度は7MPaより大きい降伏強度に相当する。
【0112】
実施例に従って得られた錠剤から種々の媒体中に抽出されたパーセンテージ:
【表13】
【0113】
錠剤を砕き、10mL容量の96%エタノールに溶かす場合、濾過後に回収されるヒドロモルホンの量は、最初の用量の20%である。濾過後に供試水性媒体中に回収される量は10%未満である。
【0114】
実施例8:キサンタンガム、カルボマーおよびクエン酸を含有する、本発明による40mgオキシコドンHClの多層錠
【表14】
【0115】
実施例8では、各層を、従前の実施例の混合物と同様にそれぞれ混合した。
【0116】
直径8.5mmの金型を備えたロータリー打錠機で得られた錠剤は、400Nより大きい最終硬度を有し、相当する降伏強度は6MPaより高かった。
【0117】
実施例に従って得られた錠剤から種々の媒体中に抽出されたパーセンテージ:
【表15】
【0118】
多層錠を砕き、10mL容量の96%エタノールに溶かす場合、濾過後に回収されるオキシコドンHClの量は、最初の用量の26%である。濾過後に供試水性媒体中に回収される量は0%である。
【0119】
結論として言えば、キサンタンガムの存在、およびカーボポールまたはアラビアガムの存在は、水性または水性アルコール媒体への有効成分の放出を制限するのに不可欠である。
【0120】
実施例9:硫酸モルヒネのマイクロ錠:単位用量10mgの硫酸モルヒネを含有するものと、キサンタンガム、カルボマーおよびpH安定剤を含んでなるものの、2つの異なるマイクロ錠集団の集まり
【表16】
【表17】
【0121】
実施例9では、集団1のマイクロ錠は下記のように作製した:成分1〜4を500μmの篩に通し、ターブラーミキサーで10分間混合した。ステアリン酸マグネシウムを加え、滑沢化のためにさらに1分間混合を続けた。次に、この混合物を直径3mmの丸型を備えたSviacロータリー打錠機で2kNの力をかけて直接打錠した。得られた硬度は100Nより大きく、相当する降伏強度は7MPaより高かった。
【0122】
集団2も同様に作製した:成分1〜4を篩にかけた後、ターブラーミキサーで5分間混合した。ステアリン酸マグネシウムを加え、滑沢化のために1分間混合を続けた。
【0123】
これらの2集団を下記のように(集団1のマイクロ錠6個と集団2のマイクロ錠2個)関係づけて、下記の単位組成物を得た(カプセル剤1個の含量)。
【表18】
【0124】
pH安定剤がクエン酸である場合に実施例9に従って得られたマイクロ錠から種々の媒体中に抽出されたパーセンテージ:
【表19】
【0125】
pH安定剤が重炭酸ナトリウムである場合に実施例9に従って得られたマイクロ錠から種々の媒体中に抽出されたパーセンテージ:
【表20】
【0126】
実施例9のマイクロ錠を砕き、10mL容量の96%エタノールに溶かす場合、濾過後に回収される硫酸モルヒネの量は、水であれ96%エタノールであれ(両方ともこれらのpH安定剤を含む)、最初の用量の10%未満である。濾過後に0.1N HCl中に回収される量は、両pH安定剤とも、10%程度である。
【0127】
実施例10:硫酸モルヒネのマイクロ錠:成分比率を変えた2集団の集まり
実施例10では、実施例9の集団1および2と同一組成の2集団を下記のように(集団1のマイクロ錠10と集団2のマイクロ錠1個)関係づけて、下記の単位組成物を得た(カプセル剤1個の含量)。
【表21】
【0128】
pH安定剤がクエン酸である場合に実施例10に従って得られたマイクロ錠の組合せから種々の媒体中に抽出されたパーセンテージ:
【表22】
【0129】
pH安定剤が重炭酸ナトリウムである場合に実施例10に従って得られたマイクロ錠の組合せから種々の媒体中に抽出されたパーセンテージ:
【表23】
【0130】
実施例9のマイクロ錠を砕き、10mL容量の96%エタノールに溶かす場合、濾過後に回収される硫酸モルヒネの量は、3種類の媒体で、最初の用量の10%以下である。