(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接触決定ユニット(1000)と通信する位置決定ユニット(5000)を更に備え、前記位置決定ユニット(5000)は、少なくとも、前記電極対(1200)と前記画定された口腔領域との前記決定された接触情報に基づいて、前記器具(1)の口腔位置を決定するように構成される、請求項1に記載の器具(1)。
前記器具(1)は、ブラシヘッド部(10)を含む歯ブラシであり、前記ブラシヘッド部(10)は、歯をブラッシングするために剛毛(100)がその上に配置された剛毛側(102)と前記剛毛側(102)に対向する後部側(104)とを含み、第1の電極(110)及び第2の電極(112)が前記後部側(104)に配置されて前記電極対(1200)の第1の電極対(1200A)を形成する、請求項1又は2に記載の器具(1)。
前記ブラシヘッド部(10)は、第1の側(106)と前記第1の側(106)に対向する第2の側(108)とを更に含み、前記第1の側(106)及び前記第2の側(108)はそれぞれ、前記剛毛側(102)と前記後部側(104)とを分け、前記第1の側(106)、前記後部側(104)、前記第2の側(108)、及び前記剛毛側(102)は、前記ブラシヘッド部(10)を円周方向に画定し、
第3の電極(114)が、前記第1の側(106)上に且つ前記第2の電極(112)よりも前記第1の電極(110)により接近して配置され、第4の電極(116)が、前記第2の側(108)上に且つ前記第1の電極(110)よりも前記第2の電極(112)により接近して配置され、前記第1の電極(110)及び前記第3の電極(114)が、前記電極対(1200)の第2の電極対(1200B)を形成し、前記第2の電極(112)及び前記第4の電極(116)が、前記電極対(1200)の第3の電極対(1200C)を形成する、請求項3に記載の器具(1)。
第5の電極が、前記後部側(104)上に配置され、前記第1の電極(110)又は前記第2の電極(112)のどちらかと前記電極対(1200)の第4の電極対を形成する、請求項4に記載の器具(1)。
前記位置決定ユニット(5000)と通信する配向決定ユニット(2000)を更に備え、前記配向決定ユニット(2000)は、前記器具(1)の配向情報を得るように構成され、前記位置決定ユニット(5000)は、前記得られた配向情報に更に基づいて前記器具(1)の前記口腔位置を決定するように構成される、請求項2に記載の器具(1)。
前記口腔ケア器具は、ブラシヘッド部を含む歯ブラシであり、前記ブラシヘッド部は、歯をブラッシングするために剛毛がその上に配置された剛毛側と前記剛毛側に対向する後部側とを含み、前記ブラシヘッド部は、第1の側と前記第1の側に対向する第2の側とを更に含み、前記第1の側及び前記第2の側はそれぞれ、前記剛毛側と前記後部側とを分け、前記第1の側、前記後部側、前記第2の側、及び前記剛毛側は、前記ブラシヘッド部を円周方向に画定し、前記接触情報は、前記後部側、前記第1の側、及び前記第2の側のうちの1つ以上が前記画定された口腔領域と接触しているかどうかを含み、前記画定された口腔領域は、頬領域、舌領域、及び唾液領域からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
前記口腔位置は、前記ブラシヘッド部の前記剛毛側が歯帯に面していることによって画定され、前記歯帯は、左上奥歯の頬側、左上奥歯の咬合側、左上奥歯の舌側、上前歯の前側、上前歯の咬合側、上前歯の舌側、右上奥歯の頬側、右上奥歯の咬合側、右上奥歯の舌側、左下奥歯の頬側、左下奥歯の咬合側、左下奥歯の舌側、下前歯の前側、下前歯の咬合側、下前歯の舌側、右下奥歯の頬側、右下奥歯の咬合側、及び右下奥歯の舌側からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用するとき、「a」、「an」及び「the」等の冠詞は、請求又は記載されるもののうちの1つ以上を意味するものと理解される。
【0010】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprise、comprises、comprising)」、「包含する(include、includes、including)」、「含有する(contain、contains、containing)」は、非限定的である、すなわち、最終結果に影響を及ぼすことのない他の工程及び他の区分を加えることができることを指す。上記用語には、「からなる」及び「から本質的になる」という用語が包含される。
【0011】
本発明によれば、口腔領域の接触の検出を可能にし、更には口腔の位置の検出をも可能にする口腔ケア器具が提供される。本発明は、口腔のある口腔領域は、異なる電圧の周波数でインピーダンスを評価し比較したとき、独特のインピーダンス特性を有しているという驚くべき発見に基づいている。更に、これらのインピーダンス特性(異なる電圧の周波数における)は、ある周波数範囲において口腔領域間で更により顕著になる。理論に束縛されるものではないが、異なる電圧の周波数における(周波数範囲で)独特のインピーダンス(impendence)特性をもたらすのは、各口腔領域の独特の伝導度/誘電性(dielectricity)である。この重要な発見は、口腔ケア器具の口腔領域の接触の検出及び口腔の位置の検出において、更なる正確さ及び/又は精度につながる。
【0012】
本明細書で使用するとき、用語「口腔領域」とは、頬領域、舌領域、唾液領域、歯領域、歯肉領域、硬口蓋領域、軟口蓋領域、及び唇領域が挙げられるがこれらに限定されない、口腔内の個別の部分又は区分を指す。具体的には、口腔ケア器具は、電極対、周波発電機、インピーダンス測定ユニット、及び接触決定ユニットを含む。電極対は、好ましくは、口腔内で器具を使用する間に様々な口腔領域と接触する口腔ケア器具の側面に配置される。インピーダンスは、通電時に電極対の間に生じる。電気は、電池(器具内に内蔵)を経由して、又はプラグ接続できるコンセントを経由して供給され得る。周波発電機は、電極対の間に少なくとも2つの異なる周波数を有する電圧を印加するために、電極対に電気的に接続される。周波数の変化は、好ましくは、約1秒、500ミリ秒、50ミリ秒、10ミリ秒、5ミリ秒、又は更には1ミリ秒以内に起こる。インピーダンス測定ユニットは、異なる周波数で電極対の間のインピーダンス値を測定するために、電極対に電気的に結合される。本明細書では用語「インピーダンス値」は、インピーダンスの大きさ、インピーダンスの位相、比誘電率、及びこれらの組み合わせが挙げられるがこれらには限定されない、電極間の伝導度/誘電性を評価することから導出することができる任意の値を含む、最も広い意味で使用される。
【0013】
「画定された口腔領域」は、インピーダンス値が評価され、基準として使用することができる、前もって画定された口腔領域である。電極対が、唾液領域、頬領域、又は舌領域などの画定された口腔領域と接触している場合には、インピーダンス値は、口腔領域の固有の伝導度/誘電性のために異なる周波数で全く異なり得る。したがって、接触決定ユニットは、この固有の伝導度/誘電性に基づいて、電極対の接触情報を決定するために使用される。接触決定ユニットは、関数を格納するためのメモリを含む。関数は、画定された口腔領域のインピーダンス値を異なる周波数で関連付けし、これは、画定された口腔領域の固有の伝導度/誘電性を反映する。次に、接触決定ユニットは、インピーダンス測定ユニットと通信する。本明細書で使用するとき、用語「と通信する」とは、この用語によって接続している2つの要素の間にデータ伝送があることを意味する。通信方法は、無線通信又はハードワイヤード通信を含む任意の形態であってもよい。通信方法のいくつかの例は、例えば、US20130311278A号39項〜41項にて議論されている。
【0014】
接触決定ユニットは、電極対と画定された口腔領域(単数又は複数)との接触情報を決定するように、測定されたインピーダンス値を格納された関数(単数又は複数)に処理するためのプロセッサを含む。具体的には、特定の測定されたインピーダンス値が、格納された関数によって表わされる固有の伝導度/誘電性を満たす場合、電極対は(格納された関数に対応する)画定された口腔領域と接触していると決定されるであろう。測定されたインピーダンス値が、格納された関数によって表わされる固有の伝導度/誘電性を満たさない場合、電極対は(格納された関数に対応する)画定された口腔領域と接触していないと決定されるであろう。口腔ケア器具は、接触決定ユニットと通信する位置決定ユニットを更に備えてもよい。位置決定ユニットは、少なくとも決定された接触情報に基づいて、器具の口腔位置を決定するように構成される。
【0015】
理論に束縛されるものではないが、本発明は、一部は、周波発電機を使用して少なくとも2つの異なる電圧の周波数を発生させ、異なる周波数で測定することによって、位置検出の正確さ及び/又は精度を向上させる。事実、異なる口腔領域は、異なるインピーダンス特性(例えば、2つの周波数の間で)を有することを以外にも発見した。更に、この違いは、ある周波数範囲内で更により顕著になる。異なる周波数でのインピーダンス値の測定は、口腔内の異なる口腔組織(例えば、舌及び頬)及び唾液の間の区別を可能にする。これは、単一周波数の装置、又は単に「接触」がなされたかどうかを決定することができる異なる周波数で測定しない装置とは対照的である。
【0016】
様々な口腔領域の中で、唾液領域は、水及び/又は練り歯磨きスラリーから基本的になり、したがって、その伝導度に寄与し得る多くのイオンを有する。頬領域及び舌領域などの口腔組織を含む口腔領域もまた、それらの領域が含有する大量の水のために伝導度を有する。しかしながら、口腔組織は、水に加えて細胞を更に含む。これは口腔組織の誘電性に寄与し、唾液及び口腔組織のインピーダンス対周波数の線図において目に見える違いを生じるであろう。周波数にわたって口腔組織のインピーダンスのばらつきの主な特性は、α分散、β分散、及びγ分散の3つのカテゴリにグループ化することができる。α分散は、ヘルツの範囲の低周波で任意の導体のインピーダンスの変化に寄与する。β分散は、キロヘルツ〜メガヘルツの範囲の生体組織に見られ、細胞膜によって引き起こされる。γ分散は、水分子の分極によるギガヘルツの範囲の高周波現象である。したがって、これらの異なる口腔領域は、異なる組成物のため、異なる伝導度/誘電性を示し得る。例えば、口腔領域に含有される水及び/又は細胞の量、細胞の形状、細胞の配置は全て、ある口腔領域の伝導度/誘電性が別の口腔領域のものと異なる原因となり得る。
【0017】
図1(a)は、頬領域、舌領域、及び唾液領域の異なる周波数でのインピーダンスの大きさの典型的なばらつきを示すグラフである。グラフは、これらの口腔領域が、そのインピーダンス値(異なる電圧の周波数における)に基づいて互いに区別されることができることを実証する。
図1(a)のグラフのx軸は、0.50〜6.00の対数目盛上のヘルツ(Hz)での周波数を表わす。
図1(a)のグラフのy軸は、2.50〜4.75の対数目盛上のオーム(Ω)でのインピーダンスの大きさを表す。頬領域、舌領域、及び唾液領域は、様々な周波数で全く異なるインピーダンスの大きさを有することが分かる。例えば、唾液領域のインピーダンスの大きさは、10Hz〜1kHzの周波数間で急落し、次にほぼ1MHzまでの広範囲にわたって安定する。頬領域及び舌領域では、インピーダンスの大きさの急落が1kHz〜1MHzの範囲で異なる下落率で現われる。したがって、一実施形態では、画定された口腔領域のインピーダンス値を異なる周波数で関連付ける関数は、ある周波数範囲での下落率を反映する一次関数であってもよい。例えば、10kHz〜100kHzの周波数範囲でのインピーダンスの大きさの下落率は、頬領域、舌領域、及び唾液領域の間では全く異なることが分かる。別の実施形態では、画定された口腔領域のインピーダンス値を異なる周波数で関連付ける関数は、選択された関数が、ある周波数範囲で画定された口腔領域を他の口腔領域と区別するために使用することができるという条件で、二次関数、三次関数、四次関数、五次関数、六次関数、及び有理関数からなる群から選択されてもよい。
【0018】
図1(b)は、頬領域、舌領域、及び唾液領域の異なる周波数でのインピーダンスの位相角の典型的なばらつきを示すグラフである。
図1(b)のグラフのx軸は、1.00〜6.00の対数目盛上のヘルツ(Hz)での周波数を表わす。
図1(b)のグラフのy軸は、0°〜80°の度(°)でインピーダンスの位相角を表わす。頬領域、舌領域、及び唾液領域は、様々な周波数で全く異なるインピーダンスの位相角を有することが分かる。例えば、唾液領域のインピーダンスの位相角は、100Hz〜10kHzで急落し、次にほぼ1MHzまでの広範囲にわたって安定する。頬領域のインピーダンスの位相角は、10Hz〜50Hz(form 10Hz to 50Hz)の低周波で急減し、次に50Hz〜ほぼ10kHzで急増し、それから1MHzまでの高周波で再度減少する。舌領域のインピーダンスの位相は、10Hz〜100Hz(form 10Hz to 100Hz)の低周波形態で急減し、次に、100Hz〜1kHzで急増し、それから1MHzまでの高周波で再度減少する。一実施形態では、ある周波数範囲、例えば、100Hz〜1kHzは、インピーダンスの位相角の下落率によって頬領域、舌領域、及び唾液領域を区別するために選択することができる。
【0019】
本発明の口腔ケア器具は、少なくとも一部分が口腔内で用いられることを必要とする、歯ブラシ、デンタルフロス器具、口腔洗浄器、舌擦過器、歯間クリーナー、口腔器具、及び任意の他の口腔又は歯用装置の形態をとってもよい。しかしながら、便宜上、本発明を更に説明するために、以下の説明は主として歯ブラシに注目する。これらの説明は単に例示目的であって、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、以下で説明する実施形態の多くの変更が可能であるため、本発明を限定するものと解釈されることを意図するものではない。
【0020】
構成
図2(a)及び2(b)は、本発明の実施形態として歯ブラシ1を図示し、歯ブラシ1は、ブラシヘッド部10とハンドル部20とを備える。
図2(a)は歯ブラシ1の左斜視図を示し、
図2(b)は歯ブラシ1の右斜視図を示す。ブラシヘッド部10は、第1の端部12及び対向する第2の端部14を有する。ブラシヘッド部10は、第1の端部12でハンドル部20に接続される。ブラシヘッド部10は、歯をブラッシングするのに適している剛毛100を備えた剛毛側102を含む。剛毛100は、第1の端部12より第2の端部14に接近して配置される。後部側104は、剛毛側102に対向する。ブラシヘッド部10は、第1の側106、及び第1の側106に対向する第2の側108を更に含む。第1の側106及び第2の側108はそれぞれ、剛毛側102及び後部側104を分ける。第1の側106、後部側104、第2の側108、及び剛毛側102は、ブラシヘッド部10を円周方向に画定する。使用中に、ブラシヘッド部10の少なくとも一部分はユーザーの口腔に入れられ、剛毛100はユーザーの歯又は歯茎と接触する。ハンドル部20は、ユーザーによって掴まれる。ハンドル部20は、装置の様々な電気部品(例えば、後で議論される周波発電機及び他の電気部品)に電気を供給するために、その中に電池(図示されず)を含有してもよい。電池は、使い捨てであっても、又は再充電可能であってもよい。
【0021】
図2(a)及び2(b)を参照して、第1の電極110及び第2の電極112は、後部側104に配置され、第1の電極対1200Aを形成する。第3の電極114は、第1の側106上に且つ第2の電極112よりも第1の電極110により接近して配置される。第4の電極116は、第2の側108上に且つ第1の電極110よりも第2の電極112により接近して配置される。第1の電極110及び第3の電極114は、第2の電極対1200Bを形成する。第2の電極112及び第4の電極116は、第3の電極対1200Cを形成する。更なる実施形態では、第5の電極(図示されず)が後部側104に配置され、第1の電極110又は第2の電極112のどちらかと第4の電極対(図示されず)を形成してもよく、更には第2の電極112又は第1の電極110のどちらかと第5の電極対(図示されず)を形成してもよい。後部側104と画定された口腔領域との接触の全てが第1の電極対1200Aによって検出されることができないとき、そのような配置は特に有利である。例えば、場合によっては、1つの電極のみ(第1の電極110又は第2の電極112のどちらか)が、画定された口腔領域と接触しており、したがって接触は、この第1の電極対1200Aによって検出されない。第4の電極対、更には第5の電極対は、後部側104の比較的大きな表面積を網羅するのに役立ち、したがって、後部側104と画定された口腔領域とのいかなる接触も検出されることができるのを確実にするであろう。更なる実施形態では、画定された口腔領域とのより精密な接触情報を可能にするために、必要に応じて追加の電極対がブラシヘッド部10のまわりに配置されてもよい(コスト制約、表面積の範囲、及び必要とされる精度を含み得る因子次第で)。各電極は、導電性樹脂又は金属材料を使用してもよく、ブラシヘッド部10と一体的に形成されてもよく、又はブラシヘッド部10に組み立てられる/接続されてもよい。
【0022】
電極対1200A、1200B、及び1200Cはそれぞれ、電気回路内で電気通信し、通電時に電極対1200A、1200B、及び1200Cのそれぞれの間でインピーダンスが生じ得る。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態による、電極対と画定された口腔領域との接触情報を決定する電気回路を例示するブロック図を示す。
図3では、
図2(a)及び2(b)に示される第1の電極対1200A、第2の電極対1200B、及び第3の電極対1200Cのうちの任意の1つを参照するために、電極対1200が使用される。
図3を参照すると、電極対1200間に少なくとも2つの異なる周波数で電圧を印加するために、周波発電機1300は電極対1200に電気的に接続される。周波発電機1300と電極対1200との間の電気的接続は、例えば、可撓性の銅線又はケーブルを介する電線接続によって達成され得る。周波発電機1300は好ましくは、1kHz、10kHz、又は50kHz〜100kHz、500kHz、又は1MHzの範囲の周波数を発生させるために動作可能であるが、他の周波数範囲も可能である。一実施形態では、周波発電機1300は2つの周波数間で交互して交互に発生させてもよい。あるいは、周波発電機1300は、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10又はそれ以上の周波数の間で交互に発生させてもよい。あるいは更には、周波発電機1300は、非固定の周波数スペクトル、例えば、正弦波形、矩形波形、三角波形、のこぎり波形、及びこれらの組み合わせから選択される波形で発生させてもよい。周波数値及び波形の選択は、画定された口腔領域の固有の伝導度/誘電性に依存され得る。例えば、周波数が周波数範囲で変化するとき、画定された口腔領域のインピーダンスが他の口腔領域とは著しく異なる傾向で変化する場合、画定された口腔領域を他の口腔領域と容易に区別するように、その周波数範囲が選択されてもよい。周波発電機1300は、Harris Corporation製(Melbourne,Florida)又はHewlett Packard Corporation(Palo Alto,California)製を用いてもよい。
【0024】
インピーダンス測定ユニット1100は、異なる周波数で電極対の間のインピーダンス値を測定するために、電極対1200に電気的に結合される。一実施形態では、インピーダンス測定ユニット1100は、例えば、可撓性の銅線又はケーブルを介する電線接続によって、電極対1200に物理的に接続されてもよい。別の実施形態では、インピーダンス測定ユニット1100は、例えば、レーザー及び圧電変換器を使用して、電極対1200に無線連結されてもよい。(例えば、Hyun−Jun Park,Hoon Sohn,Chung−Bang Yun,Joseph Chung and II−Bum Kwon.A wireless guided wave excitation technique based on laser and optoelectronics.Smart Structures and Systems,Vol 6,No.5〜6,2010,749〜765を参照のこと)。インピーダンス測定ユニット1100は、ブリッジ方式(ホイーストンブリッジ方式など)、共振方式、I−V(電流−電圧)方式、RF(無線周波数)I−V方式、ネットワーク分析方式、自動平衡ブリッジ法、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される測定方法に従ってもよい。インピーダンス測定方法の選択は、周波数範囲、測定範囲、測定精度、及び操作の容易さなどいくつかの因子に依存し得る。例えば、自動平衡ブリッジ法は1MHz〜110MHzの範囲の広い周波数の高精度の測定を確実なものにすることができ、RFI−V方式は、100MHz〜3GHzの範囲の周波数について最良の測定能力を有することができ、ネットワーク分析は、周波数が3GHz以上の範囲のとき、推奨される技法であり得る。インピーダンス測定ユニット1100は、Agilent Technologies製(Santa Clara,California)を用いてもよい。
【0025】
接触決定ユニット1000は、接触情報を決定するために、インピーダンス測定ユニット1100と通信する。電極対1200に電気が通り、画定された口腔領域と接触しているとき、画定された口腔領域を通り抜ける電流で閉回路が形成される。画定された口腔領域のインピーダンスは、電流への反応として測定され、画定された口腔領域の伝導度/誘電性を表わす。異なる口腔領域は、異なる組成物及び構造のため、異なる伝導度/誘電性の測定を有し得る。例えば、特定の口腔領域がより多くの水を含有していればいるほど、より導電性があり、したがって、そのインピーダンスは周波数の広い範囲にわたってより一定している(より少ない水を有する領域と比較して)。本発明は、異なる電気的な周波数における様々な口腔領域の異なる伝導度/誘電性に基づく。したがって、接触決定ユニット1000は、関数を格納するためのメモリ1010を含んでもよく、関数は、画定された口腔領域のインピーダンス値を異なる周波数で関連付ける。
図1(a)及び1(b)に関して上記で議論されたように、関数は、頬領域、舌領域、及び唾液領域からなる群から選択される1つ以上の口腔領域を関連付けしてもよい。接触決定ユニット1000は、電極対1200と画定された口腔領域との接触情報を決定するように、測定されたインピーダンス値を格納された関数に処理するためのプロセッサ1020を更に含み得る。メモリ1010及びプロセッサ1020は、任意の形態でそれぞれ独立して具体化されてもよく、任意の形態で互いに結合されてもよい。メモリ1010及びプロセッサ1020のいくつかの例並びにその結合は、例えば、US20130176750A1号426項〜431項に見出すことができる。
【0026】
周波発電機1300、インピーダンス測定ユニット1100、及び接触決定ユニット1000は、プリント基板(PCB、図示されず)に一体化されてもよい。PCBは、ブラシヘッド部10に収容されてもよく、又は
図2(a)及び2(b)に示されるようにハンドル部20に収容されてもよい。一実施形態では、PCBはハンドル部20に収容される。
図4(a)〜4(c)を参照して、この場合、電極110、112、114、及び116は、ブラシヘッド部10とハンドル部20とを接続するコネクタ15を介してPCBに接続されてもよい。ブラシヘッド部10は、コネクタ15を受け入れる本質的に円筒形の中空の管16を含んでもよい。中空の管16は、内壁162及び外壁164を有してもよい。コネクタ15は、中空の管16の少なくとも一部分に装入可能で且つ中空の管16とロック可能である外面152を有してもよい。ブラシヘッド部10とコネクタ15との間の電気的接続は、中空の管16の内壁162及びコネクタ15の外面152に配置された導体110’、112’(図示されず)、114’、116’、110”、112”、114”、及び116”によって達成される。中空の管16の内壁162に配置された導体の数は、電極の数と同等であるべきである。各電極は、線を介して中空の管16の内壁162のそのそれぞれの導体に接続され得る。例えば、
図4(c)に示されるように、第1の電極110は線120を介して導体110’に接続される。線120は、中空の管16の内壁162と外壁164との間に埋設され得る。あるいは、線は中空の管の内壁に装着されてもよい。第1の電極110、線120、及び導体110’は、一体的に形成されてもよく、又は共に組み立てられる/接続されてもよい。コネクタ15は、同様の方法でハンドル部20に電気的に接続されてもよい。
【0027】
図5は、特定の実施形態による、接触情報を決定するための電気回路を含む歯ブラシを例示するブロック図を示す。
図5を参照して、歯ブラシ1は位置決定ユニット5000を更に備える。位置決定ユニット5000は、少なくとも決定された接触情報に基づいて歯ブラシ1の口腔位置を決定するために、接触決定ユニット1000と通信してもよい。本明細書で使用するとき、用語「接触情報」は、電極対が配置されているブラシヘッド部の所定の側(例えば、
図2(a)及び2(b)に示されるように、剛毛側102、後部側104、第1の側106、及び第2の側108)が、画定された口腔領域と接触しているかどうかに関する。この情報に基づいて、口腔位置が推定され得る(所定の時点で)。例えば、
図2(a)及び2(b)を再び参照して、後部側104がブラッシング中に頬と接触している場合、ブラシヘッド部10の口腔位置は、剛毛側102が歯に面している状態で頬と歯との間であると想定することができる。
【0028】
図5を参照して、口腔位置を検出する(すなわち、接触情報より更に詳しい位置を提供する)ために、歯ブラシは、位置決定ユニット5000と通信する配向決定ユニット2000を更に含んでもよい。配向決定ユニット2000は歯ブラシ1の配向情報を得るように構成されてもよく、位置決定ユニット5000は、得られた配向情報に基づいて更に口腔位置を決定するように構成されてもよい。配向決定ユニット2000は、3軸加速度計、3軸ジャイロスコープ、地磁気センサー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。一実施形態では、
図6を参照して、3軸(x軸、y軸、及びz軸)加速度計(図示されず)は、ハンドル部20の内部に、例えば、ハンドル部20の内部でPCB(図示されず)に装着されて提供される。x軸は剛毛側102に平行であり且つ歯ブラシ1の長手方向に伸びる軸Lに直交し、y軸は歯ブラシ1の長手方向に伸びる軸Lと一致し、z軸は剛毛側102に直交するように、加速度計が取り付けられてもよい。歯ブラシ1の配向を示すために、重力加速度ベクトルが使用されてもよい。例えば、歯ブラシ1の長手方向に伸びる軸Lが水平のテーブル表面に直交である状態で、歯ブラシ1が水平のテーブル表面に垂直に立っているとき、重力加速度ベクトルはy軸に平行である。歯ブラシ1の長手方向に伸びる軸Lが水平面に平行であり且つブラシヘッド部10の剛毛側102が上方を向いた状態で、歯ブラシ1が水平に置かれるとき、重力加速度ベクトルはz軸に平行である。歯ブラシ1の長手方向に伸びる軸Lが水平面に平行であり且つ剛毛側102が側面を向いた状態で、歯ブラシ1が水平に置かれるとき、重力加速度ベクトルはx軸に平行である。
【0029】
一実施形態では、3軸加速度計はマイクロ電気機械システム(MEM)を含む。更なる実施形態では、加速度計は、圧電抵抗式MEMS、静電気容量式MEMS、熱検出式MEMS、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるMEMSセンサーを含む。MEMSセンサーは非常に小さく、したがって、歯ブラシに容易に組み込むことができる。特に示されていないが、加速度計のそれぞれの軸の感度のバランス、感度の温度特性、温度ドリフト等を補正するための補正回路を提供することは有益である。更に、動的加速度成分、ノイズ等を除去するために帯域通過フィルター(低域フィルター)が備えられてもよい。更にまた、ノイズは、加速度計からの出力の波形を平滑化することにより低減されてもよい。
【0030】
図5を再び参照して、歯ブラシ1は、剛毛の温度を検知するための赤外線センサー3100、及び検知された剛毛の温度に基づいて、剛毛と歯又は歯茎との接触情報を識別するための、赤外線センサー3100と通信するブラッシング識別ユニット3000を更に含んでもよい。赤外線センサー3100は、各剛毛の温度を検知することができてもよい。あるいは、剛毛側102に面する物体の温度を検知するために、赤外線センサー3100が、
図2(a)及び2(b)に示されるようにブラシヘッド部10の剛毛側102に配置されてもよい。歯みがき中に剛毛側102に面する物体は、歯又は歯茎であり得る。ブラッシング識別ユニット3000は、検知された温度に基づいて、剛毛側102が歯又は歯茎に面しているかどうかを識別するように構成されてもよい。位置決定ユニット5000は、ブラッシング識別ユニット3000と通信し、剛毛と歯又は歯茎との識別された接触情報に更に基づいて、口腔位置を決定するように構成されてもよい。赤外線センサー3100は、ブラシヘッド部の剛毛側に、又は更には剛毛上に配置されてもよく、あるいは剛毛温度検知が作動し得る任意の他の場所に配置されてもよい。赤外線センサー3100は、熱電対又は熱電対列であってもよいが、これらに限定されない。
【0031】
歯ブラシ1は、タイマー4000を更に含んでもよい。タイマー4000は、口腔位置で持続時間を測定するように構成されてもよい。ディスプレイ6000は、歯ブラシ1と通信して備えられてもよい。ディスプレイ6000は、各口腔位置で持続時間を表示するように構成されてもよい。ディスプレイ6000は、歯ブラシ1に一体化されてもよく、又は歯ブラシ1から物理的に分離してもよい。インジケーター7000もまた、歯ブラシ1とデータ通信して備えられてもよい。インジケーター7000は、持続時間が所定の時間より短いか長いかを示すように構成されてもよい。インジケーター7000は、歯ブラシ1に一体化されてもよく、又は歯ブラシ1から物理的に分離してもよく、又は更にはディスプレイ6000の一部としてもよい。
【0032】
接触情報決定
歯みがきサイクル中、歯ブラシヘッドの側面によって接触され得る口腔領域は主に、頬領域、舌領域、及び唾液領を含み、同時に歯ブラシヘッドに配置された剛毛は歯及び/又は歯茎と接触している。
【0033】
図2(a)及び2(b)を再び参照して、4つの電極110、112、114、及び116が、歯ブラシ1のブラシヘッド部10の第1の側106、後部側104、及び第2の側108に備えられる。これらの4つの電極110、112、114、及び116は、第1の側106、後部側104、及び第2の側108のそれぞれが、画定された口腔領域と接触しているかどうかを決定するために使用することができる3つの電極対1200A、1200B、及び1200Cを構成する。画定された口腔領域は、頬領域、舌領域、唾液領域、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0034】
作動中に、電極対1200A、1200B、及び1200C(以下、集団的に「電極対1200」と記載される)はそれぞれ、電圧で通電され、その間にインピーダンスが生じる。電圧は、好ましくは、AC(交流)電源(例えば、プラグ接続できるコンセント)によって供給され得る。
図3を再び参照すると、次に、少なくとも2つの異なる周波数が周波発電機1300によって、通電した電極対1200の間の電圧に印加される。通電した電極対1200の間に生じるインピーダンスのインピーダンス値は、インピーダンス測定ユニット1100によって、印加された異なる周波数で測定される。電極対1200A、1200B、及び1200Cのそれぞれの測定は、同時又は順次であってもよい。関数は、画定された口腔領域のインピーダンス値を印加された異なる周波数で関連付けるように定義され、接触決定ユニット1000のメモリ1010に格納される。次に、測定されたインピーダンス値は、接触決定ユニット1000のプロセッサ1020で格納された関数に処理される。測定されたインピーダンス値がその格納された関数を満たす場合、画定された口腔領域との接触が決定される。
【0035】
次の考察は、頬領域、舌領域、及び唾液領域のインピーダンスの大きさのばらつきに基づいて、接触情報決定を更に説明する。
図1(a)に関して上記で論じられたように、10kHz〜100kHzの範囲の周波数でのインピーダンスの大きさの下落率は、頬領域、舌領域、及び唾液領域の間で全く異なる。更に有利なことには、周波数が10kHz〜100kHzの範囲で増加するとき、これらの3つの領域の全てのインピーダンスの大きさは、ほとんど直線的に下落する。これは、これら3つの口腔領域を互いに区別するために非常に単純な一次関数を使用することを可能し、単に2つの異なる周波数でのインピーダンスの大きさを必要とするので、計算に非常に低い電力を消費する。しかしながら、3つ以上の周波数にわたってインピーダンスの大きさのばらつきを反映する他の周波数範囲及び他の関数が本発明を達成するために使用されてもよいことが当業者に容易に理解される。
図1(b)に示されるようなインピーダンス位相などの他のインピーダンス値が代わりに使用される、又は更には接触情報を決定するために追加的に使用されてもよいことも当業者に容易に理解される。
【0036】
図1(a)を参照して、10kHz〜100kHzの周波数範囲で頬領域、舌領域、及び唾液領域を区別するために使用することができる一次関数は、A1/A2の比を含んでもよく、A1は第1の周波数で測定された第1のインピーダンスの大きさ、A2は第2の周波数で測定された第2のインピーダンスの大きさである。頬領域、舌領域、及び唾液領域を識別するための限界を設定するために、2つの閾値定数を用いることができる。例えば、第2の周波数が第1の周波数より大きい場合、A1/A2が第1の閾値定数a未満であるとき、唾液領域として識別することができる。A1/A2が第2の閾値定数b以上であるとき、頬領域として識別することができる。A1/A2が第2の閾値定数b未満であり且つ第1の閾値定数a以上であるとき、舌領域として識別することができる。
【0037】
閾値定数の値は、実験によって決定されてもよい。例えば、第1の閾値定数aは1.2〜1.4であってもよい。なぜなら舌領域との接触によってこの値を容易に超えることができる一方で、唾液領域との接触によって通常この値に到達することができないからである。舌領域との接触と唾液領域との接触とを区別する際に、第2の閾値定数bは1.7〜2.1であってもよい。
【0038】
1つ以上の関数は定義され、メモリ1010に格納されてもよい。1つ以上の関数はそれぞれ、1つの画定された口腔領域のインピーダンス値を、印加された異なる周波数で関連付ける。プロセッサ1020は、測定されたインピーダンス値が満たす(もしあれば)関数を探し出すために、測定されたインピーダンス値をそれぞれの1つ以上の関数に1つずつ処理してもよい。
【0039】
図7は、歯ブラシのブラシヘッド部の側面が、唾液領域、舌領域、及び頬領域から選択される口腔領域と接触しているかどうかを決定するための例示的な接触決定工程を示す。側面は電圧を備えた電極対を有し、その間にインピーダンスを生じさせる。電極対への印加される異なる周波数は、第1の周波数(例えば、10kHz)及び第2の周波数(例えば、100kHz)を含む。A1は、第1の周波数(S10)で電極対の間で測定される第1のインピーダンス値(例えば、インピーダンスの大きさ)である。A2は、第2の周波数(S10)で電極対の間で測定される第2のインピーダンス値(例えば、インピーダンスの大きさ)である。A1とA2との任意の1つがインピーダンスの大きさの閾値(例えば、100kΩ)未満(S30が「はい」)である場合、側面は、唾液領域、舌領域、又は頬領域と接触していないと認識される(S40)。インピーダンスの大きさの閾値は、第1及び第2の周波数で唾液領域、舌領域、又は頬領域について入手可能な最大のインピーダンスの大きさ以上の値であってもよい。A1もA2もどちらもインピーダンスの大きさの閾値100kΩより大きくない(S30が「いいえ」)場合、側面は、唾液領域、舌領域、又は頬領域と接触しており、したがって工程はS50に進む。A1/A2の比が1.4未満(S50が「はい」)である場合、側面は、唾液領域と接触している(S60)。S50の答えが「いいえ」である場合、工程はS70に進む。A1/A2の比が1.4以上であるが、1.8未満(S70が「はい」)である場合、側面は、舌領域と接触している(S80)。S70の答えが「いいえ」である場合、工程はS90に進む。A1/A2の比が1.8以上(S90が「はい」)である場合、側面は、頬領域と接触している(S100)。S90の答えが「いいえ」である場合、エラーメッセージが返される(S110)。エラーはA1とA2のどちらか又は両方が、短絡又は他の故障があり得ることを指す0である結果であり得る。S110でエラーメッセージを提供するのではなく、S10〜S90の工程は代わりに、接触情報(接触なし、及び唾液領域、舌領域、又は頬領域との接触を含めて)が認識されるまで繰り返されてもよいことに留意されたい。周波数の値、インピーダンスの大きさの閾値、及び比の値を含むこの例示的な接触決定工程で示される全ての値は、特定のユーザー(単数又は複数)に合わせるために調整される又は変更されてもよいことも留意されたい。
【0040】
接触決定工程全体は、1秒、500ミリ秒、50ミリ秒、10ミリ秒、又は5ミリ秒以内に起こり得る。接触決定工程全体は、歯みがき作動中に1秒、2秒、3秒、5秒、又は8秒毎に自動的に繰り返され得る。印加された異なる周波数でのインピーダンス値は、好ましくは、500ミリ秒、300ミリ秒、100ミリ秒、50ミリ秒、10ミリ秒、5ミリ秒、又は更には1ミリ秒未満の時間間隔以内に測定される。これは、インピーダンス値のばらつきがブラシの動きではなく周波数の変化によるものであることを保証するのに役立つ。
【0041】
実際には、一旦歯ブラシのブラシヘッド部が口腔に入り、ユーザーが歯みがきを始めると、唾液層がブラシヘッド部を取り囲むであろう。ブラシヘッド部が頬又は舌と接触しているとき、接触圧力が形成されて唾液層を非常に薄くする。この非常に薄い唾液層は、頬又は舌との接触が検出できないように、直流(DC)回路の電極対の間でインピーダンスに著しく影響を与えるであろう。しかしながら、変化する周波数で電圧を有する交流回路では、頬及び/又は舌のインピーダンスが唾液のインピーダンスよりはるかに著しく変化する適切な周波数範囲を選択することによって、頬又は舌との接触を検出する際にこの非常に薄い唾液層は無視することができる。本発明は有利にこの発見を利用し、正確な接触情報決定を提供する。
【0042】
口腔位置測定
歯ブラシの口腔位置は、歯帯に面するブラシヘッド部の剛毛側によって画定されてもよい。歯帯は、歯の領域又は部位を意味する。歯帯の数及び位置は、特定の用途によって異なってもよい。一例では、
図8に示されるように、18の歯帯がユーザーの歯の周りで分割される。これらの18の歯帯は、口腔内のそれぞれ固有の位置によって互いに識別される。これらの歯帯は、左上奥歯の頬側(帯a)、左上奥歯の咬合側(帯b)、左上奥歯の舌側(帯c)、上前歯の前側(帯d)、上前歯の咬合側(帯e)、上前歯の舌側(帯f)、右上奥歯の舌側(帯g)、右上奥歯の咬合側(帯h)、右上奥歯の頬側(帯i)、左下奥歯の頬側(帯j)、左下奥歯の咬合側(帯k)、左下奥歯の舌側(帯l)、下前歯の舌側(帯m)、下前歯の咬合側(帯n)、下前歯の前側(帯o)、右下奥歯の舌側(帯p)、右下奥歯の咬合側(帯q)、及び右下奥歯の頬側(帯r)を含む。
【0043】
一実施形態では、ブラシヘッド部の口腔位置は、ブラシヘッド部の各側と頬領域、舌領域、及び唾液領域との接触情報に基づいて決定される。表1は、剛毛側102が各歯帯に面しているときの
図2(a)及び2(b)に示されるブラシヘッド部10の第1の側106、後部側104及び第2の側108の例示的な接触情報を示す。
【0045】
各歯帯に対するこの例示的な接触情報は、歯みがき中に平均90%の正確さを有することが4人の無作為の被験者によって証明されている。試験は、被験者に特定の順番で18の歯帯を歯みがきするように求め、各歯帯の接触情報を記録し、次に、表1に示されるように、記録した接触情報を例示的な接触情報と比較することによって行われる。正確さ及び精度は、より多くのユーザーのデータを収集しブラッシング中にブラシヘッド部の各側によって接触される口腔領域を調整することで更に改善され得る。例えば、いくらかの人は、上前歯の前側及び下前歯の前側をブラッシングしているときに、
図2(a)及び2(b)に示されるブラシヘッド部10の第1の側106及び第2の側108と唇が接触している場合があり得る。
【0046】
表1に示される例示的な接触情報に基づくと、同じ接触情報を有するいくつかの歯帯、例えば、帯a及び帯rがあるので、接触情報のみに基づいて互いを識別することはできない。更には、帯d、e、f、m、n、及びoは、頬又は舌との接触がないので、互いに識別することができない。
【0047】
したがって、更なる実施形態では、ブラシヘッド部の口腔位置は、接触情報を歯ブラシの配向情報と組み合わせることによって決定される。配向情報は、剛毛側と水平面との間に形成された配向角を含むことができる。
図6に示されるように、歯ブラシ1内に取り付けられた3軸(x軸、y軸、及びz軸)加速度計では、加速度計のx軸は、剛毛側102に平行であり且つ歯ブラシ1の長手方向に伸びる軸Lに直交であるので、加速度計のx軸と水平面との間に形成された角度は配向角として得られてもよい。
【0048】
便宜上、配向角によって画定されたブラシの配向は、
図9に示されるようにA〜Hの8つの配向セクターに分けられてもよい。セクターA〜Fはそれぞれ60度の大きさである。セクターGは、セクターAとBとの組み合わせである。セクターHは、セクターDとEとの組み合わせである。これらの8つの配向セクターは、
図8に示されるような18の歯帯が歯みがき中にブラッシングされるときの8つの典型的なブラシ配向に相当する。例えば、セクターAは、左上奥歯の舌側(帯c)がブラッシングされるときのブラシ配向に相当し、一方セクターBは、左下奥歯の舌側(帯l)がブラッシングされるときのブラシ配向に相当する。セクターAでの配向角は約60°である。セクターBでの配向角は約120°である。表2は、各配向セクターでの歯ブラシ1の配向角及びブラッシングされる可能性がある歯帯を示す。
【0050】
表3は、
図8に示されるような18の歯帯がそれぞれ、どのように接触情報と配向情報との組み合わせによって識別されるかを示す。以前にブラッシングされた歯帯は、頬又は舌との接触情報が得られない前歯に関して、歯帯を識別するために考慮に入れられる。これは、ユーザーは一般に1つの帯から隣接した別の帯へ歯をブラッシングするという仮定に基づいている。表3によって表わされるアルゴリズムは、18の歯帯全てを互いに区別するために位置決定ユニット5000(
図5)にプログラムされてもよい。
【0052】
したがって、18の歯帯全てが本発明によって、低価格で、非侵入的、高精度且つ正確な方法で識別される。本発明によれば、ユーザーは、侵入的であると見なされ得る追加の器具を装着する必要がない。加速度計のみを使用するシステムの場合とは異なり、頭の動き及びブラッシング中に歩き回ることは、本発明の位置検出を妨害しないので、良好な精度及び正確さが提供される。接触決定は、有利にコスト効率が高い大量生産で歯ブラシに導電性ペーストとして容易に注入することができる電極対に依存する。
【0053】
更に別の実施形態では、ブラシヘッド部の口腔位置は更に、歯/歯茎のブラッシング識別工程によって決定される。歯と歯茎との間に温度差がある。血液が通っていない歯に比べて、血液が通っている歯茎の温度の方が高い。
図5を再び参照して、温度はブラッシング中に赤外線センサー3100によって得られる。温度は、剛毛の温度、又はブラシヘッド部10の剛毛側102(
図2(a)及び2(b)を参照)に面する物体の温度であり得る。温度が第1の閾値(例えば、34.5℃)超である場合、歯茎がブラッシングされていると決定される。剛毛の温度が、第1の閾値未満であり且つ第2の閾値(例えば、31℃)以上である場合、歯がブラッシングされていると決定される。赤外線センサーが各剛毛の温度を検知することができる場合には、温度マップは、何本の剛毛が歯をブラッシングし、何本の剛毛が歯茎をブラッシングしているのかを識別するように、全ての剛毛に対してプロットされてもよい。
【0054】
この歯/歯茎のブラッシング識別情報は、各歯帯のブラッシング時間がフィードバックとして記録されるとき、特に有利である。このブラッシング識別工程によって、ユーザーがより精密且つより正確なブラッシングフィードバックを得ることができるように、歯茎のブラッシング時間と歯のブラッシング時間とが別々に記録され得る。
【0055】
ユーザーインターフェース
図5に示されるように、ディスプレイ6000及びインジケーター7000は、口腔位置と対応付けられた情報を表示し指示するために、ユーザーインターフェースとして提供されることができ、その結果、ユーザーがこの情報に基づいてブラッシングの手順を最適化することによってブラッシングの質を改善することができる。
【0056】
一実施形態では、ディスプレイ6000は、
図8に示されるように18の歯帯を説明する図を含む。ブラッシング中にブラッシングされた又はブラッシングされている歯帯を照らすことによって、リアルタイムのフィードバックが提供されてもよい。別のリアルタイムのフィードバックは、歯帯が十分なブラッシングを受けた場合に緑色を示し、十分なブラッシングを受けなかった場合に赤色を示すことにより提供されてもよい。更に、過剰なブラッシングの場合に歯帯が点滅してもよい。ブラッシング中及び/又はブラッシング後に各歯帯に使った時を示すことにより、要約フィードバックが提供されてもよい。飛ばされた歯帯がないか、又は全ての歯帯が適切にブラッシングされたかを示すことによって、総合的なブラッシング結果が提供されてもよい。そのようなフィードバックは、飛ばされた又は十分な時間ブラッシングされなかった歯帯を再度ブラッシングするようにユーザーを動機づける。他の実施形態として、歯ブラシ1がスマートフォンに無線で接続され、スマートフォンの画面をディスプレイ6000として使用することができてもよい。
【0057】
一実施形態では、インジケーター7000は、1つの歯帯に使用された時間が所定の時間より長いとき、ブラッシング歯帯を変えるようにユーザーに指示する視覚信号、オーディオ信号及び/又は物理的な信号を提供する。信号は、歯ブラシ1上に、又はディスプレイ6000上に具現化されてもよい。例えば、物理的な信号は、歯ブラシ1の振動を含んでもよい。
【0058】
一実施形態では、インジケーター7000は、ある歯帯に到達するとき、ホワイトニング有効成分など特定の有効成分を歯面に送達するようにユーザーに指示する視覚信号、オーディオ信号及び/又は物理的な信号を提供する。
【0059】
口腔位置と対応付けられる更なる情報は、WO2008060482A2号、WO201177282A1号の24項〜26項、及びUS8479341B2号の15欄〜16欄に開示されるようなものが、ユーザーに役立つためにユーザーインターフェースによって提供されてもよい。情報は全て、同時に又は順次に、表示される又は指示されてもよい。ユーザーは、表示される又は指示される情報のコントロールを有してもよい。
【0060】
本明細書に開示した寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。それよりむしろ、特に指定されない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図する。
【0061】
相互参照されるか又は関連する全ての特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本願に引用される全ての文書は、特に除外すること又は限定することを明言しない限りにおいて、その全容にわたって本願に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示されているか若しくは特許請求の範囲に記載されているいずれかの発明に関する先行技術であることを認めるものではなく、あるいはそれが単独で又は他のいかなる参考文献(単数若しくは複数)とのいかなる組み合わせにおいても、かかる発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。更に、本文書での用語の任意の意味又は定義の範囲が、参照により組み込まれた文書中の同様の用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合には、本文書中で用語に割り当てられる意味又は定義に準拠するものとする。
【0062】
本発明の特定の実施形態が説明及び記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内に含まれるそのような全ての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図したものである。