特許第6258634号(P6258634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6258634
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】窓の防火構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20171227BHJP
   E06B 3/22 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
   E06B5/16
   E06B3/22
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-174124(P2013-174124)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2015-42801(P2015-42801A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2016年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100081569
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 勝一
(74)【代理人】
【識別番号】100156018
【弁理士】
【氏名又は名称】若田 充史
(72)【発明者】
【氏名】恐田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】沢幡 将
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−129662(JP,A)
【文献】 特開2013−076261(JP,A)
【文献】 特開2009−079414(JP,A)
【文献】 特開2013−144877(JP,A)
【文献】 特開2012−136927(JP,A)
【文献】 特開2012−136928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/04− 3/46、
3/50− 3/52
E06B 5/00− 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障子の金属製縦框と金属製横框との結合部に、火災発生時に加熱により発泡して前記縦框と前記横框との間に生じた隙間を閉塞する加熱発泡材が設けられた窓の防火構造であって、
前記横框はホロー部を有し、
前記ホロー部内に前記横框の補強材である芯材が取付けられ、前記芯材の少なくとも一端部に前記ホロー部内を閉塞する構造の折曲部が形成され、前記折曲部の前記縦框に対向する面に加熱発泡材を設けられていることを特徴とする窓の防火構造。
【請求項2】
請求項1に記載の窓の防火構造において、
前記窓が辷り出し窓であり、かつ前記加熱発泡材を設ける結合部が、前記縦框と前記横框のうちの下框との間の結合部であることを特徴とする窓の防火構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の窓の防火構造において、
前記障子を取付ける窓枠のうち、障子の室内側に設ける部分に樹脂製枠を備え、室内側から見て、前記樹脂製枠により障子の前記縦框および前記横框が隠れる構造であることを特徴とする窓の防火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物に設置される窓の防火構造に係わり、より詳しくは、火災発生時に熱により生じる障子の縦框と横框との間の隙間から室内側に熱風や火炎が侵入することを防止して延焼を防止する防火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下枠に取付けるハンドルを回動させることにより、障子を開閉する横辷り出し窓が開示されている。この横辷り出し窓は、障子のガラスパネルの荷重を下框で受ける構成を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−291467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような窓において、隣接する家屋等に火災が発生した場合、障子の框や窓枠の中央部が熱膨張により外側に変形すると、障子の縦框と横框との結合が緩み、両者の間の隙間が発生する。このように障子の縦框と横框の間に隙間が生じると、火炎や熱風がこの隙間から室内に侵入し、延焼が起こりやすくなるという問題点がある。特に、ガラスパネルの荷重を障子の下框で受ける構造においては、ガラスパネルの荷重が下框にかかるため、下框と縦框との間に隙間が生じやすい。
【0005】
また、窓の断熱性や結露防止のため、窓枠の室内側に樹脂製の枠を設ける場合、外部から縦框と横框との間の隙間から侵入する熱風や火炎によって樹脂製の枠が溶解して障子の支持力が低下し、ますます延焼を生じやすい状態となる。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、火災発生時において、障子の框、窓枠またはガラスパネルの変形によって障子の縦框と横框との間を隙間を生じた場合であっても、その隙間を通しての熱風や火炎の通過が防止され、延焼防止機能を向上させた窓の防火構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の窓の防火構造は、
障子の金属製縦框と金属製横框との結合部に、火災発生時に加熱により発泡して縦框と横框との間に生じた隙間を閉塞する加熱発泡材けられた窓の防火構造であって、
前記横框はホロー部を有し
前記ホロー部内に横框の補強材である芯材が取付けられ、前記芯材の少なくとも一端部に前記ホロー部内を閉塞する構造の折曲部が形成され前記折曲部の縦框に対向する面に加熱発泡材を設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項の窓の防火構造は、請求項に記載の窓の防火構造において、
前記窓が辷り出し窓であり、かつ前記加熱発泡材を設ける結合部が、縦框と下框との間の結合部であることを特徴とする。
【0009】
請求項の窓の防火構造は、請求項1または2に記載の窓の防火構造において、
前記障子を取付ける窓枠のうち、障子の室内側に設ける部分樹脂製枠を備え、室内側から見て、前記樹脂製枠により障子の框が隠れる構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、金属製縦框と金属製横框との結合部に加熱発泡材を設けたので、火災発生時に加熱により框やガラスパネルが変形し、縦框と横框との間に隙間が発生しても、加熱発泡材が発泡して隙間が膨張した発泡体で閉塞される。このため、熱風や火炎が室内側に侵入することが発泡体によって防止され、延焼が防止される。
【0011】
また、ホロー部内に横框の補強材である芯材を取付け、芯材の少なくとも一端部に前記ホロー部内を閉塞する構造の折曲部を形成し、折曲部の縦框に対向する面に加熱発泡材を設けたので、芯材が横框の補強の役目をして框の変形を抑制し、結合部における隙間拡大の抑制に寄与する。また、加熱発泡材の熱膨張の際に、発泡体の発泡方向がホロー部内においては芯材の折曲部で閉塞され、縦框と横框との結合部に集中するので、加熱発泡材を隙間閉塞に無駄なく寄与させることができる。また、芯材側に加熱発泡材を設けたので、縦框と横框との間に加熱発泡材が挟持されるおそれがなく、製造上有利となる。
【0012】
請求項の発明は、辷り出し窓の縦框と下框との間の結合部に加熱発泡材を設けたものであり、辷り出し窓は、ガラスパネルの荷重を下框で受ける構成であるため、火災発生時に框の熱変形以外にガラスパネルの荷重が下框に加わり、縦框と下框との結合部に隙間が生じやすくなる。このため、隙間を加熱発泡材の発泡によって閉塞することが防火の上で重要な効果を発揮する。
【0013】
請求項の発明によれば、障子の室内側に設ける部分樹脂製枠を備え、室内側から見て、樹脂製枠により障子の框が隠れる構造としたものであり、この障子の框が樹脂製枠により隠されることにより、断熱性や結露防止構造が優れた窓が構成される。また、このように、断熱性や結露防止構造が優れた窓においても、縦框と横框の結合部に設けた加熱発泡材の発泡によって熱風や火炎の影響を低減し、樹脂製枠の溶解を防止したり溶解を遅らせることにより、防火性能に優れた窓を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の窓の防火構造の一実施の形態である縦辷り出し窓を示す縦断面図である。
図2図1の縦辷り出し窓の横断面図である。
図3図1図2の縦辷り出し窓の開閉機構を示す平面図である。
図4図1の拡大断面図である。
図5図4の要部拡大断面図である。
図6】この実施の形態で設けた芯材の一部を示す斜視図である。
図7】この実施の形態における下框および縦框の下部を室外側から見た図である。
図8】この実施の形態における下框と縦框との結合部での加熱発泡材の発泡状態を示す断面図である。
図9】本発明の窓の防火構造の他の実施の形態である横辷り出し窓を示す縦断面図である。
図10図9の横辷り出し窓の横断面図である。
図11図9図10の横辷り出し窓の開閉機構を示す平面図である。
図12図9図10の横辷り出し窓の開閉機構を示す側面図である。
図13】本発明の窓の防火構造の他の実施の形態である嵌め殺し窓を示す縦断面図である。
図14図13の嵌め殺し窓の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明の窓の一実施の形態を示す縦辷り出し窓の縦断面図、図2はその横断面図である。図1および図2において、1は左右の縦枠、2,3はそれぞれ上枠、下枠として備えた横枠である。この縦枠1および横枠2,3はアルミニウム合金等の金属製押出形材により構成される。4,5,6はそれぞれ縦枠1,横枠2,3の室外側に組み付けられて断熱性を高める合成樹脂製押出形材でなる樹脂製枠であり、それぞれ縦枠1および横枠2,3の一部をなすものである。縦枠1,横枠2,3および樹脂製枠4〜6により枠体Fが構成される。
【0016】
図1において、35,36はそれぞれ建物開口部37の基枠を構成する窓台とまぐさである。38は窓台35上にカイ木39を介して設置された額縁、40はまぐさ36の下にカイ木41を介して取付けられた額縁である。図2において、42は窓台35やまぐさ36と共に建物開口部37の基枠を構成する左右の柱、43はこれらの柱42にカイ木44を介して設置された額縁である。これら4周の額縁38,40,43,43により建物開口部37の内周面を構成し、これらの額縁38,40,43,43およびカイ木39,41,44,44と、窓台35、まぐさ36および柱42,42とにより、建物開口部37の室外側に凹み部45を構成する。そしてこの凹み部45を形成する壁面に枠体Fの室内側見付け面を当ててねじ等の固定具46により固定する。そして室内側から見ると、枠体Fは額縁38,40,43,43や内装材47によって隠された構造とする。48は胴縁、49は外装材である。
【0017】
枠体F内に収容される障子7は、縦辷り出し窓を構成するものであり、アルミニウム合金製押出形材等の金属製押出形材でなる左右の縦框8,8、上框9および下框10とで矩形に構成された枠内に、グレージングチャンネル11を介して、網入りガラスパネルでなる室内側ガラスパネル12と、室外側ガラスパネル13とによりなる2重パネルを組み込んで構成したものである。ただし本発明は単層パネルにも適用可能である。14は樹脂製枠4〜6を枠体として構成した網戸である。
【0018】
図1において、16は障子7の上框9と上枠2との間に設けた吊元の支持機構、17は障子7の下框10と下枠3との間に設けた吊元の支持機構である。18は下枠3に螺子等の固定具19により取付けたブラケット、20はこのブラケット18に取付けた障子開閉用のハンドルである。21は障子7を開閉するための後述の中継アームである。60は下框10のホロー部内に取付けた芯材、63はこの芯材に取付けた加熱発泡材であり、これらの構造については後述する。
【0019】
図3は障子7の開閉機構を示す平面図であり、障子7が開いた状態で示す。図3において、20aはハンドル20の回動軸に固定して取付けた歯車、22は操作アームであり、この操作アーム22はブラケット18に設けたピン23を中心として回動可能に取付ける。操作アーム22の根本部には歯車20aに噛合する歯車22aを固定して設ける。操作アーム22はその先端を中継アーム21の一端にピン24により回動可能に連結する。中継アーム21の他端は、下框10の室内側側面に取付けたブラケット25にピン26により回動可能に連結する。
【0020】
27,28はそれぞれ下枠3と障子7の下框10との間に設ける第1、第2のリンクであり、障子7の下側の開閉駆動側の支持機構17を構成するものである。第1のリンク27は、その一端を下枠3にピン29により回動可能に連結し、他端を下框10の下面にピン30により回動可能に連結する。第2のリンク28は一端に回動可能に設けたスライダ28aを、下枠3に取付けた鋼材でなるガイド部材31に沿って摺動可能に係合させ、他端を下框10にピン32により回動可能に連結する。上枠2と上框9との間の支持機構16は従動側の支持機構であり、アーム21,22を備えていない点以外は、支持機構17のガイド部材31やリンク27,18と同様の構造で構成される。
【0021】
図3において、ハンドル20を矢印R1の方向に回わすと、歯車20a,22aの噛合により、操作アーム22がR2の方向に回動するので、障子7は中継アーム21により矢印X1の方向に引っ張られる。これにより、第1のリンク27はピン29を中心として矢印R3の方向に回動して、障子7は矢印X1の方向に移動すると同時に、矢印R4の方向に回動し、障子7が図示のように開く。このとき、第2のリンク28は、スライダ28aがガイド部材31にガイドされて矢印X2に示すように移動しながら障子7の吊元側を支持する。ハンドルを矢印R1の反対側に回すと、前記と逆の動きにより、障子7が閉じる。
【0022】
図4図1における下枠3および下框10の部分を拡大して示す断面図である。3aは障子7を開閉するための操作部材である操作アーム22や中継アーム21を収容するために設けた開口溝であり、この開口溝3aは、障子7の下框10の室内側に開口面が対向するように形成する。3bは開口溝3aを形成するために下枠3に形成した立上部である。50はこの立上部3bに貼り付けてねじ49により固定した加熱発泡材である。51は下枠3の開口溝3a形成部の室外側に取付けたゴム製の乾式シール材であり、下框10の室内側の面を当接させて気密性を維持するものである。
【0023】
図4において、3dは障子7の下框10の下面に対向する下枠3の下框対面部、3eはこの下框対面部3dの室内側に設けた立上部である。52はこの立上部3eに貼り付けた加熱発泡材である。3f,3gは加熱発泡材52を外れ止めするために下框対面部3dと立上部3eにそれぞれ形成した係止突起である。この加熱発泡材52は、下枠3の全長にわたって取付ける。
【0024】
図4において、10aは下枠3の下框対面部3dの室外側端部を室外側から覆うように下框10に設けた垂下板部である。53はこの垂下板部10aにおける室内側の面、すなわち立上部3eに対向する面に貼り付けた加熱発泡材である。この加熱発泡材53は下框10の全長にわたって設ける。10b,10cは加熱発泡材53を外れ止めするためにそれぞれ垂下板部10aと下框10に形成した係止突起である。
【0025】
図5図4の要部拡大断面図、図6は下框10のホロー部10e内に取付ける芯材60の一部を示す斜視図、図7は下框10および縦框8の下部を室外側から見た図である。図5において、10dはガラスパネル12,13を装着する溝形成部、10eはその溝形成部10dの下に形成されたホロー部(中空部)である。ホロー部10e内に取付ける芯材60は、図5図6に示すように、上板部60aと下板部60bとを有して短手方向の断面がコ字形をなすもので、下框3の長さよりやや短い長さを有する。
【0026】
この芯材60は、図5図7に示すように、ホロー部10e内に嵌合して上下方向および前後方向の移動を規制する。芯材60の長手方向の固定は、ホロー部10eの底板部に設けたねじ孔10fに下方からねじ62を螺合し、このねじ62を、芯材60の下板部60bに設けた貫通孔60cに挿着すると共に、ホロー部10eの天板部に設けたタッピングホール10gにねじ込んだタッピングねじ61により、芯材60の両端部で固定する。ただし、タッピングねじ61については片側のもののみを示している。
【0027】
60dは芯材60の他端部、すなわち障子7の自由端側の端部に設けた折曲部であり、この折曲部60dは、図7に示すように、縦框8の下框当接板部8aに対面する。63はこの折曲部60dの下框当接板部8aに対向する面に固着した加熱発泡材である。64は芯材60の折曲部60d形成側端部における上板部60a上に固着した加熱発泡材である。
【0028】
この実施の形態においては、上述のように、加熱発泡材63,64を縦框8と下框10との結合部に設けたので、外部で火災が発生し、熱風や火炎が障子7に作用し、框8〜10やガラスパネル12,13の熱膨張や変形により、図8に示すように、縦框8と下框10との間に隙間gが発生しても、加熱発泡材63,64の発泡によってこの隙間gに発泡体66が充填されてこの隙間gを閉塞する。このため、熱風や火炎の侵入がこの発泡体66により阻止され、延焼が防止される。
【0029】
なお、この実施の形態においては、加熱発泡材63,64は芯材60の障子7の自由端側端部にのみ設けたが、障子7の吊元側の芯材60の端部にも加熱発泡材を設けてもよい。ただし、図2に示すように、障子7を閉じている時に縦框8の外側への反りを防止するため、障子7の吊元側端部には、縦枠1に鋼材でなる反り防止金具67を取付け、縦框8にはこれが外側に反った際に、反り防止金具67に当接させる金具68を取付けているので、火災発生時にも吊元側の縦框8の反りを抑制することができ、その分、縦框8と下框10との結合部が外れにくくなる。このためにこの実施の形態においては、吊元側については縦框8と下框10との結合部に隙間が発生しにくくなり、加熱発泡材を設けていないが、この吊元側の縦框8と下框10との結合部にも加熱発泡材を設けてもよい。
【0030】
また、加熱発泡材は縦框8の下框当接板部8aに設けてもよいが、しかしながら、下框当接板部8aに加熱発泡材を設けると、縦框8に下框10を組み合わせる際に、縦框8の下框当接板部8aと下框10の端部との間に加熱発泡材が挟まり、寸法精度を損なったり、框8,10どうしの結合強度を損なったりするおそれがあり、加熱発泡材の高精度の貼り付け位置精度が要求される。
【0031】
一方、この実施の形態のように、芯材60の折曲部60dに加熱発泡材63を設けることにより、このような位置精度が要求されず、製造上有利になるとともに、下框10のホロー部10eと芯材60の折曲部60dと縦框8の下框当接板部8aとで1つの部屋を構成し、この部屋で加熱発泡材63を発泡させるので、発泡体66の発泡位置が縦框8と下框10との結合部に集中させることができ、加熱発泡材63を隙間閉塞に無駄なく寄与させることができる。このため、加熱発泡材63のサイズを小さくすることができるので、経済的となる。
【0032】
また、加熱発泡材63のサイズを小さくするには、芯材60の代わりに加熱発泡材63が発泡の際にホロー部10e内に拡散することを防止する金具を取付けてもよいが、芯材60を設けることにより、芯材60が下框10の補強の役目をして下框10の変形を抑制し、結合部における隙間拡大の抑制、ひいては防火性能の向上に寄与する。
【0033】
また、本発明は、縦框8と上框9との結合部に加熱発泡材を設けてもよいが、この実施の形態は、縦辷り出し窓の縦框8と下框10との間の結合部に加熱発泡材を設けたものであり、辷り出し窓は、ガラスパネル12,13の荷重を下框10で受ける構成であるため、火災発生時に框8〜10の熱変形以外にガラスパネル12,13の荷重が下框10に加わるため、縦框8と下框10との結合部に隙間が生じやすくなる。このため、隙間を加熱発泡材63,64の発泡によって閉塞することが防火の上で重要な効果を発揮する。
【0034】
また、この実施の形態においては、障子7の室内側に設ける部分を樹脂製枠4〜6とし、室内側から見て、樹脂製枠4〜6により障子7の框8〜10が隠れる構造としたものであり、この障子7の框8〜10が樹脂製枠4〜6により隠されることにより、断熱性や結露防止構造が優れた窓が構成される。また、このように、断熱性や結露防止構造が優れた窓においても、縦框8と下框10の結合部に設けた加熱発泡材63,64の発泡によって熱風や火炎の影響を低減し、樹脂製枠4〜6の溶解を防止したり溶解を遅らせることにより、防火性能に優れた窓を実現することが可能となる。
【0035】
また、この実施の形態においては、下枠3と下框10との間にも加熱発泡材50,52,53を設けたので、火災発生時に下枠3と下框10との間も発泡体により充填される。このため、下枠3と下框10との間に隙間が発生しても、熱風や火炎が遮断され、室内側への延焼がよりよく防止される。
【0036】
図9図12は本発明の防火構造の他の実施の形態であり、本発明を横辷り出し窓に適用した例である。図9は横辷り出し窓の縦断面図、図10はその横断面図である。また、図11は障子7を開いた状態を示す平面図、図12はその側面図である。
【0037】
図9ないし図12において、図1ないし図8と同じ符号は同じ機能を発揮する部材である。この実施の形態においても、下枠3は開口溝3aを有し、障子7を閉じた状態において、開口溝3aの中に操作部材である操作アーム22X、中継アーム21Xを収容する。図11に示すように、操作アーム22Xはピン23によりブラケット18に回動可能に取付ける。操作アーム22Xはその根本部に、ハンドル20に設けた歯車20aと噛合する歯車22aを有する。図11に示すように、中継アーム21Xは下枠3にピン57を中心に回動可能に取付ける。操作アーム22Xの先端を中継アーム21Xの根本部近傍にピン58により回動可能に連結する。中継アーム21Xの先端をピン59により障子7の下框10に回動可能に連結する。
【0038】
図12において、27X,28Xはそれぞれ左右の縦枠1と障子7の左右の縦框8との間に設ける第1、第2のリンクである。第1のリンク27Xは、その一端を縦枠1にピン29Xにより回動可能に連結し、他端を縦框8の側面にピン30Xにより回動可能に連結する。第2のリンク28Xは、その一端を縦枠1に取付けた鋼材でなる取付け部材31Xにピン28bにより回動可能に連結し、他端を縦框8にピン32Xにより回動可能に連結する。
【0039】
図11において、ハンドル20を矢印R1の方向に回動すると、操作アーム22Xが矢印R2の方向に回動し、これにより、中継アーム21Xはピン57を中心として矢印R3の方向に回動して障子7が開く。このように、障子7が開くとき、図12において、第1のリンク27Xはピン29Xを中心として矢印R4に示すように回動すると共に、第2のリンク28Xもピン28bを中心として矢印R4に示すように回動しながら障子7が矢印R5に示すように開く。
【0040】
この横辷り出し窓においても、加熱発泡材63を設けたことにより、縦辷り出し窓について説明したように、防火性能を向上させることができ、延焼防止効果が上がる。
【0041】
しかしながら、本発明はこのような辷り出し窓のみならず、図13の縦断面図および図14の横断面図に示す嵌め殺し窓においても同様の構造によって防火性能を高めることが可能である。この図13図14において、図1図12と同じ符号は同じ機能を発揮する部材を示す。この嵌め殺し窓は、障子7の框8〜10が枠Fに固定して取付けられる。この嵌め殺し窓は、辷り出し窓と並設されて障子7の上下幅を揃えて意匠性を高めるため、嵌め殺し窓と辷り出し窓で上下幅を統一して構成するものである。
【0042】
このような嵌め殺し窓においても、加熱発泡材63あるいはさらに加熱発泡材64を設けることにより、これらが発泡して防火性を向上させることができる。なお、この嵌め殺し窓は、辷り出し窓と並設することなく嵌め殺し窓のみ並設するかあるいは独立に設置するものであっても、辷り出し窓と共通の製造設備を用いて製造された框や枠等で嵌め殺し窓を構成する場合にも適用することができる。
【0043】
以上本発明を実施の形態により説明したが、本発明を実施する場合、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、辷り出し窓の開閉機構や窓枠および框等の構成部材やその組み合わせについて、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1:縦枠、2:上枠、3:下枠、4〜6:樹脂製枠、7:障子、8:縦框、9:上框、10:下框、10e:ホロー部、12,13:ガラスパネル、60:芯材、60d:折曲部、63,64:加熱発泡材、66:発泡体、F:窓枠
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