特許第6258973号(P6258973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6258973
(24)【登録日】2017年12月15日
(45)【発行日】2018年1月10日
(54)【発明の名称】塩素化炭化水素の生成プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/10 20060101AFI20171227BHJP
   C07C 19/01 20060101ALI20171227BHJP
   C07C 17/25 20060101ALI20171227BHJP
   C07C 21/04 20060101ALI20171227BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20171227BHJP
【FI】
   C07C17/10
   C07C19/01
   C07C17/25
   C07C21/04
   !C07B61/00 300
【請求項の数】19
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2015-553878(P2015-553878)
(86)(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公表番号】特表2016-507518(P2016-507518A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】US2014012262
(87)【国際公開番号】WO2014116562
(87)【国際公開日】20140731
【審査請求日】2017年1月18日
(31)【優先権主張番号】61/755,062
(32)【優先日】2013年1月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/789,786
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/060,957
(32)【優先日】2013年10月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515198913
【氏名又は名称】アクシオール オハイオ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AXIALL OHIO,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シャーウッド、スコット エイ.
(72)【発明者】
【氏名】レスター、スティーブン ロバート
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−507877(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/085862(WO,A1)
【文献】 特開2012−140397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/10
C07C 19/01
C07C 17/25
C07C 21/04
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを調製する方法であって、
五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物の存在下で、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させ、それにより1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む生成物を形成することを含む、方法。
【請求項2】
前記塩素の供給源は塩素(Cl)、塩化スルフリル、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多価アンチモン化合物は前記五価アンチモン化合物及び必要に応じて三価アンチモン化合物を含み、
前記五価アンチモン化合物は、以下の式(I)により表わされる1つ又は複数の五価アンチモン化合物を含み、
Sb(R(Cl) (I)
式中、a及びbの合計は5であり、ただしbは少なくとも2であり、
は、aごとにそれぞれ独立して、直鎖、分岐又は環式アルキル、及びアリールからなる群から選択され、
前記三価アンチモン化合物は、以下の式(II)により表わされる1つ又は複数の三価アンチモン化合物を含み、
Sb(R(Cl) (II)
式中、c及びdの合計は3であり、
は、cごとにそれぞれ独立して、直鎖、分岐、又は環式アルキル、及びアリールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記五価アンチモン化合物の前駆体から前記五価アンチモン化合物の少なくとも一部を形成することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記五価アンチモン化合物の前記前駆体は、式(II)により表わされる前記三価アンチモン化合物を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記五価アンチモン化合物の前記前駆体は、三塩化アンチモン、トリアルキルアンチモン、トリアリールアンチモン、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記多価アンチモン化合物は固体支持体に支持されており、前記固体支持体は、シリカ支持体、アルミナ支持体、ゼオライト支持体、及びそれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記多価アンチモン化合物の存在下における1,1,1,3−テトラクロロプロパンと前記塩素の供給源との反応は、少なくとも40℃の温度及び少なくとも1psia(≒6.89476kPa)の圧力で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1,1,2,3,−テトラクロロプロペンを調製する方法であって、
第1の反応にて、五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物の存在下で1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させ、それにより1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び前記五価アンチモン化合物を含む粗生成物を形成することと、
第2の反応にて、塩化第二鉄の存在下で前記粗生成物を加熱し、それにより1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む生成物を形成することとを含む、方法。
【請求項10】
前記五価アンチモン化合物は、以下の式(I)により表わされる1つ又は複数の五価アンチモン化合物を含み、
Sb(R(Cl) (I)
式中、a及びbの合計は5であり、ただしbは少なくとも2であり、
は、aごとにそれぞれ独立して、直鎖、分岐、又は環式アルキル、及びアリールからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記五価アンチモン化合物は五塩化アンチモンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む前記生成物は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び三塩化アンチモンを更に含み、
前記方法は、前記生成物を蒸留してそれにより、
1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む塔頂生成物、及び
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び三塩化アンチモンを含む塔底生成物を形成することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記塔底生成物の少なくとも一部を前記第1の反応に導入することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の反応は、前記生成物の少なくとも一部が1,1,2,3−テトラクロロプロペン蒸気を含む蒸気生成物に変換される温度及び圧力で実施され、
前記方法は、
1,1,2,3−テトラクロロプロペン蒸気を含む蒸気生成物を前記第2の反応から取り出すことと、
前記第2の反応から取り出された前記蒸気生成物を、液体1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む液体生成物へと凝縮させることとを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
1,1,2,3,−テトラクロロプロペンを調製する方法であって、
第1の反応にて、五塩化アンチモンを含む五価アンチモン化合物の存在下で1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させ、それにより、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,3−テトラクロロプロパン、五塩化アンチモン、及び三塩化アンチモンを含む粗生成物を形成することと、
前記粗生成物を蒸留してそれにより、
1,1,1,3−テトラクロロプロパン及び五塩化アンチモンを含む塔頂生成物、及び
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び三塩化アンチモンを含む塔底生成物を形成することと、
塩素の供給源を前記塔底生成物に導入してそれにより前記三塩化アンチモンの少なくとも一部を五塩化アンチモンに変換し、それにより、修飾された塔底生成物を形成することと、
第2の反応にて、前記修飾された塔底生成物を塩化第二鉄の存在下で加熱し、それにより1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む生成物を形成することとを含む、方法。
【請求項16】
前記方法はバッチ法、連続法、又はそれらの組み合わせとして実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記方法はバッチ法、連続法、又はそれらの組み合わせとして実施される、請求項9又は15に記載の方法。
【請求項18】
前記1,1,1,3−テトラクロロプロパンは、塩化鉄、鉄金属、及びリン酸トリアルキルの存在下で四塩化炭素をエチレンと反応させることにより形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記1,1,1,3−テトラクロロプロパンは、塩化鉄、鉄金属、及びリン酸トリアルキルの存在下で四塩化炭素をエチレンと反応させることにより形成される、請求項9又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1,1,3−テトラクロロプロパン等のテトラクロロプロパンから、例えば1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンのようなペンタクロロプロパン等の塩素化炭化水素を調製する方法、及びペンタクロロプロパン等の塩素化アルカンから、例えばテトラクロロプロペンのような必要により塩素化されたアルケンを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素化炭化水素は、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)等のフッ素化炭化水素を製造するための供給原料として有用である。ヒドロフルオロオレフィンは、例えば、冷媒、ポリウレタン発泡剤、消火剤、及び起泡剤として、又はそれらの成分として使用することができる。例示の目的だが、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンは、HFO調製用の供給原料である1,1,2,3−テトラクロロプロペンの製造における中間体、及び一般的にトリアレート(Triallate)と呼ばれる除草剤トリクロロアリルジイソプロピルチオカルバメートの調製における中間体として使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
典型的には、塩素化炭化水素の調製は、反応終了まで幾つかのステップを必要とし、長い時間がかかり、及び/又は低温の反応温度と関連冷却装置を必要としうる反応を含み、それらには経済的コストの増加が伴う場合がある。既存の方法と比べてより少ない工程及び/又はより短い反応時間しか必要としない、塩素化炭化水素を形成するための新しい方法を開発することが望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の幾つかの実施形態によると、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを調製する方法が提供され、その方法は、五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物の存在下で、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させ、それにより1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む生成物を形成することを含む。
【0005】
本発明の幾つかの更なる実施形態によると、アルケン生成物を形成する方法が提供され、その方法は、塩化第二鉄と、五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物との存在下で塩素化アルカン基質を加熱し、それによりアルケン生成物を含む生成物を形成することを含み、アルケン生成物は、共有結合でそれに結合している少なくとも1つの塩素基を必要に応じて有し、塩素化アルカン基質及びアルケン生成物はそれぞれ、いずれも同一の炭素骨格構造を有する。
【0006】
本発明の幾つかの更なる実施形態によると、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを調製する方法が提供され、その方法は、(a)第1の反応にて、五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物の存在下で1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させ、それにより1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び前記五価アンチモン化合物を含む粗生成物を形成することと、(b)第2の反応にて、塩化第二鉄の存在下で粗生成物を加熱し、それにより1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む生成物を形成することとを含む。
【0007】
本発明の幾つかの更なる追加の実施形態によると、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを調製する方法が提供され、その方法は、(a)第1の反応にて、五塩化アンチモンを含む五価アンチモン化合物の存在下で1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させ、それにより、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,3−テトラクロロプロパン、五塩化アンチモン、及び三塩化アンチモンを含む粗生成物を形成することと、(b)粗生成物を蒸留してそれにより(i)1,1,1,3−テトラクロロプロパン及び五塩化アンチモンを含む塔頂生成物(tops product)、及び(ii)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び三塩化アンチモンを含む塔底生成物(bottoms product)を形成することと、(c)塔底生成物を塩素の供給源に導入してそれにより三塩化アンチモンの少なくとも一部を五塩化アンチモンに変換し、それにより、修飾された塔底生成物を形成することと、(d)第2の反応にて、その修飾された塔底生成物を塩化第二鉄の存在下で加熱し、それにより1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む生成物を形成することとを含む。
【0008】
本発明を特徴づける特徴は、本開示に添付されており、本開示の一部を形成する特許請求の範囲で特に指摘されている。本発明のそれらの特徴及び他の特徴、その実施上の利点、及びその使用により得られる特定の目的は、本発明の非限定的な実施形態が例示及び記載されている以下の詳細な説明から、より完全に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の幾つかの実施形態による1,1,2,3−テトラクロロプロペンを形成する方法の概略図。
図2】本発明の幾つかの更なる実施形態による1,1,2,3−テトラクロロプロペンを形成する方法の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び2において、類似の番号は、特に記述がない限り、例えば導管、反応の流れ、反応器、濃縮器、及び蒸留塔等の同じ装置、流れ、及び/又は構成要素を指す。
本明細書で使用される場合、単数冠詞「a」、「an」、及び「the」は、特に明白かつ明確に1つのものを指すと限定されていない限り、複数のものを指すことを含む。
【0011】
特に指定がない限り、本明細書で開示された範囲又は比率は全て、その中に包括されるありとあらゆる部分的範囲又は部分的比率を包含すると理解されるべきである。例えば、「1〜10」と記載されている範囲又は比率は、最小値1と最大値10との間(境界値を含む)のありとあらゆる部分的範囲、すなわち、これらに限定されないが、1〜6.1、3.5〜7.8、及び5.5〜10等の、最小値1以上で始まり、最大値10以下で終わる全ての部分的範囲又は部分的比率を含むとみなされるべきである。
【0012】
実施例以外において、すなわち特に示されている場合を除き、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている成分の量及び反応条件等を表わす数値は全て、いかなる場合でも「約」との語で修飾されていると理解されるべきである。
【0013】
これらに限定されないが、本明細書に引用されている権利化された特許及び特許出願等の文献は全て、特に指定がない限り、それらの全体が「参照により組み込まれる」とみなされるべきである。
【0014】
本明細書で使用される場合、単位「psia」は、真空を基準とするポンド毎平方インチ絶対圧を意味する。
本明細書で使用される場合、単位「psig」は、周囲大気圧を基準とするポンド毎平方インチゲージ圧を意味する。
【0015】
本明細書で使用される場合、「アルキル」の列には、「シクロアルキル」及び/又は「直鎖又は分岐アルキル」が含まれる。直鎖又は分岐アルキル等の「直鎖又は分岐」基の列には、本明細書の場合、以下のものが含まれると理解される。メチレン基又はメチル基、例えば直鎖C〜C25アルキル基等の直鎖の基、例えばC〜C25アルキル基等の適切に分岐した基。
【0016】
幾つかの実施形態において、「直鎖又は分岐アルキル」との用語は、本明細書で使用される場合、直鎖又は分岐C〜C25アルキル、又は直鎖又は分岐C〜C10アルキル、又は直鎖若しくは分岐C〜C10アルキルを意味する。本発明の種々のアルキル基をそれらから選択することができるアルキル基の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる。メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル。
【0017】
幾つかの実施形態において、「シクロアルキル」との用語は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、例えばC〜C12シクロアルキル(これらに限定されないが、C〜Cシクロアルキルを含む)基のような適切な環状のアルキル基を意味する。シクロアルキル基の例には、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチルが含まれる。また、幾つかの実施形態において、本明細書中に使用される場合、「シクロアルキル」との用語には、以下のものが含まれる。これらに限定されないが、例えばビシクロ[2.2.1]ヘプチル(又はノルボルニル)及びビシクロ[2.2.2]オクチルのような架橋環ポリシクロアルキル基(又は架橋環多環式アルキル基)、及びこれらに限定されないが、例えばオクタヒドロ−1H−インデニル及びデカヒドロナフチルのような融合環ポリシクロアルキル基(又は融合環多環式アルキル基)。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」の列には、「シクロアルケニル」及び/又は「直鎖又は分岐アルケニル」が含まれ、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する非芳香族性の基を意味する。幾つかの実施形態において、「アルケニル」との用語は、本明細書で使用される場合、直鎖又は分岐C〜C25アルケニル(これらに限定されないが、直鎖又は分岐C〜C10アルケニルを含む)を含む。アルケニル基の例には、これらに限定されないが、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニルが含まれる。幾つかの実施形態において、「シクロアルケニル」との用語は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、例えばC〜C12シクロアルケニル(これらに限定されないが、C〜Cシクロアルケニルを含む)基のような適切な環式のアルケニル基を意味する。シクロアルケニル基の例には、これらに限定されないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、及びシクロオクテニルが含まれる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」の列には、「シクロアルキニル」及び/又は「直鎖又は分岐アルキニル」が含まれ、少なくとも1つの炭素間三重結合を有する基を意味する。幾つかの実施形態において、「アルキニル」との用語は、本明細書で使用される場合、直鎖又は分岐C〜C25アルキニル(これらに限定されないが、直鎖又は分岐C〜C10アルキニルを含む)を含む。アルキニル基の例には、これらに限定されないが、エチニル、プロピニル、ブチニル(例えば1−ブチニル及び2−ブチニル)、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、及びオクチニルが含まれる。幾つかの実施形態において、「シクロアルキニル」との用語は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、例えばC〜C12シクロアルキニル(これらに限定されないが、C〜C10シクロアルキニルを含む)基のような適切な環式のアルキニル基を意味する。シクロアルキニル基の例には、これらに限定されないが、シクロオクチニル及びシクロノニニルが含まれる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アリール」との用語は、環式アリール基及び多環式アリール基を含む。幾つかの実施形態の場合、アリール基には、これらに限定されないが、C〜C10アリール(多環式アリール基を含む)等のC〜C18アリールが含まれる。アリール基の例には、これらに限定されないが、フェニル、ナフチル、アントラセニル、及びトリプチセニルが含まれる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アルカン」との用語は、「シクロアルカン」及び/又は「直鎖又は分岐アルカン」を含む。「直鎖又は分岐アルカン」の列には、以下のものが含まれると本明細書では理解される。メタン、例えば直鎖C〜C25アルカンのような直鎖のアルカン、例えば分岐C〜C25アルカンのような適切に分岐したアルカン。
【0022】
幾つかの実施形態において、「直鎖又は分岐アルカン」との用語は、本明細書で使用される場合、直鎖又は分岐C〜C25アルカン、又は直鎖若しくは分岐C〜C10アルカン、又は直鎖若しくは分岐C〜C10アルカンを含む。本発明の種々のアルカンをそれらから選択することができるアルカン基の例には、これらに限定されないが、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、sec−ブタン、tert−ブタン、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、及びデカンが含まれる。
【0023】
幾つかの実施形態において、「シクロアルカン」との用語は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、例えばC〜C12シクロアルカン(これらに限定されないが、C〜Cシクロアルカンを含む)のような適切な環式のアルカンを意味する。シクロアルカン基の例には、これらに限定されないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びシクロオクタンが含まれる。また、幾つかの実施形態において、「シクロアルカン」との用語は、本明細書で使用される場合、以下のものを含む。これらに限定されないが、例えばビシクロ[2.2.1]ヘプタン(又はノルボルナン)及びビシクロ[2.2.2]オクタンのような架橋環ポリシクロアルカン(又は架橋環多環式アルカン)、及びこれらに限定されないが、例えばオクタヒドロ−1H−インデナン(indenane)及びデカヒドロナフタレンのような融合環ポリシクロアルカン(又は融合環多環式アルカン)。
【0024】
本明細書で使用される場合、「アルケン」の列には、「シクロアルケン」及び/又は「直鎖又は分岐アルケン」が含まれ、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する非芳香族性のアルケンを意味する。幾つかの実施形態において、「直鎖又は分岐アルケン」との用語は、本明細書で使用される場合、直鎖又は分岐C〜C25アルケン(これらに限定されないが、直鎖又は分岐C〜C10アルケンを含む)を意味する。アルケンの例には、これらに限定されないが、エテン、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキサン、ヘプテン、オクタン、ノネン、及びデセンが含まれる。幾つかの実施形態において、「シクロアルケン」との用語は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、例えばC〜C12シクロアルケン(これらに限定されないが、C〜Cシクロアルケンを含む)のような適切な環式のアルケンを意味する。シクロアルケン基の例には、これらに限定されないが、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、及びシクロオクテンが含まれる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「アルキン」の列には、「シクロアルキン」及び/又は「直鎖又は分岐アルキン」が含まれ、少なくとも1つの炭素間三重結合を有するシクロアルカン又はアルカンを意味する。幾つかの実施形態において、「直鎖又は分岐アルキン」との用語は、本明細書で使用される場合、直鎖又は分岐C〜C25アルキン(これらに限定されないが、直鎖又は分岐C〜C10アルキンを含む)を意味する。アルキンの例には、これらに限定されないが、エチン、プロピン、ブチン(1−ブチン及び2−ブチン)、ペンチン、ヘキシン、ヘプチン、及びオクチンが含まれる。幾つかの実施形態において、「シクロアルキン」との用語は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、例えばC〜C12シクロアルキン(これらに限定されないが、C〜C10シクロアルキンを含む)のような適切な環式のアルキン基を意味する。シクロアルキンの例には、これらに限定されないが、シクロオクチン及びシクロノニンが含まれる。
【0026】
本明細書で使用される場合、芳香族化合物等の「芳香族」との用語は、環式芳香族及び多環式芳香族を含む。幾つかの実施形態の場合、芳香族化合物には、これらに限定されないが、例えばC〜C10芳香族化合物(多環式芳香族化合物を含む)のようなC〜C18芳香族化合物が含まれる。芳香族化合物の例には、これらに限定されないが、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、及びトリプチセンが含まれる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「多価アンチモン化合物」、「多価アンチモン触媒」、及び「多価アンチモン触媒化合物」等の「多価アンチモン」との用語及び関連する用語には、これらに限定されないが、五価アンチモン、三価アンチモン、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態によると、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを調製する方法が提供され、その方法は、五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物の存在下で、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させ、それにより1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む生成物を形成することを含む。幾つかの実施形態の場合、反応は、1つ又は複数の好適な反応器中で実施される。幾つかの実施形態の場合、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを調製する方法は、バッチ法、連続法、並びに、例えば1つ又は複数のバッチ法及び1つ又は複数の連続法の組み合わせのようなそれらの組み合わせで実施される。
【0029】
幾つかの実施形態において、1,1,1,3−テトラクロロプロパンは、任意の好適な供給源から得ることができる。幾つかの実施形態の場合、1,1,1,3−テトラクロロプロパンは、塩化鉄、鉄金属、及びリン酸トリアルキルの存在下で、四塩化炭素をエチレンと反応させることにより形成される。塩化鉄の例には、これらに限定されないが、塩化第二鉄及び/又は塩化第一鉄が含まれる。「鉄金属」との用語は、本明細書で使用される場合、「金属鉄」及びその供給源を含む。リン酸トリアルキルの例には、これらに限定されないが、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、及び/又はリン酸トリブチルが含まれる。そのような方法による1,1,1,3−テトラクロロプロパンの調製は、以下の文献に記載されている。例えば、米国特許第4,535,194号明細書、米国特許第4,650,914号明細書、及び米国特許第8,487,146号明細書(例えば第4欄20行目から第5欄55行目まで)、及び欧州特許第0131561号明細書。幾つかの実施形態の場合、市販の1,1,1,3−テトラクロロプロパン材料は、それを合成するために使用された化学反応物に由来する化学成分を含んでいる場合がある。例えば、市販の1,1,1,3−テトラクロロプロパンは、夾雑レベルの四塩化炭素及び他の塩素化炭化水素を含んでいる場合がある。
【0030】
本発明の幾つかの実施形態において、本プロセスで使用される1,1,1,3−テトラクロロプロパンは、幾つかの実施形態の場合、塩素化炭化水素夾雑物、触媒、アルコール等の他の有機物を実質的に含んでおらず、幾つかの実施形態の場合、例えば1000重量ppm未満の水しか含有しないように実質的に水を含んでいない。
【0031】
本発明による1,1,1,3−テトラクロロプロパンから1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを調製する方法は、塩素の供給源の存在下で実施される。塩素の供給源は、反応に塩素を提供するあらゆる供給源であってもよい。幾つかの実施形態の場合、塩素の供給源は、例えば、不要な副生物の促進又は生成、多価アンチモン触媒の活性低下、反応効率に対する影響、又は塩素化反応が実施される温度に対する望ましくない影響等のような反応に有害な結果を示さないか又は引き起こさない。幾つかの実施形態の場合、塩素の供給源は、液体状及び/又はガス状塩素(Cl)である。幾つかの実施形態において、塩素の供給源は、塩素(Cl)、塩化スルフリル(SOCl)、並びに、塩素(Cl)及び塩化スルフリル(SOCl)の組み合わせのようなそれらの組み合わせから選択される。
【0032】
幾つかの実施形態の場合、塩素の供給源は塩素(Cl)であり、1,1,1,3−テトラクロロプロパンと塩素の供給源との反応は、例えば1:1のような、0.2:1〜1.5:1、又は0.2:1〜1.1:1、又は0.9:1〜1.1:1(記載した各数値を含む)の塩素(Cl)対1,1,1,3−テトラクロロプロパンのモル比で実施される。
【0033】
幾つかの場合、1.5:1(塩素(Cl)対1,1,1,3−テトラクロロプロパンの比)を超えるような過剰量の塩素が使用されると、幾つかの実施形態では、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン等の他のペンタクロロプロパン、及び過剰の塩素化物質が副生物として生成される場合がある。逆に、使用される塩素の量が0.2:1(塩素(Cl)対1,1,1,3−テトラクロロプロパンの比)よりも著しく低いと、幾つかの実施形態の場合、未反応物質の量が増加する結果となり、未反応物質を反応器から取り除き(例えば蒸留により)、それを廃棄するか又は再使用することが必要になり、資本コスト及び実施コストが高くなる場合がある。
【0034】
本発明による1,1,1,3−テトラクロロプロパンから1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを調製する方法は、五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物の存在下で実施される。幾つかの実施形態の場合、多価アンチモン化合物(複数可)は五価のアンチモン化合物(複数可)及び必要に応じて三価アンチモン化合物(複数可)を含む。
【0035】
幾つかの実施形態の場合、五価アンチモン化合物は、以下の式(I)により表わされる1つ又は複数の五価アンチモン化合物を含む。
Sb(R(Cl) (I)
式(I)に関して、a及びbの合計は5であり、ただしbは少なくとも2であり、Rは、aごとにそれぞれ独立して、直鎖又は分岐アルキル、環式アルキル、及び/又はアリールから選択される。
【0036】
更に式(I)に関して、Rをそれらから下付文字aごとにそれぞれ独立して選択することができる直鎖又は分岐アルキル基、環式アルキル基、及びアリール基の種類及び例には、これらに限定されないが、例えば直鎖又は分岐C〜C25アルキル基、C〜C12シクロアルキル、及び/又はC〜C18アリール、並びにそれらの関連する例のような、本明細書の上記で列挙されている種類及び例が含まれる。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態と共に使用することができる五価アンチモン化合物の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる。五塩化アンチモン、例えばトリブチルアンチモンジクロリド等のトリアルキルアンチモンジクロリド、例えばトリフェニルアンチモンジクロリド等のトリアリールアンチモンジクロリド。
【0038】
幾つかの実施形態の場合、三価アンチモン化合物は、以下の式(II)により表わされる1つ又は複数の三価アンチモン化合物を含む。
Sb(R(Cl) (II)
式(II)に関して、cは0〜3であり、dは0〜3であり、ただしc及びbの合計は3であり、Rは、cごとにそれぞれ独立して、直鎖又は分岐アルキル、環式アルキル、及び/又はアリールから選択される。
【0039】
更に式(II)に関して、Rをそれらから下付文字cごとにそれぞれ独立して選択することができる直鎖又は分岐アルキル基、環式アルキル基、及びアリール基の種類及び例には、これらに限定されないが、例えばC〜C25アルキル基、C〜C12シクロアルキル、及び/又はC〜C18アリール、並びにそれらの関連する例のような、本明細書の上記で列挙されている種類及び例が含まれる。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態と共に使用することができる三価アンチモン化合物の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる。三塩化アンチモン、例えばトリブチルアンチモン等のトリアルキルアンチモン、例えばトリフェニルアンチモン等のトリアリールアンチモン。
【0041】
幾つかの実施形態において、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを調製する方法は、五価アンチモン化合物の前駆体から五価アンチモン化合物の少なくとも一部を形成することを含む。幾つかのさらなる実施形態において、五価アンチモン化合物の前駆体は、上記の式(II)により表わされる1つ又は複数の三価アンチモン化合物を含む。幾つかの実施形態の場合、五価アンチモン化合物の前駆体は、例えば反応器の反応帯において塩素(Cl)等の塩素の供給源と接触し、五価アンチモン化合物の前駆体の少なくとも一部が五価アンチモン化合物に変換される。非限定的な例示だが、三塩化アンチモン(前駆体化合物としての)を塩素(Cl)等の塩素の供給源と接触させると、三塩化アンチモンの少なくとも一部が五塩化アンチモンに変換される結果となる。幾つかの実施形態において、本発明の方法は、1つ又は複数の五価アンチモン化合物及び1つ又は複数の三価アンチモン化合物の両方の存在下で実施される。
【0042】
幾つかの実施形態の場合、五価アンチモン化合物の前駆体は、三塩化アンチモン、トリアルキルアンチモン、トリアリールアンチモン、及びそれらの2つ以上の組み合わせから選択される。幾つかの更なる実施形態の場合、五価アンチモン化合物の前駆体は、三塩化アンチモン、トリフェニルアンチモン、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0043】
幾つかの実施形態の場合、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの形成をもたらす反応に使用される多価アンチモン化合物の量は、広く様々であってもよい。幾つかの実施形態の場合、多価アンチモン化合物は、例えば触媒量で存在するなど、記載の反応を触媒するのに有効な量で存在する。有効量を超える多価アンチモン化合物が使用される場合、多価アンチモン化合物自体のコスト、及び/又は使用した(又は消費した)多価アンチモン化合物に関連する廃棄コストを考慮してもよい。そのようなコストは、幾つかの実施形態の場合、プロセス全体のコストに影響を及ぼす(増加させる等)場合があるためである。
【0044】
使用される多価アンチモン触媒の有効量は、例えば温度、圧力、反応物流速、反応槽のタイプなど、使用する他の反応条件にも依存し得る。標準(又は周囲)条件では液体である五塩化アンチモンの場合、液体塩素化反応に使用される五価アンチモン触媒の量は、幾つかの実施形態の場合、1,1,1,3−テトラクロロプロパン反応物の体積に基づき、例えば0.5体積パーセントなど、0.05〜2体積パーセントの範囲であってもよい。幾つかの実施形態の場合、使用される五価アンチモン触媒の量は、0.05〜0.5体積パーセントの範囲であってもよい。幾つかの実施形態の場合、より大量の五価アンチモン触媒が反応に存在すると、より少量の五価アンチモン触媒と比較して、反応が終了するまでの時間が短縮される。
【0045】
本発明の幾つかの実施形態において、(i)多価アンチモン化合物は、固体支持体に支持されていない等、遊離形態で使用されるか、及び/又は(ii)多価アンチモン化合物は、固体粒子支持体等の固体支持体(又は固体担体)に支持されている。幾つかの更なる実施形態の場合、多価アンチモン化合物は、固体粒子支持体等の固体支持体(又は固体担体)に支持されている。幾つかの実施形態の場合、固体支持体は、1つ又は複数のシリカ支持体、1つ又は複数のアルミナ支持体、1つ又は複数のゼオライト支持体、1つ又は複数のクレー支持体、1つ又は複数の活性炭支持体、及びそれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0046】
幾つかの実施形態の場合、沈降シリカ等の非晶質シリカを、多価アンチモン化合物(及び/又はその前駆体物質)の支持に使用することができる。幾つかの実施形態の場合、非晶質シリカ粉末のサイズは様々であってもよく、60〜200メッシュ(米国ふるいサイズ)のサイズ範囲内に入る。幾つかの実施形態の場合、シリカの結晶形態はいずれも支持体として使用することができる。幾つかの実施形態の場合、以下の結晶形態の1つ又は複数のシリカが使用される。石英、トリジマイト、及びクリストバライト。
【0047】
多価アンチモン化合物(及び/又はその前駆体物質)を支持するために使用することができるゼオライトには、これらに限定されないが、塩素化反応で使用するのに好適な合成又は天然アルミニウム及びカルシウム、又はケイ酸アルミニウム及びケイ酸ナトリウムが含まれる。幾つかの実施形態の場合、そのようなゼオライトには、一般的なタイプのNaO・2Al・5SiO及びCaO・2Al・5SiOが含まれる。多価アンチモン化合物(及び/又はその前駆体物質)の支持体として使用することができるアルミナには、固体であって塩素化反応で使用するのに好適なものが含まれる。そのような材料の例には、アルミナ、活性アルミナ、及びか焼アルミナの種々の結晶形態が含まれ、それらには、無水アルミナ(α−Al)の安定形態が含まれる。幾つかの実施形態の場合、固体支持体の粒径は、非晶質沈降シリカについて記載されている範囲であってもよい。幾つかの実施形態の場合、多価アンチモン化合物は、表面に単に置かれているのではなく、支持体表面に化学的に結合しており、それにより、塩素化反応中に失われる多価アンチモン化合物の量の低減をもたらすことができる。
【0048】
幾つかの実施形態の場合、支持された多価アンチモン化合物は、当業者に知られている方法で調製することができる。非限定的な例示だが、三塩化アンチモンをトルエンに溶解し、非晶質シリカ等の固体触媒支持体の存在下で一晩還流することができる。続いて、シリカを冷却し、例えばろ過又は幾つかの他の好適な液固分離法などにより、液体トルエンから分離し、トルエン又は無水エタノール等の溶媒で洗浄し、乾燥する。いかなる理論にも束縛されるわけではないが、幾つかの実施形態の場合、固体支持体に支持された三価アンチモンの少なくとも幾つかは、塩素(Cl)等の塩素の供給源の存在下で、これも固体支持体に支持されている五価アンチモンに変換されると考えられる。
【0049】
本発明の幾つかの実施形態において、多価アンチモン化合物の存在下における1,1,1,3−テトラクロロプロパンと塩素の供給源との反応は、少なくとも40℃の温度で実施される。幾つかの実施形態の場合、反応帯等での反応の温度は、40℃〜200℃、又は50℃〜120℃、又は80℃〜120℃の範囲であってもよい。幾つかの実施形態の場合、反応帯等での温度が記載の範囲内で高くなるにつれて、より迅速な塩素化反応がもたらされるが、例えばヘキサクロロプロパン、望ましくないペンタクロロプロパン、及び一般的に重質物又は塔底生成物と呼ばれる物質などのような望ましくない副生物の同時生産が増加する。そのため、幾つかの実施形態の場合、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの生産は、40℃〜200℃の温度範囲で実施され、それにより、幾つかの実施形態の場合、望ましい反応速度が提供され、形成される副生物の数及び量を最小限に抑えることができる。
【0050】
本発明の幾つかの実施形態の場合、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを形成するために多価アンチモン化合物の存在下で1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させるための圧力(例えば反応帯内)は様々であってもよい。幾つかの実施形態の場合、圧力は少なくとも1psia(≒6.89476kPa)である。幾つかの更なる実施形態の場合、圧力は、例えば1psia(≒6.89476kPa)〜200psia(≒1378.952kPa)のような1psia(≒6.89476kPa)〜500psia(≒3447.38kPa)である。幾つかの実施形態の場合、例えば少なくとも100psia(≒689.476kPa)の高圧で処理することにより、塩化水素(HCl)副生物の回収がより容易になる。本発明の幾つかの実施形態の場合、大気圧未満の圧力を使用してもよい。幾つかの更なる実施形態の場合、大気圧未満の圧力は避けられる。
【0051】
本発明の幾つかの実施形態において、多価アンチモン化合物の存在下における1,1,1,3−テトラクロロプロパンと塩素の供給源との反応は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを形成するために、少なくとも40℃の温度及び少なくとも1psia(≒6.89476kPa)の圧力で実施される。
【0052】
本発明の幾つかの更なる実施形態において、多価アンチモン化合物の存在下における1,1,1,3−テトラクロロプロパンと塩素の供給源との反応は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを形成するために、40℃〜200℃の温度及び1psia(≒6.89476kPa)〜500psia(≒3447.38kPa)の圧力で実施される。幾つかの実施形態の場合、本発明の塩素化方法は、例えば塩化第二鉄又は塩化アルミニウムの存在下で実施される以前の塩素化方法と比較して、生成物の選択性の向上及び副生物生産の低減を提供する。
【0053】
幾つかの実施形態の場合、多価アンチモン化合物の存在下における1,1,1,3−テトラクロロプロパンと塩素の供給源との反応は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを形成するために、液相で実質的に乾燥した条件下で実施される。それは、例えば反応帯内に水が存在すると、多価アンチモン化合物の不活性化及び/又は塩素と水との反応に由来する次亜塩素酸(HOCl)の生成のいずれかがもたらされ、望ましくない酸素化副生物の生成がもたらされる場合があるからである。いかなる理論にも束縛されるわけではないが、水と塩素の反応及び/又は塩化水素副生物のため、例えば反応帯に水が存在すると、塩酸の生産が引き起こされる場合があると考えられる。幾つかの実施形態の場合、塩酸は望ましくない副生物であり、容器、配管、ポンプ、及び他の装置の腐食を引き起こす場合があり、より高価な塩酸耐食材料で作製された装置の使用が必要とされるだろう。幾つかの実施形態において、反応器(例えば反応帯)に投入される反応物、触媒等は0.1重量パーセント未満の水を有し、幾つかの実施形態の場合、実質的に乾燥していると記載することができる。幾つかの実施形態の場合、反応物及び反応媒体は、例えば5〜1000ppmの水のような1000ppm未満の水を含有していてもよい。本プロセスを開始する前に反応器に存在する水(あるいは、プロセスの中断等により、後に反応器に進入する水)は、例えば乾燥した窒素、塩化水素又は塩素のような実質的に乾燥した又は乾燥されたガスで反応器をパージすることにより排除することができる。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態において、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを形成するために多価アンチモン化合物の存在下で1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させる反応時間は様々であってもよく、例えば、反応が実施される温度、使用するアンチモン触媒の量、反応槽の性質、1,1,1,3−テトラクロロプロパン反応物の所望の変換度合い、塩素供給速度等の種々のパラメータに依存する場合がある。幾つかの実施形態において、反応がバッチ方式で実施される場合、反応時間は0.5〜12時間、又は3〜5時間の範囲であってもよい。幾つかの実施形態の場合、例えば反応器への塩素の流入が制限されることにより反応時間が長くなり過ぎると、望ましくない二量体副生物の形成の増加がもたらされる場合がある。
【0055】
幾つかの実施形態において、連続方式で実施される場合、反応器への反応物の流量、反応温度(及び圧力)、及び反応器から抜き出される排液の体積流量も、副生物の形成を最小限に抑えつつ、1,1,1,1,3−テトラクロロプロパン反応物の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンへの変換を所望の度合いで達成するように選択される。幾つかの実施形態の場合、連続方式で実施される場合、反応器中の平均滞留時間は0.5〜12時間、又は3〜5時間の範囲であってもよい。幾つかの実施形態の場合、平均滞留時間は、反応器への1,1,1,3−テトラクロロプロパン反応物の流速で反応器の容積を除したものと規定される。
【0056】
幾つかの実施形態の場合、多価アンチモン化合物の存在下における1,1,1,3−テトラクロロプロパンと塩素の供給源との反応は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを形成するために、例えば塩化水素と1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンのような反応から生じる塩素、反応混合物、反応生成物、副生物、及び副産物等の反応物質による腐食に耐性がある材料で作られている反応器内で実施される。幾つかの実施形態の場合、反応器を構成することができる好適な材料には、これらに限定されないが、例えばガラスの内張りをした鋼製容器のようなガラス、ニッケル、ニッケル合金、タンタル、例えばポリテトラフルオロエチレンの内張りをした容器、例えばヘイラー(HALAR)の内張りをした容器又はテフロン(登録商標)の内張りをした容器のようなフッ化炭化水素ポリマーが含まれる。反応器の容器それ自体は、記載した種類の塩素化反応用の任意の好適な設計であってもよい。幾つかの実施形態の場合、反応器は、垂直な円柱容器又は管状の設計であってもよく、その設計は、塩素化プロセスに伴う温度、圧力、及び腐食環境に適合することができる。幾つかの実施形態の場合、プラグ流管状反応器の場合のように、支持触媒を反応器に充填してもよく、あるいは連続撹拌槽型反応器と同様に操作してもよい。幾つかの実施形態の場合、触媒は固体担体に支持されておらず、例えば五塩化アンチモンのような液体の形態、あるいは固体の形態のままである場合、反応器は、塩素の供給源と1,1,1,3−テトラクロロプロパンと多価アンチモン化合物との間の密接な接触を得るために、かつ、適切な温度制御を可能にするために、反応混合物と熱伝達面との適切な接触を提供するべく撹拌器等の撹拌手段を有していてもよい。
【0057】
幾つかの実施形態の場合、多価アンチモン化合物の存在下における1,1,1,3−テトラクロロプロパンと塩素の供給源との反応は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを形成するために、バッチ反応及び/又は連続反応で実施することができる。両方の方式において、反応器は、例えば反応混合物を所望の反応温度にする加熱手段、例えば1,1,1,3−テトラクロロプロパン反応物の冷却又は反応器内の冷却コイルのように反応帯から発熱を除去する冷却手段、必要に応じて反応器から取り出されるガス及び排液の温度を制御する熱交換器手段、排ガススクラバー、固液分離器、及び塩化水素副生物オフガスを取り扱う蒸留塔、副生物からの主生成物の分離、及び液状の重質副生物と一緒に抜き出される多価アンチモン化合物の分離のような、追加装置に接続されている。
【0058】
幾つかの実施形態において、反応物である1,1,1,3−テトラクロロプロパン及びガス状塩素は、ガラスの内張りをした円柱状の反応器に連続的に導入され、その反応器は攪拌器を備え、液状の反応媒体としての1,1,1,3−テトラクロロプロパンと、多価アンチモン化合物とを含有する。液状の反応媒体の温度は、反応帯内又は反応帯の周囲の熱交換コイルにより冷却等の制御がなされる。
【0059】
幾つかの実施形態の場合、塩化水素副生物の排液(塩化水素副生物排ガスの形態であってもよい)を反応器の塔頂(overhead)から取り出し、必要に応じて、それに伴う塩素化炭化水素から分離する。幾つかの実施形態の場合、その結果生じる回収された塩化水素は実質的に無水であり、以下のいずれかを行ってもよい。(a)更に精製して、他の応用に使用(又は使用のために販売)してもよく、(b)水に溶解して、塩酸として販売してもよく、又は(c)水酸化ナトリウム等のアルカリで洗浄して塩化水素を中和してもよい。幾つかの更なる実施形態の場合、例えば塩化ナトリウムなどのそのような中和から生じたアルカリ金属塩化物塩は、環境的に許容される方法で廃棄してもよく、あるいは塩化ナトリウムの場合には、塩素苛性電解セル回路(chlorine-caustic electrolytic cell circuit)の供給原料として使用してもよい。
【0060】
幾つかの実施形態の場合、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含んだ粗生成物流の排液は反応器から取り出されて、(生成物流の組成及び蒸留塔の設計に応じて)1つ又は複数の蒸留塔を含む蒸留帯に必要により転送される。蒸留帯でこの粗生成物流から分離された多価アンチモン化合物(五価アンチモン化合物及び/又は三価アンチモン化合物)及び未反応の1,1,1,3−テトラクロロプロパンは、反応器(ここで、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを形成するために、多価アンチモン化合物の存在下で1,1,1,3−テトラクロロプロパンと塩素の供給源との反応が実施される)に戻して再利用してもよい。本発明の幾つかの実施形態において、塩素を必要に応じて蒸留帯に加えて、五価状態の多価アンチモン化合物の割合を維持又は増加させることで、五価アンチモン化合物の回収を増強する。必要に応じて、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン生成物は、1つ又は複数の蒸留塔を含む1つ又は複数の更なる蒸留帯で更に精製してもよい。幾つかの実施形態の場合、蒸留帯(複数可)からの副生物はプロセスに再利用されるか、あるいは環境的に許容される方法で廃棄される。
【0061】
本発明の幾つかの更なる実施形態において、アルケン生成物を形成する方法が提供される。幾つかの実施形態の場合、アルケン生成物を形成する方法は、塩化第二鉄と、五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物との存在下で塩素化アルカン基質を加熱し、それによりアルケン生成物を含む生成物を形成することを含む。アルケン生成物は、共有結合でそれに結合されている少なくとも1つの塩素基を必要に応じて有し、塩素化アルカン基質及びアルケン生成物はそれぞれ、いずれも同一の炭素骨格構造を有する。この反応は、本明細書では、脱塩化水素反応又はクラッキング反応と呼ばれる場合がある。「脱塩化水素反応又はクラッキング反応(あるいは類似インポート(like import))」との用語は、本明細書で使用される場合、同義的に使用され、典型的には、隣接する炭素原子から水素原子及び塩素原子を取り去る機序により二重結合の生成をもたらす塩素化アルカン基質内の化学的再編成を指す。幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素の工程は液相反応として実施される。
【0062】
塩素化アルカン基質からアルケン生成物を形成する間は、塩素化アルカン基質の炭素骨格は修飾されず、塩素化アルカン基質の炭素原子は再編成されない。そのため、塩素化アルカン基質及びアルケン生成物はそれぞれ、いずれも同一の炭素骨格構造を有する。非限定的な例示だが、塩素化アルカン基質が塩素化プロパンである場合、対応するアルケン生成物は、必要により塩素化されたプロペンである。幾つかの実施形態の場合、塩素化アルカン基質は炭素間二重結合を有しておらず、アルケン生成物は単一の炭素間二重結合を有する。
【0063】
幾つかの実施形態の場合、アルケン生成物は、本明細書に上述されているアルケンの種類及び例から選択され、共有結合でそれに結合されている少なくとも1つの塩素基(又は原子)を更に有していてもよい。幾つかの実施形態の場合、アルケン生成物は、共有結合でそれに結合されている塩素原子の数が塩素化アルカン基質よりも1つ少ない。幾つかの実施形態の場合、アルケン生成物は、塩素化アルカン基質と比較して、共有結合でそれに結合されている塩素原子の数が1つ少なく、それに結合されている水素原子の数が1つ少ない非限定的な例示だが、幾つかの実施形態では、塩素化アルカン基質がペンタクロロプロパンである場合、対応するアルケン生成物はテトラクロロプロペンである。幾つかの更なる実施形態の場合、(i)アルケン生成物は、共有結合でそれに結合されている塩素原子の数が塩素化アルカン基質よりも1つ少ない、(ii)アルケン生成物は、共有結合でそれに結合されている水素原子の数が塩素化アルカン基質よりも1つ少ない、(iii)アルケン生成物は単一の炭素間二重結合を有する、及び(iv)塩素化アルカン基質は炭素間二重結合を有していない(すなわち含んでいない)。必要により塩素化されたアルケン生成物の例には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる。必要により塩素化された直鎖又は分岐C〜C10アルケン又は必要により塩素化された直鎖又は分岐C〜Cアルケン等の必要により塩素化された直鎖又は分岐C〜C25アルケン、及び必要により塩素化されたC〜Cシクロアルケン等の必要により塩素化されたC〜C12シクロアルケン。必要により塩素化された直鎖又は分岐アルケン生成物の更なる例には、これらに限定されないが、エテン、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、及びデセンが含まれ、それらは、それに結合された少なくとも1つの塩素基(又は原子)をそれぞれ必要に応じて独立して含む。必要により塩素化されたシクロアルケン生成物の更なる例には、これらに限定されないが、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、及びシクロオクテンが含まれ、それらは、それに結合された少なくとも1つの塩素基(又は原子)をそれぞれ必要に応じて独立して含む。アルケン生成物の更なる例には、これらに限定されないが、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、1,2,3,3−テトラクロロプロペン、及び1,1,2,3,3−ペンタクロロプロペンが含まれる。
【0064】
幾つかの実施形態の場合、塩素化アルカン基質(それからアルケン生成物が形成される)は、本明細書で上述されているアルカンの種類及び例から選択され、共有結合でそれに結合されている少なくとも1つの塩素基(又は原子)を更に有する。幾つかの実施形態の場合、塩素化アルカン基質は、本明細書で上述されているアルカンの種類及び例から選択され、(i)その少なくとも1つの水素、及び(ii)最大でその水素の全てよりも少ない水素が、その炭素骨格構造に結合されている塩素基(又は原子)で置換されている。幾つかの更なる実施形態の場合、塩素化アルカン基質は、本明細書で上述されているアルカンの種類及び例から選択され、(i)その少なくとも1つの水素、及び(ii)最大でその水素の全てが、その炭素骨格構造に結合されている塩素基(又は原子)で置換されている。塩素化直鎖又は分岐アルカン基質の例には、これらに限定されないが、塩素化直鎖又は分岐C〜C25アルカン、又は塩素化直鎖又は分岐C〜C10アルカン、又は塩素化直鎖又は分岐C〜C10アルカン、又は塩素化直鎖又は分岐C〜Cアルカンが含まれ、それらはそれぞれ独立して、それに結合されている少なくとも1つの塩素基(又は原子)を有する。塩素化シクロアルカン基質の例には、これらに限定されないが、塩素化C〜C12シクロアルカン又は塩素化C〜Cシクロアルカンが含まれ、それらはそれぞれ独立して、それに結合されている少なくとも1つの塩素族(又は原子)を有する。塩素化直鎖又は分岐アルカン基質の更なる例には、これらに限定されないが、それぞれ独立して、それに結合されている少なくとも1つの塩素基(又は原子)を有するエタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、sec−ブタン、tert−ブタン、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、及びデカンが含まれる。塩素化シクロアルカン基質の更なる例には、これらに限定されないが、それぞれ独立して、それに結合されている少なくとも1つの塩素基(又は原子)を有するシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びシクロオクタンが含まれる。塩素化アルカン基質の更なる例には、これらに限定されないが、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,2,3,3−ペンタクロロプロパン、及び1,1,1,2,3,3−ヘキサクロロプロパンが含まれる。
【0065】
幾つかの実施形態において、塩素化アルカン基質は1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンであり、アルケン生成物は1,1,2,3−テトラクロロプロペンである。
幾つかの実施形態の場合、アルケン生成物の形成に使用される多価アンチモン化合物は、五価アンチモン化合物及び必要に応じて三価アンチモン化合物を含む。幾つかの実施形態の場合、五価アンチモン化合物は、本明細書に上述されている式(I)により表わされる1つ又は複数の五価アンチモン化合物を含む。幾つかの実施形態の場合、三価アンチモン化合物は、本明細書に上述されている式(II)により表わされる1つ又は複数の三価アンチモン化合物を含み得る。
【0066】
幾つかの実施形態の場合、アルケン生成物の形成に使用される多価アンチモン化合物は、(i)五塩化アンチモンを含む五価アンチモン化合物、及び(ii)三塩化アンチモンを含む三価アンチモン化合物を両方とも含む。
【0067】
幾つかの実施形態の場合、アルケン生成物及び塩化水素副生物は、脱塩化水素反応帯から抜き出され、各々精製されて回収される。記載した塩化第二鉄及び多価アンチモン化合物の混合物を使用すると、脱塩化水素触媒として塩化第二鉄のみを使用した場合と比較して、脱塩化水素反応時間が著しく低減されることが観察された。更に、幾つかの実施形態の場合、アルケン生成物への塩素化アルカン基質の著しい変換の開始は、脱塩化水素反応を触媒するために塩化第二鉄のみを使用した場合に著しい変換が生じる温度よりも30°〜60℃低い温度で生じる。
【0068】
幾つかの実施形態の場合、塩化第二鉄及び多価アンチモン化合物は、アルケン生成物が形成されている間(又は脱塩化水素反応中)、それぞれ独立して触媒量で存在する。幾つかの実施形態の場合、多価アンチモン化合物は、いずれも1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの重量に基づき、0.01重量パーセント〜10重量パーセント、又は0.1重量パーセント〜2重量パーセントの量で存在し、塩化第二鉄は、いずれも1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの重量に基づき、0.01重量パーセント〜10重量パーセント、又は0.1重量パーセント〜5重量パーセントの量で存在する。
【0069】
本発明の幾つかの実施形態において、塩素化アルカン基質の脱塩化水素は液相で実施される。幾つかの更なる実施形態の場合、塩素化アルカン基質は1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンであり、アルケン生成物は1,1,2,3−テトラクロロプロペンであり、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの脱塩化水素(1,1,2,3−テトラクロロプロペンを形成するための)は50℃〜200℃、又は100℃〜165℃の温度で実施される。
【0070】
幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応は、少なくとも0.6psia(≒4.136856kPa)の圧力で実施される。幾つかの更なる実施形態の場合、脱塩化水素反応は、0.6psia(≒4.136856kPa)〜215psia(≒1482.3734kPa)、又は1psia(≒6.89476kPa)〜115psia(≒792.8974kPa)の圧力で実施される。例えば少なくとも100psia(≒689.476kPa)の比較的高い圧力を使用することにより、塩化水素副生物をより容易に回収することが可能になる。幾つかの実施形態の場合、大気圧未満の脱塩化水素反応圧力が使用される(例えば少なくとも0.6psia(≒4.136856kPa))。幾つかの更なる実施形態の場合、大気圧未満の脱塩化水素反応圧力は避けられる。幾つかの実施形態の場合、いかなる理論により束縛されるわけではなく、現在入手可能な証拠に基づくわけではないが、脱塩化水素反応が実施される圧力は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン等の塩素化アルカン基質の脱塩化水素に実質的に影響を及ぼすとは考えられない。
【0071】
脱塩化水素反応で使用される触媒混合物中の塩化第二鉄対多価アンチモン化合物の重量比は、本発明の幾つかの実施形態の場合、例えば1000:1〜1:1000{FeCl:多価アンチモン化合物}、例えば1000:1〜1:1000{FeCl:(五価アンチモン化合物及び必要に応じて三価アンチモン化合物)}、例えば1000:1〜1:1000{FeCl:(五塩化アンチモン及び必要に応じて三塩化アンチモン)}等、様々であってもよい。
【0072】
幾つかの実施形態の場合、塩素化アルカン基質が1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンであって、かつ、アルケン生成物が1,1,2,3−テトラクロロプロペンである場合、塩化第二鉄及び多価アンチモン化合物の存在下における1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの加熱(1,1,2,3−テトラクロロプロペンを形成するための)は、50℃〜200℃又は100℃〜165℃の温度、及び0.6psia(≒4.136856kPa)〜215psia(≒1482.3734kPa)又は0.6psia(≒4.136856kPa)〜115psia(≒792.8974kPa)の圧力で実施される。
【0073】
塩素化アルカン基質が1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンであって、かつ、アルケン生成物が1,1,2,3−テトラクロロプロペンである場合、塩化第二鉄及び多価アンチモン化合物の存在下における1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの加熱(1,1,2,3−テトラクロロプロペンを形成するための)は、1000:1〜1:1000の塩化第二鉄対多価アンチモン化合物のモル比で実施される。
【0074】
例えば塩化水素及び1,1,2,3−テトラクロロプロペンのような反応から生じる反応物質、多価アンチモン化合物(複数可)、塩化第二鉄、反応混合物、生成物、副生物、及び副産物の温度、圧力、及び腐食環境並びに脱塩化水素反応に順応するように適切に設計されている任意の反応器を使用して、対応するアルケン生成物を形成するために塩素化アルカン基質の脱塩化水素を実施することができる。好適な反応器の設計の例には、耐食材料等の適切な構成材料で作られている縦型の円柱容器又はプラグ流等の管状反応器が含まれる。好適な構成材料には、炭素鋼、例えばガラスの内張りをした鋼製容器のようなガラス、ニッケル、ニッケル合金、タンタル、例えばポリテトラフルオロエチレンの内張りをした容器、ヘイラーの内張りをした容器又はテフロン(登録商標)の内張りをした容器のようなフッ化炭化水素ポリマーが含まれる。
【0075】
脱塩化水素反応器は、塩素化アルカン基質と多価アンチモン化合物(複数可)と塩化第二鉄との間の密接で適切な接触を得るために、かつ、反応混合物と熱伝達面との適切な接触を提供して適切な温度制御を可能にするために、反応媒体を連続的に撹拌する(すなわちかき混ぜる)1つ又は複数の撹拌器を有していてもよい。反応器内の撹拌(すなわちかき混ぜ)は、好適な耐食性の構成材料で作られた従来の当該技術分野で受け入れられている撹拌器、静的ミキサー、循環ループ等を用いて達成することができる。反応のための熱は、内部又は外部から反応器に与えることができ、あるいは、塩素化アルカン基質を加熱することにより反応器に与えることができる。
【0076】
幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応は、反応器(又は反応帯)内に水が存在すると、多価アンチモン化合物(複数可)及び/又は塩化第二鉄のいずれかの不活性化がもたらされる場合があるため、液相で実質的に乾燥した条件下で実施される。反応器(又は反応帯)に水が存在すると、幾つかの実施形態の場合、塩化第二鉄、多価塩化アンチモン化合物、及び/又は塩化水素副生物が水と反応するため、塩酸の生産が引き起こされる場合がある。幾つかの実施形態の場合、塩酸は望ましくない副生物であり、それは容器、配管、ポンプ、及び他の装置の腐食を引き起こす場合があり、より高価な塩酸耐食材料で作製された装置の使用が必要とされるだろう。
【0077】
脱塩化水素反応では、例えば塩素化アルカン基質、多価アンチモン化合物(複数可)、塩化第二鉄、任意の溶媒(複数可)のような、反応器(又は反応帯)に投入された反応物(又は反応成分)は、幾つかの実施形態の場合、例えば0.1重量パーセント未満の水しか含有しないなど、実質的に乾燥している。幾つかの更なる実施形態の場合、反応物及び反応媒体は、例えば5〜1000ppmの水のような1000ppm未満の水を含有している。幾つかの実施形態において、本プロセスを開始する前に反応器に存在する水(あるいは、プロセスの中断等により、後に反応器に進入する水)は、例えば乾燥した窒素、塩化水素又は塩素のような実質的に乾燥した又は乾燥されたガスで反応器をパージすることにより排除することができる。
【0078】
幾つかの実施形態の場合、本記載のプロセスに従って実施される脱塩化水素反応の反応時間は様々であってもよく、例えば、反応が実施される温度、使用される多価塩化アンチモン及び塩化第二鉄の量及び比率、反応槽のタイプ、及び塩素化アルカン基質の所望の変換度合い等の種々のパラメータに依存する場合がある。幾つかの実施形態では、反応がバッチ方式で実施される場合、脱塩化水素反応時間は0.25〜12時間、又は0.5〜5時間の範囲であってもよい。
【0079】
幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応は、バッチ法、連続法、又はバッチ法(複数可)及び連続法(複数可)の組み合わせのようなそれらの組み合わせとして実施することができる。
【0080】
また、幾つかの実施形態において、脱塩化水素反応が連続方式で実施される場合、反応器内への反応物の流量、反応温度、反応圧力、及び反応器から抜き出される排液の体積流量は、塩素化アルカン基質の対応するアルケン生成物への所望の変換度合いを達成するように選択される。幾つかの実施形態では、連続方式で実施される場合、平均滞留時間は0.25〜12時間、又は0.5〜5時間の範囲であってもよい。幾つかの実施形態において、平均滞留時間は、脱塩化水素反応器内の塩素化アルカン基質の流速で反応器の容積を除したものと規定される。
【0081】
幾つかの実施形態において、バッチ方式及び連続方式では両方とも、脱塩化水素反応器は、例えば塩素化アルカン基質を加熱することによる又は反応器内のコイルを加熱することによる等の、反応帯に熱を提供する加熱装置(又は手段)、反応器から取り出された(必要に応じて)ガス及び排液の温度を制御する熱交換器手段、排ガススクラバー、固液分離器、及び塩化水素副生物オフガス、副生物からの主生成物(つまり、アルケン生成物)の分離、液状の重質副生物と一緒に抜き出される触媒(複数可)の分離を取り扱う蒸留塔等の、更なる処理装置に接続されている。
【0082】
本発明の脱塩化水素反応の幾つかの実施形態の場合、塩化水素副生物の排液(通常は、気体状の流れとして)は、幾つかの実施形態において、反応器の塔頂から取り出され、必要に応じて、それに担持された凝縮されていない有機物(例えばアルケン生成物及び/又は塩素化アルカン基質)から分離される。幾つかの更なる実施形態では、その結果生じる回収された塩化水素は実質的に無水であり、以下のいずれかを行ってもよい。(a)更に精製して、他の応用に使用又は使用のために販売してもよく、(b)水に溶解して、塩酸として販売してもよく、又は(c)水酸化ナトリウム等のアルカリで洗浄して、塩化水素を中和してもよい。幾つかの実施形態の場合、例えば塩化ナトリウムなどの、結果として生じたアルカリ金属塩化物塩は、環境的に許容される方法で廃棄してもよく、あるいは塩化ナトリウムの場合には、塩素苛性電解セル回路の供給原料として使用してもよい。
【0083】
本発明の脱塩化水素反応の幾つかの実施形態において、粗アルケン生成物(例えば1,1,2,3−テトラクロロプロペン)を含んだ生成物流の排液は、幾つかの実施形態の場合、反応器から取り出され、それに担持された固体触媒成分(複数可)を分離した後(必要に応じて)、1つ又は複数の蒸留塔を含む蒸留帯に必要に応じて転送される(生成物流の組成及び蒸留塔の設計に応じて)。幾つかの実施形態の場合、蒸留帯からの副生物は、プロセスに再利用されるか、あるいは環境的に許容される方法で廃棄される。幾つかの実施形態において、回収した多価アンチモン化合物(複数可)は、必要に応じてプロセスに戻して再利用される。幾つかの実施形態の場合、実質的に純粋なアルケン生成物(例えば1,1,2,3−テトラクロロプロペン)が蒸留帯から得られる。幾つかの実施形態の場合、「実質的に純粋なアルケン生成物」とは、回収又は単離された物質が、回収された(又は単離された)物質の全重量に基づき、少なくとも90重量パーセント、又は少なくとも95重量パーセント、又は少なくとも99重量パーセント、又は少なくとも99.5重量パーセント、又は少なくとも99.9重量パーセントのアルケン生成物を含むことを意味する。
【0084】
本発明の種々の方法の幾つかの実施形態の場合、アルケン生成物は、1つ又は複数の多価アンチモン化合物を含んでおり、粗アルケン生成物である。幾つかの実施形態の場合、粗アルケン生成物は、必要に応じて塩化第二鉄等の塩化鉄を粗アルケン生成物から除去した後、例えばフッ化水素化反応等の更に下流の反応で使用される。
【0085】
本発明の幾つかの実施形態において、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを形成する方法が提供され、その方法は、第1の反応にて、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び五価アンチモン化合物(複数可)を含む粗生成物を形成することと、第2の反応にて、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む生成物を形成するために、塩化第二鉄の存在下で第1の反応の粗生成物を加熱することとを含む。
【0086】
幾つかの更なる実施形態の場合、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを形成する方法は、(a)第1の反応にて、五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物の存在下で1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させ、それにより1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び五価アンチモン化合物を含む粗生成物を形成することと、(b)第2の反応にて、塩化第二鉄の存在下で粗生成物を加熱し、それにより1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む生成物を形成することとを含む。
【0087】
幾つかの実施形態の場合、第1の反応は、本明細書で上述されている塩素化反応に従って実施され、五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物の存在下で1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させ、それにより1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む生成物を形成することを含む。幾つかの実施形態の場合、第2の反応は、本明細書に上述されているような脱塩化水素反応に従って実施され、塩化第二鉄と、五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物との存在下で、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン等の塩素化アルカン基質を加熱し、それにより、1,1,2,3−テトラクロロプロペン等のアルケン生成物を含む生成物を形成することを含む。
【0088】
幾つかの実施形態の場合、塩素の供給源は、本明細書に上述されているように、塩素(Cl)及び/又は塩化スルフリル(SOCl)から選択される。
幾つかの実施形態の場合、五価アンチモン化合物は、本明細書に上述されている式(I)により表わされる1つ又は複数の五価アンチモン化合物を含んでいてもよい。幾つかの実施形態の場合、五価アンチモン化合物は五塩化アンチモンを含む。
【0089】
幾つかの更なる実施形態の場合、第1の反応の多価アンチモン化合物は、必要に応じて1つ又は複数の三価アンチモン化合物を更に含む。幾つかの実施形態の場合、三価アンチモン化合物は、本明細書に上述されている式(II)により表わされる1つ又は複数の三価アンチモン化合物を含んでいてもよい。幾つかの実施形態の場合、三価アンチモン化合物は三塩化アンチモンを含む。
【0090】
非限定的な例示だが、本発明の幾つかの実施形態において、第1の反応及び第2の反応により1,1,2,3−テトラクロロプロペンを調製する方法が図1を参照して説明されており、その方法において、第1の反応の粗生成物は、第2の反応にて塩化第二鉄の存在下で加熱される。図1を参照すると、塩素化反応器11及び脱塩化水素反応器14を含む処理装置3が示されている。導管17等の1つ又は複数の導管を介して、1,1,1,3−テトラクロロプロパン、塩素の供給源、及び五価アンチモン化合物(及び/又は本明細書に上述されているような五価アンチモン化合物の前駆体)を含む多価アンチモン化合物は塩素化反応器11に導入される。反応成分は、一緒に及び/又は任意の適切な順序で異なる時点にて、塩素化反応器11に導入することができる。
【0091】
塩素化反応器11内で第1の反応が実施され、五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物の存在下で1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させる。塩素化反応器11内での第1の反応は、1,1,1,2、3−ペンタクロロプロパン、五価アンチモン化合物、及び必要に応じて1つ又は複数の更なる多価アンチモン化合物を含む粗生成物の形成をもたらす。本明細書に上述されているように、例えば反応器11内で実施される第1の反応において三価アンチモン化合物が存在する場合、三価アンチモン化合物の少なくとも一部は、塩素の供給源の存在下で、対応する五価アンチモン化合物に変換される。
【0092】
幾つかの実施形態の場合、1,1,1,3−テトラクロロプロパン、塩素の供給源、及び五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物は、塩素化反応器11内で、本明細書の上記で提供されている記載のレベル(又は量)に維持されている。幾つかの実施形態の場合、塩素化反応は、0.2:1〜1.5:1、又は0.2:1〜1.1:1の塩素(Cl)対1,1,1,3−テトラクロロプロパンのモル比で、触媒量の多価アンチモン化合物を用いて、塩素化反応器11内で実施される。幾つかの実施形態の場合、多価アンチモン化合物は、本明細書に上述されているような支持されていない形態(例えば液体の形態)及び/又は支持された形態(例えば固体支持体に支持されている)で、塩素化反応器11内に存在していてもよい。
【0093】
幾つかの実施形態の場合、塩素化反応器11は、塩素化反応器の内容物を混合するためにインペラー等の撹拌部品(図示せず)を備えていてもよい。幾つかの更なる実施形態の場合、塩素化反応器11は、塩素化反応器の内容物の温度を制御するために1つ若しくは複数の内部熱交換器及び/又は1つ若しくは複数の外部熱交換器(図示せず)を備えていてもよい。
【0094】
幾つかの実施形態の場合、塩素化反応は、本明細書の上記で提供される記載に従って塩素化反応器11内で実施される。幾つかの実施形態の場合、塩素化反応は、例えば40℃〜200℃のような少なくとも40℃の温度、及び例えば1psia(≒6.89476kPa)〜500psia(≒3447.38kPa)のような少なくとも1psia(≒6.89476kPa)の圧力で塩素化反応器11において実施される。
【0095】
幾つかの実施形態の場合、塩素化反応器11内で実施される第1の反応は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び塩化水素(HCl)を含む粗生成物の形成をもたらす。幾つかの実施形態の場合、塩化水素はガス状の形態で生成され、導管20等の1つ又は複数の適切な導管を介して塩素化反応器11から取り出される。幾つかの実施形態の場合、塩化水素は、導管20を介して転送されて廃棄されてもよく、及び/又は本明細書に上述されているような1つ又は複数のスクラバー(図示せず)等の1つ又は複数の処理装置へと転送されてもよく、あるいは更に精製されて他の応用で使用(又は使用のために販売)してもよい。
【0096】
幾つかの実施形態の場合、塩素化反応器11内で形成される粗生成物は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、例えば五塩化アンチモン等の1つ又は複数の五価アンチモン化合物、必要に応じて三塩化アンチモン等の1つ又は複数の三価アンチモン化合物、及び1,1,1,3−テトラクロロプロパンを含む。幾つかの実施形態の場合、1,1,1,3−テトラクロロプロパンは、粗生成物の全重量に基づき1重量パーセント未満の量で、第1の反応の粗生成物中に存在する。
【0097】
塩素化反応器11内で形成される粗生成物は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び1つ又は複数の五価アンチモン化合物を含み、導管23等の1つ又は複数の適切な導管を介して、脱塩化水素反応器14に転送される。脱塩化水素反応器14において、第2の反応は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む生成物を形成するために、塩化第二鉄の存在下で粗生成物(第1の反応に由来する)を加熱することにより実施される。
【0098】
幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応器14は、脱塩化水素反応器の内容物を混合するためにインペラー等の撹拌部品(図示せず)を備えていてもよい。幾つかの更なる実施形態の場合、脱塩化水素反応器14は、脱塩化水素反応器の内容物の温度を制御するために1つ若しくは複数の内部熱交換器及び/又は1つ若しくは複数の外部熱交換器(図示せず)を備えていてもよい。
【0099】
幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応器14で実施される第2の反応は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンから、1,1,2,3−テトラクロロプロペン等のアルケン生成物を形成する方法に関して、本明細書の上記で提供されている記載に従って実施される。幾つかの実施形態において、第2の反応は、例えば50℃〜200℃のような少なくとも50℃の温度、及び例えば0.6psia(≒4.136856kPa)〜215psia(≒1482.3734kPa)のような少なくとも0.6psia(≒4.136856kPa)の圧力で、脱塩化水素反応器14において実施される。幾つかの更なる実施形態の場合、第2の反応は、1000:1〜1:1000の塩化第二鉄対多価アンチモン化合物のモル比で脱塩化水素反応器14において実施される。
【0100】
幾つかの実施形態の場合、塩化第二鉄は、導管26等の1つ又は複数の適切な導管を介して、定期的に又は連続的に脱塩化水素反応器14に導入されてもよい。
幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応器14内で実施される第2の反応は、塩化水素(HCl)の同時生産をもたらす。幾つかの実施形態の場合、塩化水素は、ガス状の塩化水素として形成され、導管29等の1つ又は複数の適切な導管により塩素化反応器14から取り出される。幾つかの実施形態の場合、塩化水素は、導管29を介して転送されて廃棄されてもよく、及び/又は本明細書に上述されているような1つ又は複数のスクラバー(図示せず)等の1つ又は複数の処理装置へと転送されてもよく、あるいは更に精製されて他の応用で使用(使用のために販売)されてもよい。
【0101】
幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応器14内で実施され、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む第2の反応から形成される生成物は、導管32等を介して脱塩化水素反応器14から取り出され、保管場所に転送されてもよく、並びに/又は精製及び/若しくは単離処理の工程等の更なる処理工程に転送されてもよい。
【0102】
幾つかの実施形態の場合、第2の反応から形成される生成物は、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、五塩化アンチモン、及び三塩化アンチモンを含み、本方法は、生成物を蒸留し、それにより(i)1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む塔頂生成物と、(ii)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、五塩化アンチモン、三塩化アンチモンを含む塔底生成物とを形成することを更に含む。幾つかの実施形態において、五塩化アンチモンが第2の反応の生成物及び(蒸留の)塔底生成物に存在する場合、100重量ppm未満の量で存在する。幾つかの実施形態の場合、フラッシュ蒸留装置等の更なる蒸留装置を使用して、本明細書中で更に詳細に記載されているように第2の反応の生成物を蒸留する前に、塩化第二鉄が除去される。
【0103】
幾つかの実施形態の場合、塔底生成物(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び三塩化アンチモンを含む)の少なくとも一部は、第1の反応に導入される。
図1を更に参照すると、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、五塩化アンチモン、及び三塩化アンチモンを含む、脱塩化水素反応器14内で実施される第2の反応の生成物は、導管32を介して第1の蒸留塔35に転送され、そこで蒸留にかけられる。第1の蒸留塔35内でのそのような生成物の蒸留は、以下のものの形成をもたらす。(i)導管38を介して第1の蒸留塔35から取り出される1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む塔頂生成物、及び(ii)導管41を介して第1の蒸留塔35から取り出される1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、必要に応じて五塩化アンチモン、及び三塩化アンチモンを含む塔底生成物。1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む塔頂生成物は、導管38を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、並びに/又は更なる精製及び/若しくは単離工程等の更なる処理工程に転送されてもよい。
【0104】
幾つかの実施形態の場合、蒸留塔35内への塩化第二鉄の導入を防止するために、脱塩化水素反応器14と、塩化第二鉄を除去するための蒸留塔35との間に、フラッシュ蒸留装置等の更なる蒸留装置(図示せず)が、導管32とインラインで設けられている。
【0105】
幾つかの実施形態の場合、導管41を介して第1の蒸留塔35から取り出される1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、五塩化アンチモン、及び三塩化アンチモンを含む塔底生成物の少なくとも一部は、導管44を介して転送され、塩素化反応器11で実施される第1の反応に導入される。任意の理論により束縛されるわけではないが、塩素化反応器11での第1の反応に導入される塔底生成物中の三塩化アンチモンの少なくとも一部は、塩素化反応器11内に存在する塩素の供給源の存在下で、五塩化アンチモンに変換されると考えられる。
【0106】
本発明の幾つかの実施形態において、第2の反応は、生成物の少なくとも一部が1,1,2,3−テトラクロロプロペン蒸気を含む蒸気生成物に変換される温度及び圧力で実施される。したがって、本発明の方法は、(i)第2の反応に由来する1,1,2,3−テトラクロロプロペン蒸気を含む蒸気生成物を取り出すことと、(ii)第2の反応から取り出された蒸気生成物を、液体1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む液体生成物に凝縮することとを更に含む。幾つかの更なる実施形態の場合、蒸気生成物の形成、並びその取り出し及び凝縮は、連続的に実施される反応的蒸留プロセスと呼ばれる。
【0107】
蒸気生成物を形成し、それを取り出し、凝縮させるための第2の反応が実施される、本発明の実施形態の非限定的な例示は、図1を更に参照されたい。脱塩化水素反応器14内で実施される第2の反応は、生成物の少なくとも一部が1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む蒸気生成物に変換される温度及び圧力で実施される。幾つかの実施形態の場合、温度及び圧力は、本明細書の上記で考察されている温度、圧力、及び範囲から選択することができる。幾つかの実施形態の場合、第2の反応は、50℃〜200℃の温度、及び0.6psia(≒4.136856kPa)〜215psia(≒1482.3734kPa)の圧力で実施される。
【0108】
1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む蒸気生成物は、導管29等の1つ又は複数の適切な導管を介して、第2の反応及び脱塩化水素反応器14から取り出される。幾つかの実施形態では、蒸気生成物が導管29を介して取り出される場合、第2の反応の生成物は導管32を介して取り出されない。幾つかの更なる実施形態では、蒸気生成物が導管29を介して取り出される場合、第2の反応の生成物もある程度、導管32を介して取り出される。本発明の幾つかの実施形態の場合、反応器14を定期的にパージして、1つ又は複数の導管(図示せず)を介して、これに限定されないが使用済み鉄化合物等の使用済み物質をそこから除去する。
【0109】
1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む蒸気生成物は、導管29を介して凝縮器47に転送される。凝縮器47内では、蒸気生成物は、液体1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む液体生成物へと凝縮される。液体1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む凝縮された液体生成物は、導管50等の1つ又は複数の適切な導管を介して凝縮器47から取り出される。幾つかの実施形態の場合、凝縮された液体生成物は、導管50を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、並びに/又は単離及び/若しくは精製工程等の更なる処理工程に転送されてもよい。幾つかの実施形態の場合、凝縮された液体生成物は、凝縮器47から取り出され、導管50を介して第1の蒸留塔35に転送され、そこで、凝縮された液体生成物は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む塔頂生成物を形成するために蒸留され、塔頂生成物は、第1の蒸留塔35から取り出され、導管38を介して転送され、他の物質を含む塔底生成物は、第1の蒸留塔35から取り出され、導管41を介して転送される。
【0110】
本明細書の上記で考察されているように、幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応器14内で実施される第2の反応は、ガス状の塩化水素(HCl)の同時生産をもたらす。幾つかの実施形態の場合、ガス状の塩化水素は、脱塩化水素反応器14から取り出され、導管29を介して凝縮器47へと転送される。幾つかの実施形態の場合、凝縮器47は、導管29を介してそこに導入されるガス状の塩化水素が凝縮しない条件下で稼働される。したがって、幾つかの実施形態の場合、ガス状の塩化水素は、凝縮器47を通過し、導管30を介してそこから取り出される。
【0111】
幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応器14内で形成される第2の反応の蒸気生成物は、1,1,2,3−テトラクロロプロペン蒸気、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン蒸気、五塩化アンチモン蒸気、及び三塩化アンチモン蒸気を含む。幾つかの実施形態の場合、多成分の蒸気生成物は、導管29を介して第2の反応及び脱塩化水素反応器14から取り出され、導管29を介して凝縮器47へと転送される。凝縮器47において、多成分の蒸気生成物は、液体1,1,2,3−テトラクロロプロペン、液体1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、液体五塩化アンチモン、及び液体三塩化アンチモンを含む多成分の液体生成物に凝縮される。幾つかの実施形態の場合、凝縮された多成分の液体生成物は、凝縮器47から取り出され、導管50を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、並びに/又は単離及び/若しくは精製工程等の更なる処理工程に転送される。
【0112】
幾つかの実施形態の場合、凝縮された多成分の液体生成物は凝縮器47から取り出され、導管50を介して第1の蒸留塔35に転送される。第1の蒸留塔35において、凝縮された多成分の液体生成物は、(i)1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む塔頂生成物と、(ii)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、三塩化アンチモン、及び五塩化アンチモンを含む塔底生成物とを形成するために蒸留される。1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む塔頂生成物は第1の蒸留塔35から取り出され、導管38を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、及び/又は本明細書の上記に記載されているような更なる処理工程に転送される。塔底生成物は第1の蒸留塔35から取り出され、導管41を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、及び/又は本明細書の上記に記載されているような更なる処理工程に転送される。幾つかの実施形態の場合、導管41を介して第1の蒸留塔35から取り出される塔底生成物の少なくとも一部は、導管44を介して塩素化反応器11に転送され、そこで、本明細書の上記に記載されている第1の反応に導入される。
【0113】
幾つかの実施形態の場合、導管38を介して第1の蒸留塔35から取り出された、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む塔頂生成物は、導管38を介して第2の蒸留塔53へと転送される。幾つかの実施形態の場合、第1の蒸留塔35から取り出された塔頂生成物は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンと、1,1,2,3−テトラクロロプロペンよりも低い沸点を有する、軽質物と呼ばれる1つ又は複数の物質とを含む。幾つかの実施形態の場合、軽質物には、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、1,1,3−トリクロロプロペン、及び/又は1,1,1,3−テトラクロロプロパンが含まれる。第2の蒸留塔53内での塔頂生成物の蒸留は、(i)軽質物を含む第2の塔頂生成物、及び(ii)精製1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む第2の塔底生成物の形成をもたらし、塔底生成物は第2の蒸留塔53から取り出され、導管59を介して転送される。幾つかの実施形態の場合、軽質物を含有する第2の塔頂生成物は、導管56を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、及び/又は更なる処理に、及び/又は廃棄に転送される。幾つかの実施形態の場合、精製1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む第2の塔底生成物は、導管59を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、及び/又は更なる処理工程に転送される。
【0114】
本発明の方法は、第1の反応及び第2の反応により1,1,2,3−テトラクロロプロペンを調製することを含み、第1の反応の粗生成物は、第2の反応にて塩化第二鉄の存在下で加熱され、幾つかの実施形態の場合、バッチ法及び/又は連続法として実施される。
【0115】
本発明の方法は、第1の反応及び第2の反応により1,1,2,3−テトラクロロプロペンを調製することを含み、第1の反応の粗生成物は、第2の反応にて塩化第二鉄の存在下で加熱され、幾つかの実施形態の場合、本明細書の上記で提供されている記載に従って、塩化鉄、鉄金属、及びリン酸トリアルキルの存在化で四塩化炭素をエチレンと反応させることにより、1,1,1,3−テトラクロロプロパン(第1の反応で使用される)を形成することを含む。
【0116】
本発明の幾つかの実施形態において、1,1,2,3−テトラクロロプロペンは、以下を含むプロセスにより調製される。第1の反応にて、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む粗生成物を形成すること、粗生成物を蒸留して、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び三塩化アンチモンを含む塔底生成物を形成すること、三塩化アンチモンの少なくとも一部を五塩化アンチモンに変換するために、塩素の供給源を塔底生成物に導入し、それにより修飾された塔底生成物を形成すること、及び第2の反応にて、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む生成物を形成するために、その修飾された塔底生成物を塩化第二鉄の存在下で加熱すること。
【0117】
幾つかの更なる実施形態の場合、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを形成する方法は、(a)第1の反応で、五塩化アンチモンを含む五価アンチモン化合物の存在下、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させ、それにより、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,3−テトラクロロプロパン、五塩化アンチモン、及び三塩化アンチモンを含む粗生成物を形成させること、(b)粗生成物を蒸留し、それにより、(i)1,1,1,3−テトラクロロプロパン及び五塩化アンチモンを含む塔頂生成物と、(ii)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び三塩化アンチモンを含む塔底生成物とを形成すること、(c)塩素の供給源を塔底生成物に導入し、それにより三塩化アンチモンの少なくとも一部を五塩化アンチモンに変換して、それにより修飾された塔底生成物を形成すること、及び(d)第2の反応にて、その修飾された塔底生成物を塩化第二鉄の存在下で加熱し、それにより1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む生成物を形成することを含む。
【0118】
幾つかの実施形態の場合、第1の反応は、本明細書で上述されている塩素化反応に従って実施され、五塩化アンチモン等の五価アンチモン化合物を含む多価アンチモン化合物の存在下で、1,1,1,3−テトラクロロプロパンを塩素の供給源と反応させ、それにより1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含む生成物を形成することを含む。幾つかの実施形態の場合、第2の反応は、本明細書に上述されている脱塩化水素反応に従って実施され、塩化第二鉄と、五塩化アンチモン等の五価アンチモン化合物とを含む多価アンチモン化合物の存在下で、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン等の塩素化アルカン基質を加熱し、それにより1,1,2,3−テトラクロロプロペン等のアルケン生成物を含む生成物を形成することを含む。
【0119】
幾つかの実施形態の場合、塩素の供給源は、本明細書に上述されているように、塩素(Cl)及び/又は塩化スルフリル(SOCl)から選択される。
幾つかの実施形態の場合、五価アンチモン化合物は、本明細書に上述されている式(I)により表わされる1つ又は複数の五価アンチモン化合物を更に含んでいてもよい。
【0120】
幾つかの更なる実施形態の場合、第1の反応は、必要に応じて1つ又は複数の三価アンチモン化合物を更に含む。幾つかの実施形態の場合、三価アンチモン化合物は、本明細書に上述されている式(II)により表わされる1つ又は複数の三価アンチモン化合物を含む。幾つかの実施形態の場合、三価アンチモン化合物は三塩化アンチモンを含む。
【0121】
非限定的な例示だが、本発明の幾つかの実施形態において、第1の反応及び第2の反応により1,1,2,3−テトラクロロプロペンを調製する方法が図2を参照して説明されており、その方法において、第1の反応の粗生成物を蒸留することにより得られる修飾された塔底生成物は、第2の反応にて塩化第二鉄の存在下で加熱される。図2を参照すると、塩素化反応器11及び脱塩化水素反応器14を含む処理装置5が示されている。導管17等の1つ又は複数の導管を介して、1,1,1,3−テトラクロロプロパン、塩素の供給源、及び五塩化アンチモン(及び/又は本明細書に上述されている五塩化アンチモンの前駆体)を含む五価アンチモン化合物は塩素化反応器11に導入される。反応成分は、一緒に及び/又は任意の適切な順序で異なる時点にて、塩素化反応器11に導入することができる。
【0122】
塩素化反応器11内で第1の反応が実施され、五塩化アンチモンを含む五価アンチモン化合物の存在下で1,1,1,3−テトラクロロプロパンが塩素の供給源と反応する。塩素化反応器11内での第1の反応は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,3−テトラクロロプロパン、五塩化アンチモン、及び三塩化アンチモンを含む粗生成物の形成をもたらす。
【0123】
幾つかの実施形態の場合、塩素化反応器11内の1,1,1,3−テトラクロロプロパン、塩素の供給源、及び五塩化アンチモンを含む五価アンチモン化合物は、本明細書の上記で提供されている記載のレベル(又は量)に維持されている。幾つかの実施形態の場合、第1の反応(又は塩素化反応)は、0.2:1〜1.5:1、又は0.2:1〜1.1:1の塩素(Cl)対1,1,1,3−テトラクロロプロパンのモル比で、触媒量の五価アンチモン化合物(複数可)を用いて、塩素化反応器11内で実施される。
【0124】
幾つかの実施形態の場合、塩素化反応器11は、塩素化反応器の内容物を混合するためにインペラー等の撹拌部品(図示せず)を備えていてもよい。幾つかの更なる実施形態の場合、塩素化反応器11は、塩素化反応器の内容物の温度を制御するために1つ若しくは複数の内部熱交換器及び/又は1つ若しくは複数の外部熱交換器(図示せず)を備えていてもよい。
【0125】
幾つかの実施形態の場合、第1の反応(又は塩素化反応)は、本明細書の上記で提供される記載に従って塩素化反応器11内で実施される。幾つかの実施形態の場合、第1の反応(又は塩素化反応)は、例えば40℃〜200℃のような少なくとも40℃の温度、及び例えば1psia(≒6.89476kPa)〜500psia(≒3447.38kPa)のような少なくとも1psia(≒6.89476kPa)の圧力で塩素化反応器11において実施される。
【0126】
幾つかの実施形態の場合、塩素化反応器11内で実施される第1の反応は、粗生成物及び塩化水素(HCl)の形成をもたらす。幾つかの実施形態の場合、塩化水素はガス状の形態で生成され、導管20等の1つ又は複数の適切な導管を介して塩素化反応器11から取り出される。幾つかの実施形態の場合、塩化水素は、導管20を介して転送されて廃棄されてもよく、及び/又は本明細書に上述されているような1つ又は複数のスクラバー(図示せず)等の1つ又は複数の処理装置へと転送されてもよく、あるいは更に精製されて他の応用で使用(又は使用のために販売)してもよい。
【0127】
塩素化反応器11内で形成される粗生成物は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、1,1,1,3−テトラクロロプロパン、五価塩化アンチモン、及び三価塩化アンチモンを含み、導管23等の1つ又は複数の適切な導管を介して、第1の蒸留塔62に転送される。第1の蒸留塔62において、第1の反応の粗生成物は、(i)1,1,1,3−テトラクロロプロパン及び五塩化アンチモンを含む塔頂生成物と、(ii)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び三塩化アンチモンを含む塔底生成物とを形成するために蒸留される。
【0128】
幾つかの実施形態の場合、塔頂生成物は、第1の蒸留塔62から取り出され、導管65を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、並びに/又は単離及び/若しくは精製工程等の1つ又は複数の更なる処理工程に転送される。幾つかの実施形態の場合、1,1,1,3−テトラクロロプロパン及び五塩化アンチモンを含む塔頂生成物の少なくとも一部は、第1の反応に導入される。図2を参照すると、導管65を介して第1の蒸留塔62から取り出される塔頂生成物の少なくとも一部は、導管68を介して転送され、塩素化反応器11の第1の反応に導入される。
【0129】
図2を更に参照すると、塔底生成物は第1の蒸留塔62から取り出され、導管71を介して転送される。幾つかの実施形態の場合、塩素の供給源は、導管71と交差する導管74を介して塔底生成物に導入される。塩素の供給源が導管71を通過して塔底生成物に導入されることにより、三塩化アンチモンの少なくとも一部が五塩化アンチモンに変換され、それにより修飾された塔底生成物が形成される。幾つかの実施形態の場合、修飾された塔底生成物は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、五塩化アンチモン、及び必要に応じて三塩化アンチモンを含む。
【0130】
幾つかの実施形態の場合、修飾された塔底生成物は、塔底生成物に導入された塩素の供給源を実質的に含まない。所望の1,1,2,3−テトラクロロプロペン生成物の形成が妨害される場合があるため、幾つかの実施形態の場合、修飾された塔底生成物中の塩素供給源の量を最小限に抑えるか又は除去することが望ましい。幾つかの実施形態の場合、修飾された塔底生成物は、塔底生成物に導入された塩素の供給源を1000ppm未満しか含まない。
【0131】
修飾された塔底生成物は、導管71を介して更に転送され、導管74との交差地点を通過し、脱塩化水素反応器14に導入され、そこで第2の反応が実施される。
幾つかの実施形態の場合、第2の反応は、図1に関して本明細書の上記で提供されている記載に従って、図2の脱塩化水素反応器14内で実施される。脱塩化水素反応器14において、第2の反応は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む生成物を形成するために、修飾された塔底生成物(第1の反応の粗生成物の蒸留から得られる)を塩化第二鉄の存在下で加熱することにより実施される。
【0132】
幾つかの実施形態の場合、図2の脱塩化水素反応器14は、脱塩化水素反応器の内容物を混合するためにインペラー等の撹拌部品(図示せず)を備えていてもよい。幾つかの更なる実施形態の場合、脱塩化水素反応器14は、脱塩化水素反応器の内容物の温度を制御するために1つ若しくは複数の内部熱交換器及び/又は1つ若しくは複数の外部熱交換器(図示せず)を備えていてもよい。
【0133】
幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応器14で実施される第2の反応は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンから、1,1,2,3−テトラクロロプロペン等のアルケン生成物を形成する方法に関して、本明細書の上記で提供されている記載に従って実施される。幾つかの実施形態において、第2の反応は、例えば50℃〜200℃のような少なくとも50℃の温度、及び例えば0.6psia(≒4.136856kPa)〜215psia(≒1482.3734kPa)のような少なくとも0.6psia(≒4.136856kPa)の圧力で、図2の脱塩化水素反応器14において実施される。幾つかの更なる実施形態の場合、第2の反応は、1000:1〜1:1000の塩化第二鉄対多価アンチモン化合物のモル比で、図2の脱塩化水素反応器14において実施される。
【0134】
幾つかの実施形態の場合、塩化第二鉄は、導管26等の1つ又は複数の適切な導管を介して、定期的に又は連続的に脱塩化水素反応器14に導入される。
幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応器14内で実施される第2の反応は、塩化水素(HCl)の同時生産をもたらす。幾つかの実施形態の場合、塩化水素は、ガス状の塩化水素として形成され、導管29等の1つ又は複数の適切な導管により塩素化反応器14から取り出される。幾つかの実施形態の場合、塩化水素は、導管29を介して転送されて廃棄されてもよく、及び/又は本明細書に上述されているような1つ又は複数のスクラバー(図示せず)等の1つ又は複数の処理装置へと転送されてもよく、あるいは更に精製されて他の応用で使用(又は使用のために販売)されてもよい。
【0135】
脱塩化水素反応器14内で実施され、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む第2の反応から形成される生成物は、幾つかの実施形態の場合、導管32等を介して脱塩化水素反応器14から取り出され、保管場所に転送されてもよく、並びに/又は精製及び/若しくは単離処理の工程等の更なる処理工程に転送されてもよい。
【0136】
幾つかの実施形態の場合、第2の反応から形成される生成物は、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、五塩化アンチモン、及び三塩化アンチモンを含み、本方法は、生成物を蒸留し、それにより(i)1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む塔頂生成物と、(ii)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び三塩化アンチモンを含む塔底生成物とを形成することを更に含む。幾つかの実施形態において、第2の塔底生成物は、存在する場合は、典型的には100重量ppm未満の量で存在する五塩化アンチモンを含んでいてもよい。幾つかの実施形態の場合、フラッシュ蒸留装置等の更なる蒸留装置を使用して、本明細書中で更に詳細に記載されているように、第2の反応の生成物を蒸留する前に、塩化第二鉄が除去される。
【0137】
幾つかの実施形態の場合、第2の塔底生成物(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び三塩化アンチモンを含む)の少なくとも一部は、第1の反応に導入される。
図2を更に参照すると、1,1,2,3−テトラクロロプロペン、五塩化アンチモン、及び三塩化アンチモンを含む、脱塩化水素反応器14内で実施される第2の反応の生成物は、導管32を介して第2の蒸留塔35’に転送され、そこで蒸留にかけられる。第2の蒸留塔35’内でのそのような生成物の蒸留は、(i)導管38’を介して第2の蒸留塔35’から取り出される1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む第2の塔頂生成物、及び(ii)導管41’を介して第2の蒸留塔35’から取り出される1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び三塩化アンチモンを含む第2の塔底生成物の形成をもたらす。1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む第2の塔頂生成物は、導管38’を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、並びに/又は更なる精製及び/若しくは単離工程等の更なる処理工程に転送されてもよい。
【0138】
幾つかの実施形態の場合、第2の蒸留塔35’内への塩化第二鉄の導入を防止するために、脱塩化水素反応器14と、塩化第二鉄を除去するための第2の蒸留塔35’との間に、フラッシュ蒸留装置等の更なる蒸留装置(図示せず)が、導管32とインラインで設けられている。
【0139】
幾つかの実施形態の場合、導管41’を介して第2の蒸留塔35’から取り出される1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び三塩化アンチモンを含む第2の塔底生成物の少なくとも一部は、導管44’を介して転送され、塩素化反応器11で実施される第1の反応に導入される。任意の理論により束縛されるわけではないが、塩素化反応器11での第1の反応に導入される第2の塔底生成物中の三塩化アンチモンの少なくとも一部は、塩素化反応器11内に存在する塩素の供給源の存在下で、五塩化アンチモンに変換されると考えられる。
【0140】
本発明の幾つかの実施形態において、第2の反応は、生成物の少なくとも一部が1,1,2,3−テトラクロロプロペン蒸気を含む蒸気生成物に変換される温度及び圧力で実施される。したがって、本方法は、(i)第2の反応に由来する1,1,2,3−テトラクロロプロペン蒸気を含む蒸気生成物を取り出すことと、(ii)第2の反応から取り出された蒸気生成物を、液体1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む液体生成物に凝縮することとを更に含む。幾つかの実施形態の場合、蒸気生成物の形成、並びにその取り出し及び凝縮は、反応的蒸留プロセスと呼ばれ、幾つかの更なる実施形態の場合、連続的に実施される。
【0141】
蒸気生成物を形成し、それを取り出し、凝縮させるための第2の反応が実施される、本発明の実施形態の非限定的な例示は、図2を更に参照されたい。脱塩化水素反応器14内で実施される第2の反応は、生成物の少なくとも一部が1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む蒸気生成物に変換される温度及び圧力で実施される。幾つかの実施形態の場合、温度及び圧力は、本明細書の上記で考察されている温度、圧力、及び範囲から選択することができる。幾つかの実施形態の場合、第2の反応は、50℃〜200℃の温度、及び0.6psia(≒4.136856kPa)〜215psia(≒1482.3734kPa)の圧力で実施される。
【0142】
図2を参照すると、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む蒸気生成物は、導管29等の1つ又は複数の適切な導管を介して、第2の反応及び脱塩化水素反応器14から取り出される。幾つかの実施形態では、蒸気生成物が導管29を介して取り出される場合、第2の反応の生成物は導管32を介して取り出されない。幾つかの更なる実施形態では、蒸気生成物が導管29を介して取り出される場合、第2の反応の生成物もある程度、導管32を介して取り出される。本発明の幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応器14を定期的にパージして、1つ又は複数の導管(図示せず)を介して、これらに限定されないが使用済み鉄化合物等の使用済み物質をそこから除去する。
【0143】
図2を更に参照すると、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む蒸気生成物は、導管29を介して凝縮器47に転送される。凝縮器47内で、蒸気生成物は、液体1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む液体生成物に凝縮される。液体1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む凝縮された液体生成物は、導管50等の1つ又は複数の適切な導管を介して凝縮器47から取り出される。幾つかの実施形態の場合、凝縮された液体生成物は、導管50を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、並びに/又は単離及び/若しくは精製工程等の更なる処理工程に転送されてもよい。幾つかの実施形態の場合、凝縮された液体生成物は、凝縮器47から取り出され、導管50を介して第2の蒸留塔35’に転送され、そこで、凝縮された液体生成物は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む第2の塔頂生成物を形成するために蒸留され、塔頂生成物は、第2の蒸留塔35’から取り出され、導管38’を介して転送され、他の物質を含む第2の塔底生成物は、第2の蒸留塔35’から取り出され、導管41’を介して転送される。
【0144】
本明細書の上記で考察されているように、図2を更に参照すると、幾つかの実施形態の場合、脱塩化水素反応器14内で実施される第2の反応は、ガス状の塩化水素(HCl)の同時生産をもたらす。幾つかの実施形態の場合、ガス状の塩化水素は、脱塩化水素反応器14から取り出され、導管29を介して凝縮器47へと転送される。幾つかの実施形態の場合、凝縮器47は、導管29を介してそこに導入されるガス状の塩化水素が凝縮しない条件下で稼働される。したがって、幾つかの実施形態の場合、ガス状の塩化水素は、凝縮器47を通過し、導管30を介してそこから取り出される。
【0145】
幾つかの実施形態の場合、図2を更に参照すると、脱塩化水素反応器14内で形成される第2の反応の蒸気生成物は、1,1,2,3−テトラクロロプロペン蒸気、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、五塩化アンチモン蒸気、及び三塩化アンチモン蒸気を含む。幾つかの実施形態の場合、この多成分の蒸気生成物は、導管29を介して第2の反応及び脱塩化水素反応器14から取り出され、導管29を介して凝縮器47へと転送される。凝縮器47において、多成分の蒸気生成物は、液体1,1,2,3−テトラクロロプロペン、液体1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、液体五塩化アンチモン、及び液体三塩化アンチモンを含む多成分の液体生成物へと凝縮される。幾つかの実施形態の場合、凝縮された多成分の液体生成物は、凝縮器47から取り出され、導管50を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、並びに/又は単離及び/若しくは精製工程等の更なる処理工程に転送される。
【0146】
幾つかの実施形態の場合、図2を更に参照すると、凝縮された多成分の液体生成物は凝縮器47から取り出され、導管50を介して第2の蒸留塔35’に転送される。第2の蒸留塔35’において、凝縮された多成分の液体生成物は、(i)1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む塔頂生成物と、(ii)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、三塩化アンチモン、及び五塩化アンチモンを含む塔底生成物とを形成するために蒸留される。1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む第2の塔頂生成物は第2の蒸留塔35’から取り出され、導管38’を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、及び/又は本明細書の上記に記載されているような、更なる処理工程に転送される。第2の塔底生成物は第2の蒸留塔35’から取り出され、導管41’を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、及び/又は本明細書の上記に記載されているような、更なる処理工程に転送される。幾つかの実施形態の場合、導管41’を介して第2の蒸留塔35’から取り出される第2の塔底生成物の少なくとも一部は、導管44’を介して塩素化反応器11に転送され、そこで、本明細書の上記に記載されている第1の反応に導入される。
【0147】
図2を更に参照すると、導管38’を介して第2の蒸留塔35’から取り出される1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む第2の塔頂生成物は、幾つかの実施形態の場合、導管38’を介して第3の蒸留塔77へと転送される。幾つかの実施形態の場合、第2の蒸留塔35’から取り出された第2の塔頂生成物は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンと、1,1,2,3−テトラクロロプロペンよりも低い沸点を有する、軽質物と呼ばれる1つ又は複数の物質とを含む。幾つかの実施形態の場合、軽質物には、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、1,1,3−トリクロロプロペン、及び/又は1,1,1,3−テトラクロロプロパンが含まれる。第3の蒸留塔77内での第2の塔頂生成物の蒸留は、(i)軽質物を含む第3の塔頂生成物、及び(ii)第3の蒸留塔77から取り出され、導管83を介して転送される精製1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む第3の塔底生成物の形成をもたらす。幾つかの実施形態の場合、軽質物を含有する第3の塔頂生成物は、導管80を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、及び/又は更なる処理に、及び/又は廃棄に転送される。幾つかの実施形態の場合、精製1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含む第3の塔底生成物は、導管83を介して貯蔵タンク(図示せず)に転送され、及び/又は更なる処理工程に転送される。
【0148】
本発明の幾つかの実施形態の場合、第1の反応及び第2の反応により1,1,2,3−テトラクロロプロペンを調製する方法であって、第1の反応の粗生成物を蒸留することにより得られる修飾された塔底生成物が、第2の反応にて塩化第二鉄の存在下で加熱される方法は、連続法及び/又はバッチ法として実施される。
【0149】
本発明の方法は、第1の反応及び第2の反応により1,1,2,3−テトラクロロプロペンを調製することを含み、第1の反応の粗生成物を蒸留することにより得られる修飾された塔底生成物は、第2の反応にて塩化第二鉄の存在下で加熱され、幾つかの実施形態の場合、本明細書の上記で提供されている記載に従って、塩化鉄、鉄金属、及びリン酸トリアルキルの存在化で四塩化炭素をエチレンと反応させることにより、1,1,1,3−テトラクロロプロパン(第1の反応で使用される)を形成することを含む。
【0150】
本発明は、特に以下の実施例で説明されているが、それらは単に例示に過ぎず、それらに対する多数の改変及び変異は当業者であれは明白であろう。
実施例
実施例1
本実施例1は、五塩化アンチモン(SbCl)を触媒として使用して、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンをバッチ条件下で調製した本発明の非限定的な実施形態を示すものである。
【0151】
1,1,1,3−テトラクロロプロパン(147.1グラム)及び五塩化アンチモン(0.5mL)を、250ミリリットル(mL)の三つ口丸底部フラスコに投入した。250mL三つ口丸底部フラスコには、塩素入口、磁気撹拌子、18インチ(45.72cm)Vigreuxカラム、及び水酸化ナトリウムスクラバーに接続されたガス出口が備えられていた。反応フラスコを、生じる可能性のある一切のフリーラジカル塩素化を抑制するために、反応を紫外線から保護する絶縁布で包んだ。使用した五塩化アンチモンの量は、テトラクロロプロパン反応物の量に基づき0.80重量パーセントであった。フラスコ中の反応混合物を、加熱マントルで70℃に加熱した。20℃の塩素ガスを、毎分およそ0.32グラムの速度で3時間、反応混合物の液面下に加えた。その後、塩素供給を止め、反応槽を窒素で脱気した。粗反応混合物を、ガスクロマトグラフィー(GC)で分析した。この分析により、反応混合物は、選択性が81.3%の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、及び5重量パーセントの1,1,1,3−テトラクロロプロパンを含有することが示された。テトラクロロプロパン反応物の変換率は、95.1パーセントであると計算された。
【0152】
実施例2
本実施例2は、三塩化アンチモン(SbCl)を五塩化アンチモン(SbCl)の前駆体として使用して、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンをバッチ条件下で調製した本発明の非限定的な実施形態を示すものである。
【0153】
143.5グラムの1,1,1,3−テトラクロロプロパンを使用し、0.90グラムの三塩化アンチモンを使用し(0.63重量パーセント触媒)、反応混合物を加熱マントルで120℃に加熱したこと以外は、実施例1の手順に従った。塩素を3時間供給した後、塩素の流れを止め、反応槽を窒素で脱気した。粗反応混合物(159.5グラム)をGCで分析したところ、89%の選択性で生産された1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、及び0.001重量パーセントの1,1,1,3−テトラクロロプロパンを含有することが見出された。テトラクロロプロパン反応物の変換率は、本質的に100パーセントであると計算された。
【0154】
実施例3
本実施例3は、トリフェニルアンチモン(Sb(C)をトリフェニルアンチモンジクロリド((CSbCl)の前駆体として使用して、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンをバッチ条件下で調製した本発明の非限定的な実施形態を示すものである。
【0155】
0.5グラムのトリフェニルアンチモンを使用し(0.35重量%の触媒)、塩素を5.5時間にわたって加えた以外は、実施例2の手順に従った。塩素付加を終えた後、反応槽を窒素で脱気した。粗反応混合物をGCで分析したところ、81.2%の選択性で生成された1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含有することが見出された。テトラクロロプロパン反応物の変換率は、本質的に100パーセントであると計算された。
【0156】
比較例1
上記の実施例1と比較するために、本比較例1を実施した。本比較例1では、無水塩化第二鉄を、五塩化アンチモン等の多価アンチモン化合物の非存在下で触媒として使用した。
【0157】
無水塩化第二鉄(0.64グラム)を触媒として使用し(0.45重量パーセントの触媒)、反応混合物を70℃に加熱した以外は、実施例1の手順に従った。塩素供給材料を(20℃で)2.25時間にわたって加えた。その時間の終了時に塩素の供給を止め、反応槽を窒素で脱気した。粗反応混合物(132.4グラム)をGCで分析したところ、58.7%の選択性で生産された1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、及び0.039重量パーセントの1,1,1,3−テトラクロロプロパンを含有することが見出された。テトラクロロプロパン反応物の変換率は、99.9パーセントであると計算された。
【0158】
実施例4
本実施例4は、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを連続条件下で調製した本発明の非限定的な実施形態を示すものである。
【0159】
三塩化アンチモン(8.94グラム、0.8重量%のSbCl当量)及び1,1,1,3−テトラクロロプロパン(1,458.2グラム)の供給材料溶液を、1リットルのエルレンマイヤーフラスコ中の試薬を磁気撹拌子で30分間撹拌することにより調製した。
【0160】
230.9グラムの供給材料溶液を、600mLのNickel200型オートクレーブに投入した。オートクレーブの内容物を、窒素で100psig(≒689.476kPa)に加圧し、80℃に加熱し、温度が80℃に達したら、塩素ガスを液面下に導入した。塩素ガスを100psig(≒689.476kPa)で2時間加えた後、追加供給材料溶液(584.2グラム)を、2.01g/分の全体平均速度でオートクレーブにポンプ送液した。塩素ガス付加(合計167グラム)は、合計410分間、連続的に実施した。生成物混合物及びHClを、背圧調整器を有する浸漬管を介して取り出して、オートクレーブの液面を約180mLに、圧力を約100psig(≒689.476kPa)に維持した。終了時までに、795.7グラムの粗生成物混合物を収集した。GC分析で決定したところ、54.8重量%の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び44.3重量%の1,1,1,3−テトラクロロプロパンを含有していた。全体の変換率は、51.2%で、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンに対する選択性は99.1%であった。
【0161】
実施例5
本実施例5は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンが2段階(第1の反応−第2の反応)連続バッチプロセスで調製される本発明の非限定的な実施形態を示すものである。
【0162】
第1の反応では、1,1,1,3−テトラクロロプロパン(143.5グラム)を、熱電対、磁気撹拌子、塩素入口、及び水酸化ナトリウムスクラバーに接続された18インチ(45.72cm)Vigreux凝縮器を備える250mL三つ口丸底部フラスコに投入した。テトラクロロプロパンを加熱マントルで120℃に加熱し、0.05mLの五塩化アンチモンをそれに添加した。混合物を磁気的に1分間撹拌し、その後、塩素を反応混合物の液面下に16時間導入した。13.66時間が経過した後、追加投入の五塩化アンチモン(0.20mL)を反応混合物に添加し、塩素の流入を継続した。塩素付加の16時間後、塩素の流入を止めた。87.59重量%の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含有するが、検出可能な1,1,1,3−テトラクロロプロパンを含有しない粗1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン生成物混合物を得た。
【0163】
第2の反応では、第1の反応の粗1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン生成物混合物を、窒素脱気しながら20℃に冷却し、あらゆる過剰塩素を除去した。その後、第2の反応混合物を形成するために、0.60グラムの無水塩化第二鉄を、冷却した粗生成物混合物に投入し、2時間165℃に加熱した。123℃の温度に達した時点で、第2の反応混合物は、水酸化ナトリウムスクラバーでのバブル発生により明らかなように、大量のガスを生じさせた。2時間の終了時に、その結果生じたその後の粗反応生成物を冷却し、GCで分析した。86.2%の選択性で生成された78.80重量%の1,1,2,3−テトラクロロプロペン、及び0.03重量パーセントの1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含有することが見出された。
【0164】
比較例2
上記の実施例5の第2の反応と比較するために、本比較例2を実施した。
1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(66.0グラム)及び無水塩化第二鉄(0.10グラム)の混合物を、凝縮器、熱電対、機械的撹拌器、及び水スクラバーに接続されたガス出口を備える250mL三つ口丸底部フラスコに投入した。使用した塩化第二鉄触媒の量は、0.15重量パーセントであった。反応混合物を、以下のように2日間にわたって加熱した。150℃で2.25時間、室温に冷却、窒素下で一晩保管、160℃で3.17時間、及び164℃で2.75時間。記載した加熱時間は、室温又は以前の設定温度のいずれかから新しい設定温度に達するのに必要な時間を含む。反応混合物を冷却し、その後64℃〜85℃の範囲のポット温度及び120Torrの圧力でフラッシュ真空蒸留した。留出物(46.5グラム)をGCで分析したところ、98.7%の選択性、及び84.7パーセントの全収率で生成された1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含有することが見出された。また、留出物は、0.6重量パーセントの1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含有していた。ペンタクロロプロパン反応物の変換率は、99.4パーセントであると計算された。
【0165】
実施例6
本実施例6は、塩化第二鉄及び五塩化アンチモンの組み合わせを触媒として使用して、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンから1,1,2,3−テトラクロロプロパンをバッチ条件下で調製した本発明の非限定的な実施形態を示すものである。
【0166】
50グラムの1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(96.94重量%の純度を有する)、及び0.1614gの無水塩化第二鉄(Fisher Scientific社から取得)、及び25マイクロリットル(μL)の五塩化アンチモン(0.059gの五塩化アンチモンを含有、Aldrich社から取得)を、磁気撹拌子、水スクラバーに取り付けられた凝縮器、熱電対、及び加熱マントルを備える100mL三つ口丸底部フラスコ中で混合した。混合物を撹拌し、室温から165℃に加熱した。130℃に達した時点で、大量のガスが水スクラバーに生じ、ガスの発生は残りの実験全体にわたって継続した。3時間後、混合物を室温に冷却し、その後にガスクロマトグラフィーで分析するための試料を採取した。生成物は、GC分析で決定したところ、80.19重量%の1,1,2,3−テトラクロロプロペン及び16.74重量%の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含有していた。これは、モル変換率が85.1%であったことを示す。
【0167】
比較例3
本比較例3は、塩化第二鉄のみを触媒として使用して、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンから1,1,2,3−テトラクロロプロペンをバッチ調製するための説明を提供する。
【0168】
50グラムの1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(96.21重量%の純度を有する)、及び0.1676gの無水塩化第二鉄(Fisher Scientific社から取得)を、磁気撹拌子、水スクラバーに取り付けられた凝縮器、熱電対、及び加熱マントルを備える100mL三つ口丸底部フラスコ中で混合した。混合物を撹拌し、室温から165℃に加熱した。3時間後、混合物を室温に冷却し、その後GCで分析するための試料を採取した。生成物は、GC分析で決定したところ、44.41重量%の1,1,2,3−テトラクロロプロペン及び52.40重量%の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含有していた。これは、モル変換率が50.4%であったことを示す。
【0169】
比較例4
本比較例4は、塩化第二鉄のみを触媒として使用して、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンから1,1,2,3−テトラクロロプロペンをバッチ調製するための説明を提供する。
【0170】
20グラムの1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(96.21重量%の純度を有する)、及び0.20gの無水塩化第二鉄(Fisher Scientific社から取得)を、クライゼンアダプター、熱電対、磁気撹拌子、水スクラバーに取り付けられた凝縮器、及び加熱マントルを備える50mL丸底部フラスコ中で混合した。混合物を、以下のように2日間にわたって撹拌及び加熱した。100℃(3.85時間)、その後110℃(1.73時間)、室温に冷却、週末にわたって窒素下で保管、130℃(1.50時間)、その後150℃(5.45時間)。記載した加熱時間は、室温又は以前の設定温度のいずれかから新しい設定温度に達するのに必要な時間を含む。混合物(14.9g)を室温に冷却し、その後GCで分析するための試料を採取した。生成物は、GC分析で決定したところ、99.35重量%の1,1,2,3−テトラクロロプロペン及び0.30重量%の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含有していた。これは、変換率が99.56重量%であったことを示す(1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの開始量に関わらず)。
【0171】
以下の表1は、比較例2及び4並びに実施例4の要約を提供するものであり、塩化第二鉄及び五塩化アンチモンの組み合わせを触媒(実施例4)として使用して1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンから1,1,2,3−テトラクロロプロペンを調製することに関する本発明の方法により提供される望ましい反応時間及び変換率の組み合わせを、塩化第二鉄のみを触媒として使用した場合(比較例2及び4)と比較して示すためのものである。
【0172】
【表1】
以下の表2は、比較例3及び実施例6の要約を提供するものであり、塩化第二鉄及び五塩化アンチモンの組み合わせを触媒として使用して(実施例6)1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンから1,1,2,3−テトラクロロプロペンを調製することに関する本発明の方法により提供される望ましい反応時間及び変換率の組み合わせを、同じ温度(つまり、165℃)、時間(つまり、3時間)、及び触媒配合量(つまり、合計で0.33重量%)で反応を実施した、塩化第二鉄のみを触媒として使用した場合(比較例3)と比較して示すためのものである。
【0173】
【表2】
実施例7
本実施例7は、1,1,2,3−テトラクロロプロペンを連続条件下で調製した本発明の非限定的な実施形態を示すものである。
【0174】
粗1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(157.8グラム、体積は約100mL、98.4重量%、0.46重量%のSbClを含有)及び無水塩化第二鉄(0.1730グラム)を、250mL三つ口丸底部フラスコに投入した。250mL三つ口丸底部フラスコは、機械的撹拌器、添加漏斗、クライゼンアダプター、熱電対、及び蒸留装置(蒸留ヘッド、凝縮器、及び蒸留受器を含んでいた)を備えていた。凝縮器を出たガスは、真空ポンプに進み、それにより水スクラバーに放出される。三つ口丸底部フラスコ及び蒸留装置を、減圧下(650Torr)に設置し、加熱マントルで164〜169℃のポット温度に加熱した。約80%の変換を達成した後(水スクラバーの重量増加を測定することにより決定した)、更なる粗1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン(486.0グラム、体積は約300mL)を、271分間にわたって、三つ口丸底部フラスコの内容物に滴加して、粗1,1,2,3−テトラクロロプロペン留出物を蒸留装置から収集しつつ、一定のポットレベルを維持した。合計376.5グラムの粗留出物生成物を収集し、92.9重量%の1,1,2,3−テトラクロロプロペン及び6.5重量%の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンが含有されていることを(GC分析により)決定した。平均滞留時間は、90分であった(100mL/(300mL/271分))。
【0175】
実施例8〜10
本実施例8〜10は、粗1,1,2,3−テトラクロロプロペンを、様々な条件下で連続的に調製した、本発明の非限定的な実施形態を示すものである。実施例7の手順に従ったが、塩化第二鉄の投入量を変化させた。反応器圧力を調整して、反応器の温度を変更しつつ、一定のポットレベルを依然として維持した。実験結果は、以下の表3に要約されている。
【0176】
【表3】
実施例11
本実施例11は、実施例4、7、8、9、及び10に従って調製した粗1,1,2,3−テトラクロロプロペン生成物を蒸留した、本発明の非限定的な実施形態を示すものである。粗1,1,2,3−テトラクロロプロペン生成物の約10パーセントを、実施例4に従って調製し、粗1,1,2,3−テトラクロロプロペン生成物の約90重量パーセントを、実施例7、8、9、及び10に従って調製した。重量パーセントは各々、粗1,1,2,3−テトラクロロプロペン生成物の総重量に基づいていた。
【0177】
以下の部品を使用して蒸留装置を組み立てた。500mL三つ口丸底部フラスコ(リボイラーとして稼働した)、10段の2.54cmオールダーショー(Oldershaw)真空ジャケット付き蒸留塔、2.54cmオールダーショー真空ジャケット付き導入口、115cmの0.16”Pro−Pak(商標)隆起ニッケル充填材(protruded Nickel packing)を含む2.54cmオールダーショー真空ジャケット付き充填領域、還流タイマー及び水冷濃縮器に接続されている生成物取り出し用吊りバケツ。蒸留装置は、Variac電圧調節器により制御された加熱マントルで加熱した。
【0178】
蒸留装置は、圧力調節器を有する真空ポンプを使用して、100Torrに維持した。16時間の期間にわたってペリスタルティックポンプを使用して、2.15キログラム(kg)の粗1,1,2,3−テトラクロロプロペン生成物を、Oldershaw領域と充填蒸留塔領域との間に配置した導入口から蒸留装置の蒸留塔にポンプ送液した。粗1,1,2,3−テトラクロロプロペンを、本発明の幾つかの実施形態に従って調製した。GC分析により決定したところ、81.0重量%の1,1,2,3−テトラクロロプロペン、17.7重量%の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン、0.29重量%のSbCl、及び0.9重量%の未知不純物が含有されていた。1.61kgの量の留出物生成物を、2:1の還流比で収集した。塔底物をリボイラーに蓄積させた。供給材料のポンプ送液及び生成物収集を止めたら、還流比を1:1に低下させ、0.15kgの追加留出物を収集した。0.29kgの量の残留物が、リボイラーに残留した。
【0179】
留出物生成物は、GC分析により決定したところ、99.65重量%の1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含有し、誘導結合プラズマ(ICP)分析によると、10ppmw未満(重量百万分率)の量のアンチモンを含有していた。リボイラー残留物は、GC分析により決定したところ、94.6重量%の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び0.1重量%未満の1,1,2,3−テトラクロロプロペンを含有し、ICP分析によると、0.84重量%のアンチモンを含有していた。三塩化アンチモンの湿式化学分析は、留出物生成物中の三塩化アンチモンが0.02重量%未満であり、追加留出物中の三塩化アンチモンは、0.66重量%であり、リボイラー残留物中の三塩化アンチモンは、1.3重量%であったことを示した。
【0180】
実施例12
本実施例12は、三塩化アンチモンを含有するリボイラー残留物を再利用し、1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンの形成に使用した本発明の非限定的な実施形態を示すものである。
【0181】
実施例11のリボイラー残留物の一部(約50mLの体積を有する)を注射器フィルターでろ過して、少量の固形物を除去した。その結果生じた67.53グラムの量のろ過液(1.10重量%の三塩化アンチモンを含有していた)を、51.29グラムの1,1,1,3−テトラクロロプロパン(純度99%)と混合して、0.64重量%の三塩化アンチモンを含有する供給材料溶液を調製した。供給材料溶液は、GC分析で決定したところ、47.5重量%の1,1,1,3−テトラクロロプロパン及び49.5重量%の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパンを含有していた。
【0182】
供給材料溶液を、熱電対、磁気撹拌子、塩素スパージャ、及び脱イオン水スクラバーに接続された18”(45.72cm)Vigreux凝縮器を備える250mL三口フラスコに投入した。供給材料溶液を、温度調節器を取り付けたVariac制御加熱マントルを使用して、100℃に加熱した。温度が70℃に達したら、250mL三口フラスコへの塩素ガス供給を開始した。開始から約11分(塩素ガス供給開始後)で塩素漏出が観察された。塩素ガス流速を低減させたところ、漏出はおさまった。その後、塩素ガス供給を、初期のより高い流速に戻したが、更なる漏出は一切観察されなかった。合計約24.5グラムの量の塩素ガスを、4.3時間の期間にわたって250mL三口フラスコに供給した。合計10.9グラムの量の塩化水素が、スクラバーで回収された。合計120.6グラムの生成物を収集した。GC分析で決定したところ、95.0重量%の1,1,1,2,3−ペンタクロロプロパン及び0.015重量%の1,1,1,3−テトラクロロプロパンが含有されていた。
【0183】
本発明は、その特定の実施形態の具体的な詳細を参照して記載されている。しかしながら、そのような詳細は、それらが添付の特許請求の範囲に含まれる限り、本発明の範囲を限定するものとみなされることは意図されていない。
図1
図2