特許第6258462号(P6258462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6258462二酸化チタン粉体およびそれを配合した化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6258462
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】二酸化チタン粉体およびそれを配合した化粧料
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/04 20060101AFI20171227BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20171227BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20171227BHJP
   C01G 23/047 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   C01G23/04 B
   A61K8/29
   A61Q1/12
   C01G23/047
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-250069(P2016-250069)
(22)【出願日】2016年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-119622(P2017-119622A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2016年12月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-254315(P2015-254315)
(32)【優先日】2015年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】秦 英夫
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−245228(JP,A)
【文献】 特開平07−138021(JP,A)
【文献】 特開2010−173863(JP,A)
【文献】 特開平04−214030(JP,A)
【文献】 特表2010−536689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/04
A61K 8/29
A61Q 1/12
C01G 23/047
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)〜(c)を満たす粒子表面に針状突起を有するルチル型二酸化チタンを焼成して得られるルチル型二酸化チタン粉体であって、見かけ上の平均粒子径が100〜500nm、X線回折法で測定される平均結晶子径が15〜30nm、比表面積が10〜30m2/gであることを特徴とする二酸化チタン粉体。
(a)見かけ上の平均粒子径が100〜600nm
(b)X線回折法で測定される平均結晶子径が1〜25nm
(c)比表面積が40〜200m2/g
【請求項2】
X線回折法で測定される平均結晶子径が15〜30nm、比表面積が10〜30m2/gであって、450nmの反射率の値が、650nmの反射率の値の1.3倍以上であり、色差(ΔE)が20以下であることを特徴とする請求項1記載の二酸化チタン粉体。
なお、色差(ΔE)は、二酸化チタン粉体を5%の濃度になるようにニトロセルロースラッカーに分散混合し、得られた分散物を白黒の隠蔽率試験紙JIS−K5400上に0.101μmの膜厚で塗布・乾燥して試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを分光測色機にて、白と黒紙上の塗膜表面をそれぞれ測色した。Hunter Lab色空間における、色差(ΔE)を算出した。
【請求項3】
請求項1または2記載の二酸化チタン粉体を含むことを特徴とする化粧料。
【請求項4】
下記の(a)〜(c)を満たす粒子表面に針状突起を有するルチル型二酸化チタンを焼成する工程を含む二酸化チタン粉体の製造方法であって、見かけ上の平均粒子径が100〜500nm、X線回折法で測定される平均結晶子径が15〜30nm、比表面積が10〜30m2/gであることを特徴とする二酸化チタン粉体の製造方法。
(a)見かけ上の平均粒子径が100〜600nm
(b)X線回折法で測定される平均結晶子径が1〜25nm
(c)比表面積が40〜200m2/g
【請求項5】
請求項4に記載の二酸化チタン粉体の製造方法において、二酸化チタンの焼成温度が、500℃〜700℃であることを特徴とする二酸化チタン粉体の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の二酸化チタン粉体の製造方法において、二酸化チタンの焼成温度が、575℃〜660℃であることを特徴とする二酸化チタン粉体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二酸化チタン粉体に関し、特に、化粧料、塗料、触媒などの用途に好適に用いることができる二酸化チタン粉体およびそれを配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンは、屈折率が高く、白色度、隠蔽力、着色力に優れていることから、塗料、プラスチックなどの白色顔料として広く使用されている。また、二酸化チタンは、その粒子径または光活性度をコントロールすることにより、紫外線を遮蔽する物質として、紫外線吸収剤や紫外線遮蔽剤として化粧料や触媒などでの用途にも利用することが可能であることから、近年、これらの用途での研究開発が盛んに行われている。
【0003】
多数の二酸化チタンから形成されるマリモ状の特定平均一次粒子径の二酸化チタンの小球状粒子から形成される見掛け上の特定平均粒子径の二酸化チタン粉体を、化粧料に使用すれば、従来の二酸化チタンにはない良好な滑り性や優れた耐光性を付与することができる機能性材料になることが知られている。(特許文献1)。
また、平均粒径が0.2〜0.4μmで、平均摩擦係数(MIU値)が0.4〜0.6であるルチル型酸化チタン凝集粒子1〜15質量%と半固形油分1〜40質量%を含有する唇用化粧料が、ツヤがあり、唇のシワの目立ちを抑え、化粧持ちに優れていることが知られている(特許文献2)。
また、化粧料として用いられる色材として、可視光領域でも長波長側の光(波長630〜700nm)の吸収率の小さいものを配合することで、肌内部での光透過性が素肌と近くなり、自然な仕上がりを実現できることが知られている(特許文献3)。
【0004】
一方、二酸化チタンは、屈折率が高く肌のシミ等の隠蔽力が高い反面、隠ぺい力を高めるために多量に配合した場合、不自然な仕上がりとなり、肌上の凹凸は、素肌よりも目立たせてしまうことがある。これは、前述の通り、素肌には光透過性があり、肌内部からの光の散乱帰還が多いため、肌上の微少な凹凸には陰影が出来にくく、自然に見える。しかし、二酸化チタンは、その表面でより多くの光を反射してしまうため、肌内部への光の透過が抑制されてしまい、肌上の凹凸に陰影が出来てしまい、目立つことになる。
そのため、一般的な顔料酸化チタンに匹敵する隠ぺい力を有しながら、長波長側の光の透過性をより高めるように設計された酸化チタンの開発が望まれている。
【0005】
このように、光の長波長側の光の透過率を高めた酸化チタンとして、棒状粒子が束状に配向凝集した粒子形態で、配向凝集した粒子の見掛け平均長軸長80〜300nm、配向凝集した粒子の見掛け平均短軸長30〜150nm、見掛け平均長軸長/見掛け平均短軸長で表される見掛け平均軸比1.1〜4で、比表面積が120〜180m/gを示すルチル型酸化チタンである短冊状あるいは藁束状ルチル型酸化チタンが開発されており、透明性並びに紫外線遮蔽能とも高いことが知られている(特許文献4)。
しかし、この二酸化チタンは、棒状粒子の凝集体であり、二次凝集体中の空げきも多いことから、見かけの屈折率が低下してしまい、実際に化粧料に配合するには隠ぺい力が不十分であった。また、紫外線防御に目的の主眼が置かれているため、二次凝集体の見かけの粒子径も100nm未満であり、Mieの理論に基づく酸化チタンの散乱効果を最大化させる粒子径より明らかに小さいため、このことも隠ぺい力が小さい要因となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−191325号公報
【特許文献2】特開2010−24189号公報
【特許文献3】特開2006−265134号公報
【特許文献4】特開2010−173863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は前記従来技術に鑑み行われたものであり、その解決すべき課題は、隠蔽力を維持しつつ、長波長領域の光をより透過する機能(赤色光選択透過機能)に優れた二酸化チタンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが前述の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の二酸化チタンを焼成し、特定の粒子径、特定の結晶子径と、特定の比表面積とした二酸化チタンが、化粧料に求められる隠ぺい力を十分有しつつ、赤色光選択透過機能に優れたものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る二酸化チタン粉体は、粒子表面に針状突起を有するルチル型二酸化チタンを焼成して得られるルチル型二酸化チタン粉体であって、見かけ上の平均粒子径が100〜500nm、X線回折法で測定される平均結晶子径が15〜30nm、比表面積が10〜30m/gであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る二酸化チタン粉体は、X線回折法で測定される平均結晶子径が15〜30nm、比表面積が10〜30m/gであって、450nmの反射率の値が、650nmの反射率の値の1.3倍以上であり、色差(ΔE)が20以下であることを特徴とするルチル型二酸化チタン粉体であることを特徴とする。
なお、色差(ΔE)は、二酸化チタン粉体を5%の濃度になるようにニトロセルロースラッカーに分散混合し、得られた分散物を白黒の隠蔽率試験紙JIS−K5400上に0.101μmの膜厚で塗布・乾燥して試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを分光測色機にて、白と黒紙上の塗膜表面をそれぞれ測色した。Hunter Lab色空間における、色差(ΔE)を算出した。
【0011】
前記二酸化チタン粉体において、二酸化チタンの焼成温度が、500℃〜700℃であることが好適である。
前記二酸化チタン粉体において、二酸化チタンの焼成温度が、600℃〜700℃であることが好適である。
【0012】
前記二酸化チタン粉体において、450nmの反射率の値が、650nmの反射率の値の1.3倍以上であり、長波長側の光をより透過しやすいことが好適である。
前記二酸化チタン粉体を表面処理することが好適である。
【0013】
本発明に係る化粧料は、前記二酸化チタン粉体を配合することを特徴とする。
【0014】
本発明に係るルチル型二酸化チタン粉体の製造方法は、粒子表面に針状突起を有するルチル型二酸化チタンを焼成する工程を含むルチル型二酸化チタン粉体の製造方法であって、得られるルチル型二酸化チタン粉体が、見かけ上の平均粒子径が100〜500nm,X線回折法で測定される平均結晶子径が15〜30nm、比表面積が10〜30m/gであることを特徴とする。
前記二酸化チタン粉体の製造方法において、二酸化チタンの焼成温度が、500℃〜700℃であることが好適である。
【0015】
また、本発明に係る二酸化チタン粉体は、下記の(a)〜(c)を満たす粒子表面に針状突起を有するルチル型二酸化チタンを焼成して得られるルチル型二酸化チタン粉体であることが好ましい。
(a)見かけ上の平均粒子径が100〜600nm
(b)X線回折法で測定される平均結晶子径が1〜25nm
(c)比表面積が40〜200m2/g
【0016】
すなわち、本発明に係る二酸化チタン粉体は、
棒状もしくは針状粒子が配向凝集した粒子表面に針状突起を有するルチル型二酸化チタンを焼成して得られるルチル型二酸化チタン粉体であって、見かけ上の平均粒子径が100〜500nm、X線回折法で測定される平均結晶子径が15〜30nm、比表面積が10〜30m/gであることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、隠ぺい力を向上させつつ、赤色光選択透過機能に優れた二酸化チタン粉体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ルチル型顔料級酸化チタン(*1)と酸化チタンB(未焼成)および酸化チタンBを700、900℃で焼成したものの分光反射率を示す図である。
図2】TEM観察により焼成温度の二酸化チタンBの形状の変化を示す図である。
図3】ロータリーキルンでの焼成温度変化による酸化チタンBの隠蔽力の変化を示す図である。
図4】ロータリーキルンでの焼成温度変化による酸化チタンBの焼成温度変化による赤色透過性の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る二酸化チタン粉体は、棒状もしくは針状粒子が配向凝集した粒子表面に針状突起を有する二酸化チタンを500〜800℃、より好ましくは550〜750℃で焼成して得られる二酸化チタン粉体であって、X線回折法で測定される平均結晶子径が15〜30nm、二酸化チタンの見掛け上の平均粒子径が100〜500nm、より好ましくは200〜400nm、比表面積が10〜30m/gであることを特徴とする。
【0020】
(母核に用いる二酸化チタン)
母核に用いる二酸化チタンの結晶型は、結晶構造の違いから、アナターゼ型とルチル型がある。ここで本発明に用いる二酸化チタンの結晶型は、光触媒活性が低く、屈折率が高いため隠ぺい力が高いルチル型である必要がある。
【0021】
母核に用いるルチル型二酸化チタンは、赤色光透過機能を有する二酸化チタンが用いられる。母核に用いる二酸化チタンの見かけの平均粒子径は、特には限定されないが、焼成後に一般的に収縮現象が起こることを考慮すると、本発明で得られた二酸化チタンの散乱による隠ぺい力と優れた赤色透過機能を実現するという観点から、100〜600nm、より好ましくは200〜500nmであることが望ましい。
【0022】
母核に用いるルチル型二酸化チタンの形状としては、藁束状、短冊状、球状、針状、棒状等が挙げられる。
【0023】
母核に用いる二酸化チタンの比表面積は、特には限定さないが、焼成による効率的な見かけの屈折率向上の観点から40〜200m/gであることが望ましい。
【0024】
母核に用いるルチル型二酸化チタンは、特には限定されないが、X線回折法で測定される平均結晶子径が 1〜25nmであることが好ましい。
【0025】
母核に用いる二酸化チタンは、市販品でもよい。たとえば、チタン工業株式会社製 ST700シリーズが挙げられ、その中でも、ST710、ST730が挙げられる。
【0026】
(本発明の二酸化チタン粉体)
本発明の二酸化チタン粉体は、母核に用いる二酸化チタンを焼成することによって、得られる。
焼成温度は焼成を行う装置によって一概には定義できないが、焼成前に存在する棒状もしくは針状粒子が配向凝集した一次粒子にあって、棒状もしくは針状粒子間に存在する空げきを減らし、かつ、棒状もしくは針状粒子同士が焼結して、X線回折法で測定される平均結晶子径が過度に増大しない温度条件であることが望ましい。これにより、十分な隠ぺい力と赤色光選択透過機能の両立が可能となる。
【0027】
適切な焼成温度は、焼成装置によって異なるが、一般的な焼成炉であるマッフル炉やロータリーキルンで焼成した場合は、500〜800℃、より好ましくは550〜750℃の範囲で焼成することが望ましい。500℃を下回ると、焼成前に存在する空げきが十分減っていないために隠ぺい力が十分でなく、800℃を超えると、過度に焼結が進行し、赤色光選択透過機能が失われる。
【0028】
本発明の二酸化チタンはX線回折法で測定される平均結晶子径が15〜30nmであることが必要である。
上記結晶子径が15nm未満の場合は、十分な隠ぺい力が得られないという理由で好ましくない。また、30nmを超える場合は、焼結が進行し、十分な赤色光選択透過機能が失われるという点で好ましくない。
【0029】
また、本発明の二酸化チタン粉体は、見掛け上の平均粒子径が散乱による隠ぺい力と優れた赤色透過機能を効果的に実現するという観点から100〜500nm、より好ましくは200〜400nmであることが必要である。
【0030】
本発明の二酸化チタン粉体の比表面積は、得られた酸化チタン粒子の空隙率の低下と焼結の進行を示す指標であり、10〜30m/g、であることが必要である。10m/g未満であると、焼結が進行し、十分な赤色光選択透過機能が失われるという点で好ましくない。また、30m/gを超えると、空隙が過度に存在し、十分な隠ぺい力が達成できないという点で好ましくない。
【0031】
本発明の二酸化チタン粉体は、焼成後に、表面処理を行うこともできる。表面処理を行うことにより、粘度、油への分散性、撥水性に伴う化粧持ちを向上させつつ、使用性に優れた二酸化チタンを得ることができる。
【0032】
表面処理剤として使用できる無機物としては、例えば、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、チタニウム、ジルコニウム、鉄、セリウム及び錫等の金属の含水酸化物又は酸化物が挙げられる。これに用いられる前記金属塩は特に限定はない。
【0033】
表面処理剤として使用できる有機物としては、例えば、水酸化アルミニウムや酸化アルミニウムなどの金属酸化物、金属水酸化物で表面処理したのちに、親油性を付加するために、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸などの脂肪酸、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコン、アルキル(C8〜C18など)トリアルコキシシラン、アミノ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーンなどシリコーン化合物、パーフルオロアルキルアルキルリン酸塩などのフッ素化合物、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、ラウロイルリシン、ラウロイルグルタミネートなどのアミノ酸誘導体等が挙げられる。
【0034】
これらの表面処理剤は、二酸化チタン粉体に対して1〜10質量%であると、隠蔽力が高いため好ましい。
【0035】
本発明の二酸化チタン粉体は、化粧料、顔料、インク、塗料などに広く配合することができる。
【0036】
本発明の化粧料の剤型としては粉末状、粉末固形状、クリーム状、乳液状、ローション状、油性液状、油性固形状、ペースト状等のいずれの状態でも用いることができる。
【0037】
化粧料の用途としては、例えばメークアップベース、ファンデーション、コンシーラー、フェースパウダー、コントロールカラー、日焼け止め化粧料、口紅、リップクリーム、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、チークカラー、マニキュア、ボディーパウダー、パヒュームパウダー、ベビーパウダー等のメークアップ化粧料、スキンケア化粧料、ヘアケア化粧料等とすることができる。
【0038】
本発明の化粧料は、上記成分の他に、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲内で他の成分を配合することができる。例えば、油性成分、色素、pH調整剤、保湿剤、増粘剤、界面活性剤、分散剤、安定化剤、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、収斂剤、消炎剤、紫外線吸収剤、香料、その他の顔料等も、本発明の目的を達する範囲内で適宜配合することができる。
【実施例】
【0039】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた試験の評価方法について説明する。
【0040】
評価(1):平均結晶子径の測定方法
試料をX線回折装置(Geigerflex、理学電機社製)で測定し、シェラー式を適用することにより、平均結晶子径を算出した。
【0041】
評価(2):隠蔽力の評価
二酸化チタン粉体を5%の濃度になるようにニトロセルロースラッカーに分散混合し、得られた分散物を白黒の隠蔽率試験紙JIS−K5400上に0.101μmの膜厚で塗布・乾燥して試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを分光測色機(CM−2600、コニカミノルタ社製)にて、白と黒紙上の塗膜表面をそれぞれ測色した。Hunter Lab色空間における、色差(ΔE)を算出し、これを隠蔽力として評価した。なお、ΔEが高いほど、隠ぺい力が小さく、ΔEが低いほど、隠蔽力が高いことを示す。
ΔE=
(評価基準)
×:30<ΔE
△:25<ΔE≦30
○:20 <ΔE≦25
◎:ΔE≦20
【0042】
評価(3):赤色透過性の評価
赤色透過性とは、前述の隠ぺい力と同様に黒紙上での測定により得られる各波長での分光反射率のうち、波長が450nmにおける反射率と波長が650nmにおける反射率比(波長が450nmにおける反射率/650nmにおける平均反射率:R450/R650)を算出した。
R450/R650が高いほど、赤色透過性が高く、R450/R650が低いほどR450/R650が低いことを示す。
(評価基準)
×:R450/R650≦1.2
△:1.2<R450/R650≦1.3
○:1.3<R450/R650≦1.35
◎:1.35<R450/R650
◎◎:1.4<R450/R650
【0043】
評価(4):比表面積の測定方法
単位質量当たりの比表面積は、国際基準ISO 5794/1(付録D)に相当するThe Journal of the American Chemical Society、60巻、309頁、1938年2月に記載のBET(ブルナウアー-エメット-テラー)法として知られる窒素吸着法によって求めることができる。
【0044】
はじめに、本発明者らは、市販品として入手可能な顔料級のルチル型とアナターゼ型の酸化チタンを用いて、上記評価方法にて評価した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

*1:タイペーク CR−50(石原産業社製、見掛け上の平均粒子径:200nm、形状:不定形)
*2:バイエルチタンA(バイエル社製、見掛け上の平均粒子径:400nm、形状:不定形)
【0046】
ルチル型の顔料級酸化チタンとアナターゼ型の顔料級酸化チタンは、いずれも赤色透過性が低かった。また、これらを高温で焼成しても、赤色透過性は低かった。
【0047】
本発明者らは、隠蔽力の高いルチル型酸化チタンを用いて、赤色透過性に優れるものを製造できないかについて検討を行った。
本発明者らは、特許文献4の手法を用いて、針状粒子が配向凝集した粒子表面に針状突起を有する粒径の異なる二酸化チタンを2種合成した。
得られた酸化チタンそれぞれを、酸化チタンA(見掛け上の平均粒子径:0.2〜0.3μm、針状突起形状)、酸化チタンB(見掛け上の平均粒子径:0.3μm、針状突起形状)と称する。
また、市販品(ST−730;チタン工業株式会社製)である粒子表面に針状突起を有する二酸化チタンを、酸化チタンC(見掛け上の平均粒子径:0.5μm、針状突起形状)と称する。
【0048】
各二酸化チタンを用いて、以下の方法により、二酸化チタン粉体を得た。得られた二酸化チタン粉末を、上記評価方法にて評価し、焼成前の二酸化チタンの種類と、焼成温度との関係について検討した。結果を表2〜表4に示す。
ルチル型顔料級酸化チタン(*1)および酸化チタンB(未焼成、焼成温度:700℃、900℃)の分光反射率を測定した結果を図1に示す。なお、測定は、二酸化チタン粉末を5%の濃度になるようにニトロセルロースラッカーに分散混合し、得られた分散物を白黒の隠蔽率試験紙JIS−K5400上に0.101μmの膜厚で塗布・乾燥して試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを分光測色機(CM−2600、コニカミノルタ社製)にて、黒紙上の塗膜表面をそれぞれ測色し、分光反射率を得た。
【0049】
(二酸化チタン粉体の製造方法)
二酸化チタン100gを石英製のるつぼに入れ、マッフル炉にて各温度で1時間焼成を行うことにより、二酸化チタン粉末を得た。
【0050】
酸化チタンA(見掛け上の平均粒子径:0.2〜0.3μm、針状突起形状)
【0051】
【表2】
【0052】
酸化チタンB(見掛け上の平均粒子径:0.3μm、針状突起形状)
【0053】
【表3】
【0054】
酸化チタンC(見掛け上の平均粒子径:0.5μm、針状突起形状)
【0055】
【表4】
【0056】
いずれも焼成温度を上昇させることで、隠ぺい力は向上した。温度の上昇に伴い、比表面積は減少していることから、粒子中に存在する空げきが減少していることがわかる。これが見かけの屈折率向上を引き起こして、隠ぺい力が向上している。しかし、赤色透過性は徐々に減少していった。特に高温で焼成すると完全に焼結が起こり、当初の赤色透過性が著しく低下した。
特に、粒子径が大きい酸化チタンCについては、700℃で赤色透過性はほぼ失われていた。
【0057】
隠ぺい性の向上と赤色透過性の維持の観点から許容できる温度幅が広いのは酸化チタンBであった。
【0058】
そこで、二酸化チタンBについて、未焼成のもの、焼成したもの(焼成温度:300℃、500℃、700℃、900℃)の写真を撮影した。結果を図2に示す。
また、二酸化チタンBについて、ロータリーキルンでの焼成温度変化による隠蔽力、赤色透過性を測定した。結果を、それぞれ図3図4に示す。
【0059】
以上の結果から、マッフル炉で焼成した場合は、適切な温度範囲は500〜800℃、特に500〜700℃がより望ましい。
【0060】
次に、本発明者らは、酸化チタンBを母核にして、細かく500℃〜800℃の範囲で焼成温度を検討した。すなわち、本発明者は、焼成温度を変化させた二酸化粉体を上記評価方法にて評価した。結果を表5、表6に示す。
【0061】
焼成はより量産に近く、焼成効率の高い、回転式焼成炉(ロータリーキルン)で行った。
一般的に回転式焼成炉は焼成効率が高く、静置で焼成するマッフル炉で焼成した場合よりも低い温度で同様の焼成状態を得ることができることが知られている。
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
これらの結果より、隠蔽力および赤色透過性に優れているのは、焼成温度が、550〜700℃であることが好ましく、575〜660℃であることがより好ましいことが分かった。
【0065】
さらに、本発明者は、表6の焼成温度660℃で得られた本発明の二酸化チタンを用いて、下記の表面処理の方法で得られた疎水化処理二酸化チタンを配合した粉末化粧料および油中水型乳化化粧料を、それぞれ常法で調整した。そして、得られた化粧料を下記評価方法で評価した。粉末化粧料および油中水型乳化化粧料の結果を、それぞれ表7、表8に示す。
【0066】
(二酸化チタン粉体の表面処理方法)
得られた二酸化チタン粉体をイオン交換水に分散させ、加温したのち、ステアリン酸を3質量%吸着させ、その後脱水・洗浄・乾燥させることで表面処理二酸化チタンを得た。
【0067】
評価(5):シミ・そばかすのカバー
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布後の使用感を評価した。
◎:パネル10名中9名以上がシミ・そばかすがカバーされていると回答した。
○:パネル10名中7名以上9名未満がシミ・そばかすがカバーされていると回答した。
△:パネル10名中5名以上7名未満がシミ・そばかすがカバーされていると回答した。
×:パネル10名中5名未満がシミ・そばかすがカバーされていると回答した。
【0068】
評価(6):毛穴の目立ちのなさ
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布後の使用感を評価した。
◎:パネル10名中9名以上が毛穴が目立たないと回答した。
○:パネル10名中7名以上9名未満が毛穴が目立たないと回答した。
△:パネル10名中5名以上7名未満が毛穴が目立たないと回答した。
×:パネル10名中5名未満が毛穴が目立たないと回答した。
【0069】
評価(7):自然な仕上がり
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布後の使用感を評価した。
◎:パネル10名中9名以上が自然な仕上がりであると回答した。
○:パネル10名中7名以上9名未満が自然な仕上がりであると回答した。
△:パネル10名中5名以上7名未満が自然な仕上がりであると回答した。
×:パネル10名中5名未満が自然な仕上がりであると回答した。
【0070】
評価(8):粉っぽさのなさ
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布後の使用感を評価した。
◎:パネル10名中9名以上が粉っぽくないと回答した。
○:パネル10名中7名以上9名未満が粉っぽくないと回答した。
△:パネル10名中5名以上7名未満が粉っぽくないと回答した。
×:パネル10名中5名未満が粉っぽくないと回答した。
【0071】
粉末化粧料
【0072】
【表7】
【0073】
油中水型乳化化粧料
【0074】
【表8】
【0075】
表7、8の通り、一般的な顔料級二酸化チタンを配合しても、カバー力があるものの毛穴が目立ち、自然な仕上がりにかけていた。
一方、本発明にかかる二酸化チタン粉体を配合した場合、カバー力がありながら、毛穴も目立たず、自然な仕上がりも実現できた。さらに、配合量を増やしても、さらにカバー力がありながら、毛穴も目立たず、自然な仕上がりも実現できた。また、仕上がりの粉っぽさのなさもなかった。
【0076】
以下に本発明の二酸化チタンを配合した化粧料の処方例とその製法を例示する。
【0077】
〔両用パウダリーファンデーション〕
(処方) (質量%)
ジメチコン処理タルク(*1) To 100
シリコーン処理セリサイト 5
合成フッ素金雲母(*2) 10
合成フッ素金雲母鉄 10
窒化ホウ素(*3) 3
ステアリン酸アルミ処理二酸化チタン(本発明) 10
ジメチコン処理微粒子二酸化チタン 6
ジメチコン処理ベンガラ 0.8
ジメチコン処理黄酸化鉄 3
ジメチコン処理黒酸化鉄 0.2
シリコーンエラストマー球状粉末 (*4) 5
シリコーンレジン被服シリコーンエラストマー球状粉末(*5) 5
ジメチコン(6cs) 3
メチルフェニルポリシロキサン 2
トリオクタノイン 1
ソルビタンセスキイソステアレート 1
オクチルメトキシシンナメート 3
オクトクリレン 2
防腐剤 0.1
酸化防止剤 0.01
香料 0.01
【0078】
*1 三好化成工業株式会社 SA-タルクJA68R
*2 トピー工業株式会社 PDM-9WA
*3 メルク株式会社 RonaFlair Boroneige SF-12
*4 東レダウコーニング トレフィルE506S
*5 信越化学工業株式会社 KSP100
【0079】
〔製法〕
粉末・防腐剤と80℃に加温した油分・酸化防止剤・香料をヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕した後、得られた粉末を樹脂中皿に乾式プレス成型し、両用パウダリーファンデーションを得た。
【0080】
〔ルース状ファンデーション〕
(処方) (質量%)
マグネシウムミリステート処理タルク To 100
マイカ 20
シリコーン処理合成フッ素金雲母 20
窒化ホウ素(*6) 5
オキシ塩化ビスマス(*7) 3
二酸化チタン(本発明) 8
酸化亜鉛 3
ステアリン酸処理微粒子二酸化チタン 6
球状シリコーン粉末(*8) 3
球状シリカ 3
球状ポリウレタン末(*9) 3
シリコーンレジン被服シリコーンエラストマー球状粉末(*5) 3
シリコーン処理ベンガラ 0.6
シリコーン処理黄酸化鉄 2
シリコーン処理黒酸化鉄 0.2
ジメチコン6cs 1
オクタン酸セチル 1
オクチルメトキシシンナメート 2
防腐剤 0.2
酸化防止剤 0.05
香料 0.05
【0081】
*6 メルク株式会社 RonaFlair Boroneige SF-12
*7 メルク株式会社 RonaFlair LF-2000
*8 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 トスパール145A
*9 東色ピグメント株式会社 プラスティックパウダーD-400
【0082】
〔製法〕
粉末・防腐剤と80℃に加温した油分・酸化防止剤・香料をヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕し、ルース状ファンデーションを得た。
【0083】
(油中水型乳化ファンデーション)
(処方) (質量%)
油相
デカメチルシクロペンタシロキサン 15
ジメチコン(1.5cs) 10
メチルフェニルポリシロキサン 3
トリオクタノイン 2
オクチルメトキシシンナメート 5
ポリオキシアルキレン変性シリコーン(*10) 2
ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーン(*11) 2
有機変性ヘクトライト 1
粉末
オクチルトリエトキシシラン処理二酸化チタン(本発明) 10
ステアリン酸処理微粒子二酸化チタン 5
ジメチコン処理ベンガラ 0.4
ジメチコン処理黄酸化鉄 1.5
ジメチコン処理黒酸化鉄 0.1
球状ナイロン末 5
水相
イオン交換水 To 100
グリセリン 5
エタノール 3
1,3-ブチレングリコール 5
フェノキシエタノール 0.5
【0084】
*10信越化学工業株式会社 KF6017
*11信越化学工業株式会社 KF6038
【0085】
〔製法〕
油相部に有機変性ヘクトライトを加えて、ホモジナイザーで1分間混合後、粉末部を添加し、さらにホモジナイザーにて1分混合した後、溶解させた水相部を添加して、さらにホモジナイザーで1分間混合・乳化させることで油中水型乳化ファンデーションを得た。
図1
図2
図3
図4