特許第6258235号(P6258235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6258235
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】ピックアップ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/67 20060101AFI20171227BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   H01L21/68 E
   H01L21/68 P
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-23079(P2015-23079)
(22)【出願日】2015年2月9日
(65)【公開番号】特開2016-146425(P2016-146425A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2017年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】相川 智宏
【審査官】 鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/041273(WO,A1)
【文献】 特開2014−011416(JP,A)
【文献】 特開2008−270417(JP,A)
【文献】 特開2012−084685(JP,A)
【文献】 特開平07−335720(JP,A)
【文献】 特開2009−289785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/58
H01L 21/67 −21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが載置されるステージを有し、複数のチップが所定間隔で張り付けられたシートからチップを剥離してピックアップするピックアップ装置であって、
前記ステージは、底中央が深くなる凹形状のシート受け面を有する固定ステージ部と、固定ステージ部のシート受け面の底部に設けられた凹部にスライド可能に設けられる可動ステージ部と、前記凹部の周囲のいずれかの位置に、前記シート受け面から突出する支持部とを備え、
ピックアップすべき一のチップを前記可動ステージ部に対応させ、かつ前記一のチップの周縁部を少なくとも一部が可動ステージ部からはみ出させるとともに、前記一のチップと隣合う他のチップを前記支持部に対応させるように設置した後、はみ出し部の下方に形成される空隙に負圧を作用させながら、この空隙が大きくなるように可動ステージ部をスライドさせて、シートをチップと反対側へ吸引することを特徴とするピックアップ装置。
【請求項2】
前記支持部の上端の高さ位置は、前記シート受け面の最大高さ位置と略同一であることを特徴とする請求項1に記載のピックアップ装置。
【請求項3】
前記支持部は、可動ステージ部が前記凹部に嵌合した状態で、可動ステージ部の先端部に対面する位置、及び可動ステージの側部に対面する位置に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピックアップ装置。
【請求項4】
前記固定ステージ部のシート受け面に、シートを吸引する吸引口が設けられることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のピックアップ装置。
【請求項5】
チップの厚み寸法が、隣合うチップ同士の相対する端部間の幅寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のピックアップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチップが所定間隔で張り付けられたシートからチップを剥離してピックアップするピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、ダイシングされた半導体チップ(以下、単にチップという。)を粘着シート(以下、単にシートという)からピックアップする必要がある。ピックアップ装置としてニードルを備えたものがあり、ニードルを突き上げることにより、シートを裏面側から突いて、チップをシートから離脱させるものがある。しかしながら、ニードルを使用するピックアップ装置では、ニードルがチップを突き上げてシートから剥離する際にシートを突き破る場合があり、このような場合にはチップ裏面を傷付けるおそれがある。
【0003】
そこで、ニードルを使用しないピックアップ装置が提案されている(特許文献1)。このピックアップ装置は、図4及び図5に示すように、チップ101が貼り付けられているシート102(図5参照)を保持するステージ103を備える。また、ステージ103には、固定ステージ部104と、この固定ステージ部104の凹部105に嵌合する可動ステージ部106とを備える。さらに、固定ステージ部104には、シート102との境界面に負圧を導入する負圧通路を設けており、負圧通路の端部となる吸引口107が、固定ステージ部104の凹部105の上面に開口している。図4では、7つの吸引口107が設けられている。
【0004】
図5に示すように、固定ステージ部104のシート受け面108(つまり、固定ステージ部104の上面のうち凹部105を除いた面)は、凹部105にてシート102を落ち込ませるために、底中央が深くなるようなテーパ面となっており、いわゆるすり鉢状となっている。
【0005】
このようなピックアップ装置を使用したピックアップ方法は、まず、図4に示すように、可動ステージ部106を凹部105に嵌合させて、可動ステージ部106が夫々の吸引孔107の一部を塞いだ状態とする。そして、ピックアップすべきチップ101aを可動ステージ部106に載置して対応させ、かつこのチップ101aの周縁部の少なくとも一部が、可動ステージ部106からはみ出させるようにしてシート102をステージ103に載置する。これにより、図5に示すように、可動ステージ部106の外周側には、シート102との間に隙間109が形成される。
【0006】
その後、上方から図示省略のコレットにてチップ101aを吸着(保持)した状態で、吸引孔107を介してシート102を下方に吸引する。これによって、隙間109のエアが吸引され、可動ステージ部106の周りのシート102が吸引され、チップ101aの外周側においてシート102が剥離する。次に、可動ステージ部106を図5の矢印の方向へ移動させる。これによって、可動ステージ部106にて受けられているチップ101aの受け面積が減少していって、シート102の吸着(吸引)面積が増加して、最終的にこのチップ101aからシート102を完全に剥離させてチップ101aをピックアップすることができる。このようなピックアップ装置は、チップ101aの厚み寸法が、例えば約750μm程度の比較的大きなものに適用するのが有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3209736明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
固定ステージ部104のシート受け面108は、前記したようにすり鉢状となっている。このため、図5に示すように、ピックアップすべきチップ101aを吸着したときに、チップ101aに対して、可動ステージ部106のスライド方向に隣合う周辺チップ101bが、すり鉢状のシート受け面108に倣う。これにより、ピックアップすべきチップ101aと周辺チップ101bとが干渉することにより、チップ欠けが生じるおそれがある。また、ピックアップすべきチップ101aに対して、可動ステージ部106のスライド方向と直交する方向に隣合う周辺チップ101cも、チップ101aを吸着したときにシート受け面108に倣い、ピックアップすべきチップ101aと周辺チップ101cとが干渉する。
【0009】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、ピックアップすべきチップとそれと隣合うチップとの干渉によるチップの損傷を低減することができるピックアップ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のピックアップ装置は、シートが載置されるステージを有し、複数のチップが所定間隔で張り付けられたシートからチップを剥離してピックアップするピックアップ装置であって、前記ステージは、底中央が深くなる凹形状のシート受け面を有する固定ステージ部と、固定ステージ部のシート受け面の底部に設けられた凹部にスライド可能に設けられる可動ステージ部と、前記凹部の周囲のいずれかの位置に、前記シート受け面から突出する支持部とを備え、ピックアップすべき一のチップを前記可動ステージ部に対応させ、かつ前記一のチップの周縁部を少なくとも一部が可動ステージ部からはみ出させるとともに、前記一のチップと隣合う他のチップを前記支持部に対応させるように設置した後、はみ出し部の下方に形成される空隙に負圧を作用させながら、この空隙が大きくなるように可動ステージ部をスライドさせて、シートをチップと反対側へ吸引するものである。
【0011】
本発明のピックアップ装置によれば、ピックアップすべき一のチップを吸着したときに、支持部が、前記チップと隣合う他のチップ(周辺チップ)を支持する。これにより、周辺チップが、凹形状のシート受け面に倣って傾くことを防止でき、シート受け面の中央部側へ落ち込むことを防止することができる。すなわち、ピックアップすべきチップを吸着したときでも、周辺チップの姿勢を保つことができて、ピックアップすべきチップと周辺チップとの干渉を防止することができる。
【0012】
前記構成において、前記支持部の上端の高さ位置は、前記シート受け面の最大高さ位置と略同一とすることができる。これにより、ピックアップすべきチップを吸着したときに、周辺チップの姿勢を略水平とすることができる。
【0013】
前記構成において、前記支持部は、可動ステージ部が前記凹部に嵌合した状態で、可動ステージ部の先端部に対面する位置、及び可動ステージの側部に対面する位置に設けることができる。これにより、吸着時において、ピックアップすべきチップに対して3方向に存在する周辺チップの落ち込みを夫々防止することができる。ここで、可動ステージ部の先端部とは、可動ステージ部の端部のうち、スライド方向と直交する方向に延びる端部をいう。また、可動ステージ部の側部とは、可動ステージ部の端部のうち、スライド方向に沿って延びる端部をいう。
【0014】
前記構成において、前記固定ステージ部のシート受け面に、シートを吸引する吸引口を設けることができる。これにより、可動ステージ部のスライド動作時であっても、シートのずれを防止することができ、シートのずれによるチップ同士の干渉を防止することができる。
【0015】
前記構成において、チップの厚み寸法が、隣合うチップ同士の相対する端部間の幅寸法よりも大きいものとできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、ピックアップすべきチップとそれと隣合うチップとの干渉によるチップの損傷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のピックアップ装置の簡略平面図である。
図2】前記図1のピックアップ装置を用いた剥離工程を示す簡略断面図である。
図3】前記図1のピックアップ装置における簡略断面図である。
図4】従来のピックアップ装置の簡略平面図である。
図5】前記図4のピックアップ装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図1図3に基づいて説明する。
【0019】
本発明のピックアップ装置は、シート2(図2及び図3参照)上に貼り付けられた複数の矩形状のチップ1a〜1dを、シート2から順次剥離して取り出してピックアップする装置である。図1において、チップ1aがピックアップすべきチップを示し、チップ1b〜チップ1dは、チップ1aをピックアップする際には周辺チップとなる。
【0020】
本実施形態において用いられるチップ1a〜1dは、厚さ寸法が例えば750μm程度の厚みを有するものである。また、チップ1a〜1dの厚み寸法t(図2及び図3参照)は、隣合うチップ同士の相対する端部間(ストリート部3)の幅寸法xよりも大きい。また、図1では、チップは、ピックアップすべきチップ1aと、これに隣合う周辺チップ1b〜1dとの4つのみを記載しているが、実際はさらに多数のチップが存在する。
【0021】
ピックアップ装置は、図2及び図3に示すように、ピックアップすべきチップ1aを上方から保持する保持手段5と、シート2が載置されるステージ6とを備える。ステージ6は、スライド自在な可動ステージ部6aと、固定ステージ部6bと、基台6cとを備える。
【0022】
図2及び図3に示すように、固定ステージ部6bは基台6cに取り付けられており、可動ステージ部6aを嵌合させるための凹部12が設けられている。また、固定ステージ部6bの上面であるシート受け面8(つまり、固定ステージ部6bの上面のうち凹部12を除いた面)は、凹部12にてシート2を落ち込ませるために、底中央が深くなるようなテーパ面となっており、固定ステージ部6bの上方側は、いわゆるすり鉢状となっている。
【0023】
図1に示すように、固定ステージ部6bには、上下方向に貫通する貫通孔13a、13b、13cが設けられている。貫通孔13a〜13cは、本実施形態では第1貫通孔13a、第2貫通孔13b、第3貫通孔13cの3つ設けられている。第1の貫通孔13aは、可動ステージ部6aの先端部に対面する位置に設けられており、第2の貫通孔13bは、可動ステージ部6aの一方の側部に対面する位置に設けられており、第3の貫通孔13cは、可動ステージ部6aの他方の側部に対面する位置に設けられている。ここで、可動ステージ部6aの先端部とは、可動ステージ部6aの端部のうち、スライド方向と直交する方向に延びる端部をいう。また、可動ステージ部6aの側部とは、可動ステージ部6aの端部のうち、スライド方向に沿って延びる端部をいう。
【0024】
図2及び図3に示すように、前記貫通孔13a、13b、13cに、基台6cからコレット側へ突出する支持部14a、14b、14cが挿通されている。支持部14a、14b、14cの上端面の高さ位置は、シート受け面8の最大高さ位置と略同一である。本実施形態において、シート受け面8はすり鉢状となっており、シート受け面8の最大高さ位置は外周側端部15となる。
【0025】
さらに、固定ステージ部6bには、図2に示すように、シート2との境界面に負圧を導入する負圧通路30を設けており、負圧通路30の端部となる吸引口7、18が、図1に示すように、固定ステージ部6bの上面に開口している。本実施形態では、凹部12の上面に開口する吸引口7が3個設けられている。これらの吸引口7は、後述するように、ピックアップすべきチップ1aのはみ出し部31に対応するように、可動ステージ部6aが凹部12に嵌合したときに、可動ステージ部6aの先端側に対応する位置に設けられている。そして、可動ステージ部6aが凹部12に嵌合したときには、図1に示すように、可動ステージ部6aは、夫々の吸引口7の一部を塞いだ状態となる。
【0026】
また、シート受け面8の上面に開口する吸引口18が12個設けられている。すなわち、シート受け面8には、凹部12の両側で夫々、平面視H形状となる浅溝16と、平面視長円形状の2つの浅溝17とが形成されている。そして、これらの浅溝16、17の底面に前記吸引口18が設けられている。H形状の浅溝16には、4つの吸引口18が設けられており、長円形状の浅溝17には1つの吸引口18が設けられている。
【0027】
負圧通路30には、図示省略の真空ポンプが接続されてなる。すなわち、真空ポンプが駆動することによって、負圧通路の吸引口7、18からエアを吸引することができる。このように、負圧通路と真空ポンプ等で負圧供給手段(エア吸引手段)を構成することができる。
【0028】
固定ステージ部6bの凹部12に、矩形平板体である可動ステージ部6aが配置されている。可動ステージ部6aの上面は、固定ステージ部6bのシート受け面8の中央側(つまり、可動ステージ部6a側)よりも高位とされている。また、図1に示すように、可動ステージ部6aの幅寸法Wは、チップ1aの一辺の長さ(幅寸法)W1よりも小さく設定されている。この場合、可動ステージ部6aの先端面が剥離すべきチップ1aの第1辺21に対応し、チップ1aの第1辺21が可動ステージ部6aの先端面よりもはみ出している。
【0029】
保持手段5は、図2及び図3に示すように、チップ1aを吸着するヘッド20を有する吸着部材(コレット)にて構成している。ヘッド20は、その下端面に図示省略の吸着孔が設けられ、この吸着孔を介してチップ1aが真空吸引され、このヘッド20の下端面にチップ1aが吸着する。このため、この真空吸引(真空引き)が解除されれば、ヘッド20からチップ1aが外れる。
【0030】
可動ステージ部6aは、チップ1aのはみ出し側と反対側にスライドすることができる。このスライドには、図示省略の駆動手段(スライド手段)が用いられる。駆動手段には、例えばボルト軸部材とこれに螺合するナット部材とからなる往復動機構やシリンダ機構、リニアアクチュエータ等の、公知公用の種々の機構を用いることができる。
【0031】
次に、前記ピックアップ装置を使用したチップのピックアップ方法を説明する。初期状態では、可動ステージ部6aが凹部12に嵌合し、図1に示すように、可動ステージ部6aが、夫々の吸引口7の一部を塞いだ状態となっている。
【0032】
図2(a)に示すように、可動ステージ部6aに、ピックアップすべきチップ1aを載置して支持した状態で、チップ1aの周縁部の少なくとも一部(本実施形態では、第1辺21)を可動ステージ部6aからはみ出させる。これによって、このはみ出し部31の下方に空隙19を設ける。この空隙19は吸引口7に連通されている。また、ピックアップすべきチップ1aの周辺には、可動ステージ部6aのスライド側と反対側にチップ1c(例えばTEGチップ等のチップ1aよりも小さな評価用チップ)が存在し、可動ステージ部6aの両側部側に周辺チップ1b、1d(チップ1aと同様のチップ)が存在する。
【0033】
このとき、図2(a)に示すように、周辺チップ1cが、支持部14aにて支持されるように配置するとともに、図3に示すように、周辺チップ1bが、支持部14bにて支持され、周辺チップ1dが、支持部14cにて支持されるように配置する。この状態で、保持手段5であるコレットのヘッド20をチップ1aの上面に当接するとともに、吸着孔を介してチップ1aを真空吸引して、このヘッド20の下端面にチップ1aを吸着させる。
【0034】
前記空隙19は、前記したように吸引口7に連通されている。そこで、吸引手段(負圧供給手段)を駆動することによって、吸引口7を介して空隙19のエアを吸引して負圧を作用させる。これによって、チップ周縁部のシート2の一部、つまりはみ出し側が吸引され、はみ出し部31において、シート2をチップ1aから剥離する。また、吸引口7からの吸引に加えて、吸引口18からも吸引する。
【0035】
このとき、支持部14a、14b、14cが夫々、周辺チップ1b、1c、1dを支持しているため、周辺チップ1b、1c、1dが、凹形状のシート受け面8に倣って傾くことを防止でき、シート受け面8の中央部側へ落ち込むことを防止することができる。すなわち、ピックアップすべきチップ1aを吸着したときでも、周辺チップ1b、1c、1dの姿勢を略水平に保つことができて、ピックアップすべきチップ1aと周辺チップ1b〜1dとの干渉を防止することができ、チップ同士の干渉によるチップ1の損傷を低減することができる。
【0036】
その後は、図2(b)の矢印に示すように、可動ステージ部6aを、はみ出し側と反対方向にスライドさせる。このスライドによって、可動ステージ部6aによるチップ1aの受け面積が順次減少していって、シート2の下方への吸着(吸引)面積が増加していく。この際、チップ1aはコレットに保持(吸着)されているので、シート2が順次チップ1aから剥離していく。このため、可動ステージ部6aの先端面が、チップ1aから外れたときに、この剥離すべきチップ1aからシート2を完全に剥離させることができる。
【0037】
可動ステージ部6aのスライド時には、吸引口18からも吸引しているため、可動ステージ部6aのスライド動作時であっても、シート2のずれを防止することができ、シート2のずれによるチップ同士の干渉を防止することができる。
【0038】
そして、剥離後は、コレットを上昇させてステージ6から離すことによって、チップ1aをシート2から取り出すことができる。その後は、前記負圧状態を解除して、可動ステージ部6aを前記矢印と反対方向にスライドさせて、図2(a)に示すように、可動ステージ部6aの先端面が凹部12のはみ出し側端面に位置する状態に戻す。
【0039】
その後、順次他のチップを可動ステージ部6aに対応させていけば、シート2上のチップ1をシート2から剥離して取り出すことができる。例えば、ピックアップすべきチップ1bを吸着する際に、チップ1bと、これと隣合う周辺チップとを干渉させることなく、チップ1bをピックアップすることができる。
【0040】
本発明のピックアップ装置によれば、ピックアップすべきチップ1aを吸着したときに、支持部14が、チップ1aと隣合う周辺チップ1b〜1dを支持し、周辺チップ1b〜1dが、凹形状のシート受け面8に倣って傾くことを防止でき、シート受け面8の中央部側へ落ち込むことを防止することができる。すなわち、ピックアップすべきチップ1aを吸着したときでも、周辺チップ1b〜1dの姿勢を略水平に保つことができて、ピックアップすべきチップ1aと周辺チップ1b〜1dとの干渉を防止することができ、チップ同士の干渉によるチップ1の損傷を低減することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、支持部14の数は任意に設定することができ、支持部14の上端の高さ位置や、平面視における長さ寸法も任意に設定することができる。支持部14を設ける位置は、可動ステージ部6aの側部に対面する位置のみに設けたり、先端部に対面する位置のみに設けたりする等、種々の位置に設けることができる。実施形態では、シート受け面8に吸引口18を設けたが、これらを省略してもよい。吸引口7、18の数は、任意に設定することができる。
【0042】
また、チップ1の大きさ、厚み寸法は種々のものを採用することができる。前記実施形態では、周辺チップ1cをTEGチップとしたが、ピックアップすべきチップ1aと同様のサイズのチップであってもよい。さらに、ピックアップすべきチップ1aの全方向(3方向)にチップが存在する必要はなく、周辺チップ1b、1c、1dのいずれかが存在していなくてもよい。ストリート部3のストリート幅は、全てのチップ間で同一でなくてもよい。例えば、チップ1aとチップ1bとのストリート幅と、チップ1aとチップ1cとのストリート幅とが相違する等であってもよい。本ピックアップ装置では、チップの厚み寸法が大きなものでも適用することができるため、チップサイズの適用範囲が広がり、半導体分野以外(例えばCMOSセンサー)にも応用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 チップ
2 シート
3 入力手段
6 ステージ
6a 可動ステージ部
6b 固定ステージ部
8 シート受け面
12 凹部
14 支持部
18 吸引口
19 空隙
図1
図2
図3
図4
図5