【実施例】
【0197】
以下に実施例により本発明を詳細に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0198】
<分析条件>
(1)生成した2−D−デオキシリボース及び2−デオキシリボースは高速液体クロマトグラフィーにより定量した。分析条件は以下による。
カラム;Shodex SUGAR SC1011 300×8.0mmI.D.(昭和電工株式会社製)
カラム温度;80℃
ポンプ流速;1.0ml/min
検出;RI(示差屈折率計)
溶離液;純水
(2)生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルはHPLC(高速液体クロマトグラフィー)により定量した。分析条件は以下による。
カラム: Shodex Asahipak NH2P−50 4E(昭和電工株式会社)
カラム温度: 40℃
流速: 1.0ml/min
検出: RI(示差屈折率計)
キャリア: 150mmol/L リン酸二水素ナトリウム(pH3.0)
(3)生成した2'−デオキシヌクレオシドはHPLC(高速液体クロマトグラフィー)により定量した。分析条件は以下による。
カラム: Develosil ODS−MG−5(野村化学株式会社)
カラム温度: 40℃
流速: 1.0ml/min
検出: UV280nm
キャリア: 10mmol/Lリン酸/10wt%メタノール
なお、実施例では、2−デオキシ−D−リボースを「dR」とし、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを「dR5P」と表記することもある。
【0199】
(参考例A1)
Pseudomonas putidaに由来するベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌の調製方法
Nutrient broth(Difco製)にPseudomonas putida ATCC 12633を植菌して30℃で20時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。Pseudomonas putida由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 AAC15502)をもとに、配列表の配列番号5と配列番号6に示す2種のプライマーを作製し、抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を以下の条件で行った。10mmol/LのKOD−plusバッファー、1.5μMのフォワード及びリバースプライマー、1mmol/Lの硫酸マグネシウム、0.2mmol/LのdNTPs、2UのKOD−plusポリメラーゼ(TOYOBO製)、50ng/μlのゲノムDNAからなる反応溶液を作成した。94℃で2分間保持した後、94℃で30秒間、60℃で30秒間、68℃で90秒間のサーマルサイクルを30サイクル行った後、最後に68℃で10分間保持した。その結果、約1.5kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/HindIII処理してpUC19に連結し、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードするDNAを含むプラスミドを作製した。このプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ活性の発現株を作製した。作成した発現株よりプラスミドを抽出して、BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems製)を用いてサンプルを調製し、3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems/HITACHI製)により塩基配列を解析した結果、Pseudomonas putida ATCC 12633由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 AAC15502)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
【0200】
(参考例A2)
Achromobacter xylosoxidansに由来するグルコン酸デヒドラターゼ遺伝子を発現する大腸菌の調製方法
70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に特開2005−40130号公報に準拠し作成したグルコン酸脱水活性発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。
【0201】
(実施例A1)
D−グルコン酸カルシウムからの2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムの合成
D−グルコン酸カルシウム一水和物(和光純薬製)8.5gを水25gに加え、参考例A2で調製した菌体を0.44g添加した。40℃で撹拌を行ったところ、反応時間24時間で6.4gの2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムが生成し、反応収率98モル%であった。また、反応初期のpHは8.4、反応終了時のpHは7.1であった。
【0202】
(実施例A2)
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成
実施例A1に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウム13gを含む水溶液60gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を4.4g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間6時間で3.9gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率46モル%であり、反応時間24時間で7.6gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率88モル%であった。また、反応初期のpHは6.2、反応終了時のpHは6.9であった。
【0203】
(実施例A3)
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸ストロンチウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成
実施例A1と同様の方法で合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸ストロンチウム5.8gを含む水溶液63gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を1.7g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間6時間で2.3gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率49モル%であり、反応時間25時間で4.4gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率94モル%であった。また、反応初期のpHは5.7、反応終了時のpHは7.2であった。
【0204】
(実施例A4)
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸バリウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成
実施例A1と同様の方法で合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸バリウム6.4gを含む水溶液63gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を1.7g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間6時間で2.7gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率58モル%であり、反応時間25時間で4.3gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率94モル%であった。また、反応初期のpHは6.3、反応終了時のpHは6.8であった。
【0205】
(実施例A5)
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成[反応温度]
実施例A1に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムを2.9g含有する水溶液13gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を1.04g添加した。混合液を30℃から60℃で23時間撹拌を行い、2−デオキシ−D−リボースの生成量を定量した。結果を表1に示した。表1中、dRは、2−デオキシ−D−リボースである。
【0206】
【表1】
【0207】
(実施例A6)
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成[基質濃度]
実施例A1に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムを1.6gから4.9g含有する水溶液15gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例1で調製した菌体を0.64gから1.88g添加した。混合液を45℃で22時間撹拌を行い、2−デオキシ−D−リボースの生成量を定量した。結果を表2に示した。
【0208】
【表2】
【0209】
(実施例A7)
D−グルコン酸カルシウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成
D−グルコン酸カルシウム・一水和物(和光純薬製)18gを含有する水溶液73gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を21.3g及び参考例A2で調製した菌体を3.58g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間24時間で10gの2−デオキシ−D−リボースが生成し、反応収率93モル%であった。また、反応初期のpHは6.0、反応終了時のpHは7.2であった。
【0210】
(実施例A8)
D−グルコン酸カルシウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成
D−グルコン酸カルシウム・一水和物(和光純薬製)18gを含有する水溶液73gに、参考例A2で調製した菌体を3.58g添加し、45℃で撹拌を行った。12時間後チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を21.3g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間36時間で10gの2−デオキシ−D−リボースが生成し、反応収率93モル%であった。また、反応初期のpHは8.4、12時間後にチアミンピロリン酸等を添加した後のpHは6.1、反応終了時のpHは7.2であった。
【0211】
(実施例A9)
2−デオキシ−D−リボース水溶液の精製
実施例A1に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウム120gを含む水溶液500gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を43.6g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間27時間で73.1gの2−デオキシ−D−リボースが生成し、反応収率89モル%であった。また、反応初期のpHは6.2、反応終了時のpHは6.8であった。この2−デオキシ−D−リボース溶液にラヂオライト(登録商標)を27.5g添加し、撹拌した後、5Aのろ紙を用いて吸引ろ過により炭酸カルシウムを除去し、2−デオキシ−D−リボース68.7gを含む水溶液503gを得た。
【0212】
(比較例A1)
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸ナトリウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成反応
2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸ナトリウム13gを含む水溶液60gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を5.2g添加した。45℃で撹拌を行い、反応時間6時間で2.9gの2−デオキシ−D−リボースが生成し、反応収率29モル%であり、反応時間24時間で3.8gの2−デオキシ−D−リボースが生成し、反応収率38モル%であった。また、反応初期のpHは6.4、反応終了時のpHは8.9であった。
【0213】
(比較例A2)
D−グルコン酸ナトリウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成反応
D−グルコン酸ナトリウム18gを含む水溶液74gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A1で調製した菌体を22.0g及び参考例A2で調製したグルコン酸デヒドラターゼ遺伝子を発現する菌体を3.68g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間24時間で6.4gの2−デオキシ−D−リボースが生成し、反応収率58モル%であった。また、反応初期のpHは6.0、反応終了時のpHは8.7であった。
【0214】
(参考例A3)
Pseudomonas putidaに由来する変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌の調製方法
配列表の配列番号7と配列番号8に示した2種のプライマーを作製し、参考例A1で調整したプラスミドを鋳型として以下の条件でPCRを行った。10mmol/LのKOD−plusバッファー、1.5μMのフォワードおよびリバースプライマー、1mmol/Lの硫酸マグネシウム、0.2mmol/LのdNTPs、2UのKOD−plusポリメラーゼ(TOYOBO製)、10ng/μlのpPPBFDからなる反応溶液を作成した。97℃で30秒間、55℃で30秒間、68℃で5分間のサーマルサイクルを11サイクル行った。その結果、約4.5kbの増幅断片が得られた。得られた増幅断片をDpnI処理し、その溶液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。作製した株よりプラスミドを調製して塩基配列を決定したところ、配列表の配列番号9に示す塩基配列において、目的の塩基が置換されていることを確認した。このように、配列表の配列番号10に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基をコードしている遺伝子コドンcacをtttに置換して、配列表の配列番号10に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基がフェニルアラニン残基に置換された変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする変異型遺伝子を含むプラスミドを作製した。同様にして、配列表の配列番号11及び配列番号12に示したプライマーを用いて、配列表の配列番号10に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基をコードしている遺伝子コドンcacをtatに置換して、配列表の配列番号10に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基がチロシン残基に置換された変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする変異型遺伝子を含むプラスミドを作製した。これら作成したプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
【0215】
(実施例A10)
変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いた2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウムからの2−デオキシ−D−リボースの酵素的合成
実施例A1に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸カルシウム13gを含む水溶液60gに、チアミンピロリン酸と硫酸マグネシウムを其々1.0mmol/Lとなるように加え、参考例A3で調製した菌体を1.3g添加した。45℃で撹拌を行ったところ、反応時間24時間で、281番目のヒスチジン残基をフェニルアラニン残基に置換した変異体では7.4g、281番目のヒスチジン残基をチロシン残基に置換した変異体では7.1gの2−デオキシ−D−リボースを生成し、反応収率はそれぞれ98モル%、95モル%であった。また、反応初期のpHは、281番目のヒスチジン残基をフェニルアラニン残基に置換した変異体では6.3、281番目のヒスチジン残基をチロシン残基に置換した変異体では6.2、反応終了時のpHはそれぞれ7.5、7.3であった。
【0216】
D−グルコン酸又は2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸の二価金属塩を用いた実施例A1〜A10では、反応中にpHが大きく変化せず、高い反応収率を得ることができた。一方、D−グルコン酸又は2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸の一価金属塩を用いた比較例A1、2では、反応中にpHが大きく変化し、低い反応収率となっている。このような場合は酸でpH調整すれば、高い反応収率を得ることができる。また、D−グルコン酸又は2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸の二価金属塩を用いた実施例A1〜A10では、副生する炭酸イオンと二価金属塩が不溶性の塩を形成し、沈澱するため、濾過により簡単に精製して、金属イオンをほとんど含まない純度の高い2−デオキシ−D−リボース水溶液を得ることができる。
一方、D−グルコン酸又は2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸の一価金属塩を用いた場合は、不溶性の塩を形成しないため、大量の金属イオンを含んだ純度の低い2−デオキシ−D−リボース水溶液となる。
実施例A1〜A10で得られる純度の高い2−デオキシ−D−リボースを用いて次の2−デオキシ−D−リボースをリン酸化して2−デオキシ−D−リボース‐5‐リン酸エステルを合成する反応を行った場合、高い反応収率で2−デオキシ−D−リボース‐5‐リン酸エステルを得ることができる。
比較例A1、2で得られる純度の低い2−デオキシ−D−リボース水溶液では、水溶液中に含まれる大量の金属イオンは次工程の反応に持ち込むこととなる。例えば、D−グルコン酸ナトリウムや2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸ナトリウムを用いて2−デオキシ−D−リボースを合成した場合、2−デオキシ−D−リボース水溶液中に多くのナトリウムイオンが含まれるため、次の2−デオキシ−D−リボースをリン酸化して2−デオキシ−D−リボース‐5‐リン酸エステルを合成する反応において反応阻害を起こし、得られる2−デオキシ−D−リボース−5−リン酸エステルの反応収率は低くなる。
このようにして得られる2−D−デオキシリボース水溶液を用いて公知の反応を経てチミジン、2'−デオキシアデノシン、2'−デオキシグアノシン等の 2'−デオキシヌクレオシドを合成することができる。例えば、特許文献2又はArchives of biochemistry and biophysiscs, 164, 567-570 (1974)に記載された方法により2−D−デオキシリボースを2−デオキシ−D−リボース−5−リン酸エステルとし、特許文献8の方法により、2'−デオキシヌクレオシドとする方法が挙げられる。
【0217】
(参考例B1)
Pseudomonas putida由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子の単離
Nutrient broth(Difco製)にPseudomonas putida ATCC 12633を植菌して30℃で20時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。Pseudomonas putida由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 AAC15502)をもとに、配列表の配列番号19及び配列番号20に示した2種のプライマーを作製し、抽出したゲノムDNAを鋳型として以下の条件でPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。10mmol/LのKOD−plusバッファー、1.5μMのフォワードおよびリバースプライマー、1mmol/Lの硫酸マグネシウム、0.2mmol/LのdNTPs、2UのKOD−plusポリメラーゼ(TOYOBO製)、50ng/μlのゲノムDNAからなる反応溶液を作製した。94℃で2分間保持した後、94℃で30秒間、60℃で30秒間、68℃で90秒間のサーマルサイクルを30サイクル行った後、最後に68℃で10分間保持した。その結果、約1.5kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/HindIII処理してpUC19に連結し、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドをpPPBFDと命名した。pPPBFDを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌DH5α/pPPBFDを作製した。作製した発現株よりプラスミドを抽出して、BigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems製)を用いてサンプルを調製し、3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems/HITACHI製)により塩基配列を解析した結果、Pseudomonas putida ATCC 12633由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 AAC15502)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
【0218】
(実施例B1)
Pseudomonas putida由来変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号21及び配列番号22に示した2種のプライマーを作製し、参考例B1で調製したpPPBFDを鋳型として以下の条件でPCRを行った。10mmol/LのKOD−plusバッファー、1.5μMのフォワードおよびリバースプライマー、1mmol/Lの硫酸マグネシウム、0.2mmol/LのdNTPs、2UのKOD−plusポリメラーゼ(TOYOBO製)、10ng/μlのpPPBFDからなる反応溶液を作製した。97℃で30秒間、55℃で30秒間、68℃で5分間のサーマルサイクルを11サイクル行った。その結果、約4.5kbの増幅断片が得られた。得られた増幅断片をDpnI処理し、その溶液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。作製した株よりプラスミドを調製して塩基配列を決定したところ、配列表の配列番号23に示す塩基配列において、目的の塩基が置換されていることを確認した。このように、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基をコードしている遺伝子コドンcacをtttに置換して、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基がフェニルアラニン残基に置換された変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする変異型遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドをpPPBFDm1と命名した。同様にして、配列表の配列番号24及び配列番号25に示したプライマーを用いて、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基をコードしている遺伝子コドンcacをtatに置換して、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基がチロシン残基に置換された変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする変異型遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドをpPPBFDm2と命名した。これら作成したプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌DH5α/pPPBFDm1、大腸菌DH5α/pPPBFDm2をそれぞれ作製した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
【0219】
(参考例B2)
Achromobacter xylosoxidans由来グルコン酸デヒドラターゼ遺伝子を発現する大腸菌の調製方法
70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に特開2005−40130号公報の実施例7に準拠して、同公報の
図1で示されるプラスミドで形質転換した大腸菌K12W3110を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。
【0220】
(参考例B3)
2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カルシウムの合成
グルコン酸カルシウム・一水和物(キシダ化学製)8.5gを水25gに加え、参考例B2で調製した菌体0.44gを添加した。40℃で24時間反応した結果、7.4gの2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カルシウムが生成した。
【0221】
(実施例B2)
Pseudomonas putida由来変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いた2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カルシウムからの2−デオキシリボースの合成
参考例B3に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カルシウム1.9gを含む水溶液9gに、1mmol/Lチアミンピロリン酸、1mmol/L硫酸マグネシウムとなるように混合し、参考例B1及び実施例B1で得られた菌体0.3gをそれぞれ添加して、45℃で反応させた。反応液をHPLCで分析した結果を表3に示した。
【0222】
【表3】
【0223】
(参考例B4)
Pseudomonas fluorescens由来およびChromohalobacter salexigens由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子の単離
参考例B1を参考にして、配列表の配列番号26及び配列番号27に示したプライマーを用いてPseudomonas fluorescens Pf−5よりベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする遺伝子を単離し、この遺伝子を含むプラスミドを作製してpPFBFDと命名した。また、Nutrient broth(Difco製)に10重量%の塩化ナトリウムを添加して培養した以外は同様にして、配列表の配列番号28及び配列番号29に示したプライマーを用いてChromohalobacter salexigenes DSM3043よりベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードする遺伝子を単離し、この遺伝子を含むプラスミドを作製してpCSBFDと命名した。作製したpPFBFDおよびpCSBFDの塩基配列を解析した結果、Pseudomonas fluorescens Pf−5およびChromohalobacter salexigenes DSM3043由来ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 YP_260581およびYP_572370)と同一であることを確認した。
【0224】
(実施例B3)
Pseudomonas fluorescens由来およびChromohalobacter salexigens由来変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
実施例B1を参考にして、参考例B4で作成したpPFBFDを鋳型として、配列表の配列番号30及び配列番号31に示したプライマーを用いてPCRを行い、配列表の配列番号32に示す塩基配列において、配列表の配列番号32に示す281番目のヒスチジン残基をコードしている遺伝子コドンcacをttcに置換して、配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基がフェニルアラニン残基に置換された変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードするDNAを含むプラスミドを作製した。作製したプラスミドをpPFBFDm1と命名した。また、同様に、実施例B1を参考にして、参考例B4で作成したpCSBFDを鋳型として、配列表の配列番号33及び配列番号34に示したプライマーを用いてPCRを行い、配列表の配列番号35に示す塩基配列において、配列表の配列番号4に示す281番目のヒスチジン残基をコードしている遺伝子コドンcacをttcに置換して、配列表の配列番号4に示すアミノ酸配列の281番目のヒスチジン残基がフェニルアラニン残基に置換された変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼをコードするDNAを含むプラスミドを作製した。作製したプラスミドをpCSBFDm1と命名した。これら作製したプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼ遺伝子を発現する大腸菌DH5α/pPFBFDm1および大腸菌DH5α/pCSBFDm1をそれぞれ作製した。作製した株よりプラスミドを調製して塩基配列を決定したところ、目的の塩基が置換されていることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
【0225】
(実施例B4)
Pseudomonas fluorescens由来およびChromohalobacter salexigens由来変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いた2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸カルシウムからの2−デオキシリボースの合成
実施例B2と同様にして、参考例B2及び実施例B3で得られた菌体をそれぞれ用いて45℃で24時間反応させた。反応液をHPLCで分析した結果を表4に示した。
【0226】
【表4】
【0227】
(参考例B5)
2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸マグネシウムの合成
グルコン酸マグネシウム・x水和物(キシダ化学製)80gを水300gに加え、参考例B2で調製した菌体4.2gを添加した。40℃で18時間反応した結果、58gの2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸マグネシウムが生成した。
【0228】
(参考例B6)
2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸ストロンチウムの合成
45〜50重量%グルコン酸水溶液(キシダ化学製)100gに水150gを添加し、pH7.4となるように水酸化ストロンチウム(和光純薬製)を添加したのち、参考例B2で調製した菌体3.5gを添加した。40℃で24時間反応した結果、62gの2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸ストロンチウムが生成した。
【0229】
(参考例B7)
2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸バリウムの合成
参考例B5と同様にして、水酸化バリウム(キシダ化学製)を用いて40℃で24時間反応した結果、74gの2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸バリウムが生成した。
【0230】
(実施例B5)
Pseudomonas putida由来変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いた2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸マグネシウム、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸ストロンチウムおよび2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸バリウムからの2−デオキシリボースの合成
参考例B5に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸マグネシウム5.22g、参考例B6に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸ストロンチウム7.00gおよび参考例B7に従い合成した2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸バリウム8.13gを含む各水溶液29gに、1mmol/Lチアミンピロリン酸、1mmol/L硫酸マグネシウムとなるように混合し、参考例B1及び実施例B1で得られた菌体0.7gをそれぞれ添加して、45℃で反応させた。反応液をHPLCで分析した結果を表5に示した。
【0231】
【表5】
【0232】
(実施例B6)
Pseudomonas putida由来変異型ベンゾイルホルメートデカルボキシラーゼを用いたグルコン酸カルシウムからの2−デオキシリボースの合成
グルコン酸カルシウム・一水和物(キシダ化学製)18gに、1mmol/Lチアミンピロリン酸、1mmol/L硫酸マグネシウムとなるように混合し、参考例B2で得られた菌体3.6g、参考例B1及び実施例B1で得られた菌体2.3gを添加して、45℃で24時間反応させた。反応液をHPLCで分析した結果を表6に示した。
【0233】
【表6】
【0234】
実施例B2、B4、B5、B6で得られた2−デオキシリボース水溶液を公知の反応を経てチミジン、2'−デオキシアデノシン、2'−デオキシグアノシンをそれぞれ合成できる。例えば、特許文献2又はArchives of biochemistry and biophysiscs, 164, 567-570 (1974)に記載された方法により2−デオキシリボースを2−デオキシリボース−5−リン酸エステルとし、特許文献8の方法により、2'−デオキシヌクレオシドとする方法が挙げられる。
【0235】
(実験例C1)
Shigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
国際公開第2005/045052号パンフレットの参考例1に準拠してShigella flexneri由来酸性ホスファターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製し、このプラスミドをpSFAPと命名した。pSFAPを用いて大腸菌DH5α株を形質転換してShigella flexneri由来酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。
目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPを鋳型としてPCRを行った。その結果、約4.0kbの増幅断片が得られた。得られた増幅断片をDpnI処理し、その溶液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。作製した株よりプラスミドを調製して塩基配列を決定したところ、配列表の配列番号36に示す塩基配列において、目的の塩基が置換されていることを確認した。
このように、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列の様々なアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換された変異型酸性ホスファターゼをコードする変異型遺伝子を含むプラスミドを作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表7に示した。
これら作製したプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、Shigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した大腸菌を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
【0236】
【表7】
【0237】
(実験例C2)
Shigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C1で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表8及び
図4に示した。
【0238】
【表8】
【0239】
(実験例C3)
Escherichia blattae由来野生型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
Nutrient broth(Difco製)にEscherichia blattae JCM1650を植菌して30℃で20時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。Escherichia blattae由来酸性ホスファターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 BAA84942)をもとに配列表の配列番号47と配列表の配列番号48に示した2種のプライマーを用いて、抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。その結果、約0.8kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/BamHI処理してpUC19に連結し、Escherichia blattae由来酸性ホスファターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドをpEBAPと命名した。pEBAPを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、Escherichia blattae由来酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製した発現株よりプラスミドを調製して塩基配列を解析した結果、Escherichia blattae由来酸性ホスファターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 BAA84942)と同一であることを確認した。
作製した発現株を実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0240】
(実験例C4)
Escherichia blattae由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pEBAPを鋳型としてPCRを行った。その結果、約4.0kbの増幅断片が得られた。得られた増幅断片をDpnI処理し、その溶液を用いて大腸菌DH5α株を形質転換した。作製した株よりプラスミドを調製して塩基配列を決定したところ、配列表の配列番号49に示す塩基配列において、目的の塩基が置換されていることを確認した。このように、配列表の配列番号50に示すアミノ酸配列の様々なアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換された変異型酸性ホスファターゼをコードする変異型遺伝子を含むプラスミドを作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表9に示した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0241】
【表9】
【0242】
(実験例C5)
Escherichia blattae由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C3及び実験例C4で調製した菌体0.25gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表10及び
図5に示した。
【0243】
【表10】
【0244】
(実験例C6)
二重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、実験例C1で作製したプラスミドを鋳型としてPCRを行い、二重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、その作製の際に用いたプライマー、及び、鋳型として用いたプラスミドを表11に示した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0245】
【表11】
【0246】
(実験例C7)
二重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C1で調製した菌体のうちpSFAPを用いて調製した菌体、及び、実験例C6で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表12及び
図6(a)、
図6(b)に示した。
【0247】
【表12】
【0248】
(実験例C8)
三重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号63及び配列番号64に示した2種のプライマーを用いてpSFAPm1を鋳型としてPCRを行い、171番目のイソロイシンをトレオニンに置換したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子をコードするプラスミドpSFAPm15、及び作製したpSFAPm15で形質転換した大腸菌を作製した。さらにこのpSFAPm15を鋳型として、目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いてPCRを行い、三重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現
する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表13に示した。
これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、得られた菌体を20mmol/Lトリスバッファー(pH7.5)に懸濁して10重量%となるように調製したものを反応に供した。
【0249】
【表13】
【0250】
(実験例C9)
三重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.5mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液5.5gを混合し、実験例C8で調製した菌体のうちpSFAPm15及びpSFAPm28を用いて調製した菌体1.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表14及び
図7(b)に示した。
【0251】
【表14】
【0252】
(実験例C10)
三重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.6mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液4.5gを混合し、実験例C8で調製した菌体のうちpSFAPm15及びpSFAPm31を用いて調製した菌体2.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表15及び
図8(a)に示した。
【0253】
【表15】
【0254】
(実験例C11)
三重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
実験例C8で作製したpSFAPm15を鋳型として、目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いてPCRを行い、三重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表16に示した。
これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、得られた菌体を20mmol/Lトリスバッファー(pH7.5)に懸濁して10重量%となるように調製したものを反応に供した。
【0255】
【表16】
【0256】
(実験例C12)
三重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.5mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液5.5gを混合し、実験例C8で調製した菌体のうちpSFAPm15を用いて調製した菌体、並びに、実験例C11で調製した菌体のうちpSFAPm16、pSFAPm17、pSFAPm18、pSFAPm19、pSFAPm20、pSFAPm21、pSFAPm22、pSFAPm23、pSFAPm24、pSFAPm25、pSFAPm26、pSFAPm27及びpSFAPm29を用いて調製した菌体1.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表17及び
図7(a)、
図7(b)に示した。
【0257】
【表17】
【0258】
(実験例C13)
三重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.6mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液4.5gを混合し、実験例C8で調製した菌体のうちpSFAPm15を用いて調製した菌体、並びに、実験例C11で調製した菌体のうちpSFAPm30、pSFAPm32、pSFAPm33、pSFAPm34、pSFAPm35、pSFAPm36、pSFAPm37、pSFAPm38及びpSFAPm39を用いて調製した菌体2.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表18及び
図8(a)、
図8(b)に示した。
【0259】
【表18】
【0260】
(実験例C14)
四重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPm28を鋳型としてPCRを行い、四重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表19に示した。
これら作製したプラスミドを用いて実験例C8と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0261】
【表19】
【0262】
(実験例C15)
四重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.6mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液4.5gを混合し、実験例C8で調製した菌体のうちpSFAPm28を用いて調製した菌体、及び、実験例C14で調製した菌体2.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表20、
図9(a)、
図9(b)及び
図10に示した。
【0263】
【表20】
【0264】
(実験例C16)
126番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号46と配列番号47に示した2種のプライマーを用いてpSFAPm8を鋳型としてPCRを行い、197番目のロイシンをチロシンに置換したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子をコードするプラスミドpSFAPm60、及び、作製したpSFAPm60で形質転換した大腸菌を作製した。さらにこのpSFAPm60を鋳型として、126番目が目的のアミノ酸残基に置換されるようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いてPCRを行い、126番目が様々なアミノ酸に置換されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入したアミノ酸、及び、その作製の際に用いたプライマーを表21に示した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0265】
【表21】
【0266】
(実験例C17)
126番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C16で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表22及び
図11に示した。
【0267】
【表22】
【0268】
(実験例C18)
126番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号143と配列番号144に示した2種のプライマーを用いて実験例C16で作製したpSFAPm60を鋳型としてPCRを行い、126番目のアミノ酸がフェニルアラニンに置換されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子をコードするプラスミドpSFAPm64を作製した。作製したプラスミドpSFAPm64を用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0269】
(実験例C19)
126番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C16で調製した菌体のうちpSFAPm60を用いて調製した菌体、及び、実験例C18で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表23及び
図11に示した。
【0270】
【表23】
【0271】
(実験例C20)
171番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号145と配列番号146に示した2種のプライマーを用いてpSFAPm28を鋳型としてPCRを行い、171番目のトレオニンをアスパラギン酸に置換したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子をコードするプラスミドpSFAPm68を作製した。pSFAPm68を用いて実験例C8と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0272】
(実験例C21)
171番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.6mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液4.5gを混合し、実験例8で調製した菌体のうちpSFAPm28を用いて調製した菌体、及び、実験例20で調製した菌体2.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表24及び
図12に示した。
【0273】
【表24】
【0274】
(実験例C22)
171番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
171番目が目的のアミノ酸残基に置換されるようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPm28を鋳型としてPCRを行い、171番目が様々なアミノ酸置換されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入したアミノ酸、及び、その作製の際に用いたプライマーを表25に示した。これら作成したプラスミドを用いて実験例C8と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0275】
【表25】
【0276】
(実験例C23)
171番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
1.5mol/lのピロリン酸水溶液と1.5mol/lのピロリン酸カリウム水溶液でpH3.5となるように調製したピロリン酸水溶液3.5gに、0.6mol/lに調製した2−デオキシリボース(東京化成製)の水溶液4.5gを混合し、実験例C8で調製した菌体のうちpSFAPm28を用いて調製した菌体、及び、実験例C22で調製した菌体2.0gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表26及び
図12に示した。
【0277】
【表26】
【0278】
(実験例C24)
197番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号65と配列番号66に示した2種のプライマーを用いてpSFAPm61を鋳型としてPCRを行い、197番目のロイシンをフェニルアラニンに置換したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子をコードするプラスミドpSFAPm74を作製した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0279】
(実験例C25)
197番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース1.0g(東京化成製)を含む水溶液10gに、実験例C16で調製した菌体のうちpSFAPm61を用いて調製した菌体、及び、実験例C24で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表27及び
図13に示した。
【0280】
【表27】
【0281】
(実験例C26)
197番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
197番目が目的のアミノ酸残基に置換されるようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPm61を鋳型としてPCRを行い、197番目が様々なアミノ酸置換されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入したアミノ酸、及び、その作製の際に用いたプライマーを表28に示した。これら作成したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0282】
【表28】
【0283】
(実験例C27)
197番目に変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C16で調製した菌体のうちpSFAPm61を用いて調製した菌体、及び、実験例C26で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表29及び
図13に示した。
【0284】
【表29】
【0285】
(実験例C28)
五重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPm61を鋳型としてPCRを行い、五重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表30に示した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0286】
【表30】
【0287】
(実験例C29)
五重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C16で調製した菌体のうちpSFAPm61を用いて調製した菌体、及び、実験例C28で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表31及び
図14に示した。
【0288】
【表31】
【0289】
(実験例C30)
五重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPm61を鋳型としてPCRを行い、五重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表32に示した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0290】
【表32】
【0291】
(実験例C31)
五重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成酸性
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース(東京化成製)1.0gを含む水溶液10gに、実験例C16で調製した菌体のうちpSFAPm61を用いて調製した菌体、及び、実験例C30で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表33及び
図14に示した。
【0292】
【表33】
【0293】
(実験例C32)
グルコン酸より合成した2−デオキシリボースを用いた2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
実施例A2に従い合成し、ろ紙を用いて吸引濾過した2−デオキシリボース2.6gを含む水溶液に酸性ピロリン酸6.5gを添加後、水で30gに調製し、実験例C16で調製した菌体のうちpSFAPm61を用いて調製した菌体、及び、実験例C28で調製した菌体0.6gを添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表34及び
図18に示した。
【0294】
【表34】
【0295】
(実験例C33)
六重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
配列表の配列番号175と配列番号176に示した2種のプライマーを用いてpSFAPm78を鋳型としてPCRを行い、89番目のセリンをグリシンに置換したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子をコードするプラスミドpSFAPm81、及び、作製したpSFAPm81で形質転換した大腸菌を作製した。作製したプラスミドを用いて実験例C8と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0296】
(実験例C34)
六重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム1.25g、2−デオキシリボース0.75gを含む水溶液5gに、実験例C30で調製した菌体のうちpSFAPm78を用いて調製した菌体、及び、実験例C33で調製した菌体0.2gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表35及び
図15に示した。
【0297】
【表35】
【0298】
(実験例C35)
131番目に変異を導入した七重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
131番目が目的のアミノ酸残基に置換されるようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いて、pSFAPm81を鋳型としてPCRを行い、七重変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表36に示した。これら作製したプラスミドを用いて実験例C8と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【表36】
【0299】
(実験例C36)
七重変異を導入したShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム1.25g、2−デオキシリボース0.75g(東京化成製)を含む水溶液5gに、実験例C33で調製した菌体、及び、実験例C35で調製した菌体0.2gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表37及び
図16に示した。
【0300】
【表37】
【0301】
(実験例C37)
Shigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌の作製
実験例C1で作製したpSFAPを鋳型として、目的のアミノ酸残基に変異が入るようにデザインしたフォワード及びリバースプライマーを用いてPCRを行い、変異が導入されたShigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を発現する大腸菌を作製した。作製したプラスミドと導入した変異点、及び、その作製の際に用いたプライマーを表38に示した。
これら作製したプラスミドを用いて実験例C1と同様にして菌体を調製し、反応に供した。
【0302】
【表38】
【0303】
(実験例C38)
Shigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼを用いた2−デオキシリボースからの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成
酸性ピロリン酸ナトリウム2.5g、2−デオキシリボース1.0g(東京化成製)を含む水溶液10gに、実験例C37で調製した菌体0.5gをそれぞれ添加して10℃で反応させた。生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量した結果を表39及び
図17に示した。
【0304】
【表39】
【0305】
(実験例C39)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液中のリン酸除去
実験例C32に従い合成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液100gに、冷却した状態で攪拌しながら水酸化マグネシウムを少しずつ添加してpHを9.0にした。ろ過後、水溶液中の2−デオキシリボース−5−リン酸エステル量をHPLCで分析した結果、7.8gの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが含まれていた。
【0306】
(実験例C40)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの精製
陽イオン交換樹脂MDS1368(LANXESS製)3Lを充填したカラムに、実験例C32に従い合成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液2470gを通液させて分画した。pH1以下の分画サンプルを集めたところ、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルは260g含まれていた。溶液中のナトリウムイオン濃度は、陽イオン交換樹脂通液前が3.78wt%、通液後が0.06wt%だった。
【0307】
(実験例C41)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液中のリン酸除去
実験例C40に従い合成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液1500gを冷却しながら攪拌し、そこへ水酸化マグネシウム110gを少しずつ添加した。添加後、25℃に上げて4時間攪拌した。その液を濾過した後、水溶液中の2−デオキシリボース−5−リン酸エステル量をHPLCで分析した結果、100gの2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが含まれていた。溶液中のリン酸濃度は、水酸化マグネシウム処理前が5.9wt%、処理後が0.2wt%だった。
【0308】
(実験例C42)
dR5P水溶液の安定性
実験例C41に従い調製した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液を20〜60℃に保持し、48時間後に水溶液中に存在する2−デオキシリボース−5−リン酸エステルをHPLCで定量して求めた残存率を表40に示した。
【0309】
【表40】
【0310】
(参考例C1)
ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌の調製
LB broth(Difco製)に大腸菌MG1655を植菌して30℃で20時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。大腸菌MG1655由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 U00096)をもとに、配列表の配列番号13及び配列番号14に示した2種のプライマーを作製し、抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。その結果、約1.2kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/BamHI処理してpUC19に連結し、ホスホペントムターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌を作製した。作製した高発現株よりプラスミドを調製して塩基配列を解析した結果、大腸菌MG1655由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 U00096)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco)に作製した高発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
【0311】
(参考例C2)
Salmonella typhimurium由来ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌の調製
LB培地(Difco製)にSalmonella typhimurium LT2を植菌して30℃で20時間培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。Salmonella typhimurium LT2由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 AE008915)をもとに配列表の配列番号189及び配列番号190に示した2種のプライマーを作製し、抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。その結果、約1.2kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/XbaI処理してpUC19に連結し、ホスホペントムターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌を作製した。作製した高発現株よりプラスミドを調製して塩基配列を解析した結果、Salmonella typhimurium LT2由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 AE008915)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco)に作製した高発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。回収した菌体に硫酸マンガンを添加し、室温で30分攪拌したものを反応に供した。
【0312】
(参考例C3)
Thermus thermophilus由来ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌の調製
Castenholz TYE培地(Difco製)にThermus thermophilus ATCC BAA−163を植菌して70℃で20時間培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。Thermus thermophilus ATCC BAA−163由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号NC_005835)をもとに配列表の配列番号191及び配列番号192に示した2種のプライマーを作製し、抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。その結果、約1.2kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/HindIII処理してpUC19に連結し、ホスホペントムターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌を作製した。作製した高発現株よりプラスミドを調製して塩基配列を解析した結果、Thermus thermophilus ATCC BAA−163由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 NC_005835)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した高発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
【0313】
(参考例C4)
Bacillus subtilis由来ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌の調製
VY培地にBacillus subtilis ATCC 33677を植菌して30℃で20時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体よりDNeasy Tissue Kit(QIAGEN製)を用いてゲノムDNAを抽出した。Bacillus subtilis ATCC 33677由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 U32685)をもとに配列番号193及び配列番号194に示した2種のプライマーを作製し、抽出したゲノムDNAを鋳型としてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。その結果、約1.2kbの増幅断片が得られた。得られた断片をEcoRI/XbaI処理してpUC19に連結し、ホスホペントムターゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを作製した。このプラスミドを用いて大腸菌DH5α株を形質転換して、ホスホペントムターゼ遺伝子を高発現する大腸菌を作製した。作製した高発現株よりプラスミドを調製して塩基配列を解析した結果、Bacillus subtilis ATCC 33677由来ホスホペントムターゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 U32685)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した高発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって菌体を回収して反応に供した。
【0314】
(参考例C5)
チミジンホスホリラーゼ遺伝子を高発現する大腸菌の調製
配列表の配列番号15及び配列番号16に示した2種のプライマーを用いてPCRを行った以外は参考例C1と同様に操作を行い、チミジンホスホリラーゼ遺伝子を高発現する大腸菌を作製した。塩基配列を解析した結果、大腸菌MG1655由来チミジンホスホリラーゼ配列の公知情報(Genbank受け入れ番号 NP_418799)と同一であることを確認した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した高発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって回収した菌体を反応に供した。
【0315】
(参考例C6)
プリンヌクレオシドホスホリラーゼ遺伝子を高発現する大腸菌の調製
配列番号17及び配列番号18に示した2種のプライマーを用いてPCRを行い、EcoRI/HindIIIで処理を行った以外は参考例C1と同様に操作を行い、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ遺伝子を高発現する大腸菌を作製した。70μg/mlのアンピシリンを含むLB broth(Difco製)に作製した高発現株を植菌して37℃で15時間通気攪拌培養を行い、遠心分離によって回収した菌体を反応に供した。
【0316】
(実験例C43)
チミジン合成
実験例C39で得られた2−デオキシリボース−5−リン酸エステル2.3gを含む水溶液にチミン1.1g、硫酸マンガン・一水和物0.02g、水酸化マグネシウム0.50g、塩化マグネシウム・6水和物1.7gを添加して40gに調製し、参考例C1、参考例C2、参考例C3又は参考例C4で調製した菌体0.40g及び、参考例C5で調製した菌体0.20gをそれぞれ添加して40℃で20時間反応させた。生成したチミジンをHPLCで分析した結果を表41に示した。
【0317】
【表41】
【0318】
(実験例C44)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルからのチミジン合成
実験例C39で得られた2−デオキシリボース−5−リン酸エステル2.3gを含む水溶液にチミン1.1g、硫酸マンガン・一水和物0.02g、水酸化マグネシウム1.0gを添加して40gに調製し、参考例C1、参考例C2、参考例C3又は参考例C4で調製した菌体0.40g及び参考例5で調製した菌体0.20gをそれぞれ添加して40℃で20時間反応させた。生成したチミジンをHPLCで分析した結果、0.23gのチミジンが生成した。
【0319】
(実験例C45)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルからの2'−デオキシヌクレオシド合成
実験例C39で得られた2−デオキシリボース−5−リン酸エステル2.9gを含む水溶液に硫酸マンガン・一水和物0.02g、水酸化マグネシウム0.63g、塩化マグネシウム・6水和物2.2gを添加後、アデニンもしくはグアニン1.5gを添加して40gに調製し、参考例C1で調製した菌体0.77g及び参考例C6で調製した菌体0.20gをそれぞれ添加して50℃で22時間反応させた。生成した2'−デオキシヌクレオシドをHPLCで分析した結果を表42に示した。
【0320】
【表42】
【0321】
(実験例C46)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルからのチミジン合成
実験例C41に従い合成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル2.34gを含む水溶液にチミン1.1g、硫酸マンガン・一水和物0.02g、水酸化マグネシウム1.2gを添加して42gに調製し、参考例C1で調製した菌体0.4g及び参考例C5で調製した菌体0.3gをそれぞれ添加して、40℃で8時間反応させた。生成したチミジンをHPLCで分析した結果、1.9gのチミジンが生成した。
【0322】
(実験例C47)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルからのチミジン合成
実験例C41に従い合成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル12.5gを含む水溶液にチミン6.4g、硫酸マンガン・一水和物0.14gを添加して150gに調製し、参考例C2で調製した菌体4.2g及び参考例C5で調製した菌体1.2gをそれぞれ添加した。反応液のpHが7.5〜9.0の範囲になるように水酸化カルシウム適宜添加しながら27℃で6時間反応させた。生成したチミジンをHPLCで分析した結果、12.7gのチミジンが生成した。
【0323】
(実験例C48)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルからのチミジン合成反応
実験例C39に従い合成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステル14.1gを含む水溶液にチミン6.6g、硫酸マンガン・一水和物0.12g、水酸化マグネシウム2.88g、硫酸マグネシウム・一水和物7.52gを添加して150gに調製し、参考例C1で調製した菌体2.4g及び参考例C5で調製した菌体1.2gをそれぞれ添加した。それぞれ添加して40℃で20時間反応させた。生成したチミジンをHPLCで分析した結果、11.5gのチミジンが生成した。
【0324】
(実験例C49)
2−デオキシリボース−5−リン酸エステル水溶液中のリン酸除去
実験例C40に従い合成した2―デオキシリボース―5―リン酸エステル水溶液400gを冷却しながら攪拌し、そこへ水酸化マグネシウム25gおよび水酸化カルシウム2gを少しずつ添加した。添加後、15℃で4時間攪拌した。その液を濾過した後、水溶液中の2―デオキシリボース―5―リン酸エステル量をHPLCで分析した結果、23.9gの2―デオキシリボース―5―リン酸エステルが含まれていた。溶液中のリン酸濃度は、水酸化カルシウム/水酸化マグネシウム処理前が3.4wt%、処理後が0.2wt%だった。
【0325】
実験例C39、C41およびC49で調製した2―デオキシリボース―5―リン酸エステル水溶液をろ紙を引いて吸引濾過したところ、実験例41およびC49で調製した2―デオキシリボース―5―リン酸エステル水溶液は、実験例C39で調製した2―デオキシリボース―5―リン酸エステル水溶液よりも濾過速度が速く、処理時間を短縮できた。
【0326】
(実験例C50)
チミジン合成
実験例C35で作製したpSFAPm82、pSFAPm83、pSFAPm84を用いて形質転換した大腸菌をそれぞれ用いて、実験例C32、実験例C40、実験例C41、実験例C42、実験例C46、実験例C47、実験例C49と同様の操作を実施したところ、それぞれほぼ同等の結果が得られた。
【0327】
本発明の他の態様を以下に例示する。
第1の例
[1]2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を脱カルボキシル化反応に付する工程を含む、2−デオキシリボ−スの製造方法。
[2]二価金属が周期表第2族に属する金属から選択された少なくとも1種である、[1]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[3]周期表第2族に属する金属がカルシウム、ストロンチウム、バリウムから選択された少なくとも1種である、[2]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[4]脱カルボキシル化反応に付する前記工程において、酵素反応により2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の脱カルボキシル化反応を行う、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[5]脱カルボキシル化反応に付する前記工程における酵素反応が、ケト酸デカルボキシラ−ゼ活性を有する酵素により触媒される、[4]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[6]ケト酸デカルボキシラ−ゼ活性を有する前記酵素が、ベンゾイルホルメ−トデカルボキシラ−ゼである、[5]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[7]グルコン酸の二価金属塩を脱水反応に付する工程をさらに含み、
脱水反応に付する前記工程において、グルコン酸の二価金属塩から得られる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いて、脱カルボキシル化反応に付する前記工程を実行する、[1]乃至[6]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[8]脱水反応に付する前記工程と、脱カルボキシル化反応に付する前記工程とをワンポットで行う、[7]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[9]脱水反応に付する前記工程において、酵素反応によりグルコン酸の二価金属塩の脱水反応を行う、[7]又は[8]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[10]脱水反応に付する前記工程における前記酵素反応が、グルコン酸デヒドラタ−ゼ活性を有する酵素により触媒される、[9]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[11]グルコン酸デヒドラタ−ゼ活性を有する前記酵素が、Achromobacter xylosoxidansに由来する酵素である、[10]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[12]グルコン酸の二価金属塩が、D−グルコン酸の二価金属塩である、[7]〜[11]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[13]2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩が、2−デヒドロ−3−D−デオキシグルコン酸の二価金属塩である、[1]〜[12]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
【0328】
第2の例
[14]酵素反応により、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸またはその塩から2−デオキシリボ−スを製造する2−デオキシリボ−スの製造方法であって、
基質ポケットを形成するアミノ酸残基が野生型と比して少なくとも一つ以上変異している2−デオキシリボ−ス合成能を有する変異型酵素を使用することを特徴とする2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸またはその塩からの2−デオキシリボ−スの製造方法。
[15]前記変異型酵素が野生型のベンゾイルホルメ−トデカルボキシラ−ゼ(EC4.1.1.7)を変異させたものである、[14]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[16]前記変異型酵素が配列表の配列番号2で示す配列の281番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものである、[14]又は[15]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[17]前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン又はチロシンである、[16]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[18]前記変異型酵素を用いて2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩から2−デオキシリボ−スに変換する、[14]〜[17]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[19]二価金属が周期表第2族に属する二価金属から選択された少なくとも1つである、[18]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[20]グルコン酸デヒドラタ−ゼによりグルコン酸またはその塩を脱水して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸またはその塩を生成し、
得られる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸またはその塩から、前記酵素反応により、2−デオキシリボ−スを製造する、[14]〜[19]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[21]グルコン酸デヒドラタ−ゼがAchromobacter xylosoxidansに由来する酵素である[20]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[22]グルコン酸を出発物質とし、グルコン酸から2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸を生成する脱水反応、および2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸から2−デオキシリボ−スを生成する脱カルボキシル化反応をワンポット反応で行う[20]又は[21]に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法。
[23][14]〜[22]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−スの製造方法に用いる変異型2−デオキシリボ−ス合成酵素。
[24]2−デオキシリボ−ス合成能を有し、配列番号1〜3いずれかに記載のアミノ酸配列において、少なくとも1以上のアミノ酸から他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を持つことを特徴とする[23]記載の変異型2−デオキシリボ−ス合成酵素。
【0329】
第3の例
[25]酵素反応により、2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を製造する2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法であって、
2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1で示す配列の57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する変異型酵素を用いて前記酵素反応を実行し、
前記野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)及び(c)を有し、
前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結しているものであることを特徴とする2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]
[26]前記野生型酵素が野生型の酸性ホスファタ−ゼ(EC3.1.3.2)である、[25]に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[27]前記変異型酵素が、配列表の配列番号1の57番目に相当するアミノ酸をトレオニンに置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の68番目に相当するアミノ酸をアスパラギン酸に置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の89番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の122番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の126番目に相当するアミノ酸を脂肪族アミノ酸又は分岐鎖アミノ酸に置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の130番目に相当するアミノ酸をヒスチジンに置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の131番目に相当するアミノ酸をアスパラギン、フェニルアラニン又はイソロイシンに置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の136番目に相当するアミノ酸をフェニルアラニンに置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の171番目に相当するアミノ酸を酸性アミノ酸に置換したもの、かつ/又は、配列表の配列番号1の197番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものである、[25]又は[26]に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[28]前記脂肪族アミノ酸がグリシンであり、分岐鎖アミノ酸がバリン又はロイシンである、[27]に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[29]前記酸性アミノ酸がアスパラギン酸又はグルタミン酸である、[27]又は[28]に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[30]前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン又はチロシンである、[27]〜[29]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[31]前記変異型酵素を用いて2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルに変換する、[25]〜[30]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[32]グルコン酸デヒドラタ−ゼによりグルコン酸又はその塩を脱水して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を生成し、
2−デオキシリボ−ス合成酵素によって得られる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を脱炭酸して2−デオキシリボ−スを生成し、
得られる2−デオキシリボ−スに対して、前記酵素反応を実行して、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を製造する、[25]〜[31]いずれか1項に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[33]グルコン酸デヒドラタ−ゼがAchromobacter xylosoxidansに由来する酵素である[32]に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[34]2−デオキシリボ−ス合成酵素がPseudomonas putidaに由来する酵素である[32]又は[33]に記載の2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルの製造方法。
[35][25]〜[34]いずれか1項に記載の製造方法に用いる変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素。
[36]2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1の配列で示す57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有し、
前記野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)及び(c)を有し、
前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結しており、
前記変異は、前記アミノ酸配列(a)、(b)及び(c)を構成するアミノ酸の少なくとも1つが他のアミノ酸に置換されたものである変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]
【0330】
なお、実施例A1〜A10では、グルコン酸としてD−グルコン酸、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸として2−デヒドロ−3−デオキシ−D−グルコン酸、2−デオキシリボ−スとして2−デオキシ−D−リボースを用いる例を挙げて説明した。しかしながら、本発明の方法は、グルコン酸としてL−グルコン酸、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸として2−デヒドロ−3−デオキシ−L−グルコン酸、2−デオキシリボ−スとして2−デオキシ−L−リボースを使用する場合や、D体とL体とが混合したグルコン酸、D体とL体とが混合した2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸、D体とL体とが混合した2−デオキシリボ−スにも用いることができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 少なくとも下記(i)、(ii)及び(iii)のいずれか1つを実行することにより、2−デオキシリボースを経由して2'−デオキシヌクレオシドを製造する2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
(i)2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を酵素による脱カルボキシル化反応に付して2−デオキシリボ−スを合成する;
(ii)基質ポケットを形成するアミノ酸残基が野生型と比して少なくとも一つ以上変異している2−デオキシリボ−ス合成能を有する変異型酵素を使用して、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩から2−デオキシリボ−スを合成する;
(iii)2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1で示す配列の57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する変異型酵素を使用して2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成し、
前記野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)を有し、前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結し、前記アミノ酸配列(c)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(b)とアミノ酸配列(d)とを連結している。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]
2. 2−デオキシリボースを出発物質又は中間体とし、複数の酵素反応を実行して2'−デオキシヌクレオシドを製造する、1.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
3. 前記2'−デオキシヌクレオシドがチミジンである、1.又は2.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
4. 少なくとも前記(i)を実行する、1.乃至3.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
5. 前記(i)を実行するとき使用する2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩が、周期表第2族に属する金属から選択された少なくとも1種の二価金属の塩である、4.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
6. 前記周期表第2族に属する金属が、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、5.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
7. 前記(i)で示す脱カルボキシル化反応が、ケト酸デカルボキシラ−ゼ活性を有する酵素により触媒される、1.乃至6.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
8. ケト酸デカルボキシラ−ゼ活性を有する前記酵素が、ベンゾイルホルメ−トデカルボキシラ−ゼである、7.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
9. グルコン酸の二価金属塩を脱水反応に付する工程をさらに含み、
脱水反応に付する前記工程において、グルコン酸の二価金属塩から得られる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩を用いて、脱カルボキシル化反応に付する前記(i)を実行する、1.乃至8.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
10. 少なくとも前記(ii)を実行する、1.乃至9.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
11. 前記(ii)で使用する前記変異型酵素が野生型のベンゾイルホルメ−トデカルボキシラ−ゼ(EC4.1.1.7)を変異させたものである、1.乃至10.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
12. 前記(ii)で使用する前記変異型酵素が、配列表の配列番号2で示す配列の281番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものである、1.乃至11.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
13. 前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン又はチロシンである、12.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
14. 少なくとも前記(iii)を実行する、1.乃至13.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
15. 前記(iii)で示す前記野生型酵素が野生型の酸性ホスファタ−ゼ(EC 3.1.3.2)である、1.乃至14.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
16. 前記(iii)で使用する前記変異型酵素が、配列表の配列番号1で示す配列の57番目に相当するアミノ酸をトレオニンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の68番目に相当するアミノ酸をアスパラギン酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の89番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の122番目に相当するアミノ酸をグリシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の126番目に相当するアミノ酸を脂肪族アミノ酸又は分岐鎖アミノ酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の130番目に相当するアミノ酸をヒスチジンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の131番目に相当するアミノ酸をアスパラギン、フェニルアラニン又はイソロイシンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の136番目に相当するアミノ酸をフェニルアラニンに置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の171番目に相当するアミノ酸を酸性アミノ酸に置換したもの、及び/又は、配列表の配列番号1で示す配列の197番目に相当するアミノ酸を芳香族アミノ酸に置換したものである、1.乃至15.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
17. 前記脂肪族アミノ酸がグリシンであり、分岐鎖アミノ酸がバリン又はロイシンである、16.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
18. 前記酸性アミノ酸がアスパラギン酸又はグルタミン酸である、16.又は17.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
19. 前記芳香族アミノ酸がフェニルアラニン又はチロシンである、16.乃至18.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
20. Pseudomonas属に由来する2−デオキシリボ−ス合成酵素を用いて、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩から2−デオキシリボ−スを合成する、1.乃至19.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
21. グルコン酸又はその塩を脱水反応に付して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を得る工程をさらに含み、得られた2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を用いて2−デオキシリボ−スを合成する、1.乃至20.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
22. グルコン酸又はその塩を脱水反応に付して2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を得る前記工程において、前記脱水反応を酵素反応により実行する、21.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
23. 脱水反応に付する前記工程における前記酵素反応が、グルコン酸デヒドラタ−ゼ活性を有する酵素により触媒される、22.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
24. グルコン酸デヒドラタ−ゼ活性を有する前記酵素が、Achromobacter xylosoxidansに由来する酵素である、23.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
25. 前記脱水反応と、前記脱水反応により得られる2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸又はその塩を用いて2−デオキシリボ−スを合成する反応とをワンポットで行う、22.乃至24.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
26. 2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、リン酸転移酵素及びヌクレオシド合成酵素を用いて、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成する、1.乃至25.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
27. 前記ヌクレオシド合成酵素がヌクレオシドホスホリラ−ゼである、26.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
28. 前記ヌクレオシド合成酵素が、チミジンホスホリラ−ゼ(EC2.4.2.4)、ウリジンホスホリラ−ゼ(EC2.4.2.3)及びプリンヌクレオシドホスホリラ−ゼ(EC2.4.2.1)からなる群から選択される少なくとも1種である、26.又は27.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
29. 前記リン酸転移酵素がホスホペントムタ−ゼである、26.乃至28.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
30. 2−デオキシリボ−スと、ピロリン酸又はその塩とを反応させることにより、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成し、得られる2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩から2'−デオキシヌクレオシドを合成する、1.乃至29.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
31. 2−デオキシリボ−スに酸性ピロリン酸ナトリウムを作用させて、2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルナトリウムを合成し、得られた2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルを含む反応終了物から、前記酸性ピロリン酸ナトリウムに由来するナトリウムイオンが除去されていないとき、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルナトリウムとナトリウムイオンとを含む粗精製物を用いてpH調整剤によってpHを調整しながら2'−デオキシヌクレオシドを製造する、30.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
32. 前記pH調整剤が二価金属塩である、31.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
33. 前記二価金属塩が硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム又はこれらの混合物である、32.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
34. 2−デオキシリボ−スから2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルナトリウムを合成する反応の反応生成物から、前記ピロリン酸ナトリウムに由来するナトリウムイオンを除去されたとき、得られる2−デオキシリボ−ス−5−リン酸ナトリウムを用いた2'−デオキシヌクレオシドを合成する反応において、前記pH調整剤によるpHの調整を実行しない、31.乃至33.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
35. 2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルナトリウムから2'−デオキシヌクレオシドを合成する前記反応を行う前に、陽イオン交換樹脂を用いて前記反応生成物からナトリウムイオンを除去する、34.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
36. 2−デオキシリボ−スに対して過剰のピロリン酸又はその塩を用いて2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を合成したとき、二価金属の水酸化物を用いて、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステルを含む水溶液から、前記ピロリン酸又はその塩に由来するリン酸を沈殿により除去し、得られる2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル又はその塩を用いて2'−デオキシヌクレオシドを合成する、30.乃至35.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
37. 前記二価金属の水酸化物が水酸化マグネシウム又は水酸化カルシウムである、36.に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法。
38. 1.乃至37.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法に用いる、変異型2−デオキシリボ−ス合成酵素。
39. 2−デオキシリボ−ス合成能を有し、配列表の配列番号2乃至4いずれかに示す配列において、少なくとも1以上のアミノ酸から他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を持つことを特徴とする38.記載の変異型2−デオキシリボ−ス合成酵素。
40. 1.乃至37.いずれか1項に記載の2'−デオキシヌクレオシドの製造方法に用いる、変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素。
41. 2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有する野生型酵素に対して少なくとも配列表の配列番号1で示す配列の57番目、68番目、89番目、122番目、126番目、130番目、131番目、136番目、171番目及び197番目のいずれかに相当するアミノ酸の1つ以上の変異を含み、かつ、2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成能を有し、
前記野生型酵素は、下記のアミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)を有し、前記野生型酵素において、前記アミノ酸配列(b)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(a)とアミノ酸配列(c)とを連結し、前記アミノ酸配列(c)は、少なくとも1以上のアミノ酸を介して、アミノ酸配列(b)とアミノ酸配列(d)とを連結している変異型2−デオキシリボ−ス−5−リン酸エステル合成酵素。
(a)GSIXFLNDQAMYEXGR
(b)DAOL(A/S)XGGVAXXFSXAFGJPI
(c)KLLTNMIEDAGDLATR(S/G)AKBXYMRIRPFAFYG
(d)NGSYPSGHTXIGWAJALVLXEUNPXXQOXILKRGYZLGXSRVICGYHWQSDVDAAR
[アミノ酸配列(a)、(b)、(c)及び(d)中、Bは、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Jは、セリン、トレオニン又はチロシンであり、Uは、バリン、ロイシン又はイソロイシンであり、Oは、アスパラギン酸又はアスパラギンであり、Zは、グルタミン酸又はグルタミンであり、Xは任意のアミノ酸である。アミノ酸配列(b)中、A/Sは、アラニン又はセリンであることを示し、(c)中、S/Gは、セリン又はグリシンであることを示す。]