(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6258216
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】2つのチャネルと単一方向に動作する単一のモータとを有する分配器
(51)【国際特許分類】
F02D 9/02 20060101AFI20171227BHJP
F16K 11/16 20060101ALI20171227BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20171227BHJP
F02D 9/10 20060101ALI20171227BHJP
F02B 29/04 20060101ALI20171227BHJP
F02D 11/10 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
F02D9/02 361J
F16K11/16 Z
F16K31/04 A
F02D9/02 C
F02D9/02 351M
F02D9/10 H
F02B29/04 S
F02D11/10 B
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-548140(P2014-548140)
(86)(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公表番号】特表2015-503061(P2015-503061A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】FR2012052879
(87)【国際公開番号】WO2013093290
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年10月14日
(31)【優先権主張番号】1162180
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508021716
【氏名又は名称】ヴァレオ システム ドゥ コントロール モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】マチュー、ラルマン
(72)【発明者】
【氏名】フランク、ジラルドン
(72)【発明者】
【氏名】パトリック、ルブラスール
【審査官】
戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−534614(JP,A)
【文献】
特表2009−534585(JP,A)
【文献】
特表2009−534615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/02
F02B 29/04
F02D 9/10
F02D 11/10
F16K 11/16
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンの吸入流体を分配するためのダブル分配器であって、前記吸入流体を循環させるための第1のチャネル(3)および第2のチャネル(4)が内部に配置される本体(1)を備え、前記第1および第2のチャネルを通過する流れを分配するために第1のシャッタ(10)および第2のシャッタ(20)がそれぞれ前記第1および第2のチャネル内に位置され、前記ダブル分配器は、前記第1および第2のシャッタを作動させるためのモータ(9)と、前記モータの作動に応じて前記第1のシャッタおよび前記第2のシャッタを同時に作動させることが可能な動力学的部分とを更に備え、前記動力学的部分は、前記モータによって力が与えられないときに前記第1および第2のシャッタが位置される非作用位置を備える、ダブル分配器において、前記動力学的部分は、前記モータの回転方向を逆にすることなく、前記第1および第2のシャッタが前記モータの作用下で前記非作用位置から前記非作用位置に戻ることがないように位置することができるように、構成され、
前記モータの作動により、前記第1のシャッタ(10)および前記第2のシャッタ(20)が回転可能であり、
動作法則の第1の段階では、前記動力学的部分により、前記モータの動きが前記第1のシャッタと前記第2のシャッタとに対して同時に伝えられ、
前記動作法則の第2の段階では、前記動力学的部分により、前記モータの動きが前記第1のシャッタと前記第2のシャッタのうちの一方のシャッタのみに伝えられ、他方のシャッタは動かないままであることを特徴とするダブル分配器。
【請求項2】
前記動力学的部分は、前記モータ(9)の第1の制御に応じて、前記第1の段階中に、前記第1および第2のシャッタの同時回転により前記第1および第2のチャネルで比例分配を確保し、前記第1および第2のチャネルのうちの一方における流量の増大が他方における流量の減少と関連付けられるように構成される、請求項1に記載のダブル分配器。
【請求項3】
前記動力学的部分は、前記第1の制御によりもたらされる前記第1のシャッタの閉塞および前記第2のシャッタの開放に対して連続する前記モータ(9)の第2の制御に応じて、前記第2の段階中に、前記第2のシャッタ(20)の回転により前記第2のチャネル(4)を通過する流れの分配を確保し、前記第1のシャッタ(10)が閉じられたままとなるように構成される、請求項2に記載のダブル分配器。
【請求項4】
前記動力学的部分は、第1および第2のスプリング(15、16)の作用に抗して前記第1および第2のシャッタを位置決めするように構成され、前記第1のスプリング(15)は、前記モータの力を前記第1および第2のシャッタのうちの第1のシャッタ(10)に伝えるために前記第1の段階中に初期応力がかけられたままであるとともに、前記第2の段階中に前記モータの作用下で応力に晒され、前記第2のスプリング(16)は、少なくとも前記第1の段階中に前記モータの作用下で応力に晒される請求項3に記載のダブル分配器。
【請求項5】
前記モータ(9)は、前記第1のスプリング(15)を介して、前記第1のシャッタ(10)を回転させるように構成される駆動フィンガ(143)を有する第1の歯車(14)を駆動させる、請求項4に記載のダブル分配器。
【請求項6】
前記第1のスプリング(15)の一方の端部は、対応する前記第1のシャッタのシャフトに強固に接続される第1のプレート(12)に固定され、他方の端部が前記第1の歯車(14)に固定される請求項5に記載のダブル分配器。
【請求項7】
前記モータ(9)は、駆動ピニオン(32)により、前記第1の歯車(14)および前記第1の歯車(14)に噛み合う第2の歯車(24)を駆動させ、前記第1のプレート(12)は、前記駆動フィンガ(143)とのその協働においてデッド範囲(125)を備え、前記デッド範囲は、前記モータ(9)による前記第2のシャッタ(20)のみの作動に対応し、前記第1のシャッタ(10)が動かないままである、請求項6に記載のダブル分配器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のダブル分配器を備える、内燃エンジン用の空気吸入モジュール。
【請求項9】
前記ダブル分配器の前記第1のチャネルに接続された冷却器をさらに備え、前記第2のチャネルが前記冷却器を迂回する、請求項8に記載の空気吸入モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、自動車の分野であり、特に、車両のエンジンに給気するための機器の分野である。
【背景技術】
【0002】
自動車内燃エンジンは、一般に複数のシリンダにより形成される燃焼室を備え、燃焼室内では、エンジンの仕事を生み出すために燃料と空気との混合物が燃焼される。エンジンの動作のために必要な空気を備える吸入流体の流れが2つのライン間で分けられる構成は知られている。ラインのうちの一方は、この流体を冷却するための装置を有し、一方、他方のラインはそのような装置を有さない。これらの2つのラインは、その後、エンジンの吸気口で互いに出会う。したがって、分配装置は、より多くの流体が冷却チャネルと称される冷却器を通過するチャネルを介して送られるのかあるいはバイパスチャネルまたは非冷却チャネルと称される冷却器を迂回するチャネルを介して送られるのかどうかにしたがって、吸入流体がシリンダ内へ導入される前に吸入流体の温度を変えることができる。このように、分配装置は、シリンダ内へ導かれる流体の量およびこの流体の温度の両方を管理できるようにする。
【0003】
従来技術において、この分配装置は、当初は、エンジン電子制御ユニットからセットポイントを受けるとともに、位置がサーボ制御されるアクチュエータを用いてそれらのシャッタを多かれ少なかれ開放する、2つの単一分配器の形態で生み出された。また、これらの分配器は、特定の制御時に、エンジンのチョークを絞る完全閉塞位置にそれらのシャッタを位置させることにより、エンジンを停止させるという機能も有する。前記シャッタは、それらの非作用位置において、すなわち、サーボ制御器の故障の場合にまたはセットポイントの受信がない場合にシャッタによりとられる位置において、戻しスプリングの作用下で、開放位置に自動的に配置される。これらの装置は、2つの構成要素を使用する、関連する接続を伴う2つのサーボ制御システムを必要とする、および、2つの分配器の同時動作を保証するために分配制御システムを複雑にするという不都合を有する。
【0004】
最初の改良には、1つの同じ構成要素内に2つのシャッタを組み合わせるダブル分配器の形成と、それらを位置決めするための制御とが備えられた。そのような装置は、その機構が共通の作動モータにより作動されるダブル分配器を示す本出願人の特許出願国際公開第2007/125205号パンフレットまたは仏国特許出願公開第2900455号明細書に記載される。この出願では、通常の動作において、シャッタのうちの一方が吸入流体を分配し、第2のシャッタは閉じられたままであり、また、二次モードでは、第1のシャッタが閉じられ、一方、第2のシャッタは完全に開放したままである。
【0005】
しかしながら、このダブル分配器と関連する動力学的部分は、それらが所望の分配形態にしたがって作動モータの一方向および他方向の回転を必要とするという不都合を有する。これは、技術的な複雑さの増大をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/125205号パンフレット
【特許文献2】仏国特許出願公開第2900455号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、作動モータを単一の方向でのみ作動させることにより、2つのチャネルでの比例分配および/または1つのチャネルのみでの分配など、所望の動作法則に従うことができるようにする動力学的部分を有するダブル分配器を提案することによって、これらの不都合を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の主題は、内燃エンジンの吸入流体を分配するとともに、吸入流体の温度を制御するためのダブル分配器であって、前記吸入流体を循環させるための第1および第2のチャネルが内部に配置される本体を備え、前記チャネルを通過する流れを分配するために第1および第2のシャッタが前記チャネル内に位置され、前記分配器が、前記シャッタを作動させるためのモータと、前記モータの作動に応じて動作法則にしたがって第1のシャッタおよび第2のシャッタを同時に作動させる動力学的部分とを更に備え、前記動力学的部分が、前記作動モータによって力が与えられないときに前記シャッタが位置される非作用位置を備えるダブル分配器である。本発明によれば、前記動力学的部分は、前記シャッタがモータの作用下で前記非作用位置から前記位置に戻ることなく前記動作法則の全体に従うことができるように構成される。
【0009】
したがって、好適には電気モータである作動モータを単一の方向で作動させることができ、それにより、作動モータを極めて簡単な態様で制御できる。具体的には、例えば出願仏国特許出願公開第2900455号明細書に記載されるものとは異なり、モータに適用される極性の方向を逆にすることなく、シャッタの動作法則の全体を表わすことができる。
【0010】
前記シャッタは例えば回転できる。このとき、前記動力学的部分を介してシャッタを駆動させるためにモータにより与えられる力をトルクにできる。第1のシャッタの回転軸を第2のシャッタの回転軸と平行にすることができる。
【0011】
動力学的部分は、以下のことを可能にし得る。
【0012】
− 動作法則の1つの段階では、モータの動きが第1のシャッタと第2のシャッタとに対して同時に伝えられ、および、
− 動作法則の他の段階では、モータの動きが一方のシャッタのみに伝えられ、他方のシャッタは動かないままである。
【0013】
モータの動きが第1および第2のシャッタに対して同時に伝えられるときには、出願FR 2 926 126により教示されるものとは異なり、例えば第1のシャッタの動きと第2のシャッタの動きとの間で位相シフトが存在しない。
【0014】
好適には、動力学的部分は、作動モータの第1の制御に応じて、前記動作法則の第1の段階中に、2つのシャッタの同時回転により2つの出口チャネルで比例分配を確保し、出口チャネルのうちの一方における流量の増大が他方の出口チャネルにおける流量の減少と関連付けられるように構成される。
【0015】
1つの特定の実施形態において、動力学的部分は、前記比例分配中に一定の全体流量を確保するように構成される。
【0016】
好ましくは、動力学的部分は、前記第1の制御によりもたらされる前記第1のシャッタの閉塞および前記第2のシャッタの開放に対して連続する作動モータの第2の制御に応じて、前記動作法則の第2の段階中に、第2のシャッタの回転により第2の出口チャネルを通過する流れの分配を確保し、第1のシャッタが閉じられたままとなるように構成される。
【0017】
より好ましくは、動力学的部分は、第2の制御に応じて、第2のシャッタを、前記シャッタが非作用位置にあるときのその閉塞位置と比べて180°回転されることに対応する完全閉塞位置へと至らせるように構成される。
【0018】
前述したように、作動モータの第1の制御は、第1の角度値を超える第1の回転方向での作動モータの回転に対応することができ、また、作動モータの第2の制御は、第2の角度値を超える第1の回転方向での作動モータの回転に対応することができる。したがって、第2の制御にしたがった作動モータの回転は、第1の制御にしたがった作動モータの回転と同じ方向で行なわれ得る。
【0019】
好適には、動力学的部分は、2つの戻しスプリングの作用に抗してシャッタを位置決めするように構成され、第1のスプリングは、モータの力を前記シャッタのうちの第1のシャッタに伝えるために動作法則の第1の段階中に初期応力がかけられたままであるとともに、前記動作法則の第2の段階中に前記モータの作用下で応力に晒され、第2のスプリングは、前記動作法則の少なくとも第1の段階中に、特に2つの段階中に、前記モータの作用下で応力に晒される。
【0020】
より好適には、作動モータは、前記第1の戻しスプリングを介して、第1のシャッタを回転させるように構成される駆動フィンガを有する第1の歯車を駆動させる。
【0021】
より更に好適には、前記第1の戻しスプリングの一方の端部は、対応するシャッタのシャフトに強固に接続される第1のプレートに固定され、他方の端部が前記第1の歯車に固定される。
【0022】
好ましくは、作動モータは、駆動ピニオンにより、互いに噛み合う2つの歯車を駆動させ、前記第1のプレートは、駆動フィンガとのその協働においてデッド範囲を備え、前記デッド範囲は、作動モータによる第2のシャッタのみの作動に対応し、第1のシャッタが動かないままである。
【0023】
また、本発明は、前述したダブル分配器を備える内燃エンジン用の空気吸入にも関連する。
【0024】
分配器の第1の循環チャネルは、例えば、吸入モジュールの冷却器に接続され、一方、第2の循環チャネルは、特に吸気パイプと直接に出会うことによりこの冷却器を迂回する。非作用位置において、第1のシャッタは、開くことができ、すなわち、冷却器へ向かう吸入流体の循環を可能にし、一方、第2のシャッタは、閉じられて、吸入流体による冷却器の迂回を防止できる。
【0025】
添付の概略図面に関連して単なる例示的で非限定的な例として与えられる本発明の一実施形態の以下の詳細な説明的記載から、本発明をより良く理解できるとともに、本発明の他の目的、詳細、特徴、および、利点がより明確に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ターボチャージャー付きエンジンに給気するための高圧構成の概略図である。
【
図2】ターボチャージャー付きエンジンに給気するための低圧構成の概略図である。
【
図3】ターボチャージャー付きエンジンの吸気回路のための本発明に係るダブル分配器の正面図である。
【
図4】本発明に係る分配器およびその制御装置の分解斜視図である。
【
図5】ダブル分配器の単一モータによる駆動歯車のその作動中の角度位置に応じてチャネルのそれぞれにそれらの開放度を与えるシャッタに関する動作法則の表示である。
【
図6】ダブル分配器の作動モータによってシャッタに与えられる位置にしたがった、ダブル分配器のそれを通る流体の通過のための有効断面積の変化、および、この流体の温度の変化の表示である。
【
図7】作動モータの移動の初期位置にも対応する非作用位置でシャッタおよびそれらの制御動力学的部分をそれぞれ示す
図4のダブル分配器の平面図である。
【
図8】作動モータの移動の初期位置にも対応する非作用位置でシャッタおよびそれらの制御動力学的部分をそれぞれ示す
図4のダブル分配器の平面図である。
【
図9】作動モータの移動の中央位置でシャッタおよびそれらの制御動力学的部分をそれぞれ示す
図4のダブル分配器の平面図である。
【
図10】作動モータの移動の中央位置でシャッタおよびそれらの制御動力学的部分をそれぞれ示す
図4のダブル分配器の平面図である。
【
図11】作動モータの移動の最終位置でシャッタおよびそれらの制御動力学的部分をそれぞれ示す
図4のダブル分配器の平面図である。
【
図12】作動モータの移動の最終位置でシャッタおよびそれらの制御動力学的部分をそれぞれ示す
図4のダブル分配器の平面図である。
【
図13】作動モータの移動の初期位置における、ダブル分配器の動力学的部分の要素の相対位置の線形表示に係る概略図である。
【
図14】作動モータの移動の中央位置における、ダブル分配器の動力学的部分の要素の相対位置の線形表示に係る概略図である。
【
図16】作動モータの移動の最終位置における、ダブル分配器の動力学的部分の要素の相対位置の線形表示に係る概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照すると、自動車用のターボチャージャー付き内燃エンジンのシリンダ100へ空気を供給するための回路を見ることができる。外部から引き込まれる空気は、エアフィルタ101を通過した後、それを本発明の主題であるダブル分配器へと送るターボチャージャーのコンプレッサ102によって圧縮される。このダブル分配器の本体1は、コンプレッサからくる空気が通過する通る入口チャネル2と、2つの出口チャネル3、4とを有する。ダブル分配器の本体は、これらの2つのチャネル間で空気を分配するための命令を電子制御ユニット(ECU)と称されるコントローラ103から受ける。これらの命令は、ダブル分配器の本体に組み込まれる電気作動モータおよび適切な動力学的部分の作用下でチャネル3、4を多かれ少なかれ閉じるシャッタの動作の形態で実行される。これらのチャネルのうちの冷却チャネル3と称される一方のチャネルには、熱交換器または冷却器5が取り付けられ、一方、バイパスチャネルまたは非冷却チャネル4と称される他方のチャネルは、車両のエンジンの吸気パイプに対して直接に接続される。したがって、吸気パイプの上流側で出会う2つのチャネル間の空気の分配を変えることにより、エンジンの吸気時の温度を調整することができる。
【0028】
既燃ガスは、エンジンのシリンダから出ると、排気回路へと方向付けられて、ターボチャージャーのタービン104を通過し、タービン104は、対応するコンプレッサ102を作動させるためにガスの残留エネルギーの一部を取り出す。その後、これらの排ガスは、従来のように、車両から排出される前に、粒子フィルタおよび/または触媒コンバータ105を通過する。
【0029】
高圧構成の場合、
図1に表わされるように、排ガスの一部は、タービン104の上流側に位置される高圧弁106を介して再利用されて、2つの出口チャネル3、4の合流部の下流側の吸入回路に入る。
【0030】
低圧構成の場合には、
図2に表わされるように、排ガスの再利用部分がタービン104の下流側で取り出されて低圧弁107を介してターボチャージャーのコンプレッサ102の上流側に再注入されることを除き、高圧構成の場合と同じ要素を見出すことができる。このとき、吸入回路内で循環する流体は、空気のみではなく、空気と排ガスとの混合物である。しかしながら、ダブル分配器の動作は、両方の構成において同じままである。
【0031】
ここで、
図3を参照すると、入口チャネル2と2つの出口チャネル3、4とを有するダブル分配器の本体1を見ることができる。第1の出口チャネル3は冷却器5に接続されるようになっており、一方、第2のチャネル4は、吸気パイプと直接に出会うべくこの冷却器を迂回するようになっている。2つのチャネル3、4のそれぞれにおける分配は、ここではシャフトの周りで移動できるシャッタを用いて行なわれ、シャフトは、第1のシャッタの場合にはシャフト支持体7に取り付けられ、また、第2のシャッタの場合にはシャフト支持体8に取り付けられる。各チャネルにおける分配は、シャッタのための動作法則にしたがって対応するチャネルを通過する空気またはガスの流れを多かれ少なかれ妨げるシャッタの回転によって行なわれる。また、本体1は、2つのシャッタを作動させる電気モータのための支持体6も備え、電気モータには適切な動力学的部分によってシャッタが接続される。電気作動モータ9は、シャッタのための前記動作法則にしたがってシャッタを所望の位置に配置するために、ECU103からセットポイントを受ける。
【0032】
図4は、ダブル分配器を分解図を示しており、この場合、ダブル分配器を構成する要素は、本体1内にそのカバー1bによって封入される。
【0033】
電気モータ9は、その回動シャフト19によって中間歯車32を作動させ、中間歯車32は、第2のチャネル4に属する第2の歯車24と協働し、第2の歯車24は、それ自体、第1のチャネル3に属する第1の歯車14と協働する。これらの第1および第2の歯車は、それらの軸の周りで自由に回転できるとともに、ダブル分配器の動力学的部分においては、2つのチャネルの第1および第2のシャッタを直接的にまたは間接的に作動させる部材を形成する。
【0034】
ここでは冷却チャネルとして与えられる第1のチャネル3を制御するための装置は、シャフト11に取り付けられる第1のシャッタ10を備え、シャフト11の下端は、分配器の本体のシャフト支持体7内で回転するようになっている。こうして、シャッタは本体1に対して回転することができる。上端は、それに関する限り、第1の同軸上側プレート12を支持し、上側プレート12には、この上側プレートの回転がシャッタ10の同じ大きさの回転を引き起こすように上端が強固に固定される。また、シャフト11はベアリングを介して第1の歯車14を支持し、第1の歯車14は、このシャフトの周りで自由に回転できるとともに、以下で説明される原理にしたがって第1のシャッタ10を回転させるべくプレート12に作用する。
【0035】
歯車14は、第2の歯車24の対応する外周によって回転駆動できるように、その外面141の外周の大部分にわたって歯を有するディスクの形態を成す。歯車は、その中心に、軸方向に延びる円筒管142を備え、円筒管142は、第1のチャネルの流量を分配する第1のシャッタ10のシャフト11のためのベアリングを形成する。最後に、歯車はその外周に駆動フィンガ143を備え、駆動フィンガ143は、軸方向に延びるとともに、第1のプレート12の外周に配置される第1のストッパ123と協働する。第1のシャッタ10を駆動させるとともに、シャッタの戻りに寄与してシャッタをそれが完全に開放する非作用位置に位置決めするために、第1のスプリング15が第1の歯車14と第1のプレート12との間に位置される。前記スプリングの端部は、第1のプレート12が前記非作用位置の方向に回転して戻されるようにするために、2つの部品の外周に形成される切り欠き内に挿入される。また、ダブル分配器の本体1には、固定された第1のチャネルストッパ146も、この第1の固定ストッパとプレートの外周に位置される隆起部124との協働によって第1のプレート12の回転を制限するために設けられる。また、第1のプレート12は、駆動フィンガ143の回転による第1のスプリング15の圧縮を可能にするデッド範囲125も有し、第1のプレートは、第1のプレート12の隆起部124と第1のチャネルの固定ストッパ146との間の接触後に動かない。
【0036】
並行して、第1のシャッタ10が完全に開放する非作用位置へと第1の歯車14を強制的に戻すために、第1の歯車14とそれ自体もダブル分配器の本体1に位置される固定スプリングストッパ18との間には第2の戻しスプリング16が位置される。この完全開放休止位置は、故障の場合に、特に、作動モータ9のこの故障が車両のエンジンの過酷な使用のケース中に起こる場合に、冷却された吸入流体をシリンダ内へ送ることによって、車両のエンジンの安全性を確保できるようにする。
【0037】
同様に、ここでは非冷却チャネルとして与えられる第2のチャネル4を制御するための装置は第2のシャッタ20を備え、第2のシャッタ20はそのシャフト21の周りで回転することができ、シャフト21の下端は、分配器の本体1のシャフト支持体8内で回転するようになっている。上端は、それに関する限り、第2の歯車24を支持し、第2の歯車24には、この第2の歯車の回転がシャッタ20の同じ大きさの回転を引き起こすように上端が強固に固定される。第2の歯車24が中間歯車32の作用下で半回転を行なうような大きさの作動モータ9の回転は、シャッタの回転と、完全閉塞位置で吸入流体と対向するシャッタの面の変化とにより、第2のシャッタ20を開放した後に再閉塞させる。完全閉塞位置を越える第2の歯車の回転を制限するため、および、第2のチャネルを遮断することが求められるときに第2のシャッタがこれらの位置を越えた後に第2のチャネルで漏れを引き起こすのを防止するため、分配器の本体に位置される固定ストッパ147を加えることができる。第2のチャネルを制御するための装置は、第2の歯車および第2のシャッタ20の角度位置を測定するための装置23によって完結される。そのような装置は、従来、ホール効果センサタイプの磁気センサと組み合わされる磁石によって形成される。その測定の結果はコンピュータECU103へ送信され、コンピュータECU103は、それが作動モータ9に対して与えるセットポイントにおいてその測定結果を考慮に入れる。
【0038】
第1のチャネル、すなわち、シャッタが2つの戻しスプリングの作用に晒されるチャネルとして冷却チャネルを選択することによってダブル分配器のシャッタを制御するための装置を説明してきた。言うまでもなく、このダブル分配器の下流側における吸入流体の温度の望ましい管理にしたがって、第1のチャネルを非冷却チャネルとして選択することができ、その場合には、第2のチャネルが冷却チャネルである。
【0039】
図5および
図6を参照すると、シャッタのための動作法則、すなわち、ダブル分配器の作動モータの制御と2つのシャッタ10、20のための駆動動力学的部分の作動との作用下での2つのシャッタの位置の相対的な変化を見ることができる。横座標軸は、シャッタの非作用位置に対応する作動モータの中立位置からその完全偏位に至るまでの作動モータ9の移動に対応する。これらの図において、非作用位置、すなわち、作動モータ9によるシャッタの駆動の損失の場合にシャッタ10、20によりとられる位置が、縦座標軸に対応する。非作用位置に対して、作動モータは、一方向での回転によりシャッタにとって望ましい全ての位置にわたって通過することにより、大きさ2αの回転で歯車を駆動させることができる。シャッタは、作動モータの反対方向の回転後に、戻しスプリング15、16の作用下で、非作用位置に戻る。この非作用位置では、第1のチャネル3のシャッタ10が開放され、一方、第2のチャネル4のシャッタが閉じられる。
【0040】
図中の分岐Aにより表わされる歯車の角度αの回転は、動作法則の第1の段階中に、第1のチャネルのシャッタ10を閉塞すると同時に第2のチャネルのシャッタ20を開放する。分岐Bにより表わされる第2の角度αの回転の継続は、動作法則の第2の段階中に、第2のチャネルのシャッタ20を閉塞し、第1のチャネルのシャッタ10は閉じられたままである。
【0041】
図6は、一方では、2つのチャネル内の吸入流体の通過のための分配器の有効表面積に対するこれらの動作の影響、したがって、分配された流量に対するこれらの動作の影響を表わし、他方では、流体が2つのチャネルの合流点の下流側でシリンダに入る際の流体の温度に対してこれらの動作が与える影響を表わしている。したがって、分岐Aは、流体の量の分配を伴わない流体の温度の調整に対応する。具体的には、2つのシャッタを開閉するための動力学的部分は、必須ではないが、ここでは、互いを補償しあうように表わされており、それにより、分岐Aの位置の全てに関して一定の流量を出口で得ることができる。分岐Bに関して、それは、第2のチャネルのみでの流量の分配、したがって、ここでは、非冷却温度での流体の流量の分配に対応する。図示の動作法則にしたがって、分配が行なわれるチャネル、すなわち、第2のチャネルも非作用位置で閉じられるのが分かる。
【0042】
ここで、
図7〜
図12を参照すると、本発明に係るダブル分配器の動力学的部分の動作が描かれる。
図7、9、11は、
図5の分岐A、Bの端部位置における2つの出口チャネルのシャッタの位置を表わす。
図7は非作用位置に対応し、
図9および
図11はそれぞれ作動モータの+αおよび+2αの回転に対応する。
図9および
図11では、シャッタの位置が2回、すなわち、対応する分岐A、Bのそれぞれの開始に対応する破線で1回、前記分岐の終端でのシャッタの位置に対応する実線で1回、表わされる。
図8、10、12は、2つのチャネルの歯車およびそれらの作動部材の同じ回転の完了時の位置を表わす。
【0043】
図8において、作動モータ9は、図では位置0と称されるそれらの非作用位置にある歯車14、24に対して作用しないことに対応するその中立位置にある。プレート12は、第1の戻しスプリング15によって反時計回りのトルクに晒され、第1の戻しスプリング15は、その初期応力により、プレート12の可動スロット123を第1の駆動フィンガ143に押し付けた状態に維持する。第2の戻しスプリング16(見えない)も、2つの歯車14、24の非作用位置に対応する初期応力がかけられた位置にある。
【0044】
図10において、作動モータ9は、
図8に対して角度α(図では83°に等しい)の回転を行なってある。第1の歯車も同じ大きさの回転を行なっており、それにより、プレート12の可動ストッパ123は、第1の戻しスプリング15に与えられる初期応力の作用下で、第1のフィンガ143の動きに追従している。その結果、第1のシャッタ10は、83°回転して、開放位置から閉塞位置へと移行している。第2のスプリング16の一方の端部が第1の歯車に固定され、第2のスプリングの他端が固定されていることから、第1の歯車の83°の回転によって第2のスプリング16が圧縮されている。この圧縮は、作動モータ9による制御が損失しまたは制御がない場合に第1のシャッタが非作用位置の方へと戻るようにする。並行して、第2の歯車が同じ角度αだけ回転しており、それにより、第2のシャッタが同じ回転で駆動され、したがって、第2のシャッタが完全閉塞位置から完全開放位置へと移行する。
【0045】
図12において、作動モータ9は、
図10に対して、第2の角度αの回転を行なっており、それにより、その中立位置から全体で2αの回転をもたらす。第1の歯車14は、それ自体も、2αの回転を行なっており、一方、プレート12は、値αの回転しか行っていない。具体的には、前記プレートは、第1のチャネルの固定ストッパ146とこれに押し付くプレートの第2の可動ストッパ124との協働によって、
図10の位置で停止されたままである。第1の歯車14の回転は、プレート12の外周に形成されるとともに駆動フィンガ143がプレートと干渉せずに通過できるようにする切り欠き125の結果として継続できている。第1のスプリング15は圧縮されており、それにより、作動モータ9がその中立位置へと戻されるときに、プレート12の戻りが許容され、したがって、第1のシャッタ10のその非作用位置への戻りが許容される。第2のスプリング16はその圧縮を継続しており、したがって、互いに噛み合う2つの歯車14、24の非作用位置への戻りが許容される。この分岐Bの過程にわたって、第2の歯車の回転に追従する第2のシャッタ20は、完全開放位置から完全閉塞位置へと移行しており、一方、第1のシャッタ10は、それに関する限り、閉じられたままである。したがって、第2のチャネルでの吸入流体の流量の分配は、一定のままの温度で得られる。
【0046】
ここで、
図13〜
図15を参照すると、
図5および
図6の線図を実施するために所定位置に置かれる動力学的部分を他の表示で見ることができる。これらの図は、前述したように、非作用位置および2つの分岐A、Bの終端にある要素の位置を描く。
【0047】
作動モータの0°からαまでの回転にしたがった
図13から
図14への経過は、いわゆる吸入流体の比例分配に対応する分岐Aでの様々な要素の位置の変化を示し、具体的には、分岐Aの全てのポイントは、2つのチャネルを通過する流体の可変比率での分配に対応する。
図13と
図14との間で、第1の歯車14のフィンガ143が角度αだけ回転し、それにより、第1のプレート12は、第1のスプリング15の作用下で同じ角度だけ回転することができ、その結果、第1のシャッタ10が漸進的に閉じることができる。第1のスプリング15は、圧縮されず、初期応力がかけられた位置にとどまる。同時に、第1の歯車14に結合される第2の歯車24は、同じ角度αだけ回転して、第2のシャッタ20を開放する。第2のスプリング16は、2つの歯車および2つのシャッタを非作用位置へ戻すことができるエネルギーを蓄えつつ漸進的に圧縮する。分岐Aの終わりに、第1のシャッタ10が完全に閉じられるとともに、第2のシャッタ20が完全に開放する。先に示したように、2つのシャッタの動力学的部分は、2つのチャネル3、4の全体に関しておよび分岐Aの全てのポイントに関して一定の流量を維持するべく先験的に設計される。
【0048】
図14から
図15への経過は分岐Bでの進行を示し、この場合、作動モータ9がαから2αへと移行する。すなわち、この分岐は、第2のチャネル4の第2のシャッタ20の漸進的な閉塞に対応し、第1のチャネルのシャッタは閉じられたままである。この分岐は、第2の歯車の回転による第2のチャネル4のみでの吸入流体の分配に対応し、第1のチャネル3は第1のシャッタ10により遮断されたままである。2つの図の間では、第1の歯車14もそれ自体回転するが、プレート12は、それが第1のチャネルの固定ストッパ146に押し付いて動かないままであるという事実に起因してもはや回転しない。第1のスプリング15は、第1の歯車の回転に起因してこの分岐で圧縮されるが、プレート12は回転しない。
【0049】
第2のスプリング16は、その端部のうちの一方が本体1に対する2つの歯車の回転と関連付けられかつ他端が固定スプリングストッパ18によって固定されるという事実に起因してその圧縮を続ける。これらの2つのスプリングにより蓄えられるエネルギーは、作動モータ9がその中立位置へ戻されるときまたはシャッタの制御の損失または不存在による故障の場合に2つのシャッタが非作用位置へと戻ることができるようにする。なお、第2のシャッタによる第2のチャネル4の閉塞は、この第2のシャッタの非作用位置に対する180°に近い角度2αの回転によって行なわれ、このことは、第2のシャッタそれ自体が非作用位置でのその完全閉塞状況から分岐Bの終端におけるその位置へと回転していることを意味する。
【0050】
全体的に、本発明に係るダブル分配器の動力学的部分は、単一の作動モータの単一の方向での漸進的回転により、2つのチャネル間の分配を漸進的に変更することによって2つのチャネルで吸入流体を同時に分配できるようにし(分岐A1)、あるいは、単一のチャネルで吸入流体を分配できるようにする(分岐B1)。冷却器5がある分配器の下流側でチャネルのうちの一方が開放する一方で、他方のチャネルが2つのチャネルの合流部で第1のチャネルと出会う前に冷却器を迂回すると、ダブル分配器は、分岐Aでシャッタを位置決めすることにより、吸入流体の温度を調整できるようにする。また、作動モータの回転の角度に応じてシャッタのための開閉曲線を較正することにより、この比例分配中に全体の流量を一定に維持することができるとともに、この分岐において流体の最終温度にのみ作用することができる。
【0051】
また、ダブル分配器は、分岐Bにおいて、シリンダへ送られる吸入流体を、冷却器5が設置されるチャネルにしたがって高温または低温と称される一定の温度で分配できるようにする。したがって、本発明に係る分配器により与えられる可能性は、単一の電気モータの作動によって得られ、この電気モータの作動は、所望の位置を達成するべく単一方向にのみ作用する回転トルクを発生させる。その初期位置へ向かう戻り段階は、その回転に対する摩擦抵抗に打ち勝つことができるようにするトルク以外のトルクを伴うことなく行なわれる。動力学的部分の様々な要素は、それらに関する限り、戻しスプリング15、16の作用下で所定位置に戻る。
【0052】
なお、以上では、冷却器の上流側に位置されて1つの入口と2つの出口とを有するように分配器が提示されてきた。変形では、無論、分配器が下流側に位置されてもよい。このとき、分配器は2つの入口と1つの出口を有し、出口がエンジンの吸気パイプと連通する。