【実施例】
【0039】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれにより限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
実施例の説明に先立ち本発明で用いた試験の評価方法について説明する。
【0040】
評価(1):平均結晶子径の測定方法
試料をX線回折装置(Geigerflex、理学電機社製)で測定し、シェラー式を適用することにより、平均結晶子径を算出した。
【0041】
評価(2):隠蔽力の評価
二酸化チタン粉体を5%の濃度になるようにニトロセルロースラッカーに分散混合し、得られた分散物を白黒の隠蔽率試験紙JIS−K5400上に0.101μmの膜厚で塗布・乾燥して試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを分光測色機(CM−2600、コニカミノルタ社製)にて、白と黒紙上の塗膜表面をそれぞれ測色した。Hunter Lab色空間における、色差(ΔE)を算出し、これを隠蔽力として評価した。なお、ΔEが高いほど、隠ぺい力が小さく、ΔEが低いほど、隠蔽力が高いことを示す。
ΔE=
(評価基準)
×:30<ΔE
△:25<ΔE≦30
○:20 <ΔE≦25
◎:ΔE≦20
【0042】
評価(3):赤色透過性の評価
赤色透過性とは、前述の隠ぺい力と同様に黒紙上での測定により得られる各波長での分光反射率のうち、波長が450nmにおける反射率と波長が650nmにおける反射率比(波長が450nmにおける反射率/650nmにおける平均反射率:R450/R650)を算出した。
R450/R650が高いほど、赤色透過性が高く、R450/R650が低いほどR450/R650が低いことを示す。
(評価基準)
×:R450/R650≦1.2
△:1.2<R450/R650≦1.3
○:1.3<R450/R650≦1.35
◎:1.35<R450/R650
◎◎:1.4<R450/R650
【0043】
評価(4):比表面積の測定方法
単位質量当たりの比表面積は、国際基準ISO 5794/1(付録D)に相当するThe Journal of the American Chemical Society、60巻、309頁、1938年2月に記載のBET(ブルナウアー-エメット-テラー)法として知られる窒素吸着法によって求めることができる。
【0044】
はじめに、本発明者らは、市販品として入手可能な顔料級のルチル型とアナターゼ型の酸化チタンを用いて、上記評価方法にて評価した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
*1:タイペーク CR−50(石原産業社製、見掛け上の平均粒子径:200nm、形状:不定形)
*2:バイエルチタンA(バイエル社製、見掛け上の平均粒子径:400nm、形状:不定形)
【0046】
ルチル型の顔料級酸化チタンとアナターゼ型の顔料級酸化チタンは、いずれも赤色透過性が低かった。また、これらを高温で焼成しても、赤色透過性は低かった。
【0047】
本発明者らは、隠蔽力の高いルチル型酸化チタンを用いて、赤色透過性に優れるものを製造できないかについて検討を行った。
本発明者らは、特許文献4の手法を用いて、針状粒子が配向凝集した粒子表面に針状突起を有する粒径の異なる二酸化チタンを2種合成した。
得られた酸化チタンそれぞれを、酸化チタンA(見掛け上の平均粒子径:0.2〜0.3μm、針状突起形状)、酸化チタンB(見掛け上の平均粒子径:0.3μm、針状突起形状)と称する。
また、市販品(ST−730;チタン工業株式会社製)である粒子表面に針状突起を有する二酸化チタンを、酸化チタンC(見掛け上の平均粒子径:0.5μm、針状突起形状)と称する。
【0048】
各二酸化チタンを用いて、以下の方法により、二酸化チタン粉体を得た。得られた二酸化チタン粉末を、上記評価方法にて評価し、焼成前の二酸化チタンの種類と、焼成温度との関係について検討した。結果を表2〜表4に示す。
ルチル型顔料級酸化チタン(*1)および酸化チタンB(未焼成、焼成温度:700℃、900℃)の分光反射率を測定した結果を
図1に示す。なお、測定は、二酸化チタン粉末を5%の濃度になるようにニトロセルロースラッカーに分散混合し、得られた分散物を白黒の隠蔽率試験紙JIS−K5400上に0.101μmの膜厚で塗布・乾燥して試験サンプルを得た。得られた試験サンプルを分光測色機(CM−2600、コニカミノルタ社製)にて、黒紙上の塗膜表面をそれぞれ測色し、分光反射率を得た。
【0049】
(二酸化チタン粉体の製造方法)
二酸化チタン100gを石英製のるつぼに入れ、マッフル炉にて各温度で1時間焼成を行うことにより、二酸化チタン粉末を得た。
【0050】
酸化チタンA(見掛け上の平均粒子径:0.2〜0.3μm、針状突起形状)
【0051】
【表2】
【0052】
酸化チタンB(見掛け上の平均粒子径:0.3μm、針状突起形状)
【0053】
【表3】
【0054】
酸化チタンC(見掛け上の平均粒子径:0.5μm、針状突起形状)
【0055】
【表4】
【0056】
いずれも焼成温度を上昇させることで、隠ぺい力は向上した。温度の上昇に伴い、比表面積は減少していることから、粒子中に存在する空げきが減少していることがわかる。これが見かけの屈折率向上を引き起こして、隠ぺい力が向上している。しかし、赤色透過性は徐々に減少していった。特に高温で焼成すると完全に焼結が起こり、当初の赤色透過性が著しく低下した。
特に、粒子径が大きい酸化チタンCについては、700℃で赤色透過性はほぼ失われていた。
【0057】
隠ぺい性の向上と赤色透過性の維持の観点から許容できる温度幅が広いのは酸化チタンBであった。
【0058】
そこで、二酸化チタンBについて、未焼成のもの、焼成したもの(焼成温度:300℃、500℃、700℃、900℃)の写真を撮影した。結果を
図2に示す。
また、二酸化チタンBについて、ロータリーキルンでの焼成温度変化による隠蔽力、赤色透過性を測定した。結果を、それぞれ
図3、
図4に示す。
【0059】
以上の結果から、マッフル炉で焼成した場合は、適切な温度範囲は500〜800℃、特に500〜700℃がより望ましい。
【0060】
次に、本発明者らは、酸化チタンBを母核にして、細かく500℃〜800℃の範囲で焼成温度を検討した。すなわち、本発明者は、焼成温度を変化させた二酸化粉体を上記評価方法にて評価した。結果を表5、表6に示す。
【0061】
焼成はより量産に近く、焼成効率の高い、回転式焼成炉(ロータリーキルン)で行った。
一般的に回転式焼成炉は焼成効率が高く、静置で焼成するマッフル炉で焼成した場合よりも低い温度で同様の焼成状態を得ることができることが知られている。
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
これらの結果より、隠蔽力および赤色透過性に優れているのは、焼成温度が、550〜700℃であることが好ましく、575〜660℃であることがより好ましいことが分かった。
【0065】
さらに、本発明者は、表6の焼成温度660℃で得られた本発明の二酸化チタンを用いて、下記の表面処理の方法で得られた疎水化処理二酸化チタンを配合した粉末化粧料および油中水型乳化化粧料を、それぞれ常法で調整した。そして、得られた化粧料を下記評価方法で評価した。粉末化粧料および油中水型乳化化粧料の結果を、それぞれ表7、表8に示す。
【0066】
(二酸化チタン粉体の表面処理方法)
得られた二酸化チタン粉体をイオン交換水に分散させ、加温したのち、ステアリン酸を3質量%吸着させ、その後脱水・洗浄・乾燥させることで表面処理二酸化チタンを得た。
【0067】
評価(5):シミ・そばかすのカバー
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布後の使用感を評価した。
◎:パネル10名中9名以上がシミ・そばかすがカバーされていると回答した。
○:パネル10名中7名以上9名未満がシミ・そばかすがカバーされていると回答した。
△:パネル10名中5名以上7名未満がシミ・そばかすがカバーされていると回答した。
×:パネル10名中5名未満がシミ・そばかすがカバーされていると回答した。
【0068】
評価(6):毛穴の目立ちのなさ
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布後の使用感を評価した。
◎:パネル10名中9名以上が毛穴が目立たないと回答した。
○:パネル10名中7名以上9名未満が毛穴が目立たないと回答した。
△:パネル10名中5名以上7名未満が毛穴が目立たないと回答した。
×:パネル10名中5名未満が毛穴が目立たないと回答した。
【0069】
評価(7):自然な仕上がり
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布後の使用感を評価した。
◎:パネル10名中9名以上が自然な仕上がりであると回答した。
○:パネル10名中7名以上9名未満が自然な仕上がりであると回答した。
△:パネル10名中5名以上7名未満が自然な仕上がりであると回答した。
×:パネル10名中5名未満が自然な仕上がりであると回答した。
【0070】
評価(8):粉っぽさのなさ
専門パネル10名が顔に試料を塗布し、塗布後の使用感を評価した。
◎:パネル10名中9名以上が粉っぽくないと回答した。
○:パネル10名中7名以上9名未満が粉っぽくないと回答した。
△:パネル10名中5名以上7名未満が粉っぽくないと回答した。
×:パネル10名中5名未満が粉っぽくないと回答した。
【0071】
粉末化粧料
【0072】
【表7】
【0073】
油中水型乳化化粧料
【0074】
【表8】
【0075】
表7、8の通り、一般的な顔料級二酸化チタンを配合しても、カバー力があるものの毛穴が目立ち、自然な仕上がりにかけていた。
一方、本発明にかかる二酸化チタン粉体を配合した場合、カバー力がありながら、毛穴も目立たず、自然な仕上がりも実現できた。さらに、配合量を増やしても、さらにカバー力がありながら、毛穴も目立たず、自然な仕上がりも実現できた。また、仕上がりの粉っぽさのなさもなかった。
【0076】
以下に本発明の二酸化チタンを配合した化粧料の処方例とその製法を例示する。
【0077】
〔両用パウダリーファンデーション〕
(処方) (質量%)
ジメチコン処理タルク(*1) To 100
シリコーン処理セリサイト 5
合成フッ素金雲母(*2) 10
合成フッ素金雲母鉄 10
窒化ホウ素(*3) 3
ステアリン酸アルミ処理二酸化チタン(本発明) 10
ジメチコン処理微粒子二酸化チタン 6
ジメチコン処理ベンガラ 0.8
ジメチコン処理黄酸化鉄 3
ジメチコン処理黒酸化鉄 0.2
シリコーンエラストマー球状粉末 (*4) 5
シリコーンレジン被服シリコーンエラストマー球状粉末(*5) 5
ジメチコン(6cs) 3
メチルフェニルポリシロキサン 2
トリオクタノイン 1
ソルビタンセスキイソステアレート 1
オクチルメトキシシンナメート 3
オクトクリレン 2
防腐剤 0.1
酸化防止剤 0.01
香料 0.01
【0078】
*1 三好化成工業株式会社 SA-タルクJA68R
*2 トピー工業株式会社 PDM-9WA
*3 メルク株式会社 RonaFlair Boroneige SF-12
*4 東レダウコーニング トレフィルE506S
*5 信越化学工業株式会社 KSP100
【0079】
〔製法〕
粉末・防腐剤と80℃に加温した油分・酸化防止剤・香料をヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕した後、得られた粉末を樹脂中皿に乾式プレス成型し、両用パウダリーファンデーションを得た。
【0080】
〔ルース状ファンデーション〕
(処方) (質量%)
マグネシウムミリステート処理タルク To 100
マイカ 20
シリコーン処理合成フッ素金雲母 20
窒化ホウ素(*6) 5
オキシ塩化ビスマス(*7) 3
二酸化チタン(本発明) 8
酸化亜鉛 3
ステアリン酸処理微粒子二酸化チタン 6
球状シリコーン粉末(*8) 3
球状シリカ 3
球状ポリウレタン末(*9) 3
シリコーンレジン被服シリコーンエラストマー球状粉末(*5) 3
シリコーン処理ベンガラ 0.6
シリコーン処理黄酸化鉄 2
シリコーン処理黒酸化鉄 0.2
ジメチコン6cs 1
オクタン酸セチル 1
オクチルメトキシシンナメート 2
防腐剤 0.2
酸化防止剤 0.05
香料 0.05
【0081】
*6 メルク株式会社 RonaFlair Boroneige SF-12
*7 メルク株式会社 RonaFlair LF-2000
*8 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 トスパール145A
*9 東色ピグメント株式会社 プラスティックパウダーD-400
【0082】
〔製法〕
粉末・防腐剤と80℃に加温した油分・酸化防止剤・香料をヘンシェルミキサーにて混合後、パルペライザーにて粉砕し、ルース状ファンデーションを得た。
【0083】
(油中水型乳化ファンデーション)
(処方) (質量%)
油相
デカメチルシクロペンタシロキサン 15
ジメチコン(1.5cs) 10
メチルフェニルポリシロキサン 3
トリオクタノイン 2
オクチルメトキシシンナメート 5
ポリオキシアルキレン変性シリコーン(*10) 2
ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーン(*11) 2
有機変性ヘクトライト 1
粉末
オクチルトリエトキシシラン処理二酸化チタン(本発明) 10
ステアリン酸処理微粒子二酸化チタン 5
ジメチコン処理ベンガラ 0.4
ジメチコン処理黄酸化鉄 1.5
ジメチコン処理黒酸化鉄 0.1
球状ナイロン末 5
水相
イオン交換水 To 100
グリセリン 5
エタノール 3
1,3-ブチレングリコール 5
フェノキシエタノール 0.5
【0084】
*10信越化学工業株式会社 KF6017
*11信越化学工業株式会社 KF6038
【0085】
〔製法〕
油相部に有機変性ヘクトライトを加えて、ホモジナイザーで1分間混合後、粉末部を添加し、さらにホモジナイザーにて1分混合した後、溶解させた水相部を添加して、さらにホモジナイザーで1分間混合・乳化させることで油中水型乳化ファンデーションを得た。