(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6258654
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02M 26/20 20160101AFI20171227BHJP
F02M 26/43 20160101ALI20171227BHJP
F02D 21/08 20060101ALI20171227BHJP
【FI】
F02M26/20
F02M26/43
F02D21/08 301A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-203226(P2013-203226)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-68256(P2015-68256A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】麻畠 公宏
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−007295(JP,A)
【文献】
特開平04−047155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/20
F02D 21/08
F02M 26/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を備えており、各気筒に対応して、吸気弁で開閉される吸気ポートと排気弁で開閉される排気ポートとを設けており、各排気ポートは、それぞれ排気マニホールドの1つの枝管に接続されている一方、前記吸気ポートにEGRガス噴出口を設けている構成であって、
前記各EGRガス噴出口に流量制御弁を設けており、前記各流量制御弁が、吸気バルブ及び排気バルブが開いたオーバーラップ期間中と、前記排気バルブが閉じて前記吸気バルブが開いた吸気行程とに分けて開くように制御されるようになっており、
かつ、前記各EGRガス噴出口の群と前記排気マニホールドにおける枝管の群とは、1つのEGRガス噴出口と1つの枝管とが対になってEGR還流路にて接続されており、前記対の接続は、気筒の行程からみて、爆発行程にある気筒の枝管と次に爆発行程になる気筒の補助ポートとが接続される関係になっている、
内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、EGR装置を備えた内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排気ガスの浄化促進や燃費改善等のためにEGR装置は内燃機関に広く普及しており、様々な提案が成されている。例えば特許文献1には、多気筒内燃機関において、排気圧と吸気圧との差を大きくしてEGRガスの導入性を良くするため、各気筒に共通した分配室を設けて、分配室から高圧のEGRガスを各気筒の吸気系に供給することが開示されている。
【0003】
他方、特許文献2には、空気(新気)とEGRガスとの混合性を高めることを目的として、EGR通路にチャンバを設けてこれに吸気通路のうちスロットルバルブより上流側の部分を接続し、チャンバにおいて新気とEGRガスとを混合させることが開示されている。
【0004】
EGR装置では、EGRガスは排気マニホールドの終端又はそれより下流側から取り出していることが多いが、この場合は、排気ガスが気筒から間欠的に排出されることに起因して濃度にバラツキが発生しやすいため、EGRガスと新気との混合割合もバラツキが生じて、燃焼が不安定化するおそれがある。これに対して特許文献1,2はEGRガスを排気ポートから取り出しているため、EGRガスの濃度のバラツキを抑制可能であると推測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−052554号公報
【特許文献2】特開2012−246866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、燃焼後の排気ガスは排気行程において排気ポートを介して気筒から排出されるが、気筒から排気ガスが完全に排出されるとは言い難く、僅かながら排気ガスが気筒内に残留する現象が見られる。そして、この残留した排気ガスは高温であるため、導入された新気の温度を高めて充填効率を悪化させたり、酸素不足による不完全燃焼によって燃費が悪化したり、燃焼温度を高めてノッキングの原因になったりするおそれもある。
【0007】
しかるに、特許文献1,2にしても他の従来技術にしても気筒内に残留した排気ガスの問題はなんら考慮されておらず、このため、残留排気ガスに起因した上記充填効率の悪化等の問題は残ったままになっている。
【0008】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、
「複数の気筒を備えており、各気筒に
対応して、吸気弁で開閉される吸気ポートと排気弁で開閉される排気ポートとを設けており、
各排気ポートは、それぞれ排気マニホールドの1つの枝管に接続されている一方、前記吸気ポートにEGRガス噴出口を設けている構成であって、
前記
各EGRガス噴出口に流量制御弁を設けており、前記
各流量制御弁が、吸気バルブ及び排気バルブが開いたオーバーラップ期間中と、
前記排気バルブが閉じて
前記吸気バルブが開いた吸気行程とに分けて開くように制御される
ようになっており、
かつ、前記各EGRガス噴出口の群と前記排気マニホールドにおける枝管の群とは、1つのEGRガス噴出口と1つの枝管とが対になってEGR還流路にて接続されており、前記対の接続は、気筒の行程からみて、爆発行程にある気筒の枝管と次に爆発行程になる気筒の補助ポートとが接続される関係になっている」
というものである。
【0010】
本願発明においては、EGRガス噴出口から気筒に流入する排気ガスはできるだけ高圧であるのが好ましい。
そこで、排気ガスの取り入れ口は
、排気マニホールドの枝管に設け
ている。補助ポートに連通した蓄圧室を設けて高圧化することも可能である。また、EGRガス噴出口にノズルを設けると、気筒内に噴出する排気ガスの流速を高めることができるため好適である。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では、気筒外に排出された排気ガスをオーバーラップ期間中に一部の排気ポートから気筒内に流入させることにより、燃焼したての排気ガスを掃気できるが、気筒内に流入する排気ガスはいったん気筒外に排出されていて温度が低下しているため、気筒内の温度を従来よりも低下させることができる。その結果、圧縮比のアップ及び吸気温度の低下並びに充填効率の向上とによって燃費改善に貢献できる。また、燃焼温度を下がるため、ノッキングの防止又は抑制にも貢献できる。
【0013】
また、燃焼したての高温の排気ガスを掃気して温度が低下した排気ガスのみをEGRガスとして気筒内に取り込みできるため、気筒内の排気ガスの量(質量)が不安定化することも防止又は著しく抑制して、EGRガスの流入精度を向上できる。従って、負荷や回転数に応じたEGRガス制御の応答性も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】(A)は
図1のIIA-IIA 視概略断面図、(B)は
図1のIIB-IIB 視概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、内燃機関の概要を説明する。本実施形態の内燃機関は、基本的な構造は従来と同様であり、機関本体として、シリンダブロック1とその上面に固定されたシリンダヘッド2とを有している。シリンダブロック1は、ピストン3が摺動自在に嵌まった3つの気筒(シリンダボア)4,5,6を有しており、ピストン3の往復動は図示しないコンロッドを介してクランク軸の回転に変換される。敢えて述べるまでもないが、3つの気筒4〜6はクランク軸の中心線7の方向に並んでいる。
【0016】
シリンダヘッド2には、各気筒4〜6に向けて開口した台錘状の凹所8を形成しており、その中心部には点火プラグ9を露出させて、クランク軸の中心線7を挟んだ両側には、一対ずつの吸気ポート10と排気ポート11とが開口している。各吸気ポー10は吸気弁12で開閉され、各排気ポート11は排気弁13で開閉される。
【0017】
各気筒4〜6に対応した一対の吸気ポート10は、それぞれ1つの吸気穴14に集合している一方、シリンダヘッド2の一方の長手側面2aには吸気マニホールド35(
図2(B)参照)が固定されており、各吸気穴14に吸気マニホールド35の枝管が連通している。図示していないが、各吸気穴14に対応して燃料噴射ノズルを設けており、燃料は各吸気穴14に噴射される。
【0018】
各気筒4〜6に対応した一対の排気ポート11はそれぞれ排気穴15に集合している一方、シリンダヘッド2における他方の長手側面2bには排気マニホールド16が固定されており、各排気穴15が排気マニホールド16の各枝管17,18,19に連通している。
【0019】
そして、各気筒4〜6には排気ガスを還流させるようになっているが、その説明のため、便宜的に、3つの気筒4〜6を、シリンダブロック1及びシリンダヘッド2の1つの短手側面20に近いものから順に第1気筒4,第2気筒5,第3気筒6と呼ぶと共に、排気マニホールド16の枝管17〜19についても、シリンダブロック1及びシリンダヘッド2の1つの短手側面20に近いものから順に、第1枝管17、第2枝管18、第3枝管19と呼ぶこととする。
【0020】
図1に示しているように、排気マニホールド16の第1枝管17と第2気筒5の吸気穴14とは第1EGRガス還流路22で接続され、排気マニホールド16の第2枝管18と第3気筒6の吸気穴14とは第2EGRガス還流路23で接続され、排気マニホールド16の第3枝管19と第1気筒4の吸気穴14とは第3EGRガス還流路24で接続されている。
【0021】
つまり、気筒4,5,6と枝管17〜19に関して、隣り合った気筒4,5,6の枝管17〜19と吸気穴14とが接続されて、両端に離れた枝管19と吸気穴14とが接続されている。
【0022】
本実施形態では、各管路22,23,24は排気ガス貯留室を兼用しているが、
図2に一点鎖線で示すように、各EGRガス還流路22,23,24に、それら管路よりも大きい断面積の貯留用チャンバ25を設けることも可能である。また、各EGRガス還流路22,23,24をシリンダヘッド2の内部を通る冷却水に晒すなどして、排気ガスを冷却するのが好ましい。EGRガス還流路22,23,24がシリンダヘッド2の外側に露出する場合は、露出した部分に水冷式等の排気ガスクーラ(EGRクーラ)を設けてもよい。
【0023】
各EGRガス還流路22,23,24に枝管17〜19から排気ガスが取り込まれるが、排気ガス取り入れ口26には、
図2(A)のように流入制御弁27を設けている。本実施形態の流入制御弁27は、ニードル式の弁体28とこれを駆動するアクチユェータ29とを有している。もとより、バタフライ弁方式など、各種の弁手段を採用できる。
【0024】
各EGRガス還流路22,23,24の排出口に、
図2(B)に明示するように排出制御弁(流量制御弁)30を設けている。排出制御弁30は流入制御弁27と同じ構造であり、ニードル式の弁体31とこれを駆動するアクチユェータ32とを有している。排出制御弁30についても、バタフライ弁方式などの各種の弁手段を採用できる。また、各EGRガス還流路22,23,24の排出口には、排気ガスを気筒4,5,6に向けて噴出させるノズル33を設けている。従って、本実施形態では、EGRガス還流路22,23,24の排出口やノズル33の箇所がEGRガス噴出口34になっている。
【0025】
さて、図
3では、3つの気筒4,5,6における行程の関係を示している。すなわち、丸付き数字の1は圧縮行程、丸付き数字の2は膨張行程(爆発行程)、丸付き数字の3は排気行程、丸付き数字の4は吸気行程を示しており、内燃機関は4サイクル3気筒なので、各気筒の行程(位相)はクランク軸の回転角度で240度ずつずれている。
【0026】
そこで、例えば、第1気筒4が排気行程のときに、第1枝管17の流入制御弁27を開いて排出制御弁30は閉じることで第1EGRガス還流路22に高圧の排気ガスを貯留し、第2気筒5がオーバーラップ期間中のときに、第1EGRガス還流路22の流入制御弁27は閉じて排出制御弁30を開く第1噴射を行うことで、高圧でしかも温度が低下した排気ガスを第1EGRガス還流路22から第2気筒5に噴出させる。
【0027】
燃焼したてで高温の排気ガスを排気ポート11から強制的に掃気することができる。すなわち、ピストン3が上昇しているため、燃焼したての排気ガスは主としてピストン3の押し上げによっても排出されるが、吸気ポート10から排気ガスが噴出することで、気筒5の内部の圧力は高くなるため、燃焼したての排気ガスは、第2気筒5の内部の空気流(タンブル流)に乗って排気ポート11から的確に排除される。
【0028】
燃焼したての排気ガスを掃気できるほどの排気ガスが第2気筒5に噴出したら、いったん排出制御弁30を閉じて、オーバーラップ期間が経過したら、再び排出制御弁30を開く第2噴射を行うことにより、本来のEGRガスを第2気筒5に導入する。これにより、気筒に流入するEGRガスの全部又は殆どを冷却されたガスのみで構成して、充填効率や圧縮比のアップを図ることができる。
【0029】
第2気筒5が排気行程のときには、第2EGRガス還流管路23の流入制御弁27を開いて排出制御弁30は閉じることで第2EGRガス還流路23に排気ガスを貯留し、第3気筒6がオーバーラップ期間中のときに、第2EGRガス還流路23の流入制御弁27は閉じて排出制御弁30を開く第1噴射を行うことで、第3気筒6の掃気を行い、次いで、オーバーラップ期間が経過してから第2噴射を行う。
【0030】
同様に、第3気筒6が排気行程のときには、第3枝管19の流入制御弁27を開いて排出制御弁30は閉じることで第3EGRガス還流路24に排気ガスを貯留し、第1気筒4がオーバーラップ期間中のときに第1噴射を行い、オーバーラップ期間が経過してから第2噴射を行う。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本願発明は内燃機関に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 シリンダブロック
2 シリンダヘッド
3 ピストン
4,5,6 気筒(シリンダボア)
10 吸気ポート
11 排気ポート
12 吸気弁
13 排気弁
14 吸気穴
16 排気マニホールド
17,18,19 排気マニホールドの枝管
22,23,24 排気ガス貯留室を兼用するEGRガス還流路
26 排気ガス取り入れ口
27 流入制御弁
30 排出制御弁(流量制御弁)
33 ノズル
34 EGRガス噴出口