(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6258507
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】圧力差を利用したフロー電池内の電解質濃度のリバランス
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20171227BHJP
H01M 8/04082 20160101ALI20171227BHJP
H01M 8/04791 20160101ALI20171227BHJP
H01M 8/04186 20160101ALI20171227BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/04 F
H01M8/04 L
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-542902(P2016-542902)
(86)(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公表番号】特表2017-505514(P2017-505514A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】US2013077778
(87)【国際公開番号】WO2015099728
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】590005449
【氏名又は名称】ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ペリー,マイケル エル.
(72)【発明者】
【氏名】スメルツ,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,シエ
【審査官】
渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−195657(JP,A)
【文献】
特開2012−164530(JP,A)
【文献】
特開昭62−276762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 8/04082
H01M 8/04186
H01M 8/04791
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1半電池、第2半電池、及びその間のイオン選択セパレータを有する電気化学電池と、前記第1半電池を介して循環可能な第1電解質と、前記第2半電池を通して循環可能な第2電解質と、を備え、かつ、前記第1および第2電解質が、溶解した一つ以上の種類の電気化学的活性種を有する、フロー電池を準備し、
(b)前記第1電解質と前記第2電解質との間の前記電気化学的活性種の濃度非平衡を濃度平衡化させるように、イオン選択セパレータを横切る流体圧力差を、制御した時間に亘って選択的に設定する、
ことを備え、
前記ステップ(b)は、前記第1電解質と前記第2電解質との間の、所定の閾値を超える濃度差の検出に応答して、前記フロー電池における前記第1電解質と前記第2電解質との間に不均等な流速を生じさせることにより、前記流体圧力差を設定することを含む、フロー電池内の電解質濃度をリバランスする方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)は、前記濃度非平衡に応じた前記流体圧力差を設定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)は、前記イオン選択セパレータを介する電解質流動のモデルにしたがって、流体圧力差を設定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一つ以上の種類の電気化学的活性種の濃度に関して、前記第1および第2電解質のうち濃度の低い方の流速が、該第1および第2電解質のうち濃度の高い方の流速よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(b)は、前記イオン選択セパレータを介した電解質流動に対して、流体圧力差を設定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1電解質内の活性種は、V(ii)/V(iii)であり、前記第2電解質内の活性種は、V(iv)/V(v)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1半電池、第2半電池、及びその間のイオン選択セパレータを有する電気化学セルと、
前記第1半電池を介して循環可能な第1電解質と、
前記第2半電池を介して循環可能な第2電解質と、を備え、かつ、前記第1および第2電解質は、溶解した一つ以上の種類の電気化学的活性種を含み、更に、
前記電気化学セルの外部の供給/貯蔵システムを備え、この供給/貯蔵システムは、第1容器と、第2容器と、前記第1および第2容器をそれぞれ前記第1および第2半電池に接続する流体ラインと、前記第1および第2電解質を循環させるために作動可能な複数のポンプと、前記第1および第2電解質の流れを制御するために作動可能な複数の制御弁と、を有し、更に、
少なくとも前記供給/貯蔵システムの作動を制御するために接続されるコントローラを備え、このコントローラは、前記供給/貯蔵システムを制御して、イオン選択セパレータを横切る流体圧力差を制御された時間にわたって選択的に設定することにより、前記第1電解質と前記第2電解質との間の電気化学的活性種の濃度非平衡を濃度平衡化させ、
前記コントローラは、前記第1電解質と前記第2電解質との間の、所定の閾値を超える濃度差の検出に応答して、前記第1電解質と、前記第2電解質との間に不均等な流速を生じさせることにより、前記流体圧力差を設定するように構成される、フロー電池。
【請求項8】
前記コントローラは、前記濃度非平衡に応答して前記流体圧力差を設定するように構成される、請求項7に記載のフロー電池。
【請求項9】
前記コントローラは、前記イオン選択セパレータを介する電解質流動のモデルにしたがって流体圧力差を設定するように構成される、請求項7に記載のフロー電池。
【請求項10】
前記コントローラは、前記一つ以上の種類の電気化学的活性種の濃度に関して、前記第1および第2電解質のうち濃度が低い方の流速を、該第1および第2電解質のうち濃度が高い方の流速よりも大きく設定するように構成される、請求項7に記載のフロー電池。
【請求項11】
前記コントローラは、前記イオン選択セパレータを介する電解質流動に対して、流体圧力差を設定するように構成される、請求項7に記載のフロー電池。
【請求項12】
前記第1電解質内の活性種は、V(ii)/V(iii)であり、前記第2電解質内の活性種は、V(iv)/V(v)である、請求項7に記載のフロー電池。
【請求項13】
フロー電池内の電解質充電状態をリバランスする方法であって、
前記フロー電池の第1半電池内の流体圧力が、第2半電池内の流体圧力よりも高くなるように、イオン選択セパレータを横切る制御された流体圧力差を設定して、その圧力作用による浸透により、溶液内に溶解した電気化学的活性種に関して、前記第2半電池内のより高く濃縮された溶液を希釈させ、かつ前記第1半電池内のより希釈された溶液を濃縮させるように、フロー電池を作動させる、
ことを備え、
前記フロー電池の作動は、アノード液である第1溶液と、カソード液である第2溶液との間の、所定の閾値を超える濃度差の検出に応答して、前記第1溶液と、前記第2溶液との間に不均等な流速を生じさせることにより、前記制御された流体圧力差を設定することを含む、方法。
【請求項14】
前記フロー電池の作動は、前記イオン選択セパレータを介する電解質流動に対する前記制御された流体圧力差を設定することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1溶液内の活性種は、V(ii)/V(iii)であり、前記第2溶液内の活性種は、V(iv)/V(v)である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レドックスフロー電池またはレドックスフローセルとしても知られているフロー電池は、電気エネルギを、貯蔵可能で、後で必要なときに放出することが可能な化学エネルギに変換するように設計されている。一例として、フロー電池は、風力システム等の再生可能エネルギシステムに使用され、消費需要を超えるエネルギを貯蔵し、後で、より大きな需要が存在するときにこのエネルギを放出することができる。
【背景技術】
【0002】
典型的なフロー電池は、電解質層で分離された負極と正極とを有するレドックスフロー電池を含み、イオン交換膜等のセパレータを有することができる。負の流体電解質(アノード液と称することもある)が負極に送られ、正の流体電解質(カソード液と称することもある)が正極に送られ、可逆的な電気化学レドックス反応を進行させる。
【0003】
充電の際、フロー電池に供給された電気エネルギは、一方の電極の一方の電解質内で電気化学的還元反応を生じさせ、他の電極の他の電解質内で電気化学的酸化反応を生じさせる。セパレータは電解質が自由にかつ急速に混合するのを防止するが、イオンを通過させてレドックス反応を完成する。理想的には、セパレータは、選択的にイオンを輸送する特性を有し、すなわち、所望の電荷担体イオンを、活性レドックス対イオン等の他のイオンに対して容易に通過させる。放電の際、液体電解質内に包含される化学エネルギは、逆の反応で放出され、電気エネルギを電極から取り出すことができる。フロー電池は、他の電気化学的装置とは、特に、複合可逆的酸化状態を有し、かつ全てが選択された溶液内で溶解または溶解可能である成分のイオンを含む、外部から供給される流体電解質溶液を使用することにより、区別される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施例により開示される、フロー電池における電解質濃度をリバランスする方法は、第1半電池、第2半電池、及びその間のイオン選択セパレータを有する電気化学的電池と、第1半電池を介して循環可能な第1電解質と、第2半電池を介して循環可能な第2電解質と、を有し、かつ、これらの第1、第2電解質が、溶解した一つ以上の種類の電気化学的活性種を含んだフロー電池を準備し、第1電解質と第2電解質との間の電気化学的活性種の濃度非平衡(concentration imbalance)を濃度平衡化させるように、制御可能な時間にわたってイオン選択セパレータを横切る流体圧力差を選択的に設定することを含む。
【0005】
更に、少なくとも供給/貯蔵システムの作動を制御するために接続されるコントローラを有するフロー電池を開示する。そのコントローラは、供給/貯蔵システムを制御して、イオン選択セパレータを横切る流体圧力差を制御された時間にわたって選択的に設定することにより、第1電解質と第2電解質との間の電気化学的活性種の濃度非平衡を濃度平衡化させるように構成される。
【0006】
本開示の実施例により開示される、フロー電池における電解質の充電状態をリバランスする方法が、フロー電池の負の半電池内の流体圧力が、正の半電池内の流体圧力よりも高くなるようにイオン選択セパレータを横切る制御された流体圧力差を設定して、圧力作用による浸透により、溶液内に溶解している電気化学的活性種に関して、正の半電池内のカソード液を希釈させ、かつ、負の半電池内のアノード液を濃縮させるように、フロー電池を作動させることを含む。
【0007】
本開示の種々の特徴及び利点は、以下の詳細な説明より、当業者にとって明らかとなる。詳細な説明に関連する図面について、以下に簡単に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、電気エネルギを選択的に貯蔵及び放出するフロー電池20の実施例の一部を概略的に示す。実施例として、フロー電池20は、再生可能エネルギシステムで生成された電気エネルギを、後のより大きな需要があるときまで貯蔵される化学エネルギに変換し、この需要があるときに、フロー電池20が化学エネルギを電気エネルギに戻すために使用可能である。フロー電池20は、電気エネルギを、例えば配電網に供給することができる。
【0010】
フロー電池20は、可逆的レドックス反応を行う電気化学的活性種24を有する流体電解質22(例えば第1イオン導電性流体)を含む。流体電解質22は、電気化学的活性種28を有する追加の流体電解質26(例えば、第2イオン導電性流体)に関して、レドックス対で機能する。流体電解質22/26の所定量がフロー電池に使用される。
【0011】
電気化学的活性種24/28は、これに限定しないが、硫酸水溶液等の選択した溶液内で複合可逆的酸化状態を有する成分のイオンを包含する。いくつかの実施例では、複合酸化状態は、これに限定しないが、バナジウム、鉄、マンガン、クロム、亜鉛、モリブデン及びこれらの組み合わせを含む遷移金属、及び、これに限定しないが、硫黄、セリウム、鉛、錫、チタン、ゲルマニウム及びこれらの組み合わせを含む他の元素に対する、非ゼロ酸化状態である。電気化学的活性種24/28は、これに限定しないが、キノン及び対応するヒドロキノン等の有機種とすることができる。いくつかの実施例では、複合酸化状態は、成分がゼロ酸化状態で選択された溶液に容易に溶解する場合には、ゼロ酸化状態を含む。このような成分は、臭素、塩素、及び、これらの組み合わせ等のハロゲンを含むことができる。
【0012】
第1流体電解質22(例えば負の電解質またはアノード液)及び第2流体電解質26(例えば正の電解質またはカソード液)が、第1、第2容器32/34及びポンプ35aを有する供給/貯蔵システム30内に収容される。ポンプ35aは可変速ポンプであり得る。流体電解質22/26は第1、第2容器32/34からポンプ35aを使用して、それぞれの供給ライン38を通してフロー電池20の電気化学的活性セル36(一つの代表的セルを示す)のセルスタック36Aに送られる。流体電解質22/26は、セルスタック36Aから戻りライン40を介して容器32/34に戻る。供給ライン38及び戻りライン40(集合的に「流体ライン」)は容器32/34にセルスタック36Aの電気化学的活性セル36を相互接続し、流体電解質22/26のそれぞれの再循環ループを形成する。この実施例では、供給ライン38は、流体電解質22/26の流れを計量するために作動可能な制御弁35bを有する。ポンプ35a及び制御弁35bは、供給ライン38、戻りライン40及び容器32/34内で代替的に他の位置に配置してもよい。他の代替手段では、フロー電池20は、追加のポンプ35a及び/または制御弁35bを含んでもよい。
【0013】
この実施例では、フロー電池20は、更にコントローラ39を有する。コントローラ39は、ポンプ35aのオン/オフ及び速度の操作、及び、制御弁35bの計量調節機能を含む、少なくとも供給/貯蔵システム30の動作を制御するために接続される。したがって、ポンプ35a及び制御弁35bは、フロー電池20内の流体電解質22/26の流れ、及び、更に後述する流体電解質22/26間の流体圧力差を制御するために用いることができる。
【0014】
電気化学的活性セル36のそれぞれは、第1電極42(例えば第1半電池または負の半電池)、第1電極42から離間した第2電極44(例えば第2半電池または正の半電池)、及び、第1電極42と第2電極44との間に配置されたイオン選択セパレータ層46を有する。例えば、電極42/44は、カーボン紙またはフェルト等の多孔質炭素構造である。電気化学的活性セル36は、更に、流体電解質22/26を電極42/44に送るためのマニホルドプレート及びマニホルド等を有することができる。しかし、他の形態を使用することができることが理解されよう。例えば、電気化学的活性セル36は、代替的に、流体電解質22/26が、隣接する流れ場チャンネルを使用することなく、電極42/44を通して直接内部に圧送される貫流運転(flow-through operation)用に構成することができる。
【0015】
イオン選択セパレータ層46は、イオン交換膜、不活性微孔質ポリマー膜、または、炭化ケイ素(SiC)等の材料の電気的絶縁微孔質マトリックスとすることができ、流体電解質22/26が自由にかつ迅速に混合するのを防止するが、選択したイオンを通過させ、電極42/44を電気的に分離しつつ、レドックス反応を完成させる。この点に関して、流体電解質22/26は、充放電及び停止状態等の通常作動中、概して互いに絶縁される。
【0016】
流体電解質22/26は、電気化学的活性セル36に送られ、電気エネルギを化学エネルギに変換するか、または、逆の反応で、化学エネルギを放電可能な電気エネルギに変換する。電気エネルギは、電極42/44に電気的に連結されている電気回路48を介して電気化学的活性セル36に送られ、かつ、これから送られる。
【0017】
所定のフロー電池のエネルギ容量及びアノード液/カソード液の固定量は、複数のファクタにより、経時的に変化することがある。一つのファクタは、クロスオーバと称する、イオン選択セパレータを横断する電気化学的活性種の分散運動であり、2つの流体電解質22/26間の濃度非平衡(モル濃度)を生じさせる。他のファクタは、水素放出反応等の副反応であり、フロー電池内で発生し、時間と共に電気化学的活性種の平均酸化状態へのシフトを助長しうる。フロー電池は、最大のエネルギ容量を維持するために、クロスオーバの効果を逆にするように「リバランス」することが可能である。一つの方法が、電解質リザーバ間の接続パイプ及びバルブを利用して、周期的に第1、第2タンク間の液体レベルを等しくし、濃度作用による分散が電解質タンク間で生じるのを可能とする。しかし、この方法では、分散速度を積極的に制御することができない。他の方法は、流体電解質を完全または部分的に一緒に混合し、その後、電解質をフロー電池の第1、第2容器32/34内に再配分することからなる。しかし、完全または部分的な混合再配分は、追加の設備及び運転不能時間を必要とし、通常の電池動作を阻害する。後述するように、フロー電池20は、ここに、完全または部分的再混合の必要を低減または排除し、動作中断を制限することが可能な「オンライン」による電解質のリバランスを行う制御された方法を提供する。
【0018】
バナジウムをベースとする一つの実施例では、電気化学的活性種24/28のように、完全平衡された平均酸化状態はV
2+/V
3+及びV
4+/V
5+(V(ii)/V(iii)及びV(iv)/V(v)と示すことが可能であるが、4及び5の酸化状態のバナジウム種の価数は、必ずしも4+及び5+であるとは限らない)の使用をベースとする+3.5である。例えば、電解質溶液が硫酸水溶液の場合、V(iv)/V(v)種は、それぞれVO
2+及びVO
2+として存在する。
【0019】
各リザーバ内の電気化学的活性種24/28の濃度は、直接または間接的に測定することができる。共通の電気化学的活性種24/28としてバナジウムをベースとする一つの実施例では、原子価状態は、V
2+/V
3+及びV
4+/V
5+を含む。他の一つの実施例では、電気化学的活性種24/28の異なる原子価状態のモル濃度は、光学測定を使用することにより一方または両方の容器32/34内の電気化学的活性種24/28のモル濃度測定値を収集する、光学検出装置を使用して取得することができる。例えば、光学検出装置は、モル濃度を検出するために光を用いる。
【0020】
各リザーバ内の活性種の濃度は、滴定技術を使用して異なる原子価状態の濃度を直接測定することにより代替的に測定することができるが、滴定技術はリアルタイム測定ではなく、したがって、潜在的にタイムラグを生じさせる。
【0021】
直接的な活性種濃度の測定に代え、または、これに追加的に、各リザーバ内の濃度は、流体電解質22/26の他の特性から間接的に測定することができる。例えば、測定は、流体電解質22/26の導電性、密度、粘度またはこれらの組み合わせを収集することができる。導電性、密度及び/または粘度は、電気化学的活性種24/28の平均酸化状態に経験的に相互関連させることが可能である。したがって、これらの間接的測定も、各リザーバ内の活性種の濃度の測定に使用し、または、代替的に直接的な測定を検証することが可能である。
【0022】
開示方法の実施例は、開示したフロー電池20と共に使用可能であり、流体電解質22/26間の電気化学的活性種24/28の濃度非平衡(concentration imbalance)を濃度平衡化するように、
図1にDで示す、イオン選択セパレータ46を横切る流体圧力差を、制御された時間に亘って選択的に設定することを含む。例えば、制御された時間は、所定の濃度平衡の達成または達成見通しまでの時間である。
【0023】
コントローラ39は、供給/分配システム30の制御を通して本方法を実行するように構成することができる。この点について、コントローラ39は、ハードウェア、ソフトウェア、または、双方を包含することができ、ここに記載の機能を実行するようにプログラムされている。コントローラ39は、フロー電池20における本方法を実行するための少なくとも複数の異なるアプローチのいずれかを利用することができる。例えば、コントローラ39は、流体電解質22/26間の所定の閾値を超える濃度差の検出に応答して、本方法を周期的に使用し、濃度をリバランスさせることができる。これに代え、コントローラ39は連続的な流体圧力差を設定して、所定の濃度範囲内の平衡濃度を維持することができる。
【0024】
コントローラ39は、ポンプ35a及び制御弁35bの制御を介して流体圧力差を制御することができる。例えば、コントローラ39は、流体電解質22/26間に不均等な流速を設定して、流体圧力差を設定することができる。この点に関して、流体電解質22/26の一方の流速を他方に対して増加すると、圧力差が増大する。同様に、一方の流体電解質22/26の一方の流速を他方に対して減少することで、圧力差を増加させることもできる。
【0025】
他の実施例では、電気化学的活性種24/28が、クロスオーバにより、経時的にカソード液26に集中する傾向となる可能性がある。濃度をリバランスするため、コントローラ39は、アノード液22の流速をカソード液26の流速よりも大きく設定する。アノード液22の流速を大きくすることで、負の半電池42内の流体圧を上昇させ、圧力作用による浸透により、正の半電池44内のカソード液26の種28の濃度が希釈され、負の半電池42内のアノード液22の種24が濃縮される。すなわち、浸透だけが、電解質の自発的な濃度作用による移動である。「圧力作用による浸透(pressure-driven osmosis)」は、濃度の低い電解質に流体圧力を積極的に作用させて、自発的な浸透を補う。
【0026】
他の実施例では、コントローラ39は、イオン選択セパレータ46を介する電解質流動(electrolyte flux)に対する流体圧力差を設定する。例えば、所定のイオン選択セパレータ46に対して、電解質流動のモデルを定めることができる。モデルは、圧力差の関数として、流動に対して実験的に決定することができる。これに代え、圧力差の関数としての流動を、イオン選択セパレータ46及び電解質の既知の特性に基づいて推測することができる。したがって、フロー電池20内の所与の既知の濃度非平衡に対して所望の濃度バランスを達成するように、イオン選択セパレータ46に亘って圧力作用される必要のある、決定可能な電解質量が存在する。したがって、コントローラ39は、所望の濃度バランスを達成するモデルにしたがって制御された時間の間、選択された流体圧力差を提供する。
【0027】
上述のように、完全または部分的混合リバランスに対する必要性を低減するために、本方法を使用することができる。しかし、実施例のいずれかの他の実施例では、本方法は、部分的な再混合またはタンク間の電解質22/26の移送を組み合わせて使用することができる。例えば、電解質のわずかな部分を容器32/34間で移送して、各リザーバ内の所望のモル比を達成することができる。移送は、容器32/34間で補助ポンプを使用して、または、切替弁50及び補助配管52と共に主ポンプを使用して行われて、電解質をスタックから他のタンクに誘導する。移送は、更に、必要な場合(例えば低充電状態におけるシャットダウンの間)、容器32/34内の流体電解質レベルを均等にするために選択的に開く容器32/34間の接続パイプ及び弁を使用して実行することができる。
【0028】
図示の実施例で特徴の組み合わせを示したが、本開示の種々の実施形態の利点を実現するためには、その全てを組み合わせる必要はない。換言すると、本開示の実施形態により設計したシステムは、図のいずれかに示す特徴の全て、または、図に概略的に示す部分の全てを包含する必要はない。更に、一つの例示的実施形態の選択した特徴は、他の例示的実施形態の選択した特徴と組み合わせることができる。
【0029】
上記説明は本来、限定するものではなく、例示である。開示の実施例を変更または変形することが、必ずしも本開示の本質から逸脱するものでないことは、当業者に明らかとなる。本開示に与えられる法的保護範囲は、以下の特許請求の範囲を検討することでのみ決定することができる。